JP7411394B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム二次電池に関する。
従来、リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池とも呼ぶ。)では、正極、負極およびセパレータに含浸される電解液として、例えば、溶媒中にリチウム塩等の電解質を溶解させ、さらに添加剤を添加した溶液が利用されている。当該添加剤として、例えば、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)等が利用される。
特許文献1では、リチウム二次電池の高温におけるサイクル特性を改善することを目的として、エチレンカーボネート等の非フッ素化カーボネート、フッ素化溶剤、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド(DTD)等の環状サルフェート、LiDFOB等のリチウムボレート塩、および、電解質塩を含む電解液を利用することが提案されている。リチウム二次電池では、電解液にLiDFOB等が添加されることにより、負極の表面にSEI膜と呼ばれる安定な被膜が形成され、これにより、リチウム二次電池のサイクル特性が改善される。
特表2017-520100号公報
ところで、リチウム二次電池は、スマートカードの電力供給源としての利用が検討されている。この場合、リチウム二次電池には、大電流パルス放電に対応する低抵抗特性が求められる。また、当該低抵抗特性は、リチウム二次電池の使用初期のみならず、長期間維持される必要がある。すなわち、リチウム二次電池では、経時的な抵抗増大(すなわち、抵抗劣化)の抑制が求められている。
本願発明者は、鋭意研究の結果、リチウム二次電池の負極のみならず、正極表面にも被膜を形成することにより、リチウム二次電池の抵抗劣化を抑制可能であることを見いだした。また、電解液にLiDFOBを添加するだけでは、正極被覆によるリチウム二次電池の抵抗劣化抑制という観点からは、高い効果を奏し得ないという知見も得た。
本発明は、リチウム二次電池に向けられており、抵抗劣化を抑制することを目的としている。
本発明の好ましい一の形態に係るリチウム二次電池は、リチウムおよび遷移金属元素の複合酸化物において一部が他の金属元素である置換金属元素に置換されたリチウム複合酸化物を含む正極と、所定の重ね合わせ方向において前記正極上に配置されるセパレータと、前記重ね合わせ方向において前記セパレータの前記正極とは反対側に配置される負極と、前記正極、前記負極および前記セパレータに含浸される電解液と、前記重ね合わせ方向の両側から前記正極および前記負極を被覆し、前記正極、前記セパレータ、前記負極および前記電解液を内部に収容する外装体と、を備える。前記負極に含まれる負極活物質は天然黒鉛である。前記電解液は、リチウムジフルオロオキサレートボレートおよび1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシドを含む。前記正極の表面における前記置換金属元素の表面被覆率は80.0%以上かつ99.0%以下である。
好ましくは、前記正極は、前記リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体である正極活物質板を備える。
好ましくは、抵抗劣化速度は0.200(Ω/√day)以下である。
本発明では、抵抗劣化を抑制することができる。
一の実施の形態に係るリチウム二次電池の断面図である。 リチウム二次電池の平面図である。 正極活物質板の光電子スペクトルを示す図である。 正極活物質板の光電子スペクトルを示す図である。 リチウム二次電池の製造の流れを示す図である。 リチウム二次電池の製造の流れを示す図である。
図1は、本発明の一の実施の形態に係るリチウム二次電池1の構成を示す断面図である。図2は、リチウム二次電池1の平面図である。図1では、図の理解を容易にするために、リチウム二次電池1およびその構成を、実際よりも厚く描いている。また、図1では、後述する正極2、セパレータ4および負極3の左右方向の幅を実際よりも小さく、外装体6の接合部(すなわち、図1中の左右方向の両端部)の左右方向の幅を実際よりも大きく描いている。なお、図1では、断面よりも手前側および奥側の一部の構造を併せて図示する。
リチウム二次電池1は、小型かつ薄型の電池である。リチウム二次電池1の平面視における形状は、例えば略矩形状である。例えば、リチウム二次電池1の平面視における縦方向の長さは10mm~46mmであり、横方向の長さは10mm~46mmである。リチウム二次電池1の厚さ(すなわち、図1中の上下方向の厚さ)は、例えば0.30mm~0.45mmであり、好ましくは0.40mm~0.45mmである。リチウム二次電池1は、シート状または可撓性を有する薄板状の部材である。シート状の部材とは、比較的小さい力によって容易に変形する薄い部材であり、フィルム状の部材とも呼ばれる。以下の説明においても同様である。
リチウム二次電池1は、例えば、シート状デバイス、または、可撓性を有するデバイスに搭載されて電力供給源として利用される。シート状デバイスとは、比較的小さい力によって容易に変形する薄いデバイスであり、フィルム状デバイスとも呼ばれる。本実施の形態では、リチウム二次電池1は、例えば、演算処理機能を有するスマートカードに内蔵され、当該スマートカードにおける電力供給源として利用される。スマートカードは、カード型の可撓性を有するデバイスである。スマートカードは、例えば、無線通信IC、指紋解析用ASICおよび指紋センサを備えた指紋認証・無線通信機能付きカード等として用いられる。以下の説明では、スマートカード等のように、リチウム二次電池1が電力供給源として利用される対象となるデバイスを「対象デバイス」とも呼ぶ。
スマートカードへのリチウム二次電池1の搭載は、例えば、常温にて加圧を行うコールドラミネート、または、加熱しつつ加圧を行うホットラミネートにより行われる。ホットラミネートにおける加工温度は、例えば110℃~260℃である。当該加工温度の上限は、好ましくは240℃未満であり、より好ましくは220℃未満であり、さらに好ましくは200℃未満であり、最も好ましくは150℃以下である。また、ホットラミネートにおける加工圧力は、例えば0.1MPa(メガパスカル)~6MPaであり、加工時間(すなわち、加熱・加圧時間)は、例えば10分~20分である。
リチウム二次電池1は、正極2と、負極3と、セパレータ4と、電解液5と、外装体6と、2つの端子7とを備える。正極2、セパレータ4および負極3は、所定の重ね合わせ方向に重ね合わせられている。図1に示す例では、正極2、セパレータ4および負極3は、図中の上下方向に積層されている。以下の説明では、図1中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。また、図1中の上下方向を、単に「上下方向」と呼び、「重ね合わせ方向」とも呼ぶ。図1中の上下方向は、リチウム二次電池1がスマートカード等の対象デバイスに搭載される際の実際の上下方向と一致する必要はない。
図1に示す例では、セパレータ4は、上下方向(すなわち、重ね合わせ方向)において正極2の上面上に配置される。負極3は、上下方向においてセパレータ4の上面上に配置される。換言すれば、負極3は、上下方向においてセパレータ4の正極2とは反対側に配置される。正極2、セパレータ4および負極3はそれぞれ、平面視において例えば略矩形状である。正極2、セパレータ4および負極3は、平面視においておよそ同形状(すなわち、およそ同じ形、かつ、およそ同じ大きさ)である。
外装体6は、シート状かつ袋状の部材である。外装体6は、平面視において略矩形である。外装体6は、上下方向に重なる2層のシート部65,66を備える。以下の説明では、正極2の下側に位置するシート部65を「第1シート部65」と呼び、負極3の上側に位置するシート部66を「第2シート部66」と呼ぶ。第1シート部65の外周縁と第2シート部66の外周縁とは、例えば熱融着(いわゆる、ヒートシール)により接合されている。外装体6の第1シート部65および第2シート部66はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)等の金属により形成された金属箔61と、絶縁性の樹脂層62とが積層されたラミネートフィルムにより形成される。第1シート部65および第2シート部66では、樹脂層62は、金属箔61の内側に位置する。
外装体6は、上下方向の両側から正極2および負極3を被覆する。外装体6は、正極2、セパレータ4、負極3および電解液5を内部に収容する。電解液5は、正極2、セパレータ4および負極3の周囲に連続して存在する。換言すれば、電解液5は、正極2および負極3の間に介在する。電解液5は、正極2、セパレータ4および負極3に含浸されている。2つの端子7は、外装体6の内部から外部へと延びる。外装体6の内部において、一方の端子7は正極2に電気的に接続されており、他方の端子7は負極3に電気的に接続されている。
正極2は、正極集電体21と、正極活物質板22と、導電性接合層23とを備える。正極集電体21は、導電性を有するシート状の部材である。正極集電体21の下面は、正極接合層63を介して外装体6の樹脂層62に接合されている。正極接合層63は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。正極接合層63は、他の様々な材料により形成されてもよい。正極接合層63の厚さは、例えば0.5μm~10μmである。
正極集電体21は、例えば、アルミニウム等の金属により形成される金属箔と、当該金属箔の上面上に積層された導電性カーボン層とを備える。換言すれば、正極集電体21の正極活物質板22に対向する主面は、導電性カーボン層により被覆されている。上述の金属箔は、アルミニウム以外の様々な金属(例えば、銅、ニッケル、銀、金、クロム、鉄、スズ、鉛、タングステン、モリブデン、チタン、亜鉛、または、これらを含む合金等)により形成されてもよい。また、正極集電体21から上記導電性カーボン層は省略されてもよい。
正極活物質板22(すなわち、正極2の活物質板)は、リチウム複合酸化物を含む比較的薄い板状セラミック焼結体である。好ましくは、正極活物質板22は、実質的に当該リチウム複合酸化物のみにより構成される。正極活物質板22は、導電性接合層23を介して正極集電体21の上面上に接合される。正極活物質板22は、上下方向においてセパレータ4と対向する。正極活物質板22の上面は、セパレータ4の下面と接触する。なお、正極活物質板22には、集電助剤として金(Au)等がスパッタされていてもよい。
正極活物質板22は、複数の(すなわち、多数の)一次粒子が結合した構造を有している。当該一次粒子は、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される。リチウム複合酸化物は、リチウムおよび遷移金属元素Mの複合酸化物(一般式:LiMO(式中、0.05<p<1.10))において、一部が他の金属元素である置換金属元素に置換されたものである。遷移金属元素Mは、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)から選択される1種以上を含む。遷移金属元素Mは、上記リチウム複合酸化物に含まれるリチウム以外の金属のうち主たるものであり、以下、「主遷移金属元素」とも呼ぶ。
上述のリチウムおよび主遷移金属元素の複合酸化物の好ましい例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO(式中、1≦p≦1.1)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、ニッケルマンガン酸リチウム(Li(Ni0.5,Mn0.5)O)、一般式:Li(Co,Ni,Mn)O(式中、0.97≦p≦1.07,x+y+z=1)で表される固溶体、Li(Co,Ni,Al)O2(式中、0.97≦p≦1.07、x+y+z=1、0<x≦0.25、0.6≦y≦0.9および0<z≦0.1)で表される固溶体、または、LiMnOとLiMO(式中、MはCo、Ni等の遷移金属)との固溶体が挙げられる。特に好ましくは、リチウムおよび主遷移金属元素の複合酸化物は、コバルト酸リチウムLiCoO(式中、1≦p≦1.1)であり、例えば、LiCoO(LCO)である。
上述の置換金属元素は、例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)から選択される1種以上である。好ましくは、置換金属元素は、TiまたはNbである。置換金属元素は、例えば、上述のリチウムおよび主遷移金属元素の複合酸化物において、当該主遷移金属元素の一部と置換される。
上述の層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造である。すなわち、層状岩塩構造は、酸化物イオンを介してリチウム以外の金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的には、α-NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向にリチウム以外の金属とリチウムとが規則配列した構造)である。
正極活物質板22において、上記複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径は、例えば20μm以下であり、好ましくは15μm以下である。また、当該一次粒径は、例えば0.2μm以上であり、好ましくは0.4μm以上である。当該一次粒径は、正極活物質板22の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を解析することにより測定することができる。具体的には、例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させ、当該研磨断面を所定の倍率(例えば、1000倍)および所定の視野(例えば、125μm×125μm)でSEMにより観察する。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定する。得られたSEM画像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とする。
正極活物質板22において、複数の一次粒子の平均傾斜角(すなわち、平均配向角度)は、0°よりも大きく、かつ、30°以下であることが好ましい。また、当該平均傾斜角は、より好ましくは5°以上かつ28°以下であり、さらに好ましくは10°以上かつ25°以下である。当該平均傾斜角は、複数の一次粒子の(003)面と、正極活物質板22の主面(例えば、正極活物質板22の下面)とが成す角度の平均値である。
一次粒子の傾斜角(すなわち、一次粒子の(003)面と正極活物質板22の主面とが成す角度)は、正極活物質板22の断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析することによって測定することができる。具体的には、例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャで加工して研磨断面を露出させ、当該研磨断面を所定の倍率(例えば、1000倍)および所定の視野(例えば、125μm×125μm)でEBSDにより解析する。得られたEBSD像において、各一次粒子の傾斜角は色の濃淡で表され、色が濃いほど傾斜角が小さいことを示す。そして、EBSD像から求められた複数の一次粒子の傾斜角の平均値が、上述の平均傾斜角とされる。
正極活物質板22を構成する一次粒子において、傾斜角が0°よりも大きくかつ30°以下である一次粒子の占める割合は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。当該割合の上限値は特に限定されず、100%であってもよい。当該割合は、上述のEBSD像において、傾斜角が0°よりも大きくかつ30°以下である一次粒子の合計面積を求め、当該一次粒子の合計面積を全粒子面積で除算することにより求めることができる。
正極活物質板22の気孔率は、例えば、25%~45%である。正極活物質板22の気孔率とは、正極活物質板22における気孔(開気孔および閉気孔を含む。)の体積比率である。当該気孔率は、正極活物質板22の断面のSEM画像を解析することにより測定することができる。例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャで加工して研磨断面を露出させる。当該研磨断面を所定の倍率(例えば、1000倍)および所定の視野(例えば、125μm×125μm)でSEMにより観察する。得られたSEM画像を解析し、視野内の全ての気孔の面積を視野内の正極活物質板22の面積(断面積)で除算し、得られた値に100を乗算することにより気孔率(%)を得る。
正極活物質板22に含まれる気孔の直径の平均値である平均気孔径は、例えば15μm以下であり、好ましくは12μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。また、当該平均気孔径は、例えば0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上である。上述の気孔の直径は、典型的には、当該気孔を同体積あるいは同断面積を有する球形と仮定した場合の、当該球形における直径である。平均気孔径は、複数の気孔の直径の平均値を個数基準で算出したものである。当該平均気孔径は、例えば、断面SEM画像の解析、または、水銀圧入法等、周知の方法により求めることができる。好ましくは、当該平均気孔径は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定される。
図1に示す例では、正極活物質板22は、1枚の板状部材であるが、複数の板状部材(以下、「活物質板要素」と呼ぶ。)に分割されていてもよい。この場合、複数の活物質板要素はそれぞれ、導電性接合層23を介して正極集電体21に接合される。複数の活物質板要素は、例えば、正極集電体21上においてマトリクス状(すなわち、格子状)に配列される。平面視における各活物質板要素の形状は、例えば略矩形である。複数の活物質板要素は、平面視において略同形状(すなわち、略同じ形かつ略同じ大きさ)であってもよく、異なる形状を有していてもよい。複数の活物質板要素は、平面視において互いに離間して配置される。
導電性接合層23は、導電性粉末と、バインダとを含む。導電性粉末は、例えば、アセチレンブラック、鱗片状の天然黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ誘導体、または、カーボンナノファイバー誘導体等の粉末である。バインダは、例えば、ポリイミドアミド樹脂を含む。バインダに含まれるポリイミドアミド樹脂は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。また、バインダは、ポリイミドアミド樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。導電性接合層23は、上述の導電性粉末およびバインダ、並びに、溶媒を含む液状またはペースト状の接着剤が、正極集電体21または正極活物質板22に塗布されて、正極集電体21と正極活物質板22との間にて溶媒が蒸発して固化することにより形成される。
正極集電体21の厚さは、例えば9μm~50μmであり、好ましくは9μm~20μmであり、より好ましくは9μm~15μmである。正極活物質板22の厚さは、例えば15μm~200μmであり、好ましくは30μm~150μmであり、より好ましくは50μm~100μmである。正極活物質板22を厚くすることにより、単位面積当たりの活物質容量を大きくし、リチウム二次電池1のエネルギー密度を増大させることができる。正極活物質板22を薄くすることにより、充放電の繰り返しに伴う電池特性の劣化(特に、抵抗値の増大)を抑制することができる。導電性接合層23の厚さは、例えば、3μm~28μmであり、好ましくは5μm~25μmである。
負極3は、負極集電体31と、負極活物質層32とを備える。負極集電体31は、導電性を有するシート状の部材である。負極集電体31の上面は、負極接合層64を介して外装体6の樹脂層62に接合されている。負極接合層64は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。負極接合層64は、他の様々な材料により形成されてもよい。負極接合層64の厚さは、例えば0.5μm~10μmである。
負極集電体31は、例えば、銅等の金属により形成される金属箔である。当該金属箔は、銅以外の様々な金属(例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銀、金、クロム、鉄、スズ、鉛、タングステン、モリブデン、チタン、亜鉛、または、これらを含む合金等)により形成されてもよい。
負極活物質層32は、樹脂を主成分とするバインダと、負極活物質である炭素質材料とを含む。負極活物質層32は、負極集電体31の下面上に塗工される。すなわち、負極3は、いわゆる塗工電極である。負極活物質層32は、上下方向においてセパレータ4と対向する。負極活物質層32の下面は、セパレータ4の上面と接触する。負極活物質層32では、上述の炭素質材料は天然黒鉛である。なお、本発明に関連する技術では、上述の炭素質材料は、例えば、人造黒鉛、熱分解炭素、コークス、樹脂焼成体、メソフェーズ小球体、または、メソフェーズ系ピッチ等である。本発明に関連する技術では、負極3では、炭素質材料に代えてリチウム吸蔵物質が負極活物質として利用されてもよい。当該リチウム吸蔵物質は、例えば、シリコン、アルミ、スズ、鉄、イリジウム、または、これらを含む合金、酸化物もしくはフッ化物等である。本発明に係る負極活物質層32のバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはこれらの混合物である。
負極集電体31の厚さは、例えば5μm~25μmであり、好ましくは8μm~20μmであり、より好ましくは8μm~15μmである。負極活物質層32の厚さは、例えば20μm~300μmであり、好ましくは30μm~250μmであり、より好ましくは30μm~150μmである。負極活物質層32を厚くすることにより、単位面積当たりの活物質容量を大きくし、リチウム二次電池1のエネルギー密度を増大させることができる。負極活物質層32を薄くすることにより、充放電の繰り返しに伴う電池特性の劣化(特に、抵抗値の増大)を抑制することができる。
セパレータ4は、シート状または薄板状の絶縁部材である。セパレータ4は、例えば、樹脂により形成された単層セパレータである。当該樹脂は、例えば、ポリイミド、または、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))等である。本実施の形態では、セパレータ4はポリイミド製の多孔質膜(例えば、三次元多孔構造体(3DOM))である。ポリイミドは、ポリエチレンおよびポリプロピレンに比べて、耐熱性に優れる。したがって、ポリイミド製のセパレータ4を使用することにより、リチウム二次電池1の耐熱性を向上することができる。
セパレータ4の厚さは、例えば15μm以上であり、好ましくは18μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。また、セパレータ4の厚さは、例えば31μm以下であり、好ましくは28μm以下であり、より好ましくは26μm以下である。セパレータ4を厚くすることにより、リチウムデンドライト(リチウムの樹状結晶)が析出した場合であっても、リチウムデンドライトによる正極2と負極3との短絡を抑制することができる。また、セパレータ4を薄くすることにより、電解液5およびリチウムイオンのセパレータ4の透過を容易とし、リチウム二次電池1の内部抵抗を低減することができる。
セパレータ4の構造は、様々に変更されてよい。例えば、セパレータ4は、セラミック基板上に樹脂層が積層された2層セパレータであってもよく、樹脂基板上にセラミックがコーティングされた2層セパレータであってもよい。あるいは、セパレータ4は、セラミック基板の上面および下面に樹脂層が積層された3層セパレータであってもよく、3層以上の多層構造を有していてもよい。セパレータ4は、必ずしも樹脂層を含む必要はなく、セラミックのみにより形成された微多孔膜であってもよい。当該セラミックは、例えば、MgO、Al、ZrO、SiC、Si、AlNおよびコージェライトから選択される少なくとも1種であり、好ましくはMgO、AlおよびZrOから選択される少なくとも1種である。
電解液5は、溶媒に電解質および添加剤を加えた液体である。当該電解質(すなわち、溶質)は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)である。電解液5におけるLiPFの濃度は、例えば0.5mol/L~2.0mol/Lであり、好ましくは0.75mol/L~1.5mol/Lであり、より好ましくは1.0mol/L~1.25mol/Lである。上記電解質は、様々に変更されてよく、例えば、ホウフッ化リチウム(LiBF)であってもよい。
上記添加剤は、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、および、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド(DTD)を含む。電解液5におけるLiDFOBの含有率は、例えば0.1質量%~5.0質量%であり、好ましくは0.5質量%~1.5質量%であり、より好ましくは1.0質量%~1.2質量%である。電解液5におけるDTDの含有率は、例えば0.1質量%~5.0質量%であり、好ましくは0.5質量%~1.0質量%である。電解液5におけるLiDFOB:DTDの質量%比は、例えば1:0.1~1:50であり、好ましくは1:0.1~1:1である。なお、電解液5は、LiDFOBおよびDTDに加えて、他の添加剤を含んでいてもよい。本実施の形態では、電解液5は、LiDFOBおよびDTD以外の添加剤を実質的に含んでいない。
電解液5の溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、メチルブチレート(MB)、酢酸プロピル(PA)等の非水溶媒である。当該溶媒は、例えば、ECおよびEMCを含む溶媒であってもよい。誘電率の高いECと粘度の低いEMCの混合溶媒を用いることで、高い電気伝導度を得ることができる。当該非水溶媒におけるEC:EMCの体積比は、例えば1:0.43~1:2.3(すなわち、EMC比率30体積%~70体積%)であり、好ましくは1:1~1:2.3(EMC比率50体積%~70体積%)である。なお、電解液5の溶媒は、様々に変更されてよい。
リチウム二次電池1では、電解液5が分解温度の高いLiPFを含むことにより、リチウム二次電池1の耐熱性が向上される。また、電解液5がLiDFOBおよびDTDを含むことにより、SEI(Solid Electrolyte Interface)膜が負極3の表面に形成される。SEI膜は安定な被膜であるため、SEI膜により負極3の表面が覆われることによって、電解液5の還元分解が抑制され、リチウム二次電池1の抵抗劣化が抑制される。
リチウム二次電池1では、電解液5がLiDFOBおよびDTDを含むことにより、さらに、正極2の表面(具体的には、正極活物質板22の表面)が、SEI膜により被覆される。正極2の表面における上述の置換金属元素の表面被覆率(以下、「置換金属被覆率」とも呼ぶ。)は、例えば、80.0%以上かつ99.0%以下である。置換金属被覆率は、好ましくは、83.1%以上かつ98.2%以下である。
置換金属被覆率は、次のように求める。まず、正極活物質板22の表面をX線光電分光法(XPS)により測定し、光電子スペクトル(以下、「表面スペクトル」とも呼ぶ。)を取得する。続いて、正極活物質板22の表面に対してスパッタエッチングを行い、当該表面から所定の深さの部位(すなわち、正極活物質板22の内部)を露出させる。上記スパッタエッチングは、例えば、数100V~数kVに加速されたアルゴン(Ar)イオンを用いて行われる。その後、正極活物質板22の上記内部に対してXPSによる測定を行い、光電子スペクトル(以下、「内部スペクトル」とも呼ぶ。)を取得する。
内部スペクトルを取得する部位の表面からの深さは、当該深さを変更しても内部スペクトルがほぼ変化しない十分な深さであり、例えば、12nm~30nmである。後述する実施例および比較例では、当該深さを18nmとした。なお、内部スペクトルは、例えば、正極活物質板22の内部の一の部位(すなわち、正極活物質板22の表面から一の深さの部位)におけるXPSの測定結果であってもよく、正極活物質板22の内部の複数の部位(すなわち、正極活物質板22の表面からの深さが異なる複数の部位)におけるXPSの測定結果の算術平均であってもよい。
図3Aおよび図3Bはそれぞれ、正極活物質板22の表面スペクトル91および内部スペクトル92を示す図である。図3Aおよび図3Bに示す例では、正極活物質板22の上記リチウム複合酸化物の主遷移金属元素はCoであり、置換金属元素はNbである。正極活物質板22に含まれるCoとNbとのmol比率は、例えば、1:0.002~1:0.01である。
図3Aおよび図3Bでは、表面スペクトル91および内部スペクトル92において、光電子エネルギー205eV~210eVの範囲に置換金属元素であるNbのピーク(軌道3d3/2)が存在する。以下、Nbのピーク(軌道3d3/2)を、単に「Nbのピーク」と記載する。Nbのピークは、上述の光電子エネルギーの範囲において、光電子スペクトルの強度が最大となる部位である。表面スペクトル91におけるNbのピークは、内部スペクトル92におけるNbのピークよりも小さい。これは、正極活物質板22の表面では、正極2表面を被覆する上記SEI膜により、Nbが部分的に被覆されているのに対し、正極活物質板22の内部では、NbがSEI膜等により被覆されていないためである。
次に、表面スペクトル91および内部スペクトル92におけるNbのピーク高さを用いて、置換金属被覆率(%)を求める。具体的には、まず、表面スペクトル91においてNbのピークを抽出し、横軸におけるピーク先端の両側(すなわち、光電子エネルギーがピーク先端よりも小さい側および大きい側のそれぞれ)において、表面スペクトル91の傾きである「Δ強度/Δ光電子エネルギー」が0になる点で、かつ、ピーク先端に最も近い点(以下、「基点」と呼ぶ。)を抽出する。続いて、Nbの上記ピーク先端の両側に位置する2つの基点を直線L(以下、「ベースラインL」と呼ぶ。)により結ぶ。図3Aでは、ベースラインL(バックグラウンドとも呼ぶ。)を二点鎖線にて描く。
次に、縦軸方向におけるNbの上記ピーク先端とベースラインLとの間の距離(すなわち、垂直距離)を求め、「ピーク高さH1su」とする。内部スペクトル92においても同様に、ピーク高さH1inを求める。そして、表面スペクトル91におけるNbのピーク高さH1suを内部スペクトル92におけるNbのピーク高さH1inで除算した値(%)を100%から減算することにより、置換金属被覆率(%)を求める。換言すれば、置換金属被覆率(%)=100(%)-(H1su/H1in)(%)である。
上記例では、正極活物質板22に含まれる置換金属元素はNbのみであるが、当該置換金属元素は、2種類以上の金属元素であってもよい。この場合、正極活物質板22における置換金属被覆率は、当該2種類以上の置換金属元素のそれぞれについて求められた置換金属被覆率の算術平均として求められる。
なお、表面スペクトル91および内部スペクトル92では、置換金属元素としてZrを使用していないにも関わらず、光電子エネルギー185eV近傍(図示省略)にZr(軌道3d)のピークが僅かに存在する場合がある。当該Zrは、正極活物質板22の製造工程(後述)において使用されるポットミルの玉石由来の微量なものであり、正極活物質に含まれる置換金属元素ではないため、置換金属被覆率の算出には使用しない。また、正極2において、正極活物質粒子をZr等により被覆したコーティング粒子を使用して正極活物質板22が形成される場合も、上記と同様に、表面スペクトル91および内部スペクトル92にZrのピークが出現する場合があるが、当該Zr等は正極活物質に含まれる置換金属元素ではないため、置換金属被覆率の算出には使用しない。
リチウム二次電池1では、置換金属被覆率が80.0%以上かつ99.0%以下とされることにより、正極2の表面における正極活物質の結晶性の経時的な悪化が抑制される。その結果、リチウム二次電池1の抵抗劣化が抑制される。リチウム二次電池1の抵抗劣化速度は、例えば0.200(Ω/√day)以下であり、好ましくは0.188(Ω/√day)以下であり、より好ましくは0.153(Ω/√day)以下であり、さらに好ましくは0.100(Ω/√day)以下である。
次に、図4Aおよび図4Bを参照しつつ、リチウム二次電池1の製造の流れの一例について説明する。まず、外装体6の第1シート部65および第2シート部66として、2枚のアルミラミネートフィルム(昭和電工パッケージング製、厚さ61μm、ポリプロピレンフィルム/アルミニウム箔/ナイロンフィルムの3層構造)が準備される。また、正極活物質板22が準備される。図4Aおよび図4Bに示す例でも、上記と同様に、正極活物質板22のリチウム複合酸化物の主遷移金属元素はCoであり、置換金属元素はNbである。図4Aに示す例では、正極活物質板22は、1枚の板状部材であるが、正極活物質板22が複数の活物質板要素を有する場合であっても、下記の製造方法は略同じである。
正極活物質板22は、例えば、いわゆるグリーンシートプロセスにより作製される。まず、リチウムの酸化物および主遷移金属元素(すなわち、Co)の酸化物の混合粉末が準備される。具体的には、Li/Coのモル比が1.02となるように秤量されたCo粉末(正同化学工業株式会社製)とLiCO粉末(本荘ケミカル株式会社製)とが混合された後、混合粉末が800℃で5時間保持される。上述のLi/Coのモル比は、例えば1.00~1.05の範囲で、適宜変更されてよい。混合粉末の保持温度および保持時間も、適宜変更されてよい。
続いて、上記混合粉末にNb粉末(三井金属鉱業株式会社製)が添加され、ポットミルにて、体積基準D50粒径が0.8μmの粒度分布となるように粉砕および解砕されることにより、原料粉末が得られる。当該粒度分布は、マイクロトラックMT3000II(マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定可能である。原料粉末に対するNb粉末の添加率は、0.03質量%である。なお、Nbの構成元素の原子量比より、添加したNbの約70%がNb元素に相当する。したがって、原料粉末におけるNbの含有率は0.021質量%となる。原料粉末の体積基準D50粒径は、例えば0.2μm~10μmの範囲で、適宜変更されてよい。原料粉末におけるNbの含有率も、例えば0.1質量%~2.0質量%の範囲で、適宜変更されてよい。
次に、上記原料粉末100重量部と、分散媒(2-エチルヘキサノール)32重量部と、バインダー(品番BLS、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)3.2重量部と、分散剤(品番マリアリムSC0505K、日油株式会社製)2.5重量部とが、3本ロールミルおよび自公転ミキサーにより混合される。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cP~10000cPに調整することにより、スラリーが調製される。当該スラリーにおける上記各種原料の組成および種類は、適宜変更されてよい。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計により測定可能である。
当該スラリーには、後述する焼成工程中における粒成長の促進および揮発分の補償の目的で、LiCoO以外のリチウム化合物(例えば、炭酸リチウム)が、0.5mol%~30mol%程度、過剰に添加されてもよい。また、当該スラリーには造孔材を添加しないのが望ましい。
そして、上記スラリーが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレード法にてシート状に成形されることにより、グリーンシートが形成される。乾燥後のグリーンシートの厚さは、例えば、約105μmである。当該グリーンシートの厚さは、例えば、焼成後の正極活物質板22の厚さが上述の15μm~200μmとなる範囲で、適宜変更されてよい。
次に、PETフィルムから剥がされたグリーンシートが、カッターにより所定の大きさ(例えば、68mm角)に切り出され、下部セッター(例えば、寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置される。また、下部セッター上のグリーンシートの上には、上部セッターが載置される。上部セッターおよび下部セッターは、セラミックス製であり、好ましくはジルコニア製またはマグネシア製である。セッターがマグネシア製であると、正極活物質板22の気孔が小さくなる傾向がある。上部セッターは多孔質構造やハニカム構造のものであってもよく、緻密質構造であってもよい。上部セッターが緻密質であると、正極活物質板22の気孔が小さくなり、気孔の数が多くなる傾向がある。
グリーンシートは、セッターで挟まれた状態で、例えば120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置される。このとき、アルミナ鞘は密閉されることなく、所定の大きさ(例えば、0.5mm)の隙間を空けて蓋がされる。
グリーンシートおよびセッターの積層物は、例えば、昇温速度100℃/hで900℃まで昇温されて15時間保持されることで焼成される。その後、室温まで降温させた焼成体がアルミナ鞘より取り出されることにより、焼結体板である正極活物質板22が得られる。正極活物質板22の厚さは、例えば、約100μmである。正極活物質板22およびセッター等の大きさは、適宜変更されてよい。正極活物質板22の焼成条件も、適宜変更されてよい。当該焼成工程は、2回に分けて行われてもよく、1回で行われてもよい。2回に分けて焼成する場合には、1回目の焼成温度が2回目の焼成温度よりも低いことが好ましい。なお、正極活物質板22が複数の活物質板要素を有する場合、上記焼結体板がレーザ加工機等により所定の大きさに切断されて複数の活物質板要素が形成される。
正極活物質板22における一次粒子の平均配向角度は、例えば16°である。当該平均配向角度は、次のようにして測定可能である。まず、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(IB-15000CP、日本電子株式会社製)により研磨し、得られた断面(すなわち、正極活物質板22の主面に略垂直な断面)を1000倍の視野(125μm×125μm)でEBSD測定して、EBSD像を得る。当該EBSD測定は、例えば、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(型式JSM-7800F、日本電子株式会社製)を用いて行われる。そして、得られたEBSD像において特定される全ての粒子について、一次粒子の(003)面とLiCoO焼結体板の主面とが成す角度(すなわち、(003)からの結晶方位の傾き)を傾斜角として求め、それらの角度の平均値を一次粒子の平均配向角度とする。
正極活物質板22の板厚は、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(IB-15000CP、日本電子株式会社製)により研磨し、得られた上述の断面をSEM観察(JSM6390LA、日本電子株式会社製)することにより測定可能である。なお、上述の乾燥後のグリーンシートの厚さも、同様にして測定可能である。
正極活物質板22の気孔率は、例えば30%である。当該気孔率は、次のようにして測定可能である。まず、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(IB-15000CP、日本電子株式会社製)により研磨し、得られた上述の断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)する。得られたSEM像を画像解析し、全ての気孔の面積を正極活物質板22の面積で除算し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)が算出される。
正極活物質板22の平均気孔径は、例えば0.8μmである。当該平均気孔径は、水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて、水銀圧入法により測定可能である。
上述の正極活物質板22の作製では、グリーンシートが上下のセッターにより挟まれるが、上部セッターがグリーンシート上に載置されるよりも前に、下部セッター上に載置されたグリーンシートが仮焼成されてもよい。当該仮焼成の温度および時間は、例えば、600℃~850℃および1時間~10時間である。また、当該仮焼成よりも前に、グリーンシートの脱脂が行われてもよい。なお、上部セッターは、仮焼成により形成された仮焼体上に設置される。
上述の正極活物質板22の作製では、Co粉末とLiCO粉末との混合粉末にNb粉末が添加されて粉砕されることにより原料粉末が得られるが、原料粉末は、他の方法により得られてもよい。例えば、まず、リチウムおよび主遷移金属元素の複合酸化物(すなわち、LiCoO)の粉末が準備される。具体的には、例えば、Co粉末とLiCO粉末とが混合され、500℃~900℃にて1時間~20時間焼成されることにより、LiCoO粉末が合成される。LiCoO粉末は、板状粒子(すなわち、LiCoO板状粒子)を含むのが好ましい。LiCoO粉末の体積基準D50粒径は、例えば、0.3μm~30μmである。
LiCoO粉末は、LiCoO粉末スラリーを用いて形成されたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法、フラックス法、水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法等、板状結晶を合成する様々な手法によって得ることができる。これらの手法によって得られたLiCoO粒子は、上記LiCoO粒子と同様に、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっているため、解砕によって劈開させることで、板状のLiCoO粒子を容易に得ることができる。
続いて、LiCoO粉末にNb粉末が0.1質量%~2.0質量%添加され、ポットミルにて、体積基準D50粒径が0.2μm~10μmの粒度分布となるように粉砕および解砕されることにより、原料粉末が得られる。原料粉末では、上記粉砕等により、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLiCoO粒子が得られる。当該LiCoO粒子の表面には、粉砕等よりも前に添加されたNbが、Nbとして、あるいは、他の状態で付着している。
なお、原料粉末には、LiCoO粉末に加えて、Co粒子等の他の粉末が混合されてもよい。この場合、板状のLiCoO粒子は、配向性を与えるためのテンプレート粒子として機能し、上記他の粉末(例えば、Co粒子)は、テンプレート粒子に沿って成長可能なマトリックス粒子として機能することが好ましい。テンプレート粒子およびマトリックス粒子の混合比は、100:0~3:97であることが好ましい。
Co粒子をマトリックス粒子として用いる場合、マトリックス粒子の体積基準D50粒径は、特に制限されないが、例えば0.1μm~1.0μmであり、テンプレート粒子の体積基準D50粒径よりも小さいことが好ましい。Co粒子は、Co(OH)原料を500℃~800℃で1時間~10時間熱処理することによっても得ることができる。また、マトリックス粒子として、Co粒子以外に、Co(OH)粒子が用いられてもよく、LiCoO粒子が用いられてもよい。
なお、マトリックス粒子としてLiCoO粒子が用いられる場合、および、マトリックス粒子が用いられず、テンプレート粒子(LiCoO粒子)のみが用いられる場合、焼成により、大判で(例えば、90mm角)かつ平坦なLiCoO焼結体板を得ることができる。
正極活物質板22が準備されると、正極集電体21(例えば、厚さ9mmのアルミニウム箔)上に導電性接合層23(図1参照)が形成される。導電性接合層23は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)をN-メチルピロリドンに溶解させた溶液にアセチレンブラックを混合したスラリー2μL(マイクロリットル)を、正極集電体21上に滴下することにより形成される。
続いて、導電性接合層23上に正極活物質板22が載せられて乾燥される。正極活物質板22は、導電性接合層23を介して正極集電体21に接合される。その後、図4Aに示すように、正極集電体21および正極活物質板22の複合体が、第1シート部65上に積層され、正極接合層63(図1参照)を介して第1シート部65に接合されることにより、正極組立品20が形成される。なお、正極集電体21には、1つの端子7の一方の端部が溶接により予め固定されている。
一方、負極集電体31(例えば、厚さ10μmの銅箔)上には、カーボン層である負極活物質層32(例えば、厚さ130μm)が塗工される。負極活物質層32は、活物質としてのグラファイトと、バインダとしてのPVDFとの混合物を含むカーボン塗工膜である。負極集電体31の厚さおよび材質、並びに、負極活物質層32の厚さおよび原料等は、適宜変更されてよい。
続いて、負極集電体31および負極活物質層32の複合体が、第2シート部66上に積層され、負極接合層64(図1参照)を介して第2シート部66に接合されることにより、負極組立品30が形成される。なお、負極集電体31には、1つの端子7の一方の端部が溶接により予め固定されている。
セパレータ4としては、例えば、ポリオレフィン系多孔膜(JNC株式会社製、S115)が準備される。そして、正極組立品20、セパレータ4および負極組立品30が、正極活物質板22および負極活物質層32がセパレータ4と対向するように順に積層され、中間積層体10が形成される。中間積層体10では、正極2、セパレータ4および負極3の積層体(以下、「電池要素」とも呼ぶ。)の上下両面が、外装体6(すなわち、第1シート部65および第2シート部66)により覆われており、当該電池要素の周囲に第1シート部65および第2シート部66が延在している。当該電池要素の上下方向の厚さは、例えば、0.33mmである。平面視における電池要素の形状は、例えば、2.3cm×3.2cmの略矩形である。
続いて、略矩形状の中間積層体10の4つの辺のうち3つの辺が、熱融着接合により封止される。図4Aに示す例では、図中の上側の1つの辺を除く3つの辺が封止される。当該3つの辺には、2つの端子7が突出する1つの辺が含まれている。当該3つの辺の封止では、例えば、封止幅が2mmになるように調整された当て冶具が用いられ、中間積層体10の外周部分が、200℃、1.5MPa(メガパスカル)で10秒間加熱および加圧される。これにより、外装体6の第1シート部65と第2シート部66とが熱融着する。当該3つの辺の封止後、中間積層体10は、真空乾燥器81に収容され、水分の除去および接着剤(すなわち、正極接合層63、負極接合層64および導電性接合層23)の乾燥が行われる。
次に、図4Bに示されるように、中間積層体10がグローブボックス82内に収容される。そして、中間積層体10の未封止の1つの辺において、第1シート部65および第2シート部66の間に注入器具83が挿入され、注入器具83を介して電解液5(図1参照)が中間積層体10内に注入される。電解液5は、例えば、ECおよびEMCを体積比3:7で含む混合溶媒に、電解質であるLiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに、添加剤としてLiDFOBおよびDTDをそれぞれ、1.0質量%となるように添加した液体である。電解液5の溶媒および電解質の種類等は、上述のように、様々に変更されてよい。また、添加剤であるLiDFOBおよびDTDのそれぞれの添加量も、適宜変更されてよい。
電解液5の注入が終了すると、グローブボックス82内の減圧雰囲気(例えば、絶対圧5kPa)下において、上記未封止の1つの辺が、簡易シーラにより仮封止(すなわち、減圧封止)される。続いて、中間積層体10に対して初期充電が施され、所定期間(例えば、7日間)のエージングが行われる。エージングが終了すると、第1シート部65および第2シート部66のうち、仮封止された1つの辺の外縁近傍の部位(すなわち、上記電池要素と重ならない末端部分)が切除され、エージングにより発生した水分等を含むガスが除去される(すなわち、ガス抜きが行われる)。
ガス抜きが終了すると、グローブボックス82内の減圧雰囲気(例えば、絶対圧5kPa)下において、上述の切除により形成された辺の熱融着接合による封止が行われる。当該封止では、例えば、上述の3つの辺の封止と同様に、封止幅が2mmになるように調整された当て冶具が用いられ、第1シート部65および第2シート部66が、200℃、1.5MPaで10秒間加熱および加圧される。これにより、外装体6の第1シート部65と第2シート部66とが熱融着され、リチウム二次電池1が形成される。その後、外装体6の外周部における余分な部位が切除されて、リチウム二次電池1の形状が整えられる。例えば、リチウム二次電池1の平面視における形状は、38mm×27mmの長方形であり、厚さは0.45mm以下であり、容量は30mAhである。
上述のように、正極活物質板22の置換金属元素はNbには限定されず、例えば、Tiであってもよい。以下、置換金属元素がTiである場合の正極活物質板22の製造方法の一例について説明する。まず、置換金属元素がNbの場合と同様に、リチウムの酸化物および主遷移金属元素(すなわち、Co)の酸化物の混合粉末が準備され、800℃で5時間保持される。
続いて、上記混合粉末にTiO粉末(石原産業株式会社製)が添加され、ポットミルにて、体積基準D50粒径が0.8μmの粒度分布となるように粉砕および解砕されることにより、原料粉末が得られる。当該粒度分布は、マイクロトラックMT3000II(マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定可能である。原料粉末に対するTiO粉末の添加率は、0。4質量%である。なお、TiOの構成元素の原子量比より、添加したTiOの約60%がTi元素に相当する。したがって、原料粉末におけるTiの含有率は0.24質量%となる。原料粉末の体積基準D50粒径は、例えば0.2μm~10μmの範囲で、適宜変更されてよい。原料粉末におけるTiの含有率も、例えば0.1質量%~2.0質量%の範囲で、適宜変更されてよい。
次に、上記原料粉末100重量部と、分散媒(2-エチルヘキサノール)32重量部と、バインダー(品番BLS、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)3.2重量部と、分散剤(品番マリアリムSC0505K、日油株式会社製)2.5重量部とが、3本ロールミルおよび自公転ミキサーにより混合される。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cP~10000cPに調整することにより、スラリーが調製される。当該スラリーにおける上記各種原料の組成および種類は、適宜変更されてよい。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計により測定可能である。
当該スラリーには、置換金属元素がNbの場合と同様に、焼成工程中における粒成長の促進および揮発分の補償の目的で、LiCoO以外のリチウム化合物(例えば、炭酸リチウム)が、0.5mol%~30mol%程度、過剰に添加されてもよい。また、当該スラリーには造孔材を添加しないのが望ましい。
以下、置換金属元素がNbの場合と同様の手法および作製条件(例えば、焼成条件)にて、置換金属元素としてTiを含む正極活物質板22が作製される。具体的には、まず、上記スラリーが、PETフィルム上にドクターブレード法にてシート状に成形されることにより、グリーンシートが形成される。続いて、PETフィルムから剥がされたグリーンシートが、カッターにより所定の大きさに切り出される。そして、当該グリーンシートが焼成されることにより、正極活物質板22が得られる。
また、リチウム二次電池1では、正極2は、必ずしも板状セラミック焼結体である正極活物質板22を有する焼結板電極である必要はなく、負極3のような塗工電極であってもよい。この場合、正極2は、上述の正極集電体21と、正極集電体21上に塗工される正極活物質層とを備える。当該正極活物質層は、正極活物質である上記リチウム複合酸化物と、樹脂を主成分とするバインダとを含む。当該リチウム複合酸化物は、上述のように、リチウムおよび主遷移金属元素(例えば、Co、Ni、Mn)の複合酸化物において、一部が置換金属元素(例えば、Nb、Ti)に置換されたものである。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはこれらの混合物である。
以下、正極2が塗工電極である場合の正極2の製造方法の一例について説明する。以下の説明では、主遷移金属元素および置換金属元素がそれぞれCoおよびNbである場合について説明する。まず、正極2が正極活物質板22を備える場合と同様に、リチウムの酸化物および主遷移金属元素(すなわち、Co)の酸化物の混合粉末が準備される。当該混合粉末は、900℃で10時間保持される。
続いて、正極2が正極活物質板22を備える場合と同様に、上記混合粉末にNb粉末(三井金属鉱業株式会社製)が添加され、ポットミルにて、体積基準D50粒径が0.8μmの粒度分布となるように粉砕および解砕されることにより、原料粉末が得られる。原料粉末に対するNb粉末の添加率は0.03質量%であり、原料粉末におけるNbの含有率は0.021質量%である。原料粉末の体積基準D50粒径は、例えば0.2μm~10μmの範囲で、適宜変更されてよい。原料粉末におけるNbの含有率も、例えば0.1質量%~2.0質量%の範囲で、適宜変更されてよい。
次に、上記原料粉末91質量%と、アセチレンブラック5質量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4質量%と、N-メチルピロリドン(NMP)溶液とが混合されてスラリーが調整される。そして、当該スラリーが、正極集電体21(例えば、厚さ10mmのアルミニウム箔)上に塗布されて乾燥される。その後、乾燥した塗布層がプレスされることにより、塗工電極である正極2が作製される。
次に、表1を参照しつつ、リチウム二次電池1の置換金属被覆率と電池特性との関係について説明する。表1中の実施例1~4および比較例1のリチウム二次電池1は、上記と略同様の製造方法により製造した。実施例1~4では、電解液5の添加剤は、上述のようにLiDFOBおよびDTDであるのに対し、比較例1では、LiDFOBおよびフルオロエチレンカーボネート(FEC)が、電解液5の添加剤として用いられている。
Figure 0007411394000001
表1中の置換金属被覆率は、上述のように、XPSにより取得した正極活物質板22の表面スペクトル91および内部スペクトル92(図3Aおよび図3B参照)を利用して求めた。このとき、正極活物質板22のリチウム二次電池1からの取り出しは、グローブボックス内にて行い、正極活物質板22のXPS評価は、トランスファーベッセルを使用することで大気非暴露環境下にて実施した。XPS評価では、X線光電子分光装置としてアルバック・ファイ株式会社製のESCA-5600ciを使用した。
表1中の抵抗劣化速度は、次のように求めた。まず、リチウム二次電池1に対して、充放電装置(TOSCAT-3000、東洋システム株式会社製)を用いて電池容量測定を実施し、その後、電池電圧が4.2Vになるように充電調整を行った。そして、Bio-Logic社製のVMP-300を用いて、交流インピーダンス法により内部抵抗を測定し、得られたCole-Coleプロットから10Hzでの抵抗値(Ω・cm)を読み取った。当該内部抵抗の測定は、振幅2mV、測定周波数範囲250kHz~200mHzで行った。
続いて、当該リチウム二次電池1を、温度45℃で一定になるように設定された恒温槽(LHU―114、エスペック株式会社製)の中で所定期間保管した。その後、恒温槽からリチウム二次電池1を取り出し、恒温槽への保管前に行った方法と同じ方法にて、上述の電池容量測定、充電調整および内部抵抗測定を行った。
その後、恒温槽での保管、電池容量測定、充電調整および内部抵抗測定を繰り返すことにより、リチウム二次電池1の内部抵抗の変化(すなわち、劣化推移)を取得した。そして、取得された内部抵抗の変化を、横軸を「√day(すなわち、日数の平方根)」、縦軸を内部抵抗値(Ω)としてプロットし、グラフの傾きを抵抗劣化速度(Ω/√day)として取得した。さらに、初回に測定された内部抵抗値を初期抵抗(Ω)として取得した。
表1に示すように、実施例1~3および比較例1では、正極2は正極活物質板22を有する焼結板電極であり、実施例4では、正極2は塗工電極である。また、実施例1~2および比較例1では、正極活物質板22の置換金属元素はNbであり、実施例3では、正極活物質板22の置換金属元素はTiである。
比較例1では、上述のように、電解液5の添加剤は、LiDFOBおよびFECである。電解液5におけるLiDFOBおよびFECの含有率(質量%)の比は、LiDFOB:FEC=1:1である。置換金属被覆率は、16.0%と低かった。初期抵抗は、0.76Ωであった。抵抗劣化速度は、0.227(Ω/√day)と大きかった。
実施例1~2では、電解液5の組成が変更されている。具体的には、電解液5におけるLiDFOBおよびDTDの含有率(質量%)の比は、実施例1~2において、LiDFOB:DTD=1:0.1~1:1である。置換金属被覆率は、83.1%~93.2%であり、比較例1に比べて高かった。初期抵抗は、0.85Ω~0.89Ωであった。抵抗劣化速度は、0.153(Ω/√day)~0.175(Ω/√day)であり、比較例1に比べて小さかった。
実施例3では、電解液5におけるLiDFOBおよびDTDの含有率(質量%)の比は、LiDFOB:DTD=1:1である。置換金属被覆率は、98.2%であり、比較例1に比べて高かった。初期抵抗は、0.80Ωであった。抵抗劣化速度は、0.100(Ω/√day)であり、比較例1に比べて小さかった。
実施例4では、電解液5におけるLiDFOBおよびDTDの含有率(質量%)の比は、LiDFOB:DTD=1:1である。置換金属被覆率は、90.1%であり、比較例1に比べて高かった。初期抵抗は、1.72Ωであった。抵抗劣化速度は、0.188(Ω/√day)であり、比較例1に比べて小さかった。
以上に説明したように、リチウム二次電池1は、正極2と、セパレータ4と、負極3と、電解液5と、外装体6とを備える。正極2は、リチウムおよび遷移金属元素の複合酸化物において一部が他の金属元素である置換金属元素に置換されたリチウム複合酸化物を含む。セパレータ4は、所定の重ね合わせ方向において正極2上に配置される。負極3は、当該重ね合わせ方向において、セパレータ4の正極2とは反対側に配置される。電解液5は、正極2、負極3およびセパレータ4に含浸される。外装体6は、上記重ね合わせ方向の両側から、正極2および負極3を被覆する。外装体6は、正極2、セパレータ4、負極3および電解液5を内部に収容する。
電解液5は、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)および1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド(DTD)を含む。また、正極2の表面における置換金属元素の表面被覆率(すなわち、置換金属被覆率)は、80.0%以上かつ99.0%以下である。
このように、リチウム二次電池1では、電解液5にLiDFOBおよびDTDを添加することにより、正極2の表面に被膜が形成され、当該表面が高い被覆率にて被覆される。これにより、実施例1~4に例示するように、リチウム二次電池1の抵抗劣化速度を小さくすることができる。換言すれば、リチウム二次電池1では、抵抗劣化(すなわち、抵抗の経時的増大)を抑制することができる。したがって、リチウム二次電池1は、薄型のデバイス、すなわち、シート状デバイスまたは可撓性を有するデバイス(例えば、スマートカード)における電力供給源に特に適している。
リチウム二次電池1の長寿命化の観点から、リチウム二次電池1の抵抗劣化速度は、0.200(Ω/√day)以下まで小さくされることが好ましい。
上述のように、正極2は、上記リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体である正極活物質板22を備えることが好ましい。正極活物質板22は、塗工電極の正極活物質層とは異なり、バインダを実質的に含んでいない。したがって、正極活物質の活性表面の略全体が電解液5と接触しているため、特に活性が高い置換金属元素の露出部は劣化しやすい傾向を有する。リチウム二次電池1では、上述のように、正極2の表面が高い被覆率にて被覆されるため、リチウム二次電池1の構造は、置換金属元素が比較的表面に露出しやすい正極活物質板22を備えるリチウム二次電池に特に適している。また、実施例1~4に例示するように、正極2が正極活物質板22を備える焼結板電極とすることにより、正極2が塗工電極である場合(実施例5)に比べて、初期抵抗を小さくすることもできる。
上述のリチウム二次電池1では、様々な変更が可能である。
例えば、正極2の正極活物質板22の構造は、様々に変更されてよい。例えば、正極活物質板22において、層状岩塩構造を有する複数の一次粒子の平均傾斜角は、30°よりも大きくてもよく、0°であってもよい。あるいは、当該複数の一次粒子の構造は、層状岩塩構造以外の構造であってもよい。
正極活物質板22の作製は、必ずしも上記グリーンシートプロセスによる必要はなく、他の様々な方法により行われてもよい。例えば、リチウムおよび主遷移金属元素の複合酸化物の一次粒子表面に対して、ゾルゲル法を利用して置換金属元素をコーティング(ゾルゲルコーティング)した後に焼成することにより、上述の正極活物質板22が作製されてもよい。
リチウム二次電池1の抵抗劣化速度は0.200(Ω/√day)よりも大きくてもよい。
リチウム二次電池1では、塗工電極である負極3に代えて、図1に示す正極2と略同様の構造を有する負極(すなわち、焼結板電極)が設けられてもよい。具体的には、当該負極は、負極集電体と、負極活物質板と、導電性接合層とを備える。負極集電体は、導電性を有するシート状の部材である。負極活物質板は、リチウム複合酸化物(例えば、リチウムチタン酸化物(LTO))を含む比較的薄い板状セラミック焼結体である。負極活物質板は、正極2の導電性接合層23と略同様の上記導電性接合層を介して負極集電体の下面に接合される。負極活物質板は、正極活物質板22と同様に、1枚の板状部材であってもよく、複数の板状部材に分割されていてもよい。
リチウム二次電池1は、スマートカード以外の可撓性を有するデバイス(例えば、カード型デバイス)、または、シート状デバイス(例えば、衣服等に設けられたウェアラブルデバイス、もしくは、身体貼付型デバイス)における電力供給源として利用されてもよい。また、リチウム二次電池1は、上述のデバイス以外の様々な対象物(例えば、IoTモジュール)の電力供給源として利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
本発明のリチウム二次電池は、例えば、演算処理機能を有するスマートカードにおける電力供給源等として、リチウム二次電池が利用される様々な分野で利用可能である。
1 リチウム二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電解液
6 外装体
22 正極活物質板

Claims (3)

  1. リチウム二次電池であって、
    リチウムおよび遷移金属元素の複合酸化物において一部が他の金属元素である置換金属元素に置換されたリチウム複合酸化物を含む正極と、
    所定の重ね合わせ方向において前記正極上に配置されるセパレータと、
    前記重ね合わせ方向において前記セパレータの前記正極とは反対側に配置される負極と、
    前記正極、前記負極および前記セパレータに含浸される電解液と、
    前記重ね合わせ方向の両側から前記正極および前記負極を被覆し、前記正極、前記セパレータ、前記負極および前記電解液を内部に収容する外装体と、
    を備え、
    前記負極に含まれる負極活物質は天然黒鉛であり、
    前記電解液は、リチウムジフルオロオキサレートボレートおよび1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシドを含み、
    前記正極の表面における前記置換金属元素の表面被覆率は80.0%以上かつ99.0%以下であることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 請求項1に記載のリチウム二次電池であって、
    前記正極は、前記リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体である正極活物質板を備えることを特徴とするリチウム二次電池。
  3. 請求項1または2に記載のリチウム二次電池であって、
    抵抗劣化速度は0.200(Ω/√day)以下であることを特徴とするリチウム二次電池。
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