JP2021082420A - 負極活物質、負極、電池セル - Google Patents

負極活物質、負極、電池セル Download PDF

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Abstract

【課題】LiαFeNb11O29よりも平均充電電位が低く、且つ、可逆容量が向上している負極活物質、これを用いた負極、および、これを備えた電池セルを提供する。【解決手段】リチウムイオンの吸蔵および放出が可能であり、下記式(I);Fex−aM1aNb12−x−bM2bO29−δ[但し、式(I)中、M1およびM2は、それぞれ独立に、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Mn、Al、Ti、V、Zr、Taからなる群より選択される一種以上の元素を表し、x、a、bおよびδは、0.5≦x≦2.0、0≦a≦x、0≦b≦12−x、0<a+b、−10≦δ≦10を満たす数である。]で表され、平均充電電位がリチウム金属基準で1.65V未満である負極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、負極活物質、負極、電池セルに関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、携帯用パソコン等の移動体用電源や、電気自動車、ハイブリッド自動車等の駆動電源や、電力貯蔵用の定置電源をはじめ、各種の用途で利用されている。近年、リチウムイオン二次電池の用途は、大型製品にも拡大しており、エネルギ密度、サイクル特性等の向上の要求が、従来よりも一層高まっている。
従来、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、炭素材料が広く用いられている。一般的な負極活物質である黒鉛は、理論容量が約372mAh/gと高く、酸化物系の負極活物質として知られるチタン酸リチウム(LiTi12)を大きく上回っている。そのため、天然黒鉛、人造黒鉛、これらの粒子形態を改良した負極材等が、負極の作製に用いられている。
炭素材料は、チタン酸リチウム等と比較して充放電電位が低い電極材料である。炭素材料を用いた負極は、充電時の電位が約0.1V(vs Li/Li)付近まで下がるため、電解液の還元分解が原因で、表面にSEI(Solid Electrolyte Interface)膜を形成し得る。SEI膜は、保存時の容量低下の要因となる他、負極の表面に過剰に形成されると、負極を高抵抗化させたり、サイクル特性を悪化させたりすることが知られている。
従来、このような負極の問題に対し、より充放電電位が高い電極材料の使用も検討されている。SEI膜は、約0.7V(vs Li/Li)付近で生成することが知られている。酸化物系の負極活物質として一般的なチタン酸リチウムは、これよりも高い充電電位を示すが、理論容量が低い欠点を持つ。そのため、SEI膜が生成しない程度に充電電位が高く、高容量も得られる負極活物質について、開発が進められている。
例えば、特許文献1には、以下の内容が開示されている。「一般式LiM1M2(0≦x≦5)で表される斜方晶系酸化物を含むことを特徴とする電池用活物質:ここで、前記M1はFeおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記M2はNb、TaおよびVからなる群より選ばれる少なくとも1種である。」(請求項1参照)
また、特許文献2には、以下の内容が開示されている。「少なくとも1つの三価金属を含み、2より大きいNb/Tiのモル比を有する、リチウムフリーの混合チタンニオブ酸化物であって、以下の式(I)の材料及び式(II)の材料を含む群から選択されることを特徴とするリチウムフリーの混合チタンニオブ酸化物:MTi1−2xNb2+x7±δ(I):0<x≦0.20、−0.3≦δ≦0.3、MTi2−2xNb10+x29±δ(II):0<x≦0.40、−0.3≦δ≦0.3。」(請求項1参照)
また、近年、LiαFeNb1129(α=0〜23)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物も報告されている。このリチウム遷移金属複合酸化物は、酸素欠損型のシア構造(shear structure)を持つNb1229のニオブイオンが鉄イオンで置換された構造を有している。このリチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムイオンの拡散移動、吸蔵および放出を可能とし、1.6V(vs Li/Li)前後の充放電電位を示すため、SEI膜を形成しない負極活物質としても期待されている。
しかし、LiαFeNb1129で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、充放電時の可逆容量が低い点に課題を抱えている。LiαFeNb1129の理論容量は、最大で23個のリチウムイオンが吸蔵・放出されるとして、約380mAh/gと計算されている。その中でLiαFeNb1129の可逆容量を向上させるため、粒子形態や焼成条件の検討が行われてきた。しかし、現在の可逆容量は、非特許文献1に記載されるように、270mAh/g程度に留まっている。
特開2014−112536号公報 特開2016−510304号公報
Xiaoming Lou et al., ChemElectroChem (2017), Vol.4, p.3171-3180
LiαFeNb1129で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、黒鉛よりも理論容量や充電電位が高く、SEI膜を形成しないため、サイクル特性、電池寿命、エネルギ密度等の向上に有効と考えられる。しかし、この種のリチウム遷移金属複合酸化物は、充放電時の可逆容量が依然として低いため、更なる向上が求められている。負極活物質の充電電位は、SEI膜が形成されない程度に高いことが好ましいが、高出力や高エネルギ密度を得る観点からは、低電位に抑制されていることが望まれる。
そこで、本発明は、LiαFeNb1129よりも平均充電電位が低く、且つ、可逆容量が向上している負極活物質、これを用いた負極、および、これを備えた電池セルを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための本発明の特徴は、例えば、以下のとおりである。
リチウムイオンの吸蔵および放出が可能であり、下記式(I);
Fex−aM1Nb12−x−bM229−δ・・・(I)
[但し、式(I)中、M1およびM2は、それぞれ独立に、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Mn、Al、Ti、V、Zr、Taからなる群より選択される一種以上の元素を表し、x、a、bおよびδは、0.5≦x≦2.0、0≦a≦x、0≦b≦12−x、0<a+b、−10≦δ≦10を満たす数である。]で表され、
平均充電電位がリチウム金属基準で1.65V未満である負極活物質。
本発明によると、LiαFeNb1129よりも平均充電電位が低く、且つ、可逆容量が向上している負極活物質、これを用いた負極、および、これを備えた電池セルを提供することができる。前記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
電池セルの断面図である。 電池セルが備える電極体の斜視図である。 負極活物質のX線回折スペクトルである。 負極活物質のX線回折スペクトルである。 負極活物質のX線回折スペクトルである。 負極活物質のX線回折スペクトルである。 負極の平均充電電位と単極セルの可逆容量との関係を示す図である。 負極活物質を用いた単極セルの電池電圧−充電容量曲線である。 負極活物質を用いた単極セルの電池電圧−充電容量曲線である。 負極活物質を用いた単極セルの電池電圧−充電容量曲線である。 負極活物質を用いた単極セルの電池電圧−充電容量曲線である。 負極活物質を用いた単極セルの電池電圧−SOC曲線である。
以下、図面等を用いて、本発明の一実施形態に係る負極活物質、これを用いた負極、および、これを備えた電池セルについて説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものである。本発明は、以下の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。本発明には、実施形態とは異なる様々な変形例が含まれる。実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることが可能である。また、実施形態の構成の一部について他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値とする意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値や下限値は、段階的に記載されている他の上限値や他の下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値や下限値は、実施例中に示されている数値に置き換えてもよい。
本明細書では、二次電池としてリチウムイオン二次電池を例にとって、実施形態についての説明を行う。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンの電極への吸蔵と電極からの放出によって電極間に電位差を生じさせ、それによる電気エネルギを貯蔵する、或いは、利用可能とする電気化学デバイスである。
本発明の対象としては、リチウムイオン二次電池とは別の名称で呼ばれる二次電池、例えば、リチウムイオン電池、非水電解質二次電池、非水電解液二次電池等も含まれる。本発明の技術的思想は、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池、亜鉛二次電池、アルミニウムイオン二次電池等に対しても適用することができる。
以下で例示している材料群から材料を選択して用いる場合、本明細書に開示されている内容と矛盾しない範囲で、その材料を単独で用いてもよく、複数の材料を組み合わせて用いてもよい。また、本明細書に開示されている内容と矛盾しない範囲で、以下で例示している材料群以外の材料を用いてもよい。
<電池セル>
はじめに、本実施形態に係る負極活物質を含む負極を備える電池セルの一例について説明する。
図1は、電池セルの断面図である。図2は、電池セルが備える電極体の斜視図である。
図1に示すように、電池セル1000は、正極100と、負極200と、セパレータ300と、外装体500と、を備えている。図1には、本実施形態に係る負極活物質を負極200に用いた電池セルの一例として、積層型のラミネート電池を示している。しかしながら、電池セルの形状は、筒形、角形、ボタン形等のいずれであってもよい。
図1および図2に示すように、正極100、セパレータ300および負極200は、この順に積層されて電極体400を構成する。外装体500の内部には、複数の電極体400が積層されて内蔵される。電極体400同士は、隣接する正極100と負極200との間にセパレータ300を挟んで積層されている。
正極100は、正極合剤層110と、正極集電体120と、正極タブ130と、を有している。図示した正極100において、正極合剤層110は、平板状の正極集電体120の両面に形成されている。正極タブ130は、正極集電体120の端部に、平板状の突片として設けられている。図2に示すように、正極タブ130は、電極体400を形成した状態で負極タブ230と重ならないように、正極集電体120の一辺の中央よりも片側寄りに設けられている。
負極200は、負極合剤層210と、負極集電体220と、負極タブ230と、を有している。図示した負極200において、負極合剤層210は、平板状の負極集電体220の両面に形成されている。負極タブ230は、負極集電体220の端部に、平板状の突片として設けられている。図2に示すように、負極タブ230は、電極体400を形成した状態で正極タブ130と重ならないように、負極集電体220の一辺の中央よりも片側寄りに設けられている。
正極集電体120や負極集電体220、正極タブ130や負極タブ230は、スポット溶接、超音波接合等の各種の方法で互いに接合することができる。電極体400同士は、電気的に並列に接続してもよいし、一部又は全部を電気的に直列に接続してもよい。正極タブ130および負極タブ230は、外装体500の外側に露出する正極端子や負極端子250と電気的に接続することができる。
外装体500は、電極体400が収容される内空に電解液が注入される。外装体500に収容された電極体400は、電解液に浸漬された状態で保持される。電極体400や電解液は、外装体500等によって封止されて、水分、空気等との接触が阻止される。但し、電極間に固体電解質を用いる場合には、電解液を注入することなく、電極体400を封止することができる。
図1に示す積層型のラミネート電池は、外装体500として、袋状のラミネート容器を備えている。ラミネート容器は、多層フィルムをヒートシール、接着剤等で貼合して形成することができる。多層フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、アルミニウム箔等の各種のフィルムを積層して形成することができる。
外装体500は、筒形電池、角形電池、ボタン形電池等の場合、金属缶として設けることもできる。金属缶は、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等を用いて形成することができる。図示した電池セル1000は、電極体400を積み重ねた積層型とされているが、電池セル1000は、帯状の電極体を螺旋状に巻回した巻回型としてもよい。
<正極>
正極100は、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な正極活物質を正極合剤層110に含有する。正極合剤層110は、正極合剤層110の導電性を向上させるための導電剤、正極活物質や導電剤を結着させるためのバインダ等を含有してもよい。また、正極合剤層110は、固体電解質を含有してもよい。正極合剤層110にイオン伝導率が高い固体電解質を用いると、正極中におけるイオン伝導性を向上させることができる。
正極活物質は、LiCo系複合酸化物、LiNi系複合酸化物、LiMn系複合酸化物、LiCoNiMn系複合酸化物、LiFeP系複合酸化物、LiMnP系複合酸化物等の材料群から選択される。正極活物質の具体例としては、LiCoO、Li(Co,Mn)O、Li(Ni,Mn)O、LiMn、LiMn12、Li(Co,Ni,Mn)O、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiMnVO、LiFeBO、LiMnBO、LiFeSiO、LiCoSiO、LiMnSiO等が挙げられる。正極活物質としては、これらの遷移金属を異種元素で置換した酸化物や、化学量論比とは異なる酸化物を用いることもできる。異種元素としては、例えば、Co、Ni、Mn、Fe、Cr、Zn、Ta、Al、Mg、Cu、Cd、Mo、Nb、W、Ru等が挙げられる。
正極合剤層110の導電剤は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、導電性高分子等の材料群から選択される。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック等が挙げられる。カーボンナノファイバとしては、ピッチ系カーボンナノファイバ、PAN系カーボンナノファイバ等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリアセン等が挙げられる。
正極合剤層110を形成するバインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の材料群から選択される。
正極集電体120としては、金属箔、穿孔箔等を用いることができる。正極集電体120は、アルミニウム、アルミニウム合金等の材料群から選択される。正極集電体120の厚さは、機械的強度とエネルギ密度とを両立する観点からは、好ましくは10nm〜1mm、より好ましくは1〜100μmとする。正極タブ130は、正極集電体120と同様の材料で形成することができる。
<負極>
負極200は、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な負極活物質を負極合剤層210に含有する。負極合剤層210は、負極合剤層210の導電性を向上させるための導電剤、負極活物質や導電剤を結着させるためのバインダ等を含有してもよい。また、負極合剤層210は、固体電解質を含有してもよい。負極合剤層210にイオン伝導率が高い固体電解質を用いると、負極中におけるイオン伝導性を向上させることができる。
負極活物質としては、後記するように、FeNb12−x29で表される遷移金属複合酸化物を基礎とし、この遷移金属複合酸化物中の鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上を異種元素置換した複合酸化物が用いられる。
負極合剤層210の導電剤は、正極合剤層110と同様に、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、導電性高分子等の材料群から選択される。
負極合剤層210の導電剤としては、負極活物質の粒子径と同等か、負極活物質の粒子径よりも小さいものが好ましく、カーボンブラックがより好ましく、ケッチェンブラックが特に好ましい。ケッチェンブラックは、一次粒子の粒子径が小さいため、負極活物質との親和性が良好である。そのため、ケッチェンブラックによると、ネットワーク状の導電パスが形成され易くなり、負極合剤層210の電子伝導率が高くなる。
負極合剤層210を形成するバインダは、スチレン−ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等の材料群から選択される。バインダとしては、カルボキシメチルセルロース等の増粘性の樹脂を併用してもよい。
負極集電体220としては、金属箔、穿孔箔等を用いることができる。負極集電体220は、銅、銅合金等の材料群から選択される。負極集電体220の厚さは、機械的強度とエネルギ密度とを両立する観点からは、好ましくは10nm〜1mm、より好ましくは1〜100μmとする。負極タブ230は、負極集電体220と同様の材料で形成することができる。
<合剤層形成法>
正極合剤層110や負極合剤層210は、活物質と、導電剤やバインダを溶媒中で混練して合剤を調製し、調製した合剤を集電体に塗工し、塗工した合剤を乾燥させることによって形成することができる。集電体上に形成した合剤層は、活物質が所定の密度となるように、ロールプレス等で加圧成形する。合剤層は、塗工から乾燥までの工程を繰り返して、集電体上に積層することもできる。合剤層を形成した電極には、打ち抜き加工、切断加工等を施すことができる。
合剤の混練は、プラネタリーミキサ、ディスパーミキサ、バタフライミキサ、二軸混練機、ボールミル、ビーズミル等の各種の装置で行うことができる。活物質等を分散させる溶媒としては、電極に応じて、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水、γ−ブチロラクトン等の各種の溶媒を用いることができる。合剤を塗工する方法としては、ロールコート法、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等の各種の方法を用いることができる。
<セパレータ>
セパレータ300は、電極間の短絡を防止する一方で、正極100と負極200との間でイオンを伝導させる媒体として働く。セパレータ300は、微小な空孔を有する絶縁性の微多孔膜、電解液を粒子に担持させて得られる不揮発性電解質、および、固体電解質のうち、いずれか一種または複数種の組み合わせを用いて形成できる。セパレータ300の厚さは、電子の絶縁性とエネルギ密度とを両立する観点からは、好ましくは数nm〜数mmとする。
微多孔膜は、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ガラス等の材料群から選択される。微多孔膜としては、樹脂等を成膜して得られる多孔質膜の他、多孔質シート、不織布等を用いることもできる。
不揮発性電解質としては、電解質塩を溶解した電解液と、その電解液を担持させるための担持粒子とによって構成される半固体の電解質を用いることができる。不揮発性電解質は、担持粒子を結着させるためのバインダを含有してもよい。不揮発性電解質によると、電解液が担持粒子の粒子間の細孔中に保持されてイオン伝導を媒介する。電解液の揮発や流動が抑制されるため、電解液の液漏れや組成変化が発生し難い電池が得られる。
担持粒子としては、絶縁性が高く電解液に不溶な各種の粒子を用いることができる。担持粒子の具体例としては、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)等の金属酸化物の無機粒子が挙げられる。アルミナとしては、γ−アルミナが好ましく用いられる。担持粒子としては、粒子状の固体電解質を用いることもできる。
固体電解質は、Li10GePS12、LiS−P等の硫化物系固体電解質や、LiLaZr12等のガーネット型固体電解質や、La2/3−xLi3xTiO等のペロブスカイト型固体電解質や、NASICON型固体電解質等の材料群から選択される。固体電解質としては、高分子ゲルで形成されるゲル電解質を用いることもできる。
<セパレータ形成法>
セパレータ300は、不揮発性電解質を用いる場合、担持粒子をペレット状、シート状等に圧縮成形する方法や、担持粒子にバインダの粉末を混合して柔軟性の高いシート状等に成形する方法や、担持粒子とバインダとを溶媒中で混練してシート状等に成形し、乾燥させて溶媒を除去する方法等で形成できる。セパレータ300は、担持粒子とバインダとを溶媒中で混練し、合剤層の表面に塗工して乾燥させることにより、電極と一体的に形成してもよい。
また、セパレータ300は、不揮発性電解質と微多孔膜との組み合わせを用いる場合、担持粒子とバインダとを溶媒中で混練し、得られた混合物を微多孔膜に塗工し、塗工した混合物を乾燥させて溶媒を除去する方法によって形成することができる。或いは、セパレータ300を個別に形成するか、または、電極と一体的に形成し、そのセパレータ300を電極と微多孔膜とで挟んで電極体を形成してもよい。
電解液は、担持粒子をシート状等に成形した後に担持粒子の粒子間に充填してもよいし、担持粒子を成形する前に担持粒子と混合しておいてもよい。電解液と担持粒子とを混合すると、半固体の不揮発性電解質が得られる。例えば、担持粒子と電解液とを、メタノール等の有機溶媒を添加して混合し、得られたスラリーをシャーレ等に広げて有機溶媒を留去すると、粉末状の不揮発性電解質が得られる。
また、電解液は、セパレータ300だけでなく、正極合剤層110や負極合剤層210に保持させてもよい。活物質や導電剤の粒子間に電解液を保持させると、電極内のイオン伝導率が高くなり、高い放電容量が得られる。合剤層に電解液を保持させる方法としては、外装体500に電解液を注入する方法や、電解液と活物質や導電剤等とを混練して合剤を調製し、その合剤を集電体に塗工して電極を作製する方法等を用いることができる。正極合剤層110、負極合剤層210およびセパレータ300に電解液を保持させる場合、外装体500に対する電解液の注入は不要になる。
不揮発性電解質層の形成に用いるバインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VdF−HFP))、スチレン−ブタジエンゴム、ポリアルギン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。不揮発性電解質層の形成に用いる微多孔膜としては、フッ素樹脂製の多孔質シートが好ましい。
<電解液>
電解液は、電荷のキャリアとなる電解質と、電解質を分散・溶解させる溶媒と、を含有する。電解液は、電池セル1000のサイクル特性や安定性、電解液の難燃性等を向上させる目的で、各種の添加剤が添加されてもよい。但し、セパレータ300として固体電解質を用いる場合は、電解液を用いなくてもよい。正極100、負極200等を電解液に浸漬させる代わりに、これらの電極間に固体電解質を充填してもよい。
電解質は、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)等の各種のリチウム塩の材料群から選択される。電解質としては、解離度が高い点で、LiPFが特に好ましい。
溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン等の材料群から選択される。
<負極活物質>
負極活物質としては、下記式(I)で表される複合酸化物が用いられる。
Fex−aM1Nb12−x−bM229−δ・・・(I)
[但し、式(I)中、M1およびM2は、それぞれ独立に、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Mn、Al、Ti、V、Zr、Mo、Ta、Wからなる群より選択される一種以上の元素を表し、x、a、bおよびδは、0.5≦x≦2.0、0≦a≦x、0≦b≦12−x、0<a+b、−10≦δ≦10を満たす数である。]
負極活物質は、式(I)で表される化学組成の結晶相を、体積率が最大の主相として有する。式(I)で表される結晶相は、結晶系が多型性を示すものであってもよく、直方晶系または単斜晶系に属する。負極活物質は、このような主相を有する限り、その他の異相を有してもよい。但し、負極活物質の主相は、電気化学的反応性等の点から、直方晶系で空間群Ammaに帰属される結晶構造を有することが好ましい。
式(I)で表される複合酸化物は、LiαFeNb1129で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を基礎としており、このリチウム遷移金属複合酸化物中の鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上を、異種元素置換することによって得られる。なお、式(I)には、全てのリチウムイオンが脱離した完全放電状態の複合酸化物が示されている。しかしながら、負極活物質は、リチウムイオンが吸蔵された任意の充電状態であってもよい。
FeNb1129で表される鉄ニオブ複合酸化物は、Nb1229のニオブイオンが鉄イオンで置換された構造を有している。Nb1229の結晶構造は、ReO型の単位格子が4×3で配列したブロック構造で構成されており、酸素欠損型のシア構造(shear structure)を持つことが知られている。Nb1229の結晶構造中では、金属(M)に6個の酸素(O)が配位したMOの八面体が、互いに頂点を共有し、ブロック構造間では互いに稜を共有して、平面構造を形成している。
FeNb1129で表される鉄ニオブ複合酸化物では、リチウムイオンのインターカレーション反応に、Nb4+/Nb5+、Nb3+/Nb4+およびFe2+/Fe3+が関与する。この鉄ニオブ複合酸化物によると、約1.0〜2.5V(vs Li/Li)の充放電電位において、リチウムイオンの可逆的な吸蔵・放出が可能である。平均充電電位は、約1.65V(vs Li/Li)となる。また、トンネル構造を持つ結晶構造や、酸素欠損型の結晶欠陥の存在によって、リチウムイオンの高い伝導性が得られる。
そのため、このような鉄ニオブ複合酸化物を異種元素置換した複合酸化物によると、0.7V(vs Li/Li)以上の高電位で作動し、SEI膜が形成しない負極が得られる。SEI膜の形成に起因する問題、例えば、保存時の容量低下、負極の高抵抗化、サイクル特性の悪化等が起こらなくなるため、サイクル特性や電池寿命に優れた電池セルを得ることができる。
LiFeNb1129で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、23個のリチウムイオンが吸蔵されるとすると、理論容量が約380mAh/gと計算される。従来、FeNb1129をナノチューブ化する技術(Runtian Zheng et al., Nano Energy 2019, Vol.58, p.399-409参照)や、窒素雰囲気でFeNb1127.9を合成する技術(非特許文献1参照)が検討されており、粒子形態や焼成条件の検討によって、ある程度の可逆容量の向上が確認されている。
しかし、従来得られている可逆容量は、最大でも270mAh/g程度に留まっている。負極活物質として一般的な黒鉛の場合、約372mAh/gの理論容量に対し、350mAh/g程度の可逆容量が得られているため、LiFeNb1129についても、黒鉛に匹敵するような可逆容量の向上が望まれる。可逆容量が向上すると、充放電電位が黒鉛よりも高く、高エネルギ密度な負極が得られるため、従来よりも高レートの充放電が可能になることも期待される。
一方、負極活物質は、高出力や高エネルギ密度を得る観点からは、充放電電位が低電位に抑制されていることが望まれる。負極活物質の充電電位は、SEI膜が形成しない0.7V(vs Li/Li)以上であることが望ましいが、この範囲において低電位に抑制されていれば、より高い電池電圧や高容量を得ることができる。
そこで、負極活物質としては、式(I)で表されるように、FeNb12−x29で表される遷移金属複合酸化物を基礎とし、この遷移金属複合酸化物中の鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上を異種元素置換した複合酸化物を用いるものとする。適切な異種元素置換を行うと、LiαFeNb1129よりも平均充電電位が低く、且つ、可逆容量が向上している負極活物質を得ることができる。
異種元素置換によって平均充電電位が低くなる理由や、異種元素置換によって可逆容量が向上する理由は、必ずしも明らかではないが、次のような理由が考えられる。
FeNb1129で表される鉄ニオブ複合酸化物は、充電時に、全てのニオブイオンが5価から3価に価数変化し、全ての鉄イオンが3価から2価に価数変化した場合に、最大となる23個のリチウムイオンを吸蔵することができる。23個のリチウムイオンの挿入・脱離によって、理論上の最大容量が得られることになる。しかし、この反応は、ニオブイオンの価数変化が2価と大きく、エネルギ障壁が高い反応であると考えられるため、充放電時の可逆容量を低下させる要因になっていると考えられる。
これに対し、MOの八面体を構成する鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上を、イオン半径や価数が異なる異種元素で置換すると、異種元素を適切に選択した場合に、リチウムイオンの伝導パスが確保され易くなると考えられる。充放電時にニオブイオンが大きな価数変化を生じたとしても、その付近に置換されている異種元素が、電荷の補償ないし結晶構造変化の抑制に寄与するため、リチウムイオンの拡散移動等のエネルギ障壁が低くなり、実効的な可逆容量が向上すると考えられる。
具体的には、異種元素を適切に選択した場合に、充放電曲線上のプラトーな領域を拡大ないし低電位化させる効果が得られると考えられる。FeNb1129系の負極活物質について初回における酸化還元反応効率を調査したところ、特に鉄イオンの寄与する酸化還元反応効率が約60%と低いことが判明した。そのため、初回の充放電時には高電位側の満充電状態付近で十分な可逆性が得られ難いことが判明した。しかし、鉄イオンを適切に異種元素置換することにより、鉄イオンの寄与する酸化還元反応領域が減少し、可逆性の低い領域が減少して、電池電圧−充電容量曲線上(図12参照)で、プラトーな領域が狭くなることが明らかとなった。加えて1.7〜2.5V(vs Li/Li)の充電電位も低電位化するため、鉄イオンの寄与する酸化還元反応領域でエネルギ効率が向上していることが分かった。したがって、鉄イオンを適切に異種元素置換することで、可逆性の低い鉄イオンのプラトーな領域を、全体の結晶構造を保持しつつ、且つ、低電位化しつつ、その領域自体も狭くすることができるため、可逆性が向上すると考えられる。
加えて、鉄イオンへの元素置換により結晶構造中の一部の局所的な配位構造が変わる。さらに、異種元素の価数によっては、酸素の配位可能な数も変化する。その結果、置換された元素の周囲のニオブイオン、鉄イオン、酸素イオンの結合距離などが変化する。このような変化の影響を受けた結晶中のニオブイオンが、充放電する際のエネルギ障壁を低くする効果も発揮するものと考えられる。これにより、鉄イオンへの元素置換を試みた場合でも、結晶中のニオブイオンの全体としての還元電位がニオブ単体の還元電位よりも低くなり、プラトーな領域自体が低電位化すると考えられる。
式(I)におけるM1は、主としてFeに置換させるための元素を表す。Feに置換させる元素としては、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Mn、Al等が挙げられる。これらの金属は、シャノン(Shannon)とプルウィット(Prewitt)によって示されたように、Feとイオン半径が近いため、結晶構造変化の抑制に有効といえる。また、価数変化を生じる酸化還元反応の活性を有している場合、電荷の補償に有効といえる。元素置換後のこれらの元素は、2価、3価および4価のいずれの価数をとってもよい。これらの元素は、酸素欠損量やその他の元素置換により最適な価数をとり得る。
M1の元素としては、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Alが好ましく、Zn、Ru、Alがより好ましく、Alが特に好ましい。なお、M1の元素は、主としてMOの金属サイトに置換させる元素であるため、Nbに置換されてもよい。
式(I)におけるM2は、主としてNbに置換させるための元素を表す。Nbに置換させる元素としては、Ti、V、Zr、Mo、Ta、W等が挙げられる。これらの金属は、Nbとイオン半径が近いため、結晶構造変化の抑制に有効といえる。また、価数変化を生じる酸化還元反応の活性を有している場合、電荷の補償に有効といえる。
M2の元素としては、Ti、V、Zrが好ましく、Tiが特に好ましい。なお、M2の元素は、主としてMOの金属サイトに置換させる元素であるため、Feに置換されてもよい。
式(I)における係数xは、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.6〜1.5、更に好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.9〜1.1、特に好ましくは1.0である。このような範囲であると、高い電子伝導性やイオン伝導性が得られる場合がある。
式(I)におけるM1の係数aは、0≦a≦xであり、好ましくは0<a<xである。係数aは、好ましくは0.01〜1.0、より好ましくは0.1〜1.0、更に好ましくは0.25〜1.0である。このような範囲であると、結晶構造を大きく損なうことなく、異種元素置換による効果を得ることができる。
式(I)におけるM1の係数aの下限値は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.98等であってもよい。また、係数aの上限値は、0.98、0.95、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5等であってもよい。
式(I)におけるM2の係数bは、0≦b≦12−xであり、好ましくは0<b<12−xである。係数bは、好ましくは0.01〜10.0、より好ましくは0.1〜8.0、更に好ましくは0.25〜6.0、更に好ましくは0.25〜4.0、更に好ましくは0.25〜2.0である。このような範囲であると、結晶構造を大きく損なうことなく、異種元素置換による効果を有意に得ることができる。
式(I)におけるM2の係数bの下限値は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.98、1.0、1.5等であってもよい。また、係数aの上限値は、1.5、1.0、0.98、0.95、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5等であってもよい。
なお、係数aおよび係数bは、0<a+b<12を満たすものとする。係数a=0のとき、係数b≠0である。また、係数b=0のとき、係数a≠0である。安定な結晶構造を形成しつつ、高い可逆容量を得る観点からは、可逆容量の向上に対する寄与が大きい点で、Feに対する異種元素置換を行うことが好ましく、係数b=0、且つ、係数a≠0とすることが好ましい。
式(I)における係数δは、好ましくは−10〜10、より好ましくは−8.0〜8.0、更に好ましくは−6.0〜6.0、更に好ましくは−4.0〜4.0、更に好ましくは−2.0〜2.0である。このような範囲であると、酸素欠損型や酸素過剰型の結晶欠陥によって、高い電子伝導性、イオン伝導性や、高い可逆容量が得られる場合がある。
式(I)で表される複合酸化物は、任意の個数のリチウムイオンが吸蔵された状態であってもよい。式(I)で表される複合酸化物は、式(I)で表される単位構造当たり、最大でn個のリチウムイオンを吸蔵することができる。すなわち、Liの係数をαとしたとき、0≦α≦nを満たし、nは、2×(29−δ)=n+2×(x−a)+(M1の最小価数)×a+3×(12−x−b)+(M2の最小価数)×bを満たす数である。
負極活物質は、適宜の粒子形態とすることができる。粒子形態の具体例としては、球状、板状、チューブ状、ロッド状等が挙げられる。負極活物質は、中実構造であってもよいし、中空構造であってもよい。負極活物質は、実質的に全部の粒子が中実構造または中空構造であってもよいし、中実構造と中空構造との混成であってもよい。中空構造の粒子は、開気孔のみを有していてもよいし、開気孔と閉気孔とを有していてもよい。
負極活物質は、電子顕微鏡像上で円形近似して計測される円相当径が、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.1〜5μmである。このような大きさであると、負極活物質の比表面積が十分に大きくなり、負極活物質と電解液等との接触面積が確保され易くなる。また、粉体としての取り扱いや負極の作製が容易になる。
負極活物質の形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて確認することができる。負極活物質の円相当径は、SEM等の電子顕微鏡を用いて、十分な個数の一次粒子を含む電子顕微鏡画像を撮像し、その電子顕微鏡画像上で計測することができる。電子顕微鏡の倍率は、通常、40k倍ないし20k倍とすることができる。
負極活物質の結晶構造は、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)測定によって確認することができる。また、負極活物質の化学組成は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma optical emission spectrometry:ICP)によって確認することができる。ICPの場合、負極活物質を酸等に溶解させて液体試料とし、その液体試料をプラズマ中に導入して発光スペクトルを分光測定すると、発光波長に基づく定性分析や、発光強度に基づく定量分析が可能である。
負極活物質の平均充電電位は、リチウム金属基準で、好ましくは0.7V以上、より好ましくは1.0V以上、更に好ましくは1.2V以上である。また、好ましくは1.65V未満、より好ましくは1.60V未満、更に好ましくは1.55V未満である。負極活物質の平均充電電位が低いほど、電池電圧が向上し、高出力や高エネルギ密度が得られる。なお、平均充電電位は、負極活物質を用いた作用極と、金属リチウムを用いた対極と、を備える単極セルを作製し、この単極セルを0.2Cの定電流で初回充放電させたときに測定される充電時の総電力量を充電時の平均電流量で除算して求めることができる。
負極活物質は、理論容量に対する初回充電時の充電容量(比容量)[mAh/g]の割合が、理論容量[mAh/g]を100%として、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上である。初回充電時の充電容量が高いほど、可逆容量が向上しており、良好なサイクル特性や電池寿命が得られる。なお、初回充電時の充電容量は、負極活物質を用いた作用極と、金属リチウムを用いた対極と、を備える単極セルを作製し、完全放電状態の単極セルを0.2Cの定電流で初回充電させたときに測定される充電容量の理論容量に対する割合(%)として求めることができる。
<負極活物質の製造方法>
負極活物質として用いる式(I)で表される複合酸化物は、固相法、液相法等の適宜の合成法を用いて製造することができる。以下、負極活物質を固相反応で合成する方法を例にとり、負極活物質の製造方法について説明する。負極活物質は、混合工程と、熱処理工程と、を有する製造方法によって製造することができる。
混合工程では、式(I)で表される複合酸化物の原料を混合して混合粉末を得る。例えば、式(I)で表される複合酸化物の化学組成に応じて、Feを含む化合物、Nbを含む化合物、M1を含む化合物、および、M2を含む化合物のうちの一種以上を、金属元素が所定のモル比となるように秤量し、これらの化合物同士を粉砕・混合する。
Feを含む化合物としては、例えば、α型等の各種の多型のFeを用いることができる。Nbを含む化合物としては、例えば、T型、H型等の各種の多型のNbを用いることができる。M1を含む化合物やM2を含む化合物としては、例えば、酸化物、炭酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩等を用いることができる。原料の化合物としては、Fe、Nb、M1およびM2のうちの二種以上を含む複合酸化物や、Liを含む化合物を用いることもできる。
M1を含む化合物やM2を含む化合物の具体例としては、Co、Co、CoO、NiO、CuO、CuO、ZnO、RuO、MnO、Mn、Al、TiO、V、ZrO、MoO、MoO、Ta、WO、WO等が挙げられる。
原料の粒子径は、特に制限されるものではない。但し、原料の粒子径は、熱処理の均一性や、負極合剤層の充填密度や、負極活物質と電解液との接触面積を確保する観点からは、合成しようとする負極活物質の目標粒子径よりも小さいことが好ましい。式(I)で表される複合酸化物は、原料の粉末と比較して、焼成中のオストワルト成長で粗大化し易いためである。
原料の粉砕・混合は、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の各種の粉砕機を用いて行うことができる。例えば、ボールミルを用いる場合、粒度が均一な混合粉末を得る観点からは、攪拌回転数:300rpm、攪拌時間:1時間の攪拌、または、これと同等以上の攪拌を行うことが好ましい。
原料の粉砕・混合は、乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで行ってもよい。但し、原料の粉砕・混合は、粒度が均一な混合粉末を得る観点からは、湿式粉砕法で行うことが好ましい。湿式粉砕に用いる分散媒としては、水、エタノール等が挙げられる。湿式粉砕後に分散媒を除去する処理としては、エバポレータ等による減圧留去処理、遠心分離処理、濾過処理、噴霧乾燥処理等を用いることができる。
熱処理工程では、混合工程で得られた混合粉末を熱処理して、式(I)で表される複合酸化物を焼成する。熱処理工程では、温度を実質的に変更しない一段階の熱処理を行ってもよいし、温度を変えて複数段階の熱処理を行ってもよい。熱処理としては、本焼成の前に、か焼を行ってもよいし、本焼成の後に、酸素点欠陥等の格子欠陥を除去するためのポストアニールを行ってもよい。か焼処理やアニール処理は、例えば、300〜700℃で行うことができる。
熱処理の温度は、好ましくは600〜1450℃、より好ましくは800〜1350℃、更に好ましくは900〜1250℃である。熱処理の温度が900℃以上になると、式(I)で表される直方晶系の結晶構造が生成をはじめるため、空間群Ammaに帰属される主相が得られ易くなる。また、熱処理の温度が1250〜1450℃であると、空間群Ammaに帰属される直方晶系の結晶構造の相変態や、粒子の粗大化が起こり難くなる。
熱処理の時間は、好ましくは2〜24時間、より好ましくは4〜12時間である。熱処理の時間が2時間以上であると、複合酸化物の均一性が高くなり易いため、可逆容量等の性能を確実に向上させることができる。また、熱処理の時間が短いほど、粒子の粗大化が起こり難いため、適切な粒子径の負極活物質を得ることができる。
熱処理の雰囲気は、酸化性雰囲気であってもよいし、非酸化性雰囲気であってもよい。酸化性雰囲気としては、酸素雰囲気、大気雰囲気等が挙げられる。非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、一酸化炭素雰囲気、希ガス雰囲気等が挙げられる。雰囲気中の酸化性ガスや非酸化性ガスの濃度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
酸化性雰囲気であると、係数δの絶対値が小さくなり、酸素過剰型の結晶構造が得られる傾向がある。一方、非酸化性雰囲気であると、係数δの絶対値が大きくなり、酸素欠損型の結晶構造が得られる傾向がある。酸化性雰囲気および非酸化性雰囲気のいずれであっても、空間群Ammaに帰属可能な直方晶系の結晶構造の主相を得ることが可能である。
熱処理は、適宜の熱処理装置によって行うことができる。熱処理装置としては、バッチ式焼成炉および連続式焼成炉のうちのいずれを用いてもよい。焼成炉の具体例としては、マッフル炉等の雰囲気炉、大気炉等や、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、トンネルキルン、シャトルキルン、プッシャーキルン、ベルトキルン等が挙げられる。
熱処理によって得られる複合酸化物は、必要に応じて分級してもよい。分級は、乾式重力分離、乾式遠心分離等の乾式分級や、湿式重力沈降分離、湿式遠心分離等の湿式分級や、篩分級のいずれで行うこともできる。また、分級した粉末同士を、互いに異なる粒度群同士で組み合わせて、負極活物質としてもよい。
以上の製造方法によって得られる負極活物質は、負極200の材料として用いることができる。負極活物質は、バインダと溶媒中で混練して負極合剤を調製することができる。調製した負極合剤を負極集電体に塗工し、塗工した負極合剤を乾燥させることによって、負極合剤層210を形成することができる。
以上の負極活物質によると、LiαFeNb1129で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を基礎としており、このリチウム遷移金属複合酸化物中の鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上が、異種元素置換されているため、一般的な黒鉛よりも平均充電電位が高く、且つ、非置換体であるLiαFeNb1129よりも平均充電電位が低く、且つ、非置換体であるLiαFeNb1129よりも充放電時の実効的な可逆容量が向上している負極活物質が得られる。異種元素置換によるため、粒子形態や焼成条件に依存することなく、負極活物質の性能を向上させることができる。そのため、異種元素置換と粒子形態や焼成条件の制御との組み合わせによって、更なる性能の向上を図ることも可能になる。
また、以上の製造方法によって得られる負極活物質は、負極合剤層210を形成することにより、正極100と、負極200と、セパレータ300と、を備える電池セル1000の材料として用いることができる。このような電池セルは、例えば、携帯電話、携帯用パソコン等の移動体用電源や、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道車両、ハイブリッド鉄道車両、船舶等の電源や、電力貯蔵用の定置電源等の各種の用途に用いることができる。電池セルは、複数のセルを互いに電気的に接続することにより、組電池として用いることもできる。
この負極活物質を用いた負極や、この負極を備えた電池セルによると、一般的な黒鉛よりも平均充電電位が高くなり、SEI膜が形成されないため、保存時の容量低下、負極の高抵抗化、サイクル特性の悪化等が起こり難くなり、サイクル特性や電池寿命が良好になる。また、非置換体よりも平均充電電位が低くなるため、電池電圧が向上して、高出力や高エネルギ密度が得られる。また、非置換体よりも充放電時の実効的な可逆容量が向上するため、良好なサイクル特性や電池寿命が得られる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
<負極活物質の作製>
実施例1に係る負極活物質は、固相反応法を用いて、次の手順で作製した。はじめに、Fe、Al、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、Al、Nbを合計2g秤量した。そして、直径3mmのジルコニア製のボールを40g入れたボールミルポットに、2gの原料粉末と6gのエタノールを投入し、300rpmで1時間にわたって湿式混合した。混合によって得られたスラリー中のエタノールを遠心分離で除去した後、固形分を60℃で10時間以上にわたって真空乾燥させた。そして、乾燥させた固形分を焼結皿に乗せ、電気炉中で、大気雰囲気下、1250℃で焼成して負極活物質を得た。
<結晶相の同定>
作製した負極活物質について、粉末X線回折測定を行った。負極活物質をX線回折測定の試料ホルダに均一に充填し、粉末の表面を平滑化した。この試料ホルダをゴニオメータのステージに取り付け、CuKα線を使用してX線回折スペクトルを測定し、回折パターンから結晶相の空間群を同定した。
<負極の作製>
負極は、次の手順で作製した。作製した負極活物質と、導電剤と、バインダとを、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて混合・混練して、スラリー状の負極合剤を調製した。導電剤としては、ケッチェンブラックを用いた。バインダとしては、アクリル系バインダを用いた。混合比は、固形分の質量比で、負極活物質:導電剤:バインダ=80:10:10とした。得られた負極合剤を集電箔上に塗工し、乾燥させた後に、負極合剤層を所定の密度となるようにプレスして負極を得た。
<平均充電電位・可逆容量の測定>
作製した負極と、対極としての金属リチウムとを用いて、リチウムイオン二次電池である単極セルを作製した。負極活物質の容量を380mAh/gと仮定して、Cレートを定義した。単極セルを0.2Cの定電流で終止電圧0.8Vまで放電した後、0.2Cの定電流で終止電圧3Vまで充電した。この初回充放電時の充電容量を可逆容量として求めた。また、充電時の総電力量を充電時の平均電流量で除算して平均充電電位を求めた。
<実施例2>
実施例2に係る負極活物質は、Fe、Ru、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、RuO、Nbを秤量して混合した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例3>
実施例3に係る負極活物質は、Fe、Al、Nbのモル比が0.75:0.25:11となるようにFe、Al、Nbを秤量して混合し、焼成温度を900℃に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例4>
実施例4に係る負極活物質は、Fe、Al、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、Al、Nbを秤量して混合し、焼成温度を900℃に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例5>
実施例5に係る負極活物質は、Fe、Al、Nbのモル比が0.25:0.75:11となるようにFe、Al、Nbを秤量して混合し、焼成温度を900℃に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例6>
実施例6に係る負極活物質は、Fe、Al、Nbのモル比が0.5:1.5:11となるようにFe、Al、Nbを秤量して混合し、焼成温度を900℃に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例7>
実施例7に係る負極活物質は、Fe、Cu、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、CuO、Nbを秤量して混合した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例8>
実施例8に係る負極活物質は、Fe、Ru、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、RuO、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例9>
実施例9に係る負極活物質は、Fe、Co、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、Co、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例10>
実施例10に係る負極活物質は、Fe、Al、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、Al、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例11>
実施例11に係る負極活物質は、Fe、Ni、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、NiO、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例12>
実施例12に係る負極活物質は、Fe、Cu、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、CuO、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例13>
実施例13に係る負極活物質は、Fe、Zn、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、ZnO、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例14>
実施例14に係る負極活物質は、Fe、Al、Nb、Tiのモル比が0.5:0.5:10.5:0.5となるようにFe、Al、Nb、TiOを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<実施例15>
実施例15に係る負極活物質は、Fe、Nb、Tiのモル比が1:10.5:0.5となるようにFe、Nb、TiOを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<比較例1>
比較例1に係る負極活物質は、Fe、Nbのモル比が1:11となるようにFe、Nbを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<比較例2>
比較例2に係る負極活物質は、Fe、Ni、Nbのモル比が0.5:0.5:11となるようにFe、NiO、Nbを秤量して混合した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<比較例3>
比較例3に係る負極活物質は、Fe、Nb、Moのモル比が1:10.5:0.5となるようにFe、Nb、MoOを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
<比較例4>
比較例4に係る負極活物質は、Fe、Nb、Wのモル比が1:10.5:0.5となるようにFe、Nb、WOを秤量して混合し、焼成雰囲気を窒素雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。得られた負極活物質について、X線回折測定による結晶相の同定と、単極セルを用いた平均充電電位・可逆容量の測定を行った。
図3〜6は、負極活物質のX線回折スペクトルである。
図3は、下から順に、実施例1〜5のX線回折スペクトルである。図4は、下から順に、実施例6〜11のX線回折スペクトルである。図5は、下から順に、実施例12〜15のX線回折スペクトルである。図6は、下から順に、比較例1〜4のX線回折スペクトルである。
図3〜6に示すように、作製した負極活物質のいずれについても、FeNb1129と同等の所定の回折角に回折ピークが現れた。作製した負極活物質のいずれについても、主相の結晶構造が空間群Ammaに帰属された。
<測定結果>
表1に、負極活物質の化学組成の仕込値、熱処理(焼成)の雰囲気(大気雰囲気/窒素雰囲気)および温度(℃)、負極の平均充電電位(V)、単極セルの可逆容量(mAh/g)の結果を示す。
Figure 2021082420
図7は、負極の平均充電電位と単極セルの可逆容量との関係を示す図である。
図7において、●のプロットは実施例の結果、〇のプロットは比較例の結果を示す。
<考察>
実施例1〜13と比較例1との比較によると、Feに対する異種元素置換によって、負極の平均充電電位が低くなり、電池セルの可逆容量が向上する傾向が確認できる。実施例2と実施例8との比較や、実施例7と実施例12との比較によると、Ru、Cuで異種元素置換する場合、大気雰囲気よりも、窒素雰囲気の方が、可逆容量が向上している。実施例3〜6の比較によると、Nbに対するFeおよびM1のモル比が1/11を超えると、電池セルの可逆容量が低下する傾向が現れている。
また、実施例14〜15と比較例1との比較によると、Nbに対する異種元素置換によって、負極の平均充電電位が低くなり、電池セルの可逆容量が向上する傾向が確認できる。実施例1と実施例14と実施例15との比較によると、Nbに対する異種元素置換よりも、Feに対する異種元素置換の方が、電池セルの可逆容量が向上する傾向が現れている。なお、実施例および比較例で、熱処理の条件が異なる場合があるが、非置換体の結果から、特性向上の傾向は同様であると考えられる。
また、比較例1と比較例2と実施例11との比較によると、置換元素がNiの場合、酸化性雰囲気の焼成では、負極の平均充電電位が高くなり、電池セルの可逆容量が低下する傾向が確認できる。比較例1と比較例3〜4との比較によると、置換元素がMoやWの場合、負極の平均充電電位が高くなり、電池セルの可逆容量が低下する傾向が確認できる。
図8〜11は、負極活物質を用いた単極セルの充電曲線(電池電圧−充電容量曲線)である。
図8〜11において、縦軸は、単極セルの電極間の電位差(電池電圧)[V]、横軸は、単極セルの初回充電時の可逆容量(初回充電時の充電容量(比容量))[mAh/g]を示す。
図8において、実線は実施例1、破線は比較例1の結果である。図9において、太破線は実施例2、一点鎖線は実施例3、点線は実施例4、二点鎖線は実施例5、実線は実施例6、細破線は比較例1の結果である。図10において、細実線は実施例10、太破線は実施例11、一点鎖線は実施例12、二点鎖線は実施例13、点線は実施例14、太実線は実施例15、細破線は比較例1の結果である。図11において、実線は比較例2、一点鎖線は比較例3、破線は比較例4の結果である。
図8〜11に示すように、異種元素置換を行うと、電圧1.7V(vs Li/Li)付近よりも高電位側に位置する立ち上がり部分が、高容量側(図の右側)にシフトすることが分かる。また、電圧1.7V(vs Li/Li)付近に位置するプラトーな領域が、低容量側(図の左側)を中心に低電位化することが分かる。
図12は、負極活物質を用いた単極セルの充電曲線(電池電圧−SOC曲線)である。
図12において、縦軸は、単極セルの電極間の電位差(電池電圧)[V]、横軸は、単極セルの初回充電時のSOC(State of Charge:充電率)[%]を示す。図中の実線は比較例1の結果、破線は実施例1の結果である。
図12において、囲み破線で示すように、電圧1.7V(vs Li/Li)付近よりも高電位側に位置する立ち上がり部分では、特に1.7〜2.5V(vs Li/Li)の範囲で低電位化しており、エネルギー面での効率が向上していることが分かる。この範囲は、主としてFe3+/Fe2+の還元電位に対応していると考えられる。
加えて、実施例1では、Al置換により、この1.7〜2.5V(vs Li/Li)の範囲が減少している。FeNb1129系での初回における酸化還元反応効率を調査したところ、特に鉄イオンの寄与する酸化還元反応効率が約60%と低いことが判明している。初回の充放電時には高電位側の満充電状態付近で十分な可逆性が得られ難いといえる。しかし、鉄イオンを適切に異種元素置換することにより、鉄イオンの寄与する酸化還元反応領域が減少し、可逆性の低い領域が減少して、電池電圧−充電容量曲線上で、プラトーな領域が狭くなることが明らかとなった。
加えて、実施例1では、1.7〜2.5V(vs Li/Li+)の充電電位も低電位化しているため、鉄イオンの寄与する酸化還元反応領域でエネルギ効率が向上していることが分かる。したがって、鉄イオンを適切に異種元素置換することで、可逆性の低い鉄イオンのプラトーな領域を、全体の結晶構造を保持しつつ、且つ、低電位化しつつ、その領域自体も狭くすることができるため、可逆性を向上させることができると考えられる。
図8〜11に示したように、比較例では、鉄イオンの還元電位に対応している高電位側で十分な容量が得られず、プラトーな領域が狭くなっている。一方、実施例では、高電位側に位置する立ち上がり部分が、高容量側(図の右側)にシフトしており、プラトーな領域が広くなり、高電位側の容量が拡大している。
これらの結果によると、実施例1と同様に、酸化還元反応の効率が悪い鉄イオンが異種元素置換されることによって、主として高電位側の充放電効率が向上し、可逆容量が拡大したと考えられる。電圧1.7V(vs Li/Li)付近のプラトーな領域が広くなることにより、全体としての平均充電電位も抑制されたと考えられる。
また、図12において、両矢印で示すように、低電位側に位置するプラトーな領域では、特に1.7V(vs Li/Li)未満の範囲で低電位化してエネルギ効率が向上していることが分かる。この範囲は、主としてNb4+/Nb3+の還元電位に対応していると考えられる。
図8〜11に示したように、比較例では、ニオブイオンの還元電位に対応している低電位側で還元電位が高く、プラトーな領域自体が比較的高電位に位置している。一方、実施例では、低電位側に位置するプラトーな領域が、低容量側(図の左側)を中心に低電位化しており、還元電位が低く抑制されている。
これらの結果によると、酸化還元電位が高いニオブイオンが異種元素置換されることによって、主として低電位側の充放電効率が向上し、可逆容量が拡大したと考えられる。電圧1.7V(vs Li/Li)付近のプラトーな領域が低電位化することにより、全体としての平均充電電位も抑制されたと考えられる。
したがって、鉄イオンおよびニオブイオンのうちの一以上を、イオン半径や価数が異なる異種元素で置換したり、酸素欠損の量を減少させたりすると、実効的な可逆容量が向上し、平均充電電位が低く抑制されると考えられる。異種元素置換の効果は、ニオブイオンに対する置換と比較して、鉄イオンに対する置換の場合に大きいと考えられる。なお、実施例および比較例で、熱処理の条件が異なる場合があるが、非置換体の結果から特性向上の傾向は同様であると考えられる。
100 正極
110 正極合剤層
120 正極集電体
130 正極タブ
200 負極
210 負極合剤層
220 負極集電体
230 負極タブ
250 負極端子
300 セパレータ
400 電極体
500 外装体
1000 電池セル

Claims (7)

  1. リチウムイオンの吸蔵および放出が可能であり、下記式(I);
    Fex−aM1Nb12−x−bM229−δ・・・(I)
    [但し、式(I)中、M1およびM2は、それぞれ独立に、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Mn、Al、Ti、V、Zr、および、Taからなる群より選択される一種以上の元素を表し、x、a、bおよびδは、0.5≦x≦2.0、0≦a≦x、0≦b≦12−x、0<a+b、−10≦δ≦10を満たす数である。]で表され、
    平均充電電位がリチウム金属基準で1.65V未満である負極活物質。
  2. 請求項1に記載の負極活物質であって、
    前記式(I)で表される主相が空間群Ammaに帰属される結晶構造を有する負極活物質。
  3. 請求項1に記載の負極活物質であって、
    前記式(I)において、
    M1は、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、および、Alからなる群より選択される一種以上の元素であり、
    M2は、Ti、V、および、Zrからなる群より選択される一種以上の元素である負極活物質。
  4. 請求項1に記載の負極活物質であって、
    前記式(I)において、x=1.0であり、0.01≦a≦1.0である負極活物質。
  5. 請求項4に記載の負極活物質であって、
    前記式(I)において、b=0である負極活物質。
  6. 請求項1に記載の負極活物質を含む負極。
  7. 正極と、負極と、セパレータと、を備える電池セルであって、
    前記負極は、請求項1に記載の負極活物質を含む電池セル。
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