JP6959281B2 - リチウム二次電池及び電池内蔵カード - Google Patents
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Description
リチウム複合酸化物焼結体板である正極板と、
カーボンを含む負極層と、
前記正極板と前記負極層との間に介在されるセパレータと、
前記正極板、前記負極層、及び前記セパレータに含浸される電解液と、
を備えた、リチウム二次電池であって、
前記正極板の厚さが70〜120μmであり、前記負極層の厚さが90〜170μmであり、前記リチウム二次電池が各辺の長さが20〜55mmの矩形平板状であり、前記リチウム二次電池の厚さが350〜500μmであり、前記リチウム二次電池のエネルギー密度が200〜300mWh/cm3である、リチウム二次電池が提供される。
図1に本発明のリチウム二次電池の一例を模式的に示す。図1に示されるリチウム二次電池10は、正極板16と、負極層20と、セパレータ18と、電解液24とを備える。正極板16はリチウム複合酸化物焼結体板である。負極層20はカーボンを含む。セパレータ18は、正極板16と負極層20との間に介在される。電解液24は、正極板16、負極層20、及びセパレータ18に含浸される。正極板16の厚さは70〜120μmである一方、負極層20の厚さは90〜170μmである。そして、リチウム二次電池10は各辺の長さが20〜55mmの矩形平板状である。また、リチウム二次電池10の厚さは350〜500μmである。さらに、リチウム二次電池10のエネルギー密度は200〜300mWh/cm3である。このように、正極焼結体板を備えたカード用薄型リチウム二次電池において、正極板16の厚さ、負極層20の厚さ、リチウム二次電池10のサイズ及び厚さを所定の数値範囲内とすることで、上述のような高エネルギー密度、及び高容量でありながら、優れた充放電サイクル性能を呈するリチウム二次電池を提供できる。
本発明のリチウム複合酸化物焼結体板はいかなる方法で製造されたものであってもよいが、好ましくは、(a)リチウム複合酸化物含有グリーンシートの作製、(b)所望により行われる過剰リチウム源含有グリーンシートの作製、並びに(c)グリーンシートの積層及び焼成を経て製造される。
まず、リチウム複合酸化物で構成される原料粉末を用意する。この粉末は、LiMO2なる組成(Mは前述したとおりである)の合成済みの板状粒子(例えばLiCoO2板状粒子)を含むのが好ましい。原料粉末の体積基準D50粒径は0.3〜30μmが好ましい。例えば、LiCoO2板状粒子の作製方法は次のようにして行うことができる。まず、Co3O4原料粉末とLi2CO3原料粉末とを混合して焼成(500〜900℃、1〜20時間)することによって、LiCoO2粉末を合成する。得られたLiCoO2粉末をポットミルにて体積基準D50粒径0.2μm〜10μmに粉砕することによって、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLiCoO2粒子が得られる。このようなLiCoO2粒子は、LiCoO2粉末スラリーを用いたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法や、フラックス法や水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法など板状結晶を合成する手法によっても得ることができる。得られたLiCoO2粒子は、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっている。LiCoO2粒子を解砕によって劈開させることで、LiCoO2板状粒子を作製することができる。
所望により、上記リチウム複合酸化物含有グリーンシートとは別に、過剰リチウム源含有グリーンシートを作製する。この過剰リチウム源は、Li以外の成分が焼成により消失するようなLiMO2以外のリチウム化合物であるのが好ましい。そのようなリチウム化合物(過剰リチウム源)の好ましい例としては炭酸リチウムが挙げられる。過剰リチウム源は粉末状であるのが好ましく、過剰リチウム源粉末の体積基準D50粒径は0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。そして、リチウム源粉末を、分散媒及び各種添加剤(バインダー、可塑剤、分散剤等)と混合してスラリーを形成する。得られたスラリーを減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を1000〜20000cPに調整するのが好ましい。得られたスラリーをシート状に成形して過剰リチウム源含有グリーンシートを得る。こうして得られるグリーンシートもまた独立したシート状の成形体である。シート成形は、周知の様々な方法で行いうるが、ドクターブレード法により行うのが好ましい。過剰リチウム源含有グリーンシートの厚さは、リチウム複合酸化物含有グリーンシートにおけるCo含有量に対する、過剰リチウム源含有グリーンシートにおけるLi含有量のモル比(Li/Co比)が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.1〜1.1とすることができるような厚さに設定するのが好ましい。
下部セッターに、リチウム複合酸化物含有グリーンシート(例えばLiCoO2グリーンシート)、及び所望により過剰リチウム源含有グリーンシート(例えばLi2CO3グリーンシート)を順に載置し、その上に上部セッターを載置する。上部セッター及び下部セッターはセラミックス製であり、好ましくはジルコニア又はマグネシア製である。セッターがマグネシア製であると気孔が小さくなる傾向がある。上部セッターは多孔質構造やハニカム構造のものであってもよいし、緻密質構造であってもよい。上部セッターが緻密質であると焼結体板において気孔が小さくなり、気孔の数が多くなる傾向がある。必要に応じて、過剰リチウム源含有グリーンシートは、リチウム複合酸化物含有グリーンシートにおけるCo含有量に対する、過剰リチウム源含有グリーンシートにおけるLi含有量のモル比(Li/Co比)が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.1〜1.1となるようなサイズに切り出して用いられるのが好ましい。
(1)正極板の作製
(1a)LiCoO2グリーンシートの作製
まず、表1に示されるようにしてLiCoO2原料粉末を作製して粉末Aとした。得られたLiCoO2粉末(すなわち粉末A)100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LiCoO2スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LiCoO2グリーンシートを形成した。乾燥後のLiCoO2グリーンシートの厚さは98μmであった。
PETフィルムから剥がしたLiCoO2グリーンシートをカッターで50mm角に切り出し、下部セッターとしてのマグネシア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置した。LiCoO2シートの上に上部セッターとしての多孔質マグネシア製セッターを載置した。上記LiCoO2シートをセッターで挟んだ状態で、120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置した。このとき、アルミナ鞘を密閉せず、0.5mmの隙間を空けて蓋をした。得られた積層物を昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後に、870℃まで200℃/hで昇温して20時間保持することで焼成を行った。焼成後、室温まで降温させた後に焼成体をアルミナ鞘より取り出した。こうして厚さ90μmのLiCoO2焼結体板を正極板として得た。得られた正極板を、レーザー加工機で10.5mm×9.5mm角の矩形状に切断して、複数のチップ状の正極板16を得た。
図1に模式的に示されるようなフィルム外装電池の形態のリチウム二次電池10を図2A及び2Bに示されるような手順で作製した。具体的には以下のとおりである。
上記(1b)で合成されたLiCoO2焼結体板(正極板)及び上記(2)で作製された電池について、以下に示されるとおり各種の評価を行った。
LiCoO2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた正極板断面(正極板の板面に垂直な断面)を1000倍の視野(125μm×125μm)でEBSD測定して、EBSD像を得た。このEBSD測定は、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式JSM−7800F)を用いて行った。得られたEBSD像において特定される全ての粒子について、一次粒子の(003)面と正極板の板面とがなす角度(すなわち(003)からの結晶方位の傾き)を傾斜角として求め、それらの角度の平均値を一次粒子の平均配向角度とした。
LiCoO2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた正極板断面をSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)して正極板の厚さを測定した。なお、工程(1a)に関して前述した乾燥後のLiCoO2グリーンシートの厚さも、上記同様にして測定されたものである。
LiCoO2焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた正極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析し、全ての気孔の面積を正極の面積で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を算出した。
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLiCoO2焼結体板の平均気孔径を測定した。
3.0Vの電位範囲において以下の手順で測定した。すなわち、0.2Cレートで電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.02Cレートとなるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで3.0Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を初期放電容量とした。
上記初期放電容量に平均電圧を乗じ、電池体積で除することでエネルギー密度を算出した。その際、SOC0%、20%、40%、60%、80%、100%時の電圧の平均値を平均電圧として用いた。
電池のパルスサイクル性能(放電容量維持率)を4.3V−3.0Vの電位範囲において以下の手順で測定した。すなわち、充電レート0.5Cでの定電流充電した後、放電レート0.5Cに相当する電流値で30秒放電する充放電サイクルを、合計3000回行った後、上述した初期放電容量と同様にしてパルスサイクル試験後放電容量を測定した。初期放電容量に対する、上記パルスサイクル試験後放電容量の比率を算出して100を乗じることにより、パルスサイクル性能(%)を放電容量維持率として得た。
粉末Aの代わりに、表1に示されるようにして作製されたLiCoO2粒子からなる粉末Bを用いたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)正極板の厚さが120μmとなるようにLiCoO2グリーンシートを厚くしたこと、及び2)負極層の厚さを165μmとしたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)正極板の厚さが70μmとなるようにLiCoO2グリーンシートを薄くしたこと、及び2)負極層の厚さを95μmとしたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
粉末Aの代わりに、表1に示されるようにして作製されたLiCoO2板状粒子からなる粉末Cを用いたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)上部セッターの載置に先立ちLiCoO2グリーンシート上に以下の手順で作製されたLi2CO3グリーンシート片を過剰リチウム源として載置したこと、及び2)870℃で20時間の焼成の代わりに、800℃で5時間の保持した後900℃で20時間保持する2段階焼成を行ったこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
Li2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)5重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)2重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li2CO3スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたLi2CO3スラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、Li2CO3グリーンシートを形成した。乾燥後のLi2CO3グリーンシートの厚さは、LiCoO2グリーンシートにおけるCo含有量に対する、Li2CO3グリーンシートにおけるLi含有量のモル比である、Li/Co比を所定の値とすることができるように設定した。得られたLiCoO2仮焼板におけるCo含有量に対する、Li2CO3グリーンシートにおけるLi含有量のモル比である、Li/Co比が0.4となるようなサイズに、乾燥されたLi2CO3グリーンシート片を切り出した。
1)LiCoO2スラリーにLi2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)をさらに添加して、LiCoO2グリーンシートにおける過剰Li/Co比が0.2となるようにしたこと、及び2)870℃で20時間の焼成の代わりに、800℃で5時間の保持した後900℃で20時間保持する2段階焼成を行ったこと以外は例1と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。なお、上記過剰Li/Co比は、LiCoO2グリーンシートにおけるCo含有量に対する、LiCoO2グリーンシートにおけるLi2CO3由来の過剰Li含有量のモル比である。
1)Li2CO3グリーンシート片の載置量をLi/Co比が0.6となるようにしたこと、及び2)脱脂後でかつ焼成前にLiCoO2グリーンシートを700℃で3時間保持する仮焼を行ったこと以外は例6と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)脱脂後でかつ焼成前にLiCoO2グリーンシートを900℃で3時間保持する仮焼を行ったこと、及び2)2段階焼成の代わりに800℃で10時間保持する1段階焼成を行ったこと以外は例6と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)負極層の厚さを130μmとしたこと、及び2)負極層の密度を1.25としたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
1)負極層の厚さを120μmとしたこと、及び2)負極層の密度を1.5としたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
電池の外形サイズが20mm×20mmとなるように各構成部材のサイズを小さくしたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
電池の外形サイズが50mm×50mmとなるように各構成部材のサイズを大きくしたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
正極板としてLiCoO2焼結体板の代わりに市販のLiCoO2塗工電極(株式会社八山製)を用いたこと以外は例1と同様にして、正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。なお、この塗工電極は正極活物質を含むペーストが塗布及び乾燥されて作製されたものであり、焼結体板ではない。
1)粉末Aの代わりに、表1に示されるようにして作製されたCo3O4/Bi2O3混合粉末Dを用いたこと、2)Li2CO3グリーンシート片の載置量をLi/Co比が1.2となるようにしたこと、3)脱脂後でかつ焼成前にLiCoO2グリーンシートを1300℃で5時間保持する仮焼を行ったこと、4)2段階焼成の代わりに850℃で20時間保持する1段階焼成を行ったこと、及び5)負極層の厚さを180μmとした以外は例6と同様にして正極板及び電池を作製し、各種評価を行った。
表2に例1〜15の製造条件を示す一方、表3に例1〜15の評価結果を示す。また、表1には、表2で言及される粉末A〜Dの詳細が示される。
11 一次粒子
12 電池要素
14 正極集電体
15 正極端子
16 正極板
17 正極組立品
18 セパレータ
19 負極組立品
20 負極
22 負極集電体
23 負極端子
24 電解液
26 外装フィルム
28 積層体
34 真空乾燥器
36 注入器具
38 グローブボックス
40 充電器
Claims (8)
- 樹脂基材内に埋設されたリチウム二次電池を備えた電池内蔵カードであって、
前記リチウム二次電池は、
LiCoO2焼結体板である正極板と、
カーボンを含む負極層と、
前記正極板と前記負極層との間に介在されるセパレータと、
前記正極板、前記負極層、及び前記セパレータに含浸される電解液と、
を備え、
前記正極板の厚さが70〜120μmであり、前記負極層の厚さが90〜170μmであり、
前記LiCoO2焼結体板が、LiCoO2で構成される複数の一次粒子を含み、前記複数の一次粒子の(003)面が前記正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向しており、
前記LiCoO2焼結体板の気孔率が15〜40%である、電池内蔵カード。 - 前記LiCoO2焼結体板の気孔率が30〜40%である、請求項1に記載の電池内蔵カード。
- 前記LiCoO2焼結体板の平均気孔径が15μm以下である、請求項1又は2に記載の電池内蔵カード。
- 前記負極層の密度が1.15〜1.50g/cm3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池内蔵カード。
- 前記リチウム二次電池が1対の外装フィルムをさらに備え、該外装フィルムの外周縁が互いに封止されて内部空間を成し、該内部空間に前記正極板、前記負極層、前記セパレータ、及び前記電解液が収容される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池内蔵カード。
- 前記外装フィルムが、樹脂フィルムと金属箔とを含むラミネートフィルムである、請求項5に記載の電池内蔵カード。
- 前記セパレータが、ポリオレフィン、ポリイミド、又はセルロース製である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池内蔵カード。
- 正極集電体及び負極集電体をさらに備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池内蔵カード。
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