JP7411115B2 - エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗員を側方から保護するためのエアバッグ装置等に関するものである。
従来から、サイドエアバッグを備えたエアバッグ装置が知られている。サイドエアバッグは、車両の衝突時など車両に衝撃が加わった時に、乗員の胴部などを側方から覆うように膨張展開する。
特許文献1には、この種のエアバッグ装置が記載されている。このエアバッグ装置では、エアバッグ本体内の膨張空間が、横区画部により下膨張室と上膨張室とに区画されている。横区画部は、エアバッグを構成する両本体布部の上下方向中間部間を繋ぐこと(テザー)により区画を行うものである。
特開2018-127014号公報
ところで、サイドエアバッグは、保護領域を拡大させる場合(つまり、側面視の面積の増大させる場合)、サイドエアバッグの容積が増し、インフレータにより発生させる膨張ガスの必要量が増す。また、膨張展開に要する時間も長くなる。さらに、サイドエアバッグの厚みが増すため、サイドエアバッグが、膨張展開の過程で車両の内壁に干渉しやすくなり膨張展開に支障が生じる虞がある。従来のサイドエアバッグでは、線状に延びる横区画部により容積及び厚みが少し低減されるものの、保護領域を拡大させる場合には十分とは言えない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サイドエアバッグの容積及び厚みを低減させつつ、サイドエアバッグの乗員拘束性能が発揮されるようにインフレータからの膨張ガスを流通させるエアバッグ装置を実現することを目的とする。
上述の課題を解決するべく、本願発明者は、サイドエアバッグのうち乗員の上腕部に対面する領域に凹部又は貫通孔を設けることで、乗員拘束性能を確保しつつ、サイドエアバッグの容積及び厚みを低減できることに気が付いた。そして、この着想を踏まえ、本発明は、車両の座席に着座した乗員を保護するためのサイドエアバッグと、サイドエアバッグを膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、膨張展開が完了した膨張完了状態のサイドエアバッグは、乗員の胴部を側方から覆う胴部側面保護チャンバと、胴部側面保護チャンバに一体化されて乗員の頭部を側方から覆う頭部側面保護チャンバとを備え、膨張完了状態の胴部側面保護チャンバには、乗員の肩部から斜め下に延びる状態の上腕部に対面する領域に、凹部又は貫通孔により構成された厚み抑制部が形成され、胴部側面保護チャンバには、厚み抑制部よりも後ろ側に配置されたインフレータからの膨張ガスが厚み抑制部の上方部分を通って厚み抑制部の前方部分へ流れる上側流路と、膨張ガスが厚み抑制部の後方部分を通って厚み抑制部の下方部分へ流れる下側流路とが形成されるとともに、頭部側面保護チャンバには上側流路から分岐した膨張ガスが流入する。
本発明は、胴部側面保護チャンバの内部に、厚み抑制部の上方部分に配置されて上側流路を形成する第1ガイド部と、厚み抑制部の後方部分に配置されて下側流路を形成する第2ガイド部と有するガスガイドを設けてもよい。
本発明は、第1ガイド部が、途中で分岐して頭部側面保護チャンバに連通していてもよい。
本発明は、ガスガイドが、厚み抑制部の外周部分で胴部側面保護チャンバに固定されていてもよい。
本発明は、膨張完了状態の胴部側面保護チャンバは、乗員の肩部を側方から覆う肩部側面保護チャンバと、乗員の腰部を側方から覆う腰部側面保護チャンバとを有し、厚み抑制部は、上下方向において、肩部側面保護チャンバと腰部側面保護チャンバとの間の領域に亘って形成されていてもよい。
本発明は、胴部側面保護チャンバの下側部分に、厚み抑制部の下方部分から厚み抑制部の前方部分への膨張ガスの流入を阻止する又は妨げる流通規制部を設けてもよい。
本発明は、胴部側面保護チャンバと頭部側面保護チャンバとを連通させる頭部用流路が、頭部側面保護チャンバの後部に接続してもよい。
本発明は、サイドエアバッグでは、頭部用流路よりも前側に、胴部側面保護チャンバと頭部側面保護チャンバとの間を接続する、非膨張のシート部を設けてもよい。
本発明は、膨張完了状態で胴部側面保護チャンバ及び頭部側面保護チャンバのうち胴部側面保護チャンバだけを外側から拘束するベルトをさらに備えていてもよい。
本発明は、サイドエアバッグの上部に非膨張のシート部を設け、ベルトを、シート部に形成された挿通孔に挿通してもよい。
本発明は、胴部側面保護チャンバに連通するようにその前部に取り付けられ、膨張完了状態で乗員を前方から覆う前方保護チャンバをさらに備えていてもよい。
本発明は、前方保護チャンバと胴部側面保護チャンバとを連通させる連通部が、胴部側面保護チャンバの内圧が所定値を超えた場合に、非連通状態から連通状態に切り替わるようにしてもよい。
本発明は、胴部側面保護チャンバの前部の内側に対し、前方保護チャンバを接合する接合部を備え、接合部は、膨張完了状態で、上下方向に対し下側ほど前記乗員の胴部に近づくように傾斜した方向に延伸するようにしてもよい。
本発明では、接合部の延伸方向は、車両の前方衝突が起きた場合に、座席の正規の位置に着座している乗員の胴部が前方に倒れて頭部が前方保護チャンバに衝突する時の移動方向に対し、略直交する方向としてもよい。
本発明では、胴部側面保護チャンバに、凹部又は貫通孔により構成された厚み抑制部が形成されている。そのため、厚み抑制部がない場合に比べて、サイドエアバッグの容積及び厚みを低減させることができる。また、インフレータからの膨張ガスは、上側流路と下側流路とに分かれて流れる。上側流路では、膨張ガスが、胴部側面保護チャンバにおける厚み抑制部の上方部分を通って厚み抑制部の前方部分へ流れる。また、上側流路から分岐した膨張ガスが、頭部側面保護チャンバに流入する。下側流路では、膨張ガスが、胴部側面保護チャンバにおける厚み抑制部の後方部分を通って厚み抑制部の下方部分へ流れる。サイドエアバッグでは、乗員の早期拘束が必要な部位から膨張展開が進むように、厚み抑制部を利用して、膨張ガスがスムーズに流れる流路が形成される。本発明によれば、サイドエアバッグの容積及び厚みを低減させつつ、サイドエアバッグの乗員拘束性能が発揮されるようにインフレータからの膨張ガスを流通させることができる。
図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置の一対のサイドエアバッグについて膨張完了状態を前方から見た正面図である。 図2は、実施形態1に係る一対のサイドエアバッグについて膨張完了状態を側方から見た側面図である。 図3は、実施形態1に係る一対のサイドエアバッグについて膨張完了状態を上方から見た上面図である。 図4は、実施形態1に係るエアバッグ装置が設けられた座席について、乗員が着座している状態の正面図である。 図5は、実施形態1に係る一対のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図である。 図6は、実施形態1に係る片方のサイドエアバッグについて、胴部側面保護チャンバに前方保護チャンバを重ねる前のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図である。 図7は、実施形態1に係るエアバッグ装置が設けられた座席におけるサイドエアバッグの収納状態を説明するための正面図(座席の内部の正面図)である。 図8は、実施形態1の第1変形例に係る一対のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図である。 図9(a)は、実施形態1の第2変形例に係る一対のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図であり、図9(b)は、図9(a)のA-A断面図である。 図10(a)は、実施形態1の第3変形例に係る一対のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図であり、図10(b)は、図10(a)のB-B断面図である。 図11は、実施形態2に係る一対のサイドエアバッグについて膨張完了状態を斜め前方から見た斜視図である。 図12は、実施形態2に係る一対のサイドエアバッグを広げて平坦面に平置きにした状態の平面図である。 図13は、実施形態2に係るエアバッグ装置について、車両の前方衝突時における、胴部側面保護チャンバと前方保護チャンバとの接合部の延伸方向と、乗員の頭部が前方保護チャンバに衝突する時の頭部の移動方向との関係を説明するための模式図である。 図14は、実施形態2に係るエアバッグ装置について、車両の衝突時に乗員の頭部が前方保護チャンバに衝突する位置を説明するための模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明において「乗員」とは、前面衝突試験用のダミー(Hybrid III AM50/ NHTSA [National Highway Traffic Safety Administration:米国高速道路交通安全協会]の規格[49CFR Part572 Subpart E 及びO] にて決められた前面衝突試験用人体ダミー)に準拠した、米国における平均的な男性に相当する体格を有するものをいい、概略サイズは、身長175cm、座高88cm、体重78kgである。
また、本明細書において、「上」、「上側」とは車両に設けられた座席1の正規の位置に着座した乗員5の頭部方向を、「下」、「下側」とは乗員5の足元方向を意味する場合がある。また「前」、「前側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員5の正面方向を、「後」、「後ろ側」とは乗員5の背面方向を意味する場合がある。また「左」、「左側」とは座席1の正規の位置に着座した乗員5の左手方向を、「右」、「右側」とは乗員5の右手方向を意味する場合がある。なお、「正規の位置」とは、座席1におけるシートクッション2の左右方向の中心位置で、背もたれ部(シートバック)3に乗員5の背中が上下に亘って接する位置をいう。
<実施形態1>
本実施形態は、図1~図3に示すように、自動車などの車両の衝突時などに座席1に着座した乗員5を保護する一対のサイドエアバッグ11,12と、一対のサイドエアバッグ11,12の各々に対応して設けられたインフレータ13とを備えたエアバッグ装置10である。インフレータ13は、各サイドエアバッグ11,12に1つずつ設けられている。インフレータ13は、サイドエアバッグ11,12を膨張させる膨張ガスを噴射する。
ここで、エアバッグ装置10が搭載される座席1は、図4に示すように、シートクッション2と、背もたれ部3とを備えている。背もたれ部3の上端部には、棒状の支持部材6を介して、ヘッドレスト4が取り付けられている。図4は、シートベルト7をした乗員5が正規の位置に着座している様子を表す。なお、座席1は、背もたれ部3とヘッドレスト4とが一体形成されたものであってもよい。
一対のサイドエアバッグ11,12は、座席1用のドアに近い方のニアサイドに設けられた第1サイドエアバッグ11と、座席1用のドアから遠い方のファーサイドに設けられた第2サイドエアバッグ12とにより構成されている。第1サイドエアバッグ11及び第2サイドエアバッグ12は、左右対称に形成されている。以下では、第1サイドエアバッグ11及び第2サイドエアバッグ12の説明をまとめて行うものとする。
[膨張完了状態のサイドエアバッグについて]
膨張展開が完了した状態(以下、「膨張完了状態」と言う。)のサイドエアバッグ11,12について、図1~図3を参照しながら説明を行う。なお、図1~図3は、ニアサイド側(図1の右側)から矢印の向きに衝突を受けた直後の状態を示す図であるが、膨張完了状態のサイドエアバッグ11,12と乗員5の位置関係は、乗員5が正規の位置に着座しているものとして説明を行う。
各サイドエアバッグ11,12は、乗員5の胴部を側方から覆う胴部側面保護チャンバ20と、胴部側面保護チャンバ20に一体化されて乗員5の頭部5hを側方から覆う頭部側面保護チャンバ30とを備えている。なお、本明細書において、「チャンバ」とは、内部空間だけでなく、その内部空間を形成する基布を含む袋体(クッション部)を意味する。
胴部側面保護チャンバ20は、側面視における面積が比較的大きい袋体である。胴部側面保護チャンバ20は、その後端部が背もたれ部3のシートフレーム1a(図7参照)の側部に固定され、背もたれ部3の側部から、前側斜め上方に延びている。胴部側面保護チャンバ20の後部は、乗員5の肩部5sから腰部(骨盤部)5wまでの範囲を覆う高さを有する。また、胴部側面保護チャンバ20の前部は、乗員5の頭部5hの下部から腹部5abまでの範囲を覆う高さを有する。胴部側面保護チャンバ20の前端は、側面視において、シートクッション2の前端の少し後ろ側に位置している。
胴部側面保護チャンバ20には、乗員5の肩部5sから腹部5abの側方(真横の位置)に向かって斜め下に延びる状態の上腕部5a(例えば、ハンドルを握った状態の上腕部5a)に対面する領域に、貫通孔により構成された厚み抑制部15が形成されている。厚み抑制部15は、上腕部5aの少なくとも一部が嵌り込む大きさ、好ましくは肘に近い領域が嵌り込む大きさを有する。肘に近い領域が強く押されると、肘により胸部が強く押されてしまうので胸たわみが悪化してしまう。それを防ぐために肘に近い領域に厚み抑制部15が設けられるのが好ましい。厚み抑制部15は、側面視において、肩部5sの近傍から腹部5ab(又は腰部5w)まで、前側斜め下方に向かって延びている。厚み抑制部15は、背もたれ部3の前面に略平行に延びている。
胴部側面保護チャンバ20では、図2に示すように、膨張ガスにより膨張する領域に囲まれた島状に、厚み抑制部15が設けられている。胴部側面保護チャンバ20は、厚み抑制部15の前方部分により構成された第1クッション部21と、厚み抑制部15の上方部分により構成された第2クッション部22と、厚み抑制部15の後方部分により構成された第3クッション部23と、厚み抑制部15の下方部分により構成された第4クッション部24とを備えている。
第1クッション部21は、第1~第4クッション部21~24の中で最も容積が大きい部分である。第1クッション部21は、乗員5の斜め前方及び側方において胴部を拘束するための部分である。第1クッション部21の前部には、乗員5を前方から保護する前方保護チャンバ27が取り付けられている。
第2クッション部22は、乗員5の側方において肩部5sを拘束するための肩部側面保護チャンバに相当する。第2クッション部22の上端部には、頭部側面保護チャンバ30が一体化されている。第3クッション部23は、乗員5の側方において腹部5abの背中側を拘束するための腹部側面保護チャンバに相当する。第3クッション部23は、縦長の管状に形成されている。第4クッション部24は、乗員5の側方において腰部5wを拘束するための腰部側面保護チャンバに相当する。第4クッション部24は、曲がった管状に形成されている。厚み抑制部15は、上下方向において、肩部側面保護チャンバ22と腰部側面保護チャンバ24との間の領域に亘って形成されている。
胴部側面保護チャンバ20の上部の後ろ側には、インフレータ13を収容するインフレータ収納部14が接続されている。インフレータ13は、厚み抑制部15よりも後ろ側に配置されている。インフレータ13には、筒型のものが用いられている。また、胴部側面保護チャンバ20の後部における上側部分には、インフレータ13から噴射された膨張ガスを案内するガスガイド16が収納されている(図5参照)。ガスガイド16についての詳細は後述する。
頭部側面保護チャンバ30は、胴部側面保護チャンバ20の上側に位置している。頭部側面保護チャンバ30は、前後方向の寸法も上下方向の寸法も、胴部側面保護チャンバ20に比べて小さい。頭部側面保護チャンバ30は、横長形状に形成されている。頭部側面保護チャンバ30は、側面視において乗員5の頭部5hの少なくとも一部を側方から覆う。
前方保護チャンバ27は、胴部側面保護チャンバ20の第1クッション部21の前部の内面に接続されている。前方保護チャンバ27は、縦長形状に形成されている。前方保護チャンバ27は、第1クッション部21の前部と同程度の高さを有する。一対の前方保護チャンバ27は、一対の胴部側面保護チャンバ20の間の隙間(前側の隙間)を塞ぐように膨張展開する(図1及び図3参照)。
[平置き状態のサイドエアバッグについて]
次に、未膨張のサイドエアバッグ11,12を広げて平坦面に平置きにした状態(以下、「平置き状態」と言う。)におけるサイドエアバッグ11,12の構成について、図5及び図6を参照しながら説明を行う。
なお、平置き状態のサイドエアバッグ11,12の説明では、膨張完了状態で前側となる前方保護チャンバ27側を「内側」、膨張完了状態で後ろ側となるインフレータ13側を「外側」と言う。また、膨張完了状態で乗員5側となる側を「裏側」、その反対側を「表側」と言う。図5及び図6は、裏側から一対のサイドエアバッグ11,12を見た図である。図5及び図6では、太線の破線が縫製箇所を表す。但し、図5では、ベルト41,42又は前方保護チャンバ27により覆われた縫製箇所は、細線の破線で表している。
一対のサイドエアバッグ11,12は、図5に示すように、左右対称に形成されている。各サイドエアバッグ11,12は、同じ形状で同じ大きさの2枚の基布を重ねた状態で、外周部など所定の箇所を縫製することにより構成された袋体である。各サイドエアバッグ11,12は、外寄りの位置に厚み抑制部15が形成された胴部側面保護チャンバ20と、胴部側面保護チャンバ20に一体化された頭部側面保護チャンバ30と、胴部側面保護チャンバ20の内側部分の裏面に重ねられた前方保護チャンバ27とを備えている。
胴部側面保護チャンバ20は、外側から内側に向かって斜め上方に延びている。胴部側面保護チャンバ20では、厚み抑制部15よりも外側の第3クッション部23に比べて、厚み抑制部15よりも内側の第1クッション部21の方が、左右方向の長さが大きい。厚み抑制部15よりも上側の第2クッション部22と、厚み抑制部15よりも下側の第4クッション部24との高さは同程度である。
厚み抑制部15は、上下方向に対し少し傾斜した、内側斜め下方に延びる貫通孔である。厚み抑制部15の外周のうち外側部分は、第3クッション部23の外側端に略平行に延びている。厚み抑制部15の外周のうち内側部分の下部は、少し内側に膨らんでいる。図5において、厚み抑制部15のうち高さが最も大きい位置の高さH1は、同じ左右位置での胴部側面保護チャンバ20の高さ(内部空間の高さ)H2の半分程度である。高さH1は、例えば高さH2の3分の1以上であることが好ましく、図5よりも低くしてもよい。また、高さH1は、図5よりも高くしてもよい。
胴部側面保護チャンバ20の上部の外側には、インフレータ収納部14が接続されている。また、胴部側面保護チャンバ20における外側部分の上部の内部には、ガスガイド16が収納されている。図5及び図6では、ガスガイド16の設置範囲が分かるようにガスガイド16にハッチングを付けている。ガスガイド16は、インフレータ収納部14から内側に延在している。
ガスガイド16は、下流側が枝分かれした管状の流路である。ガスガイド16は、インフレータ13の噴射口側に位置する上流部19と、上流部19から2手に分岐した第1ガイド部17及び第2ガイド部18とを備えている。なお、ガスガイド16は、第1ガイド部17と第2ガイド部18が一体形成されているが、第1ガイド部17と第2ガイド部18は別体であってもよい。
第1ガイド部17は、第2クッション部22の内部に配置されている。第1ガイド部17は、第1クッション部21に供給される膨張ガスの出口として前側出口17aを有する。また、第1ガイド部17は、前側出口17aよりも上流側の位置に、頭部側面保護チャンバ30に供給される膨張ガスの出口として上側出口17bを有する。第1ガイド部17は、途中で分岐して頭部側面保護チャンバ30に連通している。一方、第2ガイド部18は、第3クッション部23の内部に配置されている。第2ガイド部18は、第4クッション部24に供給される膨張ガスの出口として下側出口18aを有する。
胴部側面保護チャンバ20には、第1ガイド部17により、インフレータ13からの膨張ガスが第2クッション部22を通って第1クッション部21へ流れる上側流路が形成される。また、第1ガイド部17により、膨張ガスが上側流路から分岐して頭部側面保護チャンバ30に流入する頭部側流路も形成される。一方、第2ガイド部18により、膨張ガスが第3クッション部23を通って第4クッション部24へ流れる下側流路が形成される。図5では、膨張ガスの流れを二点鎖線で表している。
ガスガイド16は、厚み抑制部15の外周部分15aで胴部側面保護チャンバ20に固定されている。外周部分15aでは、胴部側面保護チャンバ20(サイドエアバッグ11,12)を構成する2枚の基布とともにガスガイド16が共縫いされている。
胴部側面保護チャンバ20の下側部分には、第4クッション部24から第1クッション部21への膨張ガスの流入を阻止する流通規制部37が設けられている。流通規制部37は、厚み抑制部15の外周から胴部側面保護チャンバ20の外周まで、上述の2枚の基布を線状に縫製して互いに結合することにより形成されている。なお、流通規制部37は、第4クッション部24から第1クッション部21への膨張ガスの流入を妨げるように構成してもよい。この場合、流通規制部37には、例えば、第4クッション部24の内圧が所定値を超えた場合に裂けるティアシームを用いてもよいし、第4クッション部24から第1クッション部21への流路面積を狭める構造を用いてもよい。また、流路規制部37を設けなくてもよい。
頭部側面保護チャンバ30は、厚み抑制部15の上方の位置で胴部側面保護チャンバ20に連通している。胴部側面保護チャンバ20と頭部側面保護チャンバ30を連通させる頭部用流路30aは、頭部側面保護チャンバ30の外側部分(膨張完了状態では後部)に下側から接続されている。頭部側面保護チャンバ30は、頭部用流路30a側から、胴部側面保護チャンバ20の上端部に沿って内側に延びている。サイドエアバッグ11,12では、頭部用流路30aよりも内側(膨張完了状態では前側)に、胴部側面保護チャンバ20と頭部側面保護チャンバ30との間を接続する、非膨張のシート部35が設けられている。
前方保護チャンバ27は、胴部側面保護チャンバ20に一体形成されている。すなわち、前方保護チャンバ27は、胴部側面保護チャンバ20と同じ2枚の基布により構成されている。図6は、胴部側面保護チャンバ20に前方保護チャンバ27を重ねる前のサイドエアバッグ11を広げて平坦面に平置きにした状態を示す。この状態から、前方保護チャンバ27は、折り返し部26にて折り返されて、胴部側面保護チャンバ20の内側部分の裏面に重ねられる。
前方保護チャンバ27は、例えば長円状の接合部28により、胴部側面保護チャンバ20に接合されている。接合部28内には、胴部側面保護チャンバ20に前方保護チャンバ27を連通させる複数の連通部29が設けられている。各連通部29は、胴部側面保護チャンバ20の内圧が所定値を超えた場合に非連通状態から連通状態に切り替わるベントホールにより構成されている。なお、連通部29の数は、1つであってもよい。
ここで、エアバッグ装置10は、膨張完了状態で胴部側面保護チャンバ20及び頭部側面保護チャンバ30のうち胴部側面保護チャンバ20だけを外側から拘束する第1ベルト41及び第2ベルト42をさらに備えている。各ベルト41,42は、第1サイドエアバッグ11と第2サイドエアバッグ12に跨って設けられている。なお、図1~図3では、各ベルト41,42にドットハッチングを付けている。
各サイドエアバッグ11,12の上部では、上述のシート部35に、第1ベルト41を挿通させる第1挿通部31と、第2ベルト42を挿通させる第2挿通部32とが形成されている。各ベルト41,42は、頭部側面保護チャンバ30の裏面側を通り、且つ、胴部側面保護チャンバ20の表面側を通るように、各挿通部31,32に挿通されている。各サイドエアバッグ11,12の下部には、第1ベルト41を挿通させる第3挿通部33が形成されている。各ベルト41,42は、例えば固定部41a,42aによって、胴部側面保護チャンバ20の表面側に固定されている。2本のベルト41,42は、両端部40同士が互いに固定されている。
[サイドエアバッグの収納及び座席への固定について]
各サイドエアバッグ11,12は、折り畳まれた状態で、座席1の背もたれ部3の側部に収納されている(図7参照)。各サイドエアバッグ11,12を背もたれ部3に収納をする際、各サイドエアバッグ11,12の後端部は、タブ等の固定具(図示省略)を用いてシートフレーム1aに固定される。各サイドエアバッグ11,12は、各インフレータ収納部14でも、スタッドボルト(図示省略)によりシートフレーム1aに固定される。スタッドボルトは、インフレータ収納部14の挿通孔に挿通されて、インフレータ13とサイドエアバッグ11,12をシートフレーム1aに固定する。
2本のベルト41,42は、その両端部40が左右の支持部材6(又はシートフレーム1aの上端部)にそれぞれ固定される。そして、各ベルト41,42における両端部40の間は、背もたれ部3のシートフレーム1aの外周形状に沿って延び、シートクッション2の内部(又は下側)を通過する。背もたれ部3の側部において、各ベルト41,42は、挿通部31,32よりも上側では頭部側面保護チャンバ30の内側を通り、挿通部31,32よりも下側では胴部側面保護チャンバ20の外側を通る。なお、各ベルト41,42は、シートクッション2には固定されない。
[本実施形態の効果等]
本実施形態では、例えば車両の衝突時など車両に衝撃が加わった時に、センサーからの信号を受けた各インフレータ13が膨張ガスを噴射することで、各サイドエアバッグ11,12が膨張展開する。ここで、各サイドエアバッグ11,12には、厚み抑制部15として比較的大きめの貫通孔が形成されている。厚み抑制部15の外周では、上述の2枚の基布が縫い合わされて厚みが薄くなっている。そのため、厚み抑制部15がない場合に比べて、各サイドエアバッグ11,12の容積及び厚みを低減させることができる。
また、本実施形態では、インフレータ13からの膨張ガスが、ガスガイド16にて第1ガイド部17と第2ガイド部18に分岐する。第1ガイド部17によれば、乗員5の肩部5sを保護する第2クッション部22とその前側の第1クッション部21とに、早期に膨張ガスを供給することができる。第2ガイド部18によれば、乗員5の腰部5wを保護する第4クッション部24に、早期に膨張ガスを供給することができる。ガスガイド16によれば、胴部側面保護チャンバ20において乗員5の早期拘束が必要な部位から膨張展開が進むように、膨張ガスの流路を形成することができる。
また、本実施形態では、ガスガイド16により、胴部側面保護チャンバ20における厚み抑制部15の周囲を補強することもできる。また、ガスガイド16は胴部側面保護チャンバ20に固定されているため、サイドエアバッグ11,12を収納するために折り畳む際にガスガイド16の位置ずれが生じにくく、また膨張ガスの流通時もガスガイド16が暴れることがない。そのため、膨張ガスをスムーズに流すことができる。また、ガスガイド16には頭部側面保護チャンバ30に開口する上側出口17bが設けられているため、頭部側面保護チャンバ30へも膨張ガスをスムーズに流すことができる。
また、本実施形態では、乗員5の上腕部5aに対面する厚み抑制部15が設けられている。厚み抑制部15は、上腕部5aの少なくとも一部が嵌り込む大きさ、例えば上腕部5aのうち肘側の部分が少なくとも嵌り込む大きさを有する。ここで、胴部側面保護チャンバ20により、肘に近い領域が強く押されると、肘により胸部が強く押されてしまうので胸たわみが悪化してしまう。本実施形態によれば、胴部側面保護チャンバ20から上腕部5aに作用する押圧力、及び、それに伴う胸部の撓みをそれぞれ低減させることができる。
また、本実施形態では、胴部側面保護チャンバ20と頭部側面保護チャンバ30とを連通させる頭部用流路30aが、頭部側面保護チャンバ30の後部に接続されているため、頭部側面保護チャンバ30にスムーズに膨張ガスを供給することができる。また、頭部用流路30aが比較的狭い流路であるため、胴部側面保護チャンバ20から頭部側面保護チャンバ30への膨張ガスの供給に起因して、胴部側面保護チャンバ20の膨張展開が遅くなることを抑制することができる。
また、本実施形態では、厚み抑制部15の下方部分から厚み抑制部15の前方部分への膨張ガスの流入を阻止する又は妨げる流通規制部37が設けられているため、腰部5wを保護する第4クッション部24の膨張を早期に完了させることができる。
また、本実施形態では、胴部側面保護チャンバ20の前部に前方保護チャンバ27が取り付けられているため、エアバッグ装置10に前突保護性能を付与することができる。また、胴部側面保護チャンバ20と前方保護チャンバ27との連通部29にベントホールを用いているため、胴部側面保護チャンバ20から前方保護チャンバ27への膨張ガスの供給に起因して、胴部側面保護チャンバ20の膨張が遅くなることを回避又は抑制することができる。
また、本実施形態では、サイドエアバッグ11,12において頭部用流路30aよりも前側にシート部35を設けているため、膨張完了状態における頭部側面保護チャンバ30の位置を安定させることができる。
また、本実施形態では、膨張完了状態で胴部側面保護チャンバ20を外側から拘束するベルト41,42を設けているため、胴部側面保護チャンバ20による乗員拘束性能を向上させることができる。また、本実施形態では、シート部35に形成された挿通部31,32などにベルト41,42が挿通されているため、ベルト41,42の位置ずれを防ぐことができる。
また、本実施形態では、上述したように、各ベルト41,42がシートクッション2に固定されていないため、片方のサイドエアバッグ11、12に乗員5が衝突すると、シートクッション2内で各ベルト41,42がスライドする。これにより、乗員5の動きに応じて一対のサイドエアバッグ11,12を一体的に挙動させることができる。また、図3に示すように、一対の前方保護チャンバ27は前後に重なり合うため、前突保護性能を向上させることができる。
[実施形態1の第1変形例]
本変形例では、図8に示すように、円板型のインフレータ113が用いられている。インフレータ113は、胴部側面保護チャンバ20の後部の上側部分に配置されている。
[実施形態1の第2変形例]
本変形例では、胴部側面保護チャンバ20の厚み抑制部115が、貫通孔ではなく、膨張完了状態で周囲に比べて窪んだ凹部により構成されている。この場合に、厚み抑制部115は、図9に示すように、非膨張部により構成することができる。この非膨張部は、その領域の全周囲に亘って、胴部側面保護チャンバ20を構成する2枚の基布51,52を縫製部53により互いに結合することにより、膨張領域から区画された部分である。
[実施形態1の第3変形例]
本変形例では、胴部側面保護チャンバ20の厚み抑制部125が、第2変形例と同様に、凹部により構成されている。但し、厚み抑制部125は、膨張完了状態での厚みが周囲に比べて薄くなるように規制された膨張部により構成されている。厚み抑制部125では、図10に示すように、2枚の基布51,52間に接続されたテザー54により、膨張完了状態での厚みが規制される。また、本変形例では、ガスガイド16の第2ガイド部18が、上述の実施形態の流路規制部37の位置まで延びている。第2ガイド部18は、第3クッション部23と第4クッション部24に跨って設けられている。この場合に、厚み抑制部125を構成する膨張部には、後方から膨張ガスが流入するようにしてもよいし、前方から膨張ガスが流入するようにしてもよい。
<実施形態2>
本実施形態は、図11に示すように、膨張完了状態で乗員5の胴部5bを側方から覆う一対の胴部側面保護チャンバ20と、膨張完了状態で各胴部側面保護チャンバ20の前部の内側に取り付けられて乗員5を前方から覆う一対の前方保護チャンバ27と、胴部側面保護チャンバ20及び前方保護チャンバ27を膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータ113と、を備えたエアバッグ装置10である。エアバッグ装置10には、胴部側面保護チャンバ20の前部の内側に前方保護チャンバ27を接合する接合部28が設けられている(図12及び図13参照)。接合部28は、膨張完了状態で、上下方向に対し下側ほど乗員5の胴部5bに近づくように傾斜した方向に延伸している。接合部28の延伸方向は、車両の前方衝突が起きた場合に、座席1の正規の位置に着座している乗員(上述のAM50)5の胴部5bが前方に倒れて頭部5hが前方保護チャンバ27に衝突する時の移動方向に対し、略直交する方向(実質的に直交する方向)である。略直交する方向は、直交する方向に加え、直交する方向に対し±5度の範囲の方向を含む。以下、本実施形態について詳細に説明を行う。
胴部側面保護チャンバ20には、実施形態1と同様に、頭部側面保護チャンバ30が一体化されている。胴部側面保護チャンバ20及び頭部側面保護チャンバ30は、サイドエアバッグ11,12を構成している。一対のサイドエアバッグ11,12は、左右対称に形成されている。一対の前方保護チャンバ27も、左右対称に形成されている。
胴部側面保護チャンバ20は、その後端部が背もたれ部3のシートフレーム(図示省略)の側部に固定されている。胴部側面保護チャンバ20は、膨張完了状態で、背もたれ部3の側部から、前方に延びている。なお、胴部側面保護チャンバ20には、実施形態1と同様に、乗員5の肩部5sから斜め下に延びる状態の上腕部5aに対面する領域に、凹部又は貫通孔により構成された厚み抑制部15を形成してもよい。そして、この場合に、胴部側面保護チャンバ20に、厚み抑制部15よりも後ろ側に配置されたインフレータ113からの膨張ガスが厚み抑制部15の上方部分を通って厚み抑制部15の前方部分へ流れる上側流路と、膨張ガスが厚み抑制部15の後方部分を通って厚み抑制部15の下方部分へ流れる下側流路とを形成して、頭部側面保護チャンバ30に上側流路から分岐した膨張ガスが流入するようにしてもよい。
エアバッグ装置10は、膨張完了状態で胴部側面保護チャンバ20を外側から拘束する第1ベルト41及び第2ベルト42をさらに備えている。各ベルト41,42は、第1サイドエアバッグ11と第2サイドエアバッグ12に跨って設けられている。なお、図11では、各ベルト41,42にドットハッチングを付けている。
図12は、サイドエアバッグ11,12及び前方保護チャンバ27を広げて平坦面に置いた平置き状態の図である。図12は、膨張完了状態で乗員5側となる裏側から一対のサイドエアバッグ11,12を見た図である。図12では、膨張完了状態で前側となる側を「内側」、膨張完了状態で後ろ側となる側を「外側」と記載している。インフレータ113は、各胴部側面保護チャンバ20の外側部分に設けられている。なお、本実施形態では、インフレータ113が、実施形態1の第1変形例と同様に円板型であるが、筒型など他のタイプであってもよい。
前方保護チャンバ27は、図12に示すように、胴部側面保護チャンバ20とは別の基布により構成されている。前方保護チャンバ27は、図12の状態から裏返しにして、接合部28同士が互いに重なるように、胴部側面保護チャンバ20の裏側(膨張完了状態で乗員5側)に載せて、縫製等により接合部28の位置で胴部側面保護チャンバ20に接合される。接合部28は、胴部側面保護チャンバ20の一方の基布(裏側の基布)に対し前方保護チャンバ27の一方の基布(表側の基布)を縫い付けた、線状の縫製部により構成されている。なお、実施形態1と同様に、前方保護チャンバ27は、胴部側面保護チャンバ20と同じ2枚の基布により構成してもよい。
接合部28は、平面視において長円状の縫製部であり、2つの半円部と2つの直線部により構成されている。接合部28内には、胴部側面保護チャンバ20に前方保護チャンバ27を連通させる複数の連通部29が設けられている。なお、接合部28の形状は、他の形状(例えば、楕円形)であってもよい。
連通部29は、常時開口しているベントホールにより構成されている。なお、連通部29は、実施形態1と同様に、胴部側面保護チャンバ20の内圧が所定値を超えた場合に非連通状態から連通状態に切り替わるベントホールにより構成してもよい。
ここで、図13(a)~(c)は、座席1の側方から、膨張完了状態のエアバッグ装置10を見た模式図である。図13(a)は、乗員5がAF05ダミー(小柄な大人の女性のダミー)の場合に、車両の前方衝突時に、座席1の正規の位置に着座している乗員5が前方に倒れる様子を表す。図13(b)は、乗員5がAM05ダミー(平均的な体格を有する大人の男性のダミー)の場合に、車両の前方衝突時に、座席1の正規の位置に着座している乗員5が前方に倒れる様子を表す。図13(c)は、乗員5がAM95ダミー(大柄な大人の男性のダミー)の場合に、車両の前方衝突時に、座席1の正規の位置に着座している乗員5が前方に倒れる様子を表す。
接合部28は、例えば、膨張完了状態で、前後方向においてシートクッション2の前部の真上に位置している。また、接合部28の上下方向の中心位置は、例えば、膨張完了状態で、上下方向において背もたれ部3の上端部からヘッドレスト4の中心高さまでの高さ範囲に位置しており、また背もたれ部3に対する胴部側面保護チャンバ20の固定箇所の高さより上側に位置している。接合部28の傾斜角度は、例えば、膨張完了状態で、上下方向に対し例えば10度~20度傾斜している。接合部28の延伸方向は、直線部の延伸方向となる。
[本実施形態の効果等]
本実施形態では、接合部28が、膨張完了状態で、上下方向に対し下側ほど乗員5の胴部5bに近づくように傾斜した方向に延伸している。ここで、接合部28が、膨張完了状態で、上下方向に対し下側ほど乗員5の胴部5bから離れるように傾斜した方向に延伸している場合、車両の前方衝突により、乗員5の頭部5hの中心が一対の前方保護チャンバ27の隙間付近に衝突する時に、乗員5から前方保護チャンバ27に作用する力が上側に逃げて各前方保護チャンバ27に外向きの力が作用し、一対の前方保護チャンバ27が外側に開く虞がある。
それに対し、本実施形態では、図14(a)に示すように、乗員5の頭部5hの中心が一対の前方保護チャンバ27の隙間付近に衝突する時に、乗員5から前方保護チャンバ27に作用する力が上側に逃げにくい。そのため、各前方保護チャンバ27に外向きの力が作用しにくく、一対の前方保護チャンバ27が外側に開くことを抑制することができ、頭部5hを適切に保護することができる。
また、本実施形態では、特に、接合部28の延伸方向X(図13参照)が、車両の前方衝突が起きた場合に、座席1の正規の位置に着座している乗員(AM50ダミー)5の胴部5bが前方に倒れて頭部5hが前方保護チャンバ27に衝突する時の移動方向に対し、略直交する方向である。そのため、一対の前方保護チャンバ27が外側に開くことをより効果的に抑制することができる。また、乗員5がAM50ダミーよりも小さいAF05ダミーの場合(図13(a)の場合)でも、乗員5がAM50ダミーよりも大きいAM95ダミーの場合(図13(c)の場合)でも、接合部28の延伸方向Xは、上述の頭部5hの移動方向に対し90°付近の角度となる。そのため、体格の大小によらず、一対の前方保護チャンバ27が外側に開くことを抑制することができる。
また、車幅が狭い車両では、図14(b)に示すように、ニアサイドの第1サイドエアバッグ11がドアトリム8に当たって、一対のサイドエアバッグ11,12が左右非対称に展開する場合がある。この場合、乗員5の頭部5hの中心はニアサイド側の接合部28の位置付近に衝突する。また、車両の前方斜め衝突では、図14(c)に示すように、ニアサイド側の前方に乗員5が倒れて、図14(b)と同様に乗員5の頭部5hの中心はニアサイド側の接合部28の位置付近に衝突する。これらの場合に、縫製部により構成された接合部28にて、頭部5hの衝突を適切に受け止めることができる。なお、図14では、頭部側面保護チャンバ30の記載を省略しており、また乗員5は頭部5hのみを記載している。
[その他の変形例]
上述の実施形態において、胴部側面保護チャンバ20のうち上腕部5aに対面する領域における厚み抑制部15は、例えば上下に並ぶ複数の凹部(非膨張部、厚みが規制された膨張部)又は複数の貫通孔により構成してもよいし、凹部と貫通孔の組合せにより構成してもよい。前者で凹部を非膨張部とする場合、複数の非膨張部の間に、厚み抑制部15の後方から前方へのガス流路を形成してもよいし、形成しなくてもよい。なお、ガス流路を形成する場合であっても、その高さは低くする。
上述の実施形態において、一対の胴部側面保護チャンバ20のうち片方だけに厚み抑制部15を形成してもよい。また、一対の胴部側面保護チャンバ20の間で厚み抑制部15の大きさを互いに異ならせて、膨張完了状態において一対の第1クッション部21の間で厚みを互いに異ならせてもよい。
上述の実施形態では、一対のサイドエアバッグ11,12は左右対称に形成されているが、左右非対称に形成してもよい。
上述の実施形態において、胴部側面保護チャンバ20の後部が、乗員5の肩部5sから腹部5abまでの範囲を覆うものであってもよい。
上述の実施形態では、各サイドエアバッグ11,12は、2枚の基布を縫製して形成しているが、いわゆる「ワンピースウィービング(one-piece weaving)」技術を用いて形成したものでもよい。
本発明は、乗員を側方から保護するためのエアバッグ装置等に適用可能である。
1 座席
5 乗員
10 エアバッグ装置
11 第1サイドエアバッグ(サイドエアバッグ)
12 第2サイドエアバッグ(サイドエアバッグ)
13 インフレータ
15 厚み抑制部
16 ガスガイド
17 第1ガイド部
18 第2ガイド部
20 胴部側面保護チャンバ
30 頭部側面保護チャンバ

Claims (11)

  1. 車両の座席に着座した乗員を保護するためのサイドエアバッグと、前記サイドエアバッグを膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
    膨張展開が完了した膨張完了状態のサイドエアバッグは、前記乗員の胴部を側方から覆う胴部側面保護チャンバと、前記胴部側面保護チャンバに一体化されて前記乗員の頭部を側方から覆う頭部側面保護チャンバとを備え、
    前記膨張完了状態の前記胴部側面保護チャンバには、前記乗員の肩部から斜め下に延びる状態の上腕部に対面する領域に、凹部又は貫通孔により構成された厚み抑制部が形成され、
    前記胴部側面保護チャンバには、前記厚み抑制部よりも後ろ側に配置された前記インフレータからの前記膨張ガスが前記厚み抑制部の上方部分を通って該厚み抑制部の前方部分へ流れる上側流路と、前記膨張ガスが前記厚み抑制部の後方部分を通って該厚み抑制部の下方部分へ流れる下側流路とが形成されるとともに、前記頭部側面保護チャンバには前記上側流路から分岐した前記膨張ガスが流入し、
    前記膨張完了状態で前記胴部側面保護チャンバ及び前記頭部側面保護チャンバのうち前記胴部側面保護チャンバだけを外側から拘束するベルトをさらに備え、
    前記サイドエアバッグの上部には、非膨張のシート部が設けられ、前記ベルトは、前記シート部に形成された挿通孔に挿通されている、エアバッグ装置。
  2. 前記胴部側面保護チャンバの内部には、前記厚み抑制部の上方部分に配置されて前記上側流路を形成する第1ガイド部と、前記厚み抑制部の後方部分に配置されて前記下側流路を形成する第2ガイド部と有するガスガイドが設けられている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
  3. 前記第1ガイド部は、途中で分岐して前記頭部側面保護チャンバに連通している、請求項2に記載のエアバッグ装置。
  4. 前記ガスガイドは、前記厚み抑制部の外周部分で前記胴部側面保護チャンバに固定されている、請求項2又は3に記載のエアバッグ装置。
  5. 前記膨張完了状態の前記胴部側面保護チャンバは、前記乗員の肩部を側方から覆う肩部側面保護チャンバと、前記乗員の腰部を側方から覆う腰部側面保護チャンバとを有し、
    前記厚み抑制部は、上下方向において、前記肩部側面保護チャンバと前記腰部側面保護チャンバとの間の領域に亘って形成されている、請求項1乃至4の何れか1つに記載のエアバッグ装置。
  6. 前記胴部側面保護チャンバの下側部分には、前記厚み抑制部の下方部分から前記厚み抑制部の前方部分への膨張ガスの流入を阻止する又は妨げる流通規制部が設けられている、請求項1乃至5の何れか1つに記載のエアバッグ装置。
  7. 前記胴部側面保護チャンバと前記頭部側面保護チャンバとを連通させる頭部用流路は、前記頭部側面保護チャンバの後部に接続されている、請求項1乃至6の何れか1つに記載のエアバッグ装置。
  8. 前記サイドエアバッグでは、前記頭部用流路よりも前側に、前記胴部側面保護チャンバと前記頭部側面保護チャンバとの間を接続する、非膨張のシート部が設けられている、請求項7に記載のエアバッグ装置。
  9. 車両の座席に着座した乗員を保護するためのサイドエアバッグと、前記サイドエアバッグを膨張させる膨張ガスを噴射するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
    膨張展開が完了した膨張完了状態のサイドエアバッグは、前記乗員の胴部を側方から覆う胴部側面保護チャンバと、前記胴部側面保護チャンバに一体化されて前記乗員の頭部を側方から覆う頭部側面保護チャンバとを備え、
    前記膨張完了状態の前記胴部側面保護チャンバには、前記乗員の肩部から斜め下に延びる状態の上腕部に対面する領域に、凹部又は貫通孔により構成された厚み抑制部が形成され、
    前記胴部側面保護チャンバには、前記厚み抑制部よりも後ろ側に配置された前記インフレータからの前記膨張ガスが前記厚み抑制部の上方部分を通って該厚み抑制部の前方部分へ流れる上側流路と、前記膨張ガスが前記厚み抑制部の後方部分を通って該厚み抑制部の下方部分へ流れる下側流路とが形成されるとともに、前記頭部側面保護チャンバには前記上側流路から分岐した前記膨張ガスが流入し、
    前記胴部側面保護チャンバに連通するようにその前部に取り付けられ、前記膨張完了状態で前記乗員を前方から覆う前方保護チャンバをさらに備え、
    前記胴部側面保護チャンバの前部の内側に前記前方保護チャンバを接合する接合部を備え、前記接合部は、前記膨張完了状態で、上下方向に対し下側ほど前記乗員の胴部に近づくように傾斜した方向に延伸している、エアバッグ装置。
  10. 前記前方保護チャンバと前記胴部側面保護チャンバとを連通させる連通部は、前記胴部側面保護チャンバの内圧が所定値を超えた場合に、非連通状態から連通状態に切り替わる、請求項9に記載のエアバッグ装置。
  11. 前記接合部の延伸方向は、前記車両の前方衝突が起きた場合に、前記座席の正規の位置に着座している乗員の胴部が前方に倒れて頭部が前記前方保護チャンバに衝突する時の移動方向に対し、略直交する方向である、請求項9に記載のエアバッグ装置。
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