JP7408347B2 - 高Ni合金及び高Ni合金の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高温用材料として使用される高Ni合金に係わり、その製造において熱間加工時の表面疵防止を図ったAl,Tiを含有する高温用高Ni合金及び高Ni合金の製造方法に関する。
Al、Tiを含有する高Ni合金としては、アロイ800、825が代表的な商用合金である。近年、発展途上国での需要の拡大が進み、安価で表面品質および使用特性が良好な商品を供給できるようにするための技術開発が求められている。このために、従来の鋼塊法から連続鋳造法への製造方法の転換が進められており、この中で合金の化学組成の設計、精錬、鋳造、熱間加工技術の改善、開発が必要となっている。
Al,Ti含有高Ni合金の連続鋳造技術に関する特許文献として、特許文献1があり、Ca合金を添加しない製造方法によってノズル閉塞を防止し、表面疵を防止する方法が開示されている。この文献の中には、Ca合金を添加することにより溶融合金中で酸素と結合して酸化物系の非金属介在物を生成し、凝集・大型化し最終製品合金板表面の線状欠陥発生につながるという問題がある、と記載されている。
本来、Ca合金を添加する方法は連続鋳造時のノズル閉塞を防止するため使用されてきた技術である。特許文献2にはステンレス溶鋼中の非金属介在物の無害化を図る高清浄化精錬法として、CaまたはCa合金を添加し、不活性ガスを吹き込んで溶鋼の攪拌を行う方法が開示されている。しかし、本発明が対象とする高Ni合金の表面疵を防止するための具体的方法は開示されていない。したがって、特許文献1が述べるような表面疵、熱間加工性の問題やその他の課題を十分に解決する技術が開示されているとは言えない現状であった。
特開2014-189826号公報 特開平9-310113号公報
本発明では、Ca合金を添加することによる問題を念頭に置きつつ、Al,Ti含有高Ni合金の製造にCaまたはMg合金を添加する方法において熱間加工時の表面疵防止の両立を図ることを発明の課題とした。
Al,Ti含有高Ni合金は比較的熱間加工性が良好であるといわれる合金である。しかしながら、数ppm以上のSを含有すると凝固組織を有する鋳片の熱間加工においては熱間加工性が十分でなくなるため、Ca合金やMg合金を添加して熱間加工性の改善を図ることはその対策のひとつと考えられる。また、先に述べたようにCa合金の添加はノズル閉塞防止に有効な方法である。ところが、CaまたはMg合金を添加する方法で本発明が対象とする高Ni合金の連続鋳造をおこない、そのスラブ、ブルームまたはビレットを熱間加工すると、時々は表面疵を発生する場合があることを本発明者らは経験した。
本発明は、熱間加工時の表面疵防止を図った、Al,Tiを含有する高温用高Ni合金及び高Ni合金の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題の原因解明と解決を図るために、本発明が対象とするAl,Ti含有高Ni合金を基本組成とし、Ca,Mg,B合金の添加方法、フラックス精錬方法を種々変化したラボ真空溶解をおこない、得られた鋳片について熱間引張試験による熱間加工温度域での絞りの評価、熱間圧延試験による耳割れ、表面疵の評価、FE-SEM-EDSによる合金中の非金属介在物の調査、Ca、Mg合金添加によって生成する過剰Ca,Mgの影響についての調査を実施し、課題解決のための研究をおこなった。その結果、詳細を後述するように、鋳片の熱間引張試験において、1100℃引張試験での絞り値、900℃引張試験での絞り値がそれぞれ所定の値以上であれば、当該鋳片を熱間圧延したときの耳割れ発生を防止できるとともに、圧延後の表面疵の発生を軽減できることがわかった。
本発明者らの研究で調査した高Ni合金中の酸化物系介在物はCaO、CaO-Al23、MgO、MgO・Al23,CaO-Al23-TiO2等を含んでおり、硫化物としてはCaS、窒化物としてはTiN、炭化物としてはTiCを含有するものであった。なお、CaO-Al23とはCaO-Al23-TiO2-MgOの4元系状態図においてTiO2含有量が10%以下、MgOが15%以下の酸化物とした。これらの介在物または析出物は複合化しており、FE-SEM-EDSによる組成分析で分離が困難なものも含まれる。すなわち、Alよりも脱酸力が小さいTiが形成する介在物に関しては、TiNおよびTiCが主体であって、TiO2を分離して測定することが困難な場合があった。そこで、脱酸に関与するCa,Mg,Al,Tiから、Tiを例外として除いて、酸素を含む酸化物系介在物中のCa,Mg,Alの含有量を測定視野において統計的に平均値を求めると、基本的には「介在物Ca含有量>介在物Mg含有量>介在物Al含有量」の関係があった。
本発明者らの研究で調査した高Ni合金の熱間加工温度域で高温引張り試験の絞りは、Ca,Mg含有量の増加により低下する傾向を示した。ただし、S,O含有量の大小や溶解精錬方法によってその傾向は異なっていた。
Caは脱酸と脱硫に強く影響する元素であり、合金中に含有するCa(全Ca)は、その一部が合金中のSと結合して硫化物となり、他の一部は合金中のOの一部と結合して酸化物となる。全Caのうち、硫化物、酸化物とならなかった残余のCaが過剰Caとなる。本発明者らは過剰Ca(ΔCa)を合金中のCa含有量(全Ca)から酸素とSの含有量に係数をかけたものを差し引いた値として定義した。そして、ΔCaが1100℃の絞りに及ぼす影響を評価した結果、両者の相関が明瞭になり、ΔCaを所定の範囲内とすることにより、1100℃の絞りが良好となり、同時に900℃の絞りも良好になることの知見を得た。さらに、合金中にBを含有することにより、1000~1100℃での絞りを向上し、良好な1100℃の絞りを得ることのできるΔCaの範囲が拡大する作用が見られた。
一方、Mgを過剰に含有すると、900℃での絞りを低下することが明らかとなった。
上記の知見をもとに、本発明者らは酸化物系介在物の種類と組成、さらに熱間加工性の必要水準、その他の任意添加元素について検討を行った結果、以下に示す本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0005~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる高Ni合金であって、合金中にCaO-Al 2 3 の酸化物系介在物を含有することを特徴とする高Ni合金。
ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
(2)質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0020%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、B:0.0003~0.0030%、Ca:0.0003~0.007%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが-0.0005~0.0050%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高Ni合金。
ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
(3)(2)の高Ni合金であって、合金中にCaO、CaO-Al23のうちの1種または2種の酸化物系介在物を含有する高Ni合金。
(4)さらに質量%で、V:0.003~1.0%、Nb:0.003~1.0%、Ta:0.003~1.0%、Sn:0.001~0.10%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載の高Ni合金。
(5)さらに質量%で、希土類元素を合計で0.003~0.10%含むことを特徴とする(1)~(4)のいずれか1つに記載の高Ni合金。
(6)合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al23-MgO-SiO2系スラグ又はCaO-Al23-MgO-SiO2-F系スラグの組成を、CaO/SiO2:11.2以上、CaO/Al23:0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする(1)~(5)のいずれか1つに記載の高Ni合金の製造方法
(7)質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、
さらに質量%で、V:0.003~1.0%、Nb:0.003~1.0%、Ta:0.003~1.0%、Sn:0.001~0.10%、希土類元素を合計で0.003~0.10%、のうちの1種または2種以上を含有し、
酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0003~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高Ni合金。
ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
(8)合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 系スラグ又はCaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 -F系スラグの組成を、CaO/SiO 2 :11.2以上、CaO/Al 2 3 :0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする(7)に記載の高Ni合金の製造方法。
(9)質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0003~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる高Ni合金の製造方法であって、
合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 系スラグ又はCaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 -F系スラグの組成を、CaO/SiO 2 :11.2以上、CaO/Al 2 3 :0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする高Ni合金の製造方法。
ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
本発明により、高温用材料として使用されるAl,Ti含有高Ni合金を歩留まり良くかつ表面品質良好に安定製造することが可能になり、拡大する需要に対して安価に安定的に提供することができ、産業の発展に寄与するところは極めて大である。
Al,Ti含有高Ni合金の過剰Ca:ΔCaと1100℃の絞りの相関を示す図である。 Al,Ti含有高Ni合金のMg含有量と900℃の絞りの相関を示す図である。
以下に、先ず、本発明の請求項1、2記載の限定理由について説明する。請求項1は合金中にBを含有せず、請求項2はBを含有し、この点で両者は相違している。なお、各成分の含有量は質量%を示す。
最初に、請求項1記載の限定理由について説明する。
Cは、高温材料、耐熱合金の強度を確保するために添加される。その上限を0.10%以下の含有量に制限する。本合金ではCはTiC析出物として合金中に存在するが、0.10%を越えて含有させるとCr炭化物が生成するようになり、高温特性および耐食性が劣化する。Cの下限制限はないので下限値は定めない。
Siは、脱酸のため0.05%以上添加する。しかしながら、1.0%を超えて添加すると金属間化合物が析出しやすくなり、高温特性が劣化する。そのため、上限を1.0%に限定する。好ましい範囲は、0.2~0.8%である。
Mnはオーステナイト相の安定度を増加させ耐熱性を改善する効果を有する。このため、本発明合金では積極的に添加することが好ましい。耐熱特性の改善のため0.05%以上添加する。しかしながら、2.0%を超えて添加すると逆に金属間化合物が析出しやすくなり耐熱特性が劣化する。そのため、上限を2.0%に限定する。好ましい含有量は0.2~1.5%であり、さらに好ましくは0.3~1.3%である。
Pは原料から不可避に混入する元素であり、凝固割れ感受性を高める作用を有するため、0.035%以下に限定する。好ましくは、0.030%以下である。
Sは原料から不可避に混入する元素であり、熱間加工性、耐酸化性をも劣化させるため、0.0015%以下に限定する。Sは精錬により含有量を低下させることが可能な元素であるが、極端な含有量の低下はコストアップとなる。このため好ましいS含有量は、0.0001~0.0010%である。
Crは、高温用材料としての耐熱合金の耐酸化性をになう必須の元素であり、18%以上を含有させる。一方で、25%超を含有させると、Niを多く含有させたとしても高温組織安定性が低下し、金属間化合物が析出するようになり、耐熱特性を劣化させる。このため、Crの含有量を18%以上、25%以下と定めた。好ましい含有量はNiやその他の元素の含有量により異なってくる。たとえばNiが30%程度の場合、Crは20%程度であると好ましい。あるいはNi+Cuが45%程度の場合、Cr+Moが25%程度であると好ましい。
Niは、高温でのオーステナイト組織を安定にし、各種酸に対する耐食性、靭性をも改善するため、18%以上含有させる。Ni含有量を増加することにより、耐熱特性のために必要なCr,Mo,Al,Tiをより多く含有させることが可能になる。一方Niは高価な合金であり、本発明鋼ではコストの観点より50%以下の含有量に制限する。好ましい含有量は20~48%である。
Alは、脱酸元素であるとともに高Ni合金中でNiAl規則相を形成し高温強度を高める作用を有する。本発明では、酸化物の組成を制御して熱間加工性を高めるために、0.05%以上の含有が必要である。一方でAlが1.0%を越えると金属間化合物が析出しやすくなって耐熱特性を阻害するようになる。このためその含有量の上限を1.0%と定めた。好ましい範囲は0.1~0.6%である。
Tiは、高Ni合金中でNiTi規則相を形成し高温強度を高める作用を有する。このためには0.15%以上の含有が必要である。一方でTiが1.5%を越えると金属間化合物が析出しやすくなって耐熱特性を阻害するようになる。このため、本発明合金中での含有量を0.15~1.5%と定めた。
Nは、本発明のTi含有高Ni合金においては、TiNを生成して非金属介在物となり材料特性を劣化するとともに、酸化物と複合化して連続鋳造時のノズル閉塞を促進する有害な元素である。このため、その含有量の上限を0.02%以下に限定する。さらに好ましい含有量は0.01%以下である。
酸素は、本発明合金中でCa,Mg,Al,Tiとの間に酸化物系介在物を形成する。酸素の含有量は酸化物系介在物の総量に対応し、合金の脱酸状態の指標ともなる重要なものである。その含有量が0.003%を超えると所望の脱酸平衡を満足しなくなるとともに、連続鋳造時のノズル閉塞が発生しやすくなるため、酸素含有量の上限を0.003%と定めた。一方、酸素含有量の低減は酸化物系介在物の低減となり、ノズル閉塞抑制に有利に働くものの、合金中に過剰Caや過剰Mgを発生させやすくなる。このため、酸素含有量は0.0003%以上あることが好ましい。以上より、好ましい酸素含有量範囲は0.0003~0.0025%である。
Moは、耐熱合金の強度を高める元素であり、必要に応じて含有させることができる。耐熱性改善の目的のためには0.2%以上含有させることが好ましい。一方で高価な元素であり、本発明鋼では本鋼の合金コストを抑制する観点より5%の含有量を上限とする。Moは含有しなくても良い。
Wは、Moと同様に耐熱合金の強度を高める元素であり、必要に応じて添加することができる。本発明鋼において耐食性を高める目的のためには2%を上限に含有させる。Wは含有しなくても良い。
Cuは、合金の酸に対する耐食性を高める元素であり、かつ高温の組織安定性を改善する作用を有する元素であり、本発明では必要に応じて添加される。耐食性を高めるために0.1%以上含有させると良い。一方、3.0%を越えて含有させると凝固時に脆化を発生するようになるので上限を3.0%とした。Cuを含有させる場合の好ましい含有量は0.1~2.0%である。Cuは含有しなくても良い。
Coは、合金の高温組織安定性と耐食性を高めるために有効な元素であり、Niとともに含有させる。添加する場合は、0.1%以上含有させることが好ましい。2.0%を越えて含有させると高価な元素であるためにコストに見合った効果が発揮されないようになるため上限を2.0%と定めた。添加する場合の好ましい含有量は0.1~1.5%である。Coは含有しなくても良い。
《Caと過剰Ca》
Caおよび過剰Caについて説明する。Caは、合金の熱間加工性を改善するための重要な元素であり、合金中のSをCaSとして固定し、熱間加工性を改善するために含有させる。この反応は、以下のようになる。Caは、合金中の酸素と結合してCaOとなり、合金中にCaO単独介在物、あるいはCaO-Al23系介在物を生成する。Alなどの他の強脱酸元素の酸化を含めての酸化物形成によって、合金中の溶存酸素(Free酸素)をほとんどゼロとしたのちに、残余のCaと合金中のSが反応してCaSを生成する。その結果、合金中に残存したCaを本発明では過剰Ca(ΔCa)と呼ぶ。
合金中の元素含有量と、介在物中の組成の分析結果に基づいて、ΔCaを算出することができる。本発明において、過剰Ca(ΔCa)は下記式1を用いて計算される。
ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
ここで、Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比である。以下、詳述する。
式1右辺第1項のCaは合金中の全Caであり、硫化物としてのCa、酸化物としてのCa、過剰Caをすべて含んでいる。次に、硫化物としてのCa(質量%)は、CaSを構成しており、CaとSの原子量比から、合金中S含有量(質量%)の1.25倍と計算できる。そのため、式1右辺の第2項を記述している。
ΔCaを表記した式1の中のK(Ca/O)は合金断面の一定の測定視野におけるFE-SEM-EDS分析によって求められる酸素を含む酸化物系介在物中のCaと酸素の質量比の平均値である。ここで、K(Ca/O)はFE-SEM-EDS分析の方法によって値が変化しうるため、測定条件について明記する。本発明合金中の酸化物系介在物は非常に微細なため、EDS分析時にその分析値が他の介在物、析出物、合金母地の影響を受ける。これらの影響を除外するため、分析指定元素をCa,Mg,Al,酸素(O)に固定する。まず、Oのピークが現れる介在物を対象にして複数個の酸化物系介在物を選択する。選択した介在物の組成を測定し、その測定値より個々の介在物のCa組成とO組成を分析し、Ca/O質量比を求める。個々の介在物についてのCa/O質量比を平均し、得られた値をその試料のK(Ca/O)とする。
ΔCaの値を調整するに際しては、後述するように、合金添加と精錬方法により調整することができる。
図1には、横軸にΔCaをとり、縦軸を1100℃の絞り値としてプロットを行った。ΔCaは式1で示され、式1中のK(Ca/O)は図1にプロットされている個々の合金で異なる測定値を用いているが、0.05~2.5の範囲内にある。また、プロットされている個々の合金中に含まれる酸化物系介在物中のCaとAlの質量比:K(Ca/Al)は1.0~15の範囲内にある。Bを含有しないプロット(白丸)とBを含有する場合のプロット(黒三角)が描かれている。このうち、Bを含有しない白丸のプロットについて見ると、0.0003%以上の過剰Ca:ΔCaとすることにより、1100℃の絞りを70%以上とすることができる。一方で、過剰Caが多くなりすぎると、図1に示すように1100℃付近の高温の延性を低下し、ΔCaが0.0030%を超えると合金の1100℃の絞りが70%を下回るようになる。このため、ΔCaの下限を0.0003%、ΔCaの上限を0.0030%とした。ΔCaの望ましい範囲は0.0005~0.0020%である。
合金中のCa含有量については、ΔCaを上記好適範囲とするため、Caを0.0003%以上含有させる。一方、ΔCaが多すぎないよう、Caの含有量の上限を0.005%とした。Caの望ましい含有量範囲は0.0015~0.0050%、さらに望ましくは0.0030~0.0045%である。
K(Ca/O)の値に対する制約は求めないが、0.05未満であるとCa脱酸力が不足して合金の脱酸平衡がMg脱酸もしくはAl,Ti脱酸平衡に遷移し、ノズル閉塞を発生するようになる。一方でK(Ca/O)の理論上の上限値は2.5である。したがって、K(Ca/O)が0.05~2.5の範囲にあると良い。融点の高いTiO2を極力生成させないために、好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.30以上である。
《合金中Mg含有量》
Mgは、合金の熱間加工性の改善のために含有させることができる元素である。MgはMg合金による添加、または精錬によるスラグや耐火物からの還元によって、合金中に含有させることができる。一方、図2に示すように、過剰な含有は熱間加工温度の低温域(約900℃)で絞りを低下させる。そのためその含有量の上限を0.006%とした。Mgは含有しなくても良く、含有量の下限は定めない。
酸化物系介在物中のCaとAlの質量比率K(Ca/Al)》
酸化物系介在物中のCaとAlの質量比率K(Ca/Al)、は合金断面の一定の測定視野におけるFE-SEM-EDS分析によって求められる酸素を含む酸化物系介在物中のCaとAlの質量比の平均値である。この値は、合金のAl、Ti,Mg,Ca、O,S含有量や精錬時のスラグ組成、精錬方法により定まる特性値であり、本発明合金においてノズル閉塞の防止、過剰Ca量を通じた熱間加工性の制御にとって重要な指標である。K(Ca/Al)の値が1.0より小さいと酸化物系介在物の中に融点が高いCaO-Al23-TiO2の存在比率が大きくなり、ノズル閉塞を増加させるようになることから、その下限を1.0と定めた。Ca合金を添加して製造する本発明合金では、Ca合金を多く添加するほど、精錬時のスラグが高塩基度であるほど、精錬時に脱酸平衡が進むほど、本発明合金中の酸化物系介在物のK(Ca/Al)の値が大きくなる。K(Ca/Al)の値が大きくなると、酸素含有量が低下し、合金中の酸化物系介在物が融点の低いCaO-Al23の組成となり、ノズル閉塞が防止される。さらにK(Ca/Al)の値が大きくなるとCaO-Al23とCaOの両方が存在する組成となる。CaOは融点が高いため、CaOの生成はノズル閉塞を促進するようになる。K(Ca/Al)の値が15を超えるとCaOの比率やサイズが大きくなりすぎてノズル閉塞が発生しやすくなるとともに、過剰Ca量が増加して熱間加工性が低下するようになる。このため、K(Ca/Al)の値を1.0~15と定めた。K(Ca/Al)の好ましい範囲は1.2~12、さらに好ましい範囲は1.5~10である。
K(Ca/Al)の求め方は上記K(Ca/O)と同様である。即ち、合金断面の一定の測定視野におけるFE-SEM-EDS分析において、まず、Oのピークが現れる介在物を対象にして複数個の酸化物系介在物を選択する。選択した介在物の組成を測定し、その測定値より個々の介在物のCa組成とAl組成を分析し、その介在物のCa/Al質量比を求める。個々の介在物についてCa/Al質量比を求めた上で、これらを平均し、得られた値をその試料のK(Ca/Al)とする。
《請求項2記載の限定理由》
次に、請求項2記載の限定理由について述べる。請求項2に記載の合金は、合金中にBを含有する点で請求項1に記載の合金と相違している。
Bは、鋼の熱間加工性を改善する元素である。図1は、ΔCaと1100℃の絞りとの関係を示す図であり、白丸はBを含有せず、黒三角はBを含有している。図1に示したように、Bを含有することによって熱間加工の高温域の絞りを格段に向上する。このため、請求項2ではBが含有される。Bの熱間加工性の向上機構は明確ではないが、粒界に偏析することで粒界強度を高めると言われる。また、図1に示すように、Bを含有すると過剰Caが多い合金においても1100℃の絞りが大きくなる傾向があり、本発明合金において、過剰Caの限定範囲が緩和される。したがって、Ca合金を添加して製造する本発明合金ではBを含有させることが推奨される。B含有による絞り改善効果は本発明者らの実験の結果ではB含有量に比例して発現しており、0.0003%未満では改善効果が見られなかった。このため、B含有量の下限を0.0003%とした。一方で、過剰な添加は凝固割れを促進するため、その含有量の上限を0.0030%に定めた。
請求項2におけるCaおよび過剰Caについて説明する。Bは粒界を強化するとともに、粒界上のSと競合偏析し、Sの弊害を緩和する作用を有すると考えられている。その結果、過剰Caが少なく、多少のfreeSが残留する合金においても熱間加工性を改善しうると考えられる。このため、本発明合金では、式1で規定するΔCaが-0.0005%以上であれば、1100℃の絞りを70%以上とすることができる。ΔCaが負の値を示すときにfreeSが存在し、最大で0.0005%のfreeSが許容される。本請求項の合金ではその目的のためにCaを0.0003%以上含有させる。一方で、過剰Ca(ΔCa)が多くなっていくと、図1の黒三角に示すように1100℃付近の高温の延性を低下する。B含有合金ではΔCa増加による絞りの低下が緩和されるが、ΔCaが0.0050%を超えると合金の1100℃の絞りが70%を下回るようになる。このため、Caの含有量の上限を0.007%、ΔCaの上限を0.0050%とした。Caの望ましい含有量範囲は0.0015~0.0070%、さらに望ましくは0.0030~0.0060%、ΔCaの望ましい範囲は0.0005~0.0040%である。ΔCa(=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O)が残留するように請求項6で示した合金添加と精錬方法によりCa,S,O含有量とK(Ca/O)を制御することができる。
請求項2に記載の合金において、請求項1と相違する含有量範囲は以下のとおりである。即ち、Sの含有量上限は、B含有による熱間加工性改善作用にともなうSの熱間加工性阻害作用の一部が軽減されることにより、0.0020%とする。Caの含有量範囲上限は上述のとおり0.007%である。上記以外の成分含有量範囲は、請求項1と同様である。
《請求項3以降の限定理由》
引き続き、請求項3記載の酸化物系介在物の規定について述べる。
CaO、CaO-Al23の酸化物系介在物は、本発明合金のノズル閉塞防止、熱間加工性改善を特徴づける介在物である。CaOの存在はCa脱酸によりSをCaSとして固定し、熱間加工性を改善する。CaO-Al23はCaO-Al23-MgO-TiO2の4元系状態図において、MgOが15%以下、TiO2が5%以下の組成を有する酸化物である。CaO-Al23の組成を有する酸化物系介在物は融点が低下し、ノズル閉塞を防止する。また、TiO2はCaO-Al23の融点を高めるため、含有率が少ないことが好ましい。このため、その含有率を本発明では5%以下に規定する。一方CaOはノズル閉塞を促進する酸化物であるが、請求項1のK(Ca/Al)の説明で述べたように、K(Ca/Al)の値が15を超えない範囲とすることにより、CaOの存在によるノズル閉塞を抑制する。したがって、本発明の高Ni合金では、CaO、CaO-Al23のうちの1種または2種の酸化物系介在物を含有すると好ましい。
次に請求項4に規定した元素について述べる。
V,Nb,Ta,Snについて説明する。V,Nb,Taは何れも必要に応じて添加することができ、合金の高温特性を向上させる作用を有する。コストに見合った含有量とするため、その含有量の上限を1.0%と定めた。添加する場合の含有量の下限は0.003%である。また、好ましい含有量範囲は、0.03%~0.8%である。Snは微量に含有させると耐熱鋼の高温強度を付加的に高める作用を有する。このためには少なくとも0.001%以上の含有が必要である。一方で、多量の添加は熱間加工性を低下させる元素であり、その上限を0.10%と定めた。含有させる場合の好適な範囲は0.01~0.06%とすることが良い。
次に請求項5に記載の限定理由について述べる。
本発明の請求項1~4記載の高Ni合金の高温特性改善を図るため、必要に応じて希土類元素を添加することができる。希土類元素は、Sc、Y、ランタノイド系希土類元素の総称であり、合金の耐酸化性と熱間加工性を改善し、凝固割れ抑制の作用を有する元素である。希土類元素としてY、La,Ce,Ndなどの元素がある。これら特性の向上を図る目的で1種または2種以上添加することができる。いずれも過剰な添加は逆に熱間加工性および靭性を低下するためその含有量の上限を希土類元素の含有量の合計量として0.10%とすることが良い。添加する場合の好ましい含有量は合計で0.01~0.08%である。
《高Ni合金の製造方法》
次に請求項6に記載の限定理由を中心に、本発明の高Ni合金の製造方法について述べる。
本発明の高Ni合金の成分組成への調整は、溶鋼へのCa,Mg,B合金の添加方法と、溶鋼のフラックス精錬方法を調整することにより行うことができる。フラックス精錬において、CaO-Al23-MgO-SiO2系スラグを形成する。CaO、Al23、MgO、SiO2が主要成分であり、4成分の合計が90質量%以上であれば好ましい。下記に示すように、MgOは含有しなくても良い。フラックスの組成を、以下のように調整し、Ca合金を添加することによって行う。これら方法を通じて、酸化物系介在物の平均組成:K(Ca/Al)、過剰Ca(ΔCa)を所望の値に制御する。フラックス精錬を行う精錬炉としては、AODやVODを例示することができる。
CaO/SiO2の比率はスラグ中のCaOおよびSiO2の質量比である。フラックスにおいて、スラグの溶融性を向上するため、0~20%のCaF2を添加しても良い。この場合はスラグ組成として、CaO-Al23-MgO-SiO2-F系スラグと標記する。なお、CaF2を含有するスラグの場合は、スラグ中のCa含有率の分析値より、CaがすべてCaOであるとして質量を換算し、その数値を用いて計算する。下記CaO/Al23比率計算、及び上記スラグ4成分合計の計算におけるCaO成分値でも同様である。合金の脱酸、脱硫を進めるため、CaO/SiO2の比率を11.2以上とする。好ましくは12以上である。なお、SiO2の含有率は5%以下とすることが好ましい。
CaO/Al23の比率はスラグ中のCaOおよびAl23の質量比である。本発明ではCaO/Al23の比率を0.7~2.5に定める。この比率が0.7未満であると、スラグの脱酸力が低下し、酸化物系介在物中にTiO2が現れ、ノズル閉塞を発生するようになることから、その下限を0.7と定めた。一方、CaO/Al23の比率が2.5を超えると、本発明で用いるスラグの融点が上昇して精錬が困難となるため、その上限を2.5とした。
MgOの質量濃度:この値が高いと本合金の酸化物系介在物にMgOが多量に現れるようになること、MgOが還元されて合金中に過剰Mgが多く含有されるようになることから、その上限を15%に定めた。MgO濃度は好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下とすると良い。フラックス中にMgOを含有しなくても良い。
Ca合金の添加:Ca合金の添加は、本発明合金において、酸化物系介在物をCaOおよびCaO-Al23に制御するためにおこなう。Ca合金の添加前に溶融合金中に存在するTiO2,Al23、Al23・MgO、MgO等の酸化物系脱酸生成物はCa合金の添加によって還元され、CaOおよびCaO-Al23に変化する。このように、Ca合金の添加は本発明合金中の酸化物系介在物の組成制御のためにおこなう。添加するCa合金としては、Ca含有率が比較的低濃度のものが好ましく、目安としては40%以下のものが、さらに好ましくは30%以下のものが良い。以下に述べる実施例ではCa含有率が10%のNi-Ca合金を主体に用いた。また、添加量はCa合金のCa含有率にも依存するが、Ca含有率が10~30%の場合は、Ca純分にして0.003~0.040%程度が適している。
以上のようにフラックス精錬とCa合金の添加を行うことにより、K(Ca/Al)を本発明範囲内とするとともに、K(Ca/O)を調整し、式1のΔCaを本発明範囲内とすることができる。
一方、Mg合金の添加は実施しても良いが、添加する場合のMg純分は0.020%以下に制限し、MgOおよび過剰Mgが過剰に発生しないようにすることが好ましい。
以下に実施例について記載する。本発明者らは35kg真空溶解炉に20kg溶解用MgOるつぼを挿入して高Ni合金を溶解し、るつぼ中でフラックス精錬を行い、Al,Ti,Ca,Mg等を添加して17kg扁平鋳型に鋳造し、表1に示す組成の高Ni合金を得た。なお表1に記載されている成分は残部がFeおよび不可避的不純物元素である。また表1に示した成分について含有量が記載されていない部分は不純物レベルであることを示し、REM(希土類元素を示す。)としてCe,La,Yを添加した。含有量はそれら元素の合計を示している。
この溶解実験のフラックス精錬では、溶鋼質量当たり0.5~2質量%相当の配合フラックスをるつぼ中に投入し、フラックスを溶解して精錬実験をおこなった。この配合フラックスの組成(CaO/SiO2、CaO/Al23(いずれも質量比)、MgO(質量%))、合金添加量(Ca純分、Mg純分)(質量%)を表2に示した。発明例No.1,2,6,9,10,11では、CaO-Al23-MgO-SiO2系スラグを使用し、その他の発明例および比較例では、CaF2を10~15%含有するCaO-Al23-MgO-SiO2-F系スラグとした。ここで、Ca合金はCa含有率が10%のNi-Ca合金、Mg合金はMg含有率が20%のNi-Mg合金を用いた。なお、CaF2を含有するスラグの場合は、スラグ中のCa含有率の分析値より、CaがすべてCaOであるとして質量を換算し、その数値を用いて計算した。CaO/SiO2比率計算、CaO/Al23比率計算、及びスラグ4成分合計の計算におけるCaO成分値いずれも同様である。
溶解材を鋳造した鋳片は48mm厚×170mm幅×225mm高さの寸法を有する。この鋳片より圧延試験片と高温引っ張り試験片を採取した。
圧延試験片は表面を2mm研削して鋳片表面の疵を除去したのちに44mm厚×105mm幅×130mm長さの形状に切り出し、1200℃に1時間加熱後、6.5mm厚×120mm幅×600mm長さまで熱間圧延した。圧延終止温度は850℃とした。この熱間圧延で発生した耳割れに対して、熱間圧延材の定常部500mm長の両サイドの最大耳割れ長さを測定し、それぞれの最大耳割れ長さの和を耳割れ長さとして表2に示した。また、表面での疵の有無を目視観察し、表面疵が見られた厚板については表面疵を機械研削して除去し、その深さの最大値を判定した。表面疵の深さの最大値が0.10mm未満であれば◎、0.10mm以上0.25mm未満であれば○、0.25mm以上0.5mm未満であれば△、0.5mm以上であれば×とし、その結果を表2に示した。
高温引張試験片は鋳片表層部より直径が8mm、長さが110mmの形状に採取し、高周波加熱により長さ中央部20mmを1200℃に加熱、試験温度に降温し、30秒保持の後、20mm/sの速度で引張破断した。破断後の断面収縮率を絞り(%)として高温延性を評価した。1100℃、900℃での絞りを表2に示した。1100℃の絞りが70%以上、900℃の絞りが50%以上であれば良好とした。
前記圧延した厚板に1165℃×10分の熱処理をおこない、介在物測定用試料を採取した。介在物の測定は、FE-SEM-EDS分析によった。なお、FE-SEMは株式会社日立ハイテクノロジー社製SU5000を、解析ソフトはEMAXEvolutionをそれぞれ用いた。6mm厚×10mm幅×20mm長の試験片を機械加工により切り出し、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物等の析出物が溶解しないように研磨面温度を保持しつつ、ダイヤモンド砥粒にて鏡面研磨仕上げをおこなった。測定用試料の1/4板厚部において、測定面積を5mm2とし、面積より換算した相当円直径が1μm以上の介在物の中心部の組成を分析した。
分析の結果、酸化物、硫化物、Ti窒化物、Ti炭化物などが観察された。この分析により、酸素の含有が認められる酸化物系介在物の存在位置を確認した。さらに、得られた各々の酸化物系介在物の任意の30ケを抽出し、それらについて得られたプロファイルを、Ca,Mg,Al,Oの元素のみ指定して再度定量計算を行い、介在物毎にそれぞれの元素の質量比率を測定し、個々の酸化物系介在物中のCa,Mg,Alと酸素の質量比:K(Ca/O)、K(Mg/O)、K(Al/O)およびCaとAlの質量比:K(Ca/Al)を求め、最後に30ケの介在物全部の平均値を求めた。これらの数字のうち、K(Ca/Al)とK(Ca/O)の値を表2に示した。また、上記酸化物系介在物の全体をSEM-EDS分析し、CaO,CaO-Al23、MgO、CaO-Al23-TiO2(TiO2が5%超)いずれの酸化物より構成されているかを判定し、その結果を表2に示した。表2において、C:CaO,CA:CaO-Al23、M:MgO、CAT:CaO-Al23-TiO2を意味している。
本発明の合金では、酸化物系介在物がCaO、CaO-Al23となっているか、一部にMgOが混入したものになっていることが明らかである。
さらに、過剰Caとして、合金の化学組成(Ca,S,O)と上記のK(Ca/O)を用いて式1からΔCaを計算し、表2に示した。
Figure 0007408347000001
Figure 0007408347000002
表1、表2に示す実施例より、本発明が開示する高Ni合金は1100℃の絞りが70%以上、900℃の絞りが50%以上であり、また、耳割れ長さが3mm以下であって熱間加工性に優れることがわかる。発明例1,3~10では熱間圧延後の厚板表面に有害な表面疵はほとんど観察されず、表面疵の深さの最大値は0.10mm未満であった。介在物の一部にCaO-Al23-TiO2(CAT)が観察された発明例2,11では表面疵深さの最大値が他の発明例よりやや多く、0.10以上、0.25mm未満であったが、合格範囲内であった。
一方で、比較例No.31~36においては、フラックス精錬におけるスラグ組成が本発明の好適範囲から外れていることから、結果としてO,Ca,Mg含有量のいずれかの外れを伴いあるいは伴わずに、過剰Ca(ΔCa)、K(Ca/Al)が本発明範囲よりはずれていることがわかる。この結果、比較例No.31~36はいずれも、1100℃、900℃いずれかもしくは両方の絞りが低く、耳割れ長さが5mm以上、表面疵深さが0.25mm以上で熱間加工性に乏しいことが明らかである。
以上の実施例からわかるように本発明により熱間加工性が良好な高Ni合金を製造することができることが明確となった。
本発明により、高温用途のAl,Tiを含有する高Ni合金を歩留まり良く製造することができるようになり、高価なNi合金の節減につながるなど産業上寄与するところは極めて大である。

Claims (9)

  1. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0003~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる高Ni合金であって、合金中にCaO-Al 2 3 の酸化物系介在物を含有することを特徴とする高Ni合金。
    ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
    Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
  2. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0020%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、B:0.0003~0.0030%、Ca:0.0003~0.007%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが-0.0005~0.0050%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高Ni合金。
    ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
    Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
  3. 請求項2の高Ni合金であって、合金中にCaO、CaO-Al23のうちの1種または2種の酸化物系介在物を含有する高Ni合金。
  4. さらに質量%で、V:0.003~1.0%、Nb:0.003~1.0%、Ta:0.003~1.0%、Sn:0.001~0.10%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の高Ni合金。
  5. さらに質量%で、希土類元素を合計で0.003~0.10%含むことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の高Ni合金。
  6. 合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al23-MgO-SiO2系スラグ又はCaO-Al23-MgO-SiO2-F系スラグの組成を、CaO/SiO2:11.2以上、CaO/Al23:0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の高Ni合金の製造方法。
  7. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、
    さらに質量%で、V:0.003~1.0%、Nb:0.003~1.0%、Ta:0.003~1.0%、Sn:0.001~0.10%、希土類元素を合計で0.003~0.10%、のうちの1種または2種以上を含有し、
    酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0003~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高Ni合金。
    ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
    Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
  8. 合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al23-MgO-SiO2系スラグ又はCaO-Al23-MgO-SiO2-F系スラグの組成を、CaO/SiO2:11.2以上、CaO/Al23:0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする請求項7に記載の高Ni合金の製造方法。
  9. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、Cr:18~25%、Ni:18~50%、Al:0.05~1.0%、Ti:0.15~1.5%、N:0.02%以下、O:0.003%以下、Mo:5%以下、W:2%以下、Cu:3%以下、Co:2.0%以下、Ca:0.0003~0.005%、Mg:0.006%以下を含有し、酸化物系介在物の中のCa/Al質量比:K(Ca/Al)が1.0~15の範囲にあり、さらに式1を用いて計算される過剰Ca:ΔCaが0.0003~0.0030%の範囲にあり、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる高Ni合金の製造方法であって、
    合金の前記成分組成への調整は、CaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 系スラグ又はCaO-Al 2 3 -MgO-SiO 2 -F系スラグの組成を、CaO/SiO 2 :11.2以上、CaO/Al 2 3 :0.7~2.5、MgO:15%以下とし、Ca合金を溶鋼中に添加することによって行うことを特徴とする高Ni合金の製造方法。
    ΔCa=Ca-1.25×S-K(Ca/O)×O ・・・ 式1
    Ca,S,Oは合金中の各元素の含有量(質量%)、K(Ca/O)は酸化物系介在物の中のCa/O質量比
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