以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14を一対備えた、攪拌装置10の構成を模式的に示している。図示のように、攪拌装置10は、ロッド部12、一対の攪拌翼14(14A、14B)、取付部30、配管32、エア配管33、複数の突出部34、屈折機構40、軸回転機構46、スパイラル管52、及び、伸張機構58を含んでいる。ロッド部12は、攪拌装置10の本体部分を構成するものであり、中空の略直管状をなし、その外側や内側に様々な部材が取り付けられている。
一対の攪拌翼14は、ロッド部12の先端に取り付けられており、図1の例では、一方の攪拌翼14Aが図中左側に、他方の攪拌翼14Bが図中右側に位置するように、ロッド部12の先端部12aを挟んで互いに反対向きに取り付けられている。これら一対の攪拌翼14A、14Bの各々は、大略円筒状を成す回転部材76と、この回転部材76の外周部に固定された複数の攪拌羽根15及び複数の切削羽根17とを含み、後述する回転駆動部20によって回転されるようになっている。本実施形態の攪拌翼14には、複数の攪拌羽根15として、複数の第1の攪拌羽根16が固定されている。又、一対の攪拌翼14A、14Bは、各々の回転軸18がロッド部12の延在方向(図1及び図2における上下方向)と直交或いは略直交するように、ロッド部12の先端部12aに取り付けられている。図1の例では、各々の回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αが、ロッド部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態になっている。例えば、回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αは、これに限定されるものではないが、90°よりも5°程度小さくなっている。
攪拌翼14A、14Bの各々の回転部材76の外周部には、着脱可能に攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)及び切削羽根17を固定するための固定部78(図3及び図4参照)が、回転部材76の回転方向及び軸方向に間隔を空けた複数の位置に設けられている。本実施例では、軸方向に間隔を空けて3列、各列で回転方向に間隔を空けて6個所の、合計で18個所に固定部78が設けられており、図3及び図4の(a)~(c)には、各列の固定部78を図示している。図3は、一対の攪拌翼14A、14Bのうち、図1における左側に位置する一方の攪拌翼14Aを示し、図4は、図1における右側に位置する他方の攪拌翼14Bを示している。なお、図3(a)~(c)に示されている攪拌翼14Aは、回転位相が同一であり、図4(a)~(c)に示されている攪拌翼14Bについても、回転位相が同一である。
図3(a)から確認すると、一方の攪拌翼14Aの軸方向内側部分には、6個所の固定部78のうちの4箇所に、2枚の第1の攪拌羽根16と2枚の切削羽根17とが固定されている。2枚の第1の攪拌羽根16は、位相が互いに180°異なる位置にあり、2枚の切削羽根17は、位相が互いに180°異なる位置にある。図3(b)を確認して、攪拌翼14Aの軸方向中間部分には、6個所の固定部78のうちの位相が互いに180°異なる2箇所の固定部78に、2枚の第1の攪拌羽根16が固定されている。又、図3(c)を確認すると、攪拌翼14Aの軸方向外側部分には、6個所の固定部78のうちの3箇所に、2枚の第1の攪拌羽根16と1枚の切削羽根17とが固定されており、2枚の第1の攪拌羽根16は、位相が互いに180°異なる位置にある。そして、図3(a)~(c)で確認できるように、攪拌翼14Aの軸方向に位置が異なる3列に2枚ずつ、合計で6枚固定された第1の攪拌羽根16は、その全てが互いに位相が60°異なる位置に配置されている。又、攪拌翼14Aの軸方向外側部分に固定された1枚の切削羽根17は、攪拌翼14Aの軸方向内側部分に固定された2枚の切削羽根17と、互いに位相が異なる位置に配置されている。なお、図3の攪拌翼14Aは、回転軸18で通常は右回りに回転されるものである。
攪拌翼14Aの軸方向に位置が異なる3列の各々に固定された2枚の第1の攪拌羽根16のうちの一方は、図5及び図6に示すような形状を有している。すなわち、この第1の攪拌羽根16は、2つの面16a及び16bを有する板状を成しており、付け根部分80、外刃部分82、曲げ部分84、切欠き86及び挿通孔88を備えている。付け根部分80は、攪拌翼14の回転部材76に設けられた固定部78に固定される部位であり、この付け根部分80に設けられた本実施例では3つの挿通孔88を介して、ボルト止め等によって固定される。外刃部分82は、2つの面16a及び16bの間に位置し、図5(b)に示されるような正面視で、付け根部分80から図中上方へ向かって延びた後、図中左上方向から図中左下方向へと、山なりに弧を描くように延びている。
曲げ部分84は、図5(b)における左側端部に位置し、図5(a)に示されるような外刃部分82を見下ろす平面視で、外刃部分82の延在方向(図中左右方向)から逸れる方向に曲げられた部位であり、図示の例では図中左上方向へ折り曲げられている。そして、この曲げ部分84は、第1の攪拌羽根16が回転部材76に固定されたときに、回転部材76の回転方向に対して傾いていることで、傾斜部100を形成する部位となる。切欠き86は、図5(b)に示されるような正面視で、付け根部分80よりも図中左寄りの位置、かつ、外刃部分82よりも図中下側の位置に、外刃部分82に倣った形状で設けられている。このような構成により、第1の攪拌羽根16は、その全体形状が、図5(a)及び(b)における左方向へ延びた流線形を成している。なお、攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16と後述する第2及び第3の攪拌羽根110、130とを含む)を形成する材料には、攪拌羽根15の各々に求められる強度を確保可能な任意の材料を採用できる。
上述した第1の攪拌羽根16は、図3に示すように回転部材76に固定された状態において、曲げ部分84を除いた板状の2つの面16a、16b(図5参照)が、回転部材76の軸方向(図3における紙面と直交する方向)と直交し、外刃部分82が、回転部材76の回転軸18を中心とした外側に位置している。又、外刃部分82は、付け根部分80から回転部材76の回転軸18を中心とした外側へと延びた後、回転部材76の回転方向と反対方向(図中左回り方向)へ向かって延びている。更に、曲げ部分84が、第1の攪拌羽根16の、回転部材76の回転方向と反対の端部側に位置し、回転部材76の回転方向から逸れる方向に曲がって傾斜部100を形成している。図3には、回転軸18で攪拌翼14Aが回転したときの、第1の攪拌羽根16の最も外側の部分の回転移動の軌跡を、符号Tで示す仮想線により図示しており、このような図3から、第1の攪拌羽根16の外刃部分82の一部が、回転軌跡Tと重なっていることが分かる。
ここで、図1を参照すると、一方の攪拌翼14Aに図示されている6枚の第1の攪拌羽根16のうち、図1の例において下側に位置している3枚の第1の攪拌羽根16が、図5及び図6に示した第1の攪拌羽根16に相当する。図1のこれら3枚の第1の攪拌羽根16は、攪拌翼14Aが回転したときに回転移動される方向を前方としたときの、後方側から視た状態(図5(b)における左方向から図示した向きに相当)が図示されており、曲げ部分84が図1における右方向へ曲げられている。なお、図1では、図示の便宜上、第1の攪拌羽根16及び切削羽根17の形状や配置を簡略化して示している。
一方、攪拌翼14Aの軸方向に位置が異なる3列の各々に固定された2枚の第1の攪拌羽根16のうち、残りのもう一方の第1の攪拌羽根16は、図5及び図6に示した第1の攪拌羽根16との比較において、曲げ部分84の曲げ方向のみが異なっており、残りの部位は全く同じ構造になっている。図1を参照して、一方の攪拌翼14Aに図示されている6枚の第1の攪拌羽根16のうち、図1の状態で上側に位置している3枚の第1の攪拌羽根16が、図5及び図6に示した第1の攪拌羽根16と曲げ部分84の曲げ方向が異なる第1の攪拌羽根16に相当する。これら3枚の第1の攪拌羽根16は、攪拌翼14Aが回転したときに回転移動される方向を前方としたときの、前方側から視た状態(図5(c)の向きに相当)が図示されており、曲げ部分84が図1における左方向へ曲げられている。すなわち、図3(a)~(c)の各々に示された、位相が互いに180°異なる位置に配置された2枚の第1の攪拌羽根16は、曲げ部分84の曲げ方向が、図3における紙面と直交する方向に関して、互いに反対向きになっている。
他方、図3(a)及び(c)に示された3枚の切削羽根17の各々は、図7に示すような形状を有している。すなわち、この切削羽根17は、2つの面17a、17bを有する板状を成しており、付け根部分92、曲げ部分96及び挿通孔98を備えている。付け根部分92は、攪拌翼14の回転部材76に設けられた固定部78に固定される部位であり、この付け根部分92に設けられた本実施例では3つの挿通孔98を介して、ボルト止め等によって固定される。曲げ部分96は、図7(a)及び(b)における左側に位置し、図7(a)に示されるような平面視で、付け根部分92からの延在方向(図中左右方向)から逸れる方向に曲げられた部位であり、図示の例では図中左下方向へ折り曲げられている。更に、図7での図示は省略しているが、切削羽根17の曲げ部分96の先端には、図3(a)及び(c)に示すように、切削ビット94が取り付けられている。この切削ビット94には、攪拌翼14が右回り或いは左回りのどちらの方向に回転されても対応できるような両刃が設けられている。なお、切削羽根17や切削ビット94を形成する材料には、各々に求められる強度を確保可能な任意の材料を採用できる。
切削羽根17は、図3に示すように回転部材76に固定された状態において、曲げ部分96を除いた板状の2つの面17a、17b(図7参照)が、回転部材76の軸方向(図3における紙面と直交する方向)と直交する向きで固定されている。又、曲げ部分96が、回転部材76の回転軸18を中心とした外側に位置しており、その曲げ部分96の先端が、攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)の回転軌跡Tよりも外側に位置している。すなわち、切削羽根17は、図3に示されるような回転部材76の軸方向視で、回転部材76の外周部と直交する方向(回転軸18を中心とした放射方向)の大きさが、攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)よりも大きくなっている。更に、切削羽根17は、回転部材76の回転方向と平行な方向の大きさが、攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)よりも小さくなっていることが確認できる。ここで、図1を参照して、一方の攪拌翼14Aに図示されている3枚の切削羽根17のうち、図中右側に位置する2枚の切削羽根17(図3(a)の2枚の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図1における右側へ向かう向きで固定されている。これに対し、攪拌翼14Aの図中左側に位置する1枚の切削羽根17(図3(c)の1枚の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図1における左側へ向かう向きで固定されている。
次に、図4を確認すると、他方の攪拌翼14Bは、回転軸18で通常は左回りに回転されるものである。図4(a)に示す攪拌翼14Bの軸方向内側部分には、2枚の第1の攪拌羽根16と2枚の切削羽根17とが固定され、図4(b)に示す攪拌翼14Bの軸方向中間部分には、2枚の第1の攪拌羽根16が固定され、図4(c)に示す攪拌翼14Bの軸方向外側部分には、2枚の第1の攪拌羽根16と1枚の切削羽根17とが固定されている。そして、これらの第1の攪拌羽根16及び切削羽根17は、図3に示した攪拌翼14Aに固定された第1の攪拌羽根16及び切削羽根17と、左右対称の位置関係にある。更に、図1で確認できるように、攪拌翼14Bに固定された第1の攪拌羽根16の曲げ部分84及び切削羽根17の曲げ部分96は、攪拌翼14Aに固定された第1の攪拌羽根16の曲げ部分84及び切削羽根17の曲げ部分96と、図1における左右対称の方向に曲げられていることが分かる。このため、攪拌翼14Bに固定された第1の攪拌羽根16及び切削羽根17の詳細な説明は、攪拌翼14Aに固定された第1の攪拌羽根16及び切削羽根17の説明を読み替えて参照されたい。
上述したように一対の攪拌翼14A、14Bに固定された第1の攪拌羽根16及び切削羽根17のうち、攪拌翼14Aの軸方向内側部分に固定された切削羽根17と、攪拌翼14Bの軸方向内側部分に固定された切削羽根17とは、互いに接近する方向に曲がっている。このため、これらの切削羽根17は、ロッド部12の先端部12aの、側方向(図1における左右方向)中心の直下を掘削及び攪拌するような位置にある。又、これらの切削羽根17は、攪拌翼14の回転により、図1における上側の位置にあるときにロッド部12に干渉しないように、かつ、図1における下側の位置にあるときに異なる攪拌翼14に設けられた切削羽根17同士が干渉しないように、適切な曲げ角度及び長さで設けられている。
図1及び図2に戻り、上述した回転駆動部20は、ロッド部12の先端で攪拌翼14に内蔵されるようにして、一対の攪拌翼14毎に別個に設けられており、本実施例では、一方の攪拌翼14Aの回転部材76を回転させる第1攪拌翼用油圧モータ20Aと、もう一方の攪拌翼14Bの回転部材76を回転させる第2攪拌翼用油圧モータ20Bとで構成されている。第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20Bは、重機64(図9参照)から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、一対の攪拌翼14A、14Bを回転させるものであり、ロッド部12の内部を通して油圧が供給されるようになっている。又、第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20Bは、夫々、回転制御機構22を具備しており、この回転制御機構22によって、各攪拌翼14の回転方向、回転数及び回転トルク等が制御される。
更に、図1及び図2の例では、回転駆動部20の各々に回転補助制御部62が備えられている。これらの回転補助制御部62は、後述する軸回転機構46によりロッド部12が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼14を回転させるように、回転制御機構22の各々を制御するものである。この制御の具体的な内容については、軸回転機構46と併せて後ほど説明する。なお、回転補助制御部62は、回転制御機構22を制御可能な位置であればその設置位置は任意であり、例えば、ロッド部12の内部に設置されていてもよく、重機64に設置されていてもよい。
上述したような構成により、攪拌装置10を用いた施工時に、回転制御機構22の制御を受けた油圧モータ20A、20B(回転駆動部20)によって一対の攪拌翼14が回転され、攪拌翼14の外周に沿って回転移動する複数の切削羽根17により、地盤G(図9参照)を切削しながら、同じく攪拌翼14の外周に沿って回転移動する複数の攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)により、地盤Gが攪拌されることになる。なお、図2では、回転移動している複数の第1の攪拌羽根16及び切削羽根17を、簡略的に円形で図示している。
図1を参照して、複数の突出部34は、一対の攪拌翼14が回転したときに、各攪拌翼14においてその攪拌翼14の回転軸18と平行な方向について異なる位置で回転する、2枚以上の攪拌羽根15(第1の攪拌羽根16)の間へ向かって突出するように、ロッド部12に取り付けられるものである。図1の例では、まず一方の攪拌翼14Aから確認すると、攪拌翼14Aの外周の図中上側に図示されている3枚の第1の攪拌羽根16間の各々に向かって突出するように、2つの突出部34が支持部材36を介してロッド部12に固定されている。同様に、もう一方の攪拌翼14Bを確認すると、攪拌翼14Bの外周の図中上側に図示されている3枚の第1の攪拌羽根16間の各々に向かって突出するように、2つの突出部34が支持部材36を介してロッド部12に固定されている。これらの突出部34は、例えば棒状や板状であってよく、その材質は、剛性が高いものやある程度撓るようなもの、例えば鋼製ワイヤ等であってもよい。又、複数の突出部34は、支持部材36に対して、或いは支持部材36と共にロッド部12に対して、着脱可能に取り付けられており、必要に応じて取り付け及び取り外しされるようになっている。なお、図2では、複数の突出部34や支持部材36の図示を省略している。
図2を参照して、配管32は、一対の攪拌翼14A、14Bの近傍に、地盤改良のための改良材を供給するためのものであり、本実施例ではロッド部12の外側の、前後方向後方側(図2における右側)に取り付けられている。更に、配管32は、ロッド部12に対して着脱可能に、ロッド部12の一部に沿って取り付けられている。なお、図2では、便宜上、図示を控えているが、配管32の取り付け方法は、ロッド部12に対して着脱可能なものであれば、任意の方法が採用できる。又、図2において、配管32は、改良材の吐出口32aとなる一方の端部(図中下方の端部)までの、ロッド部12に沿った一部のみが図示されており、実際には、配管32のもう一方の端部が、重機64やその近傍等に設置される改良材の供給元まで延びている。
ここで、配管32は、改良材を吐出する吐出口32aの位置が調整可能になっており、例えば図8には、吐出口32aの位置が図2と異なる位置に調整された状態の配管32を図示している。なお、図8では攪拌翼14の図示を省略すると共に、ロッド部12を簡略化して図示している。図8に示される配管32は、図2の例では吐出口32aだった部位を接続部32bとして、ロッド部12の先端部12aに沿って長さが延長されており、吐出口32aが先端部12aの図中下方側に位置している。又、配管32の一部が、例えば鋼製のカバー38により覆われている。なお、配管32の位置は、ロッド部12の一部に沿って取り付けられていれば任意であり、ロッド部12の側方側(図1における左側又は右側)や前方側(図2及び図8における左側)に取り付けられてもよい。又、後述する屈折機構40によるロッド部12の屈折に対応するために、配管32の一部がフレキシブルな材料により形成されていてもよい。
図2に戻り、エア配管33は、一対の攪拌翼14A、14Bの近傍にエア(空気)を供給するためのものであり、図2の例では配管32と平行に、ロッド部12の外側の図2における右側に取り付けられている。配管32と同様に、エア配管33は、ロッド部12に対して着脱可能に、ロッド部12の一部に沿って取り付けられており、その取り付け方法は、ロッド部12に対して着脱可能なものであれば、任意の方法が採用できる。又、図2において、エア配管33は、エアの吐出口33aとなる一方の端部(図中下方の端部)までの、ロッド部12に沿った一部のみが図示されており、実際には、エア配管33のもう一方の端部が、重機64やその近傍等に設置されるエアの供給元まで延びている。更に、エア配管33は、この点も配管32と同様に、吐出口33aの位置が調整可能になっており、状況に応じて吐出口33aの位置が設定される。
上記のようなエア配管33の位置は、ロッド部12の一部に沿って取り付けられていれば任意であり、ロッド部12の側方側(図1における左側又は右側)や前方側(図2における左側)に取り付けられてもよい。又、後述する屈折機構40によるロッド部12の屈折に対応するために、エア配管33の一部がフレキシブルな材料により形成されていてもよい。
なお、本実施例の攪拌装置10は、改良材を供給する配管32とエアを供給するエア配管33とを、1本ずつ具備する構成であるが、これらのいずれか一方を具備する構成であってもよく、配管32を2本又はエア配管33を2本具備する構成であってもよい。更に、改良材とエアとを合流させて同時に供給する配管を具備する構成であってもよく、そのような配管を2本備えていてもよい。或いは、改良材及びエアを同時に供給する配管と、配管32又は配管33とのいずれか一方とを、同時に具備する構成であってもよい。
図1及び図2に戻り、スパイラル管52は、外周に螺旋状にガイド板54が設けられた直管状をなしており、図1及び図2における下方側の先端が、一対の攪拌翼14A、14Bの図中上方近傍に達するように、本実施例ではロッド部12の前方側(図2における左側)に、ロッド部12に沿って取り付けられている。又、スパイラル管52は、重機64から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して軸回転するようになっており、本実施例では、スパイラル管52の図中上端側を保持するように設置された、油圧式のスパイラル管軸回転用モータ56によって軸回転される。なお、スパイラル管52を軸回転させる方法や、軸回転可能にロッド部12に取り付ける方法は、本実施例に限定されることなく別の方法であってもよい。
屈折機構40は、重機64から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の中途部分から先端までを屈折させるものである。本実施例において、屈折機構40は、図2(a)に示すように、ロッド部12の内部に設置されたロッド屈折用シリンダ42と、ロッド部12の中途部分において、それよりも図中上方の部位と下方の部位とをピン接続するピン44とを含んでいる。図2(a)の状態では、ロッド屈折用シリンダ42が伸張してロッド部12が真直ぐになっている。これに対し、図2(b)には、ロッド屈折用シリンダ42が縮退することで、ロッド部12のピン接続部分から先端までが、ピン44を軸として僅かに回動し、ロッド部12の延在方向(図中上下方向)に対して図中右側へ屈折された状態を示している。なお、図2(b)では、便宜上、ロッド屈折用シリンダ42及びピン44の図示を省略している。又、屈折機構40は、ロッド屈折用シリンダ42及びピン44を含む構成に限定されず、別の構成であってもよい。
軸回転機構46は、重機64から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の非屈折状態での延在方向(図中上下方向)と平行な軸を回転軸として、ロッド部12を左回り及び右回りの夫々で軸回転させるものである。本実施例において、軸回転機構46は、図1に示すように、ロッド部12の側方向(図中左右方向)両側に配置された、ロッド回転用第1シリンダ48とロッド回転用第2シリンダ50とを含んでいる。ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50は、これらの伸縮動作を組み合わせることによって、取付部30に対してロッド部12を軸回転させるように、ロッド部12及び取付部30の双方に接続されている。
図1及び図2には、ロッド部12が軸回転されていない基準状態を示しており、この状態から、ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50の伸縮動作の組み合わせにより、本実施例では左回り及び右回りの夫々で最大で90°、ロッド部12を軸回転させるようになっている。なお、軸回転機構46によるロッド部12の最大回転角度は、90°に限定されるものではなく、90°より大きくても小さくてもよい。又、軸回転機構46は、ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50を含む構成に限定されることはなく、他の構成であってもよい。
ここで、回転補助制御部62によるロッド部12の軸回転の補助方法について説明する。上述したように、回転補助制御部62は、軸回転機構46によってロッド部12が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼14が回転されるように、回転制御機構22を制御するものである。例えば、軸回転機構46によりロッド部12が平面視で右回りに軸回転される際、回転補助制御部62は、一方の攪拌翼14Aが図1における左側から視て左回り(通常時とは反対方向)に回転し、他方の攪拌翼14Bが図1における右側から視て左回り(通常時と同じ回転方向)に回転するように、回転制御機構22の各々を制御する。
又、軸回転機構46によりロッド部12が平面視で左回りに軸回転される際、回転補助制御部62は、一方の攪拌翼14Aが図1における左側から視て右回り(通常時と同じ回転方向)に回転し、他方の攪拌翼14Bが図1における右側から視て右回り(通常時とは反対方向)に回転するように、回転制御機構22の各々を制御する。これらの何れの場合であっても、一対の攪拌翼14A及び14Bは、同一方向から視たときに互いに反対方向に回転されることになる。なお、このような回転補助制御部62を具備しない構成であってもよく、この場合は、軸回転機構46によりロッド部12を軸回転させる際に、重機64のオペレータ室68(図9参照)からの操作によって、ロッド部12の軸回転を補助する上記のような方向に一対の攪拌翼14A及び14Bを回転させるように、回転制御機構22の各々を制御してもよい。
伸張機構58は、重機64から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の長さを伸張させるものであり、本実施例では、取付部30の前方側(図2における左側)に配置されたロッド伸張用シリンダ60を含んでいる。ロッド伸張用シリンダ60は、その縮退動作によって、取付部30から先端までのロッド部12の長さを伸張させるように、ロッド部12及び取付部30の双方に接続されている。図1及び図2には、ロッド伸張用シリンダ60が伸張してロッド部12が伸張されていない標準状態を示しており、この状態からロッド伸張用シリンダ60が縮退すると、その縮退した長さの分だけロッド部12が伸張するようになっている。なお、伸張機構58の構成は本実施例の構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。
一方、取付部30は、上記のような構成のロッド部12を、例えば図9に示すように、重機64としての油圧ショベル64Aの、作業機66に対して取り付けるためのものである。より詳しくは、取付部30は、油圧ショベル64Aの前方(図中左側)においてロッド部12の先端が下方を向き、かつ、一対の攪拌翼14A、14Bが、油圧ショベル64Aの側方向の左側及び右側(紙面と直交する方向の奥側及び手前側)に位置するように、ロッド部12を作業機66に取り付ける。更に、取付部30は、図1及び図2を参照して、軸回転機構46により軸回転可能、かつ、伸張機構58により伸張可能に、ロッド部12を支持している。
図1、図2及び図9を参照して、上述したような構成を有する攪拌装置10は、図9に示すように油圧ショベル64Aに取り付けられた状態で、以下のように動作する。すなわち、回転駆動部20により回転される一対の攪拌翼14A、14Bによって、地盤Gが掘削されると共に、配管32から供給される改良材と、エア配管33から供給されるエアと、地盤Gの形成土とが混合攪拌される。このとき、一対の攪拌翼14A、14Bにより掘削及び攪拌される位置は、油圧ショベル64Aの作業機66の操作によって制御され、一対の攪拌翼14A、14Bの回転方向、回転速度、回転トルク等は、回転制御機構22によって制御される。又、配管32からの改良材の供給と共に、スパイラル管52の外周に設けられたガイド板54が図中上方に向かって回転する方向に、スパイラル管52がスパイラル管軸回転用モータ56によって軸回転される。
更に、必要に応じて、屈折機構40によるロッド部12の油圧ショベル64A側への屈折、軸回転機構46によるロッド部12の軸回転、及び/又は、伸張機構58によるロッド部12の伸張が行われる。この際、ロッド部12の屈折角度、ロッド部12の軸回転角度、ロッド部12の伸張長さは、夫々の最大量までの間の任意の角度或いは長さに設定される。参考として、図9には、ロッド部12を伸張させない状態で地盤Gを掘削及び攪拌した領域を細かいハッチングで、伸張機構58によってロッド部12を伸張させた状態で地盤Gを掘削及び攪拌した領域を粗いハッチングで、夫々図示している。加えて、施工時に用いられる改良材には、セメントスラリー等のスラリー、セメント等の粉体、或いは、腐食性材料といったものの中から、施工条件に応じた適切な改良材が選択される。更に、様々な材質及び配管径を有する複数の配管32の中から、選択された改良材の供給に適した材質で形成されると共に、施工条件に適した配管径を有する配管32が選択され、ロッド部12に取り付けられて使用される。
ここで、回転駆動部20を構成する第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20B、屈折機構40を構成するロッド屈折用シリンダ42、軸回転機構46を構成するロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50、伸張機構58を構成するロッド伸張用シリンダ60、並びに、スパイラル管軸回転用モータ56は、上述したように、何れも、重機64から供給される油圧によって駆動されるものである。図10には、攪拌装置10を具備する重機64としての油圧ショベル64Aの、油圧制御イメージを概略的に示している。図示のように、油圧ショベル64Aは、油圧切替制御部72を有しており、この油圧切替制御部72によって、油圧の供給先や供給量が制御されるようになっている。
油圧の供給先には、上述した第1攪拌翼用油圧モータ20A、第2攪拌翼用油圧モータ20B、ロッド屈折用シリンダ42、ロッド回転用第1シリンダ48、ロッド回転用第2シリンダ50、ロッド伸張用シリンダ60、スパイラル管軸回転用モータ56に加えて、油圧ショベル駆動系74が含まれている。この油圧ショベル駆動系74は、重機64が本来から備えている駆動部位を示しており、作業機66の動作、クローラの回転、及び旋回動作等を行うための各油圧アクチュエータが含まれる。油圧切替制御部72は、重機64のオペレータ室68(図9参照)からの操作を受けて制御され、油圧ショベル駆動系74に含まれる各駆動部位の動作を含み、ロッド部12の伸張、軸回転、屈折、一対の攪拌翼14の回転、及び、スパイラル管52の軸回転の全操作が、オペレータ室68から行われることになる。
上述したような構成の攪拌装置10に具備される、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図1、図3及び図4に示された構成に限定されるものではない。例えば、第1の攪拌羽根16及び切削羽根17の数量や取り付け位置は、図示の例と異なっていてもよく、任意の数量や取り付け位置を採用できる。これに合わせて、回転部材76の外周部に設けられる固定部78の位置や数量を調整してもよい。又、第1の攪拌羽根16及び切削羽根17の形状も、図5~図7の例に限定されるものではない。第1の攪拌羽根16は、弧を描くように延びる外刃部分82を有する板状のものであれば、例えば、切欠き86が設けられていなくてもよい。
更に、第1の攪拌羽根16は、例えば図11に示すような形状であってもよい。図11(a)に示す第1の攪拌羽根16は、付け根部分80を除いた複数個所に、板状の一方の面16aから他方の面16bまで貫通する貫通孔90が設けられたものであり、このように、板状の面16aや16bに穴、窪み、突起等の加工が施されていてもよい。又、図11(b)に示す第1の攪拌羽根16は、その全体としての形状がより流線形に近くなるように、流線形の端部に位置する曲げ部分84の形状が細長くなっており、その先端が尖っている。一方、切削羽根17は、回転部材76の外周部と直交する方向の大きさが攪拌羽根15よりも大きく、かつ、回転部材76の回転方向と平行な方向の大きさが攪拌羽根15よりも小さい板状のものであれば、例えば、図12に示すように曲げ部分96を有さない平板状であってもよい。
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14を具備する攪拌装置10は、油圧ショベル64Aの作業機66への取り付けに限定されるものではなく、他の重機64の作業機66に取り付けられてもよい。例えば図13には、重機64としてのリーダ付油圧式大口径削孔機64Bの作業機66に対して取り付けられた、攪拌装置10´を例示している。この攪拌装置10´は、リーダ付油圧式大口径削孔機64Bの作業機66のリーダ70に沿って、上下方向に移動するように取り付けられる。又、詳しい説明は控えるが、攪拌装置10´は、油圧ショベル64Aに取り付けられた攪拌装置10と同様に、個別に回転制御される一対の攪拌翼14、着脱可能かつ吐出口32aの位置が調整可能な配管32、着脱可能かつ吐出口33aの位置が調整可能なエア配管33、複数の突出部34、ロッド部12を屈折させるための屈折機構40、ロッド部12を軸回転させるための軸回転機構46、及び、軸回転可能なスパイラル管52等を備えている。なお、ロッド部12は、施工範囲の最大深度に対応した長さを有することが好ましい。
さて、上記構成をなす本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図9や図13に示すような重機64の作業機66に取り付けられる、図1及び図2に示すような攪拌装置10の先端において回転しながら地盤Gを攪拌するものであり、回転部材76と複数の攪拌羽根15とを含んでいる。回転部材76は、大略円筒状を成し、その中心軸を回転軸18として、例えば重機64の動力等によって回転される部位である。複数の攪拌羽根15は、図1~図4に示すように、回転部材76の外周部に固定されており、これら複数の攪拌羽根15のうち少なくとも一部の攪拌羽根15が、回転部材76の回転方向に対して傾いた板状の傾斜部100を有している。このため、回転部材76の回転によって傾斜部100を有する攪拌羽根15が回転移動すると、回転部材76の回転方向に対して傾いた傾斜部100の2つの面によって、地盤形成土を強制的に移動させることができる。これにより、攪拌羽根15と接触する地盤形成土が、回転部材76の回転方向や軸方向に移動するため、地盤Gの攪拌効率を向上させることができる。
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、複数の攪拌羽根15に第1の攪拌羽根16が含まれ、この第1の攪拌羽根16は、図3~図6及び図11に示すように、各々が回転部材76の軸方向と直交する板状を成している。すなわち、第1の攪拌羽根16の各々は、板状の2つの面16a、16bの外縁部間を接続する肉薄の外周部分が、回転部材76の回転方向や放射方向へ向けられている。更に、第1の攪拌羽根16の各々は、上述した肉薄の外周部分の一部に外刃部分82を有している。この外刃部分82は、図3及び図4のような回転部材76の軸方向視、換言すれば板状の第1の攪拌羽根16のいずれか一方の面の正面視(例えば図5(b)のような面16aの正面視)で、回転部材76に対する第1の攪拌羽根16の付け根部分80から、回転部材76の回転軸18を中心とした外側へと延びた後、回転部材76の回転方向と反対方向(図3における左回り方向、図4における右回り方向)へ向かって弧を描くように延びている。
上記のような構成により、回転部材76が回転されると、各第1の攪拌羽根16の肉薄の外刃部分82から地盤Gへと入り込み、更に外刃部分82が回転部材76の回転方向と反対方向へ向かって弧状に延びることで、第1の攪拌羽根16が流線形の如き形状を成しているため、地盤Gから受ける負荷を抑制することができる。これにより、回転部材76の回転に必要な回転トルクを低減することができ、又、粘性土等が含まれる柔らかい地盤Gであってもスムーズに回転させることができる。更に、板状の第1の攪拌羽根16が回転移動すると、回転部材76の回転方向と反対方向に延在する第1の攪拌羽根16の2つの面16a、16bに、地盤形成土が接触しながら攪拌されるため、1枚の第1の攪拌羽根16当たりの地盤形成土への接触時間を長くすることができ、攪拌効率を向上させることが可能となる。加えて、このように回転移動する第1の攪拌羽根16は、地盤Gに含まれる粘性土等が剥がれ易く付着し難いため、供回りの発生が抑制され、これによっても攪拌効率を向上させることができる。
しかも、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図1、図5、図6及び図11で確認できるように、第1の攪拌羽根16に曲げ部分84が設けられたものである。具体的に、曲げ部分84が設けられた第1の攪拌羽根16は、例えば図5(a)に示すような、回転部材76の回転方向と反対方向へ向かって延びる肉薄の外刃部分82を見下ろす平面視で、回転部材76の回転方向と反対の端部側(図中左側)が、外刃部分82の延在方向(図中左右方向)から逸れる方向、図示の例では左上方向に曲げられており、この曲げ部分84によって傾斜部100が形成されている。すなわち、このような第1の攪拌羽根16は、流線形に延びる途中部分で曲げられた板状を成しているため、回転部材76の回転により回転移動すると、板状の第1の攪拌羽根16の2つの面16a、16bに接触する地盤形成土を、第1の攪拌羽根16の曲げ方向に沿って強制的に移動させることができる。これにより、第1の攪拌羽根16と接触する地盤形成土が、回転部材76の回転方向や軸方向に移動するため、地盤Gの攪拌効率をより一層向上させることができる。
更に、回転部材76に固定される複数の第1の攪拌羽根16に、図1に示すように、曲げ部分84が図中左方向に曲げられた第1の攪拌羽根16と、曲げ部分84が図中右方向に曲げられた第1の攪拌羽根16とが含まれていることで、地盤Gの攪拌効率を更に高めることができる。なお、攪拌翼14が通常の正回転方向とは反対の逆回転方向に回転されたとしても、第1の攪拌羽根16の曲げ部分84によって移動される地盤形成土が、正回転時とは回転部材76の軸方向について反対の方向に移動されることとなり、問題なく攪拌することができる。
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図5、図6及び図11に示すように、第1の攪拌羽根16に、外刃部分82に倣った形状の切欠き86が設けられたものである。この切り欠き86は、第1の攪拌羽根16が固定された回転部材76の軸方向視(図3、図4及び図5(b)参照)で、回転部材76に対する第1の攪拌羽根16の付け根部分80よりも回転部材76の回転方向と反対寄り(図5(b)における左寄り)の位置、かつ、外刃部分82よりも回転部材76側(図5(b)における下側)の位置に設けられている。これにより、板状の第1の攪拌羽根16は、流線形を保ちながら正面視での面積が小さくなるため、地盤Gから受ける抵抗を低減することができると共に、粘性土等をより付着し難くすることができる。
更に、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図11(a)に示すように、第1の攪拌羽根16の少なくとも回転部材76に対する付け根部分80を除いた複数個所に、板状の一方の面16aから他方の面16bまで貫通する貫通孔90が設けられていてもよい。これにより、第1の攪拌羽根16の両面16a、16bに粘性土等がより一層付着し難くなり、付着しても剥がれ易くすることができる。
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図1~図4に示すように、更に回転部材76の外周部に固定された複数の切削羽根17を含むものであり、これによって回転部材76の外周部には、複数の攪拌羽根15と複数の切削羽根17とが固定されることになる。複数の切削羽根17の各々は、図3、図4、図7及び図12に示すように、回転部材76の軸方向と直交する板状を成しており、回転部材76の軸方向視で確認できる大きさが、攪拌羽根15と異なっている。すなわち、切削羽根17の各々は、図3及び図4で確認できるように、攪拌羽根15の各々と比較して、回転部材76の外周部と直交する方向(回転軸18を中心とした放射方向)の大きさが攪拌羽根15よりも大きく、かつ、回転部材76の回転方向と平行な方向の大きさが攪拌羽根15よりも小さくなっている。
上記のように、切削羽根17は、回転部材76の外周部と直交する方向の大きさが攪拌羽根15よりも大きいことで、回転部材76の回転時に攪拌羽根15よりも先に地盤形成土に接触することができる。又、切削羽根17は、回転部材76の回転方向と平行な方向の大きさが攪拌羽根15よりも小さいことで、地盤形成土を切削するようなエネルギーを攪拌羽根15よりも効率的に伝えることができる。これにより、攪拌羽根15のみでは攪拌が困難な硬い地盤Gであっても、切削羽根17により切り崩しながら攪拌することができるため、問題なく攪拌することが可能となる。
更に、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14は、図3及び図4に示すように、回転部材76の外周部に沿って回転方向及び軸方向に間隔を空けた複数の位置に、固定部78が設けられたものであり、これら固定部78の各々に、着脱可能に攪拌羽根15及び切削羽根17が固定されるものである。これにより、施工対象の地盤Gの性状に応じた任意の位置に、任意の種類の複数の攪拌羽根15及び複数の切削羽根17を固定することができるため、様々な性状の地盤Gを効率よく攪拌することができる。又、施工中に攪拌羽根15及び切削羽根17の数量や位置、攪拌羽根15の種類や組みあわせ等を変更することもできるため、施工状況に応じた更なる効率化を図ることが可能となる。
次に、図14~図17を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’について説明する。図14~図17において、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’について、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14と同様の部分の構成等については、説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、回転部材76の外周部に、複数の攪拌羽根15として、複数の第2の攪拌羽根110が固定されたものである。攪拌翼14’は、攪拌翼14と同様に、攪拌装置10のロッド部12の先端に一対取り付けられ、これら一対の攪拌翼14’は、ロッド部12の先端部12aを挟んで互いに反対向きに取り付けられる。又、一対の攪拌翼14’は、各々の回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αが、ロッド部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態になっている。そして、図14(a)には、そのような一対の攪拌翼14’のうちの一方を、その回転軸18が水平に配置される向きで図示している。更に、一対の攪拌翼14’の各々は、攪拌翼14と同様に、回転制御機構22及び回転補助制御部62を含む回転駆動部20を内蔵しており、この回転駆動部20によって回転されるようになっている。
又、図14(b)には、一方の攪拌翼14’の回転部材76の外周部を、疑似的に平面に展開して、回転部材76の外周部に固定された第2の攪拌羽根110及び切削羽根17の配置を示している。すなわち、図14(b)に示されている回転部材76は、その図14(b)における上下端が本来は接続されて円筒状を成しており、又、図14(b)の左右方向は図14(a)の左右方向に対応している。図14(b)で確認できるように、攪拌翼14’には、5枚の第2の攪拌羽根110と2枚の切削羽根17とが取り付けられており、詳しくは後述するが、5枚の第2の攪拌羽根110の各々が、回転部材76の回転方向(図14(b)における上下方向)に対して傾いて固定されている。なお、図14(a)には、回転部材76の回転により5枚の第2の攪拌羽根110及び2枚の切削羽根17が回転移動することをイメージして、第2の攪拌羽根110と切削羽根17とを実線及び仮想線で図示している。
攪拌翼14’の回転部材76の外周部には、着脱可能に第2の攪拌羽根110及び切削羽根17を固定するための固定部78(図15参照)が、回転部材76の回転方向及び軸方向に間隔を空けた複数の位置に設けられている。図15(a)~(e)は、図14に示した攪拌翼14’のイメージ側面を、攪拌装置10の側方向の中心位置に近い攪拌翼14’の軸方向内側から、軸方向外側へと順に示している。なお、図15(a)~(e)に示されている攪拌翼14’は、回転位相が同一であって、又、図15(b)及び(d)では、固定部78の図示を省略している。
図15(a)から確認すると、攪拌翼14’の軸方向内側部分には、1枚の第2の攪拌羽根110と1枚の切削羽根17とが固定されている。これらの第2の攪拌羽根110及び切削羽根17は、位相が互いに180°異なる位置にあり、図14(b)における一番上の第2の攪拌羽根110と左側の切削羽根17とに相当するものである。図15(b)を確認して、攪拌翼14’の軸方向内側部分と中間部分との間の部分には、1枚の第2の攪拌羽根110が固定されており、これは図14(b)における下から2番目の第2の攪拌羽根110に相当するものである。図15(c)を確認して、攪拌翼14’の軸方向中間部分には、1枚の第2の攪拌羽根110が固定されており、これは図14(b)における上から2番目の第2の攪拌羽根110に相当するものである。
更に、図15(d)を確認して、攪拌翼14’の軸方向中間部分と外側部分との間の部分には、1枚の第2の攪拌羽根110が固定されており、これは図14(b)における一番下の第2の攪拌羽根110に相当するものである。又、図15(e)を確認すると、攪拌翼14’の軸方向外側部分には、1枚の第2の攪拌羽根110と1枚の切削羽根17とが固定されている。これらの第2の攪拌羽根110及び切削羽根17は、図14(b)における上から3番目の第2の攪拌羽根110と右側の切削羽根17とに相当するものであり、切削羽根17は、図15(a)の切削羽根17と位相が互いに180°異なる位置にある。
又、図15(e)、(c)、(a)、(d)、(b)に1枚ずつ示された第2の攪拌羽根110は、この記載順序で時計回り方向に位相が60°ずつ異なる位置関係にある。その中で、図15(e)の第2の攪拌羽根110と図15(b)の第2の攪拌羽根110とは、互いに位相が120°異なる位置にあるが、それらの間に第2の攪拌羽根110は取り付けられていない。すなわち、5枚の第2の攪拌羽根110は、回転部材76の外周部を、その回転方向に沿って6等分した位置のうちの5箇所に固定されており、回転方向に隣接する第2の攪拌羽根110同士の間隔が、一部不等間隔になっている。図14(b)には、そのような6等分した位置を2点鎖線で示している。なお、図15の攪拌翼14’は、回転軸18で通常は時計回りに回転されるものである。
攪拌翼14’に固定された5枚の第2の攪拌羽根110の各々は、図16に示すような形状を有している。すなわち、この第2の攪拌羽根110は、2つの面110a、110bを有する板状を成しており、図16(a)及び(b)における右側の部位が、固定部78を介して回転部材76の外周部に取り付けられる。又、回転部材76の外周部に取り付けられる部位と反対側には、円弧状の外刃112が設けられており、この外刃112が回転部材76の径方向外側へ向けられる。そして、このような形状の第2の攪拌羽根110は、特に図14(b)で確認できるように、回転部材76の回転方向に対して傾いて固定されていることで、その全体が傾斜部100を形成している。このため、図16では、便宜上、僅かに傾けられた状態の第2の攪拌羽根110を示しており、又、固定部78にボルト止め等によって固定するための挿通孔等の図示を省略している。
図14(b)を参照して、5枚の第2の攪拌羽根110のうち、上から3番目に図示されている1枚の第2の攪拌羽根110(図15(e)の第2の攪拌羽根110に相当)は、回転部材76の回転方向(図中上下方向)に対して、時計回り方向に約15°傾けて固定されている。又、残り4枚の第2の攪拌羽根110(図15(a)~(d)の第2の攪拌羽根110に相当)の各々は、回転部材76の回転方向に対して、反時計回り方向に約15°傾けて固定されている。すなわち、上記の1枚の第2の攪拌羽根110と4枚の第2の攪拌羽根110とは、回転部材76の回転方向に対する傾き方向が互いに異なっている。
一方、攪拌翼14’に固定された2枚の切削羽根17の各々は、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14に固定されていた切削羽根17と同様のものであり、図7に示したような形状を有している。図14(b)を参照して、図中左側に位置する切削羽根17(図15(a)の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図中左側(軸方向内側)へ向かう向きで固定されている。これに対し、図中右側に位置する切削羽根17(図15(e)の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図中右側(軸方向外側)へ向かう向きで固定されている。ここで、切削羽根17の先端には、切削ビット94が取り付けられているが、第2の攪拌羽根110の外刃112にも、それと類似した切削ビットが取り付けられることが好ましい。
他方、攪拌装置10のロッド部12の先端に取り付けられる一対の攪拌翼14’のうち、図14及び図15に図示した攪拌翼14’と異なるもう一方の攪拌翼14’は、例えば、5枚の第2の攪拌羽根110と2枚の切削羽根17とを有し、それらが、図14及び図15に図示した攪拌翼14’の第2の攪拌羽根110及び切削羽根17と、図14における左右対称の位置及び向きの関係にある。しかしながら、これに限定されるものではなく、一対の攪拌翼14’同士で、第2の攪拌羽根110や切削羽根17の枚数が互いに異なっていてもよく、それらの取付位置や取付角度が、左右対称ではなく、同一であったり全く異なったりしてもよい。
本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’が一対取り付けられた攪拌装置10も、図1及び図2に示した攪拌装置10と同様に、重機64の作業機66(図9及び図13参照)に取り付けられ、又、ロッド部12に加えて、取付部30、配管32、エア配管33、複数の突出部34、屈折機構40、軸回転機構46、スパイラル管52、及び、伸張機構58を含んでいる。このため、攪拌翼14’を備える攪拌装置10を用いた施工時には、必要に応じて、配管32からの改良剤の供給、エア配管33からのエアの供給、屈折機構40によるロッド部12の屈折、軸回転機構46によるロッド部12の軸回転、スパイラル管52の軸回転、及び、伸張機構58によるロッド部12の伸張等が行われる。又、回転制御機構22の制御を受けた回転駆動部20によって、一対の攪拌翼14’の回転方向、回転速度、回転トルク等が制御される。特に、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’を一対備えた攪拌装置10では、一対の攪拌翼14’が互いに反対方向に回転されることで、好適に攪拌が行われることが実験から判明している。
ここで、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、図14~図16に示された構成に限定されるものではない。例えば、第2の攪拌羽根110及び切削羽根17の数量や取り付け位置は、図示の例と異なっていてもよく、任意の数量や取り付け位置を採用できる。更に、第2の攪拌羽根110の、回転部材76の回転方向に対する傾き方向や傾き角度も任意であり、回転部材76の回転方向に隣接する第2の攪拌羽根110同士の間隔も任意である。これらに合わせて、回転部材76の外周部に設けられる固定部78の位置や数量を調整してもよい。又、第2の攪拌羽根110の形状も、板状を成して円弧状の外刃112を有していれば、図14~図16の例と異なる形状であってもよい。
例えば、図17には、第2の攪拌羽根110の傾きや固定位置が、図14(b)の例と異なる別例を、図14(b)と同じ回転部材76の外周部の平面イメージで示している。図17(a)~(d)の例は、5枚の第2の攪拌羽根110と2枚の切削羽根17が固定されていることと、2枚の切削羽根17の固定位置とが、図14(b)の例と同様である。しかしながら、図14(b)の例では、図14(b)において一番上にある第2の攪拌羽根110から始めて、下から2番目、上から2番目、一番下、そして上から3番目にある第2の攪拌羽根110の順序で、回転部材76の軸方向内側から外側へ向かって位置が徐々に異なっている。これに対し、図17(a)~(d)の例では、各図において一番上にある第2の攪拌羽根110から始めて、一番下、上から2番目、下から2番目、そして上から3番目にある第2の攪拌羽根110の順序で、回転部材76の軸方向内側から外側へ向かって位置が徐々に異なっている。
更に、図17(a)を確認すると、5枚の第2の攪拌羽根110の全てが、回転部材76の回転方向(図中上下方向)に対して、反時計回り方向に約15°傾けて固定されている。又、図17(b)の例では、上側の3枚の第2の攪拌羽根110が、図17(a)の例と変わっておらず、下側の2枚の第2の攪拌羽根110が、回転部材76の回転方向に対して、時計回り方向に約15°傾けて固定されている。更に、図17(c)、(d)の例では、図17(b)の例との比較において、上から2番目の第2の攪拌羽根110の、回転部材76の回転方向に対する反時計回り方向への傾き角度が増大しており、図17(c)の例では約20°に、図17(d)の例では約25°に増大している。
さて、上記構成をなす本発明の第2の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、図14及び図15に示すように、複数の攪拌羽根15に第2の攪拌羽根110が含まれている。この第2の攪拌羽根110は、図16も参照して、回転部材76の外周部から径方向外側へ延びる板状を成すと共に、その先端部分に円弧状の外刃112を有している。このため、板状の2つの面110a、110bの外縁部間を接続する肉薄の外周部分の一部が、円弧状の外刃112を形成しており、その外刃112が回転部材76の放射方向へ向けられている。又、第2の攪拌羽根110は、回転部材76の回転方向に対して傾いて固定されていることで、その全体が傾斜部100を形成しているものである。
このような構成により、回転部材76の回転によって第2の攪拌羽根110が回転移動すると、板状の第2の攪拌羽根110の2つの面110a、110bに接触する地盤形成土が、回転部材76の回転方向に対する第2の攪拌羽根110の傾き方向に沿って強制的に移動される。これにより、第2の攪拌羽根110と接触する地盤形成土を、回転部材76の回転方向や軸方向に移動させることができるため、地盤G(図9参照)の攪拌効率をより向上させることができる。更に、回転部材76の放射方向へ向けられた第2の攪拌羽根110の外刃112により、地盤形成土を切り崩しながら攪拌することができるため、これによっても地盤Gの攪拌効率を向上させることが可能となる。
又、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、複数の攪拌羽根15に複数の第2の攪拌羽根110が含まれ、これら複数の第2の攪拌羽根110は、回転部材76の回転方向に対する傾き方向及び/又は傾き角度が互いに異なっているものである。すなわち、複数の第2の攪拌羽根110の中に、他の第2の攪拌羽根110と比較して、回転部材76の回転方向に対する傾き方向及び/又は傾き角度が異なる第2の攪拌羽根110が、少なくとも1つ含まれている。これにより、そのように傾き方向及び/又は傾き角度が互いに異なる複数の第2の攪拌羽根110によって、第2の攪拌羽根110の各々の傾き方向及び傾き角度に応じた方向へと地盤形成土を強制的に移動させることができるため、地盤形成土を様々な方向に移動させることができ、地盤Gの攪拌効率を更に向上させることが可能となる。
加えて、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、第2の攪拌羽根110の外刃112に切削ビットが取り付けられることとすれば、第2の攪拌羽根110の外刃112による地盤形成土の切り崩しを効率よく行うことができ、より硬い地盤Gの攪拌にも対応することができる。
又、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、複数の攪拌羽根15(第2の攪拌羽根110)のうち少なくとも一部の攪拌羽根15が、回転部材76の円周方向に不等間隔で配置されることで、その不等間隔で配置された攪拌羽根15の周囲に、他の攪拌羽根15の周囲と大きさが異なる隙間が形成されるものである。すなわち、不等間隔で配置される攪拌羽根15は、隣接する攪拌羽根15との間に形成される隙間の大きさが、等間隔で配置される攪拌羽根15と異なることになり、更に、不等間隔で配置される攪拌羽根15同士でも、周囲の隙間の大きさは、攪拌羽根15毎に異なるものである。従って、攪拌翼14’の回転時にそのような隙間を通る地盤形成土を、様々な大きさの隙間を通して不規則な方向に移動させることができ、複数の攪拌羽根15の形状による攪拌作用と相まって、地盤Gの攪拌効率を高めることができる。
更に、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌翼14’は、回転部材76の外周部に固定される攪拌羽根15(第2の攪拌羽根110)が5枚であり、これら5枚の攪拌羽根15が、回転部材76の円周方向に少なくとも一部不等間隔となるように固定されるものである。それに従い、図14及び図17の例のように、回転部材76の外周部の、回転部材76の回転方向に等間隔な6箇所のうちの5箇所に、5枚の攪拌羽根15が固定される場合は、攪拌羽根15が固定されていない1箇所に、他の隙間よりも大きな隙間が形成されることになる。このため、このような大きな隙間によって、地盤形成土の移動ルートに変化をもたらすことができ、地盤Gの攪拌効率を向上させることができる。
続いて、図18~図20を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”について説明する。図18~図20において、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”について、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14と同様の部分の構成等については、説明を省略する。
本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”は、回転部材76の外周部に、複数の攪拌羽根15として、複数の第3の攪拌羽根130が固定されたものである。攪拌翼14”は、攪拌翼14と同様に、攪拌装置10のロッド部12の先端に一対取り付けられ、これら一対の攪拌翼14”は、ロッド部12の先端部12aを挟んで互いに反対向きに取り付けられる。又、一対の攪拌翼14”は、各々の回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αが、ロッド部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態になっている。そして、図18(a)には、そのような一対の攪拌翼14”のうちの一方を、その回転軸18が水平に配置される向きで図示している。更に、一対の攪拌翼14”の各々は、攪拌翼14と同様に、回転制御機構22及び回転補助制御部62を含む回転駆動部20を内蔵しており、この回転駆動部20によって回転されるようになっている。
又、図18(b)には、一方の攪拌翼14”の回転部材76の外周部を、疑似的に平面に展開して、回転部材76の外周部に固定された第3の攪拌羽根130及び切削羽根17の配置を示している。すなわち、図18(b)に示されている回転部材76は、その図18(b)における上下端が本来は接続されて円筒状を成しており、又、図18(b)の左右方向は図18(a)の左右方向に対応している。図18(b)で確認できるように、攪拌翼14”には、6枚の第3の攪拌羽根130と2枚の切削羽根17とが取り付けられており、詳しくは後述するが、6枚の第2の攪拌羽根110の各々に、回転部材76の回転方向(図18(b)における上下方向)から逸れる方向に延びた延在部136が形成されている。なお、図18(a)には、回転部材76の回転により6枚の第3の攪拌羽根130及び2枚の切削羽根17が回転移動することをイメージして、第3の攪拌羽根130と切削羽根17とを実線及び仮想線で図示している。
攪拌翼14”の回転部材76の外周部には、着脱可能に第3の攪拌羽根130及び切削羽根17を固定するための固定部78(図19参照)が、回転部材76の回転方向及び軸方向に間隔を空けた複数の位置に設けられている。本実施例では、軸方向に間隔を空けて3列、各列で回転方向に間隔を空けて6個所の、合計で18個所に固定部78が設けられており、図19の(a)~(c)には、図18に示した攪拌翼14”の各列の固定部78を破線で図示している。なお、図19(a)~(c)に示されている攪拌翼14”は、回転位相が同一である。
図19(a)から確認すると、攪拌翼14”の軸方向内側部分には、6個所の固定部78のうちの3箇所に、2枚の第3の攪拌羽根130と1枚の切削羽根17とが固定されている。2枚の第3の攪拌羽根130は、位相が互いに180°異なる位置にあり、図18(b)における左側の上下2枚の第3の攪拌羽根130に相当するものである。1枚の切削羽根17は、図18(b)における左側の切削羽根17に相当するものである。図19(b)を確認して、攪拌翼14”の軸方向中間部分には、6個所の固定部78のうちの位相が互いに180°異なる2箇所の固定部78に、2枚の第3の攪拌羽根130が固定されている。これら2枚の第3の攪拌羽根130は、図18(b)における左右方向中央近傍の上下2枚の第3の攪拌羽根130に相当するものである。又、図19(c)を確認すると、攪拌翼14”の軸方向外側部分には、6個所の固定部78のうちの3箇所に、2枚の第3の攪拌羽根130と1枚の切削羽根17とが固定されている。2枚の第3の攪拌羽根130は、位相が互いに180°異なる位置にあり、図18(b)における右側の上下2枚の第3の攪拌羽根130に相当するものである。1枚の切削羽根17は、図18(b)における右側の切削羽根17に相当するものである。
そして、図19(a)~(c)で確認できるように、図19(a)の2枚の第3の攪拌羽根130は、図19(b)、(c)の各々の2枚の第3の攪拌羽根130と、位相が異なる位置に配置されている。一方、図19(b)の2枚の第3の攪拌羽根130と、図19(c)の2枚の第3の攪拌羽根130とは、位相が同じ位置に配置されているが、第3の攪拌羽根130の取り付け方向が互いに異なっている。この取り付け方向が異なることについては、後ほど説明する。すなわち、6枚の第3の攪拌羽根130は、回転部材76の外周部を、その回転方向に沿って6等分した位置のうちの4箇所に固定されており、回転方向に隣接する第3の攪拌羽根130同士の間隔が、一部不等間隔になっている。図18(b)には、そのような6等分した位置を2点鎖線で示している。他方、図19(a)の切削羽根17と図19(c)の切削羽根17とは、位相が互いに120°異なる位置にある。なお、図19の攪拌翼14”は、回転軸18で通常は時計回りに回転されるものである。
攪拌翼14”に固定された6枚の第3の攪拌羽根130のうち、図18(b)における左右方向中央近傍の上方に位置する第3の攪拌羽根130と、右側の下方に位置する第3の攪拌羽根130とは、図20に示すような形状を有している。すなわち、この第3の攪拌羽根130は、取り付け部132、延在部136、及び板部144を有しており、これらの各々が板状を成している。取り付け部132は、その図20(b)における下方の部位が、攪拌翼14”の回転部材76に設けられた固定部78に固定される部位であるが、図20では、固定部78にボルト止め等によって固定するための挿通孔等の図示を省略している。
図20(b)を確認して、延在部136は、取り付け部132の右上の部位から右側へと鎌形状に延びており、その円弧状の上下端が外刃部140及び内刃部138を形成している。更に、延在部136は、図20(a)における上側、図20(c)における右側へ向かって、取り付け部136から折れ曲がって延びている。板部144は、その一方の面144aが内刃部138に沿って取り付けられており、図20の例では、延在部136の先端よりも長く延びている。又、板部144は、内刃部138の厚み(延在部136の厚み)よりも大きい幅を有しており、内刃部138の延在方向と直交する両側(図20(a)における上下両側、図20(c)における左右両側)に突出している。
一方、攪拌翼14”に固定された6枚の第3の攪拌羽根130のうち、図18(b)における左側の上下2箇所、左右方向中央近傍の下方、及び右側の上方に位置する、4枚の第3の攪拌羽根130は、図20に示した第3の攪拌羽根130との比較において、延在部136の曲げ方向のみが異なっており、残りの部位は全く同じ構造になっている。具体的には、例えば図20(a)を参照して、取り付け部132から延びる延在部136が、図中右上方向ではなく図中右下方向へ向かって延びており、それに伴って板部144も図中右下方向へ延びている。
そして、上述した何れか一方の形状を有する6枚の第3の攪拌羽根130は、図18及び図19に示すように回転部材76に固定された状態において、取り付け部132が、回転部材76の外周部から径方向外側へ延び、その2つの面132a、132b(図20参照)が、回転部材76の軸方向(図18における左右方向)と直交している。又、延在部136が、回転部材76の回転方向から逸れる方向に延びていることで、傾斜部100を形成している。
更に、6枚の第3の攪拌羽根130は、上述したように延在部136の曲げ方向が異なる、或いは、回転部材76の回転方向について反対に取り付けられることで、図18(b)のような仮想の平面視で、延在部136の延在方向が4パターンに分かれている。すなわち、図18(b)における左側の上下2箇所と右側上方とに位置する3枚の第3の攪拌羽根130は、延在部136が取り付け部132から右上方向へ延びており、右側下方に位置する第3の攪拌羽根130は、延在部136が取り付け部132から左上方向へ延びている。又、図18(b)における左右方向中央近傍の上方に位置する第3の攪拌羽根130は、延在部136が取り付け部132から右下方向へ延びており、左右方向中央近傍の下方に位置する第3の攪拌羽根130は、延在部136が取り付け部132から左下方向へ延びている。このため、延在部136の2つの面136a、136b(図20参照)は、各延在部136の延在方向に応じて、第3の攪拌羽根130同士で互いに異なる方向を向いている。
加えて、6枚の第3の攪拌羽根130の何れも延在部136も、図19のような回転部材76の軸方向視では、回転部材76の外周部から径方向外側に間隔を空けた位置において、取り付け部132から回転部材76の円周方向に沿って延びている。他方、板部144は、延在部136に沿って延在部136と同じ方向に延びており、図19と図20とを併せて確認できるように、一方の面144aが回転部材76の径方向外側へ向けられ、もう一方の面144bが回転部材76の外周面に向けられている。
又、攪拌翼14”に固定された2枚の切削羽根17の各々は、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌翼14に固定されていた切削羽根17と同様のものであり、図7に示したような形状を有している。図18(b)を参照して、図中左側に位置する切削羽根17(図19(a)の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図中左側(軸方向内側)へ向かう向きで固定されている。これに対し、図中右側に位置する切削羽根17(図19(c)の切削羽根17に相当)は、曲げ部分96が図中右側(軸方向外側)へ向かう向きで固定されている。
一方、攪拌装置10のロッド部12の先端に取り付けられる一対の攪拌翼14”のうち、図18及び図19に図示した攪拌翼14”と異なるもう一方の攪拌翼14”は、例えば、6枚の第3の攪拌羽根130と2枚の切削羽根17とを有し、それらが、図18及び図19に図示した攪拌翼14”の第3の攪拌羽根130及び切削羽根17と、図18における左右対称の位置及び向きの関係にある。しかしながら、これに限定されるものではなく、一対の攪拌翼14”同士で、第3の攪拌羽根130や切削羽根17の枚数が互いに異なっていてもよく、それらの取付位置等が、左右対称ではなく、同一であったり全く異なったりしてもよい。
本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”が一対取り付けられた攪拌装置10も、図1及び図2に示した攪拌装置10と同様に、重機64の作業機66(図9及び図13参照)に取り付けられ、又、ロッド部12に加えて、取付部30、配管32、エア配管33、複数の突出部34、屈折機構40、軸回転機構46、スパイラル管52、及び、伸張機構58を含んでいる。このため、攪拌翼14”を備える攪拌装置10を用いた施工時には、必要に応じて、配管32からの改良剤の供給、エア配管33からのエアの供給、屈折機構40によるロッド部12の屈折、軸回転機構46によるロッド部12の軸回転、スパイラル管52の軸回転、及び、伸張機構58によるロッド部12の伸張等が行われる。又、回転制御機構22の制御を受けた回転駆動部20によって、一対の攪拌翼14”の回転方向、回転速度、回転トルク等が制御される。
ここで、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”は、図18~図20に示された構成に限定されるものではない。例えば、第3の攪拌羽根130及び切削羽根17の数量や取り付け位置は、図示の例と異なっていてもよく、任意の数量や取り付け位置を採用できる。更に、第3の攪拌羽根130の、回転部材76の回転方向に対する取り付け方向も任意であり、回転部材76の回転方向に隣接する第3の攪拌羽根130同士の間隔も任意である。これらに合わせて、回転部材76の外周部に設けられる固定部78の位置や数量を調整してもよい。又、第3の攪拌羽根130の形状も、取り付け部132と延在部136とを有していれば、図18~図20の例と異なる形状であってもよい。
さて、上記構成をなす本発明の第3の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”は、図18及び図19に示すように、複数の攪拌羽根15に第3の攪拌羽根130が含まれ、この第3の攪拌羽根130は、取り付け部132及び延在部136を有している。取り付け部132は、回転部材76の外周部から径方向外側へと延び、回転部材76の軸方向と直交する板状を成している。このため、図20も参照して、取り付け部132は、板状の2つの面132a、132bの外縁部間を接続する肉薄の外周部分が、回転部材76の回転方向や放射方向へ向けられている。そして、このような取り付け部132の外周部分から、同じく板状の延在部136が延びている。
具体的に、この延在部136は、図19のような回転部材76の軸方向視で、回転部材76の外周部から径方向外側に間隔を空けた位置において、取り付け部132から回転部材76の円周方向に沿って延びている。このため、延在部136は、その板状の2つの面136a、136bの外縁部間を接続する肉薄の外周部分に、回転部材76の軸方向視で、回転部材76の外周部に対向する位置で回転部材76の円周方向に沿って延びる内刃部138と、内刃部138と反対側の端部で主に回転部材76の径方向外側へ向けられて、回転部材76の円周方向に沿って延びる外刃部140とが形成され、大略鎌形状を成している。
そして、第3の攪拌羽根130は、そのような延在部136が回転部材76の円周方向から逸れる方向に延びていることで、延在部136によって傾斜部100が形成されている。すなわち、第3の攪拌羽根130は、図18(b)のような回転部材76の外周部を見下ろす平面視で、取り付け部132は回転部材76の回転方向に沿って配置されるものの、延在部136が取り付け部132から折れ曲がるような態様で、回転部材76の円周方向から逸れる方向へと延びている。このような構成により、回転部材76が回転して第3の攪拌羽根130が回転移動すると、板状の取り付け部132及び延在部136の、夫々の2つの面132a、132b、136a、136bに接触する地盤形成土を、各面の延在方向に沿って強制的に移動させることができる。これにより、第3の攪拌羽根130と接触する地盤形成土を、回転部材76の回転方向や軸方向に移動させることができるため、地盤G(図9参照)の攪拌効率をより向上させることが可能となる。
又、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”は、複数の攪拌羽根15に複数の第3の攪拌羽根130が含まれ、これら複数の第3の攪拌羽根130は、延在部136の延在方向が回転部材76の回転方向に互いに反対になっているものである。すなわち、複数の第3の攪拌羽根130の中に、図19のような回転部材76の軸方向視で、延在部136が回転部材76の回転方向と同じ方向に延在している第3の攪拌羽根130と、延在部136が回転部材76の回転方向と反対方向に延在している第3の攪拌羽根130とが含まれている。このため、それら複数の第3の攪拌羽根130が回転移動すると、地盤形成土を、取り付け部132の2つの面132a、132bに接触させた後に延在部136の2つの面136a、136bに接触させて移動させるパターンや、延在部136の2つの面136a、136bに接触させた後に取り付け部132の2つの面132a、132bに接触させて移動させるパターンなど、様々な移動パターンで移動させることができる。従って、地盤形成土を様々な方向に移動させることが可能となり、地盤Gの攪拌効率をより向上させることができる。
更に、本発明の第3の実施の形態に係る攪拌翼14”は、第3の攪拌羽根130の延在部136の内刃部138に、内刃部138に沿って延びる板部144が取り付けられているものである。すなわち、この板部144は、内刃部138の厚みよりも大きい幅を有して内刃部138の延在方向と直交する両側に突出する態様で、その一方の面144bが回転部材76の外周部と対向するように、もう一方の面144aの幅方向中央近傍が内刃部138に接続される。このため、取り付け部132及び延在部136に加えて、板部144によっても地盤形成土を移動させることができ、しかも、板部144は、内刃部138の両側に突出して主に回転部材76の径方向外側へ向けられる面144aと、回転部材76の外周部に向けられる面144bとの、取り付け部132及び延在部136の何れの面とも異なる方向に向けられた2つの面を有している。従って、板部144によってすくい上げるような地盤形成土の移動が加わり、地盤Gの攪拌効率を益々向上させることが可能となる。
ここで、本発明の実施の形態に係る攪拌翼14は、回転部材76の外周部に、様々な形状の攪拌羽根15が混在してもよいものである。すなわち、図5に示したような第1の攪拌羽根16と、図16に示したような第2の攪拌羽根110と、図20に示したような第3の攪拌羽根130と、それらの何れとも異なる形状の攪拌羽根15とのうち、任意の2種以上の形状のものが1つの攪拌翼14に混在していてもよい。又、当然のことながら、そこに更に切削羽根17が含まれていてもよく、攪拌羽根15及び切削羽根17の位置や配置間隔も任意である。
他方、本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法は、上述したような本発明の第1~第3の実施の形態に係る攪拌翼14、14‘、14“を利用するものであり、図1、図3、図14、図15、図18及び図19等に示すように、攪拌翼14、14‘、14“の大略円筒状を成す回転部材76の外周部に、地盤Gの性状に応じて選択的に、複数の攪拌羽根15及び/又は複数の切削羽根17を、互いに間隔を空けた任意の位置に着脱可能に固定する。この際、攪拌羽根15として、図3~図6及び図11に示すような第1の攪拌羽根16、図14~図17に示すような第2の攪拌羽根110、及び、図18~図20に示すような第3の攪拌羽根130等を用いる。更に、切削羽根17として、図3、図4、図7及び図12に示すような、回転部材76の軸方向と直交する板状を成し、回転部材76の軸方向視で、回転部材76の外周部と直交する方向の大きさが攪拌羽根15よりも大きく、かつ、回転部材76の回転方向と平行な方向の大きさが攪拌羽根15よりも小さい切削羽根17を用いるものである。
本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法は、上記のような構成により、本発明の第1~第3の実施の形態に係る攪拌翼14、14‘、14“に対応する同等の作用効果を奏することができる。特に、例えば、比較的柔らかい地盤Gを攪拌するときは、回転部材76に攪拌羽根15のみ或いは切削羽根17よりも多くの攪拌羽根15を固定し、比較的硬い地盤Gを攪拌するときは、回転部材76に切削羽根17のみ或いは攪拌羽根15よりも多くの切削羽根17を固定する、といったように、地盤Gの性状に合わせて攪拌翼14、14‘、14“の構成を変更することができる。更に、攪拌羽根15と切削羽根17とを交互に配置する等、攪拌羽根15及び切削羽根17の固定位置は任意であるため、地盤Gの性状や施工状況等を加味した最適な構成の攪拌翼14、14‘、14“を使用することで、攪拌効率の最適化を図ることが可能となる。