JP7406095B2 - 溶鋼鍋 - Google Patents

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本発明は、溶鋼鍋に関する。
溶鋼鍋は、鉄皮と、鉄皮に内張りされて側壁および底面を構成する内張り耐火物と、溶鋼を排出する羽口を形成する羽口耐火物と、転炉の出鋼口から注出された溶鋼流が衝突する湯当たり部材とによって構成されている。湯当たり部材は、溶鋼流の衝突による底面耐火物の局部損耗を防止するために配置され、例えば特許文献1に記載されている。一方、溶鋼鍋では、側壁耐火物の損耗による耐用性の低下が課題である。側壁耐火物は、主に溶鋼およびスラグとの反応による溶損によって損耗するため、側壁耐火物を緻密化させ、溶鋼やスラグとの反応を抑制することによる耐用性の向上が図られてきた。例えば、特許文献2には、アルミナセメントのメディアン径を制御することで、キャスタブル耐火物において施工時の混練水分の量を少なくしつつも流動性を維持することができ、得られる側壁耐火物を緻密化する技術が記載されている。
特開平5-185202号公報 特開平10-194849号公報
しかしながら、耐火物を緻密化することで温度の上下に伴うスポーリングに対する抵抗が下がり、割れやすくなるため、特許文献2に記載されたような技術で溶鋼鍋の耐用性を向上させる効果は限定的であった。一方、本発明者らが溶鋼鍋の側壁耐火物の損耗原因を調査したところ、転炉の出鋼口から注出された溶鋼流が湯当たり部材に衝突したときに不均等に飛散することによって、側壁耐火物に不均等な溶損が生じていることがわかった。
そこで、本発明は、湯当たり部材に衝突した溶鋼流の飛散を均等化することによって、側壁耐火物の不均等な損耗を抑制し、溶鋼鍋の耐用性を向上させることが可能な溶鋼鍋を提供することを目的とする。
[1]転炉の出鋼口から注出された溶鋼流を受容する溶鋼鍋であって、外殻を構成する鉄皮と、鉄皮に内張りされて溶鋼鍋の側壁および底面を構成する耐火物と、溶鋼流が底面に衝突する位置に配置され、湯当たり面を有する湯当たり部材とを備え、湯当たり面が溶鋼流に対してなす角度が85°以上95°以下であり、湯当たり面が底面に対してなす角度が0°よりも大きく20°以下である溶鋼鍋。
[2]湯当たり面は、平面または底面とは反対側に膨出した曲面である、[1]に記載の溶鋼鍋。
[3]湯当たり部材は、プレキャストブロックで形成される、[1]または[2]に記載の溶鋼鍋。
上記の構成によれば、湯当たり面が溶鋼流に対してなす角度を適切な範囲に設定することによって、湯当たり面に衝突した溶鋼流の飛散を均等化し、飛散した溶鋼による側壁耐火物の溶損が特定の部位に偏ることを抑制できる。また、湯当たり面が溶鋼鍋の底面に対してなす角度を適切な範囲に設定することによって、底面上を流動する溶鋼による湯当たり部材自体の溶損を抑制し、溶鋼鍋全体の耐用性を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る溶鋼鍋の平面図である。 図1のII-II線に沿った断面図である。 図2に示す溶鋼鍋の湯当たり部材を含む部分の拡大図である。 溶鋼鍋の底面が溶鋼流に対してなす角度を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は本発明の一実施形態に係る溶鋼鍋の平面図であり、図2は図1のII-II線に沿った断面図である。図示されているように、溶鋼鍋1は、鉄皮2と、パーマネント耐火物3と、ウェア耐火物4と、湯当たり部材5と、羽口6とを含む。溶鋼鍋1は、さらに、溶鋼攪拌用のガスを吹き込むための吹き込み口を含んでもよい。鉄皮2は、溶鋼鍋1の外殻を構成する。パーマネント耐火物3およびウェア耐火物4は鉄皮2に内張りされ、溶鋼鍋1の側壁および底面を構成する。湯当たり部材5は、図2に示すように転炉の出鋼口から注出された溶鋼流7が溶鋼鍋1の底面に衝突する位置に配置される。図示された例において湯当たり部材5はウェア耐火物4に埋め込まれ、溶鋼流7が衝突する湯当たり面5Sを含む部分だけがウェア耐火物4の表面上に現れているが、湯当たり部材5が底面のウェア耐火物4の上に配置されていてもよい。
本実施形態において、湯当たり部材5は、例えばアルミナ―マグネシア質の材料を用いたプレキャストブロックで形成される。プレキャストブロックの材料には、アルミナおよびマグネシア骨材に加えて、スピネル、ろう石、けい石、ムライト、カイアナイト、アンダルサイト、ジルコン、ジルコニア、クロム鉱、窒化ケイ素、または酸化クロムなどの耐火骨材を混合してもよい。上記の材料を型枠に鋳込み、養生および乾燥させることによってプレキャストブロックが作製される。
図2に示すように、転炉の出鋼口から注出された溶鋼流7は、湯当たり部材5に衝突して飛散する。このときに飛散した溶鋼が側壁を形成するウェア耐火物4に再び衝突することによって、ウェア耐火物4に溶損が生じる。ここで、湯当たり部材5が配置される位置、すなわち溶鋼流7が衝突する位置は溶鋼鍋1の底面の中心ではなく、また溶鋼流7は溶鋼鍋1の底面に対して垂直に衝突するとは限らない。従って、例えば湯当たり面5Sを溶鋼鍋1の底面に対して平行に形成した場合、湯当たり部材5に衝突した溶鋼流7の飛散は不均等になり、例えば湯当たり部材5に近い側の側壁に向けて飛散する溶鋼流が多くなる。より多くの飛散した溶鋼流が衝突する側壁を構成するウェア耐火物4では他の部位よりも早く溶損が進行するため、結果として早期の補修が必要になり、耐用性が低くなる。
本発明者らは、湯当たり部材5に衝突する溶鋼流7の角度が転炉および溶鋼鍋1を含む設備の設計段階で特定可能であるため、溶鋼流7の飛散自体は抑制できなくても、飛散を均等化することによって側壁を構成するウェア耐火物4の溶損が特定の部位に偏らないようにし、それによって例えば上述したような耐火物の緻密化によらずとも耐用性を向上させられることを発見した。この知見に基づく溶鋼鍋1の構成について、さらに説明する。
図3は、図2に示す溶鋼鍋の湯当たり部材を含む部分の拡大図である。本実施形態では、湯当たり部材5の湯当たり面5Sが溶鋼流7に対してなす角度θが85°以上95°以下であり、湯当たり面5Sが溶鋼鍋1の底面に対してなす角度θが0°よりも大きく20°以下である。転炉の出鋼口から注出された溶鋼流は重力によって自由落下するため、出鋼口における溶鋼流の方向および流速、および出鋼時の転炉と溶鋼鍋1との位置関係がわかれば、湯当たり面5Sに衝突する時点における溶鋼流7の方向が特定でき、湯当たり面5Sが溶鋼流7に対してなす角度θを算出できる。なお、角度θは、溶鋼流7を含む鉛直面内で、溶鋼流7と湯当たり面5Sとの間の転炉側(図2における左側)に形成される角度である。角度θが85°以上95°以下である場合、溶鋼流7は湯当たり面5Sに対して垂直に近い角度で衝突する。従って、湯当たり面5Sに衝突した溶鋼流7の飛散を均等化し、飛散した溶鋼によるウェア耐火物4の溶損が特定の部位に偏らないようにすることができる。
ここで、図示された例において湯当たり面5Sは平面であるが、他の例において湯当たり面は溶鋼鍋の底面とは反対側に膨出した曲面であってもよい。この場合、湯当たり面を構成する曲面のうち溶鋼流と衝突する部分において、曲面の接平面が溶鋼流に対してなす角度が85°以上95°以下であり、曲面の接平面が溶鋼鍋1の底面に対してなす角度が0°よりも大きく20°以下である。また、図示された例では湯当たり部材5の上面全体が湯当たり面5Sであるが、他の例では湯当たり部材の上面に湯当たり面以外の面が含まれてもよい。
多くの場合において溶鋼流7は溶鋼鍋1の底面に対して垂直に衝突しないため、上記のように角度θを設定すると湯当たり面5Sは底面に対して傾斜する(すなわち、角度θが0よりも大きくなる)。一方、湯当たり面5Sの傾斜のために湯当たり部材5の底面からの突出高さが大きくなりすぎると、溶鋼によるスポーリングが発生し、湯当たり部材5の損耗量が大きくなる。そこで、湯当たり面5Sが溶鋼鍋1の底面に対してなす角度θを20°以下にすることによって、溶鋼によるスポーリングが発生し、湯当たり部材5の損耗量が大きくなりすぎるのを防ぎ、湯当たり部材5を含む溶鋼鍋1全体の耐用性を高めることができる。なお、溶鋼鍋1の底面は必ずしも水平ではなく、溶鋼を流動させるために2°程度の傾斜がつけられている場合があるが、その場合は傾斜した底面を基準にして上記の角度θが定義される。
以上で説明したように、本実施形態では、湯当たり面5Sが溶鋼流7に対してなす角度を適切な範囲に設定することによって、湯当たり面5Sに衝突した溶鋼流7の飛散を均等化し、飛散した溶鋼によるウェア耐火物4の溶損が特定の部位に偏らないようにすることができる。また、湯当たり面5Sが溶鋼鍋1の底面に対してなす角度を適切な範囲に設定することによって、底面上を流動する溶鋼による湯当たり部材5の溶損を抑制し、溶鋼鍋1全体の耐用性を高めることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、容量400トンの溶鋼鍋1に湯当たり部材5を配置し、50チャージの操業後にプロフィールメータを用いて側壁の残寸を測定することによってウェア耐火物4の損耗量を評価した。損耗量の評価は、溶鋼鍋1の転炉対向側(図2における右側)の側壁、および転炉側(図2における左側)の側壁のそれぞれで実施した。また、湯当たり部材5についても、10チャージの操業後にプロフィールメータを用いて残寸を測定することによって損耗量を評価した。結果を表1に示す。なお、溶鋼流-底面角度θは溶鋼鍋1の底面が溶鋼流7に対してなす角度(図4参照)であり、この角度と湯当たり面傾斜角度θ、すなわち湯当たり面5Sが底面に対してなす角度との合計が、湯当たり面5Sが溶鋼流7に対してなす角度θになる(θ=θ+θ)。
Figure 0007406095000001
表1において、側壁耐火物の損耗量は、転炉対向側では湯当たり面5Sを溶鋼鍋1の底面に対して平行にした(θ=0)比較例1を基準にして、側壁耐火物の損耗量の減少が10%以上の例を◎、損耗量の減少が10%未満の例を〇、損耗量が減少しなかった例を×と表記している。一方、転炉側では、同じく比較例1を基準にして、側壁耐火物の損耗量の増加が10%未満の例を◎、損耗量の増加が10%以上20%未満の例を〇、損耗量の増加が20%以上の例を×と表記している。湯当たり部材の耐用性は、比較例1に対して湯当たり部材の損耗量の増加が10%未満の例を◎、損耗量の増加が10%以上20%未満の例を〇、損耗量の増加が20%以上の例を×と表記している。
実施例1~実施例9では、溶鋼流-底面角度θが80°または76.5°である場合のそれぞれについて、湯当たり面傾斜角度θを5°~18.5°の範囲で変化させ、溶鋼流-湯当たり面角度θを85°以上95°以下とした。これらの実施例では、転炉対向側の側壁耐火物の損耗量が低減されるとともに、転炉側の側壁耐火物についても損耗量が過大にならず、また湯当たり部材の耐用性も十分であった。
一方、比較例1、比較例2および比較例5では、溶鋼流-湯当たり面角度θをそれぞれ80°、82.5°、81.5°とした結果、転炉対向側の側壁耐火物の損耗量に有意な低減が見られなかった。この結果から、溶鋼流-湯当たり面角度θが85°未満である場合は、転炉対向側への溶鋼流の飛散の偏りが十分に改善されないと考えられる。
一方、比較例3、比較例4および比較例6では、溶鋼流-湯当たり面角度θをそれぞれ100°、101°、96.5°とした結果、転炉対向側の側壁耐火物の損耗量は低減されたものの、転炉側の側壁耐火物の損耗量が過大になった。この結果から、溶鋼流-湯当たり面角度θが95°を超える場合は、逆に転炉側に溶鋼流の飛散が偏ってしまうと考えられる。
また、比較例4では、湯当たり面傾斜角度θを21°とした結果、湯当たり部材の損耗量が過大になった。実施例1~実施例9を含む、湯当たり面傾斜角度θが20°以下の他の例では、湯当たり部材の損耗量は許容範囲内であった。この結果から、湯当たり面傾斜角度θを20°以下とすることによって、湯当たり面を傾斜させても湯当たり部材に十分に耐用性をもたせることができると考えられる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1…溶鋼鍋、2…鉄皮、3…パーマネント耐火物、4…ウェア耐火物、5…湯当たり部材、5S…湯当たり面、6…羽口、7…溶鋼流。

Claims (3)

  1. 転炉の出鋼口から注出された溶鋼流を受容する溶鋼鍋であって、
    外殻を構成する鉄皮と、
    前記鉄皮に内張りされて前記溶鋼鍋の側壁および底面を構成する耐火物と、
    前記溶鋼流が前記底面に衝突する位置に配置され、湯当たり面を有する湯当たり部材と
    を備え、
    前記出鋼口における前記溶鋼流の方向および流速、ならびに出鋼時の前記転炉と前記溶鋼鍋との位置関係から決まる、前記溶鋼流が前記湯当たり面に衝突する時点において前記底面が前記溶鋼流に対してなす角度が80°以下であり、
    前記出鋼口における前記溶鋼流の方向および流速、ならびに出鋼時の前記転炉と前記溶鋼鍋との位置関係から決まる、前記溶鋼流が前記湯当たり面に衝突する時点において前記湯当たり面が前記溶鋼流に対してなす角度が85°以上95°以下であり、
    前記湯当たり面が前記底面に対してなす角度が0°よりも大きく20°以下である溶鋼鍋。
  2. 前記湯当たり面は、平面である、請求項1に記載の溶鋼鍋。
  3. 前記湯当たり部材は、プレキャストブロックで形成される、請求項1または請求項2に記載の溶鋼鍋。
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