JP5606177B2 - 溶鋼搬送用取鍋 - Google Patents
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Description
特許文献1では、溶鋼取鍋敷部の不定形耐火物ライニングにおいて、受鋼時、溶鋼の当たる領域のパーマ煉瓦の厚さを周辺部よりも薄くし、その部分の不定形耐火物ライニングを厚くすることが開示されている。
特許文献3では、受鋼時に溶鋼が当たる部分に耐火物ブロックを敷き、その他の部分には不定形耐火物を施工して敷部を形成した溶鋼取鍋の該敷部の補修部の構造であって、補修すべき敷部の少なくとも一部に下広がりの形状を有する耐火物ブロックを敷くとともに、その他の部分には残存不定形耐火物にアンカーを打ち込み、その上から補修用流し込み耐火材を施工することが開示されている。
特許文献5では、内張り材であるウエア層とパーマ層との境界面が曲面、球面、若しくはこれらに相当する傾斜面であることが開示されている。
即ち、敷部に耐食性に優れるアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を用いることを前提として、その不定形耐火物の剥離を防止する技術は未開発であった。
本発明の技術的手段は、敷部にパーマ煉瓦が施工されると共に、前記パーマ煉瓦上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物が施工された200〜300tonの溶鋼を搬送する取鍋において、前記溶鋼を受ける湯当たり部のパーマ煉瓦の厚さを前記湯当たり部以外のパーマ煉瓦よりも薄くし、前記敷部の不定形耐火物の熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)のものとし、且つ、湯あたり部と湯あたり部以外との境界部におけるパーマ煉瓦を、不定形耐火物に接する表面のテーパ角度が0〜30°となるものとしている点にある。
本発明の溶鋼搬送用取鍋は、200〜300tonの溶鋼を搬送するものである。この溶鋼搬送用取鍋(以降、取鍋という)を図1を用いて説明する。なお、取鍋は図1に示したものに限定されない。
取鍋1は、本体を構成する上部が開放となった円柱状の鉄皮2を備えている。取鍋1の径内方向側を稼働面又は内面側と言い説明する。この鉄皮2の底部(敷部)3には、定形の耐火物で構成されたパーマ煉瓦4(以降、第1パーマ煉瓦という)が複数個施工されている。第1パーマ煉瓦4の稼働面側に、不定形耐火物5が流し込みにより施工されている。詳しくは、第1パーマ煉瓦4上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形(キャスタブル)が施工されている。
以下、敷部について詳しく説明する。
図1、2に示すように、取鍋1の敷部3の中心部には、例えば、溶鋼を転炉から出鋼した際に溶鋼が直接衝突する部分、即ち、溶鋼を受ける湯当たり部13が設けられている。この湯当たり部13は、半径が2100mm〜2255mmとなる大きさの敷部3に対して、当該敷部3の800mm〜1088mmを占めている。即ち、湯当たり部13の大きさは、敷部3の大きさに対して1/4〜2/1である。
さらに詳しく説明すると、第1パーマ煉瓦4上に不定形耐火物5が施工した状態では、不定形耐火物5の稼働面は平坦となっていて、湯当たり部13に位置する不定形耐火物5の厚みが、湯当たり部13以外の不定形耐火物5よりも厚くなっている。このように、湯当たり部13の不定形耐火物5の厚みが、湯当たり部13以外の不定形耐火物5よりも厚くなるように、湯当たり部13に位置する第1パーマ煉瓦4(4a)の厚みh1を、湯当たり部13以外の第1パーマ煉瓦4(4b)よりも薄くしている。
一方、湯当たり部13以外の部分(敷部3の外周付近)は、耐火物の溶損の進行が遅いため、湯当たり部13よりも不定形耐火物5の厚みを薄くしても、取鍋1の寿命を確保することができる。
図3は、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物とアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物との熱膨張率をまとめたものである。
ここで、不定形耐火物の剥離を見たとき、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物を用いることが良いと考えられるが、このアルミナ−スピネル質の不定形耐火物はアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物に比べ耐食性が低く、繰り返し使用する取鍋1の敷部3に使用することは寿命の観点から好ましくない。
詳しくは、取鍋1に溶鋼が装入された際のキャスタブル背面の温度は高くても1150℃であり、温度が1150℃であるときのアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5の熱膨張率は1.4(×10 −2 /℃)となる。また、アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5の熱膨張率は温度が上がるにつれ上昇するが2.4(×10 −2 /℃)がピークとなる。図3から分かるように、本発明では、熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)であるアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5を敷部3に用いている。
即ち、湯当たり部13の不定形耐火物5の背面側に配置される各第1パーマ煉瓦4(4a)に関して、湯当たり部13の不定形耐火物5に接する表面15(以降、接触面という)のテーパ角度を0〜30°としている。詳しくは、湯当たり部13に対応する全ての第1パーマ煉瓦4(4a)における接触面15のテーパ角度θを0〜30°とする。なお、本発明では、湯当たり部13と湯当たり部13以外とを跨ぐ第1パーマ煉瓦4(境界部の第1パーマ煉瓦4)も、湯当たり部13に配置される第1パーマ煉瓦4aとしている。
図4に示すように、テーパ角度θとは、水平線と第1パーマ煉瓦4の接触面15とのなす角度θのことである。言い換えれば、第1パーマ煉瓦4は矩形状に形成されたもので、接触面15と対向する対向面16は平坦(水平)であり、接触面15は左右方向にいくにしたがって次第に下側に移行する傾斜状となっていて、水平に対する傾斜の角度が0〜30°となっている。
詳しくは、図5は、第1パーマ煉瓦4(4a)と不定形耐火物5とがある角度にて接触している状態において、不定形耐火物5のヤング率、圧縮強度から応力を計算し、その応力が限界剥離歪を超えたときを剥離有り、応力が限界剥離歪を超えたときを剥離無しとして、第1パーマ煉瓦4(4a)の接触面15の角度(不定形耐火物5と第1パーマ煉瓦4との接触角度)と不定形耐火物5の熱膨張率との関係をまとめたものである。
ただし、
α:熱膨張率(線膨張係数)(×10 −2 /℃)
1.4≦α≦2.4
表1は、本発明の取鍋を使用した場合の実施例と、本発明の取鍋を使用した場合の比較例とをまとめたものである。
キャスタブルのヤング率(不定形耐火物5の弾性率)は、不定形耐火物5の温度1150℃となる定常状態において48である。キャスタブルの圧縮強度(不定形耐火物5の圧縮強度)は、不定形耐火物5の温度1150℃となる定常状態において69.3である。
キャスタブルは、質量%で、MgOが5%〜7%、Al2O3が88%〜92%、SiO2が1%〜3%を含有するものを用いた。その他は、MgO、Al2O3、SiO2を除いた成分を示しており、不可避的不純物も含まれる。表中にはキャスタブルの化学成分を明記しているが、本発明の取鍋1を使用したキャスタブルは、当業者常用の不定形耐火物である。
なお、実施例及び比較例では、溶鋼を受ける湯当たり部13の第1パーマ煉瓦4(4a)の厚さh1を湯当たり部13以外の第1パーマ煉瓦4(4b)よりも薄くし、湯当たり部13の不定形耐火物5を熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)の範囲であるものを使用している。
一方で、比較例19〜22に示すように、テーパ角度θが0〜30°の範囲から外れているため、敷部3における不定形耐火物5の剥離が生じた。
取鍋1の寿命が低下すると、取鍋1を整備する回数が増え、製鋼工場における取鍋1の稼働率が下がり、取鍋1が不足して生産性が低下する恐れがあるが、不用意に取鍋1の寿命が低下することがないため、生産性も向上させることができる。
2 鉄皮
3 敷部
4 第1パーマ煉瓦
4a 湯当たり部の第1パーマ煉瓦
4b 湯当たり部以外の第1パーマ煉瓦
5 敷部の不定形耐火物
6 側壁
7 第2パーマ煉瓦
8 第3パーマ煉瓦
10 不定形耐火物
11 第4パーマ煉瓦
12 排出口
15 接触面
16 対向面
θ テーパ角度
Claims (1)
- 敷部にパーマ煉瓦が施工されると共に、前記パーマ煉瓦上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物が施工された200〜300tonの溶鋼を搬送する取鍋において、
前記溶鋼を受ける湯当たり部のパーマ煉瓦の厚さを前記湯当たり部以外のパーマ煉瓦よりも薄くし、
前記敷部の不定形耐火物の熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)のものとし、且つ、湯あたり部と湯あたり部以外との境界部におけるパーマ煉瓦を、不定形耐火物に接する表面のテーパ角度が0〜30°となるものとしていることを特徴とする溶鋼搬送用取鍋。
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