JP5606177B2 - 溶鋼搬送用取鍋 - Google Patents

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本発明は、例えば、溶鋼を搬送するための溶鋼搬送用取鍋に関する。
従来より、溶鋼搬送用取鍋(取鍋)は、例えば、転炉から溶鋼の出鋼時に当該溶鋼を受鋼し、受鋼した溶鋼を搬送するのに用いられているのが一般的である。取鍋の構造や取鍋に用いる不定形耐火物として、特許文献1〜特許文献5に示すものがある。
特許文献1では、溶鋼取鍋敷部の不定形耐火物ライニングにおいて、受鋼時、溶鋼の当たる領域のパーマ煉瓦の厚さを周辺部よりも薄くし、その部分の不定形耐火物ライニングを厚くすることが開示されている。
特許文献2では、アルミナ65〜93wt%、マグネシア2〜20wt%、アルミナセメント5〜15wt%よりなる配合物100wt%と、揮発シリカ外掛け0.05〜3wt%を含むアルミナ−マグネシア質流し込み施工不定形耐火物で湯当り部を構成し、他の部分をアルミナ−スピネル質流し込み施工不定形耐火物の構造が開示されている。
特許文献3では、受鋼時に溶鋼が当たる部分に耐火物ブロックを敷き、その他の部分には不定形耐火物を施工して敷部を形成した溶鋼取鍋の該敷部の補修部の構造であって、補修すべき敷部の少なくとも一部に下広がりの形状を有する耐火物ブロックを敷くとともに、その他の部分には残存不定形耐火物にアンカーを打ち込み、その上から補修用流し込み耐火材を施工することが開示されている。
特許文献4では、Al23とMgOを主要構成成分とし、CaO含有量が0.5重量%未満である組成物に対し、オキシカルボン酸の多価金属塩を固形物換算で外掛け0.05〜5重量%と、硫酸塩または燐酸塩を固形物換算で外掛け0.05〜5重量%添加しているキャスタブル耐火物が開示されている。
特許文献5では、内張り材であるウエア層とパーマ層との境界面が曲面、球面、若しくはこれらに相当する傾斜面であることが開示されている。
特開平8−300140号公報 特開平9−76056号公報 実開平6−15867号公報 特開平11−240773号公報 特開平2−280958号公報
特許文献1〜特許文献5では、様々な取鍋の構造や取鍋に用いる不定形耐火物について開示されているものの、熱膨張率が大きいアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を敷部に用いた場合の構造については、何ら詳細に開示されておらず、このような場合に、敷部に用いた不定形耐火物の剥離をどのように防止するかという指針も全く示されていない。
即ち、敷部に耐食性に優れるアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を用いることを前提として、その不定形耐火物の剥離を防止する技術は未開発であった。
そこで、本発明では、敷部に熱膨張率が大きいアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を用いたとしても、当該不定形耐火物の剥離を防止することができる溶鋼搬送用取鍋を提供することを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
本発明の技術的手段は、敷部にパーマ煉瓦が施工されると共に、前記パーマ煉瓦上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物が施工された200〜300tonの溶鋼を搬送する取鍋において、前記溶鋼を受ける湯当たり部のパーマ煉瓦の厚さを前記湯当たり部以外のパーマ煉瓦よりも薄くし、前記敷部の不定形耐火物の熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)のものとし且つ、湯あたり部と湯あたり部以外との境界部におけるパーマ煉瓦を、不定形耐火物に接する表面のテーパ角度が0〜30°となるものとしている点にある。
本発明によれば、敷部に熱膨張率が大きいアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を用いたとしても、当該不定形耐火物の剥離を防止することができる。
取鍋の全体断面図を示した図である。 取鍋の平面図である。 アルミナ−スピネル質の不定形耐火物とアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物との熱膨張率をまとめ図である。 テーパ角度の説明図である。 第1パーマ煉瓦の接触面の角度と熱膨張率との関係を示した図である。 温度変化を示した図である。 剥離の状態を示した図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
本発明の溶鋼搬送用取鍋は、200〜300tonの溶鋼を搬送するものである。この溶鋼搬送用取鍋(以降、取鍋という)を図1を用いて説明する。なお、取鍋は図1に示したものに限定されない。
取鍋1は、本体を構成する上部が開放となった円柱状の鉄皮2を備えている。取鍋1の径内方向側を稼働面又は内面側と言い説明する。この鉄皮2の底部(敷部)3には、定形の耐火物で構成されたパーマ煉瓦4(以降、第1パーマ煉瓦という)が複数個施工されている。第1パーマ煉瓦4の稼働面側に、不定形耐火物5が流し込みにより施工されている。詳しくは、第1パーマ煉瓦4上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形(キャスタブル)が施工されている。
鉄皮2の側壁6(胴部分)の内面には、定形の耐火物で構成された一層目のパーマ煉瓦7(以降、第2パーマ煉瓦という)が当該鉄皮2の敷部3側から上部側に亘って施工されている。この一層目の第2パーマ煉瓦7の稼働面側に、二層目となるパーマ煉瓦8(以降、第3パーマ煉瓦という)が第2パーマ煉瓦7と同様に鉄皮2の敷部3側から上部側に亘って施工されている。
第3パーマ煉瓦8の内面であって、敷部3側から側壁6の中途部分にかけては、不定形耐火物10が流し込みにより施工されている。この不定形耐火物10の上部側であって、第3パーマ煉瓦8の内面には、定形の耐火物で構成されたパーマ煉瓦11(以降、第4パーマ煉瓦という)が施工されている。取鍋1の敷部3には、溶鋼を外部へ出鋼(排出)するための排出口12が設けられている。
本発明の取鍋は、敷部に施工した耐火物に特徴を有するものである。
以下、敷部について詳しく説明する。
図1、2に示すように、取鍋1の敷部3の中心部には、例えば、溶鋼を転炉から出鋼した際に溶鋼が直接衝突する部分、即ち、溶鋼を受ける湯当たり部13が設けられている。この湯当たり部13は、半径が2100mm〜2255mmとなる大きさの敷部3に対して、当該敷部3の800mm〜1088mmを占めている。即ち、湯当たり部13の大きさは、敷部3の大きさに対して1/4〜2/1である。
この湯当たり部13に位置する各第1パーマ煉瓦4(4a)の厚さh1は、湯当たり部13に位置しない他の第1パーマ煉瓦4(4b)の厚さh2よりも薄くなっている。
さらに詳しく説明すると、第1パーマ煉瓦4上に不定形耐火物5が施工した状態では、不定形耐火物5の稼働面は平坦となっていて、湯当たり部13に位置する不定形耐火物5の厚みが、湯当たり部13以外の不定形耐火物5よりも厚くなっている。このように、湯当たり部13の不定形耐火物5の厚みが、湯当たり部13以外の不定形耐火物5よりも厚くなるように、湯当たり部13に位置する第1パーマ煉瓦4(4a)の厚みh1を、湯当たり部13以外の第1パーマ煉瓦4(4b)よりも薄くしている。
湯当たり部13は、溶鋼を装入する際に当該溶鋼が当たる部分であるため、耐火物の溶損が他の部分に比べて進みやすい部分である。上述したように、湯当たり部13に位置する不定形耐火物5の厚みを厚くしていため、取鍋1の寿命を長くすることができる。
一方、湯当たり部13以外の部分(敷部3の外周付近)は、耐火物の溶損の進行が遅いため、湯当たり部13よりも不定形耐火物5の厚みを薄くしても、取鍋1の寿命を確保することができる。
また、敷部3に施工した不定形耐火物5は、目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質である。アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5は、溶鋼を受鋼した時にスピネル化反応によって2次スピネルが形成され易く、この2次スピネルが形成されると、受鋼時に耐火物の剥離が発生しやすいという特性を持っている。
図3は、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物とアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物との熱膨張率をまとめたものである。
図3に示すように、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物は、温度が上昇しても膨張率が余り増加しないため剥離が発生しにくい。一方、アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物は、温度が上昇すると膨張率も増加するため剥離が発生し易い。
ここで、不定形耐火物の剥離を見たとき、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物を用いることが良いと考えられるが、このアルミナ−スピネル質の不定形耐火物はアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物に比べ耐食性が低く、繰り返し使用する取鍋1の敷部3に使用することは寿命の観点から好ましくない。
本発明では、アルミナ−スピネル質の不定形耐火物に比べて剥離がし易いが、耐食性が良いアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5を敷部3に用いることとしている。
詳しくは、取鍋1に溶鋼が装入された際のキャスタブル背面の温度は高くても1150℃であり、温度が1150℃であるときのアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5の熱膨張率は1.4(×10 −2 /℃)となる。また、アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5の熱膨張率は温度が上がるにつれ上昇するが2.4(×10 −2 /℃)がピークとなる。図3から分かるように、本発明では、熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)であるアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5を敷部3に用いている。
上述したように、敷部3に用いたアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物5は、剥離し易い特性を有していることから、この敷部3に用いた不定形耐火物5に接触する第1パーマ煉瓦4の形状を工夫することによって、不定形耐火物5が剥離し難いようにしている。
即ち、湯当たり部13の不定形耐火物5の背面側に配置される各第1パーマ煉瓦4(4a)に関して、湯当たり部13の不定形耐火物5に接する表面15(以降、接触面という)のテーパ角度を0〜30°としている。詳しくは、湯当たり部13に対応する全ての第1パーマ煉瓦4(4a)における接触面15のテーパ角度θを0〜30°とする。なお、本発明では、湯当たり部13と湯当たり部13以外とを跨ぐ第1パーマ煉瓦4(境界部の第1パーマ煉瓦4)も、湯当たり部13に配置される第1パーマ煉瓦4aとしている。
この実施形態では、境界部の第1パーマ煉瓦4(4a)のテーパ角度θを18°とし、それ以外の第1パーマ煉瓦4(4a)のテーパ角度θを約0°としている。
図4に示すように、テーパ角度θとは、水平線と第1パーマ煉瓦4の接触面15とのなす角度θのことである。言い換えれば、第1パーマ煉瓦4は矩形状に形成されたもので、接触面15と対向する対向面16は平坦(水平)であり、接触面15は左右方向にいくにしたがって次第に下側に移行する傾斜状となっていて、水平に対する傾斜の角度が0〜30°となっている。
図5は、第1パーマ煉瓦の接触面の角度と、この第1パーマ煉瓦上に施工された不定形耐火物5の熱膨張率との関係を示したものである。
詳しくは、図5は、第1パーマ煉瓦4(4a)と不定形耐火物5とがある角度にて接触している状態において、不定形耐火物5のヤング率、圧縮強度から応力を計算し、その応力が限界剥離歪を超えたときを剥離有り、応力が限界剥離歪を超えたときを剥離無しとして、第1パーマ煉瓦4(4a)の接触面15の角度(不定形耐火物5と第1パーマ煉瓦4との接触角度)と不定形耐火物5の熱膨張率との関係をまとめたものである。
ここで、実操業において不定形耐火物5中の温度は1150℃であって熱膨張率は1.4である。このとき、接触面15の角度が0〜30°であるときは、不定形耐火物5にかかる応力は限界剥離歪を超えず、剥離が発生しない。ゆえに、第1パーマ煉瓦4の接触面15のテーパ角度θは、0〜30°にする必要がある。特に、熱膨張率とテーパ角度θとの関係が式(1)を満たすように、第1パーマ煉瓦4の接触面15のテーパ角度θを設定することが好ましい。
テーパ角度θ≦(94.8/α)−37 ・・・(1)
ただし、
α:熱膨張率(線膨張係数)(×10 −2 /℃)
1.4≦α≦2.4
表1は、本発明の取鍋を使用した場合の実施例と、本発明の取鍋を使用した場合の比較例とをまとめたものである。
表中及び下記に示すキャスタブルは、敷部3に施工したアルミナ-マグネシア質の不定形耐火物5のことを示している。
キャスタブルのヤング率(不定形耐火物5の弾性率)は、不定形耐火物5の温度1150℃となる定常状態において48である。キャスタブルの圧縮強度(不定形耐火物5の圧縮強度)は、不定形耐火物5の温度1150℃となる定常状態において69.3である。
キャスタブル背面の温度とは、不定形耐火物5と第1パーマ煉瓦4との境界の温度を示し、図6に示すように、定常状態は大凡1150℃である。即ち、図6に示すように、不定形耐火物5の表面温度は、溶鋼の受鋼や出鋼を繰り返す度に変動するが、不定形耐火物5と第1パーマ煉瓦4との境界の温度は次第に安定して、定常状態では1150℃になる。
取鍋1の敷部3にアルミナ−マグネシア質のキャスタブルを流し込んで耐火物を施工後に取鍋を使用する。250tonの溶鋼を受鋼し、鋳造設備で溶鋼の排出を完了するまでを使用回数の1回する。実施例及び比較例では最大で100回まで使用した。
キャスタブルは、質量%で、MgOが5%〜7%、Al23が88%〜92%、SiO2が1%〜3%を含有するものを用いた。その他は、MgO、Al23、SiO2を除いた成分を示しており、不可避的不純物も含まれる。表中にはキャスタブルの化学成分を明記しているが、本発明の取鍋1を使用したキャスタブルは、当業者常用の不定形耐火物である。
実施例及び比較例では、取鍋1内の溶鋼を出鋼後の敷部3を目視し、図7に示したように不定形耐火物5が剥離している場合を剥離有り(表中、有)とし、剥離していない場合を剥離無し(表中、無)として評価を行った。不定形耐火物5の剥離の有無は、当業者であれば目視にて確認することができる。
なお、実施例及び比較例では、溶鋼を受ける湯当たり部13の第1パーマ煉瓦4(4a)の厚さh1を湯当たり部13以外の第1パーマ煉瓦4(4b)よりも薄くし、湯当たり部13の不定形耐火物5を熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)の範囲であるものを使用している。
実施例1〜18に示すように、湯当たり部13のパーマ煉瓦(第1パーマ煉瓦4a)に関し、不定形耐火物5に接する表面(接触面)のテーパ角度θを0〜30°の範囲にしているので、敷部3における不定形耐火物5の剥離は生じなかった(表中、テーパ角度θの欄、敷部の剥離の欄)。
一方で、比較例19〜22に示すように、テーパ角度θが0〜30°の範囲から外れているため、敷部3における不定形耐火物5の剥離が生じた。
本発明によれば、取鍋1の敷部3における不定形耐火物5の剥離を防止することによって、取鍋1の寿命を向上させることができる。即ち、不定形耐火物5の剥離によって取鍋1の急激な寿命が発生してしまうことを防止することができる。
取鍋1の寿命が低下すると、取鍋1を整備する回数が増え、製鋼工場における取鍋1の稼働率が下がり、取鍋1が不足して生産性が低下する恐れがあるが、不用意に取鍋1の寿命が低下することがないため、生産性も向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
1 取鍋
2 鉄皮
3 敷部
4 第1パーマ煉瓦
4a 湯当たり部の第1パーマ煉瓦
4b 湯当たり部以外の第1パーマ煉瓦
5 敷部の不定形耐火物
6 側壁
7 第2パーマ煉瓦
8 第3パーマ煉瓦
10 不定形耐火物
11 第4パーマ煉瓦
12 排出口
15 接触面
16 対向面
θ テーパ角度

Claims (1)

  1. 敷部にパーマ煉瓦が施工されると共に、前記パーマ煉瓦上に目地部が存在しないアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物が施工された200〜300tonの溶鋼を搬送する取鍋において、
    前記溶鋼を受ける湯当たり部のパーマ煉瓦の厚さを前記湯当たり部以外のパーマ煉瓦よりも薄くし、
    前記敷部の不定形耐火物の熱膨張率が1.4〜2.4(×10 −2 /℃)のものとし且つ、湯あたり部と湯あたり部以外との境界部におけるパーマ煉瓦を、不定形耐火物に接する表面のテーパ角度が0〜30°となるものとしていることを特徴とする溶鋼搬送用取鍋。
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