JP7400451B2 - SiC単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、SiC単結晶の製造方法に関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。炭化珪素はこれらの特性を有することから、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
半導体等のデバイスには、SiCウェハ上にエピタキシャル膜を形成したSiCエピタキシャルウェハが用いられる。SiCウェハ上に化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって設けられたエピタキシャル膜が、SiC半導体デバイスの活性領域となる。こうしたSiCウェハは、SiC単結晶インゴット(以下、SiCインゴットという)を加工して得られる。
SiCインゴットは、昇華再結晶法(以下、昇華法という)等の方法で作製できる。昇華法は、例えば、原料を収容する内底部と、この内底部に対向する結晶設置部とを備える円筒形の坩堝を用い、内底部にSiC原料を収容して加熱し、SiC原料から昇華した原料ガスを、結晶設置部に配した種結晶上で温度差によって再結晶化させることにより、大きなSiCインゴットを得る方法である(例えば、特許文献1を参照)。
特開2010-275166号公報
昇華法によってSiCインゴットを製造する際に、坩堝の内底部に収容する原料の重量は、製造するSiCインゴットの目標重量よりも十分に多くなるようにしている。これは、SiC原料が昇華する際に、SiとCとが等モル比で昇華せず、主にCが固体として内底部に残留するためである。
SiCインゴットは、成長中および成長終了直後においては、内底部に対向する側である結晶成長面(再結晶面:例えばC面)から、種結晶に臨む面(例えばSi面)に向かって温度が低くなるように温度勾配が生じている。これは、C面側が熱源に近く、かつ、坩堝の内底部に残っているSiC原料の輻射熱を直接受けるためである。
こうしたSiCインゴットのC面とSi面との温度差は、SiCインゴットの冷却過程で内部に歪(内部応力)を生じさせるが、製造するSiCインゴットの直径が小さい場合(例えば、直径100mm以下)には、こうした内部応力の影響は少ない。
しかしながら、近年、製造するSiCインゴットの大口径化(例えば、直径150mm以上)に伴って、SiCインゴットの内部応力による影響が大きくなり、SiCインゴットの割れや、スライスしたSiCウェハの反りが生じやすくなるという課題があった。このため、SiCインゴットの成長後に坩堝の内底部に残っているSiC原料を極力低減し、残留SiC原料から生じる輻射熱を少なくすることが望まれている。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、SiCインゴットの成長後に坩堝の内底部に残っているSiC原料から生じる輻射熱を少なくして、SiCインゴットの冷却過程で生じる内部応力を低減することが可能なSiC単結晶の製造方法を実現することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明のSiC単結晶の製造方法は、原料を収容する内底部と、前記内底部に対向する結晶設置部と、を備える坩堝を用いたSiC単結晶の製造方法であって、前記内底部に原料を収容する収容工程と、前記収容工程の後に、加熱により前記原料を昇華させ、前記結晶設置部に配された種結晶にSiC単結晶を成長させる結晶成長工程と、を有し、前記結晶成長工程の完了後において、成長後のSiC単結晶の結晶成長面と前記内底部に残留した残原料の上面との間隔が、50mm以上、100mm以下の範囲になるように、前記結晶成長工程を行い、前記収容工程では、成長させるSiC単結晶の目標重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の重量の前記原料を、充填密度が1.6g/cm以上、2.6g/cm以下の範囲となるように前記内底部に収容することを特徴とする。
また、本発明では、成長後のSiC単結晶の直径は150mm以上であり、かつ長さは15mm以上であってもよい。
本発明によれば、SiCインゴットの成長後に坩堝の内底部に残っているSiC原料から生じる輻射熱を少なくして、SiCインゴットの冷却過程で生じる内部応力を低減することが可能なSiC単結晶の製造方法を実現できる。
本発明の一実施形態に係るSiC単結晶の製造方法の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るSiC単結晶の製造方法の一例を示す模式図である。 WarpによるSiCウェハの形状の評価方法を示した模式図である。 BowによるSiCウェハの形状の評価方法を示した模式図である。 本発明の検証結果を示すグラフである。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1、図2は、本発明の一実施形態に係るSiC単結晶の製造方法の一例を示す模式図である。
本実施形態のSiC単結晶の製造方法に用いられる坩堝10は、例えば、全体が黒鉛等の炭素材料によって形成された略円筒形で中空の容器である。この坩堝10は、内底部11と、内底部11に対向する結晶設置部12と、を備え、内底部11と結晶設置部12とは、互いの開口面どうしで嵌合可能な構成とされている。
内底部11は、SiCインゴット(SiC単結晶)20の製造時に上下方向の下側に配され、内部にSiC原料Mが収容される。結晶設置部12は上下方向の上側に配され、結晶設置部12の内側天面には種結晶21が設置される。
本実施形態のSiC単結晶の製造方法は、例えば上述した坩堝10をコイル(坩堝加熱手段)23等を有する単結晶成長装置24に設置して行う。SiC単結晶の製造方法は、坩堝10の内底部11にSiC原料Mを収容する収容工程と、この収容工程の後に、コイル23によって坩堝10のSiC原料Mを加熱して昇華させ、生じた原料ガスを結晶設置部12に配された種結晶21に再結晶させてSiCインゴット20を成長させる結晶成長工程とを有している。
図1に示す収容工程では、SiC原料Mとして、例えば、SiC粉末を用いる。SiC原料Mとして用いるSiC粉末は、例えば、平均粒径が0.05mm以上、1.0mm以下のものを用いることが好ましい。また、内底部11に収容するSiC原料Mの表面は、結晶設置部12に対する対称性を高めるために、平坦に均すことが好ましい。
こうした収容工程において、坩堝10の内底部11に収容するSiC原料Mの重量は、成長させるSiCインゴット20の目標重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の重量範囲になるようにする。
SiCインゴット20の目標重量に対してSiC原料Mの重量が1.3倍未満であると、原料不足によって所望の結晶長のSiCインゴット20が得られない虞がある。また、SiCインゴット20の成長途中で原料が枯渇して、結晶成長面であるC面20Aの表面が炭化する虞がある。更に、結晶成長後の残原料が少なすぎることにより、残原料からの輻射熱が少なくなり、SiCインゴット20から加工したウェハは、Si面20Bが中心に向かって凹む凹形状になり、反りが大きくなりすぎる虞がある。
一方、SiCインゴット20の目標重量に対してSiC原料Mの重量が2.3倍を超えると、昇華せずにSiCの状態のままの残原料の重量が多くなりすぎる。その結果、成長したSiCインゴット20は、冷却過程で生じる内部応力が大きくなり、SiCインゴット20が割れたり、SiCインゴット20から加工したウェハのC面20A側が凹形状になる反りが大きくなったりするなどの不具合が生じる虞がある。
また、この収容工程においては、坩堝10の内底部11に収容するSiC原料Mの充填密度が1.6g/cm以上、2.6g/cm以下の範囲となるように内底部11に収容する。
SiC原料Mの充填密度が1.6g/cm未満である場合、上述した重量範囲までSiC原料Mを充填しようとすると、容積が過大になるため、大型のルツボが必要となり、またこれを加熱するための単結晶成長装置が大型化し、製造コストが高くなる懸念がある。
また、充填密度が1.6g/cm未満であると、原料粒子間の空隙が大きくなり、昇華ガスが通過しやすくなり、昇華ガスが多量に発生する。そのため、結晶成長面における昇華ガスの過飽和度が高くなり、多結晶化や結晶欠陥の発生の原因になる懸念がある。更に、SiC原料Mによる保温性が低くなりすぎるため、SiCインゴット20のSi面20Bが中心に向かって凹む凹形状になり、反りが大きくなりすぎる虞がある。
一方、充填密度が2.6g/cmを超える場合、高密度充填によって昇華ガスが発生しずらくなるため、所望の結晶長が得られにくくなったり、結晶成長面であるC面20Aの表面が炭化する虞がある。また、高密度充填によって保温性が高くなることで、成長中のSiCインゴット20のC面20A側とSi面20B側とで温度差が増大し、SiCインゴット20の内部応力が大きくなり、C面20Aが中心に向かって凹む凹形状になり、反りが大きくなりすぎる虞がある。
坩堝10の結晶設置部12に配する種結晶21は、例えば、直径が150mm以上の円板状のSiC板を用いる。こうした種結晶21を用いることにより、成長させるSiCインゴット20の直径を150mm以上の大口径にすることができる。
以上の様な条件で収容工程を行った後、次に、結晶成長工程を行う。
図2に示す結晶成長工程では、SiC原料Mを収容した坩堝10を単結晶成長装置24に設置し、コイル23に高周波電流を流し坩堝10を発熱させる。坩堝10からの加熱によりSiC原料Mが所定の温度に達すると、SiC原料Mは昇華し、種結晶21の表面で再結晶化し、種結晶21にSiC単結晶が成長する。SiC単結晶が成長することによって得られるSiCインゴット20は、例えば、成長長さが15mm以上になるようにする。
結晶成長工程では、成長後のSiCインゴット20のC面20Aと、坩堝10の内底部11に残留したSiC原料Mの残原料の上面との間隔dが、50mm以上、100mm以下の範囲になるようにする。なお、間隔dは、SiC原料Mの残原料の表面が平坦でない場合、SiC原料Mの残原料の表面の平均位置と、SiCインゴット20のC面20Aの中心との間隔であればよい。
間隔dが100mmより大きい場合、坩堝10として大きなサイズのものを用いる必要があり、加熱の効率が低下し、使用電力量が増大するという不具合が生じる。
一方、間隔dが50mm未満の場合、SiCインゴット20のC面20AとSiC原料Mの残原料の表面との距離が近いことで、残原料による保温性の影響を受けやすくなり、SiCインゴット20のC面20Aが中心に向かって凹む凹形状になって、反りが大きくなりすぎる虞がある。
こうして得られた直径が150mm以上、成長長さが15mm以上の大口径で長尺のSiCインゴット20からは、スライスによって多数枚の大口径SiCウェハを切り出すことができ、1つのSiCインゴット20から大口径SiCウェハを効率的に製造することができる。
以上のように、本実施形態のSiC単結晶の製造方法によれば、収容工程において、坩堝10の内底部11に収容するSiC原料Mの重量を、成長させるSiCインゴット20の目標重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の重量範囲にして、かつ、収容するSiC原料Mの充填密度を1.6g/cm以上、2.6g/cm以下の範囲にすることによって、SiCインゴット20の成長途中で原料が枯渇してC面20Aの表面が炭化することがなく、また、成長したSiCインゴット20は、冷却中に内部応力が大きくなりすぎることがなく、SiCインゴット20が割れたり、ウェハの反りが大きくなったりするなどの不具合が生じることを防止できる。
また、大型のルツボを用いる必要がないので、製造コストが高くなる懸念がなく、更に、昇華ガスが多量に発生することがないので、成長したSiCインゴット20の多結晶化や結晶欠陥の発生を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本発明の効果を検証した。
(検証例1)
SiCインゴットの結晶重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の範囲内の重量のSiC原料によってSiCインゴットを成長させた本発明例1~3と、SiCインゴットの結晶重量に対して、2.3倍を超える重量のSiC原料によってSiCインゴットを成長させた比較例1~3について、それぞれのSiCインゴットからウェハを切り出した。そして、切り出したウェハの両面を化学機械研磨(CMP)仕上げして、厚さ350μmのSiCウェハを得た。その後、それぞれのSiCウェハの反りを示す指標であるWarpを測定した。
図3に示すように、Warpは、SiCウェハ30の第1面30aの最高点hpと最低点lpとの厚み方向の距離である。Warpが大きいほど、SiCウェハ30は反りが大きい、即ち内部応力が大きいSiCインゴットから製造されたウェハであると判断される。
Warpの測定は、まずSiCウェハ30を平坦面Fに設置された3点の支持点上に設置する。第1面30aにおける最低点lpを通り平坦面Fと平行な仮想面Slpと、第1面30aにおける最高点hpを通り平坦面Fと平行な仮想面Shpを求める。Warpは、仮想面Slpと仮想面Shpとのz方向の距離として求められる。z方向は、平坦面Fと直交し、平坦面Fから離れる方向である。
このような出順で測定された本発明例1~3と、比較例1~3の検証結果(Warp)を表1に示す。
Figure 0007400451000001
表1に示す結果によれば、SiCインゴットの結晶重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の範囲内の重量のSiC原料によってSiCインゴットを成長させた本発明例1~3では、Warpで表わされるSiCウェハ30の反りが50μm以下であり、優れた平坦性を示し、成長させたSiCインゴットの内部応力が小さいことが確認できた。
一方、SiCインゴットの結晶重量に対して2.3倍を超える重量のSiC原料によってSiCインゴットを成長させた比較例1~3では、Warpで表わされるSiCウェハ30の反りが70μm以上であり、ウェハの平坦性が低く、成長させたSiCインゴットの内部応力が大きいと考えられる。
(検証例2)
SiC原料の坩堝への充填密度を1.4g/cm(比較例)、2.1g/cm(本発明例)、2.8g/cm(比較例)に設定し、それぞれの充填密度で、SiCインゴットの結晶重量に対するSiC原料の重量の倍率を段階的に変えてSiCインゴットを成長させ、得られたそれぞれのSiCインゴットからウェハを切り出した。そして、切り出したウェハの両面を化学機械研磨(CMP)仕上げして、厚さ350μmのSiCウェハを得た。その後、それぞれのSiCウェハの反りを示す指標であるBowを測定した。
図4に示すように、Bowは、基準面Srに対するSiCウェハ30の中心cのz方向の位置である。Bowの絶対値が大きいほど、SiCウェハ30は反りが大きい、即ち内部応力が大きいSiCインゴットから製造されたウェハであると判断される。
Bowの測定は、まずSiCウェハ30を平坦面Fに設置された3点の支持点上に設置する。支持点における第1面30aを繋ぎ、平坦面Fと平行な基準面Srを求める。そして、基準面Srを0とし、基準面Srを基準に平坦面Fから離れる方向を+、基準面Srを基準に平坦面Fに近づく方向を-と規定する。Bowは、第1面30aの中心cの基準面Srに対するz方向の位置として求められる。
このような手順で測定されたBowと、SiC原料の充填密度と、結晶重量に対するSiC原料の重量倍率との3者の関係を、図5にグラフで示す。
図3のグラフによれば、SiC原料の充填密度が2.1g/cm(本発明例)である場合、全体的にBowで表わされる反りの絶対値が小さくなり、SiCインゴットの結晶重量に対するSiC原料の重量の倍率が1.3倍~2.3倍の範囲であれば、Bowは50~-50の範囲内に収まっており、SiCウェハ30が切り出されたSiCインゴットの内部応力が小さいと考えられる。
一方、SiC原料の充填密度が2.8g/cm(比較例)と高い場合、全体的にBowで表わされる反りの値が+方向に大きくなり、SiCインゴットの結晶重量に対するSiC原料の重量の倍率が1.3倍~2.3倍の範囲であっても、Bowが50μm以上といった内部応力が大きいSiCインゴットが存在する。また、SiC原料の充填密度が1.4g/cm(比較例)と低い場合であっても、全体的にBowで表わされる反りの値が-方向に大きくなり、SiCインゴットの結晶重量に対するSiC原料の重量の倍率が1.3倍~2.3倍の範囲であっても、Bowが-50μm以下といった内部応力が大きいSiCインゴットが存在する。
10…坩堝
11…内底部
12…結晶設置部
20…SiCインゴット(SiC単結晶)
21…種結晶
23…コイル(坩堝加熱手段)
24…単結晶成長装置
M…SiC原料

Claims (2)

  1. 原料を収容する内底部と、前記内底部に対向する結晶設置部と、を備える坩堝を用いたSiC単結晶の製造方法であって、
    前記内底部に原料を収容する収容工程と、
    前記収容工程の後に、加熱により前記原料を昇華させ、前記結晶設置部に配された種結晶にSiC単結晶を成長させる結晶成長工程と、を有し、
    前記結晶成長工程の完了後において、成長後のSiC単結晶の結晶成長面と前記内底部に残留した残原料の上面との間隔が、50mm以上、100mm以下の範囲になるように、前記結晶成長工程を行い、
    前記収容工程では、成長させるSiC単結晶の目標重量に対して、1.3倍以上、2.3倍以下の重量の前記原料を、充填密度が1.6g/cm以上、2.6g/cm以下の範囲となるように前記内底部に収容することを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
  2. 成長後のSiC単結晶の直径は150mm以上であり、かつ長さは15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
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