JP7390177B2 - 軸シール - Google Patents

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本発明は、回転軸の軸シールに関し、特に、車載エアコンのスクロール式圧縮機の回転軸に関する。
圧縮機には冷媒や冷凍機油の漏れを防止するシール部材が用いられている。例えば、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせた圧縮機構部を備えるスクロール式圧縮機では、圧縮機構部を駆動する回転軸に軸シールが装着されている。
特許文献1には、スクロール式圧縮機に有用なシールリングが開示されている。該シールリングの形状としては、角リングやUシール(断面が略U字状の環状シール)が挙げられている。該シールリングは樹脂組成物の成形体であり、樹脂組成物として、ポリエーテルサルフォン100重量部に対して、層状結晶構造を有する化合物の粉末1重量部~7重量部、および未変性のポリテトラフルオロエチレン粉末8重量部~27重量部を含有する樹脂組成物が提案されている。また、この樹脂組成物には、エラストマーを含有してもよく、含有量が7.5質量%未満であると、耐摩耗性および破断伸びにより表される機械物性を損なわない範囲で、曲げ弾性率を低下させられるとしている。
特許文献2には、熱可塑性エラストマーおよび動的架橋樹脂の少なくとも1種からなる軟質樹脂と硬質樹脂を含有する混合物からなるシールリングが開示されている。
特許第5876007号公報 特開2014-156935号公報
ところで、回転軸の軸シールとして断面が略U字状の軸シールを用いる場合、軸シール部材の曲げ弾性率が小さいほど、回転軸に対する緊迫力を低下させることができ、回転トルクを低減できると考えられる。しかし、特許文献1のシールリングは、ポリエーテルサルフォンを主成分とした樹脂組成物の成形体であるため、エラストマーを含有させたとしても、曲げ弾性率を大きく低下させることが困難である。また、特許文献2では、シールリングの断面形状に関する言及はなく、断面が略U字状の軸シールの回転トルクについては何ら検討はなされていない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、断面が略U字状の軸シールにおいて、回転トルクを低減できるとともに、シール性に優れる軸シールを提供することを目的とする。
本発明の軸シールは、回転軸の外周面に密着して油を含有する密封流体を封止する環状の軸シールであって、上記軸シールは、軸方向の断面視が略U字状であり、軸方向一方側に延伸して上記回転軸と摺動するシールリップ部と、該シールリップ部よりも外径側に設けられた外リップ部とを備え、上記軸シールは、ポリエステル系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物の成形体であり、ASTM D790による曲げ弾性率が200MPa~2400MPaであることを特徴とする。
上記ポリエステル系エラストマーが、芳香族ポリエステル単位を含むハードセグメントと、ポリエステル単位またはポリエーテル単位を含むソフトセグメントとの共重合体であることを特徴とする。
上記芳香族ポリエステル単位中にナフタレン環を含むことを特徴とする。
上記熱可塑性エラストマー組成物が、該熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂を1体積%~40体積%含むことを特徴とする。
上記軸シールが、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせた圧縮機構部を備えるスクロール式圧縮機に用いられ、上記回転軸が、上記圧縮機構部を駆動する回転軸であることを特徴とする。
上記スクロール式圧縮機が車載エアコンのスクロール式圧縮機であることを特徴とする。
本発明の軸シールは、軸方向の断面視が略U字状であり、軸方向一方側に延伸して回転軸と摺動するシールリップ部と、該シールリップ部よりも外径側に設けられた外リップ部とを備え、ポリエステル系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物の成形体であり、ASTM D790による曲げ弾性率が200MPa~2400MPaであるので、回転トルクを低減できるとともに、シール性に優れる軸シールが得られる。
ポリエステル系エラストマーが、芳香族ポリエステル単位を含むハードセグメントと、ポリエステル単位またはポリエーテル単位を含むソフトセグメントとの共重合体であるので、柔軟性や成形性に優れる。さらに、芳香族ポリエステル単位中にナフタレン環を含むので、耐薬品性、耐油性を向上させることができ、油を含有する密封流体と接触する環境に適している。
熱可塑性エラストマー組成物が、該熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対してPTFE樹脂を1体積%~40体積%含むので、伸び特性を維持しつつ、動摩擦係数を低減できる。
本発明の軸シールの一例を回転軸に装着した状態の図である。 本発明の軸シールの他の例を回転軸に装着した状態の図である。 スクロール式圧縮機の圧縮機構部を示す模式断面図である。 回転トルクの測定試験の概略図である。
本発明の軸シールを適用した圧縮機について図1に基づいて説明する。図1は、軸シールを回転軸に装着した状態の軸方向断面図を示している。図1に示すように、軸シール1は、軸方向の断面視が略U字状の環状部材であり、軸方向一方側に延伸したシール内径側のシールリップ部2と、シールリップ部2よりもシール外径側に設けられた外リップ部3とを有する。ハウジング5には、回転軸4が挿通される挿入孔5aが設けられており、挿入孔5aの周囲に環状溝5bが設けられている。軸シール1は、この環状溝5bに装着され、回転軸4が軸Oを中心に回転することで、シールリップ部2が回転軸4に摺動する。
図1において、軸シール1は、シールリップ部2と外リップ部3とがそれぞれ高圧側Hに延伸するように環状溝5bに装着されている。装着した状態では、軸シール1の外リップ部3は環状溝5bに当接し、軸シール1の略U字状の底面は環状溝5bの低圧側壁面5cに当接する。
図1に示すように、軸シール1は、シールリップ部2が回転軸4の外周面に密着することで、高圧側Hの流体が低圧側Lへ漏れ出すことを防いでいる。流体は、油または油を含む混合物である。油を含む混合物として、具体的には冷媒と油の混合物が挙げられる。軸シールのシール性を確保するため、装着前の軸シール1の最小内径寸法を、回転軸4の外径寸法よりも小さくする必要がある。すなわち、軸シール1を回転軸4に組み込む際に、軸シール1が締め代を持っている必要がある。軸シール1の最小内径寸法および締め代は、特に限定されないが、例えば、軸シール1の最小内径寸法が10mm~50mmの場合、その締め代は0.1mm~3mm程度である。後述するように、本発明の軸シールは、熱可塑性エラストマー組成物の成形体であり、曲げ弾性率が所定の範囲に属しているので、柔軟性に優れ、締め代をある程度確保しても、装着時に破損することがない。また、締め代をある程度確保することで、軸シール1の使用によってシールリップ部2が摩耗したとしても、密封性を維持することができる。
なお、本発明の軸シールは、図1の形態に限らない。例えば、図1ではシールリップ部を直線状に形成したが、シールリップ部を、図2に示すように湾曲した形状としてもよい。また、軸シールに、シールリップ部と外リップ部以外のリップ部(例えば、回転軸と摺動するダストリップなど)を設けてもよい。
図1の圧縮機において、ハウジング5の高圧側Hには圧縮機構部が設けられる。圧縮機構部の形態は、回転軸の回転によって流体の圧縮が行われる機構であればよく、スクロール式や斜板式などを採用できる。例えば、スクロール式の場合、圧縮機構部は、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせて構成される。
図3には、スクロール式の圧縮機構部の一部断面図を示す。図3に示すように、圧縮機構部6は、基板8aとその表面に直立する固定側スクロール翼8bを有する固定ロータ8と、基板9aとその表面に直立する可動側スクロール翼9bを有する可動ロータ9とを備えている。固定ロータ8と可動ロータ9が相互に偏心状態にかみ合わされて、それらの間に圧縮室7が形成されている。可動ロータ9は、上述の回転軸に直接的または間接的に接続されており、可動ロータ9が固定ロータ8の軸線の周りで公転することにより、圧縮室7が渦巻形状の中心側に移動して流体の圧縮が行なわれる。圧縮された圧縮流体は、可動ロータ9の中心部の吐出口10を通って吐出管から吐出され、冷凍サイクルに流出する。そして、冷凍サイクルの流体(冷媒ガスなど)が吸入口(図示省略)を介して圧縮室7へ導入される。
本発明の軸シールは、ポリエステル系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物の成形体である。ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含み、ハードセグメントにポリエステル単位、ソフトセグメントにポリエーテル単位またはポリエステル単位が用いられる。ポリエステル系エラストマーは、ポリエステル-ポリエーテル型またはポリエステル-ポリエステル型のマルチブロック共重合体である。
ハードセグメントのポリエステル単位は、主として芳香族ポリエステル単位からなることが好ましい。芳香族ポリエステル単位は、通常、芳香族ジカルボン酸成分と、ジオール成分を重合成分とするポリエステル単位である。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、またはそのエステル誘導体を用いることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸)、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸のエステル誘導体としては、例えば、上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなど)、アリールエステル、炭酸エステルなどが挙げられる。芳香族ジカルボン酸成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
上記芳香族ジカルボン酸成分以外にも、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、それらのエステル誘導体を他の共重合成分として使用してもよい。
芳香族ジカルボン酸成分の総量は、全酸成分の総モル数(100モル%)に対して、80モル%以上とすることが好ましく、90モル%以上とすることがより好ましい。また、実質的に芳香族ジカルボン酸成分のみから構成し、他の共重合成分(芳香族ジカルボン酸成分以外の酸成分)を実質的に含まないことが特に好ましい。
ジオール成分としては、例えば、ジオール、またはそのエステル誘導体を用いることができる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールなどが挙げられる。ジオールのエステル誘導体としては、例えば、上記ジオールのアセチル体などが挙げられる。ジオール成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
ハードセグメントにおいて、芳香族ポリエステル単位中にナフタレン環を含むことが好ましい。ナフタレン環を含む構成単位としては、特に、ポリブチレンナフタレート単位がより好ましい。ポリブチレンナフタレート単位は、例えば、芳香族ジカルボン酸成分にナフタレン-2,6-ジカルボン酸を用い、ジオール成分に1,4-ブタンジオールを用いることで得られる。ポリブチレンナフタレート単位を有する芳香族ポリエステル単位は、ポリブチレンナフタレート単位のみで形成されてもよく、また、その他の構成単位(例えばポリブチレンイソフタレート単位)を含んで形成されていてもよい。
ソフトセグメントのポリエーテル単位は、例えば、脂肪族ポリエーテル単位を含む。脂肪族ポリエーテル単位としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール単位、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール単位、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール単位、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などが挙げられる。これらの構成単位は1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
ソフトセグメントのポリエステル単位は、例えば、脂肪族ポリエステル単位を含む。脂肪族ポリエステル単位としては、ポリ(ε-カプロラクトン)単位、ポリエナントラクトン単位、ポリカプリロラクトン単位、ポリブチレンアジペート単位、ポリエチレンアジペート単位などが挙げられる。これらの構成単位は1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
ポリエステル系エラストマーの好適な市販品として、例えばペルプレンENタイプ(東洋紡社製)などが挙げられる。ペルプレンENタイプは、下記式(1)で示す化学構造を有しており、下記式(2)にハードセグメントを示し、下記式(3)にソフトセグメントを示す。下記式(1)に示すように、ハードセグメントの構成単位とソフトセグメントの構成単位は、エステル結合やカーボネート結合で結合されている。ペルプレンENタイプにおいて、ハードセグメントは芳香族ポリエステル単位のみからなり、より具体的にはポリブチレンナフタレート単位のみからなっている。ペルプレンENタイプの具体的なグレードとして、EN-1000、EN-2000、EN-3000、EN-5000、EN-16000などが挙げられる。各グレードは、ハードセグメントとソフトセグメントの比率が異なっており、後述の実施例で示すように物性(曲げ弾性率など)が異なっている。
Figure 0007390177000001
ペルプレンENタイプのように、分子中にナフタレン環を含む芳香族ポリエステルからなるハードセグメントを用いると、ナフタレン環を含まない場合に比べて、ポリエステル系エラストマーの耐薬品性、耐油性を向上させることができる。そのため、冷媒や冷凍機油が混在する流体存在下で使用される圧縮機の回転軸の軸シールに好適である。
ポリエステル系エラストマーにおいて、共重合におけるハードセグメントとソフトセグメントの割合は特に限定されないが、ハードセグメントの割合が増えると弾性率が高くなるため、熱可塑性樹脂エラストマー組成物の曲げ弾性率が200MPa~2400MPaの範囲になるように調整される。なお、成形体の曲げ弾性率を所望の範囲としやすいことから、ポリエステル系エラストマーには、曲げ弾性率(ASTM D790)150MPa~1700MPaのエラストマーを用いることが好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対して、ポリエステル系エラストマーは、60体積%以上含まれることが好ましく、80体積%以上含まれることがより好ましく、90体積%以上含まれることがさらに好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対して、PTFE樹脂が1体積%~40体積%含まれることが好ましい。PTFE樹脂は固体潤滑剤であり、1体積%以上配合することで、熱可塑性エラストマー組成物の成形体の動摩擦係数を低減できる。一方、PTFE樹脂の含有量が40体積%を超えると、熱可塑性エラストマー組成物の伸び特性が低下し、軸シールを回転軸に組み込む際に割れが発生するおそれがある。より好ましくは、PTFE樹脂の含有量は1体積%~10体積%である。
PTFE樹脂として、懸濁重合法によるモールディングパウダー、乳化重合法によるファインパウダー、再生PTFEのいずれを採用してもよい。熱可塑性エラストマー組成物の流動性を安定させるためには、成形時のせん断により繊維化しにくく、溶融粘度を増加させにくい再生PTFEを採用することが好ましい。再生PTFEとは、熱処理(熱履歴が加わったもの)粉末、γ線または電子線などを照射した粉末のことである。例えば、モールディングパウダーまたはファインパウダーを熱処理した粉末、また、この粉末をさらにγ線または電子線を照射した粉末、モールディングパウダーまたはファインパウダーの成形体を粉砕した粉末、また、その後γ線または電子線を照射した粉末、モールディングパウダーまたはファインパウダーをγ線または電子線を照射した粉末などのタイプがある。
本発明に使用できる市販品のPTFE樹脂としては、株式会社喜多村製:KTL-610、KTL-450、KTL-350、KTL-8N、KT-400H、三井ケマーズフロロプロダクツ株式会社製:テフロン(登録商標)7-J、TLP-10、AGC株式会社製:フルオンG163、L150J、L169J、L170J、L172J、L173J、ダイキン工業株式会社製:ポリフロンM-15、ルブロンL-5、スリーエムジャパン株式会社製:ダイニオンTF9205、TF9207などが挙げられる。また、パーフルオロアルキルエーテル基、フルオルアルキル基、またはその他のフルオロアルキルを有する側鎖基で変性されたPTFE樹脂であってもよい。上記の中でγ線または電子線などを照射したPTFE樹脂としては、株式会社喜多村製:KTL-610、KTL-450、KTL-350、KTL-8N、AGC株式会社製:フルオンL169J、L170J、L172J、L173Jなどが挙げられる。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、グラファイト、二硫化モリブデンなどのPTFE樹脂以外の固体潤滑剤を配合してもよい。グラファイトは、固体潤滑剤であり、熱可塑性エラストマー組成物の成形体の動摩擦係数を低減できる。グラファイトとしては、天然黒鉛、人造黒鉛のどちらを用いてもよい。天然黒鉛としては、日本黒鉛工業株式会社製:ACP、人造黒鉛としてはイメリス・ジーシー・ジャパン株式会社製:KS-6、KS-25、KS-44などが挙げられる。
なお、本発明の効果を阻害しない程度に、熱可塑性エラストマー組成物に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカなどの球状充てん剤、マイカなどの鱗状補強材、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を用いても良い。カーボンブラック、酸化鉄などの着色剤も配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。
炭素繊維を配合する場合、熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対して、5体積%~20体積%配合されることが好ましい。配合する炭素繊維は、原材料から分類されるピッチ系またはPAN系のいずれのものであってもよい。焼成温度は限定されるものではなく、2000℃またはそれ以上の高温で焼成されて黒鉛化品、1000~1500℃程度で焼成された炭化品のどちらであってもよい。また、ミルドファイバーまたはチョップドファイバーのいずれのものであってもよいが、熱可塑性エラストマー組成物の弾性率を向上させにくいミルドファイバーがより好ましい。
本発明に使用できる市販品のミルドファイバーとしては、ピッチ系炭素繊維として、クレハ社製:クレカ M-101S、M-101F、M-107T、M-201Sなどが挙げられる。また、PAN系炭素繊維として、帝人株式会社:HT M800 160MU、HT M100 40MU、東レ株式会社:トレカ MLD-30、MLD-300などが挙げられる。
本発明の軸シールは、ASTM D790に準拠して測定される曲げ弾性率が200MPa~2400MPaであることを特徴としている。曲げ弾性率が200MPa未満であると摩耗しやすくなりシール性が低下する傾向がある。また、曲げ弾性率が2400MPaを超えると、軸シールの回転軸に対する緊迫力が高くなり、高トルクとなる傾向がある。軸シールの曲げ弾性率は、好ましくは200MPa~1800MPaであり、より好ましくは400MPa~1800MPaである。
以上を考慮して、本発明の軸シールの特に好ましい形態は、ポリエステル系エラストマーにPTFE樹脂が配合された熱可塑性エラストマー組成物の成形体であって、上記ポリエステル系エラストマーが、ポリブチレンナフタレート単位を含むハードセグメントと脂肪族ポリエーテル単位を含むソフトセグメントとの共重合体であり、上記熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対して上記PTFE樹脂が1体積%~10体積%含まれ、軸シールのASTM D790による曲げ弾性率が200MPa~1800MPaである。
本発明の軸シールは、車載エアコンのスクロール式圧縮機に用いることができる。スクロール式圧縮機は、エンジン動力を利用したベルト駆動、エンジン動力を利用しないモータ駆動のどちらであってもよい。また、本発明の軸シールは、圧縮機に限らず用いることができる。
本発明の軸シールは一般的な熱可塑性樹脂用の射出成形機を用い、射出成形によって成形される。上記熱可塑性エラストマー組成物を構成する各材料を、必要に応じて、ヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダーなどにて混合した後、二軸混練押出し機などの溶融押出し機にて溶融混練し、成形用ペレットを得ることができる。なお、充填材の投入は、二軸押出し機などで溶融混練する際にサイドフィードを採用してもよい。この成形用ペレットを用いて射出成形により軸シールを成形する。
実施例1~5、比較例1~3
実施例および比較例に用いた熱可塑性エラストマー組成物の原材料を一括して以下に示す。TPE-1~TPE-4はいずれも上記式(1)に示す化学構造である。
(1)ポリエステル系エラストマー〔TPE-1〕
東洋紡株式会社:EN-1000(曲げ弾性率120MPa)
(2)ポリエステル系エラストマー〔TPE-2〕
東洋紡株式会社:EN-3000(曲げ弾性率270MPa)
(3)ポリエステル系エラストマー〔TPE-3〕
東洋紡株式会社:EN-5000(曲げ弾性率480MPa)
(4)ポリエステル系エラストマー〔TPE-4〕
東洋紡株式会社:EN-16000(曲げ弾性率1630MPa)
(5)PTFE樹脂(50%粒子径:20μm)
(6)炭素繊維
株式会社クレハ:M-107T(繊維径18μm、平均繊維長0.4mm)
原材料(1)~(6)を用いて、表1の実施例1~5、比較例1~3に示す熱可塑性エラストマー組成物を二軸混練押出し機で作製し、ペレット化した。得られたペレットを用いて射出成形により、図1に示す断面形状の軸シール(内径寸法20mm、外径寸法40mm、締め代0.3mm)と、曲げ試験用の成形体を得た。
(1)曲げ試験
ASTM D790に準拠して曲げ試験を実施し、曲げ弾性率を測定した。
(2)回転トルク試験
図4に示す回転トルク試験機を用いて、下記の条件で回転トルク試験を実施して、回転トルクおよびオイルリーク量を測定した。
<試験条件>
回転軸 :材質S45C、外径φ20mm
回転数 :7500min-1
油圧 :0.3MPa
油温 :40℃
冷凍機油:ポリアルキレングリコール油
試験時間:60分
図4に示すように、試験機11のハウジングは、外周側ハウジング14と内周側ハウジング15とを組み付けて構成される。これらハウジングの合わせ面において、内側ハウジング15の外周溝にはOリング16が配置されており、合わせ面から冷凍機油が漏れることを防止している。軸シール12は回転軸13に密着しており、回転軸13の回転によって回転軸13の外周面と摺接する。冷凍機油を圧送して、ハウジング内空間に供給した。冷凍機油は、図4に示すように、流入路14bから流入し、ハウジング内空間を経て、流出路14cから流出する。オイルリーク量は、回転軸13と挿通孔14aとの間から漏れ出た冷凍機油の量に基づいており、試験開始後50~60分間の平均値を示している。また、回転トルクは、試験開始後50~60分間の平均値を示している。結果を表1に示す。
Figure 0007390177000002
表1に示すように、実施例1~5の軸シールは、曲げ弾性率が200MPa~2400MPaの範囲に属しており、低トルクかつ低オイルリーク性を示した。比較例1の軸シールは、曲げ弾性率が比較的低く(曲げ弾性率111MPa)、オイルリーク量が10ml/minであり、実施例1~5に比べて劣る結果であった。比較例2の軸シールは、PTFE樹脂の配合割合が45体積%と高いため、破断伸びが小さく、回転軸への組み込み時に破損が生じた。比較例3の軸シールは、曲げ弾性率が比較的高く(曲げ弾性率3937MPa)、回転トルクが0.19N・mと高トルクを示した。
本発明の軸シールは、回転トルクを低減できるとともに、シール性に優れるので、回転軸の外周面に摺接しながら密封流体を封止する軸シールとして広く使用できる。特に、車載エアコンのスクロール式冷媒圧縮機の圧縮機構部を回転させる回転軸の軸シールに適している。
1、1’ 軸シール
2 シールリップ部
3 外リップ部
4 回転軸
5 ハウジング
6 圧縮機構部
7 圧縮室
8 固定ロータ
9 可動ロータ
10 吐出口
11 試験機11
12 軸シール
13 回転軸
14 外周側ハウジング
15 内周側ハウジング
16 Oリング

Claims (5)

  1. 回転軸の外周面に密着して油を含有する圧縮流体からなる密封流体を高圧側から低圧側へ漏れ出すことを封止する環状の軸シールであって、
    前記軸シールは、軸方向の断面視が略U字状であり、軸方向一方側に延伸して前記回転軸と摺動するシールリップ部と、該シールリップ部よりも外径側に設けられた外リップ部とを備え、
    前記軸シールは、ポリエステル系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物の成形体であり、ASTM D790による曲げ弾性率が200MPa~2400MPaであることを特徴とする軸シール。
  2. 前記ポリエステル系エラストマーが、芳香族ポリエステル単位を含むハードセグメントと、ポリエステル単位またはポリエーテル単位を含むソフトセグメントとの共重合体であることを特徴とする請求項1記載の軸シール。
  3. 前記芳香族ポリエステル単位中にナフタレン環を含むことを特徴とする請求項2記載の軸シール。
  4. 前記熱可塑性エラストマー組成物が、該熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対してポリテトラフルオロエチレン樹脂を1体積%~40体積%含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の軸シール。
  5. 前記軸シールが、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせた圧縮機構を備えるスクロール式圧縮機に用いられ、前記回転軸が、前記圧縮機構を駆動する回転軸であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の軸シール。
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