JP2023147120A - 軸シール - Google Patents

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健 安田
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【課題】シール性に優れ、低トルク特性を有する軸シールを提供する。【解決手段】軸シール1は、回転軸Sの外周面に密着して密封流体を封止する環状の軸シールであって、回転軸Sと軸シール1を装着するハウジング11との隙間が、軸シール1によって高圧側と低圧側に区画され、軸シール1は、高圧側に延伸して回転軸Sと摺動するシールリップ部2を備え、シールリップ部2は、回転軸Sと摺動する内周面2aの接触部に、全周にわたって形成された凸部5を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、回転軸の軸シールに関し、特に、車載エアコン用スクロール式圧縮機の回転軸の軸シールに関する。
圧縮機には冷媒や冷凍機油の漏れを防止するシール部材が用いられている。例えば、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせた圧縮機構部を備えるスクロール式圧縮機では、圧縮機構部を駆動する回転軸に軸シールが装着されている。
上記スクロール式圧縮機は、例えば車両に搭載され、車載エアコン用電動コンプレッサとして用いられ、小型化、高効率化が求められている。このような軸シールには、シール性に加えて、低トルク化が求められている。
例えば、特許文献1の軸シールを図5に示す。図5に示すように、軸シール31は、回転軸Sの外周面に密着して油を含有する密封流体を封止する環状の軸シールである。この軸シール31は、軸方向の断面視が略U字状であり、軸方向一方側に延伸して回転軸Sと摺動するシールリップ部32と、シールリップ部32よりも外径側に設けられた外リップ部33とを備えている。特許文献1では、軸シールとして、ポリエステル系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物の成形体を使用し、その曲げ弾性率を所定の範囲とすることで、シール性に優れるとともに、回転トルクを低減できるとしている。
特開2021-092279号公報
近年、省エネルギー化の進展に伴い、シール性に優れ、さらに回転トルクが低減できる軸シールが要求されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シール性に優れ、低トルク特性を有する軸シールを提供することを目的とする。
本発明の軸シールは、回転軸の外周面に密着する環状の軸シールであって、上記軸シールは、上記回転軸と摺動するシールリップ部を備え、上記シールリップ部は、上記回転軸と摺動する内周面の接触部に、全周にわたって形成された凸部を有することを特徴とする。なお、接触部とは、内周面の回転軸と接触する領域である。
上記凸部は、上記シールリップ部の全長を100%としたとき、上記シールリップ部の先端から他端側に向けて30%までの範囲の間に形成されていることを特徴とする。
上記凸部の最大高さは、上記シールリップ部の厚みの5%~20%であることを特徴とする。
上記軸シールは、軸方向の断面視が略U字状であり、上記シールリップ部よりも外径側に設けられた外リップ部を有することを特徴とする。
上記凸部の軸方向断面における形状は、略矩形状、円弧状、略台形状、または略三角形状であることを特徴とする。
上記軸シールは、上記回転軸の外周面に密着して密封流体を封止する軸シールであって、上記回転軸と上記軸シールを装着するハウジングとの隙間が、上記軸シールによって高圧側と低圧側に区画され、上記シールリップ部は、上記高圧側に延伸して上記回転軸と摺動することを特徴とする。
上記軸シールは、車載エアコン用スクロール式圧縮機の回転軸に用いられる軸シールであることを特徴とする。
本発明の軸シールは、回転軸と摺動するシールリップ部を備え、シールリップ部は、回転軸と摺動する内周面の接触部に、全周にわたって形成された凸部を有するので、回転軸に対するシールリップ部の先端の密着性を維持しながら、シールリップ部の接触面積を減少でき、従来(図5参照)のように凸部が形成されていない軸シールよりも低トルク化を図ることができる。これにより、シール性に優れ、低トルク特性を有する軸シールになる。
凸部は、シールリップ部の全長を100%としたとき、シールリップ部の先端から他端側に向けて30%までの範囲の間に形成されているので、シールリップ部の接触面積をより減少でき、低トルク特性により優れる。
凸部の最大高さは、シールリップ部の厚みの5%~20%であるので、凸部が変形しにくくシール性により優れる。
本発明の軸シールの一例を回転軸に装着した状態の図である。 凸部の断面形状の例を示す図である。 スクロール式圧縮機の圧縮機構部を示す模式断面図である。 回転トルクの測定試験の概略図である。 従来の軸シールの構成を示す図である。
本発明の軸シールについて、図1に基づいて説明する。図1は、軸シールを圧縮機に適用した例を示し、軸シールを回転軸に装着した状態の軸方向断面図を示している。なお、本発明において、軸シールの中心軸Oに平行な方向を「軸方向」、中心軸Oに直交する方向を「径方向」、中心軸Oを中心とする軸周りの方向を「周方向」という。
図1に示すように、軸シール1は、軸方向の断面視が略U字状の環状部材であり、軸方向一方側に延伸したシール内径側のシールリップ部2と、シールリップ部2よりもシール外径側に設けられた外リップ部3とを有する。シールリップ部2と外リップ部3はそれぞれ基端部4から延伸しており、シールリップ部2と外リップ部3は相互に先端が離れる方向へ傾斜して形成されている。
ハウジング11には、回転軸Sが挿通される挿入孔11aが設けられており、挿入孔11aの周囲に環状溝12が設けられている。軸シール1は、この環状溝12に装着され、回転軸Sが回転することで、シールリップ部2が回転軸Sに摺動する。
軸シール1は、シールリップ部2と外リップ部3とがそれぞれ高圧側Hに延伸するように環状溝12に装着されている。この場合、各リップ部が延伸する側を高圧側Hに向け、基端部4の背面側を低圧側Lに向け装着する。装着した状態では、軸シール1の外リップ部3が環状溝12の側壁12aに回転不能に接触し、シールリップ部2が回転軸Sの外周面に回転不能に接触する。また、基端部4の背面が環状溝12の底壁12bに密着する。一方、外リップ部3と側壁12aとの間、およびシールリップ部2と回転軸Sとの間にはそれぞれ空間が形成されており、基端部4は回転軸Sに接触していない。シールリップ部2の内周面2aは、回転軸Sの外周面との摺動面となる。
軸シール1において、シールリップ部2は、内周面2aの接触部に所定の高さの凸部5を有している。凸部5は、内周面2aの接触部において、径方向内側に向けて突出しており、全周にわたって形成されている。ここで、接触部とは、シールリップ部2の内周面2aが回転軸Sと接触する領域である。なお、凸部5は、接触部の一部または全部に形成されていればよい。図1において、凸部5の軸方向の断面形状は、略矩形状となっている。
凸部5は、シールリップ部2の全長Ltを100%としたとき、シールリップ部2の内周面2aにおいて、シールリップ部2の先端2bから他端側に向けて30%までの範囲の間に形成されることが好ましい。ここで、先端から他端側に向けて30%までの範囲の間に形成されるとは、先端(0%)から30%までの範囲の全部に形成されるという意味ではなく、先端(0%)から30%までの範囲の一部または全部に形成されるという意味である。また、先端(0%)から30%までの範囲の間に形成されていれば、30%を超える範囲に形成されていてもよく、例えば10%から35%の全部に形成されているような場合も含まれる。シールリップ部2の内周面2aにおいて、凸部5は、先端2bを含んで形成される、つまり先端2bを起点として形成されることが好ましく、更に、その先端を起点として20%までの範囲の間に形成されることがより好ましい。
なお、シールリップ部2の全長Ltは、軸シール1の底面4aの隅部(シールリップ部2側)からシールリップ部2の先端2bの外径側の頂点までの直線の長さをいう。シールリップ部2の全長Ltは、例えば、1.0mm~8.0mmであることが好ましく、1.0mm~6.5mmであることがより好ましく、2.0mm~6.5mmであることがさらに好ましい。
軸シール1は、シールリップ部2が回転軸Sの外周面に密着することで、高圧側Hの流体が低圧側Lへ漏れ出すことを防いでいる。流体は、冷媒、油、冷媒と油の混合物などが挙げられる。
凸部の形状について、図2(a)~図2(f)を用いて更に説明する。図2の各軸シールは、回転軸に装着する前の状態を示しており、軸シールの軸方向に沿って切断した切断面を表している。図2の各軸シールのいずれも、凸部5が、シールリップ部2の内周面2aから内周方向に突出され、先端から他端側に向けて30%の範囲の間に形成されている。
図2(a)は、図1に示した軸シールの紙面下側における切断面を示す図である。また、図2(b)は、図2(a)における凸部周辺の拡大図である。図2(a)および図2(b)に示すように、凸部5は、内周面2aのうち最も内周側に位置し、平面状の接触面5aと、その接触面5aから垂下した凸部側面5b、5bで形成されている。この場合、接触面5aは軸方向と平行な面で形成され、凸部側面5b、5bは、径方向と平行な面で形成される。図2(a)、(b)に示すような略矩形状にすることで、凸部5の強度が維持されやすいため、凸部5は変形しにくい。その結果、回転軸に対する凸部5の接触面積は一定に維持されやすくシール性に優れる。
凸部5の最大高さ(径方向の長さ)hは、シールリップ部2の厚みTの5%~20%であることが好ましく、10%~20%であることがより好ましい。これにより、凸部5の強度を維持できるため凸部5が変形しにくい。その結果、流体の漏れが起こりにくく、シール性に優れる。凸部5の最大高さhは、接触面5aの最高部から内周面2aまたは凸部が形成されていないと仮定した場合の内周面2aの仮想面F(図2(b)における凸部5の下部の点線)に降ろした垂線の長さである。なお、シールリップ部2の厚みTは、例えば、0.3mm~1.5mmである。
凸部5の幅Wは、シールリップ部2の全長Ltの5%~30%であることが好ましく、5%~25%であることがより好ましく、10%~20%であることがさらに好ましい。これにより、凸部5の強度を維持できるため凸部5が変形しにくく、また、シールリップ部2の接触面積をより減少できる。その結果、シール性および低トルク特性により優れる。なお、凸部5の幅Wは、凸部側面5b、5bと、仮想面Fとの2点の交点間の最大距離である。
凸部の断面形状としては、上述した略矩形状に限られず、例えば、円弧状、略台形状、略三角形状などができる。凸部は、断面形状がその中央線に対して対称形状であってもよく、非対称形状であってもよい。例えば、図2(b)において、凸部側面5b、5bの一方を径方向に対して傾斜した傾斜面としてもよい。
凸部の軸方向の断面形状が円弧状の場合について、図2(c)を用いて説明する。図2(c)は、その凸部周辺の拡大図である。図2(c)に示すように、凸部6は、内周面2aのうち最も内周側に位置し、曲面状の接触面6aと、その接触面6aから垂下した凸部側面6b、6bで形成されている。例えば、接触面を曲面状とすることで、軸方向断面形状が略矩形状の場合に比べ、回転軸に対するシールリップ部2の接触面積を減少でき、より低トルク化に寄与する。また、凸部6の内周側先端部が変形する場合、変形量の増大につれて回転軸に対する凸部6の接触面積が徐々に増え、シール性が向上する。
凸部の軸方向の断面形状が略台形状の場合について、図2(d)を用いて説明する。図2(d)は、その凸部周辺の拡大図である。図2(d)に示すように、凸部7は、内周面2aのうち最も内周側に位置し、平面状の接触面7aと、凸部7の幅が広がるように接触面7aに対して傾斜した傾斜面7b、7bと、傾斜面7b、7bのそれぞれから垂下した凸部側面7c、7cで形成されている。これにより、軸方向の断面形状が略矩形状の場合に比べ、回転軸に対するシールリップ部2の接触面積を減少でき、より低トルク化に寄与する。また、凸部7の内周側先端部が変形する場合、軸方向の断面形状が円弧状の場合に比べ、凸部7における変形前後での回転軸に対する凸部7の接触面積の変化量が小さく、変形初期でもシール性に優れる。
凸部の軸方向の断面形状が略三角形状の場合について、図2(e)を用いて説明する。図2(e)は、その凸部周辺の拡大図である。図2(e)に示すように、凸部8は、一対の傾斜面8a、8aで形成されている。これにより、軸方向の断面形状が略矩形状の場合に比べ、回転軸に対するシールリップ部2の接触面積を特に減少でき、一層低トルク化に寄与する。
また、凸部は、軸方向に離間して複数設けられてもよい。例えば、2本の略矩形状の凸部を軸方向に離間して設けることもできる。2本の略矩形状の凸部が軸方向に離間して設けられた場合について、図2(f)を用いて説明する。図2(f)は、2本の隣接する凸部を有する軸シールにおける凸部周辺の拡大図である。図2(f)に示すように、2本の凸部5’、5’が軸方向に離間して設けられる場合、凸部5’、5’の間には凹溝Gが形成される。この場合、凹溝Gにオイルなどの潤滑剤が保持されるため、当該凹溝は潤滑溝としても機能し、低トルク化に寄与する。
凹溝Gの最大深さdは、例えば、凸部5’の最大高さの20%~100%にすることができる。凹溝Gの最大深さdは、凸部5’の最大高さの30%~80%であることが好ましく、40%~60%であることがより好ましい。これにより、凸部5’の強度を維持しつつ、凸部5’の変形を防止できる。凹溝Gの最大深さdは、底面Gaの最深部から凸部5’の接触面5’aの最高部までの距離(面間距離)である。
図2において、各凸部の幅や最大高さ、凹溝の最大深さには、上述した数値範囲を適宜採用できる。また、凸部の形状は図2に示す形状に限らない。例えば、図2に示す各凸部の一部を適宜組み合わせてもよく、平面や曲面も適宜組み合わせることができる。
図1および図2には、軸方向の断面視が略U字状の軸シールを示したが、本発明の軸シールはこれに限らない。例えば、シールリップ部2と、外リップ部3の無い固定部とからなる形状としてもよい。
図1の圧縮機において、ハウジング11の高圧側Hには圧縮機構部が設けられる。圧縮機構部の形態は、回転軸の回転によって流体の圧縮が行われる機構であればよく、スクロール式や斜板式などを採用できる。例えば、スクロール式の場合、圧縮機構部は、固定スクロールと、該固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールとを組み合わせて構成される。
図3には、スクロール式の圧縮機構部の一部断面図を示す。図3に示すように、圧縮機構部13は、基板15aとその表面に直立する固定側スクロール翼15bを有する固定ロータ15と、基板16aとその表面に直立する可動側スクロール翼16bを有する可動ロータ16とを備えている。固定ロータ15と可動ロータ16が相互に偏心状態にかみ合わされて、それらの間に圧縮室14が形成されている。可動ロータ16は、上述の回転軸に直接的または間接的に接続されており、可動ロータ16が固定ロータ15の軸線の周りで公転することにより、圧縮室14が渦巻形状の中心側に移動して流体の圧縮が行なわれる。圧縮された圧縮流体は、可動ロータ16の中心部の吐出口17を通って吐出管から吐出され、冷凍サイクルに流出する。そして、冷凍サイクルの流体(冷媒ガスなど)が吸入口(図示省略)を介して圧縮室14へ導入される。
本発明の軸シールは、樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物からなる。樹脂組成物において、主成分となる樹脂(ベース樹脂)は限定されるものではなく、ポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。
また、熱可塑性エラストマー組成物において、主成分となるエラストマーは限定されるものではなく、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどを用いることができる。耐熱性、耐薬品性の点から、ポリエステル系エラストマーが特に好ましい。ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを含み、ハードセグメントにポリエステル単位、ソフトセグメントにポリエーテル単位またはポリエステル単位が用いられる。ポリエステル系エラストマーは、ポリエステル-ポリエーテル型またはポリエステル-ポリエステル型のマルチブロック共重合体である。
上記の樹脂組成物および熱可塑性エラストマー組成物には、摩擦摩耗特性を向上させる目的で、PTFE樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を配合することができる。
固体潤滑剤の配合量は、樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物100体積%に対して、1体積%~40体積%が好ましく、1体積%~20体積%がより好ましい。40体積%を超えると、樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物の伸び特性が低下するおそれがあり、軸シールを回転軸に組み込む際に割れが発生するおそれがある。
なお、本発明の効果を阻害しない程度に、樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカなどの球状充填材、マイカなどの鱗状補強材、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を用いてもよい。カーボンブラック、酸化鉄などの着色剤も配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。
本発明の軸シールは、車載エアコン用スクロール式圧縮機に用いることができる。スクロール式圧縮機は、エンジン動力を利用したベルト駆動、エンジン動力を利用しないモータ駆動のどちらであってもよい。また、本発明の軸シールは、圧縮機に限らず用いることができる。
本発明の軸シールは、例えば、一般的な熱可塑性樹脂用の射出成形機を用い、射出成形によって成形される。上記樹脂組成物または上記熱可塑性エラストマー組成物を構成する各材料を、必要に応じて、ヘンシェルミキサー、アキシャルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダーなどにて混合した後、二軸混練押出し機などの溶融押出し機にて溶融混練し、成形用ペレットを得ることができる。なお、充填材の投入は、二軸押出し機などで溶融混練する際にサイドフィードを採用してもよい。この成形用ペレットを用いて射出成形により軸シールを成形する。
実施例1、比較例1
熱可塑性エラストマー組成物を二軸混練押出し機にてペレット化した。得られたペレットを用いて射出成形により、実施例1として、図1に示す形状の軸シール(内径寸法20mm、シールリップ部の全長4mm、シールリップ部の厚み0.5mm)を得た。具体的には、軸シールの内周面における後述する回転軸との接触部に、全周にわたり、凸部を1本形成した。凸部の各寸法を表1に示す。なお、凸部幅は、2つの凸部側面と仮想面Fとによって形成される2本の接線の間の最大距離であるとして計測した。また、比較例1として、図5に示す形状(凸部なし)の軸シール(内径寸法20mm、シールリップ部の全長4mm、シールリップ部の厚み0.5mm)を得た。
<回転トルク試験>
図4に示す回転トルク試験機を用いて、下記の条件でオイル中で回転トルク試験を実施して、回転トルクおよびオイルリーク量を測定した。
<試験条件>
回転軸 :材質S45C
回転数 :8000min-1
油圧 :0.8MPa
油温 :40℃
冷凍機油:ポリアルキレングリコール油
試験時間:60分
図4に示すように、試験機18のハウジングは、外周側ハウジング21と内周側ハウジング22とを組み付けて構成される。これらハウジングの合わせ面において、内周側ハウジング22の外周溝にはOリング23が配置されており、合わせ面から冷凍機油が漏れることを防止している。軸シール19は回転軸20に密着しており、回転軸20の回転によって回転軸20の外周面と摺接する。冷凍機油を圧送して、ハウジング内空間に供給した。冷凍機油は、図4に示すように、流入路21bから流入し、ハウジング内空間を経て、流出路21cから流出する。オイルリーク量は、回転軸20と挿通孔21aとの間から漏れ出た冷凍機油の量に基づいており、試験開始後60分間の平均値(n=2)を示している。また、回転トルクは、試験開始後60分間の平均値(n=2)を示している。結果を表1に示す。
Figure 2023147120000002
表1に示すように、実施例1は、比較例1(従来品)と比較して、オイルリーク性を保持しつつも、回転トルクの低減が認められた。具体的には、実施例1は、比較例1に比べて、回転トルクが約6%小さくなった。
本発明の軸シールは、シール性に優れるとともに、回転トルクを一層低減できるので、回転軸の外周面に摺接しながら密封流体を封止する軸シールとして広く使用できる。特に、車載エアコン用スクロール式圧縮機の圧縮機構部を回転させる回転軸の軸シールに適している。
1 軸シール
2 シールリップ部
3 外リップ部
4 基端部
5、5’ 凸部
6 凸部
7 凸部
8 凸部
11 ハウジング
12 環状溝
13 圧縮機構部
14 圧縮室
15 固定ロータ
16 可動ロータ
17 吐出口
18 試験機
19 軸シール
20 回転軸
21 外周側ハウジング
22 内周側ハウジング
23 Oリング
O 中心軸
S 回転軸

Claims (7)

  1. 回転軸の外周面に密着する環状の軸シールであって、
    前記軸シールは、前記回転軸と摺動するシールリップ部を備え、
    前記シールリップ部は、前記回転軸と摺動する内周面の接触部に、全周にわたって形成された凸部を有することを特徴とする軸シール。
  2. 前記凸部は、前記シールリップ部の全長を100%としたとき、前記シールリップ部の先端から他端側に向けて30%までの範囲の間に形成されていることを特徴とする請求項1記載の軸シール。
  3. 前記凸部の最大高さは、前記シールリップ部の厚みの5%~20%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸シール。
  4. 前記軸シールは、軸方向の断面視が略U字状であり、前記シールリップ部よりも外径側に設けられた外リップ部を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の軸シール。
  5. 前記凸部の軸方向断面における形状は、略矩形状、円弧状、略台形状、または略三角形状であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の軸シール。
  6. 前記軸シールは、前記回転軸の外周面に密着して密封流体を封止する軸シールであって、
    前記回転軸と前記軸シールを装着するハウジングとの隙間が、前記軸シールによって高圧側と低圧側に区画され、前記シールリップ部は、前記高圧側に延伸して前記回転軸と摺動することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の軸シール。
  7. 前記軸シールは、車載エアコン用スクロール式圧縮機の回転軸に用いられる軸シールであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の軸シール。
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