JP2023012367A - スクロールコンプレッサの環状シール部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性やシール機能の低下を損なうことなく、安定した低トルク性を発揮できるコンプレッサの環状シール部材を提供する。【解決手段】環状シール部材16は、固定スクロール体3と、可動スクロール体4と、シャフト7と、シャフト7を回転可能に支持する主軸受9と、主軸受9を固定する主軸受部材12とを備え、シャフト7の回転により、可動スクロール体4を固定スクロール体3の軸線の周りで公転させて流体を圧縮室5にて圧縮するとともに、流体が可動スクロール体4の背面側の背圧室15aに供給されるスクロールコンプレッサにおいて、可動スクロール体4の底板部4aの背面に形成された少なくとも1個の環状溝4dに装着され、背圧室15aをシールするシール部材であり、リング側面において少なくとも公転摺動する摺動面に動圧溝が設けられている。【選択図】図1

Description

本発明は、スクロールコンプレッサを構成する可動スクロール体の底板部などに装着される環状シール部材に関する。
スクロールコンプレッサは、固定スクロール体と、該固定スクロール体に対し旋回運動される可動スクロール体とからなるスクロール型の圧縮機構部を備える。固定スクロール体と可動スクロール体はそれぞれ、底板部と該底板部の表面に立設する渦巻壁とを有しており、それぞれ渦巻壁において互いに噛み合わされて、それらの間に圧縮室が形成されている。この圧縮室が固定スクロール体の軸線の周りを公転する可動スクロール体の作用により渦巻中心側に移動して冷媒などの圧縮が行なわれる。
可動スクロール体の底板部の背面側には環状シール部材が設けられている。このようなスクロールコンプレッサにおいて、冷媒などが圧縮されると、その圧縮反力によって可動スクロール体にスラスト荷重が発生する。このスラスト荷重に起因して、可動スクロール体の背面側に設けられた環状シール部材とそれと摺動する主軸受部材との間で摩擦力が大きくなり、環状シール部材の摩耗などが発生するおそれがある。
このような環状シール部材の摩擦摩耗の対策として、オイルなどの潤滑剤を使用して摩擦摩耗の低減を図る方法が知られている(特許文献1参照)。
また、別の方法として、可動スクロール体から主軸受部材へ一方的にかかるスラスト荷重を低減させる目的として、吐出圧領域と背圧室とを圧力導入孔を介して接続する方法が知られている。さらにこの方法において、環状シール部材の側面に、径方向に連通した溝を設けることで、背圧室と吸入圧領域を連通させることも知られている(特許文献2参照)。しかし、この特許文献2は、背圧室および吸入圧領域の雰囲気が一様ではない場合において、背圧室で意図する背圧を設定しやすくするという技術である。
さらに、別の方法として、上記の環状シール部材とは別の部材として、可動スクロール体の底板部側から主軸受部材側へのスラスト力を受けるスラスト受け部材を介装することで、荷重を低減する手段も知られている(特許文献3参照)。
特開平8-121366号公報 特開2007-211702号公報 特開2012-17656号公報
環状シール部材の摩擦摩耗の対策として、例えば潤滑剤などを使用することで、摩擦摩耗の低減が図れるものの、この方法では摺動面を常に良い潤滑状態とする必要がある。そのため、局所的に潤滑剤切れが発生した場合などはトルクが安定しないことから、コンプレッサ自体の安定した性能を維持させることに懸念がある。一方、環状シール部材とは別の部材として、スラスト受け部材を介装する場合は、その分、部品点数が多くなり、ユニット全体のコストアップに繋がるおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、耐久性やシール機能の低下を損なうことなく、安定した低トルク性を発揮できるコンプレッサの環状シール部材を提供することを目的とする。
本発明の環状シール部材は、底板部とその表面に立設する渦巻壁を有する固定スクロール体と、底板部とその表面に立設する渦巻壁を有する可動スクロール体と、シャフトと、該シャフトを回転可能に支持する主軸受と、該主軸受を固定する主軸受部材とを備え、上記シャフトの回転により、上記可動スクロール体を上記固定スクロール体の軸線の周りで公転させて流体を圧縮室にて圧縮するとともに、上記流体が上記可動スクロール体の背面側の背圧室に供給されるスクロールコンプレッサにおいて、上記可動スクロール体の上記底板部の背面と、上記主軸受部材の上記可動スクロール体に向く端面のいずれか一方の面に形成された少なくとも1個の環状溝に装着され、上記背圧室をシールする環状シール部材であって、上記環状シール部材は、リング側面において少なくとも公転摺動する摺動面に動圧溝が設けられていることを特徴とする。
本発明において、動圧溝は、可動スクロール体の旋回運動によって生じる流体の流れにより該流体を導入して動圧を発生させる溝であり、流体が絞り込まれるように溝の断面積が流体の流動方向に向かって減少する溝である。減少する方向は、溝の深さ方向(図3)であっても溝の幅方向(図7)であっても、あるいはその両方であってもよい。
上記動圧溝の面積は上記リング側面の全体の面積に対して5%~75%であることを特徴とする。
上記動圧溝の形状は、リング周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだ略V字状であり、上記動圧溝の上記摺動面からの深さは、最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなり、リング径方向には一定であることを特徴とする。
上記動圧溝は、上記摺動面から上記最深部に至るまで同一平面ではなく、上記摺動面に接続される第1の傾斜面と、上記最深部に接続され、上記摺動面に対して、上記第1の傾斜面よりも小さな傾斜角度をなす第2の傾斜面とを有することを特徴とする。
上記摺動面に対する上記第1の傾斜面の傾斜角度が50°~80°であり、上記摺動面に対する上記第2の傾斜面の傾斜角度が0.1°~15°であることを特徴とする。
上記動圧溝において、上記第1の傾斜面と上記第2の傾斜面の境界部が曲面で接続されていることを特徴とする。
上記動圧溝がリング周方向で離間して複数個設けられ、隣り合う動圧溝同士の間のリング側面が上記摺動面の一部を構成することを特徴とする。
上記環状シール部材は合成樹脂製であり、該合成樹脂がポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと記す)樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと記す)樹脂であることを特徴とする。
本発明の環状シール部材は、スクロールコンプレッサにおいて可動スクロール体の底板部の背面と、主軸受部材の可動スクロール体に向く端面のいずれか一方の面に形成された環状溝に装着され、背圧室をシールするシール部材であり、リング側面において少なくとも公転摺動する摺動面に動圧溝が設けられているので、摺動面積を小さくすることができ、摺動面積が小さくなることで、摩擦係数の面圧依存性により、摺動トルクが低下する。さらに、動圧溝とすることで、その動圧溝に流体が流入し、くさび作用が発生しやすくなり、一層の低トルク化に繋がる。これにより、摩擦摩耗特性が向上し、スラスト受け部材を用いなくても、耐久性やシール機能の低下を損なうことなく、安定した低トルク性を発揮できる。
動圧溝の面積はリング側面の全体の面積に対して5%~75%であるので、トルク低減効果を確保しつつ、摩耗の促進を抑えられる。
動圧溝の形状は、リング周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだ略V字状であり、動圧溝の摺動面からの深さは、最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなり、リング径方向には一定であるので、動圧溝に流体を導入しやすくなり、くさび作用を発生させやすくなる。
動圧溝は、摺動面から最深部に至るまで同一平面ではなく、摺動面に接続される第1の傾斜面と、最深部に接続され、摺動面に対して、第1の傾斜面よりも小さな傾斜角度をなす第2の傾斜面とを有し、第1の傾斜面は、第2の傾斜面よりも摺動面に対して急勾配に形成されているので、摺動面が摩耗した場合でも動圧溝の開口面積の減少が小さく(つまり、摺動面積の増加が小さく)、トルクの変化を生じにくくできる。特に、摺動面に対する第1の傾斜面の傾斜角度が50°~80°であるので、くさび作用を効果的に発生させつつ、摺動面積の増加を抑えることができる。また、摺動面に対する第2の傾斜面の傾斜角度が0.1°~15°であるので、流入した流体によるくさび作用を効果的に発生させることができる。
動圧溝において、第1の傾斜面と第2の傾斜面の境界部が曲面で接続されており、R状に形成されているので、例えば、隣り合う動圧溝同士の間の摺動面に流体を流出させやすくなり、更なる低トルク化が図れる。
本発明の環状シール部材を備えるスクロール型コンプレッサの一例を示す一部断面図である。 本発明の環状シール部材の一例を示す斜視図である。 図2におけるA部の拡大図である。 環状シール部材の動圧溝をリング内径側から見た図である。 環状シール部材の略V字状の動圧溝の他の例を示す図である。 図2の環状シール部材を環状溝に組み込んだ状態を示す断面図である。 環状シール部材の動圧溝の他の例を示す図である。 環状シール部材の動圧溝の他の例を示す図である。 スラスト試験の概略図である。 スラスト試験の試験結果を示す図である。
本発明の環状シール部材を備えるスクロール型コンプレッサの一例を図1に基づいて説明する。図1はスクロール型コンプレッサの一部断面図である。このスクロール型コンプレッサは、炭酸ガスなどの冷媒、ポリアルキレングリコール油(PAG油)などの冷凍機油、またはこれらの混合物など(以下、まとめて冷媒等と称す)の流体を圧縮する圧縮機である。
図1において、コンプレッサ1は、ハウジング2の内部に圧縮機構部とモータ機構部とを有し、吸入口(図示省略)および吐出口(図示省略)によって外部と接続されている。圧縮機構部は、吸入口より吸入した冷媒等を圧縮して吐出口より吐出する部分であり、固定スクロール体3と可動スクロール体4とから構成されている。固定スクロール体3は、底板部3aと、この底板部3aから垂直に立設した渦巻壁3bとを備え、中心に開口部3cが設けられている。また、可動スクロール体4は、底板部4aと、この底板部4aから垂直に立設した渦巻壁4bとを備える。固定スクロール体3および可動スクロール体4は偏心状態にかみ合わされて配置され、各スクロール体の渦巻壁3b、4bの間に圧縮室5が形成されている。
なお、図示は省略するが、各スクロール体の渦巻壁3b、4bの軸方向端面には渦巻き状のシール部材(チップシール)が装着されている。これにより、圧縮室内の冷媒等の漏洩を防止する。
モータ機構部は、可動スクロール体4に旋回駆動力を与える部分であり、ステータ6aとロータ6bとから構成されている。ステータ6aは、ハウジング2の内側に固定されており、ロータ6bはシャフト7に結合している。ステータ6aおよびロータ6bは電動機を構成し、ステータ6aへの通電によりロータ6bおよびシャフト7が一体回転する。シャフト7は主軸受9および副軸受10を介して回転可能に支持されている。シャフト7の一端側には偏心軸7aが一体に形成され、これにバランスウエイト8が支持されている。シャフト7およびバランスウェイト8によって回転部材が構成されている。
可動スクロール体4の底板部4aの背面側の略中央にはボス部4cが垂直に突出するように設けられ、このボス部4c内に旋回軸受11が圧入されている。旋回軸受11に偏心軸7aが支持されており、可動スクロール体4は、旋回軸受11により旋回運動する機構となっている。
主軸受9は、主軸受部材12の中央側に形成された軸受支持部に固定されている。主軸受部材12は、ハウジング内に固定されており、主軸受部材12には固定スクロール体3がボルトなどによって結合されている。また、主軸受9の側方であって、シャフト7の外周面と主軸受部材12との間にはシャフトシール13が装着されている。このシャフトシール13によって、モータ室14と背圧室15aとの連通が遮断されている。
ここで、主軸受部材12と、可動スクロール体4の底板部4aの背面との間には環状シール部材16が設けられている。図1では、可動スクロール体4の底板部4aの背面に形成された環状溝4dに、環状シール部材16が装着されている。この構造では、環状シール部材16は、主軸受部材12の可動スクロール体に向く端面に対して公転摺動する。背圧室15aは、環状シール部材16とシャフトシール13とによってシールされ、これらシール部と、主軸受部材12と、可動スクロール体4の底板部4aとの間で密封空間を形成している。
コンプレッサ1が運転を開始すると、ロータ6bの回転により可動スクロール体4が旋回運動を始める。吸入口より圧縮機構部に入った冷媒等は、旋回する渦巻壁の外周から中心に移動しながら圧縮され、固定スクロール体3の開口部3cより外部に吐出される。一方、背圧室15aには、圧縮機構部内から加圧された流体が、可動スクロール体4の底板部4aに設けられた圧力導入孔(図示省略)を通して供給されるようになっている。背圧室15aに加圧流体を導入することにより、圧縮反力によって可動スクロール体4に作用するスラスト荷重(可動スクロール体4を主軸受部材側に押し付けようとする力)を低減するように、または、可動スクロール体4を固定スクロール体側に押し付けるように、背圧室内の圧力が可動スクロール体4に作用することになる。
環状シール部材16は、内側の背圧室15aと外側の空間15bとを仕切っている。空間15bは、吸入圧に近い圧力値を有しているのに対して、背圧室15aには圧縮された冷媒等が導入されることから、空間15bよりも背圧室15aの方が高圧となる。その結果、環状シール部材16の一方のリング側面が主軸受部材12の端面に公転しながら摺動接触する。環状シール部材16は主に樹脂製であるのに対して、主軸受部材12は金属製(鉄製やアルミダイカスト製)であり、摺動接触によって環状シール部材16の摩耗などが懸念される。特に、流体の圧縮圧力が大きくなるほど、可動スクロール体4に作用するスラスト荷重も大きくなり、環状シール部材16が摩耗しやすくなる。
本発明では、環状シール部材16のリング側面に動圧溝を設けることで、摺動面積を低下させ、ひいては低トルク化を図っている。また、くさび作用により更なる低トルク化を図ることができる。
以下には、本発明の環状シール部材について説明する。
本発明の環状シール部材の一例を図2に基づいて説明する。図2は環状シール部材の斜視図を示す。コンプレッサの吐出量を確保する観点から、環状シール部材16の外径φは例えば50mm以上であり、好ましい範囲としては50mm~100mm程度である。
図2に示すように、環状シール部材16は、断面略矩形の環状体であり、全周にわたって繋がった形状であり、合い口を有していない。図2において、環状シール部材16には、リング側面17の内径側端部に、周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだV字状の動圧溝18が複数設けられている。また、内周面16bと両側のリング側面17(動圧溝18を含む)との角部は直線状、曲線状の面取りが設けられていてもよく、環状シール部材を射出成形で製造する場合、該部分に金型からの突出し部分となる段部16cを設けてもよい。
図2に示すように、環状シール部材16は、一方のリング側面が主軸受部材の可動スクロール体に向く端面と摺動する側の面となり、このリング側面に主軸受部材の端面との非接触部となるV字状の動圧溝18が形成されている。この動圧溝18を設けることで、冷媒等が該動圧溝に流入して、くさび作用が発生し、また冷媒等が主軸受部材の端面と摺動する部分に適度に流出することで、低トルク化が図れ、耐摩耗摩擦特性を向上させることができる。また、図2の構成では、動圧溝18はリング径方向に非連通の凹部であり、リング内径側にのみ開口していることから、冷媒等の低オイルリーク性にも繋がる。
図2において、動圧溝は少なくとも公転摺動する摺動面である一方のリング側面に形成すればよいが、組み付け方向の依存性がなく、重量バランスにも優れることから、両側のリング側面に対称に形成することが好ましい。
また、図2に示すように、動圧溝18はリング周方向で離間して複数個設けることが好ましい。隣り合う動圧溝同士の間のリング側面は主軸受部材に対して摺動する部分となり、摺動面の一部を構成する。動圧溝の面積(複数個の場合は合計の面積、以下同じ)は特に限定されないが、リング側面に対する動圧溝の面積が小さくなりすぎるとトルク低減効果が小さくなり、大きくなりすぎると過剰面圧となり摩耗が促進されるおそれがある。このような観点から、動圧溝の面積はリング側面の全体の面積に対して5%~75%であることが好ましく、20%~60%であることがより好ましい。なお、リング側面の全体の面積とは、環状シール部材の公転摺動する摺動面側のリング側面を正面から見た平面視における動圧溝を含んだ摺動面積であり、動圧溝の面積は同平面視における面積である。
動圧溝のそれぞれのリング周方向の長さは、個数に応じて、リング円周長さの約3%~20%とすることが好ましい。動圧溝のリング径方向の長さは、リング総厚みの10%~80%とすることが好ましい。また、摺動特性が安定することから、動圧溝は全て同サイズとし、略等間隔で離間して複数個(図2では片面13個)設けることが好ましい。
図3および図4を用いて、V字状の動圧溝について説明する。図3は、図2のA部の斜視図であり、図4(a)は動圧溝をリング内径側から見た図であり、図4(b)はB部拡大図、図4(c)はC部拡大図である。図3および図4に示すように、動圧溝18は、リング周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだV字状である。図4(a)に示すように、動圧溝18の摺動面からの深さは、動圧溝18のリング周方向の中央部に最深部18dがあり、最深部18dからリング周方向の両端部に向けて浅くなる。すなわち、リング周方向で摺動面に近い領域程浅くなる。また、動圧溝18の摺動面からの深さは、リング径方向には一定である。なお、図3において最深部18dは線状に形成されている。
図4(a)に示すように、動圧溝18は、最深部18dを中心に対称形状になっており、動圧溝18の底面は、一対の第1の傾斜面18a、18aと一対の第2の傾斜面18b、18bとを有している。具体的には、摺動面から最深部18dに至るまで同一平面ではなく、摺動面に接続される第1の傾斜面18aと、最深部18dに接続され、摺動面に対して、第1の傾斜面18aよりも小さな傾斜角度をなす第2の傾斜面18bとを有している。
図4(c)に示すように、第1の傾斜面18aは、第2の傾斜面18bに比べて、摺動面に対して急勾配に形成されている。これにより、摺動面が摩耗した場合でも動圧溝18の開口面積の減少が小さく、トルクの変化が生じにくい。第1の傾斜面18aの摺動面に対する傾斜角度θは特に限定されないが、50°~80°が好ましく、50°~70°がより好ましい。傾斜角度θが50°未満であると、摺動面が摩耗した場合、摺動面積の増加が大きくなり、トルク変動が懸念される。また、傾斜角度θが80°を超えると、くさび作用が小さくなるおそれがある。
一方、第2の傾斜面18bの摺動面に対する傾斜角度θ(図4(b)参照)は特に限定されないが、0.1°~15°と鋭角であることが好ましく、1°~10°であることがより好ましい。これにより、流入してきた流体によるくさび作用を効果的に発揮できる。一方、傾斜角度θが0.1°未満であると流入した流体が第1の傾斜面18aに流れにくくなり、また15°を超えると動圧溝18の最深部18dが深くなり、該動圧溝18の容積が増加し、圧力が分散することで、くさび作用が薄れるおそれがある。
第1の傾斜面18aと第2の傾斜面18bの境界部の構成は特に限定されない。例えば、第1の傾斜面18aと第2の傾斜面18bを直接接続させてもよく、図4(c)に示すように曲面(R面)18cを介して接続させてもよい。R面18cは、リング周方向に一定の幅を持つ部分であり、R面18cの曲率半径は、例えば0.1~0.3である。図4(c)に示すように、第1の傾斜面18aと第2の傾斜面18bの境界部をR状に形成することで、隣り合う動圧溝同士の間の摺動面に流体が流出しやすくなり、更なる低トルク化を図りやすくなる。
また、第1の傾斜面18aの周方向の端部と摺動面との境界部は、曲面(R状)で接続することができる。当該境界部をR状に形成することで、冷媒等が摺動面により流出しやすくなり、更なる低トルク化を図りやすくなる。
動圧溝18の最深部18dの摺動面からの深さは、リング総幅の45%以下とすることが好ましく、30%以下とすることが更に好ましい。なお、ここでの「深さ」は、動圧溝をリングの両側面に形成する場合には、各側面の凹部の深さを合計したものであり、この場合の片面の凹部の深さはリング総幅の22.5%以下、好ましくは15%以下である。リング総幅の45%をこえる場合、環状シール部材が強度不足になり変形や破損するおそれがある。
リング側面の内径側端部に形成される略V字状の動圧溝は、上記図3および図4の形態に限定されるものではない。例えば、図5(a)に示すように、動圧溝19のリング周方向の端部に最深部19aを配置してもよい。可動スクロール体の旋回運動の方向(回転方向)は一方向であることから、非対称形状とすることができる。この場合、可動スクロール体の回転方向はX方向となる。また、動圧溝19の底面として、上述したような第1の傾斜面および第2の傾斜面を適宜採用することができる。また、図5(b)に示すように、動圧溝20の最深部20aを摺動面に対して平行な平面で形成してもよい。また、最深部20aを曲線状にしてもよい。この場合も、動圧溝20の底面として、上述したような第1の傾斜面および第2の傾斜面を適宜採用することができる。また、これらの例において、動圧溝の底面を構成する平面を適宜曲面で構成してもよい。
図6に示すように、環状シール部材16は、可動スクロール体の底板部4aの背面に設けられた環状溝4dに装着される。図中左側が背圧室15a側であり、図中右側が空間15b側である。図中の矢印が冷媒等からの圧力が加わる方向であり、環状シール部材16は、環状溝4dの空間15b側の側壁面に外周面16aが押し付けられて接触している。このシール構造により、背圧室15aと空間15bとを仕切っている。そして、可動スクロール体の旋回運動に伴って、環状シール部材16が連れ回りして、リング側面17で主軸受部材12の端面に公転摺動しながら摺動接触する。この際、連れ回りによって生じる冷媒等の流れによって、動圧溝18に冷媒等が導入されることで動圧が発生する。この動圧によって、主軸受部材12から離れる方向の力が環状シール部材16の端面に作用するため、主軸受部材12に対する環状シール部材16の摺動抵抗が更に低減される。
なお、環状溝は、可動スクロール体の底板部4a側ではなく、主軸受部材側に設けられてもよい。その場合、該環状溝に装着された環状シール部材はその環状溝内に固定される。その環状シール部材のリング側面は、旋回運動する可動スクロール体の底板部の背面に対して摺動接触する。このリング側面には、上述したような動圧溝が設けられる。
冷媒等は用途に応じた種類が適宜用いられる。また、冷媒等の温度は、例えば-20℃~140℃程度である。可動スクロール体の旋回運動における回転数として5000~8000rpm程度を主に想定している。
本発明において、リング側面に設けられる動圧溝は、可動スクロール体の旋回運動によって生じる流体の流れにより該流体を導入して動圧を発生させる溝であればよく、種々の形状を採用できる。例えば、ヘリングボーン(図7(a)参照)、スパイラル(図7(b)参照)、またはこれらを併用した形状などが挙げられる。図7は動圧溝の平面形状を示しており、図中の黒塗り部分が動圧溝である。なお、動圧溝は、環状シール部材のリング側面の内外径を連通していない溝(非連通溝)が望ましい。非連通溝では、途中で流体の流れが阻害されるため、動圧が発生しやすい。
なお、図7(a)などのへリングボーンにおける溝の折り返し位置は、適宜設定できる。図7(a)に示す形状と可動スクロール体の回転方向では、折り返し位置が円周外側に行くほど、内径側から外径側に向かう力が大きくなる。
リング側面の内径側端部の少なくとも一部に非連通の動圧溝を形成する例としては、例えば上述した図2~図5の例が挙げられる。一方、リング側面の外径側端部の少なくとも一部に非連通の動圧溝を形成する例としては、例えば図8の例が挙げられる。図8に示す環状シール部材21には、リング側面22の外径側端部に、周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだ略V字状の動圧溝23が複数設けられており、図8はその一部拡大図を示している。この動圧溝23は、リング側面における形成位置を除いて、上述のV字状の動圧溝18(図3参照)と同様の構成である。なお、動圧溝23は、上述の動圧溝の変形例の構成を適宜採用することができる。
また、非連通の動圧溝の形成位置は、リング側面の内径側端部のみまたは外径側端部のみに限らず、リング側面の内径側端部および外径側端部の両方でもよい。この場合、例えばリング周方向に沿って、内径側端部の動圧溝と外径側端部の動圧溝とを交互に形成してもよい。また、内径側端部の動圧溝と外径側端部の動圧溝はリング径方向に重ならないように形成してもよい。
本発明の環状シール部材の材質は特に限定されないが、合成樹脂の成形体とすることが好ましい。使用できる合成樹脂としては、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、PEEK樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)樹脂等のフッ素樹脂、PPS樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で使用しても、2種類以上混合したポリマーアロイとしてもよい。
また、環状シール部材は、合成樹脂を射出成形してなる射出成形体にすることが好ましい。このため、合成樹脂としては、射出成形が可能である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。その中でも特に、摩擦摩耗特性、曲げ弾性率、耐熱性、摺動性などに優れることから、PEEK樹脂またはPPS樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は高い弾性率を有し、シールする冷媒等の温度が高くなる場合でも使用でき、また、ソルベントクラックの心配もない。
また、必要に応じて上記合成樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカや球状炭素などの球状充填材、マイカやタルクなどの鱗状補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を配合できる。また、PTFE樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。特に、PEEK樹脂またはPPS樹脂に、繊維状補強材である炭素繊維と、固体潤滑剤であるPTFE樹脂とを含むものが、本発明の環状シール部材に要求される特性を得やすいので好ましい。炭素繊維を配合することで、曲げ弾性率等の機械的強度の向上が図れ、PTFE樹脂の配合により摺動特性の向上が図れる。
合成樹脂製とする場合には、以上の諸原材料を溶融混練して成形用ペレットとし、これを用いて公知の射出成形法等により所定形状に成形する。射出成形により製造する場合、そのゲート位置は特に限定されないが、シール性の確保の観点および後加工が不要になることからリング内周面に設けることが好ましい。さらに、ゲート位置は、周方向に等間隔に配置した多点ゲート(例えば3点~6点)として、ゲート位置と動圧溝の位置とがリング径方向において重ならないことがより好ましい。この場合、環状シール部材は、リング径方向において、動圧溝と重ならない位置の内周面にゲート痕を有することになる。
摺動面積の違いによる、動摩擦係数の面圧依存性を確認する目的として、摺動面積を固定して、荷重を3水準に分けてスラスト試験を行った。
実施例および比較例
PPS樹脂を主材料とし、PTFE樹脂および炭素繊維を配合した樹脂組成物(NTN社製:ベアリーAS5302)を用い、実施例および比較例の環状の試験片を射出成形により製造した。
比較例の試験片は、外径φ21mm、内径φ17mm、径方向長さ4mm、軸方向長さ1.6mmであり、リング側面に動圧溝が設けられていない。一方、実施例の試験片は、外径φ21mm、内径φ17mm、径方向長さ4mm、軸方向長さ1.6mmであり、リング側面の内径側端部に、図3に示すようなリング周方向に沿った略V字状の動圧溝が4個設けられている。動圧溝の最深部の溝深さは、0.1mmであり、第1の傾斜面の摺動面に対する傾斜角度は約65°であり、第2の傾斜面の摺動面に対する傾斜角度は約3°であった。なお、動圧溝の面積はリング側面の全体の面積に対して40%であった。
スラスト試験機の概略図を図9に示す。負荷軸31の先端に試験片33を取り付け、回転軸35に取り付けられた相手材34(ADC12、外径φ33mm、厚さ10mm、試験片との摺動面は平面研磨によりRa0.8μm程度とした)に、所定の荷重Fで押し付け、オイル32中で下記の条件にてスラスト試験を行った。各試験において、試験終了直前の動摩擦係数を測定した。面圧と動摩擦係数の関係を図10に示す。
<試験条件>
速度 :2m/sec
面圧 :1MPa、2MPa、3MPa
雰囲気温度:室温(成り行き)
潤滑 :油中(PAG油、出光ダフニーハーメチックオイルPS)
試験時間 :各面圧30min
試験数 :n=1
図10に示すように、動摩擦係数は、面圧(荷重)の増加とともに低下する傾向であることから、面圧依存性があり、摺動面の面積を減らすことで、動摩擦係数(トルク)が減少した。これにより、実施例のように動圧溝を形成することで、低トルク化を図ることができる。
本発明の環状シール部材は、耐久性やシール機能の低下を損なうことなく、安定した低トルク性を発揮できるので、スクロールコンプレッサの環状シール部材として広く利用できる。また、スラスト受け部材を除くことが可能となる。
1 コンプレッサ
2 ハウジング
3 固定スクロール体
3a 底板部
3b 渦巻壁
3c 開口部
4 可動スクロール体
4a 底板部
4b 渦巻壁
5 圧縮室
6a ステータ
6b ロータ
7 シャフト
8 バランスウェイト
9 主軸受
10 副軸受
11 旋回軸受
12 主軸受部材
13 シャフトシール
14 モータ室
15a 背圧室
15b 空間
16 環状シール部材
17 リング側面
18 動圧溝
18a 第1の傾斜面
18b 第2の傾斜面
18c R面
18d 最深部
19 動圧溝
19a 最深部
20 動圧溝
20a 最深部
21 環状シール部材
22 リング側面
23 動圧溝
31 負荷軸
32 オイル
33 試験片
34 相手材
35 回転軸

Claims (8)

  1. 底板部とその表面に立設する渦巻壁を有する固定スクロール体と、底板部とその表面に立設する渦巻壁を有する可動スクロール体と、シャフトと、該シャフトを回転可能に支持する主軸受と、該主軸受を固定する主軸受部材とを備え、
    前記シャフトの回転により、前記可動スクロール体を前記固定スクロール体の軸線の周りで公転させて流体を圧縮室にて圧縮するとともに、前記流体が前記可動スクロール体の背面側の背圧室に供給されるスクロールコンプレッサにおいて、
    前記可動スクロール体の前記底板部の背面と、前記主軸受部材の前記可動スクロール体に向く端面のいずれか一方の面に形成された少なくとも1個の環状溝に装着され、前記背圧室をシールする環状シール部材であって、
    環状シール部材は、リング側面において少なくとも公転摺動する摺動面に動圧溝が設けられていることを特徴とする環状シール部材。
  2. 前記動圧溝の面積は前記リング側面の全体の面積に対して5%~75%であることを特徴とする請求項1記載の環状シール部材。
  3. 前記動圧溝の形状は、リング周方向に沿ってリングの幅方向側に凹んだ略V字状であり、前記動圧溝の前記摺動面からの深さは、最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなり、リング径方向には一定であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の環状シール部材。
  4. 前記動圧溝は、前記摺動面から前記最深部に至るまで同一平面ではなく、前記摺動面に接続される第1の傾斜面と、前記最深部に接続され、前記摺動面に対して、前記第1の傾斜面よりも小さな傾斜角度をなす第2の傾斜面とを有することを特徴とする請求項3記載の環状シール部材。
  5. 前記摺動面に対する前記第1の傾斜面の傾斜角度が50°~80°であり、前記摺動面に対する前記第2の傾斜面の傾斜角度が0.1°~15°であることを特徴とする請求項4記載の環状シール部材。
  6. 前記動圧溝において、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面の境界部が曲面で接続されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載の環状シール部材。
  7. 前記動圧溝がリング周方向で離間して複数個設けられ、隣り合う動圧溝同士の間のリング側面が前記摺動面の一部を構成することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の環状シール部材。
  8. 前記環状シール部材は合成樹脂製であり、該合成樹脂がポリフェニレンサルファイド樹脂またはポリエーテルエーテルケトン樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の環状シール部材。
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