以下、添付図面に従って本発明に係るプローバ及びプローブ検査方法の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2は、第1の実施形態に係るプローバ10の全体構成を示した外観図と平面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態のプローバ10は、検査するウエハW(図4参照)を供給及び回収するローダ部14と、ローダ部14に隣接して配置された測定ユニット12とを備えている。測定ユニット12は、複数の測定部16を有しており、ローダ部14から各測定部16にウエハWが供給されると、各測定部16でそれぞれウエハWの各チップの電気的特性の検査(ウエハレベル検査)が行われる。そして、各測定部16で検査されたウエハWはローダ部14により回収される。なお、プローバ10は、操作パネル22、後述する制御装置(図8参照)等も備えている。
ローダ部14は、ウエハカセットが載置されるロードポート18と、測定ユニット12の各測定部16とウエハカセットとの間でウエハWを搬送する搬送ユニット24とを有する。
ローダ部14は、カード(プローブカード32)が載置されるカードストッカ20を有する。図1に示す例では、測定部16とカードストッカ20は、X方向に同数かつ同ピッチ(同一の間隔)で配置されている。
搬送ユニット24は、図示しない搬送ユニット駆動機構を備えており、X、Z方向に移動可能に構成されるとともに、θ方向(Z方向周り)に回転可能に構成されている。
また、搬送ユニット24は、上記搬送ユニット駆動機構により前後に伸縮自在に構成された搬送アーム26を備えている。搬送アーム26の上面部には図示しない吸着孔が設けられており、搬送アーム26は、この吸着孔でウエハWの裏面を真空吸着してウエハWを保持する。これにより、ウエハカセット内のウエハWは、搬送ユニット24の搬送アーム26によって取り出され、その上面に保持された状態で測定ユニット12の各測定部16に搬送される。また、検査の終了した検査済みのウエハWは逆の経路で各測定部16からウエハカセットに戻される。
図3は、本発明の実施形態に係るプローバにおける測定ユニットの構成を示した概略図である。図4は、図3に示した測定ユニットにおける測定部の構成を示した概略図である。
図3に示すように、測定ユニット12は、複数の測定部16が多段状に積層された積層構造(多段構造)を有しており、各測定部16はX方向及びZ方向に沿って2次元的に配列されている。本実施形態では、一例として、X方向に4つの測定部16がZ方向に3段積み重ねられている。
測定ユニット12は、複数のフレームを格子状に組み合わせた格子形状を有する筐体(不図示)を備えている。この筐体は、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれ延びる複数のフレームを格子状に組み合わせて形成されたものであり、これらのフレームにより形成された各空間部にそれぞれ測定部16の構成要素が配置される。
各測定部16は、いずれも同一の構成を有しており、図4に示すように、ヘッドステージ30と、プローブカード32と、ウエハチャック34とを備えている。また、各測定部16には、それぞれ、図示しないテストヘッドが設けられている。なお、テストヘッドは、図示しないテストヘッド保持部によりヘッドステージ30の上方に支持されている。
ヘッドステージ30は、筐体の一部を構成するフレーム部材(不図示)に支持されており、プローブカード32が着脱自在に装着固定される。ヘッドステージ30に装着固定されたプローブカード32は、ウエハチャック34のウエハ保持面34aと対向するように設けられる。なお、プローブカード32は、検査するウエハW(デバイス)に応じて交換される。
プローブカード32には、検査するウエハWの各チップの電極パッドの位置に対応して配置された、カンチレバー又はスプリングピン等の複数のプローブ36が設けられている。各プローブ36は、図示しないテストヘッドの端子に電気的に接続され、テストヘッドから各プローブ36を介して各チップに電源及びテスト信号が供給されると共に各チップからの出力信号をテストヘッドで検出して正常に動作するかを測定する。なお、プローブカード32とテストヘッドとの接続構成については、詳細な説明を省略する。
プローブ36は、バネ特性を有し、プローブ36の先端位置より接触点を上昇させることにより、電極パッドに所定の接触圧で接触する。また、プローブ36は、電気的検査を行うときに、電極パッドがオーバードライブの状態で接触されると、プローブ36の先端が電極パッドの表面にのめり込み、その電極パッドの表面にそれぞれ針跡を形成するようになっている。なお、オーバードライブとは、ウエハWとプローブ36の先端の配列面との傾き、及び、プローブ36の先端位置のばらつきなどを考慮して、電極パッドとプローブ36が確実に接触するように、プローブ36の先端位置より高い位置まで電極パッド、すなわちウエハWの表面を距離αだけ上昇させた状態をいう。また、プローブ36の先端位置(コンタクト位置)からウエハWの表面を更に上昇させる移動量、すなわち上記距離αをオーバードライブ量と称する。
ウエハチャック34は、ウエハWを真空吸着して固定する。ウエハチャック34は、検査するウエハWが載置されるウエハ保持面34aを有しており、ウエハ保持面34aには複数の吸引口40が設けられている(図4では1つのみ図示)。吸引口40は、ウエハチャック34の内部に形成された吸引路42を介して真空ポンプなどの吸引装置(真空源)44に接続されている。吸引装置44と吸引路42との間を接続する吸引経路にはウエハ吸着用電磁弁46が設けられている。なお、ウエハ吸着用電磁弁46はウエハ吸着用電磁弁制御部110(図8参照)により制御される。
ウエハチャック34のウエハ保持面34aよりも外側には、ウエハ保持面34aに保持されたウエハWを取り囲むように形成された弾性を有するリング状シール部材(チャックシールゴム)48が設けられている。後述するZ軸移動・回転部72によりウエハチャック34をプローブカード32に向かって移動(上昇)させたときに、リング状シール部材48がヘッドステージ30の下面に接触することで、ウエハチャック34、プローブカード32、及びリング状シール部材48により囲まれた内部空間R(図10参照)が形成される。なお、リング状シール部材48は本発明の環状のシール部材の一例である。
ヘッドステージ30には、プローブカード32とウエハチャック34との間に形成された内部空間Rに負圧を付与するための圧力供給口50が設けられている。圧力供給口50は、ヘッドステージ30の下面に設けられ、内部空間Rに開口している。また、圧力供給口50は、ヘッドステージ30の内部に形成された供給路52の一端(図4の下端)に形成されており、供給路52の他端(図4の上端)は配管60の一端に接続されている。すなわち、配管60は供給路52及び圧力供給口50を介して内部空間Rに連通している。配管60の他端は減圧用レギュレータ(真空電空レギュレータ)54を介して吸引装置44(真空ポンプ)に接続されている。
吸引装置44は、配管60を介して内部空間R内の空気を排出することにより、内部空間Rを減圧して、大気圧よりも低い圧力である負圧にすることができる。減圧用レギュレータ54は大気圧から例えば-100kPa(ゲージ圧)までの任意の圧力(負圧)に設定可能であり、減圧用レギュレータ54を使用して真空度を下げる(負圧を小さく)する場合は、所定の圧力になるまで吸気口54aから内部空間Rへ空気が流入する。なお、吸引装置44及び減圧用レギュレータ54は本発明の負圧付与手段の一例である。
ウエハチャック34には、内部空間Rと外部空間との間を連通する連通路56が設けられている。連通路56の一端はウエハチャック34のウエハ保持面34aのうちウエハWが載置されない外周付近の領域に開口しており、連通路56の他端はウエハチャック34の側面に開口している。
さらに、ヘッドステージ30には、内部空間Rが外部空間と連通した連通状態(非密閉状態)と内部空間Rが外部空間と連通しない非連通状態(密閉状態)との間で選択的に切替可能なシャッタ手段58が設けられている。
シャッタ手段58は、エアシリンダ機構300と、開閉弁302とから構成され、エアシリンダ機構300によって、連通路56を閉鎖した閉鎖位置と連通路56を開放した開放位置との間で開閉弁302を進退移動させることで連通路56の開閉を行う。すなわち、エアシリンダ機構300によるシャッタ手段58の進退移動に伴い、内部空間Rは非連通状態と連通状態との間で選択的に切り替えられる。
エアシリンダ機構300は、開閉弁302を水平方向に進退移動させるものであり、シリンダ304と、シリンダ304の内部に収納されたピストン306と、ピストン306に固着したピストンロッド308とを備えて構成されている。シリンダ304は、気体供給路を介してエアシリンダ駆動装置310に接続されており、エアシリンダ駆動装置310から供給された気体により、ピストン306及びピストンロッド308が進退移動する。開閉弁302は、ピストンロッド308の先端に取り付けられており、ピストン306及びピストンロッド308の進退移動に応じて、連通路56を開放する開放位置と連通路56を遮断する遮断位置との間で進退移動可能に構成される。開閉弁302が開放位置に移動した場合には連通路56は開放状態となり、内部空間Rは連通路56を介して外部空間と連通した連通状態となる。一方、開閉弁302が遮断位置に移動した場合には連通路56は遮断状態となり、内部空間Rは外部空間と連通しない非連通状態となる。なお、シャッタ手段58(エアシリンダ機構300)は後述するシャッタ制御部116(図7参照)により制御される。
このように本実施形態によれば、シャッタ手段58をヘッドステージ30に設けたので、ウエハチャック34には放熱要素となるシャッタ手段58の構成部品が設けられることがなく、ウエハチャック34の温度分布に与える影響をなくすことができる。また、ウエハチャック34の温度分布に与える影響がなくなることによって、ウエハチャック34のウエハ保持面34aの平面度が向上する。これにより、ウエハWとプローブカード32との平行度をより高くでき、ウエハレベル検査を高精度に行うことが可能となる。また、ウエハチャック34に搭載する部品を少なくすることができるので、ウエハチャック34の重量バランスをとりやすくなる。その結果、ウエハチャック34の重量バランスを崩すことなく、真空吸着方式によるコンタクト動作及びリリース動作を安定して行うことが可能となる。なお、シャッタ手段58は、ウエハチャック34側に設けることも可能である。
なお、本実施形態では、一例として、ウエハチャック34に設けられた連通路56及びシャッタ手段58により内部空間Rを外部空間と連通した連通状態(非密閉状態)と非連通状態(密閉状態)との間で選択的に切り替え可能な構成としたが、本実施形態の構成に代えて、例えば、ヘッドステージ30あるいはプローブカード32に連通路及びシャッタ手段を設けた構成としてもよい。この構成によれば、ウエハチャック34には放熱要素となる連通路及びシャッタ手段が設けられないので、ウエハチャック34の温度分布に与える影響を少なくすることができる。また、ウエハチャック34の温度分布に与える影響が少なくなることによって、ウエハチャック34のウエハ保持面34aの平面度が向上する。これにより、ウエハWとプローブカード32との平行度をより高くでき、ウエハレベル検査を高精度に行うことが可能となる。また、本実施形態の構成に比べてウエハチャック34に搭載する部品を少なくすることができるので、ウエハチャック34の重量バランスをとりやすくなる。その結果、ウエハチャック34のコンタクト動作やリリース動作において、ウエハチャック34の重量バランスを崩すことなく安定した状態でウエハチャック34の受け渡しを行うことが可能となる。
ウエハチャック34の内部には、検査するウエハWを高温状態(例えば、最高で150℃)、又は低温状態(例えば最低で-40℃)で電気的特性の検査が行えるように、加熱/冷却源としての加熱冷却機構(不図示)が設けられている。加熱冷却機構としては、公知の適宜の加熱器/冷却器が採用できるものであり、例えば、面ヒータの加熱層と冷却流体の通路を設けた冷却層との二重層構造にしたものや、熱伝導体内に加熱ヒータを巻き付けた冷却管を埋設した一層構造の加熱/冷却装置など、様々のものが考えられる。また、電気加熱ではなく、熱流体を循環させるものでもよく、またペルチエ素子を使用してもよい。
ウエハチャック34は、後述するアライメント装置70に着脱自在に支持固定される。アライメント装置70は、ウエハチャック34をX、Y、Z及びθ方向に移動することで、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。
アライメント装置70は、ウエハチャック34を着脱自在に支持固定してウエハチャック34をZ軸方向に移動すると共にZ軸を回転中心としてθ方向に回転するZ軸移動・回転部72と、Z軸移動・回転部72を支持してX軸方向に移動するX軸移動台74と、X軸移動台74を支持してY軸方向に移動するY軸移動台76とを備えている。
Z軸移動・回転部72、X軸移動台74及びY軸移動台76は、それぞれ、少なくともモータを含む機械的な駆動機構によりウエハチャック34を所定の方向に移動自在もしくは回転自在に構成される。機械的な駆動機構としては、例えば、サーボモータとボールネジとを組み合わせたボールネジ駆動機構により構成される。また、ボールネジ駆動機構に限らず、リニアモータ駆動機構又はベルト駆動機構等で構成されていてもよい。なお、Z軸移動・回転部72、X軸移動台74及びY軸移動台76は、後述する各制御部によりウエハチャック34の移動距離、移動方向、移動速度、加速度を変更可能に構成されている。本実施形態では、具体的には次のような構成を有する。
Z軸移動・回転部72は、本発明の機械的昇降手段の一例であり、ウエハチャック34をZ軸方向に移動させるためのZ軸駆動モータ122(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図8参照)と、ウエハチャック34のZ軸方向への移動距離を検出するためのZ軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダ又はリニアスケール等)(不図示)とを備えている。Z軸駆動モータ122は、後述するZ軸移動制御部106(図7参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、Z軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
また、Z軸移動・回転部72は、ウエハチャック34をθ方向に回転させるための回転駆動モータ124(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図8参照)と、ウエハチャック34のθ方向への回転角度を検出するための回転エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダ等)(不図示)とを備えている。回転駆動モータ124は、後述するθ回転制御部108(図8参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の回転速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、回転エンコーダは、ウエハチャック34の回転に応じてエンコーダ信号を出力する。
X軸移動台74は、ウエハチャック34をX軸方向に移動させるためのX軸駆動モータ118(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図8参照)と、ウエハチャック34のX軸方向への移動距離を検出するためのX軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダやリニアスケール等)(不図示)とを備えている。X軸駆動モータ118は、後述するX軸移動制御部102(図8参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、X軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
Y軸移動台76は、ウエハチャック34をY軸方向に移動させるためのY軸駆動モータ120(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図8参照)と、ウエハチャック34のY軸方向への移動距離を検出するためのY軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダやリニアスケール等)(不図示)とを備えている。Y軸駆動モータ120は、後述するY軸移動制御部104(図8参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、Y軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
アライメント装置70は、それぞれの段毎に設けられており(図3参照)、図示しないアライメント装置駆動機構によって、各段に配置された複数の測定部16間で相互に移動可能に構成されている。すなわち、アライメント装置70は、同一の段に配置される複数(本例では4つ)の測定部16間で共有されており、同一の段に配置された複数の測定部16間を相互に移動する。各測定部16に移動したアライメント装置70は図示しない位置決め固定装置により所定位置に位置決めされた状態で固定され、ウエハチャック34をX、Y、Z及びθ方向に移動させて、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。なお、図示は省略したが、アライメント装置70は、ウエハチャック34に保持されたウエハWの各チップの電極パッドとプローブ36との相対的な位置関係を検出するために、針位置検出カメラと、ウエハアライメントカメラとを備えている。また、アライメント装置駆動機構は、ボールネジ駆動機構、リニアモータ駆動機構又はベルト駆動機構等の機械的な駆動機構により構成される。
アライメント装置70の上面を構成するZ軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aには、外周に沿って環状に形成された弾性を有するリング状シール部材(Z軸シールゴム)78が設けられる。また、ウエハチャック支持面72aのリング状シール部材78の内側には吸引口80が設けられている。吸引口80は、ウエハチャック34の内部に形成された吸引路82を介して吸引装置44に接続されている。吸引装置44と吸引路82との間を接続する吸引経路には、吸引装置44側から順に、チャック固定用電磁弁84、と、絞り弁86とが設けられている。なお、チャック固定用電磁弁84は後述するチャック固定用電磁弁制御部112(図8参照)により制御される。Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aは本発明のウエハチャック固定部の一例である。また、ウエハチャック支持面72aに設けられた吸引口80はウエハチャック固定部の構成要素の一例である。
Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aのリング状シール部材78の外側には、アライメント装置70に対するウエハチャック34の相対的な位置関係が常に一定となるように位置決めピン88が設けられている。この位置決めピン88は、図5に示すように、ウエハチャック34の中心軸を中心とする周方向に沿って等間隔に3箇所に設けられている(図4においては2つのみを図示)。ウエハチャック34の下面には各位置決めピン88にそれぞれ対応する位置に位置決め部材であるVブロック90が設けられている。ウエハチャック34を真空吸着により吸着して固定する際には、各Vブロック90のV溝内にそれぞれ対応する位置決めピン88を係合させることで、ウエハチャック34の水平方向(X方向及びY方向)の動きを拘束して、アライメント装置70とウエハチャック34との相対的な位置決めが行われる。なお、図5は、位置決めピン88とVブロック90との対応関係を示した図である。図5では、図面を簡略化するため、位置決めピン88及びVブロック90以外の構成については図示を省略している。
なお、本実施形態では、アライメント装置70は、ウエハチャック34を真空吸着して固定するが、ウエハチャック34を固定できるものであれば、真空吸着以外の固定手段でもよく、例えば機械的手段等で固定するようにしてもよい。
図6は、ウエハチャックを示した平面図であり、図7は、シャッタ手段を拡大して示した平面図である。
図6に示すように、ウエハチャック34には、シャッタ手段58が4つ取り付けられている。シャッタ手段58は、ウエハチャック34、プローブカード32及びリング状シール部材48により囲まれた内部空間Rと外部空間との間を連通する連通路56に対応して設けられている。連通路56は、プローバ10のプローブカード32のクリーニング時等に排気のために使用される。
図7に示すように、シャッタ手段58は、駆動部300を含んでいる。駆動部300は、例えば、エアシリンダを含んでおり、ピストン306及びピストンロッド308をその長さ方向に移動させる。駆動部300としては、例えば、モータ又はリニアモータを含むものを用いることも可能である。なお、図4等では、シャッタ手段58を簡略化して示している。
図中の符号56Aは、シール用部品(例えば、ゴムパッキン等)である。シール用部品56Aは、開閉弁302(図4参照)の先端部に取り付けられており、開閉弁302を移動させて連通路56を閉塞する時には、シール用部品56Aが連通路56の開口部に当接することにより気密性を確保する。
シール用部品56Aが連通路56の開口部に当接すると、シール用部品56Aにより連通路56が閉塞されて内部空間Rが外部空間と遮断される。一方、シール用部品56Aが連通路56の開口部から離れると、連通路56が開放されて内部空間Rが外部空間とが連通する。これにより、内部空間Rの開放と遮断とを切り替えることができる。
なお、図7の符号50Aは、供給路52と配管60とを接続する接続部である。
図8は、本発明の実施形態に係るプローバの制御装置の構成を示した機能ブロック図である。
図8に示すように、本実施形態のプローバ10の制御装置は、全体制御部100、X軸移動制御部102、Y軸移動制御部104、Z軸移動制御部106、θ回転制御部108、ウエハ吸着用電磁弁制御部110、チャック固定用電磁弁制御部112、圧力制御部115、シャッタ制御部116等を備えている。
全体制御部100は、プローバ10を構成する各部を統括的に制御する。具体的には、全体制御部100は、ウエハチャック34をプローブカード32側に吸着保持するコンタクト動作やウエハチャック34をプローブカード32側からリリース(離間)するリリース動作の制御を行う。また、全体制御部100は、これらの動作の他に、各測定部16の間でアライメント装置70を相互に移動させる移動制御や、テストヘッドによるウエハレベル検査の動作の制御などを行う。なお、コンタクト動作及びリリース動作以外の制御については、本発明の特徴的部分ではないため、詳細な説明を省略する。
X軸移動制御部102は、X軸移動台74に設けられるX軸駆動モータ118の駆動を制御することでX軸移動台74をX軸方向に移動させることにより、ウエハチャック34をX軸方向に移動させる。Y軸移動制御部104は、Y軸移動台76に設けられるY軸駆動モータ120の駆動を制御することでY軸移動台76をY軸方向に移動させることにより、ウエハチャック34をY軸方向に移動させる。Z軸移動制御部106は、Z軸移動・回転部72に設けられるZ軸駆動モータ122の駆動を制御することでZ軸移動・回転部72を昇降させることにより、ウエハチャック34をZ軸方向に移動させる。θ回転制御部108は、Z軸移動・回転部72に設けられる回転駆動モータ124の駆動を制御することでZ軸移動・回転部72をθ方向に回転させることにより、ウエハチャック34をθ方向に回転させる。
ウエハ吸着用電磁弁制御部110は、ウエハ吸着用電磁弁46のON/OFF(開/閉)を制御することで、吸引口40による吸引圧を調整し、ウエハチャック34に対するウエハWの固定/非固定を選択的に切り替える。
チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84のON/OFF(開/閉)を制御することで、吸引口80による吸引圧を調整し、Z軸移動・回転部72に対するウエハチャック34の固定/非固定を選択的に切り替える。
圧力制御部115は、減圧用レギュレータ54の動作を制御することで、内部空間Rの内部圧力を大気圧よりも低い負圧に設定する。
シャッタ制御部116は、シャッタ手段58の開閉を制御することで、内部空間Rと外部空間との間を連通する連通路56の開放/遮断を選択的に切り替える。ここで、シャッタ制御部116は、シャッタ制御手段として機能する。
次に、第1の実施形態に係るプローバ10におけるコンタクト動作(プローブ検査方法の一例)について、図9~図11を参照して説明する。なお、この動作は全体制御部100による制御の下で行われる。
図9は、第1の実施形態に係るプローバにおけるコンタクト動作を示したフローチャートである。図10は、第1の実施形態に係るプローバにおけるコンタクト動作を説明するための図である。図11は、第1の実施形態に係るプローバにおけるコンタクト動作を示したタイミングチャート図である。なお、図11に示すタイミングチャートの時間幅は図面を簡略化するために表現したものであり、実際の時間とは異なっている。また、図11における「Z軸高さ」とは、Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aのZ軸方向の位置(高さ位置)を示している。また、図11における「チャック高さ」とは、プローブ36の先端位置(コンタクト位置)を基準位置(0点位置)としたときのウエハチャック34の高さ位置(具体的には、ウエハ保持面34aのZ軸方向の位置)を示している。
(事前動作)
コンタクト動作の事前動作について説明する。
まず、コンタクト動作の事前動作として、これから検査を行う測定部16にアライメント装置70を移動させた後、不図示の位置決め固定装置により位置決め固定した状態で、アライメント装置70にウエハチャック34が受け渡される。なお、コンタクト動作の開始前におけるウエハチャック34の受け渡し動作については、本発明の要部ではないため、詳細な説明を省略する。
(ステップS10:ウエハチャック固定工程)
アライメント装置70にウエハチャック34が受け渡された後、図10(A)に示すように、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をON(開状態)とし、Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72a(図4参照)にウエハチャック34を吸着して固定する(図11の時間T1)。このとき、Z軸移動・回転部72の位置決めピン88をウエハチャック34のVブロック90のV溝内に係合させることで、アライメント装置70とウエハチャック34との相対的な位置決めが行われる。
その後、アライメント装置70に支持固定されたウエハチャック34にウエハWが供給(ロード)されると、ウエハ吸着用電磁弁制御部110は、ウエハ吸着用電磁弁46をON(開状態)とし、ウエハ保持面34a(図4参照)にウエハWを吸着固定する(図11の時間T2)。
(ステップS12:アライメント工程)
次に、X軸移動制御部102、Y軸移動制御部104、及びθ回転制御部108は、全体制御部100による制御の下、針位置検出カメラ及びウエハアライメントカメラにより撮像された結果に基づき、X軸駆動モータ118、Y軸駆動モータ120、回転駆動モータ124を制御して、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。
(ステップS14:シャッタ開工程)
次に、図10(A)に示すように、シャッタ制御部116は、シャッタ手段58を開いて連通路56を開放する(図11の時間T3)。
なお、シャッタ開工程は、少なくとも、後述するZ軸上昇工程においてリング状シール部材48がヘッドステージ30に接触した状態(図10(B)参照)になる前に実行されていればよい。例えば、シャッタ開工程は、ウエハチャック固定工程とアライメント工程との間に行われてもよいし、ウエハチャック固定工程よりも先に行われていてもよい。また、シャッタ開工程は、ウエハチャック固定工程又はアライメント工程と同時に行われてもよい。
(ステップS16:Z軸上昇工程)
次に、図10(B)及び(C)に示すように、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、Z軸移動・回転部72を上昇させることにより、ウエハチャック34をプローブカード32に向かって移動させる(図11の時間T4~T5)。具体的には、ウエハチャック34が所定の高さ位置(待機位置)からリング状シール部材48がヘッドステージ30に接触する高さ位置まで移動するようにウエハチャック34を上昇させ(図10(B)参照)、さらに、少なくともプローブ36の先端位置(コンタクト位置)よりも高い位置までウエハチャック34を上昇させる(図10(C)参照)。これにより、プローブカード32の各プローブ36はオーバードライブの状態でウエハWの各チップの電極パッドに接触する。
Z軸上昇工程において、Z軸移動・回転部72によりウエハチャック34を上昇させる高さとしては、プローブ36の先端位置(コンタクト位置)からプローブカード32の適正オーバードライブ量(適正OD位置)に対して30~70%の高さ位置である。もしくは、ウエハチャック34を上昇させる高さは、適正オーバードライブ量に対して0~70%の高さ位置である。なお、Z軸上昇工程は本発明のウエハチャック移動工程の一例である。
(ステップS18:シャッタ閉工程)
次に、図10(D)に示すように、シャッタ制御部116は、シャッタ手段58を閉じて連通路56を遮断する(図11の時間T6)。これにより、リング状シール部材48によりウエハチャック34とプローブカード32との間に形成された内部空間Rは外部空間と連通しない非連通状態(密閉状態)となる。
(ステップS20:減圧工程)
次に、図10(D)に示すように、圧力制御部115は、減圧用レギュレータ54の動作を制御して内部空間Rの減圧を開始する(図11の時間T7)。このとき、圧力制御部115は、Z軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)によるウエハチャック34の固定が解除された場合にプローブカード32の適正オーバードライブ量(適正OD位置)までウエハチャック34が上昇するような目標圧力を設定し、その目標圧力となるように内部空間Rの内部圧力を調整する。内部空間Rの目標圧力は経験的または実験的に求めてもよいし、設計値から求めてもよい。例えば、目標圧力を決めるためには、プローブカード32の適正オーバードライブ量までウエハチャック34が上昇したときにプローブ36から受ける反力(プローブ36が潰されたときの反力)と、プローブカード32に設けられているプローブ36の総本数とから求めることができる。プローブカード32の総針圧(プローブ36から受ける圧力の合計)が分かれば、リング状シール部材48によって囲まれる面(吸着面)の面積で除算することによって必要な負圧が内部空間Rの目標圧力として求められる。但し、ウエハチャック34の重量とリング状シール部材48とを潰すことによる反力分を加味して内部空間Rの目標圧力を設定することが必要である。なお、減圧工程は本発明の負圧付与工程の一例である。
なお、ステップS20では、目標圧力を設定するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウエハチャック34とヘッドステージ30との間の相対的な高さを検出するセンサを用いて、オーバードライブ量を測定しながら適正オーバードライブ量までフィードバック制御を行ってもよい。
(ステップS22:判断工程)
次に、圧力制御部115は、内部空間Rの内部圧力(圧力値P1)が減圧用レギュレータ54による設定圧力(圧力値P2)に到達したか否かを判断する。この判断は内部圧力(圧力値P1)が設定圧力(圧力値P2)に到達するまで繰り返し行われ、設定圧力(圧力値P2)に到達した場合には次のステップS24に進む。これにより、内部空間Rの内部圧力が設定圧力で安定したところで、後述するウエハチャック固定解除工程(ステップS24)が行われる。なお、内部空間Rの内部圧力は、例えばウエハチャック34又はヘッドステージ30に設けた圧力センサにより内部空間Rの内部圧力を直接検出してもよいし、減圧用レギュレータ54に内蔵又は接続された圧力センサにより検出してもよい。
(ステップS24:ウエハチャック固定解除工程)
次に、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をOFF(閉状態)とし、Z軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)によるウエハチャック34の固定を解除する(図11の時間T9)。
このとき、減圧用レギュレータ54により内部空間Rの内部圧力は設定圧力に調節されているので、Z軸移動・回転部72によるウエハチャック34の固定が解除されると、ウエハチャック34はZ軸移動・回転部72から離脱して、プローブカード32側に引き寄せられる(図11のT9~T10)。これにより、ウエハWとプローブ36の先端の配列面との傾き、及び、プローブ36の先端位置のばらつきなどに影響されることなく、検査するウエハWの各チップの電極パッドとプローブカード32の各プローブ36とが所定の接触圧で確実に接触する。
このように本実施形態では、内部空間Rの減圧が開始された後にウエハチャック34の固定がウエハチャック34の固定が解除されるので、これらの工程の切り替えの瞬間にウエハチャック34がどちら側にも固定されていない状態(フリーな状態)がなくなり、ウエハチャック34の受け渡し動作を安定して行うことができる。
また、本実施形態では、Z軸移動・回転部72の吸引路82とチャック固定用電磁弁84との間を接続する吸引経路には絞り弁86が設けられているため、内部空間Rの減圧が開始された後にウエハチャック34の固定が解除されても、ウエハチャック34の下側(Z軸移動・回転部72側)の負圧が急に失われないようになっている。そのため、ウエハチャック34が上下両側(すなわち、Z軸移動・回転部72とプローブカード32との両側)から引っ張られている状態で急に下側からの拘束(すなわち、Z軸移動・回転部72からの吸着による固定力)がなくなることがないので、ウエハチャック34の急激な移動に伴う異常振動や異常接触を低減できる。したがって、ウエハチャック固定解除工程が行われたときにウエハチャック34がZ軸移動・回転部72から急激に離脱するのを抑制することができるので、ウエハチャック34の受け渡し動作をより安定して行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、一例として、Z軸移動・回転部72の吸引路82とチャック固定用電磁弁84との間を接続する吸引経路に絞り弁86を設けた構成を示したが、Z軸移動・回転部72の吸引口80と吸引装置44との間を接続する経路に絞り弁86が設けられていればよく、例えば、Z軸移動・回転部72の吸引路82に絞り弁86が設けられていてもよい。
(ステップS26:Z軸下降工程)
次に、図10(E)に示すように、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、Z軸移動・回転部72を所定の高さ位置(待機位置)まで下降させる(図11の時間T11~T12)。
以上のようにして、ウエハチャック34がアライメント装置70(Z軸移動・回転部72)からヘッドステージ30(プローブカード32側)に受け渡されると、プローブカード32の各プローブ36は均一な接触圧でウエハWの各チップの電極パッドに接触した状態となり、ウエハレベル検査を開始可能な状態となる。その後、テストヘッドから各プローブ36を介してウエハWの各チップに電源及びテスト信号が供給され、各チップから出力される信号を検出して電気的な動作検査が行われる。
なお、ウエハチャック34がアライメント装置70(Z軸移動・回転部72)からヘッドステージ30(プローブカード32側)に受け渡された後、アライメント装置70は他の測定部16に移動し、その測定部16において同様の手順でコンタクト動作が行われ、ウエハレベル検査が順次行われる。
以上により、第1の実施形態に係るプローバ10におけるコンタクト動作が終了する。
次に、第1の実施形態のプローバ10においてウエハレベル検査が終了した後に行われるリリース動作(プローブ検査方法の一例)について、図12~図14を参照して説明する。
図12は、第1の実施形態のプローバ10におけるリリース動作を示したフローチャートである。図13は、第1の実施形態のプローバ10におけるリリース動作を説明するための図である。図14は、第1の実施形態のプローバ10におけるリリース動作を示したタイミングチャート図である。
(ステップS30:Z軸上昇工程)
まず、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、図13(A)に示すように、Z軸移動・回転部72を所定の高さ位置からウエハチャック34を受け取り可能な高さ位置(チャック受け取り高さ)まで上昇させる(図14の時間T1~T2)。
なお、Z軸移動・回転部72がチャック受け取り高さまで上昇し、かつウエハチャック34がリリース位置に移動したときのウエハチャック34とZ軸移動・回転部72との位置関係としては、図13(A)に示すように、位置決めピン88がVブロック(位置決め溝)90に嵌合しない状態であり、かつリング状シール部材78がウエハチャック34の下面に接触する状態であることが好ましい。後述するチャックリリース工程が行われる前に、リング状シール部材78をウエハチャック34の下面に接触させておくことで、ウエハチャック34のリリース時の衝撃をリング状シール部材78で効果的に吸収することが可能となる。
(ステップS32:チャックリリース工程)
次に、シャッタ制御部116は、シャッタ手段58を制御して連通路56を開放する。これにより、外部空間から内部空間Rにエアが流入して内部空間Rの圧力が上昇し、ウエハチャック34がリリースされる(図14の時間T4)。
本実施形態において、ウエハW及びプローブ36を損傷させないためには、ウエハチャック34が不安定状態でいる時間を極力短くすることが必要であり、そのためにはウエハチャック34のリリース速度が内部空間Rを大気開放または微小加圧により真空破壊する場合に比べて十分に速いことが望ましい。そのため、目標リリース速度は、プローブカード32やプローブ36、ウエハWの種類等により異なるが、一例として10mm/sec以上とするのが好適であることが実験により確かめられている。
本実施形態では、プローブカード32側からウエハチャック34が予め設定した目標リリース速度でリリースされるように、連通路56の有効断面積が調整されている。以下に、連通路56の有効断面積の計算方法について説明する。
ウエハチャック34をリリースするときの移動距離をy(mm)、ウエハチャック34をリリースするときの速度をv(mm/sec)、リング状シール部材48により囲まれる領域の面積(以下、シール面積という。)をA(mm2)、プローブカード32からウエハチャック34に加えられる荷重をF(kgf)(適正OD位置)、ウエハチャック34の重量をm(kgf)、温度をt(℃)(最高使用温度)とする。
すると、ウエハチャック34をリリースするときの内部空間Rにおける容積の変化量はA×y(mm3)、ウエハチャック34をリリースするために要する時間はy/v(sec)で表される。なお、ここでは、ウエハチャック34をリリースするときの速度vに到達するまでの加速度については考慮しないものとする。
ウエハチャック34をリリースするときに、ウエハチャック34、プローブカード32及びリング状シール部材48により囲まれた内部空間Rに流れ込むエアの単位時間当たりの流量(最大流量)Qは、下記の式(1)により求められる。
一方、ウエハチャック34の吸着圧力Pは、下記の式(2)により求められる。ここで、gは、重力加速度である。
P=-(F+m)×g/A (MPa) …(2)
外部空間から内部空間Rに至るエアの流れがどの場所でも音速よりも小さい亜音速流れであるとした場合、連通路56の有効断面積Sは、下記の式(3)により求められる。
一例として、y=400μm、v=10mm/sec、A=106940mm2、F=20kgf(適正OD位置から100μmの位置における値)、m=10kgf、t=150℃とすると、S=20mm2となる。したがって、この場合に、v≧10mm/secとするために、必要な有効断面積Sは、S≧20mm2となる。
上記の条件の下で、チャックリリース速度と必要な有効断面積の関係は図15に示したグラフのようになる。図15に示すように、ウエハチャック34のリリース速度と連通路56の有効断面積との間には、例えば一定の相関関係(比例関係)がある。これらの関係(リリース速度‐有効断面積特性)は予め実験により求めることができる。したがって、予め求めたリリース速度‐有効断面積特性を用いて目標リリース速度から連通路56の有効断面積Sを求めることができる。なお、リリース速度‐有効断面積特性は、個々のプローバにより異なるものであり、プローバ毎に求めておくことが好ましい。
なお、図6に示す例では、ウエハチャック34の周縁部に並列に4つ設けられている。この場合、合成有効断面積Sは、各連通路56の有効断面積Si(i=1~n、n=4)とすると、下記の式(4)により求められる。
S=S1+S2+…+Sn …(4)
ここで、各連通路56の有効断面積Siは等しくすることが好ましい。なお、有効断面積Siを等しくすることは必須ではない。内部空間R内の圧力分布に起因して、リリース時にウエハチャック34に傾きが生じないようにするためには、例えば、各連通路56のウエハチャック34の中心に対して対向する位置にある連通路56の有効断面積Siが互いに等しくなるようにすればよい。すなわち、ウエハチャック34の中心に対して点対称の位置にある連通路56の有効断面積Siが等しくなるようにしてもよい。
これにより、十分に速いリリース速度でプローブカード32側からウエハチャック34がリリースされる。そして、プローブカード32側からリリースされたウエハチャック34はZ軸移動・回転部72に支持される。
ウエハチャック34のリリースが行われた後、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をON(開状態)とし、Z軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)を介してウエハチャック34を固定する(図14の時間T5)。なお、吸引口80による吸引(負圧の付与)はウエハチャック34をリリースする前に開始されていてもよい。ウエハチャック34のリリースが行われる前にアライメント装置70とウエハチャック34との間の空間を大気圧よりも低い負圧にしておくことで、ウエハチャック34のリリース速度を向上させる効果が得られる。
(ステップS34:Z軸下降工程)
次に、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、図13(C)に示すように、Z軸移動・回転部72を下降させることにより、ウエハチャック34を所定の高さ位置(待機高さ位置)に変更する(図14の時間T6~T7)。ステップS34では、シャッタ手段58により連通路56を閉塞するようにしてもよい。
以上により、第1の実施形態に係るプローバ10におけるリリース動作が終了する。
次に、第1の実施形態の効果について説明する。
第1の実施形態におけるリリース動作では、圧力制御部115によって、プローブカード32側からウエハチャック34が目標リリース速度でリリースされるように、連通路56の有効断面積が調整されている。これにより、内部空間Rを大気開放又は微小加圧により真空破壊する場合に比べて十分に速いリリース速度でプローブカード32側からウエハチャック34がリリースされる。その結果、ウエハチャック34が不安定状態でいる時間をなくすことができ、ウエハWやプローブ36の損傷を防止することが可能となる。
また、第1の実施形態におけるコンタクト動作では、Z軸移動・回転部72によりウエハチャック34を上下(Z方向)に移動させることによって、ウエハW上の電極パッドとプローブ36とをオーバードライブの状態で接触させる動作が行われる。このZ軸移動・回転部72は、少なくともモータ(Z軸駆動モータ122)を含む機械的駆動機構により構成されるため、ウエハチャック34の移動距離や移動速度等を精度よく調整することが可能である。また、Z軸移動・回転部72は、従来技術のように真空吸着方式によるコンタクト動作に比べて十分に速い移動速度でウエハチャック34を移動させることができる。したがって、ウエハW上の電極パッドとプローブ36とを接触させる際に、電極パッド上の酸化膜(絶縁体)をプローブ36の接触によって除去することが可能となり、ウエハWにダメージを与えない状態で、ウエハW上の電極パッドとプローブ36との間で良好なコンタクトを実現することができる。
また、第1の実施形態では、内部空間Rの減圧を開始するタイミング(第1タイミング;図11の時間T7)よりも遅いタイミング(第2タイミング;図11の時間T9)でZ軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)によるウエハチャック34の固定が解除されるので、これらの工程の切り替えの瞬間にウエハチャック34がどちら側にも固定されていない不安定な状態(フリーな状態)がなくなり、ウエハチャック受け渡し動作を安定して行うことができる。なお、上記制御は、本発明のタイミング制御手段として機能する全体制御部100の制御の下、圧力制御部115とチャック固定用電磁弁制御部112とが連携して制御することによって実現される。
また、第1の実施形態では、少なくともウエハチャック34のリング状シール部材48がヘッドステージ30に接触した状態(図10(B)参照)となる前にシャッタ開工程(ステップS12)が行われる。すなわち、Z軸上昇工程(ステップS14)において、リング状シール部材48がヘッドステージ30に接触した状態(図10(B)参照)からさらにウエハチャック34を上昇させた状態(図10(C)参照)となるまでの間は、内部空間Rは連通路56を介して外部空間と連通した連通状態(非密閉状態)となっている。
ここで、内部空間Rが外部空間と連通しない非連通状態(密閉状態)でZ軸移動・回転部72によりウエハチャック34を上昇させようとした場合、ウエハチャック34の上昇に伴って内部空間R内の空気が瞬間的に圧縮されて強い反力が発生し、この反力によりヘッドステージ30が振動してしまい、プローブカード32とウエハWとが意図しない形で接触する可能性がある。この場合、プローブカード32とウエハWとの異常接触により、プローブカード32やウエハWが破損してしまう恐れがある。
これに対し、第1の実施形態では、上述したように内部空間Rが外部空間と連通した連通状態(非密閉状態)でZ軸移動・回転部72によるウエハチャック34の上昇が行われるので、ウエハチャック34を上昇させる際に無理な反力(ウエハチャック34を元に戻そうとする反力)が生じることなく、ウエハチャック34を安定かつ効率的に上昇させることができ、プローブカード32やウエハWの破損を防ぐことができる。
また、第1の実施形態では、Z軸移動・回転部72の吸引口80に接続される経路には気体の流量を制限する絞り弁86が設けられているので、チャック固定用電磁弁84をOFFした場合(大気開放時)にウエハチャック34がZ軸移動・回転部72から急激に離脱するのを抑制することができ、ウエハチャック34の受け渡し動作をより安定して行うことが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。以下、上述した実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
第1の実施形態におけるコンタクト動作では、内部空間Rの減圧を開始するタイミングよりも遅いタイミングでZ軸移動・回転部72によるウエハチャック34の固定が解除されるようになっているが、ウエハチャック34の固定が解除されると、ウエハチャック34がZ軸移動・回転部72から離脱し、ウエハチャック34はプローブカード32に向かって引き寄せられるように移動する。このとき、ウエハチャック34は、ウエハW上の電極パッドとプローブ36との接触圧(すなわち、プローブカード32の針圧)のみによって水平方向(X、Y方向)への移動が規制されるため、減圧工程が行われる際に、外部から振動等の外乱を受けると、ウエハチャック34に水平方向の位置ずれや傾きが生じやすく、ウエハチャック34が鉛直方向(Z方向)に沿って真っすぐ上昇しない可能性がある。
また、第1の実施形態におけるリリース動作においても同様な問題がある。すなわち、内部空間Rの加圧によってウエハチャック34がプローブカード32側からリリースされるとき、ウエハチャック34は、ウエハW上の電極パッドとプローブ36との接触圧(すなわち、プローブカード32の針圧)のみによって水平方向(X、Y方向)への移動が規制されるため、ウエハチャック34のリリースが行われる際に、外部から振動等の外乱を受けると、ウエハチャック34に水平方向の位置ずれや傾きが生じやすく、ウエハチャック34が鉛直方向(Z方向)に沿って真っすぐ下降しない可能性がある。
そこで、第2の実施形態では、ウエハチャック34のコンタクト動作やリリース動作において、外乱に対する安定性を向上させるために、以下のような構成を備えている。
図16は、第2の実施形態に係るプローバ10の構成を示した概略図である。
第2の実施形態に係るプローバ10は、図16に示すように、ウエハチャック34のコンタクト動作やリリース動作において、外乱に対する安定性を向上させるための構成として、ウエハチャック34をZ方向(鉛直方向)に案内するチャックガイド機構200を備えている。チャックガイド機構200はガイド手段の一例である。
チャックガイド機構200は、ウエハチャック34の周縁部、具体的にはウエハチャック34と一体化されたチャックガイド保持部35の外周部の周方向にわたって複数並列に設けられている。チャックガイド機構200は、ウエハチャック34のコンタクト動作やリリース動作が行われる前に、後述するチャックガイド204をヘッドステージ30に真空吸着して固定することで、ウエハチャック34の水平方向の移動を規制しつつZ方向に平行に移動させるガイド機構として機能する。そのため、ウエハチャック34(チャックガイド保持部35)にはウエハチャック34の移動方向(Z方向)に直交する水平方向(X、Y方向)において互いに異なる位置に少なくとも3つのチャックガイド機構200が設けられる。なお、本例では、図示を省略したが、チャックガイド保持部35には4つのチャックガイド機構200が周方向に沿って等間隔(90度毎)に設けられる(図16では2つのみ図示)。
ここで、チャックガイド機構200の構成について詳しく説明する。
チャックガイド機構200は、チャックガイド保持部35に形成された軸受部202と、軸受部202によりX、Y方向(水平方向)の移動が規制された状態でZ方向(鉛直方向)に移動可能に構成されたチャックガイド(ガイド軸部)204とを有する。軸受部202は、例えばボールベアリング等で構成される。
チャックガイド204は軸受部202に回転自在に軸支され、その上部には、ヘッドステージ30に対してチャックガイド204を着脱自在に固定する固定部206を備えている。固定部206の上面にはリング状のシール部材(以下、「チャックガイドシールゴム」という。)208が設けられるとともに、チャックガイドシールゴム208の内側には、図示しない吸引経路に接続される吸引口(不図示)と、固定部206とヘッドステージ30との間の距離(間隙)を一定に保つためのクリアランス保持部材210とが設けられている。クリアランス保持部材210は、固定部206とヘッドステージ30との間に一定の間隙を保つことができるものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
次に、第2の実施形態に係るプローバ10におけるコンタクト動作(プローブ検査方法の一例)について説明する。図17は、第2の実施形態に係るプローバ10におけるコンタクト動作を説明するための図である。
まず、第1の実施形態と同様にして、ウエハチャック固定工程、アライメント工程、シャッタ開工程が順次行われた後、Z軸上昇工程が行われる。
Z軸上昇工程では、Z軸移動・回転部72によりウエハチャック34がプローブカード32に向かって移動(上昇)し、これによって、図17(A)に示すように、プローブカード32の各プローブ36がオーバードライブの状態でウエハWの各チップの電極パッドに接触する。また、このとき、チャックガイドシールゴム208は、ウエハチャック34のプローブカード32への移動に伴ってヘッドステージ30の下面に接触する。
次に、図示しない吸引口及び吸引経路を介して吸引装置44により、チャックガイドシールゴム208、ヘッドステージ30、及び固定部206の内部に形成された内部空間Qを減圧すると、チャックガイド204が上方(ヘッドステージ30側)に向かって上昇してチャックガイド204の固定部206がヘッドステージ30に吸着して固定された状態となる(図17(B)参照)。このとき、上述したクリアランス保持部材210によりヘッドステージ30との間に一定の間隙が確保されるので、チャックガイド204の固定部(吸着部)206による吸着し過ぎが抑制され、ヘッドステージ30に固定されたチャックガイド204の傾きを防止することができる。
このようにしてチャックガイド204がヘッドステージ30に吸着固定された後、第1の実施形態と同様にして、シャッタ閉工程、減圧工程、判断工程が順次行われ、さらにウエハチャック固定解除工程が行われる。
ウエハチャック固定解除工程では、Z軸移動・回転部72によるウエハチャック34の固定が解除されると、ウエハチャック34はZ軸移動・回転部72から離脱して内部空間Rの減圧によりウエハチャック34をプローブカード32に向かって引き寄せられるように移動する。このとき、ヘッドステージ30に固定されたチャックガイド204によりウエハチャック34はX、Y方向の移動が規制されつつZ方向に案内されて移動する(図17(C)参照)。
以上により、第2の実施形態に係るプローバ10におけるコンタクト動作が終了する。
次に、第2の実施形態に係るプローバ10におけるリリース動作(プローブ検査方法の一例)について説明する。図18は、第2の実施形態に係るプローバ10におけるリリース動作を説明するための図である。
まず、第1の実施形態と同様にして、Z軸上昇工程が行われた後、チャックリリース工程が行われる。
チャックリリース工程では、シャッタ制御部116は、シャッタ手段58を制御して連通路56を開放する。これにより、外部空間から内部空間Rにエアが流入して内部空間Rの圧力が上昇し、ウエハチャック34が十分に速いリリース速度でプローブカード32側からリリースされる。このとき、図18(B)に示すように、ウエハチャック34はチャックガイド204によりX、Y方向の移動が規制されつつZ方向に案内されて下降して、Z軸移動・回転部72に支持される。
その後、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をON(開状態)とし、Z軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)を介してウエハチャック34を固定する。
次に、チャックガイドリリース工程として、チャックガイドシールゴム208、ヘッドステージ30、及び固定部206の内部に形成された内部空間Qを大気開放又は微小加圧により真空破壊する。これにより、図18(C)に示すように、ヘッドステージ30に対するチャックガイド204の吸着が解除される。
その後、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、Z軸移動・回転部72を下降させる。
以上により、第2の実施形態に係るプローバ10におけるリリース動作が終了する。
このように第2の実施形態によれば、チャックガイド204(固定部206)をヘッドステージ30に真空吸着により固定した状態でウエハチャック34をチャックガイド204に沿ってZ方向に案内するチャックガイド機構200を備えたので、ウエハチャック34のコンタクト動作やリリース動作において、ウエハチャック34の受け渡しを行う際に、ウエハチャック34の位置ずれや傾きを防止することができる。したがって、ウエハチャック34の構成部品による偏荷重による傾きや位置ずれを防止することができ、プローブカード32とウエハWとの平行度を保った状態でウエハチャック34の受け渡し動作を安定して行うことが可能となり、ウエハW上の電極パッドとプローブ36との間で良好なコンタクトを実現することが可能となる。
なお、第2の実施形態では、チャックガイド機構200の固定方式として、真空吸着による固定方式を示したが、ヘッドステージ30にチャックガイド204を着脱自在に固定できるものであれば周知の様々な方式を採用でき、クランプ等による機械的な方式であってもかまわない。
また、第2の実施形態では、チャックガイド機構200をウエハチャック34側に設けてヘッドステージ30側にチャックガイド204(固定部206)を吸着させる構成を示したが、チャックガイド機構200をヘッドステージ30側に設けてウエハチャック34側にチャックガイド204(固定部206)を吸着させる構成としてもよい。
以上、本発明に係るプローバ及びプローブ検査方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。