以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1及び図2は、本実施形態のプローバ10の全体構成を示した外観図と平面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態のプローバ10は、検査するウエハW(図4参照)を供給及び回収するローダ部14と、ローダ部14に隣接して配置された測定ユニット12とを備えている。測定ユニット12は、複数の測定部16を有しており、ローダ部14から各測定部16にウエハWが供給されると、各測定部16でそれぞれウエハWの各チップの電気的特性の検査(ウエハレベル検査)が行われる。そして、各測定部16で検査されたウエハWはローダ部14により回収される。なお、プローバ10は、操作パネル22、後述する制御装置60(図5参照)等も備えている。
ローダ部14は、ウエハカセット20が載置されるロードポート18と、測定ユニット12の各測定部16とウエハカセット20との間でウエハWを搬送する搬送ユニット24とを有する。搬送ユニット24は、図示しない搬送ユニット駆動機構を備えており、X、Z方向に移動可能に構成されるとともに、θ方向(Z方向周り)に回転可能に構成されている。また、搬送ユニット24は、上記搬送ユニット駆動機構により前後に伸縮自在に構成された搬送アーム26を備えている。搬送アーム26の上面部には図示しない吸着パッドが設けられており、搬送アーム26は、この吸着パッドでウエハWの裏面を真空吸着してウエハWを保持する。これにより、ウエハカセット20内のウエハWは、搬送ユニット24の搬送アーム26によって取り出され、その上面に保持された状態で測定ユニット12の各測定部16に搬送される。また、検査の終了した検査済みのウエハWは逆の経路で各測定部16からウエハカセット20に戻される。
図3は、本実施形態のプローバ10における測定ユニット12の構成を示した概略図である。図4は、図3に示した測定ユニット12における測定部16の構成を示した概略図である。
図3に示すように、測定ユニット12は、複数の測定部16が多段状に積層された積層構造(多段構造)を有しており、各測定部16はX方向及びZ方向に沿って2次元的に配列されている。本実施形態では、一例として、X方向に4つの測定部16がZ方向に3段積み重ねられている。
測定ユニット12は、複数のフレームを格子状に組み合わせた格子形状を有する筐体(不図示)を備えている。この筐体は、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれ延びる複数のフレームを格子状に組み合わせて形成されたものであり、これらのフレームにより形成された各空間部にそれぞれ測定部16の構成要素が配置される。
各測定部16は、いずれも同一の構成を有しており、図4に示すように、ヘッドステージ30と、プローブカード32と、ウエハチャック34とを備えている。また、各測定部16には、それぞれ、図示しないテストヘッドが設けられている。なお、テストヘッドは、図示しないテストヘッド保持部によりヘッドステージ30の上方に支持されている。
ヘッドステージ30は、筐体の一部を構成するフレーム部材(不図示)に支持されており、プローブカード32が着脱自在に装着固定される。ヘッドステージ30に装着固定されたプローブカード32は、ウエハチャック34のウエハ保持面34aと対向するように設けられる。なお、プローブカード32は、検査するウエハW(デバイス)に応じて交換される。
プローブカード32には、検査するウエハWの各チップの電極パッドの位置に対応して配置された、カンチレバーやスプリングピン等の複数のプローブ36が設けられている。各プローブ36は、図示しないテストヘッドの端子に電気的に接続され、テストヘッドから各プローブ36を介して各チップに電源及びテスト信号が供給されると共に各チップからの出力信号をテストヘッドで検出して正常に動作するかを測定する。なお、プローブカード32とテストヘッドとの接続構成については、本発明の要部ではないため、詳細な説明を省略する。
プローブ36は、バネ特性を有し、プローブ36の先端位置より接触点を上昇させることにより、電極パッドに所定の接触圧で接触する。また、プローブ36は、電気的検査を行うときに、電極パッドがオーバードライブの状態で接触されると、プローブ36の先端が電極パッドの表面にのめり込み、その電極パッドの表面にそれぞれ針跡を形成するようになっている。なお、オーバードライブとは、ウエハWとプローブ36の先端の配列面との傾き、及び、プローブ36の先端位置のばらつきなどを考慮して、電極パッドとプローブ36が確実に接触するように、プローブ36の先端位置より高い位置まで電極パッド、すなわちウエハWの表面を距離αだけ上昇させた状態をいう。また、プローブ36の先端位置(コンタクト位置)からウエハWの表面を更に上昇させる移動量、すなわち上記距離αをオーバードライブ量と称する。
ウエハチャック34は、ウエハWを真空吸着して固定する。ウエハチャック34は、検査するウエハWが載置されるウエハ保持面34aを有しており、ウエハ保持面34aには複数の吸引口40が設けられている(図4では1つのみ図示)。吸引口40は、ウエハチャック34の内部に形成された吸引路42を介して真空ポンプなどの吸引装置(真空源)44に接続されている。吸引装置44と吸引路42との間を接続する吸引経路にはウエハ吸着用電磁弁46が設けられている。なお、ウエハ吸着用電磁弁46はウエハ吸着用電磁弁制御部110(図5参照)により制御される。
ウエハチャック34のウエハ保持面34aよりも外側には、ウエハ保持面34aに保持されたウエハWを取り囲むように形成された弾性を有するリング状シール部材(チャックシールゴム)48が設けられている。後述するZ軸移動・回転部72によりウエハチャック34をプローブカード32に向かって移動(上昇)させたときに、リング状シール部材48がヘッドステージ30の下面に接触することで、ウエハチャック34、プローブカード32、及びリング状シール部材48により囲まれた内部空間S(図7参照)が形成される。なお、リング状シール部材48は本発明の環状のシール部材の一例である。
ヘッドステージ30には、プローブカード32とウエハチャック34との間に形成された内部空間Sを減圧するための吸引口50が設けられている。吸引口50は、ヘッドステージ30の内部に形成された吸引路52を介して吸引装置44に接続されている。吸引装置44と吸引路52との間を接続する吸引経路には真空電空レギュレータ54が設けられている。真空電空レギュレータ54は内部空間Sの内部圧力(真空度)を調節する制御弁である。なお、真空電空レギュレータ54は後述する吸引制御部114(図5参照)により制御される。真空電空レギュレータ54は本発明の減圧手段の一例である。
ウエハチャック34の内部には、検査するウエハWを高温状態(例えば、最高で150℃)、又は低温状態(例えば最低で-40℃)で電気的特性の検査が行えるように、加熱/冷却源としての加熱冷却機構(不図示)が設けられている。加熱冷却機構としては、公知の適宜の加熱器/冷却器が採用できるものであり、例えば、面ヒータの加熱層と冷却流体の通路を設けた冷却層との二重層構造にしたものや、熱伝導体内に加熱ヒータを巻き付けた冷却管を埋設した一層構造の加熱/冷却装置など、様々のものが考えられる。また、電気加熱ではなく、熱流体を循環させるものでもよく、またペルチエ素子を使用してもよい。
ウエハチャック34は、後述するアライメント装置70に着脱自在に支持固定される。アライメント装置70は、ウエハチャック34をX、Y、Z、θ方向に移動することで、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。
アライメント装置70は、ウエハチャック34を着脱自在に支持固定してウエハチャック34をZ軸方向に移動すると共にZ軸を回転中心としてθ方向に回転するZ軸移動・回転部72と、Z軸移動・回転部72を支持してX軸方向に移動するX軸移動台74と、X軸移動台74を支持してY軸方向に移動するY軸移動台76とを備えている。
Z軸移動・回転部72、X軸移動台74、及びY軸移動台76は、それぞれ、少なくともモータを含む機械的な駆動機構によりウエハチャック34を所定の方向に移動自在もしくは回転自在に構成される。機械的な駆動機構としては、例えば、サーボモータとボールネジとを組み合わせたボールネジ駆動機構により構成される。また、ボールネジ駆動機構に限らず、リニアモータ駆動機構やベルト駆動機構等で構成されていてもよい。なお、Z軸移動・回転部72、X軸移動台74、及びY軸移動台76は、後述する各制御部によりウエハチャック34の移動距離、移動方向、移動速度、加速度を変更可能に構成されている。本実施形態では、具体的には次のような構成を有する。
Z軸移動・回転部72は、本発明の機械的昇降手段の一例であり、ウエハチャック34をZ軸方向に移動させるためのZ軸駆動モータ122(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図5参照)と、ウエハチャック34のZ軸方向への移動距離を検出するためのZ軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダやリニアスケール等)(不図示)とを備えている。Z軸駆動モータ122は、後述するZ軸移動制御部106(図5参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、Z軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
また、Z軸移動・回転部72は、ウエハチャック34をθ方向に回転させるための回転駆動モータ124(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図5参照)と、ウエハチャック34のθ方向への回転角度を検出するための回転エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダ等)(不図示)とを備えている。回転駆動モータ124は、後述するθ回転制御部108(図5参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の回転速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、回転エンコーダは、ウエハチャック34の回転に応じてエンコーダ信号を出力する。
X軸移動台74は、ウエハチャック34をX軸方向に移動させるためのX軸駆動モータ118(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図5参照)と、ウエハチャック34のX軸方向への移動距離を検出するためのX軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダやリニアスケール等)(不図示)とを備えている。X軸駆動モータ118は、後述するX軸移動制御部102(図5参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、X軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
Y軸移動台76は、ウエハチャック34をY軸方向に移動させるためのY軸駆動モータ120(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、リニアモータ等)(図5参照)と、ウエハチャック34のY軸方向への移動距離を検出するためのY軸エンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダやリニアスケール等)(不図示)とを備えている。Y軸駆動モータ120は、後述するY軸移動制御部104(図5参照)からのモータ制御信号に基づき制御され、ウエハチャック34を所望の移動速度または加速度で目標位置に移動させるように駆動する。また、Y軸エンコーダは、ウエハチャック34の移動に応じてエンコーダ信号を出力する。
アライメント装置70は、それぞれの段毎に設けられており(図3参照)、図示しないアライメント装置駆動機構によって、各段に配置された複数の測定部16間で相互に移動可能に構成されている。すなわち、アライメント装置70は、同一の段に配置される複数(本例では4つ)の測定部16間で共有されており、同一の段に配置された複数の測定部16間を相互に移動する。各測定部16に移動したアライメント装置70は図示しない位置決め固定装置により所定位置に位置決めされた状態で固定され、ウエハチャック34をX、Y、Z、θ方向に移動させて、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。なお、図示は省略したが、アライメント装置70は、ウエハチャック34に保持されたウエハWの各チップの電極パッドとプローブ36との相対的な位置関係を検出するために、針位置検出カメラと、ウエハアライメントカメラとを備えている。また、アライメント装置駆動機構としては、ボールネジ駆動機構、リニアモータ駆動機構、ベルト駆動機構等の機械的な駆動機構により構成される。
アライメント装置70の上面を構成するZ軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aには、外周に沿って環状に形成された弾性を有するリング状シール部材(Z軸シールゴム)78が設けられる。また、ウエハチャック支持面72aのリング状シール部材78の内側には吸引口80が設けられている。吸引口80は、ウエハチャック34の内部に形成された吸引路82を介して吸引装置44に接続されている。吸引装置44と吸引路82との間を接続する吸引経路には、吸引装置44側から順に、チャック固定用電磁弁84、と、絞り弁86とが設けられている。なお、チャック固定用電磁弁84は後述するチャック固定用電磁弁制御部112(図5参照)により制御される。
Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72aのリング状シール部材78の外側には、アライメント装置70に対するウエハチャック34の相対的な位置関係が常に一定となるように位置決めピン88が設けられている。この位置決めピン88は、ウエハチャック34の中心軸を中心とする周方向に沿って等間隔に3箇所に設けられている(図4においては2つのみを図示)。ウエハチャック34の下面には各位置決めピン88にそれぞれ対応する位置に位置決め部材であるVブロック90が設けられている。ウエハチャック34を真空吸着により吸着して固定する際には、各Vブロック90のV溝内にそれぞれ対応する位置決めピン88を係合させることで、ウエハチャック34の水平方向(X方向及びY方向)の動きを拘束して、アライメント装置70とウエハチャック34との相対的な位置決めが行われる。
なお、本実施形態では、アライメント装置70は、ウエハチャック34を真空吸着して固定するが、ウエハチャック34を固定できるものであれば、真空吸着以外の固定手段でもよく、例えば機械的手段等で固定するようにしてもよい。
本実施形態におけるプローバ10は、上記構成に加え、さらに距離センサ(測長センサ)38を備えている。距離センサ38は、本発明の高さ位置検出手段の一例であり、ウエハチャック34の高さ位置(Z方向の位置)を検出する。距離センサ38としては、ウエハチャック34の高さ位置を検出できれば、接触式のもの、非接触式のものを問わず各種のセンサを利用することができるが、測定対象のウエハチャック34の高さ位置に影響を与えない非接触式のセンサが望ましい。非接触式のセンサとしては、レーザーや超音波を用いた非接触式の距離センサ(例えば、レーザー測長センサ等)が好適に用いられる。本実施形態における距離センサ38は非接触式の距離センサであり、Z軸移動・回転部72のセンサ取付部に取り付けられている。この距離センサ38は、距離センサ38からウエハチャック34までの距離を測定することによりウエハチャック34の高さ位置(Z軸方向の位置)を検出する。
なお、距離センサ38の配置場所については本実施形態に特に限定されるものではなく、例えば、ヘッドステージ30側(例えば、ヘッドステージ30やプローブカード32等)に配置されていてもよい。
図5は、本実施形態のプローバ10の制御装置60の構成を示した機能ブロック図である。
制御装置60は、プローバ10の各部の動作や加工に必要なデータの記憶等を行う。制御装置60は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものである。
制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置60では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、図5に示した制御装置60内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。
図5に示すように、制御装置60は、全体制御部100、X軸移動制御部102、Y軸移動制御部104、Z軸移動制御部106、θ回転制御部108、ウエハ吸着用電磁弁制御部110、チャック固定用電磁弁制御部112、及び吸引制御部114等を備えている。
全体制御部100は、プローバ10を構成する各部を統括的に制御する。具体的には、全体制御部100は、検査するウエハWの各チップの電極パッドとプローブカード32の各プローブ36とを接触させる動作(コンタクト動作)の制御を行う。また、全体制御部100は、コンタクト動作の他に、各測定部16の間でアライメント装置70を相互に移動させる移動制御や、テストヘッドによるウエハレベル検査の動作の制御などを行う。なお、コンタクト動作以外の制御については、本発明の特徴的部分ではないため、詳細な説明を省略する。
X軸移動制御部102は、X軸移動台74に設けられるX軸駆動モータ118の駆動を制御することでX軸移動台74をX軸方向に移動させることにより、ウエハチャック34をX軸方向に移動させる。Y軸移動制御部104は、Y軸移動台76に設けられるY軸駆動モータ120の駆動を制御することでY軸移動台76をY軸方向に移動させることにより、ウエハチャック34をY軸方向に移動させる。Z軸移動制御部106は、Z軸移動・回転部72に設けられるZ軸駆動モータ122の駆動を制御することでZ軸移動・回転部72を昇降させることにより、ウエハチャック34をZ軸方向に移動させる。θ回転制御部108は、Z軸移動・回転部72に設けられる回転駆動モータ124の駆動を制御することでZ軸移動・回転部72をθ方向に回転させることにより、ウエハチャック34をθ方向に回転させる。
ウエハ吸着用電磁弁制御部110は、ウエハ吸着用電磁弁46のON/OFF(開/閉)を制御することで、吸引口40による吸引圧を調整し、ウエハチャック34に対するウエハWの固定/非固定を選択的に切り替える。
チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84のON/OFF(開/閉)を制御することで、吸引口80による吸引圧を調整し、Z軸移動・回転部72に対するウエハチャック34の固定/非固定を選択的に切り替える。
吸引制御部114は、真空電空レギュレータ54の動作を制御することで、内部空間Sの内部圧力(真空度)を無段階に調節する。
さらに、本実施形態における全体制御部100は、オーバードライブ量算出部115を備えている。オーバードライブ量算出部115は、本発明のオーバードライブ量算出手段として機能するものであり、プローブカード32の各プローブ36とウエハWの各チップの電極パッドとが接触する際のオーバードライブ量を算出する。
また、全体制御部100には、距離センサ38が接続されている。距離センサ38は、上述したように、ウエハチャック34の高さ位置(Z方向の位置)を検出するものである。距離センサ38の検出結果は制御装置60の記憶装置(不図示)に記憶される。なお、記憶装置は、例えばRAMまたはHDDなどの読み書き可能な記憶装置により構成される。
オーバードライブ量算出部115は、距離センサ38の検出結果を上述の記憶装置から取得する。そして、オーバードライブ量算出部115は、距離センサ38の検出結果に基づいてオーバードライブ量を算出する。なお、オーバードライブ量の算出方法については後述する。
次に、本実施形態のプローバ10におけるコンタクト動作(プローブ検査方法の一例)について、図6~図8を参照して説明する。なお、この動作は全体制御部100による制御の下で行われる。
図6は、本実施形態のプローバ10におけるコンタクト動作を示したフローチャートである。図7は、本実施形態のプローバ10におけるコンタクト動作を説明するための図である。図8は、本実施形態のプローバ10におけるコンタクト動作が行われるときの内部空間Sの内部圧力(負圧)とウエハチャック34の高さ位置との関係の一例を示した図である。
(事前動作)
コンタクト動作の事前動作について説明する。
まず、コンタクト動作の事前動作として、これから検査を行う測定部16にアライメント装置70を移動させた後、不図示の位置決め固定装置により位置決め固定した状態で、アライメント装置70にウエハチャック34が受け渡される。なお、コンタクト動作の開始前におけるウエハチャック34の受け渡し動作については、本発明の要部ではないため、詳細な説明を省略する。
アライメント装置70にウエハチャック34が受け渡された後、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をON(開状態)とし、Z軸移動・回転部72のウエハチャック支持面72a(図4参照)にウエハチャック34を吸着して固定する。このとき、Z軸移動・回転部72の位置決めピン88をウエハチャック34のVブロック90のV溝内に係合させることで、アライメント装置70とウエハチャック34との相対的な位置決めが行われる。
その後、アライメント装置70に支持固定されたウエハチャック34にウエハWが供給(ロード)されると、ウエハ吸着用電磁弁制御部110は、ウエハ吸着用電磁弁46をON(開状態)とし、ウエハ保持面34a(図4参照)にウエハWを吸着固定する。
(ステップS10:アライメント工程)
次に、X軸移動制御部102、Y軸移動制御部104、及びθ回転制御部108は、全体制御部100による制御の下、針位置検出カメラ及びウエハアライメントカメラにより撮像された結果に基づき、X軸駆動モータ118、Y軸駆動モータ120、回転駆動モータ124を制御して、ウエハチャック34に保持されたウエハWとプローブカード32との相対的な位置合わせを行う。
(ステップS12:Z軸上昇工程)
次に、図7の符号500A及び500Bに示すように、Z軸移動制御部106は、Z軸駆動モータ122を制御して、Z軸移動・回転部72を上昇させることにより、リング状シール部材48がヘッドステージ30の下面に接触する高さ位置までウエハチャック34をプローブカード32に向かって移動させる。これにより、リング状シール部材48がヘッドステージ30の下面に接触して、ウエハチャック34とプローブカード32との間に形成された内部空間Sは外部から遮断された密閉状態となる。
(ステップS14:減圧工程)
次に、図7の符号500Cに示すように、吸引制御部114は、真空電空レギュレータ54の動作を制御して、吸引口50を介して内部空間Sの減圧を開始する(図8の時間t0)。このとき、吸引制御部114は、内部空間Sの減圧を複数のステップに分けて段階的に減圧するステップ減圧を行う。具体的には、図8の上段に示すグラフ(内部空間の内部圧力の時間的な変化を示したグラフ)のように、内部空間Sの内部圧力が初期圧力P0から設定圧力P1となるまで、一定時間Δt毎に内部空間Sの内部圧力(負圧)を微小圧力ΔPずつ段階的に大きくする制御を行う。
また、減圧工程においては、減圧工程の開始と同時またはそれよりも後のタイミングでウエハチャック固定解除工程が行われる。ウエハチャック固定解除工程では、チャック固定用電磁弁制御部112は、チャック固定用電磁弁84をOFF(閉状態)とし、Z軸移動・回転部72の吸引口80(図4参照)によるウエハチャック34の固定を解除する。これにより、減圧工程が行われた場合に、内部空間Sの内部圧力に応じてウエハチャック34がプローブカード32側に向かって移動(上昇)する。
ここで、本実施形態では、Z軸移動・回転部72の吸引路82とチャック固定用電磁弁84との間を接続する吸引経路には絞り弁86が設けられているため、減圧工程の開始と同時又はそれよりも後のタイミングでウエハチャック固定解除工程が行われても、ウエハチャック34の下側(Z軸移動・回転部72側)の負圧が急に失われないようになっている。そのため、ウエハチャック34が上下両側(すなわち、Z軸移動・回転部72とプローブカード32との両側)から引っ張られている状態で急に下側からの拘束(すなわち、Z軸移動・回転部72からの吸着による固定力)がなくなることがないので、ウエハチャック34の急激な移動に伴う異常振動や異常接触を低減できる。したがって、ウエハチャック固定解除工程が行われたときにウエハチャック34がZ軸移動・回転部72から急激に離脱するのを抑制することができるので、ウエハチャック34の受け渡し動作をより安定して行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、一例として、Z軸移動・回転部72の吸引路82とチャック固定用電磁弁84との間を接続する吸引経路に絞り弁86を設けた構成を示したが、Z軸移動・回転部72の吸引口80と吸引装置44との間を接続する経路に絞り弁86が設けられていればよく、例えば、Z軸移動・回転部72の吸引路82に絞り弁86が設けられていてもよい。
(ステップS16:高さ位置検出工程)
距離センサ38は、内部空間Sのステップ減圧が行われているときにウエハチャック34の高さ位置をステップ毎に検出する。距離センサ38の検出結果は制御装置60の記憶装置(不図示)に出力されて記憶される。
(ステップS18:判断工程)
次に、吸引制御部114は、内部空間Sの内部圧力が設定圧力P1に到達したか否かを判断する。内部空間Sの内部圧力が設定圧力P1に到達していない場合(ステップS18においてNoの場合)には、ステップS14に戻り、ステップS14以降の処理を繰り返し行う。一方、内部空間Sの内部圧力が設定圧力P1に到達した場合(ステップS18においてYesの場合)には、次のステップS20に進む。
なお、内部空間Sの内部圧力は、例えばウエハチャック34又はヘッドステージ30に設けた圧力センサにより内部空間Sの内部圧力を直接検出してもよいし、真空電空レギュレータ54に内蔵又は接続された圧力センサにより検出してもよい。
(ステップS20:コンタクト位置検出工程)
次に、オーバードライブ量算出部115は、制御装置60の記憶装置(不図示)から距離センサ38の検出結果を取得する。そして、オーバードライブ量算出部115は、距離センサ38の検出結果に基づき、プローブ36とウエハW上の電極パッドとが接触し始めるコンタクト位置(基準位置)を検出する。具体的には、以下のようにしてコンタクト位置を検出する。
図8の下段に示すグラフは、内部空間Sのステップ減圧(図8の上段に示すグラフを参照)が行われたときのウエハチャック34の高さ位置の時間的な変化を示すグラフである。このグラフに示すように、内部空間Sのステップ減圧が行われたとき、ウエハチャック34の高さ位置は、内部空間Sの内部圧力が微小圧力ΔPだけ変化する毎に微小高さΔhだけ変化する。このとき、プローブ36とウエハW上の電極パッドとが接触する前後では、1ステップあたりのウエハチャック34の高さ位置の変化量(微小高さΔh)が異なる。すなわち、プローブ36とウエハW上の電極パッドとが接触した後は、ウエハチャック34は各プローブ36から反力(プローブ36が潰されたときの反力)を受けるため、それらが接触する前に比べて、1ステップあたりのウエハチャック34の高さ位置の変化量が小さくなる。
オーバードライブ量算出部115は、内部空間Sをステップ減圧した場合にプローブ36とウエハW上の電極パッドとが接触する前後で1ステップあたりのウエハチャック34の移動量が変化する特性を利用して、プローブ36とウエハW上の電極パッドとが接触し始めるコンタクト位置を検出する。
例えば、図8に示した例においては、時間tsにおいて1ステップあたりのウエハチャック34の高さ位置の変化量が変化している。この場合、オーバードライブ量算出部115は、時間tsにおけるウエハチャック34の高さ位置H0をコンタクト位置として検出する。なお、リング状シール部材48の反力が非常に小さい場合には、内部空間Sのステップ減圧を開始した直後に、1ステップあたりのウエハチャック34の高さ位置の変化量が変化する場合もある。
(ステップS22:オーバードライブ量算出工程)
次に、オーバードライブ量算出部115は、内部空間Sの内部圧力が設定圧力P1に到達したときのウエハチャック34の高さ位置H1と、上述のコンタクト位置検出工程で検出したコンタクト位置H0との差分をオーバードライブ量Dとして算出する。
オーバードライブ量算出部115は、算出したオーバードライブ量Dを図示しないモニタに出力する。これにより、モニタには、オーバードライブ量Dが表示される。したがって、オペレータは、モニタの表示を確認することにより、オーバードライブ量Dを把握することが可能となる。
なお、吸引制御部114は、全体制御部100の制御の下、オーバードライブ量算出部115で算出されたオーバードライブ量が適正でない場合には、オーバードライブ量が適正な範囲となるように設定圧力P1を変更する制御を行うようにしてもよい。また、設定圧力P1の変更はオペレータが手動で行うようにしてもよい。
以上のようにして、ウエハチャック34がアライメント装置70(Z軸移動・回転部72)からヘッドステージ30(プローブカード32側)に受け渡されると、プローブカード32の各プローブ36は均一な接触圧でウエハWの各チップの電極パッドに接触した状態となり、ウエハレベル検査を開始可能な状態となる。その後、テストヘッドから各プローブ36を介してウエハWの各チップに電源及びテスト信号が供給され、各チップから出力される信号を検出して電気的な動作検査が行われる。
なお、ウエハチャック34がアライメント装置70(Z軸移動・回転部72)からヘッドステージ30(プローブカード32側)に受け渡された後、アライメント装置70は他の測定部16に移動し、その測定部16において同様の手順でコンタクト動作が行われ、ウエハレベル検査が順次行われる。
以上のとおり、本実施形態によれば、内部空間Sをステップ減圧しながらウエハチャック34の高さ位置をステップ毎に検出し、その検出結果からオーバードライブ量を算出することができる。したがって、オペレータは、適正なオーバードライブ量を確保できているか否かを容易かつ正確に把握でき、ウエハW上の電極パッドとプローブ36との間で良好なコンタクトを実現することができる。
特に本実施形態では、内部空間Sのステップ減圧が行われたときの1ステップあたりのウエハチャック34の高さ位置の変化量(1ステップあたりのウエハチャック34の移動量)に基づき、ウエハW上の電極パッドとプローブ36とが接触し始めるコンタクト位置を検出し、そのコンタクト位置を基準としてオーバードライブ量を算出している。そのため、プローブカード32の設計値と実際の製品の寸法との間に誤差が存在する場合でも、その誤差の影響を受けることなく、適正なオーバードライブ量を確保できているか否かを精度よく把握することが可能となる。これにより、ウエハW上の電極パッドとプローブ36とが確実に接触し、信頼性の高い検査を実施することができる。
以上、本発明に係るプローバ及びプローブ検査方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。