JP7389730B2 - ポリビニルアセタール樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、有機溶剤に溶解した場合に微細な未溶解物が少なく、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた際に生産性を向上させることができ、また、強靭性に優れるセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂に関する。
近年、種々の電子機器に搭載される電子部品の小型化、積層化が進んでおり、多層回路基板、積層コイル、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品が広く使用されている。
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造されている。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ビーズミル、ボールミル等の混合装置により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、またはSUSプレート等の支持体面に流延して、これを加熱等により、溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次に、得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製する。その後、積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行い、焼成して得られるセラミック焼結体の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
セラミックグリーンシートの作製に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、一般にメチルエチルケトン、トルエン、アルコール及びこれらの混合物等の有機溶剤に溶解された溶液として用いられる。しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解した場合に微量の未溶解物が生じていた。このような未溶解物が存在すると、積層セラミックコンデンサに用いた場合に、脱脂工程及び焼成工程においてボイドが残りやすくなったり、セラミック粉末等の分散性が低下したりすることにより、得られる製品の電気特性が低下していた。
このため、ポリビニルアセタール樹脂をセラミックグリーンシートの用途に使用する際には、有機・無機化合物等を配合し、有機溶剤で溶解した後、濾過工程を行うことにより、未溶解物を除去する必要があった。
これに対して、特許文献1では、メチルエチルケトン及び/又はトルエンとエタノールとの1:1混合溶剤に溶解して5重量%溶液としたポリビニルアセタール樹脂溶液を、目開き5μmのフィルターを用い、濾過温度25℃、濾過圧10mmHgの条件で濾過したときの濾過流量の低下率が10%未満であるポリビニルアセタール樹脂が提案されている。また、このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることで、有機溶剤に溶解した場合に未溶解物が少なく、濾過時間を短縮できることにより、生産性を向上させることができるとされている。
特開2005-325342号公報
一方、近年では、電子機器の多機能化、小型化に伴い、積層セラミックコンデンサは、大容量化小型化が求められている。このような要求に対応するためには、より微細な未溶解物を充分に除去する必要があるが、特許文献1に記載のポリビニルアセタール樹脂であっても、より微細な未溶解物を充分に除去することができず、未溶解物を濾過等により除去する必要があり、生産性が低下するという問題があった。
本発明は、有機溶剤に溶解した場合に微細な未溶解物が少なく、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた際に生産性を向上させることができ、また、強靭性に優れるセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂を提供することを目的とする。
本発明は、下記方法により測定される未溶解物の個数が300個以下であるポリビニルアセタール樹脂である。
<測定方法>
重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液150mlに対して、回転式粘度計で測定した20℃での溶液粘度が20mPa・sとなるようにポリビニルアセタール樹脂をフラスコに投入し振とうした後、20℃で30分間静置し、更に、上下反転して30分間静置後、底面に付着した未溶解物の個数を計測する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定の測定方法によって測定された未溶解物の個数が300個以下であるポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解した場合の未溶解物が少なく、ろ過時間を短縮して、生産性を向上させることができることを見出した。また、このようなポリビニルアセタール樹脂をセラミックグリーンシート用のバインダー樹脂として用いることにより、セラミックグリーンシートに欠陥が発生し難く、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを作製することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、上記の方法により測定される未溶解物の個数が300個以下である。
具体的には、容量300mlの三角フラスコに重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液150mlを投入する。更に、20℃での溶液粘度が20mPa・sとなるようにポリビニルアセタール樹脂を投入し、三角フラスコの口が上になっている状態で振とうし、20℃で30分間静置する。その後、フラスコを上下反転させて、三角フラスコの口が下になっている状態で、更に、30分間静置し、フラスコの底面に付着した未溶解物の個数を計測する。このとき、ポリビニルアセタール樹脂の濃度については、20mPa・sとなる濃度を予め確認しておく。粘度計としては、回転式粘度計を用いることができる。
上記三角フラスコは、材質が硼珪酸ガラスのものを用いることができる。また、底面の内径87mm、全高148mm、内径31mmのもの、又は、同等の形状、同等の材質のものを使用することが好ましい。上記フラスコとしては、例えば、柴田科学社製 三角フラスコ 010530-30071Aを使用することができる。
振とうの条件としては、例えば、往復振とう方式、振とう速度250rpm、振幅40mmで3時間振とうすることが好ましい。
上記振とう機としては、例えば、振とう機(TAITEC社製「SR-2DW」)を用いることができる。
未溶解物の個数の計数は、フラスコ底面の中心から半径40mmの範囲において、目視で実施する。計数する対象の未溶解物のサイズは、最大直径が0.1~2.0mmとする。
上記未溶解物の個数が300個以下であると、セラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた際に生産性を向上させることができる。また、強靭性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製することができる。
上記未溶解物の個数は、好ましい上限が250個、より好ましい上限が200個である。上記未溶解物の個数の好ましい下限は0個であり、少なければ少ないほど好ましい。
また、粒径が大きい未溶解物はセラミックグリーンシートの性能を大きく低下させる原因となるため、本発明のポリビニルアセタール樹脂は、上記の方法により測定した場合の最大直径が2.0mmを超える未溶解物の個数が0個であることが好ましい。
上記未溶解物の個数は、原料ポリビニルアルコール樹脂の結晶化度、鹸化度、反応時間や反応温度等のアセタール化反応の条件、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基量、水酸基量等を適宜設定することで調整することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液に対して濃度0.2重量%となるように溶解したポリビニルアセタール樹脂溶液の粒度径分布をパーティクルカウンターを用いて測定した際、直径0.5~1.0μmの粒子の割合が樹脂溶液100体積%に対して4.42×10-8体積%以下であることが好ましい。粒子の体積は、パーティクルカウンターを用いて直径0.5~1.0μmの粒子の個数を測定し、直径0.5~1.0μmの粒子を直径0.75μmの真球と仮定してその体積を算出し、粒子の個数と体積とに基づいて直径0.5~1.0μmの粒子の割合(体積%)を算出する。
上記割合が4.42×10-8体積%以下であると、ろ過時間を短縮できることに加え、スラリーの均一性が良好となり、より平滑なグリーンシートを作製することができ、クラック等のシート欠陥が生じにくくなるため、絶縁破壊が起こりにくくなる。すなわち積層セラミックコンデンサの信頼性が向上するという利点がある。
上記割合は、3.31×10-8体積%以下であることがより好ましい。上記割合の下限は特に限定されず、少なければ少ないほど好ましく、0体積%が好ましい。
上記パーティクルカウンターとしては、例えば、リオン社製「KS-42C」を用いることができる。
上記直径0.5~1.0μmの粒子の体積割合は、例えば、原料ポリビニルアルコール樹脂の結晶化度、ケン化度、アセタール化反応の条件、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基量、水酸基量等を適宜設定することで調整することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、薄膜セラミックグリーンシートを作製する場合に、機械的強度が保てるという観点から、平均重合度の好ましい下限が300、より好ましい下限が600、また有機溶剤への溶解性や、溶解粘度の観点から、好ましい上限が8,000、より好ましい上限が7,000である。
なお、上記平均重合度は、JIS K 6726に準拠して測定することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、下記式(1)で表されるアセタール基を有する構成単位、下記式(2)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位を有することが好ましい。
Figure 0007389730000001
上記式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
上記式(1)中、Rが炭素数1~20のアルキル基である場合、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、n-プロピル基が好ましい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記式(1)で表されるアセタール基を有する構成単位の含有量(以下、「アセタール基量」ともいう)の好ましい下限は45モル%、好ましい上限は80モル%である。
上記アセタール基量が45モル%以上であると、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。上記アセタール基量が80モル%以下であると、強靭性に優れたポリビニルアセタール樹脂とすることができる。
上記アセタール基量は、より好ましい下限が47モル%、更に好ましい下限が49モル%、より好ましい上限が78モル%、更に好ましい上限が76モル%である。
上記アセタール基量は、例えば、NMRにより測定することができる。
なお、アセタール基量の計算方法については、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がポリビニルアルコールの2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用する。
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表される水酸基を有する構成単位の含有量(以下、「水酸基量」ともいう)の好ましい下限は18モル%、好ましい上限は50モル%である。
上記水酸基量が18モル%以上であると、強靭性に優れたポリビニルアセタール樹脂とすることができる。上記水酸基量が50モル%以下であると、有機溶剤への溶解性を充分に向上させることができる。
上記水酸基量は、より好ましい下限が20モル%、更に好ましい下限が22モル%、より好ましい上限が40モル%、更に好ましい上限が39モル%、更により好ましい上限が38モル%である。
上記水酸基量は、例えば、NMRにより測定することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位の含有量(以下、「アセチル基量」ともいう)の好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は20モル%である。
上記アセチル基量が0.5モル%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂中の水酸基の分子内及び分子間の水素結合によるセラミックグリーンシート用組成物の高粘度化を抑制することができる。上記アセチル基量が20モル%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の柔軟性が上がりすぎることなく、ハンドリング性を向上させることができる。
上記アセチル基量は、より好ましい下限が1.0モル%、より好ましい上限が16モル%である。
上記アセチル基量は、例えば、NMRにより測定することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が40,000、より好ましい下限が70,000、好ましい上限が1,400,000、より好ましい上限が1,200,000である。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、数平均分子量(Mn)の好ましい下限が15,000、より好ましい下限が40,000、好ましい上限が500,000、より好ましい上限が400,000である。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の好ましい下限が2.0、より好ましい下限が2.2、好ましい上限が4.0、より好ましい上限が3.7である。
上記Mw、Mnは例えば、適切な標準(例えば、ポリスチレン標準)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。上記Mw、Mnを測定する際に用いるカラムとしては、例えば、TSKgel SuperHZM-H等が挙げられる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、通常、ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより製造することができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をアルカリ、酸、アンモニア水等によりけん化することにより製造された樹脂等の従来公知のポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されていてもよいが、少なくとも主鎖の1カ所にメソ、ラセモ位に対して2連の水酸基を有するユニットが最低1ユニットあれば完全けん化されている必要はなく、部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。また、上記ポリビニルアルコール樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂等、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体も用いることができる。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、結晶化度の上限が37%以下であることが好ましく、36%以下であることがより好ましく、33%以下であることが更に好ましい。また、下限は特に限定されないが、3%以上であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコール樹脂を用いることにより、上記方法により測定した未溶解物の個数を所定の範囲とすることができる。
なお、上記結晶化度は、後述する実施例に記載のとおり、示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度が70モル%以上99.4モル%以下であることが好ましく、78モル%以上98モル%以下であることがより好ましい。
上記ポリビニルアルコール樹脂を用いることにより、上記方法により測定した未溶解物の個数を所定の範囲とすることができる。
上記アセタール化は、公知の方法を用いることができ、水溶剤中、水と水との相溶性のある有機溶剤との混合溶剤中、あるいは有機溶剤中で行うことが好ましい。
上記水との相溶性のある有機溶剤としては、例えば、アルコール系有機溶剤を用いることができる。
上記有機溶剤としては、例えば、アルコール系有機溶剤、芳香族有機溶剤、脂肪族エステル系溶剤、ケトン系溶剤、低級パラフィン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、アミン系溶剤等が挙げられる。
上記アルコール系有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
上記芳香族有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、安息香酸メチル等が挙げられる。
上記脂肪族エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
上記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
上記低級パラフィン系溶剤としては、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、デカン等が挙げられる。
上記エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
上記アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルテセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトアニリド等が挙げられる。
上記アミン系溶剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等が挙げられる。
これらは、単体で用いることもできるし、2種以上の溶剤を混合で用いることもできる。これらのなかでも、樹脂に対する溶解性及び精製時の簡易性の観点から、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランが特に好ましい。
上記アセタール化は、酸触媒の存在下において行うことが好ましい。
上記酸触媒は特に限定されず、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いられてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。なかでも、塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂の製造方法では、ポリビニルアルコール樹脂を90℃以上の温度で2時間以上撹拌した後、アセタール化を開始することが好ましい。
撹拌時間が2時間以上とすることで、ポリビニルアルコール樹脂が充分に溶解し、アセタ
ール化度を充分に高くして、未溶解物の発生を抑制することができる。
上記アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、炭素数1~10の鎖状脂肪族基、環状脂肪族基又は芳香族基を有するアルデヒドが挙げられる。これらのアルデヒドとしては、従来公知のアルデヒドを使用できる。上記アセタール化反応に用いられるアルデヒドは、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド等が挙げられる。
上記脂肪族アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、アミルアルデヒド等が挙げられる。
上記芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。
これらのアルデヒドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルデヒドとしては、なかでも、アセタール化反応性に優れ、生成する樹脂に充分な内部可塑効果をもたらし、結果として良好な柔軟性を付与することができるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ノニルアルデヒドが好ましい。また、耐衝撃性及び金属との接着性に特に優れる接着剤組成物を得られることから、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドがより好ましい。
上記アルデヒドの添加量としては、目的とするポリビニルアセタール樹脂のアセタール基量にあわせて適宜設定することができる。特に、ポリビニルアルコール100モル%に対して、55モル%以上95モル%以下、好ましくは60モル%以上90モル%以下とすると、アセタール化反応が効率よく行われ、未反応のアルデヒドも除去しやすいため好ましい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を混合することでセラミックグリーンシート用組成物を作製することができる。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。また、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。更に、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等のエステル類等が挙げられる。また、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。特に、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類及びこれらの混合溶剤が塗工性、乾燥性の面から見て好ましい。なかでも、エタノールとトルエンの混合溶剤やメチルエチルケトンとトルエンの混合溶剤がより好ましい。
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物中の上記有機溶剤の含有量は、用いられるポリビニルアセタール樹脂の種類等によって設定されるものであって、特に限定されるものではないが、あまり少ないと、混錬に必要な溶解性を発揮しにくい。また、あまり多いと、セラミックグリーンシート用スラリー組成物の粘度が低くなり過ぎてセラミックグリーンシートを作製する際のハンドリング性が悪くなることがある。このため、有機溶剤の含有量は好ましくは20重量%以上80重量%以下である。
上記セラミックグリーンシート用組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤を添加することで、得られるセラミックグリーンシートの機械的強度、及び、柔軟性を大幅に向上させることができる。
上記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。
上記セラミックグリーンシート用組成物において、上記可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限が7重量部、より好ましい下限が8.5重量部、好ましい上限が18重量部、より好ましい上限が13.5重量部である。
上記セラミックグリーンシート用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂や、アクリル樹脂、エチルセルロース等の他の樹脂を含有していてもよい。このような場合、全バインダー樹脂に対する本発明のポリビニルアセタール樹脂の含有量が50重量%以上であることが好ましい。
上記セラミックグリーンシート用組成物には、必要に応じて、セラミック粉末、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、充填剤等を適宜添加してもよく、場合によってはアクリル樹脂やウレタン樹脂等の他樹脂を少量添加してもよい。
上記セラミック粉末としては、セラミックの製造に使用される金属または非金属の酸化物もしくは非酸化物の粉末が挙げられる。また、これらの粉末の組成は単一組成、化合物の状態のものを単独または混合して使用しても差し支えない。なお、金属の酸化物または非酸化物の構成元素はカチオンまたはアニオンともに単元素でも複数の元素から成り立っていてもよく、さらに酸化物または非酸化物の特性を改良するために加えられる添加物を含んでいてもよい。具体的には、Li、K、Mg、B、Al、Si、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Ga、In、Y、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。
また、通常複酸化物と称される複数の金属元素を含む酸化物粉末の具体的なものを結晶構造から分類すると、ペロブスカイト型構造をとるものとしてNaNbO、SrZrO、PbZrO、SrTiO、BaZrO、PbTiO、BaTiO等が挙げられる。スピネル型構造をとるものとしてMgAl、ZnAl、CoAl、NiAlO4、MgFe等が挙げられる。イルメナイト型構造をとるものとしてはMgTiO、MnTiO、FeTiO等が挙げられる。ガーネット型構造をとるものとしてはGdGa12、YFe12等が挙げられる。この中でも、本願の変性ポリビニルアセタール樹脂は、BaTiOの粉末と混合したセラミックグリーンシートに対し、高い特性を示す。
上記セラミック粉末の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、薄層セラミックグリーンシート(厚さ5μm以下)の作製用としては、0.5μm以下であることが好ましい。
上記セラミックグリーンシート用組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明のポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤及び必要に応じて添加する各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
上記セラミックグリーンシート用組成物を塗工した後、加熱し乾燥させることで樹脂シートが得られる。
上記セラミックグリーンシート用組成物を塗工する場合の方法としては、特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の方法が挙げられる。なお、その他の具体的な方法については、従来公知の方法を用いることができる。
セラミック粉末を含む樹脂シートはセラミックグリーンシートとして用いることができる。
上記セラミックグリーンシートを用いて、セラミック電子部品を製造することができる。例えば、セラミックグリーンシートの表面に電極層用ペーストを塗工する工程、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する工程を行うことで、セラミック電子部品を製造することができる。
上記セラミック電子部品としては特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、キャパシタ、圧電アクチュエーター、積層バリスタ、積層サーミスタ、EMIフィルタ、窒化アルミニウム多層基板、アルミナ多層基板等が挙げられる。このような積層セラミックコンデンサもまた本発明の1つである。
上記セラミック電子部品の製造方法では、上記セラミックグリーンシートの表面に電極層用ペーストを塗工する工程を行う。
電極層用ペーストとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂やエチルセルロース、アクリル樹脂等をバインダー樹脂として有機溶剤に溶解し、導電粉末等を分散させることで得ることができる。これらの樹脂は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。ポリビニルアセタール樹脂を含有する電極層用ペーストは、加熱圧着工程において、セラミックグリーンシートに優れた接着性を示すので好ましい。
上記セラミック電子部品の製造方法では、上述した、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを作製した後、同様にして作製した電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成することで、シートアタックやクラック等の問題が解決された積層セラミック電子部品が得られる。
なお、上記加熱圧着工程、積層体を脱脂、焼成する工程については特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明によれば、有機溶剤に溶解した場合に微細な未溶解物が少なく、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた際に生産性を向上させることができ、また、強靭性に優れるセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。
DSC曲線の模式図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度98モル%、結晶化度35%)300gに純水3000gを加え、90℃で2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
なお、ポリビニルアルコール樹脂の結晶化度は、以下の方法で測定した。
具体的には、ポリビニルアルコール樹脂について、熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、DSC6200R)を用い、以下の測定条件により示差走査熱量分析を行い、2度目の昇温時の融解熱を測定して結晶化度を測定した。
<測定条件>
0℃(5分保持)→(昇温速度10℃/分で1度目の昇温)→270℃→(冷却速度10℃/分で冷却)→0℃(5分保持)→(昇温速度10℃/分で2度目の昇温)→270℃
なお、融解熱は、2度目の昇温において、100℃から270℃の間に現れるピークの面積から算出した。ピークの面積は、図1のようにA点及びB点を結んだ直線と、DSC曲線とに囲まれた領域の面積とした。ここで、A点は、170℃から高温側へのDSC曲線の直線近似部に沿って引いた直線と、DSC曲線とが離れた点とした。B点は、DSC曲線上で融解終了温度を示す点とした。結晶化度は、結晶化度100%のポリビニルアルコール樹脂の融解熱を156J/gとして算出した。
(実施例2)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,900、ケン化度84モル%、結晶化度12%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(実施例3)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度3,000、ケン化度98.2モル%、結晶化度26%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(実施例4)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度800、ケン化度98.4モル%、結晶化度29%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(実施例5)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度4,000、ケン化度99.2モル%、結晶化度34%)200gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド105gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(実施例6)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度4,500、ケン化度88モル%、結晶化度13%)200gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド150gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(実施例7)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,900、ケン化度94モル%、結晶化度18%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例1)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度99.5モル%、結晶化度40%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例2)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,900、ケン化度80モル%、結晶化度13%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド100gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例3)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度8,100、ケン化度98モル%、結晶化度36%)150gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド100gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例4)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度800、ケン化度99.5モル%、結晶化度38%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド130gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例5)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度99.3モル%、結晶化度30%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例6)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度3,300、ケン化度99.5モル%、結晶化度37%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例7)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度98モル%、結晶化度35%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、10℃で、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(比較例8)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度98モル%、結晶化度35%)300gに純水3100gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200gとn-ブチルアルデヒド160gとを添加してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、40℃で、0.5時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
(評価)
実施例1~7及び比較例1~8で得られたポリビニルアセタール樹脂について、以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
(1)ポリビニルアセタール樹脂の評価
(1-1)アセタール基量、水酸基量、アセチル基量、連鎖長が1である水酸基を有する構成単位の含有量の割合
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-Dに10重量%の濃度で溶解し、13C-NMRを用いて、アセタール基量、水酸基量、アセチル基量を測定した。
(1-2)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Mw/Mn
得られたポリビニルアセタール樹脂をテトラヒドロフランに0.2重量%の濃度で溶解させ、GPC装置HLC-8220(東ソー社製)にて測定を行い、得られた測定結果から、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Mw/Mnを算出した。なお、カラムとして、カラムTSKgel SuperHZM-H(東ソー社製)を用いた。
(1-3)未溶解物の数
容量300mlの三角フラスコ(柴田科学社製「010530-30071A」、硼珪酸ガラス製、底面内径87mm、全高148mm、内径31mm)に重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液150mlを投入し、さらに、20℃での溶液粘度が20mPa・sとなる濃度になるように、得られたポリビニルアセタール樹脂を投入した。このとき、ポリビニルアセタール樹脂の濃度については、20mPa・sとなる濃度を予め確認しておいた。粘度計としては、回転式粘度計(東機産業社製、TVB-10形粘度計)を用いた。ロータとしてはSPINDLE NO.M1を使用し、回転数60rpmで30秒間測定を実施した。振とう機(TAITEC社製、SR-2DW)を用いて、上記三角フラスコの口が上になっている状態で、振とう速度250rpm、振幅40mmの往復振とう方式により3時間振とうした。振とう後、上記三角フラスコの口が上になっている状態で、20℃で30分間静置した。その後、上記三角フラスコを上下反転させて、上記三角フラスコの口が下になっている状態で30分間静置し、上記三角フラスコ底面の中心から半径40mmの範囲に付着した最大直径が0.1~2mmの未溶解物の個数を目視にて計測した。
また、最大直径が2mmを超える未溶解物の有無を確認した。
(1-4)直径0.5~1.0μmの粒子の個数、及び、割合(体積%)
得られたポリビニルアセタール樹脂を重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液に対して0.2重量%となるように溶解した。得られた溶液10mlの粒子径分布をパーティクルカウンター(リオン社製、KS-42C)を用いて測定し、10ml当たりの直径0.5~1.0μmの粒子の個数を測定した。0.5~1.0μmの粒子について、直径0.75μmの真球と仮定して粒子の体積を算出し、得られた測定結果に基づいて、直径0.5~1.0μmの粒子の割合(体積%)を算出した。
(2)樹脂シートの評価
得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部を、エタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)90重量部に加え、攪拌溶解し樹脂シート用組成物を得た。
得られた樹脂シート用組成物を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工、加熱乾燥させることにより、測定用サンプル(樹脂シート)を作製した。
(2-1)弾性率
得られた測定用サンプルについて、JIS K 7113に準拠して、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AGS-J)を用い、引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)の測定を行った。
(2-2)上降伏点応力、破断点応力、破断点歪み
得られた測定用サンプルをダンベル1号(JIS K 6771準拠)の形状の試験片とし、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AGS-J)を用いて引っ張り速度500%/分で引っ張り、測定温度20℃で破断抗張力(kg/cm)を測定した。得られた値から応力σ(MPa)-歪みε(%)曲線を求めた。なお、500%/分とは、1分間に試験片のチャック間距離の5倍の距離を動かす速度を意味する。得られた応力-歪み曲線から上降伏点応力、破断点応力及び破断点歪みを求めた。
(2-3)剥離後の破れ
得られた測定用サンプルをPETフィルムから剥離し、その状態を目視にて確認し、以下の基準で剥離性を評価した。
〇:樹脂シートをPETフィルムからきれいに剥離でき、剥離したシートに切れや剥がれは全く観察されなかった。
△:樹脂シートをPETフィルムからきれいに剥離でき、剥離したシートのごく一部に、小さな切れが観察された。
×:樹脂シートをPETフィルムから剥離できない、又は、剥離したシートの大部分に切れや剥がれが観察された。
(3)セラミックグリーンシートの評価
(無機分散液の作製)
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製、BL-1)1重量部を、トルエン20重量部とエタノール20重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。次いで、100重量部のチタン酸バリウムの粉末(堺化学工業社製、BT01)を得られた溶液に添加し、ビーズミル(アイメックス社製 レディーミル)にて180分間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
(樹脂溶液の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂8重量部、DOP2重量部を、エタノール45重量部とトルエン45重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
(セラミックグリーンシートの作製)
得られた無機分散液に樹脂溶液を添加しビーズミルにて90分間攪拌することにより、セラミックグリーンシート用組成物を得た。
得られたセラミックグリーンシート用組成物を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、加熱乾燥させ、セラミックグリーンシートを作製した。
(3-1)断面積1μm以上の欠陥数
得られたセラミックグリーンシートの表面において、14,000μmの視野を10か所ランダムに選定し、形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK-X100」)を用いて、1視野あたりの断面積1μm以上の平均欠陥数を計数した。
なお、欠陥は、負荷面積率を80%としたときの突出谷部のうち、その断面積が1μm以上の部分とした。
(3-2)算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)
得られたセラミックグリーンシートの算術平均高さSaを、三次元表面粗計(菱化システム社製「VertScan2.0」)を用いて、ISO25178に準拠して評価した。
Figure 0007389730000002
Figure 0007389730000003
本発明によれば、有機溶剤に溶解した場合に微細な未溶解物が少なく、特にセラミックグリーンシート用のバインダーとして用いた際に生産性を向上させることができ、また、強靭性に優れるセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。

Claims (3)

  1. 下記方法により測定される未溶解物の個数が300個以下であり、
    平均重合度が800以上4,500以下、アセタール基量が47.0モル%以上70.2モル%以下、アセチル基量が0.8モル%以上16.0モル%以下、水酸基量が28.0モル%以上37.0モル%以下であり、
    エタノール・トルエン混合溶液に溶解する、ポリビニルアセタール樹脂。
    <測定方法>
    容量300mlの三角フラスコ(柴田科学社製「010530-30071A」、硼珪酸ガラス製、底面内径87mm、全高148mm、内径31mm)に重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液150mlを投入し、さらに、回転式粘度計(東機産業社製、TVB-10形粘度計)を用い、ロータとしてSPINDLE NO.M1を使用し、回転数60rpmで30秒間測定を実施して測定した20℃での溶液粘度が20mPa・sとなる濃度になるようにポリビニルアセタール樹脂を投入し、振とう機(TAITEC社製、SR-2DW)を用いて、前記三角フラスコの口が上になっている状態で、振とう速度250rpm、振幅40mmの往復振とう方式により3時間振とうした後、前記三角フラスコの口が上になっている状態で、20℃で30分間静置し、更に、前記三角フラスコを上下反転させて、前記三角フラスコの口が下になっている状態で30分間静置し、前記三角フラスコ底面の中心から半径40mmの範囲に付着した最大直径が0.1~2mmの未溶解物の個数を目視にて計測する。
  2. 重量比1:1のエタノール・トルエン混合溶液に対して濃度が0.2重量%となるように溶解したポリビニルアセタール樹脂溶液の粒子径分布をパーティクルカウンターを用いて測定したとき、直径0.5~1.0μmである粒子の割合が樹脂溶液100体積%に対して4.42×10-8体積%以下である、請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂。
  3. セラミックグリーンシート用である、請求項1又は2に記載のポリビニルアセタール樹脂。
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