以下に、実施の形態に係る構造物計測装置100、データ処理装置200、及び構造物計測方法を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。図において、同様の構成には同じ符号が付されている。
図には、XYZ直交座標系の座標軸が示される。構造物計測装置100の第一の方向をZ軸方向とし、上昇方向を+Z軸方向、下降方向を-Z軸方向とする。構造物1の壁面に向かう方向をY軸方向とし、構造物計測装置100が構造物1に接近する方向を+Y軸方向とし、遠ざかる方向を-Y軸方向とする。また、構造物計測装置100から構造物1をみて水平右方向を+X軸方向、水平左方向を-X軸方向とする。
実施の形態1.
実施の形態1における構造物計測システム300について図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1の構造物計測システム300の構成例を示すブロック図である。図2は、実施の形態1の構造物計測装置100と構造物1の関係を示す概略図である。図1及び図2に示すように、構造物計測システム300は、構造物1を撮像する構造物計測装置100と、構造物計測装置100において撮像された撮像データを加工し、加工データを生成するデータ処理装置200とを備える。構造物1は、例えばビル、マンション、トンネル、橋又は柱等である。構造物計測装置100は構造物1である例えばビルの壁面に亀裂及び剥離等が発生していないかを検査するために、構造物1に沿って少なくとも第一の方向に移動しつつ、構造物1を撮像する。ここでは、第一の方向はZ軸方向である例を説明する。
ここで、構造物計測装置100が構造物1に沿ってZ軸方向に移動する方法の一例を説明する。図2に示すように、構造物計測装置100は、構造物1に沿ってZ軸方向に移動可能な移動手段部20に固定される。移動手段部20は、例えばビルに設置されたゴンドラである。以下では、構造物計測装置100はビルの壁面を撮像する例を説明するが、移動手段部20は線路を走行する鉄道車両、又は道路を走行する車両であってもよく、構造物計測装置100は例えばトンネルの内壁面を撮像してもよい。
図3は、実施の形態1の構造物1及び走行支持部10を示す概略図である。走行支持部10は、互いに平行に配置された右側レール11、12、及び左側レール14、15を備え、構造物に沿って設置される。図中では、右側レール11、12、及び左側レール14、15はそれぞれ2つである例を示しているが、これに限定されない。右側レール11に対し右側レール12は、気温上昇時のレール膨張を考慮し、右側レール連結部13に示す隙間を設けて配置される。同様に左側レール14に対し左側レール15は、気温上昇時のレール膨張を考慮し、左側レール連結部16に示す隙間を設けて配置される。それぞれのレール11、12、14、15は、後述する図4に示す移動手段部20のガイドローラ24b、24c、25b、25cが摺動回転するガイドローラ走行部11a、12a、14a、15aを有する。
図4は、実施の形態1の移動手段部20を示す概略図である。移動手段部20は、ゴンドラ箱部21、ワイヤ吊下げ部22、及びレール走行部24、25を備える。移動手段部20はワイヤ支持部22c、22dを介してワイヤ22a、22bにより空中に吊下げられている。また、構造物1と対向するゴンドラ箱部21の側面にはレール走行部24、25が設けられ、レール走行部24にはガイドローラ24b、24cが、それぞれローラ支持部24aに回動可能に軸支されている。また、レール走行部25にはガイドローラ25b、25cが、それぞれローラ支持部25aに回動可能に軸支されている。
移動手段部20は、ワイヤ22a、22bを介して移動手段部20の+Z軸方向である上空方向に設けられた図示しないクレーンにより空中に吊下げられ、ガイドローラ24b、24cがガイドローラ走行部11a、12aと係合し、ガイドローラ25b、25cがガイドローラ走行部14a、15aと係合する。これにより、移動手段部20は、構造物1とY軸方向の距離を一定に保ちながらクレーンの動力により、構造物1のZ軸方向に移動することができる。
構造物計測装置100は、構造物1に沿ってZ軸方向に移動可能な移動手段部20に固定される。そのため、構造物計測装置100は構造物1に沿ってZ軸方向に移動しつつ、構造物1を撮像することができる。なお、構造物計測装置100が構造物1に沿って第一の方向に移動する方法は上述の方法に限定されない。
次に、構造物計測装置100の各構成について説明する。図1に戻り、構造物計測装置100は照射部40、撮像部50、保持部30、位置取得部60、振動計測部70、出力部80、及び送信部90を備える。
図5は本実施の形態の構造物計測装置100の概略図である。図5では、構造物計測装置100の照射部40、撮像部50及び保持部30を示している。
照射部40は構造物1に光42を照射する。ここでは、照射部40は例えばスリット光42を照射する例を説明する。
撮像部50は構造物1の光42が照射された位置を撮像し撮像データを生成する。撮像部50は、スリット光42の波長に感度を有するカメラなどのイメージセンサと、イメージセンサを制御する制御回路とを備える。イメージセンサは、構造物1に照射されたスリット光42、すなわち輝線を含む領域を画像として撮像可能なものであればどのようなものであってもよい。撮像部50は、例えば一定周期で構造物1に照射されたスリット光42を含む領域を撮像することにより、移動手段部20のZ軸方向の位置に応じた撮像画像を順次撮像することができる。また、本実施の形態では、照射部40及び撮像部50は保持部30に設けられる。
照射部40及び撮像部50は光切断センサと呼ばれるセンサであり、光切断法により構造物1の形状を計測する。より具体的には、照射部40はスリット光42を構造物1の壁面に対して例えば略垂直に照射する。撮像部50は、スリット光42の中心軸に対して、撮像方向が鉛直方向にθ度傾くように設置される。すなわち、図5では、YZ面内において、スリット光42の中心軸と撮像部50の撮像方向とのなす角はθ度である。
撮像部50はスリット光42が照射された構造物1の位置を撮像し、撮像部50の撮像面上にスリット光42が入射された位置を電気的に検知する。そして、後述するデータ処理装置200は、三角測量の原理でスリット光42を照射した構造物1の線状領域の凹凸形状を解析することができる。
上述したように、構造物計測装置100は、構造物1に沿ってZ軸方向に移動可能な移動手段部20に固定される。これにより、構造物計測装置100はZ軸方向に移動しつつ構造物1を撮像することができる。そのため、構造物計測システム300は、構造物1に対するスリット光42の照射位置を変更しながら上述の線状領域の凹凸形状の解析を繰り返し実施することで、面領域の凹凸形状を解析することができる。
保持部30は、移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係が変更可能となるように、照射部40及び撮像部50の少なくとも一方を保持する。すなわち、保持部30は照射部40及び撮像部50の少なくとも一方を保持した状態で、移動手段部20に対する照射部40及び撮像部50の少なくとも一方の相対位置を変更する変更機構を備える。
移動手段部20を基準とした3者の位置関係の変更とは、少なくとも移動手段部20が同じ場所を通過する際に構造物1に光42が照射される位置の変更、構造物1の同一領域を撮影する際の光42の向きの変更、または構造物1の同一領域を撮影する際の撮像部50の向きの変更である。ここで、光42の向き及び撮像部50の向きは、単なる角度ではなく3次元空間における光42の進行方向、及び撮像部50が向いている方向を意味する。
本実施の形態では、保持部30は、照射部40及び撮像部50を保持し、移動手段部20を基準とする照射部40の位置をZ方向において伸縮可能である例を説明する。また、本実施の形態では、移動手段部20を基準とした3者の位置関係の変更とは、移動手段部20が同じ場所を通過する際に構造物1に光42が照射される位置の変更である例を説明する。保持部30の詳細を図6~図8を用いて説明する。
図6は、実施の形態1の構造物計測装置100を示す概略図である。ここでは、保持部30は、上部支持棒31、下部支持棒32、センサ支持棒33、右側支持棒34、左側支持棒35、サイドフレーム36、37により構成される例を説明する。上部支持棒31及び下部支持棒32は、長軸方向がX軸方向である。右側支持棒34及び左側支持棒35は、上部支持棒31及び下部支持棒32の両端に位置し、長軸方向がZ軸方向である。サイドフレーム36、37は、上部支持棒31、下部支持棒32、右側支持棒34、及び左側支持棒35で構成される長方形状の枠組みを支持する。センサ支持棒33は照射部40及び撮像部50を保持する。
図7は、実施の形態1の構造物計測装置100の一部を示す拡大概略図である。図8は、実施の形態1の構造物計測装置100と移動手段部20を示す概略図である。図7は図6に示すAを拡大した概略図である。センサ支持棒33は両端に上部支持棒連結部33cと下部支持棒連結部33dを有し、上部支持棒連結部33cは上部支持棒31に設けられたセンサ支持棒連結部31aと係合して上部支持棒31に固定され、下部支持棒連結部33dは下部支持棒32に設けられたセンサ支持棒連結部32aと係合して下部支持棒32に固定される。
センサ支持棒33、右側支持棒34及び左側支持棒35はZ軸方向に伸縮可能な構造である。図7(a)及び図8(a)は保持部30が収縮した状態であり、図7(b)及び図8(b)は保持部30が伸長した状態である。図7(b)及び図8(b)に示すように、センサ支持棒33は、伸縮を支持するガイド部33b及びガイド部33bと係合してZ軸方向に移動可能なスライド部33aを備える。撮像部50及び照射部40は、センサ支持棒33のスライド部33aに設置される。右側支持棒34は、伸縮を支持するガイド部34b及びガイド部34bと係合してZ軸方向に移動可能なスライド部34aを備える。左側支持棒35は、伸縮を支持するガイド部35b及びガイド部35bと係合してZ軸方向に移動可能なスライド部35aを備える。
例えば図8(a)から図8(b)に示すように保持部30が伸長した場合、センサ支持棒33のスライド部33aに取付けられた撮像部50及び照射部40が移動手段部20を基準として+Z軸方向に移動する。そして、保持部30の伸長により、照射部40から構造物1に照射されるスリット光42も移動手段部20を基準として+Z軸方向に変化する。つまり、Z軸方向における伸縮動作に伴う照射部40の位置の変更により、少なくとも基準位置に対する構造物1の光42が照射される位置が変更される。
また、図8(a)に示すように、構造物計測装置100はサイドフレーム36、37にそれぞれ設けたゴンドラ取付け部36a、36b、37a、37bを介して、移動手段部20の右横手摺部23a、左横手摺部23bにそれぞれ固定される。
図9は、実施の形態1の構造物計測装置100と構造物1の関係を示す概略図である。図9は、移動手段部20を-Z軸方向へ移動し、構造物計測装置100は-Z軸方向に移動しつつ構造物1を撮像する状態を示している。図9(a)は、図7(a)及び図8(a)と同様に保持部30が収縮した状態である。図9(b)は、図7(b)及び図8(b)と同様に保持部30が伸長した状態である。上述したとおり、右側レール11に対し右側レール12は、気温上昇時のレール膨張を考慮し、右側レール連結部13に示す隙間を設けて配置される。同様に左側レール14に対し左側レール15は、気温上昇時のレール膨張を考慮し、左側レール連結部16に示す隙間を設けて配置される。
図9(a)はレール走行部24のガイドローラ24cが右側レール連結部13を通過する直前を示した図である。ガイドローラ24cが右側レール連結部13に差し掛かってからガイドローラ24bが右側レール連結部13を通過完了して右側レール12に乗り移るまでの移動手段部20の走行区間をL0区間と称する。L0区間では、右側レール連結部13の段差又は隙間に起因する不要振動が移動手段部20に伝達される。本実施の形態では不要振動はY軸方向に大きいが、特に不要振動が発生する方向は限定されない。そのため、移動手段部20に固定された構造物計測装置100にも不要振動が伝達される。このため、図9(a)に示す構造物計測装置100により撮像された構造物1のL1領域の撮像データには、不要振動による測定誤差が重畳されている。L1領域は、図9(a)においてレール走行部24が右側レール連結部13を通過する間に撮像部50により撮像された領域、また照射部40によって光42が照射される領域である。つまり、図9(a)において、L1領域は他の領域と比較して撮像不良領域である。L1領域のZ軸方向の長さはL0区間のZ軸方向の長さと同じである。ここでは、右側について記載したが、左側も同様である。また、不要振動の方向はY軸方向に限定されない。
図9(b)はレール走行部24のガイドローラ24cが右側レール連結部13を通過する直前を示した図である。L0区間では、右側レール連結部13の段差又は隙間に起因する不要振動が移動手段部20に伝達される。そのため、移動手段部20に固定された構造物計測装置100にも不要振動が伝達される。このため、図9(b)に示す構造物計測装置100により撮像された構造物1のL2領域の撮像データには、不要振動による測定誤差が重畳されている。L2領域は、図9(b)において移動手段部20のレール走行部24が右側レール連結部13を通過する間に撮像部50により撮像された領域、また照射部40によって光42が照射される領域である。つまり、図9(b)において、L2領域は他の領域と比較して撮像不良領域である。L2領域のZ軸方向の長さはL0区間のZ軸方向の長さと同じである。ここでは、右側について記載したが、左側も同様である。また、不要振動の方向はY軸方向に限定されない。
本実施の形態では、移動手段部20のレール走行部24がレール連結部13、15を通過することにより振動が発生する間に撮像部50により撮像される構造物1上の領域、あるいは照射部40によって光42が照射される領域を、撮像不良領域と称する。すなわち、撮像不良領域は、予め設定された条件を満たす構造物上の領域である。具体的に本実施の形態における撮像不良領域は、図9(a)ではL1領域の少なくとも一部であり、図9(b)ではL2領域の少なくとも一部である。以下では、撮像不良領域は、図9(a)ではL1領域全体、図9(b)ではL2領域全体とする。
図9(a)及び図9(b)を比較すると、保持部30は、照射部40及び撮像部50の位置を変更することにより、移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能であることが分かる。つまり、保持部30は、移動手段部20を基準とする照射部40及び撮像部50の位置をZ軸方向において伸縮可能であるため、移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更することができる。言い換えると、保持部30は、移動手段部20のレール走行部24を基準とした構造物1の光42が照射される位置を変更することができる。保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を自動で変更可能に構成されてもよく、作業者により変更可能に構成されてもよい。
また、図9に示すように、保持部30のZ軸方向に伸縮可能な長さL3はL0区間のZ軸方向の長さよりも大きくなるようにL3を設定することが好ましい。ここで、L0区間、L1領域及びL2領域のZ軸方向の長さは等しい。つまり、保持部30の伸縮機構における照射部40の位置のZ軸方向における伸縮量は、Z軸方向における撮像不良領域の長さよりも長い。これにより、L1領域とL2領域は重なることなく互いに独立した領域となる。
構造物計測装置100は、移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係が異なる状態で、構造物1の同じ領域を少なくとも2回以上計測する。以下では、図9(a)の状態で構造物1を撮像した結果を第一の撮像データとし、図9(a)とは移動手段部20を基準とした、構造物1の光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更した図9(b)の状態で構造物1を撮像した結果を第二の撮像データとする。
図1に戻り、位置取得部60は構造物計測装置100の位置情報を取得する。位置取得部60は、複数の測位衛星から送信される複数の測位信号と、準天頂衛星から送信される誤差補正信号とを受信し、受信した複数の測位信号と誤差補正信号とに基づいて、構造物計測装置100の緯度、経度、及び高度を算出する。
測位衛星は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星であり、準天頂衛星は、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)の衛星である。誤差補正信号は、QZSS補強信号またはL6信号とも呼ばれ、センチメータ級の誤差補正を行うための情報である誤差補正情報を含む。なお、準天頂衛星は測位衛星としての機能を有しており、位置取得部60は、複数の測位衛星から送信される複数の測位信号に加え、準天頂衛星から送信される測位信号を受信し、これらの複数の測位信号と誤差補正信号とに基づいて、構造物計測装置100の高度を算出することもできる。
位置取得部60は、上述した構成に限定されない。例えば、移動手段部20又は構造物計測装置100はレーザドップラセンサ又はマイクロ波ドップラセンサを備え、位置取得部60はレーザドップラセンサ又はマイクロ波ドップラセンサによって計測した移動手段部20又は構造物計測装置100の移動量から構造物計測装置100の位置情報を算出してもよい。また、位置取得部60は、ワイヤ22a、22bを巻き上げるクレーンの巻き上げ量を計測するエンコーダによって計測した移動手段部20の移動量から構造物計測装置100の位置情報を算出してもよい。
振動計測部70は、移動手段部20又は構造物計測装置100に設けられ、構造物計測装置100に生じる振動を計測する。
出力部80は、撮像データが撮像された際の構造物計測装置100の位置情報、及び撮像データが撮像された際の振動計測部70により計測された結果を撮像データに対応付けたものを計測データとして出力する。また、計測データは撮像データが撮像された日時を含んでいてもよい。
送信部90は、出力部80により出力された計測データをデータ処理装置200に送信する。構造物計測装置100とデータ処理装置200とは、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又はインターネット等のネットワークを介して通信可能に接続される。送信部90は、計測データを予め設定されたタイミングで送信してもよく、作業者からの送信開始の指示により送信してもよい。
次に、データ処理装置200について説明する。図1に示すように、データ処理装置200は、受信部210、記憶部220、入力部230、抽出部240、加工部250、及び解析部260を備える。
受信部210は、構造物計測装置100の送信部90から送信された計測データを受信する。
記憶部220は、受信部210により受信した計測データ、後述する加工部250により生成された加工データ、及び解析部260による解析結果を記憶する。
入力部230は、構造物計測装置100において撮像された、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを入力する。ここで、撮像不良領域が異なるとは、その時の撮影条件において撮像不良領域となる実際の構造物1上の領域(本例では区間)が異なることを意味する。例えば、入力部230は上述した第一の撮像データ及び第二の撮像データを入力する。図9に戻り、第一の撮像データの撮像不良領域はL1領域であり、第二の撮像データの撮像不良領域はL2領域である。L1領域とL2領域は重なることなく互いに独立した領域であることは好ましいが、少なくとも一部が異なっていればよい。入力部230は、撮像データの入力を受信部210により受信した計測データから抽出して行ってもよく、作業者の指示に基づき入力してもよい。
抽出部240は、入力部230により入力された複数の撮像データの少なくとも1つにおいて、撮像不良領域の撮像データを抽出する。例えば、抽出部240は第一の撮像データの撮像不良領域であるL1領域を抽出する。
例えば、抽出部240は、予め設定された条件として、振動計測部70の計測結果において予め設定された閾値以上の振動値が記録された領域とし、予め設定された閾値以上の振動値が記録された領域の撮像データを抽出する。振動計測部70の計測結果において予め設定された閾値以上の振動値が記録された撮像データは、不要振動による計測誤差が含まれる。このように、抽出部240は、振動計測部70によりL1領域を抽出してもよく、第二の撮像データと比較して第一の撮像データでは撮像不良となっているL1領域を抽出してもよい。振動計測部70による計測結果を用いない場合は、計測データは振動計測部70により計測された結果を含まない構成にしてもよい。撮像不良領域の撮像データを抽出するとは、例えば第一の撮像データからL1領域の撮像データを抽出すること、又は第一の撮像データにおいてL1領域の撮像データをマーキングすることである。
また、例えば抽出部240は、予め設定された条件として、位置取得部60の構造物計測装置100の位置情報において構造物計測装置100に不要振動を発生させる領域、具体的には移動手段部20のレール走行部24がレール連結部を通過する間に撮影された撮像データを抽出するとしてもよい。
加工部250は、抽出部240において抽出された撮像不良領域を、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する。例えば、加工部250は第一の撮像データからL1領域の撮像データを削除し、削除した部分に第二の撮像データのL1領域の撮像データを補完した加工データを生成する。
解析部260は加工データを用いて、構造物1の形状を解析する。解析方法は、例えば上述した光切断法である。解析部260は三角測量の原理によりスリット光42を照射した構造物1の凹凸形状を解析することができる。
次に、構造物計測システム300のハードウェア構成例を説明する。図10は実施の形態1の構造物計測システム300のハードウェア構成例を示すブロック図である。構造物計測システム300の各構成は、図10Aに示すように専用のハードウェアである処理回路2であってもよいし、図10Bに示すようにメモリ4に格納されているプログラムを実行するプロセッサ3であってもよい。
図10Aに示すように、構造物計測システム300の各構成が専用のハードウェアである場合、処理回路2は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。構造物計測システム300の各構成の機能それぞれを処理回路で実現してもよいし、各部の機能をまとめて1つの処理回路で実現してもよい。
図10Bに示すように、構造物計測システム300の各構成がプロセッサ3である場合、各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ4に格納される。プロセッサ3は、メモリ4に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、構造物計測装置100の各構成及びデータ処理装置200の各構成の各機能を実現する。すなわち、構造物計測システム300の各構成は、プロセッサ3により実行されるときに、後述する図11及び図12に示す各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ4を備える。また、これらのプログラムは、構造物計測装置100の各構成及びデータ処理装置200の各構成の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
ここで、プロセッサ3とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)等のことである。メモリ4は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスク、フレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、ミニディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクであってもよい。
なお、構造物計測装置100の各構成及びデータ処理装置200の各構成の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、構造物計測システム300における処理回路2は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
次に、構造物計測システム300による構造物計測方法について説明する。まず、図11を用いて構造物計測装置100の処理動作を説明する。図11は実施の形態1の構造物計測装置100の処理動作を示すフローチャートである。
構造物計測装置100は少なくとも2回、構造物1の同じ領域を構造物1に沿って第一の方向に移動しつつ構造物1を撮像する。ここでは、構造物計測装置100は構造物1の同じ領域を構造物1に沿ってZ軸方向に2回計測する例を説明する。構造物計測装置100は1回目の計測及び2回目の計測ともに-Z軸方向に移動しつつ実施してもよく、1回目の計測は+Z軸方向、2回目の計測は-Z軸方向でもよい。また、構造物計測装置100は3回以上計測してもよい。
ステップS11~S15は第一の計測ステップS10であり、ステップS11~S14は同時に実施される。第一の計測ステップS10では、図9(a)に示すように保持部30が収縮した状態であるとして説明する。
ステップS11では、構造物計測装置100は第一の方向であるZ軸方向に移動する。より具体的には、移動手段部20がクレーンの動力によりZ軸方向に移動することにより、移動手段部20に固定された構造物計測装置100もZ軸方向に移動する。ステップS12では、照射部40は構造物1にスリット光42を照射する。ステップS13では、撮像部50は構造物1のスリット光42が照射された位置を撮像し、第一の撮像データを生成する。ステップS14では、位置取得部60は構造物計測装置100の第一の位置情報を取得する。ステップS15では、出力部80は第一の撮像データ、及び第一の撮像データが撮像された際の構造物計測装置100の第一の位置情報を対応付けた第一の計測データを出力する。
第一の計測ステップS10において出力される第一の計測データには、撮像不良領域がL1領域である第一の撮像データが含まれる。第一の撮像データのL1領域は、不要振動による測定誤差が重畳された撮像不良領域である。
ステップS20では、保持部30は移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更する。つまり、保持部30は、移動手段部20のレール走行部24を基準とした構造物1の光42が照射される位置を変更する。ここでは、図9(a)に示す状態から図9(b)に示す状態に変更する例を説明する。ステップS20は、構造物計測装置100が自動で実施してもよく、作業者により実施されてもよい。
ステップS31~S35は第二の計測ステップS30であり、ステップS31~S34は同時に実施される。第二の計測ステップS30では、図9(b)に示すように保持部30が伸長した状態であるとして説明する。
ステップS31では、構造物計測装置100は第一の方向であるZ軸方向に移動する。ステップS32では、照射部40は構造物1にスリット光42を照射する。ステップS33では、撮像部50は構造物1のスリット光42が照射された位置を撮像し、第二の撮像データを生成する。ステップS34では、位置取得部60は構造物計測装置100の第二の位置情報を取得する。ステップS35では、出力部80は第二の撮像データ、及び第二の撮像データが撮像された際の構造物計測装置100の第二の位置情報を対応付けた第二の計測データを出力する。
第二の計測ステップS30において出力される第二の計測データでは、撮像不良領域がL2領域である第二の撮像データが含まれる。第二の撮像データのL2領域は、不要振動による測定誤差が重畳された撮像不良領域である。つまり、第二の計測ステップS30では、第一の撮像データと撮像不良領域が異なるように撮像した第二の撮像データが出力される。
ステップS40では、送信部90は、出力部80により出力された第一の計測データ及び第二の計測データをデータ処理装置200に送信する。
以上により、構造物計測装置100の処理動作を終了する。
次に、図12を用いてデータ処理装置200の処理動作を説明する。図12は実施の形態1のデータ処理装置200の処理動作を示すフローチャートである。
ステップS50では、入力部230は第一の撮像データ及び第二の撮像データを入力する。入力部230は、複数の撮像データの入力を受信部210により受信した計測データから抽出して行ってもよく、作業者の指示に基づき入力してもよい。
ステップS60では、抽出部240は、第一の撮像データ及び第二の撮像データの少なくとも1つにおいて、撮像不良領域の撮像データを抽出する。例えば、抽出部240は第一の撮像データのL1領域の撮像データを抽出する。
ステップS70では、加工部250は抽出部240において抽出された撮像不良領域を、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する。加工部250は、例えば計測データに含まれる撮像データが撮像された際の構造物計測装置100の位置情報を用いて、第二の撮像データにおけるL1領域を抽出する。抽出した第二の撮像データにおけるL1領域は、第一の撮像データのL1領域よりも、不要振動による測定誤差が小さい。そこで、加工部250は第一の撮像データのL1領域の撮像データを第二の撮像データのL1領域の撮像データに置換した加工データを生成する。
このようにして、加工部250は、第一の撮像データ及び第二の撮像データよりも、不要振動による測定誤差が軽減された加工データを生成することができる。また、上述したとおり、保持部30のZ軸方向に伸縮可能な長さL3をL0区間のZ軸方向の長さよりも大きくなるように設定した場合、L1領域とL2領域は重なることなく互いに独立した領域となるため、第二の撮像データのL1領域は不要振動による測定誤差が含まれない。そのため、L1領域とL2領域が異なる場合、加工部250は、不要振動による測定誤差が含まれない加工データを生成することができる。
ステップS80では、解析部260は加工データを用いて、構造物1の形状を解析する。
以上により、データ処理装置200の処理動作を終了する。
次に、構造物計測システム300の効果を説明する。
本実施の形態の構造物計測装置100は、構造物1に沿って第一の方向に移動可能な移動手段部20に固定され、構造物1を撮像する。そして、構造物計測装置100は、移動手段部20を基準とした、構造物1の光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能である。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
例えば、構造物計測装置100は、図9(a)に示すように保持部30が収縮した状態で構造物1を撮像した第一の撮像データと、図9(b)に示すように保持部30が伸長した状態で構造物1を撮像した第二の撮像データとを撮像する。第一の撮像データは撮像不良領域であるL1領域を含み、第二の撮像データは撮像不良領域であるL2領域を含む。しかしながら、第一の撮像データ及び第二の撮像データは、移動手段部20を基準とした、構造物1の光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係が異なる条件で構造物計測装置100により撮像された撮像データである。そのため、第一の撮像データのL1領域と第二の撮像データのL2領域とは、少なくとも一部が異なる。このように、構造物計測装置100は、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを撮像することができる。したがって、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを用いることにより、構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、保持部30は、構造物計測装置100が第一の方向に移動しつつ構造物1を撮像する際に、撮像不良領域が異なるように、移動手段部20を基準とした、構造物1の光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能である。本実施の形態では、撮像不良領域は、移動手段部20が構造物1に沿って設けられたレール11、12、14、15の連結部13、16を通過することにより振動が発生する間に撮像部50により撮像される構造物1上の領域である。具体的には、図9(a)ではL1領域、図9(b)ではL2領域である。上述したように、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを用いることにより、構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、保持部30は、移動手段部20のレール走行部24を基準とした構造物1の光42が照射される位置を変更することができる。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを用いることにより、構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、保持部30は、移動手段部20を基準とする照射部40の位置を第一の方向において伸縮可能である。すなわち、保持部30は、移動手段部20を基準とする照射部40の位置を少なくとも第一の方向において伸縮可能な伸縮機構を有し、伸縮機構により少なくとも移動手段部20が同じ場所を通過する際に構造物1に照射される光42の位置を変更可能である。よって、保持部30は、移動手段部20を基準とした、構造物1の光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更することができる。
また、保持部30のZ軸方向に伸縮可能な長さL3をL0区間のZ軸方向の長さよりも大きくなるように設定することが好ましい。つまり、保持部30の伸縮機構における照射部40の位置の第一の方向における伸縮量は、第一の方向における撮像不良領域の長さよりも長い。これにより、撮像不良領域が重複しない異なる複数の撮像データを撮像することができるので、より構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、照射部40は構造物1にスリット光42を照射し、撮像部50はスリット光42の照射方向に対して角度を持った方向から構造物1のスリット光42が照射される位置を撮像する。これにより、光切断法により構造物1の形状を解析することができる。
本実施の形態のデータ処理装置200は、構造物1に沿って第一の方向に移動しつつ、光42を構造物1に照射し、構造物1の光42が照射された位置を撮像する構造物計測装置100において撮像された、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを入力する入力部230と、入力部230により入力された複数の撮像データの少なくとも1つにおいて、撮像不良領域の撮像データを抽出する抽出部240と、抽出部240において抽出された撮像不良領域の撮像データを、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する加工部250と、を備える。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、データ処理装置200は撮像不良領域が含まれない加工データを生成することができる。よって、データ処理装置200は、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、加工データを生成することにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、データ処理装置200は構造物の形状を解析する解析部260をさらに備える。これにより、構造物1の形状の解析をすることができる。
本実施の形態の構造物計測方法は、構造物1に沿って第一の方向に移動しつつ、照射部40により構造物1に光42を照射し、構造物1の光42が照射される位置を撮像部50により撮像し、第一の撮像データを出力する第一の計測ステップと、第一の撮像データと撮像不良領域が異なるように撮像した第二の撮像データを出力する第二の計測ステップと、第一の撮像データ及び第二の撮像データの少なくとも1つにおいて、撮像不良領域の撮像データを抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出された撮像不良領域の撮像データを、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する加工ステップを備える。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、撮像不良領域が含まれない加工データを生成することができるので、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
なお、保持部30は照射部40及び撮像部50を保持し、照射部40及び撮像部50の位置を変更可能な構成である例を示したが、これに限られない。例えば、保持部30は照射部40を保持し、撮像部50は例えば移動手段部20に固定されてもよい。この場合、保持部30は照射部40の位置を変更可能に構成されればよい。
また、図中では、光42が照射される位置、照射部40の位置および撮像部50の位置の位置関係として3者間の位置関係を示しているが、これらの位置は幅を持った領域であってもよい。その場合、これら3者の位置関係として各位置の例えば中心点などの代表点からなる3者の位置関係を用いてもよい。
構造物計測装置100は、少なくとも第一の方向に移動可能であればよく、複数方向に移動可能であってもよい。その場合も同様に、構造物計測装置100は、少なくとも第一の方向に同じ場所を移動する際に、構造物1に光42が照射される位置の変更、構造物1の同一領域を撮影する際の光42の向きの変更または構造物1の同一領域を撮影する際の撮像部50の向きを変更することができる。
また、データ処理装置200の機能の一部、または全部を構造物計測装置100が備えても良い。
実施の形態2.
実施の形態2の構造物計測システム300について説明する。実施の形態1と実施の形態2とは、構造物計測装置100の保持部30が異なる。その他の構造物計測システム300の構成は実施の形態1と同様である。実施の形態1と同様の構成については、同一符号が付されている。
図7に示すように、実施の形態1の構造物計測装置100は、保持部30が照射部40及び撮像部50の位置を第一の方向に伸縮可能であることを特徴とする。すなわち、保持部30を構成するセンサ支持棒33、右側支持棒34、及び左側支持棒35はZ軸方向に伸縮可能な伸縮機構を有する。一方、実施の形態2の構造物計測装置100では、センサ支持棒33、右側支持棒34、及び左側支持棒35はZ軸方向に伸縮可能である必要はない。
本実施の形態の構造物計測装置100は、保持部30が照射部40及び撮像部50の位置を反転可能である、または照射部40と撮像部50の間の位置関係を維持したまま構造物1に光42が照射される位置に対する照射部40もしくは撮像部50の向きを変更可能であることを特徴とする。
そして、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を反転可能な着脱機構を有する。或いは、保持部30は照射部40と撮像部50の間の位置関係を維持したまま、構造物1に光42が照射される位置に対する照射部40もしくは撮像部50の向きを変更可能な回転機構を有する。保持部30は着脱機構または回転機構を利用して、少なくとも構造物1の同一領域を撮影する際の光42の向きまたは撮像部50の向きを変更可能である。
保持部30の構造の一例を説明する。図13は実施の形態2の構造物計測装置100の一部を示す拡大概略図である。図13(a)は照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態であり、図13(b)は図13(a)に対して照射部40及び撮像部50の位置が反転した状態であり、撮像部50が照射部40より+Z軸側に設置された状態を示している。ここでは、照射部40及び撮像部50の位置が反転とは、Z軸方向の照射部40及び撮像部50の位置の上下関係が反転することである。
上部支持棒31のセンサ支持棒連結部31a及び下部支持棒32のセンサ支持棒連結部32aのそれぞれの形状が互いに同一である。そして、センサ支持棒連結部31a及びセンサ支持棒連結部32aに係合するセンサ支持棒33の両端に固定された上部支持棒連結部33c及び下部支持棒連結部33dの形状も互いに同一である。これにより、上部支持棒31への下部支持棒連結部33dの取付け固定と下部支持棒32への上部支持棒連結部33cの取付け固定が可能となる。すなわち、図13(b)に示すようにセンサ支持棒33を、図13(a)に対して上下反転させて取付け固定する着脱機構を有し、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を反転することができる。
次に、回転機構を有する保持部30の構造の一例を説明する。図14は実施の形態2の構造物計測装置100の一部を示す拡大概略図である。図14(a)は照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態であり、図14(b)は図14(a)に対して照射部40及び撮像部50の位置が反転した状態であり、撮像部50が照射部40より+Z軸側に設置された状態を示している。
保持部30は、さらに回転部39を備える。回転部39は回転レバー38及び回転支持部33eを有する。回転レバー38はセンサ支持棒33に固定された回転支持部33eにより、Y軸回りに回動可能に軸支されている。照射部40及び撮像部50は回転レバー38に設置される。センサ支持棒33はストッパ33f、33gを有し、回転レバー38が回転した際にストッパ33fに設けられた係合部33hは回転レバー38の当接部38bと、ストッパ33gに設けられた係合部33iは回転レバー38の当接部38aと当接する位置関係にあり、回転レバー38の回転はこれらの当接により規制される。図14(a)は係合部33hと当接部38bが当接した状態、図14(b)は係合部33iと当接部38aが当接した状態を示したものである。図14(a)及び図14(b)は回転支持部33eを軸中心として回転レバー38がY軸回りに180度回転した状態であり、回転レバー38に設置された照射部40及び撮像部50は上下反転して設置された状態を示している。回転レバー38は、図14(a)及び図14(b)それぞれの位置でストッパ33f、33gにより固定される。
図15は、実施の形態2の構造物計測装置100と構造物1の関係を示す概略図である。図15は、移動手段部20を-Z軸方向へ移動し、構造物計測装置100は-Z軸方向に移動しつつ構造物1を撮像する状態を示している。図15(a)は、図13(a)又は図14(a)と同様に照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態である。図15(b)は、図13(b)又は図14(b)と同様に撮像部50が照射部40より+Z軸側に設置された状態である。
図15(a)はレール走行部24のガイドローラ24cが右側レール連結部13を通過する直前を示した図である。実施の形態1と同様に、L0区間では、右側レール連結部13の段差又は隙間に起因する不要振動が移動手段部20に伝達される。そのため、移動手段部20に固定された構造物計測装置100にも不要振動が伝達される。このため、図15(a)に示す構造物計測装置100により撮像された構造物1のL1領域の撮像データには、不要振動による測定誤差が重畳される。L1領域は、図15(a)においてレール走行部24が右側レール連結部13を通過する間に撮像部50により撮像された領域、また照射部40によって光42が照射される領域である。つまり、図15(a)において、L1領域は他の領域と比較して撮像不良領域である。L1領域のZ軸方向の長さはL0区間のZ軸方向の長さと同じである。ここでは右側について記載したが、左側も同様である。また、不要振動の方向はY軸方向に限定されない。
図15(b)はレール走行部24のガイドローラ24cが右側レール連結部13を通過する直前を示した図である。L0区間では、右側レール連結部13の段差又は隙間に起因する不要振動が移動手段部20に伝達される。そのため、移動手段部20に固定された構造物計測装置100にも不要振動が伝達される。このため、図15(b)に示す構造物計測装置100により撮像された構造物1のL21領域の撮像データには、不要振動による測定誤差が重畳される。L21領域は、図15(b)においてレール走行部24が右側レール連結部13を通過する間に撮像部50により撮像された領域、また照射部40によって光42が照射される領域である。つまり、図15(b)において、L21領域は他の領域と比較して撮像不良領域である。L21領域のZ軸方向の長さはL0区間のZ軸方向の長さと同じである。ここでは右側について記載したが、左側も同様である。また、不要振動の方向はY軸方向に限定されない。
実施の形態1と同様に、移動手段部20のレール走行部24がレール連結部13、15を通過することにより振動が発生する間に撮像部50により撮像される構造物1上の領域、あるいは照射部40によって光42が照射される領域を、撮像不良領域と称する。すなわち、撮像不良領域は、図15(a)ではL1領域の少なくとも一部であり、図15(b)ではL21領域の少なくとも一部である。以下では、撮像不良領域は、図15(a)ではL1領域全体、図15(b)ではL21領域全体とする。
図15(a)及び図15(b)を比較すると、保持部30は、照射部40及び撮像部50の位置を反転または回転することにより、移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能であることが分かる。保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を自動で反転または回転可能に構成されてもよく、作業者により変更可能に構成されてもよい。
また、図15に示すように反転または回転の前後の、移動手段部20を基準とした構造物1の光42が照射される位置のZ軸方向における移動量L20が、撮像不良領域のZ軸方向の長さL0区間よりも長くなるようにL20を設定することが好ましい。ここで、L0区間のZ軸方向の長さとL1領域及びL21領域のZ軸方向の長さは等しい。つまり、保持部30は反転前後の照射部40の位置の距離が撮像不良領域よりもZ軸方向に長くなるように構成するとよい。これにより、L1領域とL21領域は重なることなく互いに独立した領域となる。
次に、構造物計測システム300による構造物計測方法について説明する。まず、構造物計測装置100の処理動作を説明する。
実施の形態1と同様に、構造物計測装置100は少なくとも2回、構造物1の同じ領域を構造物1に沿って第一の方向に移動しつつ構造物1を撮像する。ここでは、構造物計測装置100は構造物1の同じ領域を構造物1に沿ってZ軸方向に2回計測する例を説明する。
図11に戻り、ステップS11~S15は第一の計測ステップS10である。第一の計測ステップS10は、図15(a)に示すように照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態である。ステップS11~S15の処理動作は実施の形態1と同様である。
第一の計測ステップS10において出力される第一の計測データには、撮像不良領域がL1領域である第一の撮像データが含まれる。第一の撮像データのL1領域は、不要振動による測定誤差が重畳された撮像不良領域である。
ステップS20では、保持部30は移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更する。ここでは、図15(a)に示す状態から図15(b)に示す状態に変更する例を説明する。
ステップS31~S35は第二の計測ステップS30である。第二の計測ステップS30では、図15(b)に示すように図15(a)に対して照射部40及び撮像部50の位置が反転または回転した状態であり、撮像部50が照射部40より+Z軸側に設置された状態である。ステップS31~S35の処理動作は実施の形態1と同様である。
第二の計測ステップS30において出力される第二の計測データでは、撮像不良領域がL21領域である第二の撮像データが含まれる。第二の撮像データのL21領域は、不要振動による測定誤差が重畳された撮像不良領域である。つまり、第二の計測ステップS30では、第一の撮像データと撮像不良領域が異なるように撮像した第二の撮像データが出力される。
ステップS40では、送信部90は、出力部80により出力された第一の計測データ及び第二の計測データをデータ処理装置200に送信する。
以上により、構造物計測装置100の処理動作を終了する。
次に、データ処理装置200の処理動作を説明する。
図12に戻り、ステップS50及びステップS60は実施の形態1と同様である。
ステップS70では、加工部250は抽出部240において抽出された撮像不良領域を、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する。第一の撮像データのL1領域は、第二の撮像データのL21領域よりも、不要振動による測定誤差が重畳されている。そこで、加工部250は第一の撮像データのL1領域の撮像データを第二の撮像データのL1領域の撮像データに置換した加工データを生成する。これにより、加工部250は、第一の撮像データ及び第二の撮像データよりも、不要振動による測定誤差が軽減された加工データを生成することができる。また、上述したとおり、反転または回転の前後の、移動手段部20を基準とした構造物1の光42が照射される位置のZ軸方向における移動量L20が、撮像不良領域のZ軸方向の長さL0区間よりも長くなるようにL20を設定した場合、L1領域とL21領域は重なることなく互いに独立した領域となるため、第二の撮像データのL1領域は不要振動による測定誤差が含まれない。そのため、L1領域とL21領域が異なる場合、加工部250は、不要振動による測定誤差が含まれない加工データを生成することができる。
ステップS80は実施の形態1と同様である。
以上により、データ処理装置200の処理動作を終了する。
次に、構造物計測システム300の効果を説明する。
実施の形態1と同様に、本実施の形態の構造物計測装置100は、構造物1に沿って第一の方向に移動可能な移動手段部20に固定され、構造物1を撮像する。そして、構造物計測装置100は、移動手段部20を基準とした、構造物1の光が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能である。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を反転可能である、または照射部40と撮像部50の間の位置関係を維持したまま構造物1に光42が照射される位置に対する照射部40もしくは撮像部50の向きを変更可能である。すなわち、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を反転可能な着脱機構、または照射部40と撮像部50の間の位置関係を維持したまま構造物1に光42が照射される位置に対する照射部40もしくは撮像部50の向きを変更可能な回転機構を有する。そして、保持部30は着脱機構または回転機構を利用して、少なくとも構造物1の同一領域を撮影する際の光42の向きまたは撮像部50の向きを変更可能である。そのため、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、撮像不良領域が異なる複数の撮像データを用いることにより、構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、反転または回転の前後の、移動手段部20を基準とした構造物1の光42が照射される位置のZ軸方向における移動量L20が、撮像不良領域のZ軸方向の長さL0区間よりも長い。これにより、撮像不良領域が重複しない異なる複数の撮像データを撮像することができるので、より構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を第一の方向に伸縮可能に構成する必要がないため、構造物計測装置100の高さ方向、すなわちZ軸方向の小型化が可能である。
なお、実施の形態1と同様に、例えば図13の保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を第一の方向に伸縮可能な構成としてもよい。この場合は、照射部40及び撮像部50のZ軸方向の位置のZ軸方向の距離L20を、実施の形態1のL3より大きくすることができる。そのため、構造物計測装置100に不要振動が伝達される区間L0がより長い場合でも、構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
なお、上記例では照射部40及び撮像部50が反転すなわち180度回転する例を示したが、必ずしも180度回転することは必須ではなく、照射部40による光42の照射角度が変更されればよい。
実施の形態3.
実施の形態3の構造物計測システム300について説明する。実施の形態3の構造物計測装置100は実施の形態2の構造物計測装置100と同様である。実施の形態1及び実施の形態2と同様の構成については、同一符号が付されている。
実施の形態2では、撮像不良領域は、移動手段部20がレールの連結部を通過することにより振動が発生する間に撮像部50により撮像される構造物1上の領域である例を示した。
図16は、実施の形態3の構造物計測装置100と構造物1の関係を示す概略図である。本実施の形態では、撮像不良領域は、構造物1上に存在する凹凸部1aにより撮像部50が構造物1を撮像できない死角となる構造物1の領域である例を説明する。構造物1上に存在する凹凸部1aとは、照射部40によりスリット光42が壁面に照射されない死角となる領域を生じさせる、構造物1上の凹部又は凸部であり、例えば窓枠等である。
また、上述のとおり、照射部40はスリット光42を構造物1に対して垂直に照射する。撮像部50はスリット光42の照射方向と角度を持たせて設置される。
図16(a)は、照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態である。図16(a)では、構造物計測装置100がZ軸方向へ移動しつつ構造物1を撮像した場合に、構造物1上に存在する凹凸部1aにより撮像部50の視線が遮られ、撮像部50が構造物1を撮像できない死角となる構造物1の領域をL31領域で示している。すなわち、図16(a)における撮像不良領域はL31領域である。
図16(b)は、図16(a)に対して照射部40及び撮像部50の位置が反転した状態であり、撮像部50が照射部40より+Z軸側に設置された状態を示している。図16(b)では、構造物計測装置100がZ軸方向へ移動しつつ構造物1を撮像した場合に、構造物1上に存在する凹凸部1aにより撮像部50の視線が遮られ、撮像部50が構造物1を撮像できない死角となる構造物1の位置をL32領域で示している。すなわち、図16(b)における撮像不良領域はL32領域である。
次に、構造物計測システム300による構造物計測方法について説明する。まず、構造物計測装置100の処理動作を説明する。
構造物計測装置100の処理動作は実施の形態2と同様である。
図11に戻り、構造物計測装置100ステップS11~S15は第一の計測ステップS10である。第一の計測ステップS10は、図16(a)に示すように照射部40が撮像部50より+Z軸側に設置された状態である。
第一の計測ステップS10において出力される第一の計測データには、撮像不良領域がL31領域である第一の撮像データが含まれる。
ステップS20では、保持部30は移動手段部20を基準とした、構造物1のスリット光42が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更する。つまり、保持部30は、照射部40の位置に対して撮像部50の位置をZ軸方向に反対の位置に変更する。ここでは、図16(a)に示す状態から図16(b)に示す状態に変更する例を説明する。
第二の計測ステップS30において出力される第二の計測データでは、撮像不良領域がL32領域である第二の撮像データが含まれる。つまり、第二の計測ステップS30では、第一の撮像データと撮像不良領域が異なるように撮像した第二の撮像データが出力される。
ステップS40では、送信部90は、出力部80により出力された第一の計測データ及び第二の計測データをデータ処理装置200に送信する。
以上により、構造物計測装置100の処理動作を終了する。
次に、図12に戻りデータ処理装置200の処理動作を説明する。
ステップS50は実施の形態1と同様である。
ステップS60では、抽出部240は、第一の撮像データ及び第二の撮像データの少なくとも1つにおいて、撮像不良領域の撮像データを抽出する。例えば、抽出部240は、予め設定された条件として、スリット光42が検出できない撮像データの領域とし、スリット光42が検出できない領域の撮像データを抽出する。また、抽出部240は、予め設定された条件として、予め設定された閾値以上の高さ、あるいは予め設定された閾値以上の深さをもつ構造物1の凹凸形状に隣接した領域とし、予め設定された閾値以上の高さ、あるいは予め設定された閾値以上の深さをもつ構造物1の凹凸形状に隣接した領域の撮像データを抽出する。具体的には、抽出部240は第一の撮像データのL31領域の撮像データを抽出する。抽出部240は、第一の撮像データと第二の撮像データとを比較して、撮像不良となっているL31領域を抽出してもよく、第一の撮像データにおいてスリット光42が検出できない撮像データの領域を抽出してもよい。
ステップS70では、加工部250は抽出部240において抽出された撮像不良領域を、他方の撮像データを用いて補完した加工データを生成する。例えば、加工部250は第一の撮像データのL31領域の撮像データを第二の撮像データのL31領域の撮像データに置換した加工データを生成する。第二の撮像データのL31領域の撮像データは撮像不良領域を含まない。そのため、加工部250は、第一の撮像データ及び第二の撮像データよりも、構造物1上に存在する凹凸部1aにより撮像部50が構造物1を撮像できない領域が少ない加工データを生成することができる。
ステップS80では、解析部260は加工データを用いて、構造物1の形状を解析する。
以上により、データ処理装置200の処理動作を終了する。
次に、構造物計測システム300の効果を説明する。
実施の形態1と同様に、本実施の形態の構造物計測装置100は、構造物1に沿って第一の方向に移動可能な移動手段部20に固定され、構造物1を撮像する。そして、構造物計測装置100は、移動手段部20を基準とした、構造物1の光が照射される位置、照射部40の位置、及び撮像部50の位置の3者の位置関係を変更可能である。これにより、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。
また、実施の形態2と同様に、保持部30は照射部40及び撮像部50の位置を反転可能である、または照射部40と撮像部50の間の位置関係を維持したまま構造物1に光42が照射される位置に対する照射部40もしくは撮像部50の向きを変更可能である。そして、保持部30は着脱機構または回転機構を利用して、少なくとも構造物1の同一領域を撮影する際の光42の向きまたは撮像部50の向きを変更可能である。これにより、構造物計測装置100は、構造物1上に存在する凹凸部1aにより撮像部50が構造物1を撮像できない死角となる構造物1の領域である撮像不良領域が異なる撮像データを撮像することができる。そのため、構造物計測装置100により撮像された撮像データに撮像不良領域が含まれる場合でも、構造物計測装置100により撮像された撮像データを用いた構造物1の形状の解析精度の低下を抑制することができる。