JP7381644B2 - 銅合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金の製造方法に関する。
銅および銅合金の条および箔の製造においては、冷間圧延において表面の光沢度が調整されることが知られている。冷間圧延において制御される条件は、圧延速度、圧延油の粘度、圧延油の温度、加工度、ワークロールの表面粗さ、ワークロールの直径などである。
例えば、特開2006-281249号公報(特許文献1)には、銅張積層板を用いたフレキシブルプリント配線板(FPC)として純銅の圧延銅箔が用いられ、冷間圧延において下記の式(1)で規定される油膜当量を調整することが記載されている。
(油膜当量)={(圧延油粘度、40℃の動粘度;cSt)×(圧延速度;m/分)}/{(材料の降伏応力;kg/mm2)×(ロール噛込角;rad)}・・・(1)
特許文献1によれば、上記の式(1)に基づいて、低粘度の圧延油を用いたり圧延速度を遅くしたりする等して油膜当量を制御することにより、純銅からなる圧延銅箔の光沢度を調整することができる。
特開2006-281249号公報
圧延ロールと圧延銅箔との間に存在する油膜の厚みは、厳密に均一なものでなく、厚い部分と薄い部分とが混在する。油膜の厚い部分と油膜の薄い部分とでは、表面の塑性変形の態様が異なる。
油膜の薄い部分は、油膜の厚い部分に比べて表面に作用する押圧力が大きく、圧延ロールの表面に形成された凹凸による拘束は強固である。そのため、油膜が薄い部分は、圧延ロールの表面に形成された凹凸によって表面の酸化膜が破壊され新生面が現れる。一方、油膜の厚い部分は、油膜の薄い部分に比べて表面に作用する押圧力が小さく、圧延ロールの表面に形成された凹凸による拘束は軟弱である。そのため、油膜が厚い部分は、流動性を有する油膜が介在することによって表面の酸化膜が保存される。
圧延銅箔には金属組織に由来する局部の窪みが形成され、この局部の窪みはオイルピットと称される。オイルピットは圧延銅箔の表面において、油膜が局部的に厚くなった部分である。オイルピットは、酸化膜が残存し窪みを形成し、光の反射を阻害し、光沢度を高くする障害になる。そのため、純銅からなる圧延銅箔の場合、油膜当量が小さければ、圧延ロールと圧延銅箔との間に存在する油膜が薄くなり、その結果、オイルピットの発生が抑制され、光沢度の高い圧延銅箔を得ることができる。
しかしながら、コルソン合金については、油膜当量を小さく制御した場合であっても、純銅における実績から予想されるものに比べて著しく低い光沢度のものしか得られないことが分かった。特に厚みの0.1mm以下のコルソン合金箔にその傾向が強く認められた。
さらに、油膜当量の制御によって光沢度を高くする検討においては、はんだ付け性の劣る銅合金が散見されることが分かった。特に、光沢度が低いコルソン合金箔にその傾向が強く認められ、光沢度の高い合金箔にもはんだ付け性の劣る銅合金があった。
そこで、本開示は、光沢度が高く、かつ、はんだ付け性の良好なコルソン銅合金の製造方法を提供する。
本発明の実施の形態に係る銅合金は一側面において、Ni及びCoのうち1種以上を合計で0.5~5.0質量%、Siを0.1~1.2質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、圧延方向と直角な方向に測定した表面の表面粗さRskが-0.50~0.70、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60RDが200以上である銅合金である。
本発明の実施の形態に係る銅合金は一実施態様において、圧延方向と直角な方向に測定した表面の60度光沢度G60TDが150以上である。
本発明の実施の形態に係る銅合金は別の一実施態様において、圧延方向と直角な方向に測定した表面の表面粗さRaが0.03~0.20である。
本発明の実施の形態に係る銅合金は更に別の一実施態様において、圧延材の表面にめっき処理層を備え、圧延材の圧延方向と直角な方向に測定した該めっき処理層の表面の60度光沢度G60TDが250以上である。
本発明の実施の形態に係る銅合金は更に別の一実施態様において、Sn、Zn、Mg、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、P、Ag、Bのうち1種以上を総量で0.005~3.0質量%含有する。
本発明は別の一側面において、上記銅合金を備えた伸銅品である。
本発明は更に別の一側面において、銅合金を備えた電子機器部品であり、電子機器部品がカメラ部品を含む。
本開示によれば、光沢度が高く、かつ、はんだ付け性の良好な銅合金の製造方法が提供できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る銅合金は、Ni及びCoのうち1種以上を合計で0.5~5.0質量%、Siを0.1~1.2質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60RDが、200以上である銅合金である。
(Ni、Co及びSiの添加量)
Ni、Co及びSiは、適当な時効処理を行うことにより、Ni-Si、Co-Si、Ni-Co-Si等の金属間化合物として析出する。この析出物の作用により強度が向上し、析出によりCuマトリックス中に固溶したNi、Co及びSiが減少するため導電率が向上する。しかしながら、NiとCoの合計量が0.5質量%未満又はSiが0.1質量%未満になると高強度な銅合金を得ることが難しくなる。NiとCoの合計量が5.0質量%を超えると又はSiが1.2質量%を超えると、熱間圧延割れ等により合金の製造が困難になる。
このため、本発明の実施の形態に係る銅合金は、NiとCoのうち1種以上を合計で0.5~5.0質量%とし、Siを0.1~1.2質量%としている。NiとCoのうち1種以上の添加量は0.8質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上が更に好ましい。NiとCoのうち1種以上の添加量は4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましい。Siの添加量は0.35質量%以上がより好ましく、0.40質量%以上が更に好ましい。SIの添加量は、0.90質量%以下が好ましく、0.80質量%以上が更に好ましい。
(その他の添加元素)
副成分としてのSn、Zn、Mg、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、P、Ag、Bは強度上昇に寄与する。さらには、ZnはSnめっきの耐熱剥離性の向上に、Mgは応力緩和特性の向上に、Cr、Mnは熱間加工性の向上に効果がある。Sn、Zn、Mg、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、P、Ag、Bが総量で0.005質量%未満であると上記の効果は得られず、3.0質量%を超えると曲げ加工性が著しく低下する。このため、本発明の実施の形態に係る銅合金では、これらの元素を総量で0.005~3.0質量%含有することが好ましく、0.01~1.0質量%含有することがより好ましい。
(光沢度)
本発明の実施の形態に係る銅合金は、その表面の、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60RDが200以上、より好ましくは250以上、更に好ましくは300以上である。これにより、ピット状の凹凸が抑制された高い金属光沢を有する銅合金が得られる。
銅合金の表面の60度光沢度G60RDが高いほど高い光沢が発現できるため、製品外観が優れたものになるが、光沢度G60RDが高すぎると、良好なはんだ濡れ性が得られなくなる場合がある。以下に限定されるものではないが、圧延方向に平行な方向における表面の光沢度G60RDは、典型的には200~500であり、更に典型的には250~250あることが好ましい。
60度光沢度G60RDは、JIS Z8741に準拠した、例えば日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG-1等の種々の光沢度計を用いて、圧延方向に平行な方向の入射角60°での光沢度を測定することにより求めることが可能である。
本発明に係る銅合金はさらに、圧延方向に直角な方向における60度光沢度G60TDが150以上であり、典型的には150~450であり、より典型的には200~400である。
(めっき処理層の光沢度)
本発明に係る銅合金は、所定のめっき処理を施すことにより銅合金の表面に0.1~20μm程度のめっき処理層を形成した場合においても、高い光沢度を維持することができる。即ち、本発明に係る銅合金は、圧延材の表面にめっき処理層を備え、圧延材の圧延方向と直角な方向に測定した場合のめっき処理層の表面の60度光沢度G60TDが250以上である。本発明によれば、耐酸化性に優れ、見栄え品質としても外観性が優れた高い金属光沢を有するめっき処理層を有する銅合金が得られる。
めっき処理層としては、銅めっき層、すずめっき層、Niめっき層、若しくは金めっき層、又はこれらを表面めっき及び下地めっきとして組み合わせた層、又はこれらをストライプ状若しくはスポット状に配置した層などが挙げられる。特に、めっき処理層としてNiめっき層を配置することで、外観及び耐食性に優れた高光沢のめっき処理層を具備した銅合金が得られる。
(表面粗さRsk)
本発明の実施の形態において、表面粗さRskは、JISB0601 「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ」(2017年)により定義される指標に基づいて測定された結果を示す。例えば、JIS規格B0601(2013)に基づいて、非接触のレーザー式表面粗さ計、例えばレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡及び附属の計算ソフトを用いて、圧延材表面の圧延方向と直角な方向に沿った表面粗さプロファイルから算出することができる。
JISB0601において粗さ曲線は、平均線をはさんで山と谷とが交互に連鎖した形状を呈する。平均線を対称の軸としたとき、Rskは、山と谷との対称性を示す指標であり、その定義から概念的にRskを以下のように理解することができる。
(1)高さが高く幅が狭い山が多く、深さが浅く幅の広い谷が多いとき、Rskは正の値をとる。高さが高く幅が狭い山が多いほど、深さが浅く幅の広い谷が多いほど、Rskの絶対値は大きくなる。
(2)高さが低く幅が広い山が多く、深さが深く幅の狭い谷が多いとき、Rskは負の値をとる。高さが低く幅が広い山が多く、深さが深く幅の狭い谷が多いほど、Rskの絶対値は大きくなる。
(3)山の高さと谷の深さとが同じで、山の幅と谷の幅とが同じとき、Rskは0を示す。
冷間圧延で仕上げられた銅合金の表面には、冷間圧延及び冷間圧延以外の工程における処理または加工に起因して生成される局部の窪みが多かれ少なかれ存在する。局部の窪みが存在する密度が高いと、Rskが正の値のとき、Rskの絶対値は小さな値を示す。また、局部の窪みが存在する密度が高いと、Rskが負の値のとき、Rskの絶対値は大きな値を示す。
形状が原因となり、局部の窪みに、処理または加工の効果が及ばない場合がある。または、処理または加工の効果が小さい場合がある。そのため、局部の窪みには異物が残留しやすい。異物として、酸洗工程で用いる酸洗液、冷間圧延工程で用いる圧延油、圧延油を除去する工程で用いる脱脂液、時効処理等の熱処理で生成した酸化物などに由来するものを挙げることができる。
局部の窪みに異物が存在することは、銅合金のはんだ付け性を劣化させる原因となる。したがって、局部の窪みが存在する密度は低い方が好ましい。すなわち、Rskが正の値の場合、Rskの絶対値は大きい方が好ましい。また、Rskが負の値の場合、Rskの絶対値は小さい方が好ましい。
銅合金表面に存在する局部の窪みは、光の反射に影響を及ぼす。すなわち、局部の窪みに入射した光線は、局部の窪みに吸収され反射しない。または、局部の窪みに入射した光線は、入射角と反射角とが同じにならない。したがって、局部の窪みは、光沢度を低下させる原因となる。
銅合金表面の光沢度の観点から、Rskが正の値の場合、Rskの絶対値は大きい方が好ましい。また、Rskが負の値の場合、Rskの絶対値は小さい方が好ましい。具体的には、本発明の実施の形態に係る銅合金は、その表面粗さRskが-0.50~0.70である。Rskが-0.50を下回ると局部の窪みの存在密度が高くなり、光沢度の低下、および、はんだ付け性の劣化をもたらす場合がある。好ましい範囲の上限値は金属光沢およびはんだ付け性の目的から規定されることはないが、コルソン合金の条および箔の場合は0.7を超えることはない。本発明の実施の形態に係る銅合金の表面粗さRskは、より典型的には-0.20~0.65であり、更に典型的には-0.15~0.40である。
(表面粗さRa)
表面粗さRaは、JIS規格B0601(2013)に基づいて、非接触のレーザー式表面粗さ計、例えばレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡及び附属の計算ソフトを用いて、圧延材表面の圧延方向と直角な方向に沿った表面粗さプロファイルから算出することができる。本実施形態に係る銅合金は、表面粗さRaが0.03~0.20μmであり、より典型的には0.06~0.07μmである。表面粗さRaが0.03~0.20μmの範囲外であると電子部品用の材料として不向きである場合がある。なお、表面粗さRaは、冷間圧延においてワークロールの表面粗さを制御することにより調整することができる。
(厚み)
本発明の実施の形態に係る銅合金は、コルソン合金の条または箔を含み、その厚さは典型的には0.030mm~0.15mmとすることができ、より典型的には0.030~0.120mmとすることができ、更に典型的には、0.050~0.010mmとすることができる。
(用途)
本発明の実施の形態に係る銅合金は、電気・電子機器、自動車等で用いられる端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板、電磁シールド板、カメラ部品等を含む電子機器部品の用途に好適に使用することができる。
また、本発明の実施の形態に係る銅合金は、使用目的に応じて所定の厚みに仕上げることにより、銅合金条、銅合金板、銅箔の形態に加工することができる。本発明の実施の形態に係る銅合金を銅箔に加工する場合には、最終の冷間圧延を行った後の材料に対して酸洗研磨処理を施すことにより表面外観性に優れた高光沢の銅箔が得られる。
(製造方法)
本発明の実施の形態に係る銅合金は一般的なコルソン合金の製造方法を利用して製造することができる。コルソン合金の一般的な製造プロセスでは、まず溶解炉で電気銅、Ni、Co、Si等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。その後、熱間圧延及び冷間圧延を行って圧延材を得た後、これを溶体化処理、時効処理の順で処理することにより、所望の厚みおよび特性を有する銅合金条、銅合金板、又は銅箔に仕上げる。高強度化のために、溶体化処理と時効の間や時効処理後に冷間圧延を行ってもよい。
(時効処理における酸化膜の厚み)
本発明の実施の形態に係る銅合金は、時効処理後の表面酸化膜の厚さが15~35nmであることが好ましい。表面酸化膜の厚さが好ましい範囲の下限を下回ると、表面酸化膜が厚い部分、薄い部分及びほぼ酸化膜が存在しない部分とが混在するため、酸化の状態が不均一になる。酸化の状態が不均一であると、時効処理の後に酸洗した場合に、局部腐食、ピッティングコロージョン、あるいは孔食と称されるものが起こりやすくなり、表面に局部の窪みが生じる場合がある。また、酸化の状態が不均一であると、酸洗後の研磨処理においても研磨の効果が不均一となりやすくなり、表面に局部の窪みが生じる場合がある。更に、酸化の状態が不均一であると、冷間圧延において、圧延油の膜厚が不均一となりオイルピットと称される局部の窪みが発生する場合がある。このような局部の窪みが発生する結果、表面粗さRskが負の値を示しやすくなる。
酸化膜の厚みが、好ましい範囲の上限を上回ると、酸化膜は脆いものであるため亀裂が入りやすくなり、亀裂によって上記と同じ現象が発生する場合がある。酸化膜が厚い部分、薄い部分、ほぼ酸化膜が存在しない部分が混在するのは、コルソン合金には、母相である銅の内部に、Co-Si系またはNi-Si系の化合物相があり、これらは酸化速度が異なるため、酸化膜が薄い初期の段階では、酸化膜の生成に局部的な差異が生じやすいからである。Co-Si系またはNi-Si系の化合物相を含むのは、コルソン合金の製造においては高温から冷却する過程があり、Co-Si系またはNi-Si系の化合物相が析出または晶出するからである。時効処理後の銅合金の圧延面上に形成される表面酸化膜は25nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることが好ましい。
(酸化膜の厚みの測定方法)
酸化膜の厚みは、例えばオージェ電子分光法(AES)により測定することができる。AES分析では、酸素濃度の測定と、Arによるスパッタリングとを交互に行ない、酸素の濃度曲線を作製する。濃度曲線は、横軸がスパッタリング時間の積算値、縦軸が酸素濃度である。時効処理後のコルソン合金の表層は酸素濃度が高い。酸素濃度が最大を示したところでさらにArスパッタリングと酸素濃度の測定を交互に行うと、スパッタリング時間の積算値が増加するのに伴い酸素濃度は低下する。その後、スパッタリング時間の積算値によらず、酸素濃度は一定の値を示す。酸素濃度の最大値の2分の1の値である、Arスパッタリング時間の積算値を酸素の濃度曲線から求め、そのArスパッタリング時間を長さに換算しこれを酸化膜の厚みとする。
Arスパッタリング時間の積算値から長さへの換算は、SiO2のスパッタリング速度を基準にする。例えば、SiO2のスパッタリング速度が1nm/分、Arスパッタリング時間の積算値が12分のとき、1×12=12nmに換算される。この方法は、オージェ電子分光法(AES)で一般に行われるやり方である。好ましいスパッタリング速度は例えば1~2nm/分であり、1回のスパッタリング時間は1~2分である。
(酸化膜の厚みの制御方法)
時効処理における酸化膜の厚みは、加熱装置における雰囲気ガスの調整により制御することができる。好ましい雰囲気は、工業において用いられる還元性のガスで、組成および水分濃度を調整すればよい。例えば、アルゴンまたは窒素などの非酸化性のガスに、水素や一酸化炭素を混合したものを用いることができる。例えば、アルゴンが70~90質量%、水素が10~30質量%、露点が-40~-20℃のガスを用いることができる。
なお、上記の例に示した範囲でさえあれば、好ましい酸化膜の厚みを常に得ることができるわけではなく、コルソン合金は、酸素と反応しやすいSiを必須とし含有するため、コルソン合金の組成に応じてガスの組成を調整する必要がある。しかしながら、混合するガスの種類を最小限にすれば、簡単な予備試験により、好ましい組成を調整することが可能である。
光沢度が高く、かつ、はんだ付け性の良好な銅合金を得るためには、時効処理後の圧延方向と直角な方向に測定したコルソン合金の表面粗さRaが0.04~0.06となることが好ましい。時効処理後の圧延方向と直角な方向に測定した表面の表面粗さRaが好ましい範囲の上限を上回ると、時効処理後の冷間圧延において、圧延油の膜厚が不均一となりオイルピットによる凹凸が発生し、製品状態でのRskが負の値を示しやすくなる。Raが好ましい範囲の下限を上回ると、時効処理後の冷間圧延において、製品状態でのRskの調整の目的からは好ましいものの、圧延油が圧延ロールとコルソン合金との間に流入しにくくなり、冷間圧延が困難になる場合がある。表面粗さRaの調整は、時効処理を行う銅合金を所定の厚みに調整するための冷間圧延においてワークロールの表面粗さを制御することにより行うことができる。
時効処理後の表面粗さRaは、上述の製品表面の表面粗さRaの測定と同様に、JIS規格B0601(2013)に基づいて、非接触のレーザー式表面粗さ計、例えばレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡及び附属の計算ソフトを用いて、圧延材表面の圧延方向と直角な方向に沿った表面粗さプロファイルから算出される。
表面外観性に優れた高光沢の銅合金を得るためには、最終の冷間圧延工程における圧延油の温度を適切な範囲に制御することが好ましい。本実施形態においては、圧延温度を30~70℃とすることが好ましく、より好ましくは40~60℃である。
本発明の実施の形態に係る銅合金及びこれを用いた伸銅品、電子機器部品及び銅合金の製造方法によれば、表面に高い金属光沢し、良好な表面外観を実現することが可能となる。また、本発明の実施の形態に係る銅合金及びこれを用いた伸銅品、電子機器部品によれば、Pbの有無にかかわらず、はんだ付け性が良好で、酸洗研磨後の銅合金の上にめっき層を形成した場合においても高光沢で表面外観性に優れた銅合金が得られる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
真空溶解炉にて電気銅を溶解し、所定の組成が得られるようにNi、Co、Si及び添加元素(副成分)を添加して、インゴットを鋳造した。このインゴットに対して熱間圧延、冷間圧延を順次行い、冷間圧延条を得た。この冷間圧延条に溶体化処理を行い、その後冷間圧延、時効処理を行い、最後に酸洗研磨を行って製品とした。酸洗研磨工程では過酸化水素と硫酸との混酸を用いた酸洗とバフ研磨を行った。
酸洗研磨後の各材料につき、次の各評価を行った。
<表面粗さRa、Rsk>
酸洗研磨後の各材料の表面粗さRskを測定した。表面粗さRskは、JIS規格B0601(2013)に基づいて、レーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡及び附属の計算ソフトを用いて、圧延材表面の圧延方向と直角な方向に沿った表面粗さプロファイルから算出した結果を示す。また、酸洗研磨後の表面粗さRaと時効処理後の表面粗さRaを、表面粗さRskと同様の測定装置を用いて評価した。
<光沢度>
圧延平行方向及び圧延直角方向の60度光沢度G60RD、G60TDを、JIS Z8741に基き、日本電色工業株式会社製の光沢度計ハンディーグロスメーターPG-1を用いて測定した。
<はんだ付け性>
Pb入りはんだ(60質量%Sn-40質量%Pb)及び千住金属製Pbフリー半田M705系はんだを用い、はんだ付け試験を行った。はんだ濡れ性の評価では、JISC60068-2-54に準じ、ソルダーチェッカ(レスカ社製SAT-2000)によりメニスコグラフ法と同じ手順ではんだ付けをし、はんだ付け部の外観を観察した。測定条件はつぎのとおりである。試料の前処理としてアセトンを用いて脱脂した。次に10vol%硫酸水溶液を用いて酸洗を施した。はんだの試験温度は245±5℃とした。フラックスはロジン25質量%-エタノール75質量%を使用した。また、浸漬深さは12mm、浸漬時間は10秒、浸漬速度は25mm/秒、試料の幅は10mmとした。評価基準は、50倍の実体顕微鏡にて目視観察し、はんだ付け部の全面がはんだで覆われているものを良好(○)とし、はんだ付け部の一部(ピンホール)又は全面(はじき)がはんだで覆われていないものを不良(×)とした。
<めっき処理>
酸洗研磨後の材料に対して前処理としてアルカリ電解脱脂を行い、酸洗した後に、Niめっき処理を行った。ニッケルめっきには、通常光沢めっき、半光沢めっき及び光沢めっきがあるが、ここでは市販のめっき液により光沢めっきを行った。結果を表1及び表2に示す。
時効処理後の表面粗さRa、酸化膜厚、圧延油温度が好ましい範囲である実施例1~32では、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60RDが200以上、圧延方向と直角な方向に測定した表面の60度光沢度G60TDが150以上となり、光沢度が高く、表面外観性の良好な銅合金が得られ、はんだ付け性が良好で、めっき後の光沢度が高かった。
比較例1は時効処理後の酸化膜厚が薄かったため、製品の表面粗さRskが低くなり、圧延直角方向の60度光沢度G60TDが低くなった。その結果、はんだ付け性が劣るとともに、1μmめっき後に十分な金属光沢が発現しなかった。
比較例2は時効処理後の酸化膜厚が薄かったため、製品の表面粗さRskが低くなり、圧延平行方向および圧延直角方向の光沢度がともに低くなった。その結果、はんだ付け性が劣るとともに、1μmめっき後に十分な金属光沢が発現しなかった。
比較例3は、圧延油の温度を高くしたものの、製品の表面粗さRskを適正な範囲に制御することができず、圧延平行方向および圧延直角方向の光沢度がともに高くなった。1μmめっき後に金属光沢が発現したものの、はんだ付け性が劣っていた。
比較例4は、圧延油温度が低かった。そのため、圧延平行方向および圧延直角方向の光沢度がともに低くなった。その結果、はんだ付け性が良好であったものの、1μmめっき後に十分な金属光沢が発現しなかった。
比較例5は、時効処理後の表面粗さRaが大きかった。そのため、製品の表面粗さRskおよび圧延平行方向および圧延直角方向の光沢度のいずれもが低くなった。その結果、はんだ付け性が不良となり、1μmめっき後に十分な金属光沢が発現しなかった。
比較例6及び7は、時効処理後の酸化膜が厚かった。そのため、製品の表面粗さRskおよび圧延平行方向および圧延直角方向の光沢度のいずれもが低くなった。その結果、はんだ付け性が不良となり、1μmめっき後に十分な金属光沢が発現しなかった。

Claims (3)

  1. Ni及びCoのうち1種以上を合計で0.5~5.0質量%、Siを0.1~1.2質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60RDが200以上、圧延方向と直角な方向に測定した表面の表面粗さRskが-0.50~0.70となる表面に調整するために、時効処理における表面酸化膜の厚さの制御、混酸を用いた酸洗処理、バフ研磨を含む研磨処理、冷間圧延における圧延油の温度の制御の少なくとも1以上の工程によって局部の窪みの発生を抑制する工程を有する銅合金の製造方法。
  2. Ni及びCoのうち1種以上を合計で0.5~5.0質量%、Siを0.1~1.2質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる圧延材であり、圧延方向と平行な方向に測定した表面の60度光沢度G60 RD が200以上、圧延方向と直角な方向に測定した表面の表面粗さRskが-0.50~0.70となる表面に調整するために、局部の窪みの発生を抑制する工程を有し、前記局部の窪みの発生を抑制する工程が、時効処理の熱処理で生成した表面酸化膜の厚さを15~35nmに制御する工程を含む銅合金の製造方法。
  3. 前記圧延材が、Sn、Zn、Mg、Cr、Mn、Fe、Ti、Zr、P、Ag、Bのうち1種以上を総量で0.005~3.0質量%含有する請求項1又は2に記載の銅合金の製造方法。
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