JP2018062694A - Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材および製造方法並びに導電部材 - Google Patents

Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材および製造方法並びに導電部材 Download PDF

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Abstract

【課題】エッチング加工面の表面平滑性に優れる高強度Cu−Ni−Co−Si系銅合金の極薄板材を提供する。【解決手段】質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、EBSD(電子線後方散乱回折)法により特定されるBrass方位{011}<211>の集積度が5.00以上である結晶配向を有する、板厚10〜60μmの銅合金薄板材。【選択図】なし

Description

本発明は、幅の狭い高精度なフォトエッチング加工に適したCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材、およびその製造方法、並びにその銅合金薄板材を使用した導電部材に関する。
コネクタ等の導電ばね部材の小型化に伴い、寸法精度の高いエッチング加工が可能な高強度銅合金の薄板材が求められている。高精度のエッチング加工を施すためには、できるだけ表面凹凸の少ない(表面平滑性の良好な)エッチング加工面が得られる材料を適用する必要がある。しかし、板厚が60μm以下の極薄の高強度銅合金板材では、集合組織の影響により、平滑性に優れるエッチング加工面を実現することが難しい。以下、本明細書では、平滑性に優れるエッチング加工表面が得られる特性のことを「エッチング加工性」という。
特許文献1には、Cube方位{001}<100>の配向性を高めて曲げ加工性や疲労特性を改善した板厚0.03〜0.5mmのCu−Ni−Si系銅合金板材が開示されている。しかし、極薄材でのエッチング性の改善については考慮されていない。上記の結晶配向では、極薄板材で優れたエッチング加工性を実現することは難しい。
特許文献2には、圧延集合組織である(220)面の存在比率を低減した結晶配向(段落0067参照)により曲げ加工性や応力緩和特性を改善した板厚0.01〜2.0mmのCu−Ni−Co−Si系銅合金板材が開示されている。しかし、その結晶配向では、極薄材で優れたエッチング加工性を実現することは難しい。
特許文献3には、Brass方位などの特定の方位が突出していない、つまり方位密度が小さい状態(段落0021参照)として、曲げ加工性の改善を図ったCu−Ni−Si系銅合金板材が開示されている。しかし、そのような結晶配向では、極薄板材で優れたエッチング加工性を実現することは難しい。
特開2013−163853号公報 特開2016−44344号公報 特開2013−82968号公報
本発明は、高強度Cu−Ni−Co−Si系銅合金の極薄板材において、優れたエッチング加工性を有するもの(すなわち平滑性に優れるエッチング加工面が得られるもの)を提供することを、第1の目的とする。また、薄肉化された導電ばね部材として優れたばね特性や耐久性を発揮させるためには、極めて高強度であることが有利となる。したがって、優れたエッチング加工性と、極めて高い強度との両立を図ることを、第2の目的とする。さらに、条材から「切り板」を採取した場合に、その切り板の平坦性が良好であるほど、導電部材の寸法精度を高めるうえで有利となる。したがって、優れたエッチング加工性と、平坦性に優れる板形状の実現との両立を図ることを、第3の目的とする。
発明者らの研究によれば、以下のことがわかった。
(a)板厚60μm以下の極薄のCu−Ni−Co−Si系銅合金板材の場合、Brass方位{011}<211>の結晶配向を高めることが、優れたエッチング加工性の実現に極めて有効である。
(b)非常に高い{011}<211>結晶配向を有する極薄のCu−Ni−Co−Si系銅合金板材を実現するためには、(i)仕上冷間圧延において、少なくとも初期段階で1パスあたりの圧下率を十分に確保するとともにトータル圧延率を90%以上とすること、(ii)仕上圧延後に行う低温焼鈍において、高めの張力を付与しながら350℃以下の温度で十分な保持を行うこと、が極めて有効である。
(c)微細な第二相粒子が十分に分散させて、0.2%耐力が1000MPa以上という非常に高い強度レベルを極薄板材で実現するためには、(i)Ni、Co、Siの含有量を適正化すること、(ii)熱間圧延前の鋳片加熱において、1000℃以上で十分保持すること、(iii)溶体化処理において、適正温度で保持した後、冷却過程で所定温度域での滞在時間を十分に確保するヒートパターンを採用すること、(iv)時効処理を300〜400℃という低めの温度で十分に行うこと、(v)低温焼鈍の温度・時間が過度にならないように管理すること、が極めて有効であり、上記の優れたエッチング加工性との両立が可能である。
(d)平坦性に優れる板形状を極薄板材で実現するためには、(i)仕上冷間圧延において、例えば直径40mm以上といった比較的大径のワークロールを使用して所定の極薄板厚まで冷間圧延すること、(ii)低温焼鈍において、加熱保持時間を十分に確保するとともに、昇温速度・冷却速度が過大にならないように管理すること、が極めて有効であり、上記の優れたエッチング加工性との両立が可能である。
本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、EBSD(電子線後方散乱回折)法により、展開次数16、ガウス分布近似の半値幅5°として調和関数法で求めた方位分布関数(ODF)を用いて、完全ランダム方位分布に対する強度比として特定されるBrass方位{011}<211>の集積度が5.00以上である結晶配向を有する、板厚10〜60μmの銅合金薄板材が提供される。
上記元素のうち、Cu、Ni、Co、Si以外の元素は任意含有元素である。Niの含有量範囲は、Co含有量との関係から0.50〜3.50%となる。Yも希土類元素として扱う。
Brass方位は、面心立方格子の結晶において、{011}面が圧延面に平行で且つ<211>方向が圧延方向に平行な結晶の方位である。上記「集積度」は以下のようにして求められる。
〔{011}<211>集積度の求め方〕
板面(圧延面)をバフ研磨およびイオンミリングにより調製した観察面(圧延面からの除去深さが板厚の1/10)をFE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)により観察し、50μm×50μmの測定領域について、EBSD(電子線後方散乱回折)法により測定ピッチ0.2μmにて結晶方位を測定し、展開次数16、ガウス分布近似の半値幅5°として調和関数法で展開した方位分布関数(ODF)に基づくIntensity Plotから、Brass方位{011}<211>の強度を求める。その強度が、完全ランダム(全ての方位が等しく現れる状態)の強度を1として何倍の強度であるかを示す数値を定め、その数値を{011}<211>集積度とする。
上記板材において特に、圧延方向の0.2%耐力が例えば1000Mpa以上といった非常に強度レベルの高いものとして、マトリックス(金属素地)中に存在する粒子径5〜10nmの微細第二相粒子の個数密度が1.0×109個/mm2以上である金属組織を有するものが提供される。「第二相」はマトリックス中に存在する化合物相である。主に(Ni,Co)2Siを主体とする化合物相が挙げられる。微細第二相粒子個数密度は以下のようにして求めることができる。
〔微細第二相粒子の個数密度の求め方〕
測定対象である板材から採取した試料をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察視野中に確認できる粒子径5〜10nmの第二相粒子の個数をカウントする。観察視野は無作為に選択した1つまたは複数の視野とし、観察領域の総面積が5.0×10-3mm2以上となるようにする。粒子径は粒子を取り囲む最小円の直径とする。粒子径5〜10nmの第二相粒子のカウント総数を観察領域の総面積で除した値(個/mm2)を微細第二相粒子の個数密度とする。
上記板材において特に、平坦性に優れるものとして、下記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下であるもの、および下記(B)に定義するI−unitが5.0以下であるものが提供される。
(A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。各正方形サンプルごとに、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。
(B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面(以下、単に「投影表面」という)の中に圧延方向長さ400mm、圧延直角方向長さW0の長方形領域Xを定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(長さ400mm、幅10mm)を設定する。各短冊状領域ごとに、幅中央部の表面高さを圧延方向長さ400mmにわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
e=(π/2×h/L)2 …(1)
ただし、Lは基準長さ400mm
また、上記のエッチング加工性に優れた銅合金薄板材の製造方法として、質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋳片を製造し、鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順に有する手順で板厚10〜60μmの銅合金薄板材を製造するに際し、
仕上冷間圧延工程において、直径35〜50mmのワークロールを使用し、少なくとも圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスでは1パス当たりの圧下率を10.0%以上とし、かつトータル圧延率を90%以上とする条件で冷間圧延を施し、
低温焼鈍工程において、180〜220N/mm2の張力を付与しながら250〜350℃で150秒以上保持する条件で熱処理を施す、銅合金薄板材の製造方法が提供される。
ある板厚t0(mm)からある板厚t1(mm)までの圧延率は、下記(2)式により求まる。
圧延率(%)=(t0−t1)/t0×100 …(2)
ある圧延パスにおける1パスでの圧延率を本明細書では特に「圧下率」と呼んでいる。
特に、圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上という高強度と、最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下という平坦性の高い板形状を実現するための製造方法として、以下の手法を採用することができる。
上記の化学組成を有する鋳片を製造し、鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順に有する手順で板厚10〜60μmの銅合金薄板材を製造するに際し、
鋳片加熱工程において、鋳片を1000〜1060℃で2時間以上保持し、
溶体化処理工程において、950〜1020℃で0.5〜10分保持した後、600〜790℃の温度範囲に15〜300秒保持するヒートパターンを採用し、
時効処理工程において、時効温度を300〜400℃の範囲とし、
仕上冷間圧延工程において、直径35〜50mmのワークロールを使用し、少なくとも圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスでは1パス当たりの圧下率を10.0%以上とし、かつトータル圧延率を90%以上とする条件で冷間圧延を施し、
低温焼鈍工程において、180〜220N/mm2の張力を付与しながら290〜350℃で150〜720秒保持するとともに、前記保持温度までの昇温過程において最大昇温速度を70℃/s以下とし、かつ前記保持温度からの降温過程において最大冷却速度を70℃/s以下とする条件で熱処理を施す、銅合金薄板材の製造方法。
本発明によれば、Cu−Ni−Co−Si系銅合金の極薄板材において、エッチング加工面の表面平滑性に優れるものが実現できた。この極薄板材は、寸法精度の高い薄肉導電部品の素材として有用である。そのような優れたエッチング加工性を有する極薄板材において、0.2%耐力が1000MPa以上という強度レベルを得ることが可能である。また、極薄板材でありながら、極めて平坦性の高い切り板を採取することも可能である。
〔化学組成〕
本発明では、Cu−Ni−Co−Si系銅合金を採用する。以下、合金成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
NiおよびCoは、Ni−Si系化合物あるいはCo−Si系化合物(以下、これらをまとめて「Ni−Co−Si系化合物」と呼ぶことがある。)を形成し、銅合金板材の強度と導電性を向上させる。その析出物は主として(Ni,Co)2Siであると考えられる。この化合物は本明細書でいう「第二相」に該当する。強度向上に有効な微細な析出物粒子を十分に分散させるためには、NiとCoの合計含有量を2.50〜4.00%とする必要がある。このうち、Co含有量は0.50〜2.00%の範囲で調整する。Ni含有量は0.50〜3.50%の範囲で調整することができるが、1.50〜3.00%の範囲とすることがより好ましい。NiとCoの合計含有量が不足すると強度向上効果が小さい。NiとCoの合計含有量が多すぎると粗大第二相粒子が生成しやすく、この場合も強度向上効果が不十分となる。
Siは、Ni−Co−Si系化合物を形成する。強度向上に有効な微細な析出物粒子を十分に分散させるために、Si含有量を0.5%以上とする。Siが過剰であると粗大な析出物が生成して、熱間圧延時に割れやすくなる。Si含有量は1.50%以下に制限され、1.20%以下に管理してもよい。
その他の元素として、必要に応じてFe、Mg、Sn、Zn、B、P、REM(希土類元素)、Cr、Zr、Hf、Nb、S等を含有させることができる。これらの元素の含有量範囲は、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%の範囲とする。
Mg、Snは耐応力緩和性の向上に有効である。B、P、Cr、Zrは合金強度を更に高め、かつ耐応力緩和性の向上に有効である。Fe、Cr、Zrは、Sなどと高融点化合物を形成しやすく、また、B、P、Zrは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
〔結晶配向〕
発明者らの検討によれば、板厚が10〜60μmのCu−Ni−Co−Si系極薄板材のエッチング加工性を顕著に高めるには、前掲のBrass方位{011}<211>の集積度が5.00以上という結晶配向とすることが極めて有効であることがわかった。上記集積度が7.00以上であることがより好ましい。過度に高い{011}<211>集積度を得る必要はなく、通常15.00以下、あるいは13.50以下の範囲で調整すればよい。従来、低温焼鈍を終えたCu−Ni−Co−Si系銅合金の極薄板材でBrass方位への高い配向を得ることは容易ではなかった。しかし、後述のように製造工程に工夫を加えることによって、そのような結晶配向を安定して実現できることが確認された。{011}<211>集積度が高いことによるエッチング加工性の向上効果は、特に極薄板材において顕著となる。板厚10〜60μmでエッチング加工性の高い向上効果が認められるが、特に板厚10μm以上50μm未満の範囲では一層高い効果が得られる。
〔微細第二相粒子〕
銅合金においては一般に粒径10nm以下の微細析出物は強度向上への寄与が大きいことが知られており、Cu−Ni−Co−Si系合金では例えば2〜10nm程度の析出物の存在密度を十分に確保することで高強度化が可能であるとされる。しかしながら、0.2%耐力が1000MPa以上という高レベルの強度を得たい場合には、2〜10nm程度の粒子のなかでも特に硬化への寄与が大きい粒子径5〜10nmの粒子の量を十分に確保することが重要となる。発明者らの詳細な検討によれば、当該微細第二相粒子の存在量は1.0×109個/mm2個以上とすることが極めて有効である。1.5×109個/mm2個以上とすることがより効果的であり、2.0×109個/mm2個以上に管理してもよい。存在量の上限についてはNi、Co、Siの含有量を上述のように規定することによって制限を受けるので特に定める必要はないが、通常、5.0×109個/mm2個以下の範囲となる。
〔板材の形状〕
Cu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材の条材から、切り板を採取したときに、その切り板において優れた平坦性が得られるかどうかは、それを加工して得られる精密導電部材の形状(寸法精度)に大きく影響する。種々検討の結果、板材を実際に小片に切断したときに顕在化する圧延直角方向の湾曲(反り)が非常に小さいことが、部品の寸法精度を安定して向上させるために極めて重要である。具体的には板厚が10〜60μmのCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材において、前記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下である場合には、圧延直角方向の板幅W0のどの部分に由来する部品においても、薄肉精密導電部品としての寸法精度を安定して高く保つことができる加工性を具備している。最大クロスボウqMAXが200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがより好ましい。また、前記(B)に定義するI−unitが5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることが一層好ましい。極薄板材で高い平坦性を確保することは、0.1mm以上の板厚の板材と比べ、一般に難しい。後述する製造条件の工夫によって、板厚10〜60μm、あるいは10μm以上50μm未満といったCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材において、最大クロスボウqMAXとI−unitをそれぞれ上記の範囲内に調整することが可能である。
〔製造方法〕
以上説明した銅合金薄板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
溶解・鋳造→鋳片加熱→熱間圧延→冷間圧延→(中間焼鈍→冷間圧延)→溶体化処理→時効処理→仕上冷間圧延→低温焼鈍
なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Siなどの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
〔鋳片加熱〕
熱間圧延前に行う鋳片加熱は、鋳片を1000〜1060℃で2時間以上保持する条件で行うことが好ましい。上記温度での保持時間は、通常、5時間以内の範囲で設定すればよい。保持温度が低い場合や保持時間が短い場合は、鋳片に存在している粗大な第二相の残留量が多くなり、最終的に微細第二相粒子の量が比較的少なくなって0.2%耐力が1000MPa以上という非常に高い強度レベルには達しないことがある。保持温度が高すぎると鋳片中の融点が低い部分での強度が低下し、熱間圧延で割れが生じる恐れがある。
〔熱間圧延〕
上記の鋳片加熱を終えた材料を炉から出して、熱間圧延に供する。熱間圧延は通常の手法に従えばよい。トータルの熱間圧延率は例えば70〜97%とすればよい。最終パスの圧延温度は700℃以上とすることが好ましい。熱間圧延終了後には、水冷などにより急冷することが好ましい。熱間圧延後の板厚は例えば7.0〜20.0mmである。
〔冷間圧延〕
冷間圧延により、板厚を減じる。必要に応じて、冷間圧延の途中で中間焼鈍を行うことができる。
〔溶体化処理〕
一般に時効処理前には、マトリックスの再結晶化および溶質原子の再固溶化を主目的とする加熱保持が行われる。その冷却過程では、不用意に析出が生じないように常温まで急冷されるのが従来一般的な製法である。この加熱保持とその後の急冷過程を合わせて溶体化処理と呼ぶことが多い。本明細書では、上記の加熱保持の過程を「固溶化処理」と呼ぶ。固溶化処理の保持温度は800〜1020℃の範囲とすることができるが、950〜1020℃の範囲とすることがより好ましい。保持温度が低いと未固溶の粗大な第二相が残存して、最終的に微細第二相粒子の量が比較的少なくなって0.2%耐力が1000MPa以上という非常に高い強度レベルには達しないことがある。保持時間(材料がその温度域にある時間)は例えば0.5〜10分の範囲で設定することができる。
圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上という極めて高い強度レベルを実現するためには、固溶化処理後に600〜790℃の温度域に所定時間保持する熱履歴を付与することが有効である。この温度域での保持の過程を「前駆処理」と呼ぶ。前駆処理は、固溶化処理後の降温過程を利用して行うことが効率的である。前駆処理を行う場合においては、「固溶化処理」と「前駆処理」を含めた一連の熱処理を便宜上「溶体化処理」と呼んでいる。
Cu−Ni−Co−Si系合金ではNi−Si系およびCo−Si系の2種類の析出物がそれぞれ高強度化に寄与するが、両者の間で、最適な析出条件(温度や時間)は一致しない(ずれている)。最適な析出温度はNi−Si系では450℃前後、Co−Si系では520℃前後である。そのため、通常、これら2種類の析出物による時効硬化を同時に最大限利用することは難しい。ところが発明者らの研究によれば、上記の固溶化熱処理を終えた状態の材料を600〜790℃の温度域で所定時間保持したのちに、後述の低温域で行う時効処理を組み合わせると、Co−Si系化合物が析出しやすいことがわかった。この600〜790℃の温度域はNi−Si系化合物はほとんど析出せず、またCo−Si系化合物にとっては、析出は生じるが最適な析出温度を超えて高い温度域である。溶質原子が十分に固溶した母相を当該温度域に所定時間保持すると、Co、Siを主とするエンブリオが形成され、これが後述の時効処理でCo−Si系化合物の析出の駆動力となるのではないかと推察される。このエンブリオの生成はCo−Si系化合物析出の前駆現象と考えることができる。
前駆処理での保持時間、すなわち材料温度が600〜790℃の範囲にある時間は15〜300秒の範囲とすることが好ましい。600〜790℃の範囲内に設定した一定の温度に保持してもよいし、790℃から600℃までの温度域を徐冷しながら通過させてもよい。
固溶化処理温度から790℃までの平均冷却速度は例えば5〜50℃/sとすればよい。前駆処理の後は、時効処理温度範囲を急冷して通過させることが好ましい。例えば、600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/s以上となるように冷却することが好ましい。
〔時効処理〕
本発明で規定する化学組成のCu−Ni−Co−Si系合金の場合、前述の固溶化処理を終えていれば、300〜550℃の温度範囲で時効処理を施すことによって0.2%耐力900MPa以上の強度レベルを有する極薄板材を得ることができる。
一方、固溶化処理後に前駆処理を施した場合には、300〜400℃の低温域での時効処理を行うことによって0.2%耐力1000MPa以上の極めて高い強度レベルを達成できる。310〜380℃で時効処理を行うことがより好ましい。前駆処理でCo−Si系化合物粒子の核生成に関する自由エネルギーが大幅に低減してCo−Si系化合物が極めて析出しやすい組織状態となっているので、このような低温での時効でCo−Si系化合物の活発な生成が可能になるものと考えられる。この低温時効処理によれば、強度向上に最も効く粒径5〜10nmの微細第二相粒子が多量に形成されることがわかった。この低温時効処理によってNi−Si系化合物の析出も生じることが確認された。したがって、従来は難しかった2種類の析出物による析出硬化現象を有効に享受できる。また、時効処理温度を300〜400℃と低くすると、通常の時効処理よりも原子の拡散速度が遅くなる。そのため強化に寄与する固溶Siを残存させるためにも有利となる。
0.2%耐力が1000MPa以上の高強度を狙う場合には、時効処理後に粒子径5〜10nmの「微細第二相粒子」の個数密度が1.0×109個/mm2個以上となる条件を採用することが望ましい。最適な時効時間は3〜10時間の範囲に見出すことができる。
最適な時効条件を決定する指標として、下記(3)式を挙げることができる。
0.60≦ECage/ECmax≦0.80 …(3)
ここで、ECmaxは300〜500℃の温度範囲において50℃間隔で10時間の熱処理を行った場合に得られる最大の導電率、ECageは時効処理後の導電率である。ECage/ECmaxを0.60以上とすることにより析出量が十分に確保され、強度、導電率の改善に有利となる。また、ECage/ECmaxを0.80以下とすることにより母相中のSi濃度が十分に確保され、加工硬化能の改善に有利となる。
〔仕上冷間圧延〕
時効処理を終えた板材に仕上冷間圧延を施し、板厚10〜60μmの極薄板材を得る。板厚を10μm以上50μm未満の範囲に管理してもよい。また、20〜35μmの範囲に管理してもよい。極薄板材において前述のBrass方位の集積度を高めるためには、この仕上冷間圧延のパススケジュールの設定が重要となる。発明者らの詳細な実験によれば、少なくとも圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスでは1パス当たりの圧下率を10.0%以上とし、かつトータル圧延率を90%以上とする条件で仕上冷間圧延を施した場合において、後述の低温焼鈍を十分な張力付与下で行う処置との組み合わせによって、最終的にBrass方位の集積度が高い極薄板材を実現できることがわかった。そのメカニズムについては現時点で未解明である。
この仕上冷間圧延では、ロール直径が例えば25〜50mmのワークロールを使用すればよい。ロール直径が大きくなると、極薄板材への圧延に際して圧延荷重が過大となり、目標板厚まで圧延できない場合がある。一方、切り板を採取したときに平坦性の高い形状が実現できる極薄板材を得るためには、ロール径の大きいワークロールを使用することが有利である。検討の結果、前述の最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下となる極薄板材を得る場合には、ロール直径が35〜50mmのワークロールを使用することが好ましく、40〜50mmのワークロールを使用することがより好ましい。
〔低温焼鈍〕
仕上冷間圧延後には、通常、板条材の残留応力の低減、曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和性向上等を目的として低温焼鈍が施される。本発明では、更にBrass方位の集積度を高める目的でもこの低温焼鈍を利用する。Brass方位の集積度を高めるためには、上述の仕上冷間圧延において、圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスの圧下率を10.0%以上とし、かつトータル圧延率を90%以上とする条件で圧延を行った極薄材を適用する。そのうえで、この低温焼鈍では、180〜220N/mm2の圧延方向張力を付与しながら250〜350℃で150秒以上保持する条件を採用することが重要である。すなわち最高到達材料温度が250〜350℃の範囲となり、材料温度が250℃以上最高到達材料温度以下の温度域にある時間(保持時間)が150秒以上となるようにする。温度が低すぎる場合や保持時間が短すぎる場合は、残留応力低減など、低温焼鈍本来の目的が達成できない。張力が低すぎる場合や温度が高すぎる場合は、Brass方位の集積度が高い極薄板材を得ることができない。
一方、張力を付与して低温焼鈍を行うことは、良好な板形状を実現するためにも有効である。最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下という平坦性を得るためには、180〜220N/mm2の張力を付与する熱処理において、特に、最高到達材料温度を290〜350℃、250℃以上最高到達材料温度以下の保持時間を150〜720秒とするとともに、前記最高到達材料温度までの昇温過程において最大昇温速度を70℃/s以下とし、かつ前記最高到達材料温度からの降温過程において最大冷却速度を70℃/s以下とすればよい。
表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を表2に示す条件で加熱したのち炉から出し、厚さ14mmまで熱間圧延し、水冷した。なお、熱間圧延で割れが生じた一部の比較例では、その時点で製造を中止した。トータルの熱間圧延率は90〜95%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。次いで圧延率90〜99%で冷間圧延を行った。その後、表2に示す条件で溶体化処理を行った。溶体化処理の工程では一部の例を除き前述の前駆処理を施した。前駆処理は固溶化処理後の降温過程において所定温度に保持する方法で行った。固溶化処理温度から前駆処理温度まで平均冷却速度5〜50℃/secで冷却し、前駆処理温度で表2に示す時間の保持を行い、その後、600℃から300℃までの平均冷却速度が50℃/sec以上となるように常温まで冷却した。前駆処理を省略した一部の例では、固溶化処理温度から300℃より低温の温度域まで急冷した。溶体化処理を終えた材料に、表2に示す条件で時効処理を施した。表2中に前記(3)式により定まるECage/ECmax値を併記する。時効処理後の材料に、表3に示す条件で仕上冷間圧延を施した。表3のロール径は、使用したワークロールの直径を意味する。圧延率が50%未満である段階で開始する各圧延パスでは、1パス当たりの圧下率を表3に示す一定の値とした。仕上冷間圧延後の板厚は表4に示してある。板厚50μm未満まで圧延できなかった一部の比較例では、以降の工程を中止した。
次いで表3に記載の条件で低温焼鈍を施した。表3に示した低温焼鈍の温度は最高到達材料温度、低温焼鈍の時間は250℃以上の保持時間、すなわち材料温度が250℃以上最高到達材料温度以下である時間を意味する。低温焼鈍はカテナリー炉を連続通板する方法で行った。炉内雰囲気は窒素と水素の混合雰囲気とした。昇温開始から冷却終了までの板表面の温度を通板方向の種々の位置で測定し、各測定位置の平均温度の値を用いて、横軸に時間、縦軸に温度をとった温度曲線を求めた。1つの供試材においては通板中の板の全長にわたって同じ条件で熱処理を施しており、各測定位置での温度は経時的にほぼ一定値に安定しているので、この温度曲線の昇温時における最大勾配を当該供試材の最大昇温速度、冷却時における最大勾配を当該供試材の最大冷却速度として採用した。供試材毎の昇温速度および冷却速度は、それぞれ昇温ゾーンおよび冷却ゾーンにおける加熱出力、雰囲気温度、ファン回転数などを通板方向位置に応じて適切にコントロールすることにより調整した。また、低温焼鈍中の張力は、炉内を通板中の材料のカテナリー曲線(炉内通板方向両端部および中央部の板の高さ位置、並びに炉内長)から算出した。
低温焼鈍後にスリッターでスリット加工して、圧延直角方向の板幅W0が510mmの薄板材製品(供試材)を得た。
各供試材について、以下の調査を行った。
〔Brass方位{011}<211>の集積度〕
各供試材から採取した試験片について、上掲の「{011}<211>集積度の求め方」に従って、EBSD測定装置を備えるFE−SEM(JEOL社製、JXA−8530F)により、EBSD法で{011}<211>集積度を求めた。EBSDデータの解析には、TSLソリューションズ社製OIM 結晶方位解析装置を使用した。
〔微細第二相粒子の個数密度〕
供試材から直径3mmの円板を打ち抜き、ツインジェット研磨法でTEM観察試料を作製し、TEM(日本電子株式会社製、EM−2010)にて加速電圧200kVで倍率10万倍の無作為に選択した10視野について写真を撮影し、その写真上で粒子径5〜10nmの微細第二相粒子の数をカウントし、その合計数を観察領域の総面積で除することにより微細第二相粒子の個数密度(個/mm2)を求めた。ここでは1視野の大きさを770nm×550nmとした。粒子径は当該粒子を取り囲む最小円の直径とした。
〔エッチング面の表面粗さ〕
エッチング液として、塩化第二鉄42ボーメを用意した。供試材の片側表面を板厚が半減するまでエッチングした。得られたエッチング面について、レーザー式表面粗さ計にて圧延直角方向の表面粗さを測定し、JIS B0601:2013に従う算術平均粗さRaを求めた。このエッチング試験によるRaが0.15μm以下であれば、従来のCu−Ni−Co−Si系銅合金薄板材と比べ、エッチング面の表面平滑性は顕著に改善されていると評価できる。すなわち、微小サイズの導電ばね部材の作製において直線性の良いエッチングが可能であり、寸法精度の高い部品を得るために適したエッチング加工性を有していると判断される。従って、上記Raが0.15μm以下のものを合格(エッチング加工性;良好)と判定した。
〔圧延方向の0.2%耐力〕
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、0.2%耐力を測定した。n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。
〔I−unit〕
各供試材から圧延方向長さが400mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、上述(B)に定義されるI−unitを求めた。
〔最大クロスボウqMAX
各供試材について上述(A)に定義される最大クロスボウqMAXを求めた。
これらの結果を表4に示す。
Figure 2018062694
Figure 2018062694
Figure 2018062694
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本発明例のものはいずれもBrass方位{011}<211>の集積度が5.0以上と高く、優れたエッチング加工性を呈した。このうち、No.1〜20は、0.2%耐力が1000MPa以上という高強度と、最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下という平坦性の高い板形状をも具備するものである。No.21〜31は、優れたエッチング加工性が得られる製造条件範囲において、一部の製造条件を変更して、強度および板形状での影響を調べたものである。具体的には、No.21は鋳片加熱温度を低くしたもの、No.22は溶体化処理工程で前駆処理を省いたもの、No.23は時効処理温度を低くしたもの、No.24は時効処理温度を高くしたもの、No.25は鋳片加熱時間を短くしたもの、No.26は溶体化処理工程で固溶化温度を高くしたもの、No.29は低温焼鈍の保持時間を長くしたものであり、これらはいずれも微細第二相粒子の量が少なくなり、0.2%耐力が1000MPa以上の強度レベルには至っていない。No.27は仕上冷間圧延で直径の小さいワークロールを使用したもの、No.28は低温焼鈍の温度を低くしたもの、No.30は低温焼鈍の最大昇温速度を大きくしたもの、No.31は低温焼鈍の最大冷却速度を大きくしたものであり、これらはいずれも最大クロスボウqMAXが250μm以下、I−unitが5.0以下という平坦性の高い板形状の実現には至っていない。
比較例であるNo.50はNiとCoの合計含有量が高く、No.52はCo含有量およびSi含有量が高いので、これらは粗大第二相粒子が過大となって微細第二相粒子の量が少なくなり、結果的にBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。また、0.2%耐力が1000MPa以上の強度レベルも得られていない。No.51はNiとCoの合計含有量が低いので微細第二相粒子の量が少なくなり、結果的にBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。No.53は鋳片加熱温度が高かったので熱間圧延で割れが生じ、後工程に進めることができなかった。No.54は仕上冷間圧延で使用したワークロールの直径が大きかったので50μm未満まで板厚を減じることができず、後工程へ進めることを中止した。No.55は仕上冷間圧延において圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスの圧下率が低く、No.56は仕上冷間圧延のトータル圧延率が低いので、これらはBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。No.57は低温焼鈍での張力が高いのでBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。また、最大クロスボウqMAXを十分低減することもできなかった。No.58は低温焼鈍での張力が低いのでBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。また、I−unitおよび最大クロスボウqMAXを十分低減することもできなかった。No.59は低温焼鈍の温度が高いのでBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。また、0.2%耐力が1000MPa以上の強度レベルも得られていない。No.60は低温焼鈍の保持時間が短いのでBrass方位の集積度を高めることができず、エッチング加工性に劣った。

Claims (7)

  1. 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、EBSD(電子線後方散乱回折)法により、展開次数16、ガウス分布近似の半値幅5°として調和関数法で求めた方位分布関数(ODF)を用いて、完全ランダム方位分布に対する強度比として特定されるBrass方位{011}<211>の集積度が5.00以上である結晶配向を有する、板厚10〜60μmの銅合金薄板材。
  2. マトリックス(金属素地)中に存在する粒子径5〜10nmの微細第二相粒子の個数密度が1.0×109個/mm2以上である金属組織を有する請求項1に記載の銅合金薄板材。
  3. 下記(A)に定義する最大クロスボウqMAXが250μm以下である請求項1または2に記載の銅合金薄板材。
    (A)当該銅合金板材から圧延方向長さが50mm、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Pを採取し、その切り板Pをさらに圧延直角方向50mmピッチで裁断し、その際、圧延直角方向長さが50mmに満たない小片が切り板Pの圧延直角方向端部に発生したときはその小片を除き、n個(nは板幅W0/50の整数部分)の50mm角の正方形サンプルを用意する。各正方形サンプルごとに、日本伸銅協会技術規格JCBA T320:2003に規定の三次元測定装置による測定方法(ただし、w=50mmとする)に従い、水平盤上に置いたときのクロスボウqを、両面(両側の板面)について圧延直角方向に測定し、各面のqの絶対値|q|の最大値を当該正方形サンプルのクロスボウqi(iは1〜n)とする。n個の正方形サンプルのクロスボウq1〜qnのうちの最大値を最大クロスボウqMAXとする。
  4. 下記(B)に定義するI−unitが5.0以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金薄板材。
    (B)当該銅合金板材から圧延方向長さが400mmであり、圧延直角方向長さが板幅W0(mm)である長方形の切り板Qを採取し、水平盤上に置く。切り板Qを鉛直方向に見た投影表面(以下、単に「投影表面」という)の中に圧延方向長さ400mm、圧延直角方向長さW0の長方形領域Xを定め、その長方形領域Xをさらに圧延直角方向10mmピッチで短冊状領域に分割し、その際、圧延直角方向長さが10mmに満たない狭幅の短冊状領域が長方形領域Xの圧延直角方向端部に発生したときはその狭幅の短冊状領域を除き、隣接するn箇所(nは板幅W0/10の整数部分)の短冊状領域(長さ400mm、幅10mm)を設定する。各短冊状領域ごとに、幅中央部の表面高さを圧延方向長さ400mmにわたって測定し、最大高さhMAXと最小高さhMINの差hMAX−hMINの値を波高さhとし、下記(1)式により求まる伸び差率eを当該短冊状領域の伸び差率ei(iは1〜n)とする。n箇所の短冊状領域の伸び差率e1〜enのうちの最大値をI−unitとする。
    e=(π/2×h/L)2 …(1)
    ただし、Lは基準長さ400mm
  5. 圧延方向の0.2%耐力が1000MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金薄板材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅合金薄板材を材料に用いた導電部材。
  7. 質量%で、NiとCoの合計:2.50〜4.00%、Co:0.50〜2.00%、Si:0.50〜1.50%、Fe:0〜0.50%、Mg:0〜0.10%、Sn:0〜0.50%、Zn:0〜0.15%、B:0〜0.10%、P:0〜0.10%、REM(希土類元素):0〜0.10%、Cr、Zr、Hf、Nb、Sの合計:0〜0.05%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる化学組成を有する鋳片を製造し、鋳片加熱、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上冷間圧延、低温焼鈍の各工程を上記の順に有する手順で板厚10〜60μmの銅合金薄板材を製造するに際し、
    仕上冷間圧延工程において、少なくとも圧延率が50%未満である段階で開始する圧延パスでは1パス当たりの圧下率を10.0%以上とし、かつトータル圧延率を90%以上とする条件で冷間圧延を施し、
    低温焼鈍工程において、180〜220N/mm2の張力を付与しながら250〜350℃で150秒以上保持する条件で熱処理を施す、銅合金薄板材の製造方法。
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