JP7380501B2 - 分子構造解析システム及び分子構造解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、質量分析を利用して有機化合物の分子構造を解析する分子構造解析システムに関する。本発明に係る分子構造解析システムは、特に、糖タンパク質、糖脂質などの糖鎖修飾された化合物の分子構造の解析に好適である。
生体中には多数のタンパク質や脂質が存在しているが、その多くは、何らかの修飾を受けることでその機能が発現・制御されることが近年の研究で解明されている。特に、タンパク質や脂質に糖鎖が結合した糖タンパク質や糖脂質は複合糖質とも呼ばれ、細胞間相互作用やシグナル伝達、発生・分化、さらには受精、疾病など、様々な生体内現象に重要な役割を果たすことが分かってきている。
タンパク質や脂質を修飾している糖鎖の構造は非常に多様性に富んでおり、その構造がタンパク質や脂質の機能に大きな影響を及ぼしている。そのため、糖タンパク質や糖脂質において糖鎖構造の相違を区別して分析することは非常に重要であり、近年、そうした分析には質量分析、特にMSn分析(nは2以上の整数)が広く利用されている。
例えば糖タンパク質が解析対象である場合、一般には、糖タンパク質から糖鎖を切り出して得られた遊離糖鎖混合物や、タンパク質分解酵素を用いて糖タンパク質を分解することで得られた糖ペプチド混合物が、質量分析の対象となる。糖ペプチド混合物を分析する際には、予め、イオン交換や逆相液体クロマトグラフ(LC)などを利用して、同一のアミノ酸配列を持つペプチド毎に糖ペプチドを分離したり精製したりしたうえで、分析対象の試料を調製するのが一般的である。
非特許文献1に開示されているように、上述のように調製された糖ペプチド混合物試料を質量分析すると、マススペクトルには、互いに糖由来の質量差を有する複数のピークが観測される。それらピークは、一つの共通のペプチドにそれぞれ異なる構造の糖鎖が結合している糖ペプチド由来のピークである。ペプチドという主要な構造が共通であることから、これら糖ペプチドは類似構造分子ということができる。上記非特許文献1では、一つの糖ペプチドの糖鎖由来のプロダクトイオンを確認するために、マススペクトルにおいて糖由来であると推定される一つのピークを選択し、そのピークの質量電荷比(厳密には斜体字の「m/z」であるが、本明細書中では慣用的に用いられている「質量電荷比」又は「m/z」と記す)についてのMS2分析を実施している。これにより、糖ペプチドの構造解析に有用なプロダクトイオン情報を得ることができる。
「小型MALDIデジタルイオントラップ 質量分析計"MALDIminiTM-1"を用いた糖ペプチド解析」、[Online]、[2020年7月7日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/vaccine/b100.pdf>
非特許文献1に記載の例でも分かるように、糖ペプチド混合物試料に対して得られたマススペクトルには、多くの糖ペプチド由来ピークが現れる。糖ペプチドの網羅的な構造解析を行うには、マススペクトルにおいて観測される全ての糖ペプチド由来ピークについてMS2分析を実施し、MS2スペクトルを取得することが望ましい。しかしながら、一般に、時間的な制約や試料の量の制約から、MS2分析を実施可能な糖ペプチド由来ピークの数は限定される。
即ち、非特許文献1に記載の質量分析装置では、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization:MALDI)法を用いたイオン源が用いられているが、MALDI法では、レーザー光の照射によって生成されるイオンの量があまり多くなく、しかもそのイオン量のばらつきが大きい。そのため、試料に対してレーザー光を照射して質量分析を行うという作業を多数繰り返し、その1回の質量分析毎に得られたデータを積算することでマススペクトルを取得している。レーザー光を試料に照射する毎に該試料の一部が蒸発するため、質量分析の実行回数が多くなると、用意された試料が枯渇してしまうおそれがある。これが試料の量が制約される理由である。
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は、同一の試料からできるだけ多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる分子構造解析システム及び分子構造解析方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、限られた時間内に同一の試料から多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる分子構造解析システム及び分子構造解析方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る分子構造解析システムの一態様は、試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析システムであって、
MSn分析(nは2以上の整数)が可能である質量分析部と、
試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定部と、
前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得部と、
前記試料に対し、前記ピーク選定部により選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析を繰り返し実行するとともに、後記スペクトル判定部による指令を受けたときに該MSn分析の繰り返しを終了するように、前記質量分析部を制御する制御部と、
前記制御部による制御の下でMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得部で取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判定されたときに前記制御部に対し分析終了の指令を出すスペクトル判定部と、
を備えるものである。
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る分子構造解析方法の一態様は、試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析方法であって、
試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定ステップと、
前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得ステップと、
前記試料に対し、前記ピーク選定ステップにおいて選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析(nは2以上の整数)を繰り返し実行する分析実行ステップと、
前記分析実行ステップにおいてMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得ステップにおいて取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判断されたときに、前記MSn分析の繰り返しを終了させるスペクトル判定ステップと、
を含むものである。
ここで、「互いに構造が類似している複数の類似構造分子」とは、分子の主要な構造が共通であり、その主要な構造と結合している付帯的な構造が異なるような分子群のことをいう。上述した、アミノ酸配列が同一であるペプチドやタンパク質が主要な構造であり、糖鎖が付帯的な構造である糖ペプチド、糖タンパク質は上記の類似構造分子の一例である。また、それ以外の、糖脂質などの複合糖鎖も類似構造分子の一例である。
また、本発明に係る分子構造解析システムにおいて「MSn分析が可能である質量分析部」は、例えばMALDI法、レーザー脱離イオン化(Laser Desorption/Ionization:LDI)法、表面支援レーザー脱離イオン化 (Surface Assisted Laser Desorption/Ionization:SALDI)法などのレーザー光を試料に照射するイオン化法、或いは、イオン線、中性粒子線などの粒子線を試料に照射するイオン化法によるイオン源を用いた質量分析装置とすることができる。
また、本発明において、「前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピーク」及び「前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピーク」との表現は、ピーク選定部によるピークの選定が参照スペクトル取得部による参照MSnスペクトルの取得に先立って行われる場合と、参照スペクトル取得部による参照MSnスペクトルの取得の実行後に行われる場合とがあるからである。即ち、前者の場合には、ピーク選定部によるピークの選定が先に実施され、ピーク選定部により選定されたピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルが取得される。他方、後者の場合には、参照スペクトル取得部により参照MSnスペクトルが取得され、そのあとに、取得された参照MSnスペクトルに対応するピークの選定がピーク選定部により実施される。いずれの場合にも、結果として、ピーク選定部により選定されたピークと、参照スペクトル取得部により取得された参照MSnスペクトルとは互いに対応したものである。
本発明に係る分子構造解析システム及び分析構造解析方法の上記態様では、或るイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析が繰り返し実行され、1回のMSn分析毎に所定の質量電荷比範囲のマススペクトルデータが得られると、そのデータが積算されて実測MSnスペクトルが作成される。この場合、実測MSnスペクトル上の各ピークの信号強度は、MSn分析が実施される毎に徐々に大きくなる。MSn分析の対象であるピーク(プリカーサーイオンとして選択されたピーク)に対応する化合物分子が、そのピークに対して参照MSnスペクトルとして決定された化合物分子と同じである場合、或る程度データの積算が進んで実測MSnスペクトルのスペクトルパターンが明確になると、実測MSnスペクトルと参照MSnスペクトルとの類似性が高いと判定される。それを受けて、MSn分析の繰り返しは終了される。
従来一般的に、データの積算回数は予め決まっており、その決められた回数だけ積算されたあとの実測MSnスペクトルが構造解析に供される。これに対し、本発明では、通常、予め決められた回数よりも少ない回数だけデータが積算された実測MSnスペクトルにおいて参照MSnスペクトルとの類似性が高いと判定されるので、構造解析に必要なプロダクトイオン情報を収集するために必要なデータ積算回数、つまりはMSn分析の実行回数が少なくて済む。マススペクトル上で観測される或る一つのピークについてのプロダクトイオン情報が収集されたならば、同じマススペクトル上で観測される別のピークについてのMSn分析の繰り返しを実行すればよい。時間が許す限り、或いは、試料の量が許す限り、こうしたMSn分析の繰り返しを続けることができる。
したがって、本発明に係る分子構造解析システム及び分析構造解析方法の上記態様によれば、同一の試料から、できるだけ多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる。また、限られた時間内に、同一の試料から多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる。それにより、糖ペプチドや糖脂質などの化合物の構造解析を効率良く行うことができる。
本発明の一実施形態である分子構造解析システムのブロック構成図。 本実施形態の分子構造解析システムにおける解析手順を示すフローチャート。 本実施形態の分子構造解析システムにおける解析手順を示すフローチャート。 本実施形態の分子構造解析システムにおける解析動作の説明図。
以下、本発明に係る分子構造解析システムの一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の分子構造解析システムの要部のブロック構成図である。
この分子構造解析システムは、試料に対し質量分析(MS1分析及びMS2分析)を実行してデータを収集する質量分析部1と、質量分析部1の動作を制御するとともに該質量分析部1で収集されたデータを解析処理する制御・処理部2と、事前に各種化合物分子の標準的なマススペクトルなどが格納されたスペクトルデータベース(DB)3と、ユーザーインターフェイスである入力部4及び表示部5と、を備える。
質量分析部1は、MALDIイオントラップ型質量分析装置やMALDIイオントラップ飛行時間型質量分析装置などのMALDI質量分析装置である。質量分析部1は、図示しない真空ポンプにより真空排気されるチャンバー10を有し、その内部に、試料ステージ11、引出電極を含むイオン光学系15、ミラー13、MSn分析が可能であるイオン解離・分離部16、及び、検出部17、が配置されている。また、チャンバー10の外側にはレーザー光照射部14が配置されている。質量分析部1がMALDIイオントラップ型質量分析装置である場合、イオン解離・分離部16はイオントラップである。また、質量分析部1がMALDIイオントラップ飛行時間型質量分析装置である場合、イオン解離・分離部16はイオントラップと飛行時間型質量分離器である。
制御・処理部2は、機能ブロックとして、分析制御部20、スペクトル積算部21、イオンピーク検出部22、スペクトル類似度算出部23、表示処理部24、指示受付部25、及び、構造解析部26、を含む。表示処理部24は、下位の機能ブロックとして、実測MS1スペクトル表示処理部240、実測MS2スペクトル表示処理部241、参照MS2スペクトル表示処理部242、を含む。
本装置において、制御・処理部2の実体は汎用のパーソナルコンピューター又はより性能の高いワークステーションであり、そうしたコンピューターにインストールされた専用の制御・処理用プログラムを該コンピューターにおいて動作させることで上記各機能ブロックの機能が実現されるものとすることができる。但し、スペクトルDB3は制御・処理部2に含むようにしてもよいし、制御・処理部2には含まれない外部のデータベースであってもよい。後者の場合には、例えばインターネット等のネットワーク回線を通してデータベースサーバーにアクセスし、必要なデータのみを該データベースサーバーから取得する構成とすればよい。
なお、質量分析部1としては、MALDIイオン源を用いた質量分析装置に限らず、LDI法やSALDI法など、MALDI法以外の、レーザー光を用いたイオン化によるイオン源を搭載した質量分析装置を用いることができる。また、例えば2次イオン質量分析法に用いられるイオン源など、イオン線、或いは中性粒子線などの粒子線を利用したイオン化によるイオン源を搭載した質量分析装置を用いることもできる。
また、イオン解離・分離部16におけるイオン解離操作は、典型的には低エネルギー衝突誘起解離(Collision-Induced Dissociation:CID)を利用することができるが、これに限らず、高エネルギーCIDや、光、ラジカル種などを利用したイオン解離の手法を用いることもできる。
次に、本実施形態の分子構造解析システムを用いた解析動作の一例を、図1に加え、図2乃至図4を参照しつつ説明する。図2及び図3は解析手順を示すフローチャートである。図4は解析動作の説明図である。
ここでは、一例として解析対象は糖タンパク質であるものとする。糖タンパク質をタンパク質分解酵素を用いて分解処理することにより糖ペプチド混合物を得る。そして、この糖ペプチド混合物に対し逆相LCやイオン交換などを用い、同一のアミノ酸配列を有するペプチド毎に分離又は精製し糖ペプチド混合物試料を得る。この糖ペプチド混合物試料は、アミノ酸配列が同一であるペプチドに様々な構造の糖鎖が結合している糖ペプチドを含む。この試料に所定のマトリックスを添加してサンプルプレート12上にサンプルSを調製する。
図1に示すように、サンプルSが形成されているサンプルプレート12が試料ステージ11上に載置され、ユーザーが入力部4から分析の実行を指示すると、図示しない真空ポンプは真空排気を行い、チャンバー10の内部を所定の真空状態にする。そのあと、分析制御部20は質量分析部1の各部を制御し、サンプルSに対する通常の質量分析(MS1分析)を実行する(ステップS1)。
即ち、レーザー光照射部14からパルス的に出射されたレーザー光は、ミラー13を経てサンプルプレート12上のサンプルSに照射される。レーザー光の照射を受けて、サンプルS中の化合物はイオン化され、発生したイオンはイオン光学系15を経てイオン解離・分離部16に導入される。このときにはイオンの解離は実施されず、イオン解離・分離部16は導入された各種イオンを質量電荷比に応じて分離する。検出部17は質量電荷比に応じて分離されたイオンを順次検出し、イオン量に応じたイオン強度信号を出力する。
サンプルSに対する上述したような質量分析は複数回(通常はかなり多くの回数)行われ、その1回の質量分析毎に、所定の質量電荷比範囲に亘る質量電荷比とイオン強度との関係を示すマススペクトルデータがスペクトル積算部21に入力される。スペクトル積算部21は、マススペクトルデータを次々に積算することで、サンプルSに対する最終的なマススペクトルを作成する。イオンピーク検出部22は、マススペクトルにおいて所定のアルゴリズムに従ってピークを検出して各ピークの質量電荷比値を求め、さらに、多数のピークの中で特定の質量電荷比差を有するイオンピークを検出する(ステップS2)。
分析対象である糖ペプチド混合物試料は、主として、アミノ酸配列が同一であるペプチドを共通の主要構造として、この主要構造に、糖鎖の非還元末端の構造が相違する、或いは、糖鎖に対する修飾物が相違する等、構造が相違する糖鎖が結合した多様な糖ペプチドを含む。そのため、一般に、上記マススペクトルには、既知である糖鎖の非還元末端の構造の差異や糖鎖に対する修飾物の差異に対応する質量電荷比差を持つ2以上のイオンピークが観測される。そこで、既知である糖鎖の構成成分由来である質量電荷比差を有するピークを探索することで、類似構造分子、つまりはペプチドが共通である糖ペプチドに対応するイオンピーク群を検出することができる。
実測MS1スペクトル表示処理部240は、作成された実測のマススペクトル上に、ステップS2で検出されたイオンピーク群を明示して表示部5の画面上に表示する(ステップS3)。図4(A)は、このときに表示される実測のマススペクトルの一例である。図4(A)において、ピークトップ近傍に〇印が付されているピークが、類似構造分子の候補であるイオンピークである。また、図中の〇、△印は、既知である糖鎖の構成成分由来である質量電荷比差である。
ユーザー(オペレーター)はこのマススペクトルを表示画面上で確認し、1個以上のピークをプリカーサーイオンに選定して入力部4で指示する(ステップS4)。図4(A)の例では、矢印で示す1個のピークをユーザーが選定したものとする。指示受付部25はこの指示を受け付け、参照MS2スペクトル表示処理部242に指示されたピークの質量電荷比値を指示する。参照MS2スペクトル表示処理部242は、指示されたピークが複数ある場合には所定の条件に従って(例えば質量電荷比が大きい順に)その中の1個を抽出し、また指示されたピークが1個のみである場合には無条件にその1個を抽出する(ステップS5)。
参照MS2スペクトル表示処理部242は、スペクトルDB3にアクセスし、指示された質量電荷比値に基いて、抽出された上記1個のピークに対応する1個以上の化合物分子(この場合には糖ペプチド)を検索し、その化合物分子に対応付けられている標準的なMS2スペクトルを取得する。そして、化合物分子の情報をMS2スペクトルとともに表示部5の画面上に表示する(ステップS6)。検索結果である化合物分子が複数であって、表示されたMS2スペクトルが複数である場合には、ユーザーがその複数のMS2スペクトルの中から1個を、参照MS2スペクトルとして選定する(ステップS7)。検索結果であるMS2スペクトルが1個のみである場合には、それがそのまま参照MS2スペクトルとなる。
図4(C)は、この参照MS2スペクトルの一例である。参照MS2スペクトルには、プリカーサーイオンが解離して生成される各種のプロダクトイオンのピークが観測される。なお、図4(C)では、プリカーサーイオンは点線で示されているが、衝突誘起解離の際にイオンに付与されるエネルギー等の解離条件によっては、プリカーサーイオンを全て解離させずにその一部を残すこともできる。
ステップS5で抽出されたピークの質量電荷比の情報は分析制御部20に送られ、分析制御部20はその質量電荷比をプリカーサーイオンとしたMS2分析を開始するように質量分析部1の各部を制御する(ステップS8)。
これにより、質量分析部1では、レーザー光がサンプルSに照射され、サンプルSから発生した化合物由来のイオンがイオン解離・分離部16に導入される。このとき、イオン解離・分離部16では、まずプリカーサーイオンが選択され、それ以外のイオンは排除される。選択された特定の質量電荷比を有するイオンは衝突誘起解離により解離され、種々のプロダクトイオンが生成される。このプロダクトイオンが質量電荷比に応じて分離され、検出部17はプロダクトイオンを順に検出して、イオンの量に応じたイオン強度信号を出力する。
1回のレーザー光の照射に対応して所定の質量電荷比範囲に亘るMS2スペクトル(プロダクトイオンスペクトル)を表すデータが得られる。1回のレーザー光照射によって生成されるイオンの量は比較的少ないし、さらに特定のプリカーサーイオンに対応するプロダクトイオンの量はさらに少ない。そのため、MS2スペクトルにおいて各プロダクトイオンピークの強度はあまり高くない。そこで、スペクトル積算部21は、1回のMS2分析毎に得られるMS2スペクトルデータを積算し実測MS2スペクトルを作成する。したがって、MS2分析が実行される毎に、実測MS2スペクトルは更新される(ステップS9)。実測MS2スペクトル表示処理部241は、データ積算によって更新される実測MS2スペクトルを、図4(B)に示すように、表示部5の画面上に表示する。表示される実測MS2スペクトル上の各ピークの信号強度は時間経過と共に徐々に上昇していく。
スペクトル類似度算出部23は、実測MS2スペクトルが更新される毎に、その更新後の実測MS2スペクトルと一つの参照MS2スペクトルとのスペクトルパターンの類似度を、既知である適宜のアルゴリズム(ドット積法など)に従って計算する(ステップS10)。類似度は、ペプチドや代謝物のライブラリ検索手法として知られるスコアリング手法のいずれかを用いることでスコア値として示される。そして、スペクトル類似度算出部23は、算出されたスコア値が予め決められた閾値以上であるか否かを判定する(ステップS11)。
類似度を計算する際には、スペクトルのピークパターン形状が重要であり、各ピークの強度値自体は重要でないため、例えば、実測MS2スペクトル上でイオン強度が最大であるピークを利用して各ピークの強度を規格化したうえで類似度を算出することができる。また、実測MS2スペクトル表示処理部241は、算出された類似度のスコア値を、表示部5の画面上に表示している実測MS2スペクトル中に表示する。もちろん、実測MS2スペクトルとは別に類似度のスコア値を表示してもよい。
ステップS5において抽出されたピーク、つまりはMS2分析の対象であるプリカーサーイオンが参照MS2スペクトルとして選定された化合物由来のイオンである場合でも、データの積算回数が少ない間は、バックグラウンドノイズの影響などにより、類似度はあまり大きくならず、閾値を下回る。ステップS11においてNoと判定されると、スペクトル積算部21は、データの積算回数が予め定められた上限値に達したか否かを判定し(ステップS12)、達していなければステップS9へと戻る。したがって、MS2スペクトルの類似度が閾値を超えるまで、又は、データの積算回数が上限値に達するまでは、ステップS9~S12の処理を繰り返す。
MS2分析の対象であるプリカーサーイオンが参照MS2スペクトルとして選定された化合物由来のイオンである場合、データ積算回数が増えて実測MS2スペクトルにおける各ピークの強度が或る程度以上に高くなると、類似度はかなり大きくなり閾値を超える。類似度が閾値を超えると、スペクトル類似度算出部23はその結果を記録し、分析制御部20に対し分析終了を通知する。これにより、ステップS11からS13へと進み、分析制御部20はMS2分析の繰り返しを終了する。
他方、例えば、MS2分析の対象であるプリカーサーイオンが参照MS2スペクトルとして選定された化合物由来のイオンと異なる場合には、データの積算回数が増えても類似度はあまり大きくならず、その類似度が閾値を超えないままデータの積算回数が上限値に達する。つまり、ステップS12においてYesと判定されると、スペクトル積算部21はその結果を記録し、分析制御部20に対し分析終了を通知する。これにより、ステップS12からS13へと進み、分析制御部20はMS2分析の繰り返しを終了する。
つまり、ステップS11でYesと判定されてMS2分析の繰り返しが終了されるのは、サンプルS中の一つの化合物分子の構造解析に必要なプロダクトイオン情報が得られたときである。一方、ステップS12でYesと判定されてMS2分析の繰り返しが終了されるのは、サンプルS中の一つの化合物分子の構造解析に必要なプロダクトイオン情報の取得に失敗したときである。
参照MS2スペクトル表示処理部242は、ステップS4で選定されたプリカーサーイオンがほかにもあるか否かを判定し(ステップS14)、ある場合にはステップS5に戻り、別のプリカーサーイオンについてステップS5以降の処理を再度実行する。それにより、ユーザーがMS1スペクトル上で複数のピークとプリカーサーイオンとして指定した場合には、そのプリカーサーイオンが1個ずつMS2分析の対象とされて構造解析に必要なプロダクトイオン情報が収集されることになる。即ち、サンプルSに含まれる複数の疑似構造分子についてのプロダクトイオン情報が順番に収集される。
また、上述したように、ステップS12でYesと判定されたときには、指定されたプリカーサーイオンに対応する化合物分子の構造解析に必要な情報が取得できていない。そこで、同じプリカーサーイオンに対して別の参照MS2スペクトルをユーザーに選定させるようにして、ステップS8以降の処理を再度実施するようにすることもできる。これにより、実測MS2スペクトルと別の参照MS2スペクトルとの類似度が計算されるので、選定したプリカーサーイオンがこの別の参照MS2スペクトルに対応する化合物に由来するイオンであれば、プリカーサーイオンに対応する化合物分子の構造解析に必要なプロダクトイオン情報を取得することができる。
但し、同様の結果は、ステップS7でユーザーに複数の参照MS2スペクトルの選定を許容し、その複数の参照MS2スペクトルと一つの実測MS2スペクトルとのそれぞれの類似度を算出して、その複数の類似度のうちの一つが閾値以上となったときにMS2分析を終了するようにしても得ることができる。この方法によれば、実際のMS2分析の回数が少なくとなるので、分析時間の短縮、試料の消費量の削減、のいずれにも有利である。
なお、上記ステップS11において類似度を判定する基準となる閾値は、類似度として採用したスコアに依存する。したがって、類似度のスコアに応じて予め閾値を決めるとよい。そこで、例えば、特定の糖ペプチドのMS2スペクトルとそのほかのピーク(類似構造を有する糖ペプチドと非類似構造分子を含む)をターゲットとしたMS2スペクトルとの類似度のスコアの分布を予め実験的に調べておき、そのスコア分布において類似構造分子への特異度や感度が低くないように、適宜に閾値を定めるとよい。
上述したような一連の処理が終了したならば、構造解析部26は、プリカーサーイオン毎に、類似度が閾値以上であると判定された参照MS2スペクトル又はそれから求まるプロダクトイオン情報を用いて、そのプリカーサーイオンに対応する化合物分子の構造を推定することができる。
以上のように、本実施形態の分子構造解析システムでは、MS2分析により得られるデータの積算回数を減らしながら構造解析に必要なプロダクトイオン情報を収集することができる。一つの化合物分子(上記例では糖ペプチド)の構造解析に必要なプロダクトイオン情報を収集するためのMS2分析の回数を減らすことができるので、サンプルSが枯渇しない限り、決まった時間内に数多くの化合物分子のプロダクトイオン情報を取得することができる。また、サンプルSを同じ量だけ消費する間に、より多くの数の化合物分子のプロダクトイオン情報を取得することができる。
なお、上記説明では、実測のマススペクトル上でユーザーがプリカーサーイオンとして1個以上のピークを指定したあとに、ユーザーが参照MS2スペクトルを選定していたが、その順序は入れ替え可能である。即ち、ユーザーが目的とする化合物の参照MS2スペクトルを選定し、そのあと、実測のマススペクトル上で上記目的とする化合物に対応すると推定されるピークを指定するようにしてもよい。
また、上記実施形態の説明では、糖ペプチドの構造解析を実施していたが、これに限らず、例えば糖脂質など、主要構造が共通である類似構造分子の構造解析全般に本発明を適用することができる。
また、上記実施形態及び変形例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係る分子構造解析システムの一態様は、試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析システムであって、
MSn分析(nは2以上の整数)が可能である質量分析部と、
試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定部と、
前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得部と、
前記試料に対し、前記ピーク選定部により選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析を繰り返し実行するとともに、後記スペクトル判定部による指令を受けたときに該MSn分析の繰り返しを終了するように、前記質量分析部を制御する制御部と、
前記制御部による制御の下でMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得部で取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判定されたときに前記制御部に対し分析終了の指令を出すスペクトル判定部と、
を備えるものである。
(第6項)また、本発明に係る分子構造解析方法の一態様は、試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析方法であって、
試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定ステップと、
前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得ステップと、
前記試料に対し、前記ピーク選定ステップにおいて選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析(nは2以上の整数)を繰り返し実行する分析実行ステップと、
前記分析実行ステップにおいてMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得ステップにおいて取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判断されたときに、前記MSn分析の繰り返しを終了させるスペクトル判定ステップと、
を含むものである。
ここで、nは理論的には2以上の整数を採り得るものの、通常、nは2である。
例えばMALDIイオン源を搭載した質量分析装置では、MSnスペクトルに限らず、通常のマススペクトルについても、複数回の質量分析によって得られたデータを積算することで作成する。一般的に、質量分析の実行回数つまりはデータの積算回数は予め決まっており、その決められた回数だけ積算されたあとの実測マススペクトルや実測MSnスペクトルが解析に供される。これに対し、本発明では、データ積算中にも実測MSnスペクトルと参照MSnスペクトルとの類似性が判定され、類似性が高いと判定されるとそのときのプリカーサーイオンに対するMSn分析の繰り返しが打ち切られる。
第1項に記載の分子構造解析システム及び第6項に記載の分析構造解析方法によれば、同一の試料から、できるだけ多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる。また、限られた時間内に、同一の試料から多くの類似構造分子についてのプロダクトイオン情報を収集することができる。それによって、糖ペプチドや糖脂質などの化合物の構造解析を効率良く行うことができる。
(第2項)第1項に記載の分子構造解析システムにおいて、前記ピーク選定部は、
試料について得られたマススペクトルにおいて、類似構造分子由来であると推定されるピークを明示して表示部に表示するマススペクトル表示処理部と、
表示されたマススペクトル上で、ユーザーに一つ以上のピークを指定させ、指定されたピークを目的とする類似構造分子由来のピークとして選定する指示受付部と、
を含むものとすることができる。
(第7項)同様に、第6項に記載の分子構造解析方法において、前記ピーク選定ステップは、
試料について得られたマススペクトルにおいて、類似構造分子由来であると推定されるピークを明示して表示部に表示するマススペクトル表示ステップと、
表示されたマススペクトル上で、ユーザーに一つ以上のピークを指定させ、指定されたピークを目的とする類似構造分子由来のピークとして選定する指示受付ステップと、
を含むものとすることができる。
例えば試料が精製された糖ペプチド混合物である場合、通常、マススペクトルには糖鎖の構造の相違による質量電荷比差を有する複数のピークが観測される。第2項に記載の分子構造解析システム及び第7項に記載の分析構造解析方法によれば、ユーザーはこのマススペクトルを確認したうえで、例えば質量電荷比差を参照して注目するピークを選択し、ピークを絞ってプロダクトイオン情報を収集することができる。それにより、ユーザーが関心を持たないピークについてMSn分析が実行されることを回避することができ、試料の無駄な消費を抑えることができるとともに分析時間も短縮することができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載の分子構造解析システムにおいて、前記参照スペクトル取得部は、
解析目的である化合物分子に関連する類似構造分子のMSnスペクトルが収録されているデータベースを前記情報源とし、
前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピークに対応するMSnスペクトルをユーザーに前記データベースから選択させる、又は、前記データベースから抽出された複数のMSnスペクトルの中からユーザーに一つ以上のMSnスペクトルを選択させるものとすることができる。
(第8項)同様に、第6項又は第7項に記載の分子構造解析方法において、前記参照スペクトル取得ステップは、
解析目的である化合物分子に関連する類似構造分子のMSnスペクトルが収録されているデータベースを前記情報源とし、
前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピークに対応するMSnスペクトルをユーザーに前記データベースから選択させる、又は、前記データベースから抽出された複数のMSnスペクトルの中からユーザーに一つ以上のMSnスペクトルを選択させるものとすることができる。
なお、データベース自体は本システムに含まれていてもいなくてもよい。即ち、一般に提供されている外部のデータベースを利用することもできる。
第3項に記載の分子構造解析システム及び第8項に記載の分析構造解析方法によれば、ユーザーが構造を把握したい化合物を決めることができるので、目的の化合物分子が試料に含まれるかどうかを迅速に把握することができる。また、質量電荷比が同一又は近い類似構造分子がデータベース上に複数存在する場合に、ユーザーの判断で、どの分子のプロダクトイオン情報との類似性を判定するのかを決めることができる。
(第4項)また、第1項~第3項のいずれか1項に記載の分子構造解析システムにおいて、前記参照MS n スペクトルと前記実測MS n スペクトルとを表示部の画面上に表示する表示処理部、をさらに備えるものとすることができる。
(第9項)同様に、第6項~第8項のいずれか1項に記載の分子構造解析方法において、前記参照MS n スペクトルと前記実測MS n スペクトルとを表示部の画面上に表示する表示ステップを、をさらに含むものとすることができる
第4項に記載の分子構造解析システム及び第9項に記載の分析構造解析方法によれば、ユーザーは、参照MS n スペクトルと、時間が経過するに伴って変化する実測MS n スペクトルとを画面上で見比べることができる。それにより、例えば実測MS n スペクトルが明らかに意図と異なるような場合や、逆に視覚上で類似であることが確認できるような場合に、ユーザー自身がMSn分析の繰り返しの打ち切りを指示することができる。
(第5項)また、第1項~第4項のいずれか1項に記載の分子構造解析システムにおいて、前記スペクトル判定部はMSnスペクトルの類似性を数値で示す類似度を算出し、該類似度を前記マススペクトル又は前記実測MS n スペクトルに関連付けて表示する表示処理部、をさらに備えるものとすることができる。
(第10項)同様に、第6項~第9項のいずれか1項に記載の分子構造解析方法において、前記スペクトル判定ステップではMSnスペクトルの類似性を数値で示す類似度を算出し、該類似度を前記マススペクトル又は前記実測MS n スペクトルに関連付けて表示する表示ステップ、をさらに含むものとすることができる。
第5項に記載の分子構造解析システム及び第6項に記載の分析構造解析方法によれば、ユーザーは、参照MS n スペクトルと実測MS n スペクトルとの類似性を数値で確認することができる。それにより、ユーザー自身が類似性を判断して、MSn分析の繰り返しの打ち切りを的確に指示することができる。
1…質量分析部
10…チャンバー
11…試料ステージ
12…サンプルプレート
13…ミラー
14…レーザー光照射部
15…イオン光学系
16…イオン解離・分離部
17…検出部
2…制御・処理部
20…分析制御部
21…スペクトル積算部
22…イオンピーク検出部
23…スペクトル類似度算出部
24…表示処理部
240…実測MS1スペクトル表示処理部
241…実測MS2スペクトル表示処理部
242…参照MS2スペクトル表示処理部
25…指示受付部
26…構造解析部
3…スペクトルDB
4…入力部
5…表示部

Claims (10)

  1. 試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析システムであって、
    MSn分析(nは2以上の整数)が可能である質量分析部と、
    試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定部と、
    前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得部と、
    前記試料に対し、前記ピーク選定部により選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析を繰り返し実行するとともに、後記スペクトル判定部による指令を受けたときに該MSn分析の繰り返しを終了するように、前記質量分析部を制御する制御部と、
    前記制御部による制御の下でMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得部で取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判定されたときに前記制御部に対し分析終了の指令を出すスペクトル判定部と、
    を備える分子構造解析システム。
  2. 前記ピーク選定部は、
    試料について得られたマススペクトルにおいて、類似構造分子由来であると推定されるピークを明示して表示部に表示するマススペクトル表示処理部と、
    表示されたマススペクトル上で、ユーザーに一つ以上のピークを指定させ、指定されたピークを目的とする類似構造分子由来のピークとして選定する指示受付部と、
    を含む、請求項1に記載の分子構造解析システム。
  3. 前記参照スペクトル取得部は、
    解析目的である化合物分子に関連する類似構造分子のMSnスペクトルが収録されているデータベースを前記情報源とし、
    前記ピーク選定部により選定された又は選定されるピークに対応するMSnスペクトルをユーザーに前記データベースから選択させる、又は、前記データベースから抽出された複数のMSnスペクトルの中からユーザーに一つ以上のMSnスペクトルを選択させるものである、請求項1又は2に記載の分子構造解析システム。
  4. 前記参照MS n スペクトルと前記実測MS n スペクトルとを表示部の画面上に表示する表示処理部、をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の分子構造解析システム。
  5. 前記スペクトル判定部はMSnスペクトルの類似性を数値で示す類似度を算出し、該類似度を前記マススペクトル又は前記実測MS n スペクトルに関連付けて表示する表示処理部、をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の分子構造解析システム。
  6. 試料に含まれる、互いに構造が類似している複数の類似構造分子の構造を解析するための分子構造解析方法であって、
    試料について得られたマススペクトルにおいて、目的とする類似構造分子由来であると推定される一つ以上のピークを選定するピーク選定ステップと、
    前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピークにそれぞれ対応する一つ以上の参照MSnスペクトルを、予め用意された情報源から取得する参照スペクトル取得ステップと、
    前記試料に対し、前記ピーク選定ステップにおいて選定されたピークのうちの一つのピークにおける質量電荷比を有するイオンをプリカーサーイオンとするMSn分析(nは2以上の整数)を繰り返し実行する分析実行ステップと、
    前記分析実行ステップにおいてMSn分析が実施される毎に得られるデータを積算し、その積算によって求まる実測MSnスペクトルと、前記参照スペクトル取得ステップにおいて取得されたMSn分析対象のピークに対応する参照MSnスペクトルとの類似性を判定し、類似性が高いと判断されたときに、前記MSn分析の繰り返しを終了させるスペクトル判定ステップと、
    を含む分子構造解析方法。
  7. 前記ピーク選定ステップは、
    試料について得られたマススペクトルにおいて、類似構造分子由来であると推定されるピークを明示して表示部に表示するマススペクトル表示ステップと、
    表示されたマススペクトル上で、ユーザーに一つ以上のピークを指定させ、指定されたピークを目的とする類似構造分子由来のピークとして選定する指示受付ステップと、
    を含む、請求項6に記載の分子構造解析方法。
  8. 前記参照スペクトル取得ステップは、
    解析目的である化合物分子に関連する類似構造分子のMSnスペクトルが収録されているデータベースを前記情報源とし、
    前記ピーク選定ステップにおいて選定された又は選定されるピークに対応するMSnスペクトルをユーザーに前記データベースから選択させる、又は、前記データベースから抽出された複数のMSnスペクトルの中からユーザーに一つ以上のMSnスペクトルを選択させるものである、請求項6又は7に記載の分子構造解析方法。
  9. 前記参照MS n スペクトルと前記実測MS n スペクトルとを表示部の画面上に表示する表示ステップを、をさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の分子構造解析方法。
  10. 前記スペクトル判定ステップではMSnスペクトルの類似性を数値で示す類似度を算出し、該類似度を前記マススペクトル又は前記実測MS n スペクトルに関連付けて表示する表示ステップ、をさらに含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の分子構造解析方法。
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