JPWO2018042605A1 - 質量分析データ処理装置 - Google Patents

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Abstract

同定情報記憶部27に保存される化合物リストには、様々な化合物に対応付けて、理論質量のほか、該化合物を検出可能なマトリクスの種類、生じる可能性があるニュートラルロスの情報などを登録しておく。一方、付加イオンリストには、様々な付加イオンに対応付けて、理論質量のほか、付加が生じる可能性があるマトリクスの種類などの登録しておく。マススペクトル上で化合物検索対象のピークがユーザにより指示されると、化合物候補検索部23は、化合物リスト中の各化合物と付加イオンリスト中の付加イオンとの組合せから求まるm/z値と指定されたピークの実測m/z値との一致性に基づいて組合せの候補を抽出するが、その際に測定の際に使用したマトリクスの種類を条件として組合せを絞り込む。表示処理部26はその検索結果をリスト化して表示する。また、その化合物に対応するMS/MSスペクトルがライブラリに登録されているか否かも明示する。

Description

本発明は、質量分析を行って得られたデータを処理する質量分析データ処理装置に関し、さらに詳しくは、試料に対し質量分析を行って得られたデータを処理して該試料に含まれる成分(化合物)を同定するための質量分析データ処理装置に関する。
質量分析を利用した未知化合物の同定手法として、該未知化合物を含む試料を質量分析することで得られたマススペクトル上で該未知化合物に対応すると推定されるピークの質量電荷比値を求め、その質量電荷比値を検索キーとしてライブラリ検索を行う方法が知られている。但し、通常、試料中に同定対象である未知化合物のみが存在していることは殆どなく、多くの場合、未知化合物を含む試料は他の化合物も含んでいる。そこで、ライブラリ検索により未知化合物を同定する場合、試料は液体クロマトグラフ(LC)や電気泳動装置(CE)などに導入され、それらにより目的とする未知化合物を他の化合物と分離したうえで質量分析装置に導入するようにしている。LC等によって未知化合物と他の化合物とが完全に分離されるとは限らないものの、多くの場合、未知化合物と他の化合物との重なりは解消され、それによってライブラリ検索による未知化合物の同定精度をかなり改善することができる。
ところが、LC等を用いて目的の未知化合物を分離して質量分析を行いマススペクトルを取得しても、未知化合物に由来する単純なプロトン付加イオン又はプロトン脱離イオンのピークを見つけるのが困難である場合がよくある。
例えば試料が生体由来の試料である場合、イオン化法としてエレクトロスプレーイオン化(ESI)法やマトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法等がしばしば用いられるが、そうしたイオン化法が用いられた場合、プロトンの代わりに生体中に多く含まれるナトリウム(Na)イオンやカリウム(K)イオンが化合物に付加したり、それらを組み合わせた−H+2K、−H+2Na、−H+Na+K(但し、−Hはプロトンが脱落することを意味し、+2Naや+2KはNaイオンやKイオンが二つ付加することを意味する)などが付加したりしたイオン由来のピークがマススペクトル上にしばしば現れる。
また、MALDI法が用いられる場合には、使用するマトリクスに由来するピークがマススペクトル上に複数現れる。具体的には、マトリクスの分子イオンのみならず、該分子にH、K、Naなどのイオンが付加したものやマトリクス分子の様々なクラスタ(多量体)、又は、それらから様々なニュートラルロスが生じたものに対応するピークがマススペクトル上に現れる。また、試料に含まれる化合物にマトリクス分子が付加し、さらにそこにプロトンが付加したものや、そこからニュートラルロスとしてH2Oが脱落したイオンピークが現れることもある。
さらにまた、目的の化合物分子がイオン化するときに該分子の構造の一部(H2Oなど)が脱落してイオン化する場合がある。このようなニュートラルロスがある場合、マススペクトル上でその化合物由来のピークは脱落した分子(例えばH2O)の質量分だけ本来の化合物の質量電荷比値からずれた位置に現れる。また、目的化合物の複数の分子が多量体の状態でイオン化する場合もあり、このような場合、分子の質量を整数倍した値に、H等の付加イオンの質量を加えたものがマススペクトル上のピークの質量電荷比値となる。また、こうした多量体からニュートラルロスが生じたイオンがマススペクトルに現れる場合もある。
このように目的化合物の分子がイオン化する際には、同一の分子由来ではあるものの、付加イオン、ニュートラルロス、多量体といった異なるピークがマススペクトル上に多数観測されることがよくある。一般的に、こうしたピークの質量電荷比を利用して、多数の化合物の質量電荷比の値が収録されたライブラリを検索することによって化合物同定を行うことは難しい。
代謝物などの生体に関連する化合物を収録した汎用的なデータベースとして、非特許文献1に開示されているHuman Metabolome Database(HMDB)がよく知られている。このデータベースと共に提供されている化合物検索システムでは、実測されたマススペクトル上で観測されるピークの質量電荷比値を検索キーとして入力すると、予め設定された許容誤差の範囲内で質量が一致するデータベース内の化合物分子と付加イオンとの組合せが表示されるようになっている。しかしながら、上記検索システムでは、多くの場合、表示される候補の数が多すぎ、その候補のいずれが目的化合物であるのかを特定することは難しいという問題がある。また、HMDBには、Na等の付加イオンは登録されているものの、マトリクス分子自体やマトリクス分子が試料中の化合物に付加するような付加イオンは登録されていないため、マススペクトル上で観測されるマトリクス由来のピークや試料分子にマトリクスが付加したピークを正確に特定することは難しいという問題もある。
一方、近年、生体組織中の特定の化合物の空間分布等を調べるためにイメージング質量分析装置が利用されるようになってきているが、イメージング質量分析では、生体組織切片等の試料の表面にマトリクスを塗布又は噴霧し、そのままMALDI法によりイオン化し質量分析を行うことが多い。この場合、上述したLC、CE等で事前に化合物が分離される場合とは異なり、試料に含まれる多数の化合物が分離されずに混じった状態でイオン化されるため、マススペクトルにはその多数の化合物に由来するピークが現れる。また、組成は異なるものの質量が非常に近い複数の化合物や、組成が同じであって構造のみが異なる異性体などは、マススペクトル上で重なったピークとして、つまりあたかも一つの化合物であるかのように観測される。それに加え、上述したような特定の化合物の付加イオン、ニュートラルロス、多量体の異なるピーク等も複数現れる。
このようにマススペクトルに複数の化合物に由来する多数のピークが観測される場合、マススペクトル上のピークの質量電荷比値に基づくライブラリ検索を行っても対応する化合物を正確に同定することは殆ど不可能である。そこで、こうした場合、MSn分析(但し、nは2以上の整数)で得られるマススペクトル(MSnスペクトル)を利用した同定法がしばしば利用される。即ち、マススペクトル上で同定したい化合物由来であると推定されるピークをプリカーサイオンに選択してタンデム質量分析(MSn分析)を行い、プロダクトイオンのマススペクトル(MSnスペクトル)を取得する。そして、そのMSnスペクトルをデータベース検索に供してスペクトルパターンが類似する化合物を探索することで目的化合物を同定する(特許文献1等参照)。
しかしながら、マススペクトル上でプリカーサイオンとして選択したピークに、目的の化合物以外の別の化合物由来のイオンが重なっていると、複数の化合物由来のプロダクトイオンのピークがMSnスペクトルに現れる。このようなMSnスペクトルに基づくピーク情報を従来のデータベース検索に供しても的確な同定を行えないことがある。
また、MSnスペクトルがデータベースに登録されている化合物は限られており、MSnスペクトルがデータベースに収録されていない化合物由来のイオンをプリカーサイオンとして選択してMSn分析を行っても化合物同定は行えない。しかしながら、プリカーサイオン選択時やMSn分析実行前に、そのプリカーサイオンをターゲットとするMSn分析で得られるMSnスペクトルがデータベースに登録されているか否かをユーザが知ることはできないため、無駄なMSn分析を実行して時間や手間を無為に費やしてしまうこともあった。
国際公開第2014/128912号
「HMDB Human Metabolome Database」、[online]、The Metabolomics Innovation Centre、[平成28年8月15日検索]、インターネット<URL: http://www.hmdb.ca/>
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は、目的化合物に別の物質が付加した付加イオンや、目的化合物からニュートラルロスが生じたイオン、或いは、マトリクスなどの別の物質自体のイオンなどが多く観測されるマススペクトルに基づいて目的化合物を推定する際に、化合物候補を的確に絞り込んだ情報をユーザに提供することができる質量分析データ処理装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、目的化合物を同定するべくMSn分析を実行しようとする際に、選択しようとしているプリカーサイオンがその同定に適切であるか否かを事前にユーザに提供することができる質量分析データ処理装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料に対する質量分析を行うことで得られたマススペクトルデータに基づいて、該試料に含まれる化合物を同定する質量分析データ処理装置であって、
a)種々の化合物について理論質量値を化合物に対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下でその化合物がイオン化される際に特定のイオンが付加する場合にはそのイオン化条件を併せて化合物に対応付けて記憶しておく化合物情報記憶部と、
b)イオン化の際に化合物に付加する付加イオンについて理論質量値を付加イオンに対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下で化合物に付加する場合にはそのイオン化条件を併せて付加イオンに対応付けて記憶しておく付加物情報記憶部と、
c)質量分析の際のイオン化条件をユーザが入力するための条件入力部と、
d)質量分析により得られたマススペクトル上における同定対象のピークの実測質量電荷比値を求め、該実測質量電荷比と前記条件入力部により入力されたイオン化条件とに基づいて、前記付加物情報記憶部に記憶されている付加イオンと前記化合物情報記憶に記憶されている化合物との組合せから、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する化合物候補検索部と、
を備えることを特徴としている。
上記本発明に係る質量分析データ処理装置では、前記化合物候補検索部での検索により得られた化合物と付加イオンとの組合せの候補を表示する表示処理部をさらに備える構成とするとよい。
また、上記同定対象のピークは例えば、マススペクトル上でのユーザによるクリック操作等により選択される、或いは、ユーザが目的のピークの質量電荷比値を読み取って化合物検索ソフトウェアによる所定の画面上でその数値を入力することで指示される、ようにすることができる。
本発明に係る質量分析データ処理装置において、付加イオンは例えば、Hイオン(プロトン)、Naイオン、Kイオンなどの一つ若しくは複数、又は複数の組合せを含むものとすることができる。また、厳密には付加イオンではないが、電子も付加イオンの一つとして付加物情報記憶部に記憶しておくことができる。また、質量分析装置として、MALDI法によるイオン源を用いた質量分析装置が用いられる場合、試料調製に使用される種々のマトリクスの分子イオンや、それにさらにプロトンやアルカリ金属イオンが付加したイオン、或いは、それらから一つ以上の水分子(H2O)が脱落したイオンなどを付加イオンとして付加物情報記憶部に記憶しておくとよい。
例えばデータが取得される質量分析装置として、ESI法、MALDI法、PESI(探針エレクトロスプレー)法等、様々なイオン化法によるイオン源を搭載した質量分析装置が用いられる場合には、そのイオン化法によって化合物に付加する付加イオンが異なるため、それらイオン化法の種類をイオン化条件の一つとすることができる。一方、データが取得される質量分析装置として特定のイオン化法によるイオン源を搭載した質量分析装置にが用いられる場合には、イオン化法の種類をイオン化条件から除くことができ、それ以外に化合物に付加する付加イオンの種類に影響を与える要素をイオン化条件とすればよい。
例えば、MALDI法によるイオン源を搭載した質量分析装置を用いる場合には、上述したようにマトリクス分子由来の様々なイオンが付加イオンとなる。そこで、少なくともMALDI用のマトリクスの種類、例えばDHB(2, 5-ジヒドロキシ安息香酸)、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)、9−AA(9-アミノアクリジン) などをイオン化条件とすればよい。また、ESI法やPESI法によるイオン源を搭載した質量分析装置を用いる場合には、溶媒(液体クロマトグラフとの組合せの場合には移動相)の種類などをイオン化条件とすればよい。
本発明に係る質量分析データ処理装置において、化合物情報記憶部には、化合物名(及び/又は組成式)とその理論質量値(ここでいう理論質量値とは計算により求まる精密な質量値)とが対応付けて記憶されるのみならず、付加イオンが付加した状態で検出される可能性がある場合には、イオン化条件が化合物毎に記憶される。一方、付加物情報記憶部には、様々な付加イオンが、理論質量値及びイオン化条件と共に記憶される。なお、化合物情報記憶部及び付加物情報記憶部に記憶される情報は、本装置を提供するメーカが予め作成しておいてもよいし、ユーザが事後的(装置購入後)に作成してもよい。一般的には、メーカが基本的な情報を記憶したものを予め作成しておき、ユーザが必要に応じて情報を追加したり削除したり、或いは修正したりすることが望ましい。
ユーザは質量分析に先立って又は質量分析の終了後に、条件入力部よりイオン化条件を入力する。例えば質量分析によって得られたマススペクトル上でユーザが同定したいピークを指示すると、化合物候補検索部は指示されたピークの実測質量電荷比値を求める。従来の一般的な化合物検索では、この実測の質量電荷比値と化合物情報記憶に記憶されている各化合物の理論質量電荷比値とを比較して化合物候補を抽出する。これに対し、本発明に係る質量分析データ処理装置において、化合物候補検索部は、化合物情報記憶に記憶されている化合物と付加物情報記憶部に記憶されている付加イオンとの様々な組合せによる理論質量電荷比値と実測の質量電荷比値とを比較するが、その際に、入力されたイオン化条件に適合しない組合せを除外する。
例えばイオン化条件としてDHBマトリクスが指定されている場合には、そのDHBマトリクスで検出可能な化合物とDHBマトリクスの下で生成される可能性がある付加イオンとの組合せであって、その組合せによる理論質量電荷比値と実測の質量電荷比値とを比較して所定の許容誤差内で一致するものを抽出する。これにより、例えばCHCAなどの他のマトリクスの下でないと検出されない化合物や他のマトリクスの下でのみ生じる付加イオンを含む組合せは、仮にその組合せによる理論質量電荷比値と実測の質量電荷比値とが一致していても抽出されない。そして、表示処理部は求まった組合せを例えばリスト化して表示する。
なお、化合物によっては同じ化合物でもイオン化によって正イオンになる場合と負イオンになる場合とがあるから、化合物情報記憶部では同じ化合物でもイオン極性が正であるものと負であるものとを別々に扱い、付加物情報記憶部でも正イオンを生成する付加イオンと負イオンを生成する付加イオンとを区別しておくと、検索が効率的に行える。
また本発明に係る質量分析データ処理装置では、
特定の種類の試料中の化合物がイオン化される際に特定の付加イオンが該化合物に付加する場合に、前記化合物情報記憶部にはその試料の種類を化合物に対応付けて記憶しておくとともに、前記付加物情報記憶部にはその試料の種類を付加イオンに対応付けて記憶しておき、
前記条件入力部は質量分析の対象である試料の種類の入力を可能とし、
前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に前記条件入力部により入力された試料の種類の情報も利用して絞り込みを行う構成としてもよい。
上記試料の種類とは例えば、試料が動物の臓器から採取された生体組織切片である場合に、その動物の種類、臓器の種類、生体組織の性状(癌細胞、非癌細胞等)などである。また、試料が動物から採取された体液である場合には、その動物の種類、体液の種類(血液、唾液等)などが試料の種類である。
この構成によれば、測定対象の試料の種類によって検出される筈のない化合物や付加する筈がない付加イオンを含む候補が除外されるので、ユーザに提示される化合物の候補をさらに一層絞り込むことができる。
また本発明に係る質量分析データ処理装置では、
前記化合物情報記憶部には、化合物がイオン化される際に該化合物から脱離するニュートラルロスの情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記化合物情報記憶部に記憶されているニュートラルロスの情報も利用する構成とすることが好ましい。
ここでいうニュートラルロスの情報とは典型的には、ニュートラルロスの組成式及びその理論質量値である。例えばアミノ酸等ではイオン化の際にH2OやH2OとCO2とがニュートラルロスとして脱落する場合がある。上記構成によれば、化合物情報記憶部に記憶されている或る化合物にニュートラルロスの情報が対応付けられている場合に、化合物の質量値からニュートラルロスの質量値を差し引いたうえで付加イオンとの組合せによる質量を比較的容易に算出することができる。それによって、ニュートラルロスも含めた化合物候補の検索を効率良く行うことができる。
さらにまた本発明に係る質量分析データ処理装置では、
前記化合物情報記憶部には多量体の重合数の情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記化合物情報記憶部に記憶されている多量体の情報も利用する構成とするとさらに好ましい。
化合物によってはイオン化の際に複数の分子が重合し多量体(クラスタ)となり、その多量体に付加イオンが付加したりニュートラルロスが脱落したりする場合がある。上記構成によれば、こうした多量体と付加イオンとの組合せや多量体からニュートラルロスが脱離したものも化合物検索の対象となるので、ユーザが同定したピークに対応する化合物候補をより一層的確に且つ漏れなくユーザに提示することが可能となる。
また、本発明に係る質量分析データ処理装置であって、質量分析装置としてMALDI法によるイオン源を搭載した質量分析装置を用いる場合には、
前記付加物情報記憶部では、マトリクス分子自体に付加するか否かを示す識別情報を付加イオンに対応付けて記憶しておくとともに、
化合物情報記憶部では、マトリクス分子又はその多量体であることを示す識別情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記付加物情報記憶部及び前記化合物情報記憶部にそれぞれ記憶されている前記識別情報を利用する構成とするとよい。
この構成によれば、例えばマトリクス分子そのものが化合物情報記憶部に記憶されており、同じマトリクス分子を含む付加イオンが付加物情報記憶部に記憶されている場合でも、識別情報を適切に設定しておくことにより、実質的に同じ組成の化合物が重複して候補に挙げられることを回避することができる。
また、本発明に係る質量分析データ処理装置では、好ましくは、
MSnスペクトルを化合物に対応付けて記憶しておくスペクトルライブラリを備え、
前記化合物情報記憶部には、前記スペクトルライブラリ中にMSnスペクトルが存在するか否かを示す情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
前記表示処理部は、前記化合物候補検索部での検索により得られた化合物と付加イオンとの組合せに対応するMSnスペクトルが前記スペクトルライブラリ中に存在するか否かを視覚的に判別可能な様式でその検索結果を表示する構成とするとよい。
具体的には、MSnスペクトルがスペクトルライブラリ中に存在する化合物と付加イオンとの組合せを、そうでない他の組合せとは異なる表示色又は異なる文字の態様(例えば太字、斜体字等)以て表示するとよい。化合物検索結果として挙げられた化合物候補が多い場合、同定対象であるピークをターゲットとするMS2分析を行い、そのMS2スペクトルを用いたライブラリ検索を行うことが好ましいものの、スペクトルライブラリにその化合物候補のMS2 スペクトルが収録されていなければライブラリ検索が無駄になる。これに対し上記構成によれば、ユーザが同定対象として指定したピークに対応して挙げられた化合物のMS2スペクトルがスペクトルライブラリに存在するか否かをユーザが一目で確認することができる。それにより、MS2スペクトルを用いたライブラリ検索の有意性をMS2分析実施前又はライブラリ検索実施前にユーザは知ることができる。
さらにまた、本発明に係る質量分析データ処理装置では、
質量分析により得られたマススペクトルを表示画面上に表示する際に、予め定められている質量分解能と指示されたピークの質量電荷比とに基づいて理論的に計算される標準的なピーク幅を示す情報をマススペクトルに重畳して表示するスペクトル表示処理部をさらに備える構成とするとよい。
特にイメージング質量分析装置等、LCやCEによる成分分離を行わずに試料を直接的に質量分析する場合、異なる化合物由来のピークがマススペクトル上で重なることがよくある。複数のピークが僅かにずれて(明らかに複数のピークであるとは認識できない程度離れて)重なっている場合、そのピーク幅は上記標準的なピーク幅よりも広くなる。そのため、ユーザは、例えばマススペクトル上で同定対象のピークを指定しようとする際に、マススペクトル上のピークの幅と、それに重畳して表示されている標準的なピーク幅を示す情報とを比較することで、そのピークが単独の化合物由来のピークであるか複数のピークが重なったピークであるかを視覚的に容易に判断することができる。
本発明に係る質量分析データ処理装置によれば、マススペクトル上のピークの質量電荷比値に基づいて該ピークに対応する化合物の候補を検索する際に、観測される可能性のない候補を除外し、化合物及び付加イオンの候補を的確に且つ高い精度でユーザに提示することができる。
また、マススペクトル上でユーザが指定したピークがマトリクス分子由来のピーク等、試料中の化合物とは無関係なものであったときにユーザはそれを知ることができるので、例えばそのピークをターゲットとするMS2分析の実施を回避する等、無駄な作業を行うことがなくなり、効率良く化合物の同定作業を進めることができる。
また、化合物検索結果である化合物と付加イオンとの組合せの候補について、スペクトルライブラリにMSnスペクトルが存在するか否かを明示的に表示する構成によれば、MSn分析実施前にその有意性を知ることができるので、無駄なMSn分析の実施を回避することができる。
本発明に係る質量分析データ処理装置を用いた質量分析システムの一実施例の概略構成図。 本実施例の質量分析システムにおける試料中の化合物同定の特徴的なデータ処理のフローチャート。 本実施例の質量分析システムにおける化合物検索の際に表示されるマススペクトル表示画面の一例を示す図。 本実施例の質量分析システムにおけるサンプル情報入力画面の一例を示す図。 本実施例の質量分析システムにおける化合物リストの一例を示す図。 本実施例の質量分析システムにおける付加イオンリストの一例を示す図。 本実施例の質量分析システムにおける化合物検索結果の一例を示す図。 本実施例の質量分析システムにおけるマススペクトル上でのピークの重なりの判別方法の説明図。 本実施例の質量分析システムにおけるMS/MSスペクトルライブラリ検索のデータ処理のフローチャート。
以下、本発明に係る質量分析データ処理装置を用いた質量分析システムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の質量分析システムの概略構成図である。
本実施例の質量分析システムは、試料上の2次元領域内の複数の測定点に対しそれぞれ質量分析を実行し、それにより得られたデータに基づいて2次元領域内の所定の質量電荷比における信号強度分布を示すイメージング画像を作成可能なイメージング質量分析システムである。本実施例の質量分析システムは、試料に対し質量分析を実行する測定部1と、測定部1において得られたデータに対し後述するデータ処理を実行するデータ処理部2と、測定部1の各部を制御する分析制御部3と、システム全体を統括的に制御するとともにユーザインターフェイスを担う主制御部4と、ユーザ(分析者)が操作する入力部5と、分析結果等を表示する表示部6と、を備える。
測定部1は、試料12上の異なる位置の測定点(微小領域)に対してそれぞれMSn分析を実行可能であるMALDIイオン化イオントラップ飛行時間型質量分析装置(MALDI−IT−TOFMS)である。即ち、測定部1は、大気圧雰囲気であるイオン化室10内に配置された互いに直交するX軸、Y軸の二軸方向に移動可能である試料台11と、試料台11上の試料12に微小径に絞ったレーザ光を照射して該試料12中の成分をイオン化するレーザ照射部13と、試料12から発生したイオンを収集して真空雰囲気に維持される真空チャンバ14内へと搬送するイオン導入部15と、試料12由来のイオンを収束しつつ案内するイオンガイド16と、高周波四重極電場によってイオンを一時的に捕捉するとともに必要に応じてプリカーサイオンの選択及び該プリカーサイオンの解離(衝突誘起解離=CID)を行うイオントラップ17と、該イオントラップ17から射出されたイオンを質量電荷比に応じて分離する飛行空間を内部に形成するフライトチューブ18と、イオンを検出する検出器19と、を含む。但し、後述するように、測定部1の構成はこれに限るものではなく、様々な変形が可能である。
データ処理部2は、本実施例の質量分析システムに特徴的な機能ブロックとして、サンプル情報収集部20、スペクトルデータ格納部21、マススペクトル作成部22、化合物候補検索部23、MS/MSライブラリ検索部24、ライブラリ作成・編集部25、表示処理部26、同定情報記憶部27などを備える。同定情報記憶部27には、化合物リスト、付加イオンリスト、及びMS/MSスペクトルライブラリが格納されている。化合物リスト及び付加イオンリストについては後述する。MS/MSスペクトルライブラリは、様々な化合物について化合物に対応してMS/MSスペクトル(プロダクトイオンスペクトル)が収録されたライブラリである。なお、化合物リスト、付加イオンリスト、及びMS/MSスペクトルライブラリは一つのファイルに集約されていてもよいし、別々のファイルでもよく、そのファイル構造は任意に定めることができる。
また、データ処理部2、主制御部4、及び分析制御部3の一部は、CPU、RAM、ROMなどを含むパーソナルコンピュータ(又はより高性能なワークステーション)をハードウェア資源とし、該コンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウェアを該コンピュータ上で動作させることにより、それぞれの機能が達成される構成とすることができる。
本実施例の質量分析システムにおいて、生体組織切片等の試料に対するイメージング質量分析を行う際の手順と動作を概略的に説明する。
測定対象である試料はMALDI用サンプルプレート上に置かれ、その試料の表面に適宜のマトリクスが塗布(又は噴霧)されることで試料12が調製される。ユーザは調製済みの試料12を試料台11上にセットし、マトリクス塗布前に図示しない撮像部により取得した光学画像を参照して、試料12上で観測したい関心領域を指定する。さらに、ユーザは様々な分析条件を入力部5から入力したうえで測定開始を指示する。
本システムでは、分析条件の一つとしてサンプル情報の入力を可能としている。即ち、入力部5で所定の操作を行うと、表示部6の画面上に図4に示すようなサンプル情報入力画面が表示される。図4(a)及び(b)はタブによって切替え可能な画面である。ここでは、図4(a)中に示す「サンプル情報1」のタブにおいて、マトリクスの種類と試料へのマトリクスの付着方法(調製方法)とをそれぞれ入力又は選択する。この例では、マトリクスの種類は「DHB」、調製方法は「塗布」が選択されている。また、図4(b)中に示す「サンプル情報2」のタブにおいて、試料の種類の情報として、動物の種類、臓器の種類、細胞の性状などをそれぞれ入力又は選択する。この例では、動物の種類は「ヒト」、臓器の種類は「肝臓」、細胞の性状は「癌細胞」が選択されている。なお、「サンプル情報1」及び「サンプル情報2」中の各項目の入力は必須ではないが、入力しておくことで後述する化合物検索での候補の絞り込みが良好に行える。
測定開始の指示を受けて、分析制御部3は測定部1の各部を制御することで試料12に対する質量分析を実行する。即ち、まず試料台11を所定位置に移動させたうえで、レーザ照射部13から出射した微小径のレーザ光を試料台11上の試料12に照射する。すると、試料12においてレーザ光が当たった部位に存在する化合物がイオン化する。発生したイオンはイオン導入部15を通して真空チャンバ14内に搬送され、イオンガイド16により収束されてイオントラップ17内に導入され、四重極電場の作用により一旦保持される。
この各種イオンは所定のタイミングでイオントラップ17から射出されフライトチューブ18内の飛行空間に導入され、該飛行空間を飛行して検出器19に到達する。飛行空間を飛行する間に各種イオンは質量電荷比に応じて分離され、質量電荷比が小さい順に検出器19に到達する。検出器19によるアナログ検出信号は図示しないアナログデジタル変換器によりデジタルデータに変換されたあと、データ処理部2に入力され、飛行時間が質量電荷比に換算されてマススペクトルデータとしてスペクトルデータ格納部21に格納される。
一つの測定点に対するマススペクトルデータが得られる毎に、図示しない駆動部により試料台11をX軸方向、Y軸方向に適宜移動させる。これにより、試料12上でレーザ光が照射される位置が変化するから、試料台11の移動とパルス状のレーザ光照射とを繰り返すことで、試料12上の関心領域内の複数の測定点に対する質量分析を実行し、その複数の測定点それぞれに対するマススペクトルデータを収集してスペクトルデータ格納部21に格納する。サンプル情報収集部20は、図4に示したサンプル情報入力画面において入力された情報つまりはマトリクスの種類や試料の種類などに関するサンプル情報を取得し、これらサンプル情報をデータと同じファイル内に又は対応付けされた別のファイルに格納する。
次に、上述したように複数の測定点に対するマススペクトルデータがスペクトルデータ格納部21に格納されている状態において、該データに基づいて試料12に含まれる化合物を同定する際の本システムに特徴的なデータ処理について説明する。
図2はマススペクトルデータに基づく化合物推定の処理のフローチャートである。また、図3はマススペクトル表示画面の一例を示す図、図5は化合物リストの一例を示す図、図6は付加イオンリストの一例を示す図、図7は化合物検索結果の一例を示す図である。
まず、図5、図6を用いて、同定情報記憶部27に保存され、後述する化合物検索の際に利用される化合物リスト及び付加イオンリストについて詳細に説明する。
図5に示すように、化合物リストには、各化合物の名称に対応して、「組成式」、「マトリクス」、「イオン極性」、「モノアイソトピック質量」、「マトリクス由来」識別フラグ、「MS/MSライブラリ」登録フラグ、「ニュートラルロス質量」、「ニュートラルロス組成」、「多量体」などの各項目の情報が登録可能である。
「マトリクス」はその化合物が検出可能であるマトリクスの種類である。「モノアイソトピック質量」は理論的な計算による理論質量値である。「マトリクス由来」識別フラグはその化合物がマトリクス由来のものか否かを示すフラグであり、ここでは、その化合物がマトリクス分子、マトリクスの多量体、又はそれら分子から特定のニュートラルロスが脱離したものであるときには値を「1」又は「2」に設定し、それ以外の場合には値を「0」に設定している。「MS/MSライブラリ」登録フラグは、その化合物のMS/MSスペクトルが同定情報記憶部27内のMS/MSスペクトルライブラリに登録されているか否かを示すフラグであり、ここでは、登録されている場合に値を「1」、登録されていない場合に値を「0」に設定している。また、「ニュートラルロス質量」及び「ニュートラルロス組成」はその化合物からのニュートラルロスがあり得る場合にそれぞれ設定される。また、「多量体」は、マトリクスの分子が重合した多量体があり得る場合にその重合数を示すものである。
上記化合物リストには、各項目の一つの組合せを一つの行として登録する。したがって、同じ化合物について複数のマトリスクを用いた質量分析により検出が可能である場合には、化合物名が同じでマトリクス名が異なる別の行が登録される。ニュートラルロスについても同様である。例えばアミノ酸の一つであるLys(L-lysine)はDHBマトリクスを使用したときにニュートラルロスなしのピークも検出されるが、H2OやH2OとCO2とがニュートラルロスとして脱落してイオン化したピークも存在する。このように複数の種類のニュートラルロスが存在する場合は、それらを別の行に登録する。図5の例では、1行目〜6行目が全てLys(L-lysine)に対応するリストである。また、化合物によっては、DHBマトリクスを使用したときに、DHBマトリクスの分子の多量体からH2Oが複数脱落してイオン化したピークが観測される場合もある。こうしたものについては「多量体」の項目に多量体の重合数の情報を登録しておけばよい。
また、化合物リスト上で化合物名が同じであっても、ニュートラルロスの有無やマトリクス又はイオン極性の相違によって、MS/MS分析によって得られるMS/MSスペクトル(プロダクトイオンスペクトル)のパターンが異なる。そのため、「MS/MSライブラリ」登録フラグの値は、ニュートラルロスの有無、多量体の重合数、イオン極性、及びマトリクスの種類が、プロダクトイオンスペクトル取得時のものと完全に一致するもの(行)についてのみ「1」に設定するものとする。
一方、図6に示すように、付加イオンリストは正極性付加イオンのリスト(a)と負極性付加イオンのリスト(b)とに分けられており、それぞれアダクトイオン名(又は組成式)に対応して、「モノアイソトピック質量」、「使用」、「マトリクス」、「付加」設定フラグなどの項目が設けられている。「使用」はそのアダクトイオンを化合物検索に使用するか否かを設定するためのもので、使用しない場合にユーザはチェックボックス中のチェックを外す。「マトリクス」はそのアダクトイオンが発生する可能性があるマトリクスの種類であり、空白の場合には特定のマトリクスの使用を条件としないことを意味する。換言すれば、「マトリクス」欄が空白である場合、化合物検索の際には全てのマトリクスでそのアダクトイオンを考慮する必要がある。「付加」設定フラグはマトリクス分子の多量体との組合せを考慮するか否かを示しており、そのアダクトイオンとマトリクスの多量体との組合せを考慮しない(計算しない)場合には値を「0」にしておき、考慮する場合には値を「1」にしておく。これは、後述の理由により、通常「0」にしておくことが望ましい。
例えば、DHBマトリクスを使用したとき、DHBマトリクスの分子からH2Oが脱落したものが試料の化合物分子に付加し、そこにプロトンが付加する場合がある。このような場合、図6(a)に示す正極性の付加イオンリストの10行目にあるように、アダクトイオンとして+DHB−H2O+Hを登録し、このアダクトイオンについてのマトリクスとしてDHBを登録しておく。一方、+Hや+Naのような単純な付加イオンは使用しているマトリクスの種類に依存せずに現れるため、マトリクスの項目を空白にすることでマトリクスの種類の限定をなくしている。
なお、化合物リストではさらに、どのような試料で検出されるかの情報も併せて登録するようにしてもよい。ここでいう試料の種類の情報とは、図4(b)中に示す「サンプル情報2」のタブにおいて入力又は選択可能な情報と同じである。
化合物リスト、付加イオンリスト、及びMS/MSスペクトルライブラリは基本的には、本システムを提供するメーカが予め作成して同定情報記憶部27に格納しておく(実際には、制御・処理ソフトウェアの一部に組み込んでおく)ものであるが、ライブラリ作成・編集部25の機能によりユーザがリストを作成したり、作成されているリストに新たな化合物や付加イオンを追加したり、さらには内容を修正したり、削除したりすることもできる。
次に、図2に従い、化合物検索を行う際の操作及び処理の手順を説明する。
ユーザは入力部5で所定の操作を行い、スペクトルデータ格納部21に格納されているデータの中で解析したいデータを選択する(ステップS1)。この選択操作を受けてマススペクトル作成部22はスペクトルデータ格納部21から該当するデータを読み出しマススペクトルを作成する。表示処理部26は主制御部4を通して表示部6の画面上にマススペクトルを表示する(ステップS2)。ここで解析対象とするマススペクトルデータは関心領域内の一つの測定点に対応するものでもよいし、関心領域全体又はその中の所定の範囲に含まれる複数の測定点における平均マススペクトルでもよい。
ユーザは図3に示すように画面上に表示されたマススペクトル上で化合物検索を行いたいピークを選択したうえで、所定の操作により質量電荷比値に基づく化合物検索の実行を指示する(ステップS3)。ピークの選択は、マススペクトル上の目的のピークの上にカーソルを移動させてクリック操作を行えばよい。
この指示を受けて化合物候補検索部23は、選択されたピークの重心の質量電荷比値を実測のm/z値として求める。そのあと、化合物リストに挙げられている各化合物と付加イオンリストに挙げられている各アダクトイオンとを組み合わせたときの両者の理論質量値(モノアイソトピック質量)を合計した理論m/z値と上記実測m/z値とが、所定の許容誤差の範囲で一致するか否かを判定するが、その際に、データに付随しているサンプル情報(マトリクスの種類)を参照して、化合物と付加イオンとの組合せの候補を絞り込む(ステップS4)。
即ち、いまサンプル情報としてDHBマトリクスが指定されている場合、化合物リストの中で「マトリクス」の項目が「DHB」以外の行は除外する。一方、付加イオンリストにおいても、「マトリクス」の項目が「DHB」であるか空白(マトリクスを限定しない)である行以外は除外する。また、化合物リストの中で除外されなかった行、つまりはマトリクスとしてDHBが設定されている行ではイオン極性は正であるので、負極性の付加イオンリストは除外する。こうして残った化合物と付加イオンとの組合せに対する理論m/z値と実測m/z値の一致性を判定する。また、ニュートラルロスが指定されている化合物については、その化合物の理論質量値からニュートラルロスの理論質量値を差し引いたものと付加イオンとの組合せの理論m/z値を実測m/z値と比較する。さらに、多量体の重合数が設定されている化合物(例えばマトリクス分子そのもの)については、その化合物分子の理論質量値に重合数を乗じたものと付加イオンとの組合せの理論m/z値を実測m/z値と比較する。
ここで、上記「付加」設定フラグを設ける意義を説明する。
いま、DHBマトリクスの分子やDHBの二量体からH2Oが脱落したものが化合物リストに登録されているものとする。このとき、付加イオンリストに+DHB−H2O+Hが存在したとすると、化合物リストにおけるDHB分子と付加イオンリストにおける+DHB−H2O+Hとの組合せ、及び、化合物リストにおけるDHB−H2Oと付加イオンリストにおける+Hとの組合せは同じ理論m/z値であるため、それが実測m/z値と一致した場合には、その二つの組合せ候補が抽出されることになる。しかしながら、これら二つの組合せは実質的に同じイオンであることは明らかである。即ち、マトリクス分子を化合物リストに単に登録しただけであると、組合せのダブりが生じる場合がある。これを避けるために、本実施例の質量分析システムでは「付加」設定フラグを使用している。
上述したように「付加」設定フラグの値が「0」である場合には、そのアダクトイオンとマトリクスの多量体との組合せを考慮しない。一方、化合物リストにおいても、「マトリクス由来」識別フラグによりその化合物がマトリクス分子やその多量体であるか否か判明するから、その値が「1」である場合には、付加イオンリストにおいて「付加」設定フラグの値が「0」であるものとの組合せを考慮しないようにする。それにより、上述したような実質的に同じイオンであるダブった組合せが抽出されることを回避できる。
一方、マトリクスとして9−AAを使用するときには、付加イオンが−3H−2eであるような状態が存在する。−3Hはプロトンが三つ脱落し、−2eは電子が二つ脱落することを示しており、結果的にこれは1価の負イオンとなる。こうした付加イオンの状態は9−AAマトリクスの分子構造に由来するものであり、9−AAやその多量体にのみ付加する。こうした場合には、付加イオンリストに−3H−2eを登録し、それに対する「付加」設定フラグの値を「1」にしておく。「付加」設定フラグの値が「1」である場合には、この付加イオンは設定されたマトリクス分子にのみ付加するとして、化合物と付加イオンとの組合せを考慮すればよい。
なお、付加イオンが多価イオンである場合には、化合物リスト中の化合物の理論質量値と付加イオンの理論質量値を加算した後に、その値をイオンの価数で以て除し、そうして得られたm/z値と実測m/z値が一致するものを抽出すればよい。
上述のようにして、理論m/z値が実測m/z値に一致する化合物と付加イオンとの組合せの候補が抽出されたならば、表示処理部26はその候補をリスト化し、主制御部4を通して表示部6の画面上に表示する(ステップS5)。即ち、ここで表示されるのが、ステップS3でユーザにより指示されたピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補である。また、表示処理部26は化合物と付加イオンの組合せの候補をリスト化する際に、化合物リスト中でその化合物に対応する「MS/MSライブラリ」登録フラグを確認し、該フラグの値が「1」である場合、つまりその化合物に対応するMS/MSスペクトルがMS/MSスペクトルライブラリに登録されている場合には、候補リストにおいてその化合物と付加イオンとの組合せを示す行の背景の色を他の行とは異なる色で以て表示する。なお、このとき、組み合わせられる付加イオンは限定せず、付加イオンに依らず、化合物に対応する「MS/MSライブラリ」登録フラグの値によってのみ背景の表示色を決定する。図7がこの表示の一例である。
図7に示したように化合物と付加イオンとの組合せの候補が複数ある場合、いずれの候補が真の化合物を含むものであるのかを調べる一手法としてMS/MSライブラリ検索がある。MS/MSライブラリ検索では、MS/MS分析により得られたMS/MSスペクトルのスペクトルパターンと一致するMS/MSスペクトルをMS/MSスペクトルライブラリで検索するが、一致するMS/MSスペクトルがMS/MSスペクトルライブラリ中に存在しなかった場合、化合物の構造推定はユーザにとって非常に面倒な作業となる。また、MS/MSライブラリ検索で化合物が見つからなかった場合、MS/MS分析作業自体が無駄になる。これに対し、本実施例のシステムでは、上述したように、化合物と付加イオンとの組合せの候補を表示することで、マススペクトル上で指示したピークに対応する化合物候補を確認することができるだけでなく、その化合物候補のMS/MSスペクトルがMS/MSスペクトルライブラリに含まれるかどうか、つまりはMS/MSライブラリ検索により検索可能かどうかを確認することができる。それによって、目的とする化合物が同定できないような無駄なMS/MS分析の実行を避けることができる。
次に、本実施例の質量分析システムにおいてMS/MSライブラリ検索部24で実行される特徴的なMS/MSライブラリ検索について、図9に示すフローチャートに沿って説明する。
上述したように、化合物候補検索部23による検索の結果、マススペクトル上の或るピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補が抽出される。一方、MS/MSスペクトルライブラリに収録されているMS/MSスペクトルは、通常、純粋な化合物の標準品について該化合物のプロトン付加(又は脱離)イオンのピークをプリカーサイオンとして選択したMS/MSスペクトルである場合が多い。したがって、ユーザが指定したピークがプロトン付加(又は脱離)イオンピークでなく、別の付加イオンが化合物に付加したイオンのピークである場合、実測のMS/MSスペクトルはMS/MSスペクトルライブラリに収録されている標準的なMS/MSスペクトルを、その横軸方向に付加イオンとプロトンとの質量差だけ平行移動したものに近い筈である。
そこで、MS/MSライブラリ検索部24は以下の手順で、指定されたピークの質量電荷比をプリカーサイオンとしたMS/MS分析を実行して得られたMS/MSスペクトルに基づいて化合物を同定する。
まず、MS/MSライブラリ検索部24は処理対象のMS/MSスペクトルデータを読み込むとともに、上記化合物検索によってプリカーサイオンに対応付けられている化合物と付加イオンとの組合せ候補の情報を読み込む(ステップS11)。なお、化合物と付加イオンとの組合せ候補の情報は化合物候補検索部23からMS/MSライブラリ検索部24に自動的に引き渡されるようにしてもよいし、ユーザの指示に基づいてMS/MSライブラリ検索部24に入力されるようにしてもよい。
MS/MSライブラリ検索部24は、化合物と付加イオンとの組合せ候補の情報に基づいて、MS/MSスペクトルライブラリから該当する化合物のMS/MSスペクトルを選択した(ステップS12)あと、その候補の情報に基づく付加イオンとMS/MSスペクトルライブラリに登録されている付加イオンとの質量差だけMS/MSスペクトル全体を質量電荷比値の増加方向又は減少方向にシフトさせる。或いは、その候補の情報に基づく付加イオンの質量だけ実測のMS/MSスペクトルをシフトさせる一方、MS/MSスペクトルライブラリに登録されている付加イオンの質量だけ該MS/MSスペクトルライブラリに登録されているMS/MSスペクトルをシフトさせてもよい(ステップS13)。
そして、上記シフト後のMS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとの(又はともにシフトさせたライブラリ中のMS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの)スペクトルパターンの類似度を計算する(ステップS14)。化合物と付加イオンとの組合せの候補全てについて類似度を計算したか否かを判定し(ステップS15)、未処理の組合せ候補があればステップS12へと戻る。ステップS12〜S14の処理の繰り返しによって、化合物と付加イオンとの組合せの候補全てについて、付加イオンに対応して標準的なMS/MSスペクトルをシフトしたあとのMS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度が計算される。
ステップS15でYesと判定されると、最も高い類似度が得られる化合物と付加イオンとの組合せの候補を選択し、それを同定結果として表示部6の画面上に表示する(ステップS16)。また、類似度の高い順に所定の数の結果をリスト化して表示するようにしてもよい。このようにして、マススペクトルに基づく化合物検索によって化合物が十分に絞り切れない場合であっても、MS/MS分析によって得られるMS/MSスペクトルに基づくライブラリ検索に、化合物候補検索部23で得られた化合物及び付加イオンの情報を利用することにより、効率的に且つ高い精度で以て目的の化合物を同定することが可能となる。
なお、マススペクトル上でユーザが化合物検索対象のピーク又はMS/MS分析対象のピークを選択する際に、一つのピークに見えるものの異なる化合物由来の複数のピークが重なっている場合がある。そうしたピークを選択して化合物検索を実施すると候補の絞り込みが十分に行えないし、また、そうしたピークを選択してMS/MS分析を実施するとMS/MSスペクトルが複雑になりライブラリ検索に適さないものとなる。そこで、本実施例のシステムでは、本来複数であるピークが重なって一つのピークとして見えていることをユーザが判断できるようにしている。
図8(a)に示すように、質量電荷比値が僅かに異なる(m1、m2)二つの化合物由来のピークが近接している場合、それらのピークが重なり、図8(b)に示すように、質量電荷比値が二つのピークの間の値m3である(m1<m3<m2)一つのピークとして観測されることがある。このように重なったピークの重心の質量電荷比値を化合物検索に使用しした場合、通常の化合物検索における質量電荷比の許容誤差の範囲内にいずれの化合物由来のピークも含まれないことがあり得る。こうした場合には、化合物検索の際の質量電荷比の許容誤差の範囲を広げると、重なっている元の化合物のピークの情報が検索結果に現れる。即ち、複数のピークが重なっていることさえ判別できれば、少なくとも化合物検索において本来の化合物が検索結果から漏れることは防止できる。
そこで、表示処理部26は図3に示したようなマススペクトルを表示部6の画面上に表示する際に、装置に設定されている質量分解能と画面上のカーソルで指示されている位置に対応する質量電荷比値とから標準的なピーク幅(半値全幅)を計算し、そのピーク幅を有する帯状のマーキング100を重畳して表示する。図3ではこのマーキング100を斜線で示しているが、実際には見やすい表示色の帯で示せばよい。
ユーザが或るピークにカーソルを合わせたときに該ピークが単独のピークであるならば、そのピークの半値全幅はマーキング100の幅と同じ程度になる。一方、ユーザが或るピークにカーソルを合わせたとき、該ピークが図8(b)に示したように複数のピークが重なったものである場合には、そのピークの幅はマーキング100の幅に比べてかなり広くなる。これにより、ユーザは指示したピークが複数の化合物のピークが重なったものである可能性を一目で知ることができ、そうしたピークを指定して化合物検索を行う場合には、質量電荷比の許容誤差の範囲を広めに設定する等の適切な対応をとることができる。また、化合物検索結果にも複数の化合物由来の候補が現れることを予想することができる。
上記実施例の質量分析システムではイオン化にMALDI法を利用しており、その場合には、マススペクトル上にマトリクス由来のピークや試料中の化合物分子にマトリクス分子が付加したピークが現れることが多い。そのため、上述したような、特定のマトリクス分子と付加イオンとの組合せを考慮したりそれを除外したりするアルゴリズムで以て、十分な精度の化合物検索が可能であることが多い。一方、より汎用性を持たせ、マトリクス以外の特定の化合物と付加イオンとの組合せを考慮したり除外したりするために、以下のようにアルゴリズムを拡張してもよい。
例えば、図6に示したような付加イオンリストに、化合物名を登録する項目、及び、その化合物に付加するか否かを示すフラグ情報を設定可能な項目を追加する。即ち、付加イオン毎に、化合物名と該化合物への付加の有無を示す情報とを設定可能とする。そして、このフラグの値が「0」である場合、その付加イオンは、登録された化合物名と一致する、化合物リスト中の化合物名との組合せを考慮せず、フラグの値が「1」である場合には登録された化合物名と一致する化合物との組合せのみを考慮し、フラグの値が「2」である場合には登録された化合物名と一致し且つ多量体やニュートラルロスがないものとの組合せのみを考慮する、等の規則を定めておけばよい。
また、化合物の中にはイオン化の際に付加イオンのない分子イオンの状態でイオン化するものもある。そうした化合物については、化合物リストの組成式の欄の末尾に「+」や「−」の記号を付けておき、その記号がある場合には、付加イオンリスト中の付加イオンとの組合せを全く考慮しないようにすればよい。或いは、化合物リストに、分子イオンの状態でイオン化することを示すフラグを設定する項目を追加してもよい。
上記実施例のシステムでは測定部1はイメージング質量分析装置であるが、本発明に係る質量分析データ処理装置は、より一般的な質量分析装置で得られたデータを処理するものに適用できることは明らかである。もちろん、MS/MSライブラリ検索を行うには、MS/MS分析が可能な質量分析装置が必要であるが、その場合でも、質量分析装置として、タンデム四重極型質量分析装置、Q−TOF型質量分析装置、イオントラップ質量分析装置、イオントラップ飛行時間型質量分析装置など、様々なタイプの質量分析装置を利用することができる。
また、上記実施例のシステムでは、MS/MSスペクトルを用いてMS/MSライブラリ検索を実施していたが、nが3以上であるMSnスペクトルを用いてライブラリ検索を行うことで化合物同定を行ってもよいことは明らかである。
さらにまた、上記実施例や上述した各種の変形例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることも当然である。
1…測定部
10…イオン化室
11…試料台
12…試料
13…レーザ照射部
14…真空チャンバ
15…イオン導入部
16…イオンガイド
17…イオントラップ
18…フライトチューブ
19…検出器
2…データ処理部
20…サンプル情報収集部
21…スペクトルデータ格納部
22…マススペクトル作成部
23…化合物候補検索部
24…MS/MSライブラリ検索部
25…ライブラリ作成・編集部
26…表示処理部
27…同定情報記憶部
3…分析制御部
4…主制御部
5…入力部
6…表示部
上記課題を解決するために成された本発明は、試料に対する質量分析を行うことで得られたマススペクトルデータに基づいて、該試料に含まれる化合物を同定する質量分析データ処理装置であって、
a)種々の化合物について理論質量値を化合物に対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下でその化合物がイオン化される際に特定のイオンが付加する場合にはそのイオン化条件を併せて化合物に対応付けて記憶しておく化合物情報記憶部と、
b)イオン化の際に化合物に付加する付加イオンについて理論質量値を付加イオンに対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下で化合物に付加する場合にはそのイオン化条件を併せて付加イオンに対応付けて記憶しておく付加物情報記憶部と、
c)質量分析の際のイオン化条件をユーザが入力するための条件入力部と、
d)質量分析により得られたマススペクトル上における同定対象のピークの実測質量電荷比値を求め、該実測質量電荷比と前記条件入力部により入力されたイオン化条件とに基づいて、前記付加物情報記憶部に記憶されている付加イオンと前記化合物情報記憶に記憶されている化合物との組合せから、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する化合物候補検索部と、
を備えることを特徴としている。
例えばデータが取得される質量分析装置として、ESI法、MALDI法、PESI(探針エレクトロスプレー)法等、様々なイオン化法によるイオン源を搭載した質量分析装置が用いられる場合には、そのイオン化法によって化合物に付加する付加イオンが異なるため、それらイオン化法の種類をイオン化条件の一つとすることができる。一方、データが取得される質量分析装置として特定のイオン化法によるイオン源を搭載した質量分析装置が用いられる場合には、イオン化法の種類をイオン化条件から除くことができ、それ以外に化合物に付加する付加イオンの種類に影響を与える要素をイオン化条件とすればよい。
ユーザは質量分析に先立って又は質量分析の終了後に、条件入力部よりイオン化条件を入力する。例えば質量分析によって得られたマススペクトル上でユーザが同定したいピークを指示すると、化合物候補検索部は指示されたピークの実測質量電荷比値を求める。従来の一般的な化合物検索では、この実測の質量電荷比値と化合物情報記憶に記憶されている各化合物の理論質量電荷比値とを比較して化合物候補を抽出する。これに対し、本発明に係る質量分析データ処理装置において、化合物候補検索部は、化合物情報記憶に記憶されている化合物と付加物情報記憶部に記憶されている付加イオンとの様々な組合せによる理論質量電荷比値と実測の質量電荷比値とを比較するが、その際に、入力されたイオン化条件に適合しない組合せを除外する。
図8(a)に示すように、質量電荷比値が僅かに異なる(m1、m2)二つの化合物由来のピークが近接している場合、それらのピークが重なり、図8(b)に示すように、質量電荷比値が二つのピークの間の値m3である(m1<m3<m2)一つのピークとして観測されることがある。このように重なったピークの重心の質量電荷比値を化合物検索に使用した場合、通常の化合物検索における質量電荷比の許容誤差の範囲内にいずれの化合物由来のピークも含まれないことがあり得る。こうした場合には、化合物検索の際の質量電荷比の許容誤差の範囲を広げると、重なっている元の化合物のピークの情報が検索結果に現れる。即ち、複数のピークが重なっていることさえ判別できれば、少なくとも化合物検索において本来の化合物が検索結果から漏れることは防止できる。

Claims (9)

  1. 試料に対する質量分析を行うことで得られたマススペクトルデータに基づいて、該試料に含まれる化合物を同定する質量分析データ処理装置であって、
    a)種々の化合物について理論質量値を化合物に対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下でその化合物がイオン化される際に特定のイオンが付加する場合にはそのイオン化条件を併せて化合物に対応付けて記憶しておく化合物情報記憶部と、
    b)イオン化の際に化合物に付加する付加イオンについて理論質量値を付加イオンに対応付けて記憶するとともに、所定のイオン化条件の下で化合物に付加する場合にはそのイオン化条件を併せて付加イオンに対応付けて記憶しておく付加物情報記憶部と、
    c)質量分析の際のイオン化条件をユーザが入力するための条件入力部と、
    d)質量分析により得られたマススペクトル上における同定対象のピークの実測質量電荷比値を求め、該実測質量電荷比と前記条件入力部により入力されたイオン化条件とに基づいて、前記付加物情報記憶部に記憶されている付加イオンと前記化合物情報記憶に記憶されている化合物との組合せから、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する化合物候補検索部と、
    を備えることを特徴とする質量分析データ処理装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物候補検索部での検索により得られた化合物と付加イオンとの組合せの候補を表示する表示処理部をさらに備えることを特徴とする質量分析データ処理装置。
  3. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    MALDI法によるイオン源を用いた質量分析装置により得られたデータを処理する装置であり、前記イオン化条件は少なくともMALDI用のマトリクスの種類であることを特徴とする質量分析データ処理装置。
  4. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    特定の種類の試料中の化合物がイオン化される際に特定の付加イオンが該化合物に付加する場合に、前記化合物情報記憶部にはその試料の種類を化合物に対応付けて記憶しておくとともに、前記付加物情報記憶部にはその試料の種類を付加イオンに対応付けて記憶しておき、
    前記条件入力部は質量分析の対象である試料の種類の入力を可能とし、
    前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に前記条件入力部により入力された試料の種類の情報も利用して絞り込みを行うことを特徴とする質量分析データ処理装置。
  5. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物情報記憶部には、化合物がイオン化される際に該化合物から脱離するニュートラルロスの情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
    前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記化合物情報記憶部に記憶されているニュートラルロスの情報も利用することを特徴とする質量分析データ処理装置。
  6. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    前記化合物情報記憶部には多量体の重合数の情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
    前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記化合物情報記憶部に記憶されている多量体の情報も利用することを特徴とする質量分析データ処理装置。
  7. 請求項3に記載の質量分析データ処理装置であって、
    前記付加物情報記憶部では、マトリクス分子自体に付加するか否かを示す識別情報を付加イオンに対応付けて記憶しておくとともに、
    化合物情報記憶部では、マトリクス分子又はその多量体であることを示す識別情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
    前記化合物候補検索部は、前記ピークに対応する化合物と付加イオンとの組合せの候補を抽出する際に、前記付加物情報記憶部及び前記化合物情報記憶部にそれぞれ記憶されている前記識別情報を利用することを特徴とする質量分析データ処理装置。
  8. 請求項2に記載の質量分析データ処理装置であって、
    MSnスペクトルを化合物に対応付けて記憶しておくスペクトルライブラリを備え、
    前記化合物情報記憶部には、前記スペクトルライブラリ中にMSnスペクトルが存在するか否かを示す情報を化合物に対応付けて記憶しておき、
    前記表示処理部は、前記化合物候補検索部での検索により得られた化合物と付加イオンとの組合せに対応するMSnスペクトルが前記スペクトルライブラリ中に存在するか否かを視覚的に判別可能な様式でその検索結果を表示することを特徴とする質量分析データ処理装置。
  9. 請求項1に記載の質量分析データ処理装置であって、
    質量分析により得られたマススペクトルを表示画面上に表示する際に、予め定められている質量分解能と指示されたピークの質量電荷比とに基づいて理論的に計算される標準的なピーク幅を示す情報をマススペクトルに重畳して表示するスペクトル表示処理部をさらに備えることを特徴とする質量分析データ処理装置。
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