JP7377725B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び成形体に関し、詳しくは、非点灯時は成形体が視覚的に透明であり、エッジライト方式で肉厚方向の側面から光を入射、点灯した際には入射方向に垂直な面が、均一ではなくキラキラした輝きをもって面発光する面発光成形体に好適な熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、耐熱性、透明性等に優れた樹脂として電気・電子機器、OA機器の各種部品、自動車部品、建材、医療用途、雑貨等の分野で幅広く用いられている。また、近年は、コンピュータ、電子ブック、携帯電話等の電気電子機器、OA機器における液晶表示装置の面光源体の部品に好適に使用されている。
液晶表示装置に用いられるエッジライト方式の面光源体としては、ポリメチルメタクリレート樹脂等の透明樹脂からなる成形板裏面に乳白色等の拡散作用を有するパターンを印刷したり(特許文献1)、成形板裏面に凸部または凹部の反射ラインを設けることにより表面から発光させる方法(特許文献2)等がある。
しかしながら成形板に拡散作用を有するパターンを印刷する方法は、成形後の加工工程を必要とし、更にLED等の光源の入射部分と光源から遠い部分とで均一な発光を得るため、パターンの大きさや密度を光源側から光源から遠い部分へ次第に変化させる等の工夫が必要である。また凸部または凹部の反射ラインを設ける方法は精密な金型を必要とし、また成形時、金型の転写性が十分でないと期待される効果が得られない等の問題がある。
また、光拡散性を有するポリカーボネート樹脂組成物は、特許文献3-4等に記載があるものの、得られる成形品の光線透過率はいずれも低く、この種の用途には適さないものであった。また、特許文献5にはポリメチルメタクリレート等の透明樹脂に酸化物微粒子を配合してなる導光板の記載があるものの、光透過性が低下しやすく、充分な面発光性は得難い欠点がある。さらに、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂にアクリルビーズ、酸化アルミニウム等光拡散剤を微量配合した導光板も知られているが、これらは単なる均一な発光を得ることを目的としていた。
近年、娯楽施設の遊具(例えばパチンコ)や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器をはじめ、あらゆる分野で、意匠性の向上、機能性や斬新性の付与を目的として、面発光機能を有する材料が採用されるようになりつつある。その際、遊具や玩具、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器といった、高い意匠性や遊び心、趣向性が要求される分野においては、通常の液晶ディスプレイや照明機器のような単なる均一な発光ではなく、顧客の購買意欲をそそるような、斬新で、お洒落で、より美しく発光することが望まれる。
特開平5-17630号公報 特開平5-94802号公報 特開平3-143950号公報 特開平6-32973号公報 特開平5-341284号公報
本発明の目的(課題)は、光の入射方向に対して、垂直面は非点灯時は視覚的に透明であり、エッジライト方式で光を入射、点灯させた時は入射方向の垂直面が面発光し、その際単なる均一の発光ではなく、夜空の星のような、キラキラとした輝きをもって発光する面発光性透明樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の微粒子を特定の量で含有する熱可塑性樹脂組成物が、非点灯時には厚み方向から見た場合に透明であり、点灯時は光源入射方向に対して垂直面が高い輝度で発光し、キラキラとした輝きを得ることができることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下の熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。
[1]透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が12~40μmで、中空部の直径が10μm以上、中空部の容積率が50%以上である中空構造を有する球状粒子(B)を0.001~0.09質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]球状粒子(B)の圧縮破壊強度が10MPa以上である上記[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]透明熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂である上記[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
[5]3mmtで測定した際のヘイズが0.5~30%である上記[4]に記載の成形体。
[6]成形体の側面に沿って配設された光源から入光した際、10μm以上のサイズの輝点の数が100個/cm以上であることを特徴とする、エッジライト方式発光用である上記[4]に記載の成形体。
[7]成形体がエッジライト方式発光用導光板である上記[4]~[6]のいずれかに記載の成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、非点灯時には厚み方向から見た場合に透明であり、点灯時は光源入射方向に対して垂直面が高い輝度で発光し、キラキラとした輝きを発現する面発光成形体等を提供することができる。
実施例2と比較例1、比較例5で得られた成形品の光照射時の面発光の状態を示す写真である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が12~40μmで、中空部の直径が10μm以上、中空部の容積率が50%以上である中空構造を有する球状粒子(B)を0.001~0.09質量部含有することを特徴とする。
[透明熱可塑性樹脂(A)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる透明熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の非晶性ポリエステル樹脂;ポリスチレン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、又は2種類以上のこれらの熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを挙げることができる。
なかでも、透明性の点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂を使用することが好ましく、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂は、その種類に制限はない。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:-[-O-X-O-C(=O)-]-で表わされる、炭酸結合を有する基本構造の重合体である。なお、式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールAが好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’-オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6-ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’-ビフェニルジメタノール、4,4’-ビフェニルジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2-エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2-エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシノルボルナン、1,3-エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
<界面重合法>
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物のなかでもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10~12にコントロールするために、5~10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10~12、好ましくは10~11になる様にコントロールするために、ジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’-ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’-ジメチルアニリン、N,N’-ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;0-オキシン安息香酸、2-メチル-6-ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、原料であるジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、得られたポリカーボネート樹脂を熱可塑性樹脂組成物に使用した際に、熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
重合反応の際に、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)~数時間(例えば、6時間)である。
<溶融エステル交換法>
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物、カーボネートエステルは、上述したものを用いるが、用いるカーボネートエステルとしては、なかでもジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、カーボネートエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、カーボネートエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100~320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、なかでも、ポリカーボネート樹脂及び樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂は、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することも好ましい。
構造粘性指数Nとは、溶融体の流動特性を評価する指標である。通常、ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:γ=a・σにより表示することができる。
なお、式中、γ:剪断速度、a:定数、σ:応力、N:構造粘性指数を表す。
上述の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。つまり、構造粘性指数Nの大小により溶融体の流動特性が評価される。一般に、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂は、低剪断領域における溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂を別のポリカーボネート樹脂と混合した場合、得られる樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。
構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有する場合、構造粘性指数Nは好ましくは1.2以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.28以上であり、また、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.7以下のポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。このように構造粘性指数Nが高いポリカーボネート樹脂を含有させることにより、本発明の樹脂組成物の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。また、構造粘性指数Nを前記範囲の上限値以下とすることにより、本発明の樹脂組成物の成形性を良好な範囲に維持できる。
なお、構造粘性指数Nは、例えば特開2005-232442号公報に記載されているように、上述の式を誘導した、Logη=〔(1-N)/N〕×Logγ+Cによって表示することも可能である。なお、前記式中、N:構造粘性指数、γ:剪断速度、C:定数、η:見かけの粘度を表す。この式から分かるように、粘度挙動が大きく異なる低剪断領域におけるγとηからN値を評価することもできる。例えば、γ=12.16sec-1及びγ=24.32sec-1でのηからN値を決定することができる。
本発明の樹脂組成物において使用されるポリカーボネート樹脂が、上述した構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂中、20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限に制限はなく、通常100質量%以下であるが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
上述の構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を製造するには、上述のポリカーボネート樹脂の製造方法に従って製造することで構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を得ることができるが、好ましくは、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂(以下、適宜「分岐ポリカーボネート樹脂」という。)を製造するようにすると、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂が得られやすく、好ましい。分岐ポリカーボネート樹脂は構造粘性指数Nが高くなる傾向があるためである。
分岐ポリカーボネート樹脂の製造方法の例を挙げると、特開平8-259687号公報、特開平8-245782号公報等に記載の方法が挙げられる。これらの文献に記載の方法では、溶融エステル交換法によりジヒドロキシ化合物と炭酸のジエステルとを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を使用することなく、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
また、分岐ポリカーボネート樹脂を製造する他の方法として、上述のポリカーボネート樹脂の原料である、ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物の他に、三官能以上の多官能性化合物(分岐剤)を用い、界面重合法又は溶融エステル交換法にて、これらを共重合する方法が挙げられる。
三官能以上の多官能性化合物としては、例えば、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン(フロログルシン)、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-3、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物類;3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインド-ル(即ち、イサチンビスフェノール)、5-クロロイサチン、5,7-ジクロロイサチン、5-ブロムイサチン等が挙げられる。なかでも1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
多官能性化合物は、前記ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用することができる。多官能性芳香族化合物の使用量は、原料の全ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上であり、また、通常10モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
なお、多官能性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分岐ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、上述した方法のなかでも、上述の溶融エステル交換法によって分岐ポリカーボネート樹脂を製造する製造方法が特に好ましい。比較的安価で、工業的入手のしやすい原料により製造できるためである。このため、ポリカーボネート樹脂も、溶融エステル交換法により製造することが好ましい。
なお、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂は、単独の樹脂を用いてもよく、異なる樹脂2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
<ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項>
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは14000以上、より好ましくは16000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、高分子量のポリカーボネート樹脂、例えば好ましくは粘度平均分子量[Mv]が、50000~95000のポリカーボネート樹脂を含有することも好ましい。高分子量ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、より好ましくは55000以上であり、さらに好ましくは60000以上、中でも61000以上、特には62000以上が好ましく、また、より好ましくは90000以下、さらに好ましくは85000以下、中でも80000以下、とりわけ75000以下、特には70000以下が好ましい。
高分子量ポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂中、5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。これにより本発明の樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明の樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、メチルメタクリレート系の樹脂が好ましく、メチルメタクリレートの構成単位のモノマー量が全構成単位の総モノマー量に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上であることが好ましい。アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと他のメチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレート等との共重合体であることも好ましい。
また、アクリル樹脂は、質量平均分子量が20000~200000が好ましく、50000~150000であることが好ましい。
アクリル樹脂の質量平均分子量は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
アクリル樹脂の製造方法は一般的に乳化重合法、懸濁重合法、連続重合法とに大別されるが、本発明に使用されるアクリル樹脂は連続重合法により製造されたアクリル樹脂が好ましい。更に、連続製造法には連続塊状重合法と連続溶液重合法とに分けることができるが、本発明においてはいずれの製法で得られたアクリル樹脂も用いることができる。
アクリル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
前記したように、透明熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂および/またはアクリル樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂以外のその他の、前記した熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
[中空構造を有する球状粒子(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、中空構造を有する球状粒子(B)を含有する。そして、平均粒径が12~40μmで、中空部の直径が10μm以上、中空部の容積率が50%以上である中空構造を有する球状粒子(B)を、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、0.001~0.09質量部の量で含有する。
従来から、熱可塑性樹脂に酸化チタン等の拡散微粒子を配合した導光板等の面発光体があり、通常の非点灯時には透明性を示すが、エッジライト方式でLED光等を入射させると垂直面が淡く均一に発光するものが知られている。通常、これらの面発光体は拡散微粒子の粒径が、10μm未満と光の波長に対して相対的に小さいために、入射光の散乱メカニズムは均一なミー散乱となり、光源から遠ざかるにつれて、色相が変化し、黄色みを帯びるようになる。
これに対して、上記した大きな粒径で、内部に空間を持つ球状粒子(B)は、中空球状粒子の内部空間は空気(もしくは減圧状態の空気)であり、これを含有する本発明の樹脂組成物の成形体では、散乱のメカニズムは幾何光学近似(屈折)が主となり、屈折率が1.59のポリカーボネート樹脂と屈折率が1の内部空間との屈折率の差が大きく、しかも球状粒子(B)は上記したような微量でしか存在していないので、高い輝度で不均一にキラキラと面発光し、かつ、輝度の減衰率が低く、エッジライトから反対側の末端にまで輝度の減衰が少なくなると考えられる。
図1は、実施例2と比較例1及び比較例5で得られた成形品の光照射時の面発光の状態を示す写真である。図1中、右端にあるのが、平均粒径が5μm(中空部容積率:15%)の中空アクリル系光拡散剤を配合した比較例5の成形体であり、均一に発光しており、またLED光源から遠ざかった部分では輝度が低くなっていることが分かる。また、図1の中央にあるのが、平均粒径が20μm(中空部容積率:0%)のガラスビーズを配合した比較例1の成形体であり、輝度が上がっていないことが分かる。
一方、図1の左側にあるのが、平均粒径が16μm(中空部容積率:85%)の中空ガラスビーズを配合した実施例2の成形体であり、高い輝度で、不均一な輝点で、キラキラと面発光し、しかもLED光のエッジライトから反対側の末端にまで輝度の減衰が少ないことが分かる。
球状粒子(B)は、上記のとおり、平均粒径が12~40μmと大粒径であり、好ましくは13μm以上、より好ましくは14μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは37μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは33μm以下、なかでも30μm以下、とりわけ28μm以下、特に26μm以下が好ましく、最も好ましくは25μm以下である。
ここで、平均粒径は、レーザ回折散乱方式により測定された中央値(D50)である。
なお、球状粒子(B)の球状とは、真球状であってもよく、楕円状等であってもよく、卵形などを含む略球状を意味し、具体的にはアスペクト比(長径と短径の比)が通常1.3以下であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
中空である球状粒子(B)は、中空部の直径(内径)が10μm以上であり、中空部の容積率が50%以上であり、空気(もしくは減圧状態)の内部空間が大きいことを特徴とする。
中空部の直径(内径)は、好ましくは11μm以上、より好ましくは12μm以上、さらに好ましくは13μm以上であり、好ましくは37μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは33μm以下、なかでも30μm以下、とりわけ28μm以下、特に26μm以下が好ましく、最も好ましくは25μm以下である。
また、中空部の容積率は、球状粒子(B)の全容積100%に対して、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上、なかでも75%以上、特に80%以上が好ましく、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは93%以下、特に90%以下が好ましい。
球状粒子(B)の外殻部の厚みは、薄い方が中空部の容積を大きくして高い輝度を得ることができるので好ましく、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下であり、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。
球状粒子(B)の圧縮破壊強度に特に制限はないが、通常10MPa以上、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、更に好ましくは70MPa以上、一層好ましくは90MPa以上、特に好ましくは110MPa以上である。上記の範囲であると、溶融混練時、成形加工時の粒子の破砕が抑制されて、粒子が配合前の形状で樹脂中に含有、分散した状態となる為、多数の粒により高い面発光輝度が発現しやすくなるため好ましい。一方、圧縮破壊強度の上限は特に制限はないが、通常は500MPa以下である。
ここで、本発明における球状粒子(B)の圧縮破壊強度とは、JIS-Z8844:2019「微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法」に基づき以下の条件で測定して算出した値である。
・試験機:微小粒子用の圧縮試験機。装置としては島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT-510を例示する事ができる。
・圧縮試験時の雰囲気条件:23℃±2℃、50±15%RH
・圧縮試験の負荷速度:1.1155mN/sec
・上部加圧圧子:平面50μmφ
・下部加圧板(試料散布台):平面形状
・圧縮試験は無作為に抽出した7個の粒子でそれぞれの粒子について圧縮試験を実施、
破壊強度を求めてその平均値をその粒子の圧縮破壊強度とする。
・圧縮破壊強度は以下の算出式(A)で求める。
算出式(A)σ=2.8×F/d×10
σ:圧縮破壊強度(MPa) F:試料の破壊が認められた時の破壊力(mN)
d:測定した粒子の平均粒子径(μm)
球状粒子(B)の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.001~0.09質量部である。含有量が0.001質量部未満の場合は、面発光輝度が不十分で、本発明の特徴的な面発光とならず、0.09質量部を超える場合は、透明性の低下及び光源から離れた箇所の面発光輝度が低下し、本発明の特徴的な面発光となりにくい。
球状粒子(B)としては、特に限定はされず、無機系中空粒子、シルセスキオキサン重合体等のシリコーン化合物を主成分とするシリコーン系中空粒子、アクリル樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂からなる中空粒子等を用いることができる。
なお、中空粒子(B)は、必ずしも完全に透明である必要はないが、透明性に優れることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物として3mmtで測定した際のヘイズが、好ましくは0.5~30%の範囲になるような透明度を有していることが好ましい。ユニークな面発光体とするために、中空粒子(B)は着色等がなされていてもよく、そのため透明度がある程度低下していることも好ましい。
球状粒子(B)としては、上記した中でも、無機系中空粒子が好ましい。
無機系中空粒子としては、中空ガラス、中空シリカ、中空セラミック等が好ましく挙げられるが、特に中空ガラス(中空ガラスビーズ、ガラスバルーン、中空ガラスマイクロスフェア等と呼ばれるものを含む)が好ましい。中空ガラスは、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とし、副成分として酸化ナトリウム(NaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ホウ素(B)、酸化リン(P)等を含有するガラスで主に形成されていることが好ましい。
本発明で、規定する粒径、中空部の直径、容積率を満たす中空ガラスは、市販品の中から選択するによっても入手でき、例えば、米国3M社の商品名「グラスバブルズ」シリーズの中から選ぶことでも可能である。具体的にはグラスバブルズS22、S38、iM16K、S60HS、iM30Kなどを例示する事が出来る。この中でも圧縮破壊強度が高いS38、iM16K、S60HS、iM30Kが好ましく、iM30Kがより好ましい。
[有機スルホン酸アルカリ金属塩]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤を含有することが好ましく、難燃剤としては、透明性の観点から、有機スルホン酸アルカリ金属塩が好ましい。有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有することで、樹脂組成物の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性をより高めることができると共に、耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できる。
また、アルカリ金属塩の金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられ、なかでも、ナトリウム、カリウム、セシウムが最も好ましい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩のうち、好ましいものの例としては、含フッ素脂肪族スルホン酸又は芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。そのなかでも好ましいものの具体例を挙げると、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1つのC-F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩;ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1種の芳香族基を有する芳香族スルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
上述した例示物のなかでも、含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましく、具体的にはパーフルオロブタンスルホン酸カリウム等が好ましい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩は単独の化合物のみを用いてもよく、異なる2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有する場合の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上0.2質量部未満、より好ましくは0.05~0.15質量部、さらに好ましくは0.05~0.1質量部である。有機スルホン酸金属塩の含有量が上記下限未満では、難燃性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、透明性が低下するので好ましくない。
[紫外線吸収剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに紫外線吸収剤を含有することも好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR-25」、BASF社製「B-CAP」等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[安定剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、リン系安定剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましい。
リン系安定剤を含有することで樹脂組成物の熱安定性、耐熱変色性、耐候性等を向上させることができる。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
リン系安定剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.005質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常0.5質量部以下、好ましくは0.4質量以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値を下回ると、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
なお、フェノール系酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
フェノール系酸化防止剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.005質量部以上であり、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。フェノール系酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤(滑剤)を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤の含有量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、難燃助剤、蛍光増白剤、染顔料、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては例えばドデシルベンゼンスルホン酸の塩、パーフルオロアルキルスルホニル誘導体の窒素オニウム塩等のイオン液体型帯電防止剤、ジグリセリンモノラウレートなどが好ましく使用できる。その配合量は、透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲であることが好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物の製造]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、透明熱可塑性樹脂(A)及び球状粒子(B)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、球状粒子(B)はサイドフィードすることも好ましい。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、このマスターバッチを基材となる樹脂ペレットと混合して直接、成形機に投入して成形体を製造することも出来る。また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形して成形体とされる。
成形体を製造する方法は、熱可塑性樹脂組成物に一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
これらの中でも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法、シート押出成形法、異形押出成形法等が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これを用いて成形された厚さ3mmの成形体のヘイズは1~30%であることが好ましく、より好ましくは3~30%であり、さらに好ましくは5~25である。ヘイズが30%を超えると、透明性が低下して、本発明の特徴的な面発光の輝度がLED光源から遠ざかるにつれ著しく低下する、またデザイン性も低いものとなる。
本発明の成形体は、好ましくは、成形体の側面に沿って配設された光源から入光した際、10μm以上のサイズの輝点の数が10個/cm以上である。サイズ(直径)が10μm以上という大きな輝点が、10個/cm以上存在することにより、本発明の成形体は、光源入射方向に対して垂直面が高い輝度で面発光し、キラキラとした輝きを発現することができる。このような面発光をする本発明の成形体は、エッジライト方式による発光用成形体として、極めて斬新でユニークな発光体となる。
10μm以上の輝点の数は、好ましくは10個/cm以下、より好ましくは10個/cm以下、さらには10個/cm以下、中でも10個/cm以下、とりわけ10個/cm以下が好ましく、特には10個/cm以下であることが好ましい。
10μm以上のサイズの輝点の数の測定は、具体的には、長片111mm×短辺36mm×厚さが2mmと3mmの2段形状のプレートを成形し、3mm厚部の短辺のエッジ部に横方向に配置したLED光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)からプレートの3mm厚部に導光し、金属顕微鏡(オリンパス社製 BX-51)を3mm厚部のプレート表面に焦点を固定し、撮影した画像を基に、発光する10μm以上のサイズの輝点の数をカウントし、1cmあたりの数を算出する。
本発明の成形体は、エッジライト方式による面発光させた際、均一(均質)な発光ではなく、不均一な粒感のある面発光をする点が特徴的である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して用いる成形体の形状は限定されず、平板であってもよいし、曲面形状等の非平面形状であってもよい。
本発明の樹脂組成物を成形した好ましい成形体としては、LED等を光源として用いた各種の光学部材が挙げられる。代表的には導光板や面発光体用部材等の面発光する部材として幅広く使用することができる。
中でも好ましいものとして、LED光源を成形体の縁部に備えたエッジライト方式のための面発光成形体が挙げられる。面発光成形体では、LED光源の発した光が、成形した平板状の成形体の側部から入射した後、球状粒子(B)により拡散/屈折され、入射角に対して垂直に、すなわちその成形体の表面が出射面となって、面発光する。
そして、本発明の成形体は、高い輝度で面発光し、キラキラとした輝きを示し、斬新で意匠性が高く、また輝度の減衰が少ないので、各種の用途に面発光体として使用できる。
それらの用途の例を挙げると、例えば、光学部品、照明付きのスイッチ、照明付きの構造部材、照明機器、電気・電子機器、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル機器、パチンコ、パチスロ、ゲーム等のアミューズメント機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品(ライト、内装部品、パネル)、屋内用内装(例えば店舗内の意匠性の高い照明部材、案内表示等)、商品ディスプレイ(例えばショーケース)などのパネル部材、自動販売機、券売機などの間仕切り板、道路標識、看板、時計、アクセサリー、各種容器、レジャー用品・雑貨類等の部品が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは「質量部」を表す。
実施例及び比較例に使用した各成分は、以下の表1の通りである。
(実施例1~9、比較例1~6)
[樹脂ペレット製造]
表1に記載した各成分を、後記表2に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーミキサーにて20分混合した後、日本製鋼所社製二軸押出機「TEM26SX」に供給し、スクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/hr、バレル温度280℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押し出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂組成物のペレットを得た。
[ポリカーボネート樹脂成形]
上記の方法で得られたペレットを、120℃で4時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、住友重機械工業社製射出成形機「SE-50DUZ」により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、111mm×36mm×厚さが2mmと3mmの2段プレートを成形した。
[アクリル樹脂成形]
上記の方法で得られたペレットを、80℃で4時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、住友重機械工業社製射出成形機「SE-50DUZ」により、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で、111mm×36mm×厚さが2mmと3mmの2段プレートを成形した。
[ヘイズ(3mmt、単位:%)]
上記の方法で得られた2段プレートの3mm厚部分を、JIS K7136、JIS K7361に準拠し、濁度計(日本電色工業社製「NDH-2000」)を用いて、D65光源、10°視野にて、ヘイズ(単位:%)を測定した。
[上面の輝度(単位:cd/m)、面発光度、輝度保持率(%)]
上記2段プレートの3mm厚部長手方向端部の側面に、LED白色光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)を当接させて、LED光を入射させた時に、発光面から上方30cmの位置に設置した輝度計(コニカミノルタ社製「CA-2500」)により、2段プレートの3mm厚部の発光面全体を縦5×横5=25に分割した測定点の輝度を測定した。得られた25点の測定値から平均輝度を算出した。また、下記式(1)により輝度と透明性のバランスの指標として面発光度を算出した。面発光度の値が高ければ、輝度が高く、ヘイズが低い、すなわち、面発光が優れることを示す。
面発光度=平均輝度(cd/m)/ヘイズ(%) (1)
得られた面発光度から、以下の基準で面発光の優(○)劣(×)を判定した。
〇:面発光度が10以上
×:面発光度が10未満
更に、得られた輝度から、下記式(2)により輝度の長手方向の減衰の評価の指標として輝度保持率を算出した。
輝度保持率(%)=最少輝度値/最大輝度値×100 (2)
[発光色の黄色度差]
上記2段プレートの3mm厚部長手方向端部の側面に、LED白色光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)を当接させて、LED光を入射させ、発光面から上方30cmの位置に設置した輝度計(コニカミノルタ社製「CA-2500」)により、2段プレート3mm厚部の発光面全体を縦5×横5=25に分割した測定点の発光色の刺激値X,Y,Zを測定した。得られた測定値から下記式(3)、下記式(4)により発光色の評価の指標として黄色度差を算出した。黄色度差の値が正に高いほど、発光色の黄変が大きいことを意味する。
黄色度差=LED入光部近傍の黄色度-LED入光部対辺近傍の黄色度 (3)
黄色度=100(1.28X-1.06Z)/Y (4)
[輝点の数(単位:個/cm)、面発光の特性評価]
上記2段プレートの長手方向端部の側面に、LED白色光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)を当接させて、LED光を入射させた時に、3mm厚部の短辺のエッジ部に横方向に配置したLED光源からプレートの3mm厚部に導光し、3mm厚部で発光する10μm以上のサイズの輝点の数を金属顕微鏡(オリンパス社製BX-51)を用いて、0.25mmあたりの凡その個数をカウントした。得られた個数の値からcm当たりの個数を算出した。
実施例2と比較例1、5の2段プレートの発光の状態を示す写真を、図1に示した。
面発光の特性評価として、上記でプレートの面発光の状態を、以下のA,Bの基準で、目視にて判定した。
A:不均一な粒感のある発光である。
B:均一な発光である。
以上の結果を、以下の表2に示す。
上記表から、実施例のものは輝度とヘイズのバランスに優れ、輝度保持率が高く、また、発光色の黄色度差の値が低く、その面発光は均一ではない、キラキラした輝きをもって面発光するものであることが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、光学部品、照明機器、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類等の部品等に広く好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (7)

  1. 透明熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し、平均粒径が12~40μmで、中空部の直径が10μm以上、中空部の容積率が50%以上である中空構造を有する球状粒子(B)を0.001~0.09質量部含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. JIS-Z8844:2019「微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法」に基づき、以下の条件で測定して算出される球状粒子(B)の圧縮破壊強度が10MPa以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    ・試験機:微小粒子用の圧縮試験機(島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT-510)
    ・圧縮試験時の雰囲気条件:23℃±2℃、50±15%RH
    ・圧縮試験の負荷速度:1.1155mN/sec
    ・上部加圧圧子:平面50μmφ
    ・下部加圧板(試料散布台):平面形状
    ・圧縮試験は無作為に抽出した7個の粒子でそれぞれの粒子について圧縮試験を実施し、
    破壊強度を求めてその平均値を圧縮破壊強度とする。
    ・圧縮破壊強度σは以下の算出式(A)で求める。
    σ=2.8×F/d ×10 (A)
    σ:圧縮破壊強度(MPa) F:試料の破壊が認められた時の破壊力(mN)
    d:測定した粒子の平均粒子径(μm)
  3. 透明熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
  5. 3mmtで測定した際のヘイズが0.5~30%である請求項4に記載の成形体。
  6. 以下の条件にて測定される、成形体の側面に沿って配設された光源から入光した際、10μm以上のサイズの輝点の数が100個/cm以上であることを特徴とする、エッジライト方式発光用である請求項4に記載の成形体。
    長片111mm×短辺36mm×厚さが2mmと3mmの2段形状のプレートを成形し、3mm厚部の短辺のエッジ部に横方向に配置したLED光源(OptoSupply社製 3mm砲弾型白色LED OSW54K3131A)からプレートの3mm厚部に導光し、金属顕微鏡(オリンパス社製 BX-51)を3mm厚部のプレート表面に焦点を固定し、撮影した画像を基に、発光する10μm以上のサイズの輝点の数をカウントし、1cm あたりの数を算出する。
  7. 成形体がエッジライト方式発光用導光板である請求項4~6のいずれかに記載の成形体。
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