JP2014043495A - Led照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物及びled照明用透光性部材 - Google Patents

Led照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物及びled照明用透光性部材 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性、演色性及び全光束に優れたLED照明部材用のポリカーボネート樹脂組成物及びLED照明の透光性部材を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)0.01〜1質量部、テトラアザポルフィリン化合物(C)0.00001〜1質量部を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の構造粘性指数N値が1.1以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であることを特徴とするLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、LED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物及びLED照明用透光性部材に関し、さらに詳しくは、難燃性、演色性及び全光束に優れたLED照明部材用のポリカーボネート樹脂組成物及び、それからなるLED照明の透光性部材に関する。
LED照明のカバーなどのLED照明用の透光性部材には、LED光源から放出する光量を極力損失することなく外部に放出すること、即ち全光束が高いことが求められるため、その素材には高い透明性が必要となる。
また、一般的な白色LED照明は、太陽光と比較して発光波長に偏りがあるため、物の色が太陽光の下で見た場合と異なって見えるという課題がある。
この見え方の違いは照明業界では、演色性として表現される。演色性は、JIS規格Z8726にその評価法が記載されており、演色性評価項目として、R1〜R15までの演色評価数があり、特にR9〜R15は特殊演色評価数と定義し、R1〜R8までの演色評価数の平均値は平均演色評価数(Ra)として定義されている。一般的な白色LED照明は、Raが80未満の低いRaに留まっている。
白色LED照明の演色性を改良するためには、LEDチップに赤、緑、黄色などの複数の蛍光体を組み合わせて発光分光分布を広くする手法が取られるが、赤色、緑色などの蛍光体は非常に高価であるため、経済的に課題がある。
また、複数色の蛍光体を組み合わせた白色LEDは、LEDチップの発光エネルギーに対して輝度が低下しやすいため、高い演色性と高い全光束の両立は非常に困難となる。
これを両立させるために、LEDの発光出力を電気的に高めるとLEDチップ基盤の周辺の温度が高くなり、安全性の低下や製品寿命の低下を招くという問題を生じる。
また、LED照明は、長期使用を前提としており、より高い安全性が求められるため、LED照明用の透光性部材には難燃性が求められる場合が増えている。難燃性が必要な場合にはPMMAなどのアクリル系樹脂では難燃化が難しいため、多くの場合ポリカーボネート樹脂、或いはガラスが使用されることとなる。特に形状自由度、衝撃性の観点からポリカーボネート樹脂が多用される。
しかしながら、LEDチップと蛍光体の組み合わせによる手法ではなく、難燃性を改善したポリカーボネート樹脂にて演色性を改善する手法についてはこれまで一切知られていない。
例えば、特許文献1には、テトラアザポルフィリンを配合した色補正フィルターを設置する手法が提案されている。さらに、特許文献2では、電球型LEDランプについて特定の吸収波長と熱分解温度を有する有機可視選択色素を特定の範囲で含有させた透光性プラスチックカバーが提案されている。
いずれも演色性改良については記載があるものの、これらの提案では難燃性が不十分であり、また難燃性を改善するための手法について何の記載も示唆もされていない。
特開2011−221456号公報 特開2012−4392号公報
本発明の目的は、以上の状況に鑑み、難燃性、演色性、透明性に優れたLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機スルホン酸アルカリ金属塩とテトラアザポルフィリンをそれぞれ特定量含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物の構造粘性指数N値が特定値以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であるポリカーボネート樹脂組成物が、難燃性、演色性、透明性に優れ、LED照明部材用として極めて好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなるLED照明用透光性部材を提供する。
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)0.01〜1質量部、テトラアザポルフィリン化合物(C)0.00001〜1質量部を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の構造粘性指数N値が1.1以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であることを特徴とするLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[2]有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)が、含フッ素有機スルホン酸のアルカリ金属塩である上記[1]に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[3]有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)がパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩である上記[1]または[2]に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)が、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩である上記[1]または[2]に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、少なくとも一部に分岐構造を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[6]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、(A1)と(A2)の合計100質量部基準で、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)1〜99質量部と、粘度平均分子量(Mv)が50,000〜90,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A2)1〜99質量部からなる上記[1]〜[5]のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[7]テトラアザポルフィリン化合物(C)は、最大吸収ピークが570〜600nmの波長領域内にあり、且つその半値幅が50nm以下である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物からなるLED照明用透光性部材。
[9]白色LED照明用である上記[8]に記載のLED照明用透光性部材。
本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物によれば、難燃性、演色性および透明性に優れたポリカーボネート樹脂材料を提供することができ、LED照明装置(器具)の透光性部材として、好適に使用することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
[概要]
本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)0.01〜1質量部、テトラアザポルフィリン化合物(C)0.00001〜1質量部を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の構造粘性指数N値が1.1以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の種類に制限はない。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:−(−O−X−O−C(=O)−)− で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、本発明では、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用する。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の具体的な種類に制限は無いが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしても良い。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いても良い。
また芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート樹脂(A)は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
・芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
・・界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
・・溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
・芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に関するその他の事項
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
構造粘性指数Nとは、文献「化学者のためのレオロジー」(化学同人、1982年、第15〜16頁)にも詳記されているように、溶融体の流動特性を評価する指標である。通常、ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:γ=a・σにより表示することができる。なお、前記式中、γ:剪断速度、a:定数、σ:応力、N:構造粘性指数、を表す。
上述の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。つまり、構造粘性指数Nの大小により溶融体の流動特性が評価される。一般に、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂は、低剪断領域における溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂を別のポリカーボネート樹脂と混合した場合、得られる成形品の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。ただし、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形性を良好な範囲に維持するためには、このポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは過度に大きくないことが好ましい。
従って、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが、通常1.2以上、好ましくは1.25以上、より好ましくは1.28以上であり、また、通常1.8以下、好ましくは1.7以下のポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
このように構造粘性指数Nが高いことは、ポリカーボネート樹脂が分岐構造を有することを意味し、このように構造粘性指数Nが高いポリカーボネート樹脂を含有することにより、ポリカーボネート樹脂成形品の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。
なお、構造粘性指数Nは、例えば特開2005−232442号公報に記載されているように、上述の式を誘導した、Logη=〔(1−N)/N〕×Logγ+Cによって表示することも可能である。なお、前記式中、N:構造粘性指数、γ:剪断速度、C:定数、η:見かけの粘度、を表す。この式から分かるように、粘度挙動が大きく異なる低剪断領域におけるγとηからN値を評価することもできる。例えば、γ=12.16sec−1及びγ=24.32sec−1でのηからN値を決定することができる。
構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、特開平8−259687号公報、特開平8−245782号公報に記載されているように、溶融法(エステル交換法)によって芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を添加することなく、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
また、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、常法に従って、ホスゲン法あるいは溶融法(エステル交換法)で製造する際に、分岐剤を使用する方法によって製造することもできる。
分岐剤の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、また3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどが挙げられる。
その使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%の範囲であり、特に好ましくは0.1〜3モル%の範囲である。
本発明に使用するポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上述した構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂(以下、このポリカーボネート樹脂を「所定Nポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)を、ポリカーボネート樹脂中、通常20質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含むことが望ましい。このように所定Nポリカーボネート樹脂と組合せることにより、必要以上に押出し時のトルク上昇を招かないため、生産性の低下を招きにくくなる。すなわち、成形性と生産性をいずれも顕著に発揮できることになる。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中の、所定Nポリカーボネート樹脂の含有量の上限に制限は無く、通常100質量%以下であるが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
また、所定Nポリカーボネート樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上述した所定Nポリカーボネート樹脂以外に、構造粘性指数Nが上記の所定範囲外であるポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。その種類に制限は無いが、なかでも直鎖状ポリカーボネート樹脂が好ましい。所定Nポリカーボネート樹脂と直鎖状ポリカーボネート樹脂とを組み合わせることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性(滴下防止性)と成形性(流動性)のバランスをとりやすいという利点が得られる。この観点から、ポリカーボネート樹脂は、所定Nポリカーボネート樹脂と、直鎖状ポリカーボネート樹脂とから構成されるものを用いることが特に好ましい。なお、この直鎖状ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは通常1〜1.15程度である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]で、通常15,000以上、好ましくは19,000以上、より好ましくは21,000以上、特には23,000以上であり、また、通常36,000以下、好ましくは34,000以下、より好ましくは32,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは29,000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
混合して用いる場合には、粘度平均分子量(Mv)が比較的小さいポリカーボネート樹脂(A1)に、Mvが大であるポリカーボネート樹脂(A2)を混合して使用することも好ましく、この場合、Mvが小さいポリカーボネート樹脂(A1)を10,000〜30,000、より好ましくは12,000〜20,000の範囲から選び、Mvが大きいポリカーボネート樹脂(A2)のMvを50,000〜90,000、より好ましくは60,000〜85,000のものを組み合わせて使用することが好ましい。
この際の混合割合は、(A1)と(A2)の合計100質量部基準で、(A1)が1〜99質量部、(A2)が1〜99質量部であることが好ましく、より好ましくは(A1)が40〜90質量部、(A2)が10〜60質量部であり、さらには(A1)が60〜80質量部、(A2)が20〜40質量部であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A1)と(A2)の粘度平均分子量を、それぞれ上記範囲とし、且つ有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)を所定の含有量とすることにより、厚肉成形品の厚肉部の除冷時の白濁の問題を解消し、且つ難燃性に優れ、さらに優れた耐熱変色性を発現することが可能となる。
なお、本発明において、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2014043495
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)を含有する。有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができるほか、テトラアザポルフィリン化合物(C)と併用すると、驚くべきことに本発明のポリカーボネート樹脂組成物の演色性及び全光束を効果的に高めることができる。
有機スルホン酸アルカリ金属塩が有するアルカリ金属の種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属が挙げられるが、なかでもナトリウム、カリウム、セシウムが好ましく、特にはカリウム及びナトリウムが好ましい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩のうち、好ましいものの例としては、含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、含フッ素脂肪族スルホン酸イミドのアルカリ金属塩等の含フッ素有機スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホンアミドのアルカリ金属塩が挙げられる。
その中でも好ましいものの具体例を挙げると、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸カリウム、パーフルオロプロパンスルホン酸カリウム等の、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩;
パーフルオロメタンジスルホン酸ジナトリウム、パーフルオロメタンジスルホン酸ジカリウム、パーフルオロエタンジスルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタンジスルホン酸ジカリウム、パーフルオロプロパンジスルホン酸ジカリウム、パーフルオロイソプロパンジスルホン酸ジカリウム、パーフルオロブタンジスルホン酸ジナトリウム、パーフルオロブタンジスルホン酸ジカリウム、パーフルオロオクタンジスルホン酸ジカリウム等の、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族ジスルホン酸のアルカリ金属塩;等の、含フッ素脂肪族スルホン酸の金属塩、
ビス(パーフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム、ビス(パーフルオロプロパンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(パーフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム、トリフルオロメタン(ペンタフルオロエタン)スルホニルイミドカリウム、トリフルオロメタン(ノナフルオロブタン)スルホニルイミドナトリウム、トリフルオロメタン(ノナフルオロブタン)スルホニルイミドカリウム、トリフルオロメタン等の、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族ジスルホン酸イミドのアルカリ金属塩;
シクロ−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドリチウム、シクロ−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドナトリウム、シクロ−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドカリウム等の、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する環状含フッ素脂肪族スルホンイミドのアルカリ金属塩;等の、含フッ素脂肪族スルホン酸イミドのアルカリ金属塩、
ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1種の芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩;
サッカリンのナトリウム塩、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのカリウム塩、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのカリウム塩、N−(フェニルカルボキシル)−スルファニルイミドのカリウム塩等の、分子中に少なくとも1種の芳香族基を有する芳香族スルホンアミドのアルカリ金属塩;等の、芳香族スルホンアミドの金属塩等が挙げられる。
上述した例示物の中でも、含フッ素有機スルホン酸のアルカリ金属塩、特に含フッ素脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸金属塩がより好ましく、含フッ素脂肪族スルホン酸金属塩が、特に好ましい。
また、含フッ素脂肪族スルホン酸金属塩としては分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩がより好ましく、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく、具体的にはパーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
芳香族スルホン酸アルカリ金属塩としては芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩がより好ましく、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム等のジフェニルスルホン−スルホン酸のアルカリ金属塩;パラトルエンスルホン酸ナトリウム、及びパラトルエンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸セシウム等のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩;が特に好ましく、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましい。
なお、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩の純度は99%以上であることが好ましい。純度がこれより低いと組成物が変色したり、熱安定性が悪化する。
このような有機スルホン酸アルカリ金属塩として、具体的には、DIC社製商品名メガファックF114P、ランクセス社製商品名バイオウェットC4、インサイト・ハイテクノロジー社製商品名IHT−FR21などが例示される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物における有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01質量部以上、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.04質量部以上、特に好ましくは0.05質量部以上であり、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.3質量部以下である。有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)の含有量が少なすぎると得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎてもポリカーボネート樹脂の熱安定性の低下、並びに、成形品の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる。
[テトラアザポルフィリン化合物(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、テトラアザポルフィリン化合物(C)を含有する。テトラアザポルフィリン化合物(C)を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の演色性を向上させることができるほか、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)と併用すると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を効果的に高めることができる。
テトラアザポルフィリン化合物(C)は、テトラアザポルフィリン骨格を有する化合物であり、テトラアザポルフィリン骨格に特定の置換基を有していてもよく、好ましくは、例えば、下記一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2014043495
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基を表す。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、または酸化金属原子を表す)
一般式(1)で表される化合物において、好ましくは、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数4〜30の置換または未置換のアリール基、炭素数1〜24の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、炭素数2〜24の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基を表す。
一般式(1)における、R〜Rの具体例としては、例えば、水素原子、フッ素原子、シアノ基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ジメチルプロピル基、メチルブチル基、ヘキシル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルブチル基、ヘプチル基、メチルヘキシル基、ジメチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基、トリメチルヘキシル基、ノニル基、ジメチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、デシル基、エチルオクチル基、ウンデシル基、メチルデシル基、ドデシル基、テトラメチルオクチル基、トリデシル基、ヘキシルヘプチル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基、
例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ジメチルブチルオキシ基、エチルブチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、エイコシルオキシ基、トリコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基などの直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、
例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、テトラデシルフェニル基、ヘキサデシルフェニル基、オクタデシルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、ドデシルオキシフェニル基、テトラデシルオキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ジフルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、メチルクロロフェニル基、
4−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−フリル基、2−チエニル基、ピリジル基、アミノフェニル基、4−(N−メチルアミノ)フェニル基、2−(N−n−ブチルアミノ)フェニル基、4−N−ベンジルアミノフェニル基、4−N−フェニルアミノフェニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)−1−ナフチル基、4−ピロリジノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、4−モルフォリノフェニル基、4−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)フェニル基、4−〔N,N−ジ(4’−tert−ブチルフェニル)アミノ〕フェニル基、4−〔N−フェニル−N−(3’−メチルフェニル)アミノ〕フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)−1−ナフチル基、4−(N−カルバゾリイル)フェニル基などの置換または未置換のアリール基、
例えば、フルオロメチル基、フルオロプロピル基、フルオロヘキシル基、フルオロオクチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチル基、2−ヒドロ−パーフルオロ−2−プロピル基、フルオロシクロヘキシル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−オクチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−プロピル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ジクロロメチル基、2−クロロエチル基、4−クロロシクロヘキシル基、7−クロロヘプチル基、8−クロロオクチル基、2,2,2−トリクロロエチル基などの直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、
フルオロメチルオキシ基、3−フルオロプロピルオキシ基、6−フルオロヘキシルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチルオキシ基、1,1,3−トリヒドロ−パーフルオロ−n−プロピルオキシ基、6−フルオロヘキシルオキシ基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピルオキシ基、ジクロロメチルオキシ基、2−クロロエチルオキシ基、3−クロロプロピルオキシ基、4−クロロシクロヘキシルオキシ基、7−クロロヘプチルオキシ基、8−クロロオクチルオキシ基、2,2,2−トリクロロエチルオキシ基などの直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、
例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−ブトキシメチル基、(2−エチルブチルオキシ)メチル基、n−ヘプチルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−n−オクチルオキシエチル基、3−(2’−エチルブトキシ)プロピル基、テトラヒドロフルフリル基などの直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基を挙げることができる。
一般式(1)で表される化合物において、より好ましくは、R〜Rは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数4〜24の置換または未置換のアリール基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、炭素数2〜16の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基を表す。
一般式(1)で表される化合物において、さらに好ましくは、R、R、R、Rが炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基であり、R、R、R、Rが水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖または分岐のハロゲノアルコキシ基を表す。ただし、R〜Rのすべてがアルキル基であることはない。
一般式(1)において、Mは、2個の水素原子、2価の金属原子、または酸化金属原子を表し、より好ましくは、2価の金属原子、または酸化金属原子である。
Mで表される2価の金属原子としては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Be、Ca、Ba、Cd、Hg、Pb、Snなどを挙げることができる。Mで表される酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。
一般式(1)において、Mは、より好ましくは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pd、Mn、Mg、VO、TiOであり、さらに好ましくは、Cu、Ni、Pd、VOであり、特に好ましくは、Pd、VOである。
テトラアザポルフィリン化合物(C)は、好ましくは、その最大吸収ピークが570〜600nmの波長領域内にあり、且つその半値幅が50nm以下であるものが好ましい。
このような最大吸収ピークと半値幅を有することで、演色性及び全光束に優れたポリカーボネート樹脂組成物とすることがより可能となる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるテトラアザポルフィリン化合物(C)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.00001質量部以上、好ましくは0.00005質量部以上、より好ましくは0.0001質量部以上、特に好ましくは0.0005質量部以上であり、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。テトラアザポルフィリン化合物(C)の含有量が少なすぎると得られるポリカーボネート樹脂組成物の演色性と全光束が不十分となり、逆に多すぎてもポリカーボネート樹脂の熱安定性の低下、並びに、成形品の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる。
[その他添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)以外の他の難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機ホスファイトが好ましい。
熱安定剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルは、フルエステルであることが好ましい。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
離型剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらのうち、有機紫外線吸収剤が好ましく、中でもベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバスペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、その上限は好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・滴下防止剤
滴下防止剤としては、フッ素系樹脂を、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部含有することが好ましい。このようにフッ素系樹脂を含有することで、樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、具体的には燃焼時の滴下防止性を向上させることができる。
フッ素系樹脂の含有量は、0.01質量部より少ないと、フッ素系樹脂による難燃性向上効果が不十分になりやすく、1質量部を超えると、成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、含有量の上限は、より好ましくは0.75質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
フッ素系樹脂としては、なかでもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、このフッ素系樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロン(登録商標)F103」、「ポリフロン(登録商標)FA500」などが挙げられる。さらに、フルオロオレフィン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン化学工業社製「フルオン(登録商標)D−1」等が挙げられる。
さらに、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法等が挙げられる。
フルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではなく、このような有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。なお、これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
なかでもフルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
また、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率は、通常30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率を、上述の範囲とすることで、難燃性と成形品外観のバランスに優れる傾向にあるため好ましい。
このような有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂としては、具体的には、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)A−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス(登録商標)449」、PIC社製「Poly TS AD001」等が挙げられる。
なお、フッ素系樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)及び有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)及びテトラアザポルフィリン化合物(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[ポリカーボネート樹脂組成物の構造粘性指数及びUL94難燃性]
本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂組成物の構造粘性指数N値が1.1以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であることを特徴とする。
構造粘性指数N値は、前述したとおりであって、溶融体の流動特性を評価する指標であって、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。構造粘性指数Nの大小によりポリカーボネート樹脂組成物の流動特性が評価され、本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物は、構造粘性指数N値が1.1以上であり、低剪断領域における溶融粘度が高いことを特徴とする。構造粘性指数N値が1.1を下回ると、低剪断領域における溶融粘度が低いため、燃焼時に滴下しやすくなり、難燃性が悪化する。
ポリカーボネート樹脂組成物の構造粘性指数Nは、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.28以上であり、また、通常2.0以下、好ましくは1.8以下である。
なお、「構造粘性指数N」とは、例えば下記に示す様に、文献(小野木重治著、化学者のためのレオロジー、第15〜16頁)に記載の式(1.15)及び(1.17)より応力σを消去し、数式より所定のγの2点間を直線近似して、傾き(1−N)/N及びNを求める。傾きについては、粘度挙動が大きく異なる低せん断領域で評価することができる。因みに、γ=12.16sec−1及びγ=24.32sec−1でのηからN値を決定することができる。
D=γ=a×σ (1.15)
η=σ/D=σ/γ (1.17)
γ=a×(η)×(γ) (i)
η=(1/a)(1/N)×γ[(1−N)/N] (ii)
Logη=〔(1−N)/N〕×Logγ+C (iii)
(上記の式において、N:構造粘性指数、a:定数、η:見かけの粘度、D:速度勾配、γ:剪断速度、σ:剪断応力、C:定数、をそれぞれ意味する。)。
ポリカーボネート樹脂組成物の構造粘性指数N値を、1.1以上とするには、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)として、構造粘性指数N値が高いポリカーボネート樹脂を使用する方法、粘度平均分子量が50,000以上のポリカーボネート樹脂と30,000以下のポリカーボネート樹脂を併用する方法が好ましい。それ以外に、カルボジイミド化合物やイソシアネート化合物のような鎖延長剤や多官能化合物を配合する方法も挙げられるが、配合量が多すぎるとゲル化して、射出成形時に成形品にシルバーなどの外観不良を起こす場合があるため、適切なポリカーボネート樹脂を使用する方法が好ましい。
本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物は、UL94試験で肉厚3mmで測定した難燃性がV−0という高い難燃性を示す。
なお、UL94試験(3mm)は、UL94Vに準拠した垂直燃焼試験により行われ、具体的には実施例に記載した方法に行う。
[成形品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、LED照明部材用として好適に成形される。
LED照明部材としては、実装したLEDの発する光が透過する各種の透光性部材が挙げられ、例えば、レンズ、レンズシート、プリズム、プリズムシート、透光カバー、グローブ、シェード、光拡散性カバー、各種配光部材が挙げられ、LED(併用されることがある蛍光体を含む。)から放射される光の一部を吸収するものや、また、外部に拡散させるものも含まれる。特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、白色LED照明の演色性を改良するために好適である。
LED照明部材の形状や製造方法には制限はなく、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。成形方法は、好ましくは、射出成形法、押出成形法、中空成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法などの成形法が挙げられる。中でも、射出成形法が特に好ましい。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
下記表1に記した各成分を後記表2に記載の量(全て質量部)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度290℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
Figure 2014043495
得られたペレットを使用して、以下の測定及び評価を行った。
[構造粘性指数:N値]
キャピラリレオメータを使用し、温度260℃における溶融粘弾性を測定し、前述した計算式より、γ=12.16sec−1及びγ=24.32sec−1でのηからN値を算出した。
[難燃性評価(UL)]
前記により得られた樹脂組成物ペレットを、日本製鋼所社製射出成形機J50を用い、設定温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚1mm、1.5mmおよび3mmの成形品を試験片として得た。
上述の方法で得られたUL試験用試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
Figure 2014043495
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。なお、表中、「燃焼性」と表記する。
[演色性と全光束の評価方法]
前記により得られた樹脂組成物ペレットを、設定温度280℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、半径25.5mmの半球状で厚み1.5mmの成形品を得た。市販のLED電球の照明カバーを取り外し、この成形品を取り付けた。
なお市販のLED電球としては下記2種類を使用した。
昼光色LED電球:全光束485ルーメン、色温度6700K
電球色LED電球:全光束390ルーメン、色温度2800K
Labsphere社製全光束分光測定システムCSLMS−2021型(積分球20インチ、分光器CDS−2100)により樹脂組成物成形品のLED電球としての光学性能を評価した。
[平均演色評価数[Ra]]
平均演色評価数[Ra]はJIS Z8726に準拠して評価した。Raは色の見え方が太陽光にどれだけ近いかを示す指標であり、Raが大きいほど太陽光に近く、照明で照らされる物体の見え方がより自然であり、演色性に優れた照明であることを示す。
[全光束保持率(%)]
全光束保持率はCIE127:2007に準拠して評価した。全光束保持率が高いほど、照明カバーでの光量ロスが少なく、同じ光源を使用した際に照明が明るくなり、優れていることを示す。
以上の評価結果を表3及び表4に示す。
Figure 2014043495
Figure 2014043495
実施例1〜5から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性、演色性及び全光束に優れることがわかる。
一方、N値が本発明の規定を満たさない比較例1及び2、有機スルホン酸アルカリ金属塩を含有しない比較例3及び4は難燃性に劣り、また、テトラアザポルフィリンを含有しない比較例5及び6では演色性が劣ることがわかる。
本発明のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性、演色性及び全光束に優れるので、各種LED照明装置の各種透光性部材に極めて好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (9)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)0.01〜1質量部、テトラアザポルフィリン化合物(C)0.00001〜1質量部を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の構造粘性指数N値が1.1以上であり、肉厚3mmのUL94難燃性がV−0であることを特徴とするLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)が、含フッ素有機スルホン酸のアルカリ金属塩である請求項1に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)がパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩である請求項1または2に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 有機スルホン酸アルカリ金属塩(B)が、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩である請求項1または2に記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、少なくとも一部に分岐構造を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、(A1)と(A2)の合計100質量部基準で、粘度平均分子量(Mv)が10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)1〜99質量部と、粘度平均分子量(Mv)が50,000〜90,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A2)1〜99質量部からなる請求項1〜5のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. テトラアザポルフィリン化合物(C)は、最大吸収ピークが570〜600nmの波長領域内にあり、且つその半値幅が50nm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のLED照明部材用ポリカーボネート樹脂組成物からなるLED照明用透光性部材。
  9. 白色LED照明用である請求項8に記載のLED照明用透光性部材。
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