JP7376854B2 - ねじ込み式鋼管杭、およびその設計方法、施工方法 - Google Patents

ねじ込み式鋼管杭、およびその設計方法、施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼管の先端または鋼管周面に、円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けたねじ込み式鋼管杭、およびその設計方法、施工方法に関する。
構造物を支持するための鋼管杭として、鋼管外径よりも大きな螺旋状の回転翼が杭先端または杭周面に取り付けたねじ込み式鋼管杭が多数提案されている。このようなねじ込み式鋼管杭は、施工機械からの回転トルクによって回転させ、その回転により回転翼が杭より下方の土砂を掘削して上方へ押し上げ、その反力として杭が推進力を得ることにより地中に貫入する。
ねじ込み式鋼管杭を用いることによって、杭施工中に発生する騒音と振動を他工法よりも比較的低減でき、また施工中の排土も無いため、施工現場の環境に配慮した施工を行うことができる。
また、施工完了後は、回転翼により大きな支持力を得ることができる。
上記のようなねじ込み式鋼管杭の推進力は主に、回転翼と土砂の回転接触における鉛直方向の分力によって得られ、そのため回転翼上面に載る土砂が多いほど多くの推進力が得られる。
また、回転トルクは主に、回転翼の始端部付近と土砂の回転接触における摩擦抵抗により生じる。
回転翼がこのような機能を有しているねじ込み式鋼管杭においては、施工時において以下のような施工性悪化の問題がある。
例えば、軟弱な地盤においては、施工時に十分な回転抵抗が得られず、推進力が低下して杭が貫入しなくなる場合がある。
他方、硬い地盤においては、施工時に回転抵抗が大きくなりすぎ、作用トルクが杭体のねじり耐力を超えて杭体がねじ切れて破断してしまう場合がある。
上記の問題が施工中に発生した場合、杭の回転を停止する、逆回転と正回転をある程度繰り返す、杭を引き上げるなど、杭先端の地盤状況を変えるような措置が取られることがある。
しかしこのような問題の対処方法は施工時間の増大となり、さらに地盤が不適当に乱されることによる支持力の低下を引き起こす可能性がある。したがって、施工方法を工夫することによる施工性改善手法には限界がある。
杭施工前にはボーリング調査等によって施工する地盤の状況をある程度把握することができることから、施工性改善手法ではなく、回転翼形状を工夫することにより施工性向上を図るという手法がある。具体的には、回転翼と土砂との接触角度を適正化することにより、回転接触における鉛直方向の分力を増減させて回転抵抗の低減あるいは貫入性の向上を実現させることができる。
また、回転翼上に載る土砂の量を増減させることによっても、回転抵抗の低減あるいは貫入性の向上を実現させることができる。
例えば特許文献1に開示されたものでは、扇形状平板に形成された切り欠き部の切り欠き角度により、回転翼と杭下方の土砂との食い込み範囲を変えることによって、回転接触における鉛直方向の分力と回転翼上に載る土砂の量を調節し、施工性を向上させている。
また、特許文献2に開示されたものでは、円錐面をなす円盤状の回転翼を、回転翼の張り出し方向が下向きから水平あるいは上方に漸変するように取り付けることにより、大きな推進力を得ることができる。
特許第5200941号公報 特許第4232743号公報
しかし、特許文献1に開示された技術は、回転翼に切り欠き部を設けるため、回転翼の有効面積が減少し、支持力に影響が出る恐れがある。
また、特許文献2に開示された技術は、円錐面をなす円盤状の回転翼を用いるものであるが、円錐面をなす円盤状の回転翼の製作は平板状の回転翼の製作よりもコストがかかるという問題がある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、回転翼の有効面積の減少による支持力への影響が少なく、経済的に優れており、軟弱地盤や硬い地盤といった地盤の態様に適合した施工ができるねじ込み式鋼管杭、およびその設計方法、施工方法を提供することを目的としている。
[1]本発明に係るねじ込み式鋼管杭は、鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼が、周方向に2枚以上連続して設けられたものであって、
前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(1)から(3)の条件を満たすことを特徴とするものである。
(1)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°未満である。
(2)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、前記第1中間点交差角以下である。
(3)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
[2]また、鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭であって、
前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(4)から(6)の条件を満たすことを特徴とするものである。
(4)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°超である。
(5)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、前記第1中間点交差角以下である。
(6)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
[3]また、鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭であって、
前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(7)から(9)の条件を満たすことを特徴とするものである。
(7)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°である。
(8)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、90°未満である。
(9)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
[4]また、鋼管の先端に上記(2)に記載の回転翼を有し、該回転翼の上方に上段翼を1段以上有する多段翼式のねじ込み式鋼管杭であって、
前記上段翼は、前記鋼管の外径より大きいドーナツ状の円盤を分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられており、
前記上段翼について、前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である上段中間点交差角が、以下の(10)から(12)の条件を満たすことを特徴とするものである。
(10)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における上段中間点交差角である上段第1中間点交差角が、90°未満である。
(11)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の上段中間点交差角が、前記上段第1中間点交差角以下である。
(12)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の上段中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
[5]また、本発明に係るねじ込み式鋼管杭の設計方法は、鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼が、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭の設計方法であって、
前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角を、以下の(13)から(15)の条件を満たすように設定することを特徴とするものである。
(13)施工対象である地盤の硬さが予め定めた硬さ未満の場合には最も回転貫入時の入側に配置される回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角を90°未満とし、前記地盤の硬さが予め定めた硬さ以上の場合には前記第1中間点交差角を90°超とする。
(14)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角を、前記第1中間点交差角以下とする。
(15)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下とする。
[6]また、本発明に係るねじ込み式鋼管杭の施工方法は、上記[1]~[4]のいずれかに記載のねじ込み式鋼管杭の施工方法であって、
施工対象となる地盤の硬さを調査し、この調査結果に基づいて上記[1]~[4]のいずれかのねじ込み式鋼管杭を選択し、該選択したねじ込み式鋼管杭の鋼管の上端を把持して前記地盤中に回転貫入させることを特徴とするものである。
本発明に係るねじ込み式鋼管杭においては、(1)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が90°未満で、(2)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が前記第1中間点交差角以下であり、(3)隣接する回転翼同士では回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下であることにより、土砂が鋼管に向かう方向の分力が大きく、回転翼上に多くの土砂を載せることができ、高い推進力が得られる。そのため、このようなねじ込み式鋼管杭は、軟弱で推進力が得にくい地盤を施工する際に好適である。
本発明の実施の形態1に係るねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図1の矢印F方向の投影図である。 図1に示したねじ込み式鋼管杭が回転貫入する際の回転翼上の土砂の動きの説明図である。 本発明の実施の形態2に係るねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図4の矢印F方向の投影図である。 図4に示したねじ込み式鋼管杭が回転貫入する際の回転翼上の土砂の動きの説明図である。 本発明の実施の形態3に係るねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図7の矢印F方向の投影図である。 本発明の実施の形態4に係るねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図9の矢印F方向の投影図である。 図9に示したねじ込み式鋼管杭が回転貫入する際の回転翼上の土砂の動きの説明図である。 本発明の実施の形態5に係るねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図12の矢印F方向の投影図である。 実施例1の回転翼の機能分担範囲の説明図である。 実施例2の回転翼の機能分担範囲の説明図である。 実施例3のねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図16に示したねじ込み式鋼管杭における回転翼の機能分担範囲の説明図である。 実施例4のねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図18に示したねじ込み式鋼管杭における回転翼の機能分担範囲の説明図である。 実施例5の回転翼の機能分担範囲の説明図である。 従来のねじ込み式鋼管杭の説明図である。 図21の矢印F方向の投影図である。 図21の矢印G方向の投影図である。 図21に示したねじ込み式鋼管杭の回転翼の回転方向の位置を示した図である。 図24で示した位置での回転翼の断面図であり、ねじ込み式鋼管杭が回転貫入する際の回転翼上の土砂の動きを説明する図である。
<発明に至った経緯>
本発明の一実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭を説明するに先立って、従来のねじ込み式鋼管杭の構造とその課題を図21~図25に基づいて説明する。
従来のねじ込み式鋼管杭21の一例は、図21に示すように、鋼管3の先端に対して、下側翼7aと、下側翼7aにほぼ連続して取り付けられた上側翼7bとを備えている。また、下側翼7aと上側翼7bは鋼管3の外周面に取付けられている。下側翼7aと上側翼7bは、両方とも、鋼管3の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の平板である。下側翼7aと上側翼7bは交差部19を有し、上下の翼全体でほぼ螺旋状の回転翼7を形成している。なお、図21~図24において、8は回転翼7の上面、9は回転翼7の回転翼始端部、10は回転翼終端部である。
図22、図23は、図21に示したねじ込み式鋼管杭21の矢印F、G方向の投影図である。図22に示すように、ねじ込み式鋼管杭21の下側翼7aは、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角であるとともに、下側翼7aにおける円弧の中間点における交差角でもある中間点交差角βが、90°となるように取り付けられている。この点は、上側翼7bも同様である。
また、図23に示すように、ねじ込み式鋼管杭21は、下側翼7aと上側翼7bは、翼全体でほぼ螺旋状の回転翼7となるために、鋼管軸直角方向に対して角度α(以下、「傾斜角度α」という)だけ傾けて取り付けられている。
また、地中へのねじ込み式鋼管杭21の回転貫入時には、下側翼7aが先に地中へ貫入し、下側翼7aから交差部19を経由して、上側翼7bを最後にして地中に貫入する。つまり、回転貫入時の入側が下側翼7aであり、回転貫入時の出側が上側翼7bとなる。これは、後述するように、回転翼7の枚数が増え、中間翼7cがあっても同じ考え方をする。つまり、下側翼7a、中間翼7c、上側翼7bの順で、回転貫入することになる。その為、回転翼7の内、下側翼7aの配置側を回転貫入時の入側、上側翼7bの配置側を回転貫入時の出側と呼ぶ。
図24は、図21に示したねじ込み式鋼管杭21の杭頭側から見た平面図であり、図中A~Eは下側翼7aにおける上面8の回転方向の位置を示している。ねじ込み式鋼管杭21が地中に回転貫入する際、図24のA位置(回転翼始端部9)により杭下方の土砂が掘削されてほぐされる。ほぐされた土砂は回転翼7の回転に伴って下側翼7aの上面8上のB、C、D、Eの位置に順に回転翼7と土砂との接触位置が変化していき、土砂が上方に押し付けられることにより杭の推進力を生みだす。
図25は、上記ねじ込み式鋼管杭21が回転貫入する際の、下側翼7a上の土砂と下側翼7aの接触状態を、鋼管3の直径箇所での断面図で説明した図である。図25(a)~(e)は、回転施工中において、下側翼7aの上面8のA~E断面での土砂と回転翼7の接触状態をそれぞれ示し、黒丸は下側翼7a上の土砂を示し、図中の矢印は、土砂に作用する力とその分力を示す。図25(a)~(e)において、実線の矢印f0は、下側翼7aと土砂との接触により、下側翼7aから土砂に作用する力を示し、点線の矢印はその分力を示す。点線の矢印の内f1は、下側翼7aから土砂に対して、鋼管3から離れる方向、あるいは鋼管3に近づく方向に作用する分力を示す。一方、点線の矢印の内f2は、下側翼7aから土砂に対して、鋼管3に平行な方向に作用する分力を示す。また、分力f1と分力f2のなす角は、下側翼7aのA~Eのそれぞれの位置における断面において、直角である。
図25に示すように、図21に示した従来のねじ込み式杭鋼管杭では、図25(a)のA断面と図25(b)のB断面では、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角が90°よりも大きくなる。図25(c)のC断面では中間交差角βとなるため、交差角は90°である。逆に図25(d)のD断面と図25(e)のE断面では、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角が90°よりも小さくなる。その結果、A断面からC断面に至る範囲では下側翼7a上の土砂に鋼管3から離れていく方向に分力f1が働き、C断面では分力が働かず、C断面以降E断面までの範囲では鋼管3に向かう方向に分力f1が働く。
これらの状態は、回転翼7を「ほぼ」螺旋状に鋼管3の先端に取り付けているとはいえ、回転翼7が平板であるため、回転翼7が完全な螺旋を描いていないことに起因する。回転翼7が完全な螺旋状態で取り付けられている螺旋翼を備えたねじ込み杭の場合は、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角が、図25(a)~(e)において常に90°となり、上記状態は発生しない。
下側翼7a上の土砂に鋼管3から離れていく方向に分力f1が働く場合、翼面上から土砂が離脱しやすくなり、十分な推進力が得られなくなる。
したがって、回転翼7上の土砂に鋼管3に向かう方向へ分力f1が働く範囲を多くすることでより多くの推進力が得られ、軟弱な地盤において施工性向上に寄与することになる。
もっとも、回転翼7上の土砂は回転抵抗を生み出す原因にもなり、硬い地盤においては施工時に回転抵抗が大きくなりすぎ、作用トルクが杭体のねじり耐力を超えて杭体がねじ切れて破断してしまう場合がある。
なお、回転翼7の表面上の土砂と回転翼7の接触状態については上側翼7b上においても同様である。
上記の観点からすると従来の平板を用いたねじ込み式鋼管杭21の回転翼7では、半分の面積が作用トルクが大きく推進力を大きく発揮でき、他の半分の面積が作用トルクが小さく推進力の発揮が小さいものと言える。
したがって、ねじ込み式鋼管杭21において、推進力を得たい部分では回転翼7の形状を作用トルクが大きく推進力が大きく発揮できる形状にし、逆に、作用トルクを大きくしたくない部分では推進力が小さくなる形状にすればよい。
すなわち、鋼管3の外径より大きい円盤またはドーナツ板を分割してなる円弧状の平板回転翼を、鋼管3に対して所定の角度をつけて取り付けることによって、回転翼7と杭下方の土砂との接触角度を適正化することができ、土砂との回転接触における鉛直方向の分力を増減させて貫入性の向上あるいは回転抵抗の低減を実現し、軟弱地盤及び硬い地盤における施工性低下を防止することができる。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の実施の形態1~4に示すものである。
[実施の形態1]
実施の形態1に係るねじ込み式鋼管杭を図1~図3に基づいて説明する。なお、図1~図3において、従来例を示した図21~図25と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭1は、図1、図2に示すように、鋼管3の先端に、鋼管3の外径より大きいドーナツ状の円盤を径方向に2分割してなる円弧状の下側翼7aと上側翼7bが周方向に連続して設けられている。また、回転翼7は全体として、完全ではないが「ほぼ」螺旋状になっている。その為、先に説明した通り、回転貫入する際に、下側翼7a上または上側翼7b上の土砂との接触状態において、下側翼7a上または上側翼7bから、下側翼7a上または上側翼7b上の土砂への分力が働く場合がある。
そして、鋼管3の外周面と回転翼7(下側翼7aと上側翼7b)の上面8とが成す交差角であり、かつ下側翼7aと上側翼7bにおける円弧の中間点における交差角でもある中間点交差角βが、以下の条件(1-1)~(1-3)を満たす。
(1-1)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼7である下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が、90°未満(本例では70°)である。
(1-2)下側翼7aよりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの中間点交差角β2が、第1中間点交差角β1以下(本例では第1中間点交差角β1と同一)である。
(1-3)隣接する回転翼である下側翼7aと上側翼7b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上側翼7bの中間点交差角β2が、回転貫入時の入側である下側翼7aの中間点交差角β1以下である。
本実施の形態において、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚で構成されるため、条件(1-3)は、下側翼7aと上側翼7bとの関係だけを考えればよい。また、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚で構成されており、下側翼7aと上側翼7bの態様は同じなので、以下の説明は下側翼7aについて説明する。
なお、下側翼7aの傾斜角度α1と上側翼7bの傾斜角度α2は、両方とも10°である。
図3は、実施の形態1に係るねじ込み式鋼管杭において、従来例で示した図25に対応する図である。具体的には、実施の形態1に係るねじ込み式鋼管杭において、図24に示したA~Eの位置での断面図における回転翼7の表面上の土砂と回転翼7の接触状態を示している。本実施の形態では、下側翼7aにおける第1中間点交差角β1が90°未満(本例では70°)に設定されている(図3(c)参照)。なお、これらの点は上側翼7bにおいても同様である。
上記のようなねじ込み式鋼管杭1においては、図3(a)~(b)に示すA~B断面の範囲では下側翼7a上の土砂には鋼管3から離れていく方向に分力f1が働き、図3(b)~(e)に示すB~E断面の範囲では鋼管3に向かう方向に分力f1が働く。なお、図3(b)に示すB断面では、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角は大体90°となり、何れの方向にも分力は働かない。すなわち回転翼7の半分以上の面積が土砂を鋼管3に近づけることに寄与しており、回転翼7上の土砂量を図21の従来例よりも増大させることになるため、図21の従来のねじ込み式鋼管杭21よりもより高い推進力が得られる。また図3(a)においては、下側翼7aから土砂が離れていくので、推進力は出ないが、回転翼7上の土砂を少なくでき、その結果、回転翼始端部9付近で発生する作用トルクを低減できる。
このように、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭1によれば、土砂が鋼管3に向かう方向の分力が大きく、回転翼7上に多くの土砂を載せることができ、高い推進力が得られる。
このようなねじ込み式鋼管杭1は、軟弱で推進力が得にくい地盤を施工する際に好適である。
また、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭1は、回転翼7の有効面積を基本的には減じないため、杭体の支持力性能への影響がない。さらに、加工が容易な平板翼を用いているため、螺旋板を用いた回転翼7や円錐面をなす円盤状の回転翼7のような曲げ加工が不要であり、また施工する地盤の状況に合わせて回転翼7の溶接取り付け角度の変更を容易に行うことができるため、低コストで回転杭の施工性を向上できる。これらの点は、以下の実施の形態2~5においても同様である。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭1において、下側翼7aの上面8と鋼管3とがなす第1中間点交差角β1をβ1=0°に近づければ近づけるほど、回転翼7上の土砂に鋼管3に向かう方向に分力f1が働く範囲を増やすことができ、より多くの推進力を得られるため施工性を向上させることができる。
しかし、β1を小さくしすぎた場合、回転翼7表面が急な角度で地盤に接触するため、回転施工時に大きな抵抗となる恐れがある。また、β1を小さくしすぎた場合、鋼管3への回転翼7の溶接取り付けが困難となる。したがって、回転翼7の取りつけ角度であるβ1に関しては、施工地盤の状況に合わせて45°≦β1<90°の範囲となることが望ましい。
なお、上記の点は、上側翼7bの上面8と鋼管3とがなす第2中間点交差角β2についても同様である。
[実施の形態2]
実施の形態2に係るねじ込み式鋼管杭11を図4~図6に基づいて説明する。なお、図4~図6において、従来例を示した図21~図25と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭11は、図4、図5に示すように、鋼管3の先端に、鋼管3の外径より大きいドーナツ状の円盤を径方向に2分割してなる円弧状の下側翼7aと上側翼7bが周方向に連続して設けられている。また、回転翼7は全体として完全ではないが「ほぼ」螺旋状となっている。その為、先に説明した通り、回転貫入する際に、下側翼7a上または下側翼7a上の土砂との接触状態において、下側翼7a上または上側翼7bから、下側翼7a上または上側翼7b上の土砂に分力f1が働く場合がある。この点は、実施の形態1と同様である。
そして、鋼管3の外周面と下側翼7aと上側翼7bの上面8とが成す交差角であり、かつ下側翼7aと上側翼7bにおける円弧の中間点における交差角でもある中間点交差角βが、以下の条件(2-4)~(2-6)を満たす。
(2-4)最も回転貫入時の入側に配置された下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が、90°超(本例では110°)である。
(2-5)下側翼7aよりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの中間点交差角β2が、第1中間点交差角β1以下(本例では第1中間点交差角β1と同一)である。
(2-6)隣接する回転翼である下側翼7aと上側翼7b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上側翼7bの中間点交差角β2が、回転貫入時の入側である下側翼7aの中間点交差角β1以下である。
本実施の形態において、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚であるため、条件(2-6)は、下側翼7aと上側翼7bとの関係だけを考えればよい。また、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚であり、これらの態様は同じなので、以下の説明は下側翼7aについて説明する。
なお、下側翼7aの傾斜角度α1と上側翼7bの傾斜角度α2は、両方とも10°である。
図6は、実施の形態2に係るねじ込み式鋼管杭11において、従来例で示した図25に対応する図である。具体的には、実施の形態2に係るねじ込み式鋼管杭11において、図24に示したA~Eの位置での断面図における回転翼7の表面上の土砂と回転翼7の接触状態を示している。本実施の形態では、下側翼7aにおける第1中間点交差角β1が90°超(本例では110°)に設定されている(図6(c)参照)。なお、上側翼7bにおいても同様である。
上記のようなねじ込み式鋼管杭11においては、図6(a)~(d)に示すA~D断面の範囲では下側翼7a上の土砂には鋼管3から離れていく方向に分力f1が働き、図6(d)~(e)に示すD~E断面の範囲では鋼管3に向かう方向に分力f1が働く。なお、図6(d)に示すD断面では、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角は大体90°となり、何れの方向にも分力は働かない。すなわち回転翼7の半分以上の面積が土砂を鋼管3から離すことに寄与しており、回転翼7上の土砂量が減少することになるため、図21に示した従来のねじ込み式鋼管杭21の形態よりも作用トルクがより小さいことを示している。
このように、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭11によれば、図21の従来のねじ込み式鋼管杭21よりも、土砂が鋼管3に向かう方向の分力f1が小さく、回転翼7上の土砂を少なくでき、その結果作用トルクをより低減できる。
このようなねじ込み式鋼管杭11は、掘削が困難となるような硬い地盤を施工する際に好適である。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭11において、下側翼7aの上面8と鋼管3とがなす第1中間点交差角β1をβ1=180°に近づければ近づけるほど、回転翼7上の土砂に鋼管3から離れていく方向に分力f1が働く範囲を増やすことができ、より小さな回転抵抗で施工が可能となる。
しかし、β1を大きくしすぎた場合、翼面上の推進力に寄与する面積が小さくなりすぎて十分な推進力が得られない恐れがある。またβ1を大きくしすぎた場合、鋼管3への回転翼7の溶接取り付けが困難となる。したがって、翼の取りつけ角度であるβ1に関しては、施工地盤の状況に合わせて90°<β≦135°の範囲となることが望ましい。
なお、上記の点は、上側翼7bの上面8と鋼管3とがなす第2中間点交差角β2についても同様である。
[実施の形態3]
実施の形態1、2においては下側翼7aと上側翼7bの鋼管3に対する取付態様を同一にしたものであった。すなわち、実施の形態1では、下側翼7a及び上側翼7bともに第1中間点交差角β1が90°未満であり、実施の形態2では、下側翼7a及び上側翼7bともに第1中間点交差角β1が90°超である。また、これらの構成によって、実施の形態1のものは軟弱で推進力が得にくい地盤を施工する際に好適であり、実施の形態2のものは掘削が困難となるような硬い地盤を施工する際に好適であった。
このように、実施の形態1、2は対象としている地盤に回転翼7の形状を適合させるというものであった。
しかし、同じ地盤であっても、ねじ込み式鋼管杭の掘削のメカニズムに着目すると、回転翼始端部9付近において地盤を掘削し、回転翼7のその他の部分において掘削した土砂を上方に押し上げて推進力を得ている。
すなわち、施工中の回転トルクは回転翼始端部9の近傍の寄与が最も大きく、施工中の推進力は回転翼7の中間あるいは終端部分の推進力の寄与が最も大きい。
そこで、本実施の形態においては、ほぼ螺旋状の回転翼7を形成する下側翼7aおよび上側翼7bを同一態様にするのではなく、より回転貫入時の入側にあり回転抵抗が作用しやすい下側翼7aを、翼面上の土砂を積極的に離脱させる面積を多く有する態様とし、より回転貫入時の出側にあり推進力を生みだしている上側翼7bを、土砂を鋼管3に近づける面積を多く有する態様にしたものである。これにより、従来例よりも回転抵抗を低減しながら、従来よりも高い推進力を有するねじ込み式鋼管杭を得ることができる。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭13は、実施の形態1の変形例としての態様と、実施の形態2の変形例としての態様があるが、以下においては実施の形態2の変形例の態様を図7、図8に基づいて説明する。
本実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭13は、図7、図8に示すように、鋼管3の先端に、鋼管3の外径より大きいドーナツ状の円盤を径方向に2分割してなる円弧状の下側翼7aと上側翼7bが、周方向に2枚連続して設けられ、回転翼7は全体として完全ではないが「ほぼ」螺旋状になっている。その為、先に説明した通り、回転貫入する際に、下側翼7a上または下側翼7a上の土砂との接触状態において、下側翼7a上または上側翼7b上の土砂には分力f1が働く場合がある。
そして、鋼管3の外周面と下側翼7aと上側翼7bの上面8とが成す交差角であり、かつ下側翼7aと上側翼7bにおける円弧の中間点における交差角である中間点交差角βが、以下の(3-4)~(3-6)の条件をみたす。
(3-4)最も回転貫入時の入側に配置された下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が、90°超(本例では110°)である。
(3-5)回転翼7よりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの第2中間点交差角β2が、90°未満(本例では85°)である。すなわち、上側翼7bの中間点交差角β2が、第1中間点交差角β1以下である。
(3-6)隣接する回転翼である下側翼7aと上側翼7b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上側翼7bの中間点交差角β2が、回転貫入時の入側である下側翼7aの中間点交差角β1以下である。本実施の形態において、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚でるため、条件(3-6)は、下側翼7aと上側翼7bとの関係だけを考えればよい。
なお、下側翼7aの傾斜角度α1と上側翼7bの傾斜角度α2は、両方とも10°である。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭13においては、回転翼7における回転トルクに大きく影響する下側翼7aの第1中間点交差角β1を90°超(110°)とし、回転翼7における推進力に大きく影響する上側翼7bの第2中間点交差角β2を90°未満(85°)としたので、回転抵抗を低減しながら、推進力を有することができる。
なお、上記の例は、実施の形態2の変形例の態様であったが、実施の形態1の場合も同様であり、この場合には、最も回転貫入時の入側に配置された下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が90°未満(例えば、70°)で、回転翼7よりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの第2中間点交差角β2が第1中間点交差角β1よりも小さい角度(例えば65°)に設定することになる。
なお、本実施の形態は、最も回転貫入時の入側に配置された回転翼7(下側翼7a)における中間点交差角である第1中間点交差角β1が90°の場合であってもよく、この場合には、第2中間点交差角β2が90°未満となる。
[実施の形態4]
実施の形態4に係るねじ込み式鋼管杭を、図9~図11に基づいて説明する。なお、図9~図11において、従来例を示した図21~図25と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭14は、図9、図10に示すように、鋼管3の先端に、鋼管3の外径より大きいドーナツ状の円盤を径方向に2分割してなる円弧状の下側翼7aと上側翼7bが周方向に連続して設けられている。また、回転翼7は全体として、完全ではないが「ほぼ」螺旋状になっている。その為、先に説明した通り、回転貫入する際に、下側翼7a上または下側翼7a上の土砂との接触状態において、下側翼7a上または上側翼7b上の土砂に分力f1が働く場合がある。
そして、鋼管3の外周面と回転翼7(下側翼7aと上側翼7b)の上面8とが成す交差角であり、かつ下側翼7aと上側翼7bにおける円弧の中間点における交差角でもある中間点交差角βが、以下の条件(4-7)~(4-9)を満たす。
(4-7)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼7である下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が、90°である。
(4-8)下側翼7aよりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの中間点交差角β2が、90°未満(本例では70°)である。
(4-9)隣接する回転翼である下側翼7aと上側翼7b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上側翼7bの中間点交差角β2が、回転貫入時の入側である下側翼7aの中間点交差角β1以下である。
本実施の形態において、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚で構成されるため、条件(4-9)は、下側翼7aと上側翼7bとの関係だけを考えればよい。また、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚で構成されており、下側翼7aと上側翼7bの態様は同じなので、以下の説明は下側翼7aについて説明する。
なお、下側翼7aの傾斜角度α1と上側翼7bの傾斜角度α2は、両方とも10°である。
本実施の形態において、下側翼7aは従来例で示した図25と、上側翼7bは実施の形態1の下側翼7aで示した図3と同じ挙動を示す。
具体的には、図24に示したAを180°回転させた位置をA´、Bを180°回転させた位置をB´、Cを180°回転させた位置をC´、Dを180°回転させた位置をD´、Eを180°回転させた位置をE´とする。本実施の形態に係るねじ込み式鋼管杭14においては、A´~B´断面の範囲では上側翼7b上の土砂には鋼管3から離れていく方向に分力f1が働き(図3(a)~(b)に相当)、B´~E´断面の範囲では鋼管3に向かう方向に分力f1が働く(図3(b)~(e)に相当)。なお、B´断面では、鋼管3の外周面と下側翼7aの上面8とが成す交差角は大体90°となり、何れの方向にも分力は働かない(図3(b)に相当)。すなわち回転翼7の半分以上の面積が土砂を鋼管3に近づけることに寄与しており、回転翼7上の土砂量を図21の従来例よりも増大させることになるため、図21の従来のねじ込み式鋼管杭21よりも高い推進力が得られる。
このように、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭14によれば、土砂が鋼管3に向かう方向の分力f1が大きく、回転翼7上に多くの土砂を載せることができ、高い推進力が得られる。
このようなねじ込み式鋼管杭14は、軟弱で推進力が得にくい地盤を施工する際に好適である。
なお、回転翼7上の土砂を鋼管3に引き寄せる面積としては、実施の形態1程ではないため(具体的には後述する実施例で説明する)、実施の形態1に対しては、若干推進力が弱くなる。その為、軟弱度がより弱い地盤に使用することが望ましい。
また本実施の形態において、下側翼7aは、第1中間点交差角β1が90°となるように鋼管3に取り付けられるため、実施の形態1における下側翼7aよりも容易に鋼管3に溶接取り付けでき、実施の形態1に対して低コストで製作することができる。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭14において、上側翼7bの上面8と鋼管3とがなす第1中間点交差角β2をβ2=0°に近づければ近づけるほど、上側翼7b上の土砂に鋼管3に向かう方向に分力が働く範囲を増やすことができ、より多くの推進力を得られるため施工性を向上させることができる。
しかし、β2を小さくしすぎた場合、上側翼7b表面が急な角度で地盤に接触するため、回転施工時に大きな抵抗となる恐れがある。また、β2を小さくしすぎた場合、鋼管3への上側翼7bの溶接取り付けが困難となる。したがって、上側翼7bの取りつけ角度であるβ2に関しては、施工地盤の状況に合わせて45°≦β2<90°の範囲となることが望ましい。
[実施の形態5]
実施の形態1~4は、鋼管3の先端に回転翼を1段取り付けた例であったが、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭は、回転翼を多段(本例では3段)備えたものである。
回転翼7が多段の場合には、最下方に位置する1段目の回転翼は、回転施工時において、地盤を掘削してほぐす役割を主に果たし、2段目と3段目の回転翼はほぐされた土を上方に移動させて鋼管杭に推進力を与える役割を主に果たす。
そこで、本実施の形態では、1段目の回転翼とこれよりも上段の回転翼の役割の違いに着目して、各回転翼の取り付け態様を最適化したものであり、具体的には以下の態様からなるものである。
本実施の形態のねじ込み式鋼管杭15は、図12、図13に示すように、1段目の回転翼7が下側翼7aと上側翼7bの2枚で形成され、同様に2段目、3段目の上段回転翼7´が上段下側翼7´aと上段上側翼7´bの2枚で形成された多段翼回転杭である。
そして、鋼管3の先端となる1段目に実施の形態2と同態様の回転翼7を有している。すなわち、1段目の回転翼7は、鋼管3の先端に、円弧状の下側翼7aと上側翼7bが周方向に連続して設けられており、さらに以下の条件(5-1-4)~(5-1-6)を満たす。
(5-1-4)下側翼7aにおける中間点交差角である第1中間点交差角β1が90°超(本例では100°)である。
(5-1-5)下側翼7aよりも回転貫入時の出側に配置された上側翼7bの中間点交差角β2が、第1中間点交差角β1以下(本例では第1中間点交差角β1と同一)である。
(5-1-6)隣接する下側翼7aと上翼側7b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上側翼7bの中間点交差角β2が回転貫入時の入側にある下側翼7aの中間点交差角β1以下である。本実施の形態において、回転翼7は下側翼7aと上側翼7bの2枚で構成されるため、条件(5-1-6)は、下側翼7aと上側翼7bとの関係だけを考えればよい。
また、2段目以降の上段回転翼7´については、鋼管3の外周面と上段回転翼7´の上面8とが成す交差角であり、かつ上段回転翼7´における円弧の中間点における交差角でもある上段中間点交差角β´が、以下の(5-2-10)から(5-2-12)を満たす。
(5-2-10)最も回転貫入時の入側に配置された上段下側翼7´aにおける中間点交差角である上段第1中間点交差角β´1が、90°未満(本例では80°)である。
(5-2-11)上段下側翼7´aよりも回転貫入時の出側に配置された上段上側翼7´bの中間点交差角β´2が、上段第1中間点交差角β´1以下(本例では、β´1=β´2)である。
(5-2-12)上段回転翼7´の内、任意の1段において、隣接する回転翼である上段下側翼7´aと上段上側翼7´b同士では、回転貫入時の出側に配置されている上段上側翼7´bの上段中間点交差角β´2が、回転貫入時の入側である上段下側翼7´aの上段中間点交差角β´1以下である。本実施の形態において、上段回転翼7´は上段下側翼7´aと上段上側翼7´bの2枚で構成されるため、条件(5-2-12)は、上段下側翼7´aと上段上側翼7´bとの関係だけを考えればよい。
なお、1段目の下側翼7a、上側翼7b、2段及び3段の上段下側翼7´a、上段上側翼7´bのそれぞれの傾斜角度α1、α2、α´1、α´2は全て10°である。
上記のように構成された本実施の形態のねじ込み式鋼管杭15においては、1段目の回転翼7上の土粒子の動きは、実施の形態2を示した図6と同様になる。この場合、回転翼7の4分の3の面積において、翼面上の砂を積極的に離脱させる作用が働き、地盤を掘削してほぐす際に回転抵抗を低減することができる(図15参照)。
2段目と3段目の上段回転翼7´上の土粒子の動きは、実施の形態1を示した図3と同様になる。この場合、上段回転翼7´の4分の3の面積において、翼上の土砂を鋼管3に引き寄せる作用が働き、翼上の土砂量が増大し推進力が増大する(図14参照)。
以上のように、本実施の形態のねじ込み式鋼管杭15によれば、多段翼回転杭において、各段の役割に適した中間点交差角β、β´を定めることにより施工性向上を実現できる。
上記の実施の形態1~5においては、各段の回転翼7が2枚で構成されていたが、本発明はこれに限られず、各段の回転翼7は複数枚で構成されればよく、例えば3枚以上であってもよい。
なお、上記の実施の形態1~5においては、回転翼7としてドーナツ状の平板翼を例にあげたが、本発明の回転翼7の形状はこれに限られるものではなく、2枚の半円形または半楕円形の板を備えたものであってもよい。言い替えると、回転翼7を備える鋼管の外径より大きい円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼7としてもよい。この場合も、各段の回転翼7は3枚以上で構成してもよい。
なお、上記の実施の形態1~4においては、回転翼7は、交差部19を介し、上下の翼全体でほぼ螺旋状となるように、鋼管3の外周面に備えられている例をあげたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、鋼管3の中心で実際にまたは仮想的に交差するように備えられても良い。
なお、中間点交差角β(β1、β2等)及び上段中間点交差角β´(β´1、β´2等)は上記で例示したものに限られず適宜設定すればよい。
なお、鋼管先端は閉塞していても開口していてもよい。
以下においては、回転翼7が1段の場合におけるより具体的な態様について、回転翼7上における土粒子に作用する分力が鋼管に近づく方向の分力f1(以下、「内方向分力」という)か、鋼管3から離れる方向の分力f1(以下、「外方向分力」という)かについての回転翼7の面積割合について具体例を示す。
[実施例1]
実施例1は、鋼管3の先端にある回転翼7が、下側翼7aと上側翼7bの2枚の回転翼7からなり、下側翼7aと上側翼7bの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β1、β2が80°で同一であり、各回転翼7a、7bの傾斜角度α1、α2が、10°である。
この場合は、下側翼7aと上側翼7bは、以下の(1)~(3)の条件を全て満たしている。
(1)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼(下側翼7a)における中間点交差角である第1中間点交差角が90°未満である。
(2)該回転翼(下側翼7a)よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼(上側翼7b)の中間点交差角が前記第1中間点交差角以下である。
(3)隣接する回転翼(下側翼7aと上側翼7b)同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼(上側翼7b)の中間点交差角が回転貫入時の入側(下側翼7a)の中間点交差角以下である。この場合の分力f1が、回転翼7上で作用する範囲の割合を、回転翼7を平面視した図14に示す。図14において、斜線部分は、回転翼7上の土粒子に鋼管3に向かう方向に分力f1(内方向分力)が働く範囲を示し、それ以外の部分は、回転翼7上の土粒子に鋼管3から離れていく方向に分力f1(外方向分力)が働く範囲を示す。
図14に示すように、本実施例では、回転翼7の4分の3の面積において、翼上の土砂を鋼管3に引き寄せる作用が働き、翼上の土砂量が増大し、大きな推進力が得られる例である。
[実施例2]
実施例2は、鋼管3の先端にある回転翼7が、下側翼7aと上側翼7bの2枚の回転翼7からなり、下側翼7aと上側翼7bの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β1、β2が100°で同一であり、各回転翼7a、7bの傾斜角度α1、α2が、10°である。
この場合は、下側翼7aと上側翼7bは、以下の(4)~(6)の条件を全て満たしている。
(4)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼(下側翼7a)における中間点交差角である第1中間点交差角が90°超である。
(5)該回転翼(下側翼7a)よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼(上側翼7b)の中間点交差角が前記第1中間点交差角以下である。
(6)隣接する回転翼(下側翼7aと上側翼7b)同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼(上側翼7b)の中間点交差角が回転貫入時の入側(下側翼7a)の中間点交差角以下である。
この場合の分力f1が、回転翼7上で作用する範囲の割合を図15に示す。図15において図14と同様に、斜線部分は、内方向分力が働く範囲を示し、それ以外の部分は外方向分力が働く範囲を示す。
本実施例では、回転翼7の4分の3の面積において、翼面上の砂を積極的に離脱させる作用が働き、回転抵抗を低減することができる例である。
[実施例3]
実施例3のねじ込み式鋼管杭17は、図16に示すように、鋼管3の先端にある回転翼7が下側翼7aと中間翼7cと上側翼7bの3枚の回転翼7からなり、下側翼7aの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β1が100°であり、中間翼7cと上側翼7bの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β2、β3が80°であり、下側翼7aと中間翼7cと上側翼7bの傾斜角度α1、α2、α3が、すべて10°である。
この場合は、下側翼7aと中間翼7cと上側翼7bは、以下の(4)~(6)の条件を全て満たしている。
(4)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼(下側翼7a)における中間点交差角である第1中間点交差角が90°超である。
(5)該回転翼(下側翼7a)よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼(中間翼7c)の中間点交差角が前記第1中間点交差角以下である。
(6)隣接する回転翼(下側翼7aと中間翼7c)同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼(中間翼7c)の中間点交差角が回転貫入時の入側(下側翼7a)の中間点交差角以下である。さらに、隣接する回転翼(中間翼7cと上側翼7b)同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼(上側翼7b)の中間点交差角が回転貫入時の入側(中間翼7c)の中間点交差角以下である。
この場合の分力f1が、回転翼7上で作用する範囲の割合を図17に示す。図17において図14、図15と同様に、斜線部分は、内方向分力が働く範囲を示し、それ以外の部分は外方向分力が働く範囲を示す。
本実施例では、回転施工時に地盤を掘削してほぐす回転杭始端部9に近い回転翼7の約3分の1範囲において翼面上の砂を積極的に離脱させる作用が働き、回転抵抗を低減する。また、それ以外の回転翼7の約3分の2の範囲において回転翼7上の土砂量を増大させることにより、推進力を増大させる。
[実施例4]
実施例4のねじ込み式鋼管杭19は、図18に示すように、回転翼7が下側翼7aと中間翼7cと中間翼7dと上側翼7bの4枚の回転翼7からなり、下側翼7aと中間翼7cの上面8と鋼管3とがなす中間点交差角β1、β2を100°とし、中間翼7dと上側翼7bの上面8と鋼管3とがなす中間点交差角β3、β4を80°とし、下側翼7aと中間翼7cと中間翼7dと上側翼7bの傾斜角度α(α1~α4)をすべて10°としたものである。
この場合の分力f1が、回転翼7上で作用する範囲の割合を図19に示す。図19において図14、図15、図17と同様に、斜線部分は、内方向分力が働く範囲を示し、それ以外の部分は外方向分力が働く範囲を示す。
本実施例では、回転施工時に地盤を掘削してほぐす回転杭始端部9に近い回転翼7の約2分の1範囲において翼面上の砂を積極的に離脱させる作用が働き、回転抵抗を低減する。またそれ以外の回転翼7の約2分の1の範囲において回転翼7上の土砂量を増大させることにより、推進力を増大させる。
[実施例5]
実施例5は、鋼管3の先端にある回転翼7が、下側翼7aと上側翼7bの2枚の回転翼7からなり、下側翼7aの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β1を90°、上側翼7bの上面8と鋼管3の外周面とがなす中間点交差角β2を70°とし、各回転翼7a、7bの傾斜角度α1、α2を10°としたものである。
この場合は、下側翼7aと上側翼7bは、以下の(7)~(9)の条件を全て満たしている。
(7)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼(下側翼7a)における中間点交差角である第1中間点交差角β1が、90°である。
(8)該回転翼(下側翼7a)よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼(上側翼7b)の中間点交差角β2が、90°未満である。
(9)隣接する回転翼(下側翼7aと上側翼7b)同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼(下側翼7a)の中間点交差角が、回転貫入時の入側(下側翼7a)の中間点交差角以下である。
この場合の分力f1が、回転翼7上で作用する範囲の割合を、回転翼7を平面視した図20に示す。図20において、斜線部分は、回転翼7上の土粒子に鋼管3に向かう方向に分力f1(内方向分力)が働く範囲を示し、それ以外の部分は、回転翼7上の土粒子に鋼管3から離れていく方向に分力f1(外方向分力)が働く範囲を示す。
図20に示すように、本実施例は、回転翼7の8分の5の面積において、翼上の土砂を鋼管3に引き寄せる作用が働き、翼上の土砂量が増大し、大きな推進力が得られる例である。もっとも、本実施例における回転翼7上の土砂を鋼管3に引き寄せる面積は、実施例1程ではないため、実施例1に対しては、若干推進力が弱くなる。その為、軟弱度がより弱い地盤に使用することが望ましい。
なお、以上の説明から、本発明に係るねじ込み式鋼管杭を設計するには、地盤の硬度を考慮して設計することが好ましく、このためには、あらかじめ基準となる地盤硬度を設定しておき、この基準となる地盤の硬さとの関係で最も回転貫入時の入側に配置される回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角を設定するようにすればよい。
具体的には、以下のような設計方法となる。
鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼が、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭の設計方法であって、
前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角を、以下の(13)から(15)の条件を満たすように設定することを特徴とするねじ込み式鋼管杭の設計方法。
(13)施工対象である地盤の硬さが予め定めた硬さ未満の場合には最も回転貫入時の入側に配置される回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角を90°未満とし、前記地盤の硬さが予め定めた硬さ以上の場合には前記第1中間点交差角を90°超とする。
(14)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角を、前記第1中間点交差角以下とする。
(15)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下とする。
上記のように設計することで、施工対象の地盤に最も適したねじ込み式鋼管杭を設計することができる。
また、ねじ込み式鋼管杭を施工する場合にも地盤の硬度を考慮することが好ましく、施工対象となる地盤の硬さを調査し、この調査結果に基づいて、実施の形態1~5のいずれかのねじ込み式鋼管杭を選択するようにすればよい。
具体的には、実施の形態1乃至5のいずれかに記載のねじ込み式鋼管杭の施工方法であって、
施工対象となる地盤の硬さを調査し、この調査結果に基づいて実施の形態1乃至5のいずれかのねじ込み式鋼管杭を選択し、該選択したねじ込み式鋼管杭の鋼管の上端を把持して前記地盤中に回転貫入させるようにする。
上記のように施工することで、施工対象の地盤に最も適したねじ込み式鋼管杭の施工ができる。
なお、上記の説明における傾斜角度αは、一般的には取付角度と呼ばれるものであり、翼全体が鋼管に対してどの程度傾斜して取り付けられているかを示す角度である。例えば、本実施の形態や実施例で説明したように、円弧状の翼が鋼管先端の外周面に取り付けられている場合、傾斜角度αは、翼が鋼管に接合されている円弧状の接合線を含む平面の鋼管軸に対する傾斜角度のことであり、本明細書においては前記平面の傾斜方向に沿った直線と鋼管軸が成す角度のうち鋭角側の角度である。
発明に至った経緯と実施の形態1~4と実施例1~2と実施例5においては説明を容易にするために、下側翼7aの傾斜角度α1と上側翼7bの傾斜角度α2とが同じ場合について説明した。
また、実施の形態5においては説明を容易にするために、1段目の下側翼7a、上側翼7b、2段及び3段の上段下側翼7´a、上段上側翼7´bのそれぞれの傾斜角度α1、α2、α´1、α´2が、全て同じ場合について説明した。
また、実施例3において説明を容易にするために、下側翼7aと中間翼7cと上側翼7bの傾斜角度α1、α2、α3が、全て同じ場合について説明した。
また、実施例4において説明を容易にするために、下側翼7aと中間翼7cと中間翼7dと上側翼7bの傾斜角度α(α1~α4)が、全て同じ場合について説明した。
しかし、本発明において傾斜角度αは上記の態様に限定されるものではなく、傾斜角度α(α1~α4およびα’1~α’2を含む)は、全てが同じでなくてもよい。具体的には、同じ傾斜角度αの回転翼の組が1つ以上あってもよいし、全ての回転翼の傾斜角度が異なっていてもよい。
1 ねじ込み式鋼管杭(実施の形態1)
3 鋼管
7 回転翼
7a 下側翼
7b 上側翼
7c 中間翼
7d 中間翼
7´ 上段回転翼
7´a 上段下側翼
7´b 上段上側翼
8 回転翼の上面
9 回転翼始端部
10 回転翼終端部
11 ねじ込み式鋼管杭(実施の形態2)
13 ねじ込み式鋼管杭(実施の形態3)
14 ねじ込み式鋼管杭(実施の形態4)
15 ねじ込み式鋼管杭(実施の形態5)
17 ねじ込み式鋼管杭(実施例3)
19 ねじ込み式鋼管杭(実施例4)
21 ねじ込み式鋼管杭(従来例)

Claims (6)

  1. 鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼が、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭であって、
    前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(1)から(3)の条件を満たすことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
    (1)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°未満である。
    (2)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、前記第1中間点交差角以下である。
    (3)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
  2. 鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭であって、
    前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(4)から(6)の条件を満たすことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
    (4)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°超である。
    (5)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、前記第1中間点交差角以下である。
    (6)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
  3. 鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭であって、
    前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角が、以下の(7)から(9)の条件を満たすことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
    (7)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角が、90°である。
    (8)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角が、90°未満である。
    (9)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
  4. 鋼管の先端に請求項2に記載の回転翼を有し、該回転翼の上方に上段翼を1段以上有する多段翼式のねじ込み式鋼管杭であって、
    前記上段翼は、前記鋼管の外径より大きいドーナツ状の円盤を分割してなる円弧状の回転翼を、周方向に2枚以上連続して設けられており、
    前記上段翼について、前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である上段中間点交差角が、以下の(10)から(12)の条件を満たすことを特徴とするねじ込み式鋼管杭。
    (10)最も回転貫入時の入側に配置された回転翼における上段中間点交差角である上段第1中間点交差角が、90°未満である。
    (11)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の上段中間点交差角が、前記上段第1中間点交差角以下である。
    (12)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の上段中間点交差角が、回転貫入時の入側の中間点交差角以下である。
  5. 鋼管の先端に、該鋼管の外径より大きい円盤またはドーナツ状の円盤を径方向に分割してなる円弧状の回転翼が、周方向に2枚以上連続して設けられたねじ込み式鋼管杭の設計方法であって、
    前記鋼管の外周面と前記回転翼の上面とが成す交差角であり、かつ前記回転翼における円弧の中間点における交差角である中間点交差角を、以下の(13)から(15)の条件を満たすように設定することを特徴とするねじ込み式鋼管杭の設計方法。
    (13)施工対象である地盤の硬さが予め定めた硬さ未満の場合には最も回転貫入時の入側に配置される回転翼における中間点交差角である第1中間点交差角を90°未満とし、前記地盤の硬さが予め定めた硬さ以上の場合には前記第1中間点交差角を90°超とする。
    (14)該回転翼よりも回転貫入時の出側に配置される回転翼の中間点交差角を、前記第1中間点交差角以下とする。
    (15)隣接する回転翼同士では、回転貫入時の出側に配置されている回転翼の中間点交差角が回転貫入時の入側の中間点交差角以下とする。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のねじ込み式鋼管杭の施工方法であって、
    施工対象となる地盤の硬さを調査し、この調査結果に基づいて請求項1乃至4のいずれかのねじ込み式鋼管杭を選択し、該選択したねじ込み式鋼管杭の鋼管の上端を把持して前記地盤中に回転貫入させることを特徴とするねじ込み式鋼管杭の施工方法。
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