JP7369365B1 - 動植物生育用鉄剤及びその製造方法並びに動植物生育用鉄供給剤 - Google Patents

動植物生育用鉄剤及びその製造方法並びに動植物生育用鉄供給剤 Download PDF

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Abstract

【課題】時間経過や温度変化によって有機酸鉄塩の沈殿物が発生して水溶液中のFe2+イオン濃度が著しく低下するのを防止して長期にわたって高いFe2+イオン濃度を保つことを可能にする。動植物への取り込みを効率的に行うことが可能で,土壌汚染や水汚染を防止することを可能にする。【解決手段】クエン酸,水,鉄を攪拌混合したクエン酸鉄に炭酸水素ナトリウムを化合したクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,水100ml当りのクエン酸(純度100%と仮定)を0.05g~水温度のクエン酸溶解限度量,水100ml当りの鉄(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に10~25質量部,水100ml当りの炭酸水素ナトリウム(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に80~120質量部とした。【選択図】図2

Description

本発明は,水溶液状態で高いFe2+イオン濃度で,Fe2+イオンの酸化が抑制された動植物生育用鉄剤及びその製造方法並びに動植物生育用鉄供給剤に関する。
なお,本発明において「動植物生育用」とは,人間を除く植物(ワカメや昆布等の海藻類やマングローブ等の海洋植物を含む。),家畜(牛,馬,豚,鳥等),魚介類(魚,貝類)の生育用途を含む。以下においては,単に生育用と称する。
鉄は,植物や家畜,魚介類等の動植物の生育にとって必要不可欠な微量必須元素で,例えば植物において鉄が欠乏すると,葉の黄白化及び蛋白質の合成反応が損なわれる等の特有の症状を生じることが知られている。
また,例えば植物に対して鉄は,イオン化された状態で取り込まれるが,Feイオンの内,Fe3+イオン(三価鉄イオン)は,植物に有効に吸収されず,満足な生育効果が得られ難いことが知られている。
このため,例えば特許文献1,2に示すように鉄をFe2+イオン(二価鉄イオン)として供給する工夫がなされているが,Fe2+イオンは酸化されてFe3+イオンになり易いため,Fe2+イオンを長期にわたって安定して供給できる鉄供給剤の開発が望まれている。
特許文献1に示す植物用鉄供給剤は,クエン酸粉末と,FeO粉末と,水とを含む混合物を加熱し,クエン酸にFeOが溶解された水溶液からなり,上記FeO粉末は,該FeO粉末全体に対してFeOが50質量%以上で,且つCaAl,FeAl,CaFeSi,CaSi及びMgFeのうちの少なくとも1種の複酸化物を含有し,Fe2+イオンとFe3+イオンとを含有し,総Feイオン量を100質量%とした場合に,該Fe2+イオンが50~90質量%とすることを特徴としている。
そして上記水溶液を乾固した固形又はペースト状の物を水溶することによりFe2+イオン濃度が特異的に高い植物鉄供給剤が提案されている。
しかし,特許文献1の植物用鉄供給剤にあっては,一般的な地球環境下において製造する際には,空気中の酸素によってFe2+イオンが酸化してFe3+イオンになり易く,結果的に製造物のFe2+イオンが減少してしまう問題が発生している。
この問題は,減圧装置や脱気装置により製造環境における酸素を減少させることで回避することが可能であるが,製造装置数の増大により製造コストが増大する問題が発生している。
また,有機酸によってFeO粉末を溶解させることで得られるFe2+イオン濃度が特異的に高い溶液にあっては,時間経過や温度変化によって有機酸鉄塩の沈殿物が発生し易く,Fe2+イオン濃度が低下する問題が生じている。
特に,有機酸としてクエン酸を使用する場合にあっては,クエン酸鉄塩の沈殿物が発生することになる。該クエン酸鉄塩は,本来溶液内に溶解していることでFe2+イオンを保持しているが,クエン酸鉄塩が沈殿した水溶液にあっては,水溶液中におけるFe2+イオン濃度が著しく低下し,Fe2+イオン濃度が特異的に高い水溶液を得ることができなかった。
特許文献2に示す肥料用含鉄組成物は,組成物中の全鉄分が3~50wt%であり,かつこの鉄分のうちの25wt%以上が結晶水を含む鉄化合物から構成されていることを特徴とし,前記結晶水を含む鉄化合物は,水酸化第一鉄(Fe(OH)2 ),水酸化第二鉄(Fe(OH)3 )および鉄の複塩のなかから選ばれるいずれか1種以上からなる。
しかし,該肥料用含鉄組成物から溶出する鉄分は,大部分がFe3+イオンで,植物が取り込むことは困難で,肥料として有効でなかった。また,上記水溶性無機鉄塩は,Fe2+イオン状態を保持し難く,Fe3+イオンへと酸化され易く,塩類の蓄積により土壌や水の汚染を引き起こす問題が発生している。
すなわち,各種肥料として水溶性無機金属塩類がこれまで長く使用されており,これら水溶性金属塩を構成した強酸陰イオンが土壌中の他の元素と結合して水不溶性の塩を形成して土壌に蓄積することが問題となっている。特に,無機金属塩類の植物用肥料に使用されるEDTA鉄錯体(エチレンジアミン四酢酸)は,実質上3価鉄のキレート剤で,土壌中の重金属を固定して土壌汚染を引き起こしたり,地下水に溶け込んで水汚染を引き起こしたりする恐れがある。
日本国特許第4096207号公報 日本国特許公開第1996-277183号公報
特許文献1の植物用鉄供給剤にあっては,空気中の酸素によってFe2+イオンが酸化し,結果的にFe2+イオンが減少してしまう点にある。また,Fe2+イオン濃度が特異的に高い溶液にあっては,時間経過や温度変化によって有機酸鉄塩の沈殿物が発生し,
水溶液中におけるFe2+イオン濃度が著しく低下する点にある。
特許文献2に示す肥料用含鉄組成物にあっては,溶出する鉄分の大部分がFe3+イオンで,植物が取り込むことは困難で,肥料として有効でない点にある。また,水溶性無機鉄塩は,Fe2+イオン状態を保持し難く,Fe3+イオンへと酸化され易く,塩類の蓄積により土壌中の重金属を固定して土壌汚染を引き起こしたり,地下水に溶け込んで水汚染を引き起こしたりする点にある。
請求項1に係る生育用鉄剤は,クエン酸,水,鉄を攪拌混合したクエン酸鉄に炭酸水素ナトリウムを化合したクエン酸鉄ナトリウム水溶液からなり,上記クエン酸鉄ナトリウムは,水100ml当りのクエン酸(純度100%と仮定)を10g~水温度のクエン酸溶解限度量,水100ml当りの鉄(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に5~60質量部,水100ml当りの炭酸水素ナトリウム(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に80~120質量部としたことを最も主要な特徴とする。
請求項6に係る生育用鉄剤の製造方法は,クエン酸と水のクエン酸水溶液に鉄を溶解した添加したクエン酸鉄水溶液を生成する工程と,クエン酸鉄水溶液に炭酸水素ナトリウムを化合してクエン酸鉄ナトリウムを生成する工程と,からなることを最も主要な特徴とする。
請求項11に係る生育用鉄供給剤は,請求項1乃至5にいずれかに係る生育用鉄剤を完全乾燥質量換算にて5質量%以上含有することを最も主要な特徴とする。
請求項1,請求項6及び請求項11に係る本発明は,時間経過や温度変化によって有機酸鉄塩の沈殿物が発生して水溶液中におけるFe2+イオン濃度が著しく低下するのを防止し,長期にわたって高いFe2+イオン濃度を保つことができる。
また,請求項1,請求項6及び請求項11に係る本発明は,動植物への取り込みを効率的に行うことを可能にすると共に土壌汚染や水汚染を防止することができる。
クエン酸鉄製造過程における鉄イオン濃度を示す説明図である。 クエン酸鉄ナトリウム1の製造過程における鉄イオン濃度を示す説明図である。 クエン酸鉄ナトリウム2の製造過程における鉄イオン濃度を示す説明図である。 クエン酸鉄ナトリウム3の製造過程における鉄イオン濃度を示す説明図である。 使用例1の生育比較状態を示す説明図である。 使用例2の生育比較状態を示す説明図である。 使用例3の生育比較状態を示す説明図である。 使用例4の生育比較状態を示す説明図である。 使用例5の生育比較状態を示す説明図である。 使用例6の生育比較状態を示す説明図である。
クエン酸,水,鉄を攪拌混合したクエン酸鉄に炭酸水素ナトリウムを化合したクエン酸鉄ナトリウム水溶液を,上記クエン酸鉄ナトリウムは,水100ml当りのクエン酸(純度100%と仮定)を10g~水温度のクエン酸溶解限度量,水100ml当りの鉄(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に5~60質量部,水100ml当りの炭酸水素ナトリウム(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に80~120質量部としたことを最良の形態とする。
以下,本発明を実施例に従って詳細に説明する。
[生育用鉄剤]
本発明の生育用鉄剤は,クエン酸,水及び鉄を混合して調整したクエン酸鉄水溶液に,重曹(炭酸水素ナトリウム NaHCO)を化合させて得られたクエン酸鉄ナトリウム塩の水溶液からなる。
[クエン酸]
水溶液を調整するのに用いる酸は,環境負荷がなく,使用上,安全なクエン酸に限定され,該クエン酸は,主成分(通常,純度99%以上)とする固体又は粉体であり,その純度であれば粒子形状などは特に限定されないが,水に溶解し易い細かい粒度であることが好ましい。
後述する水にクエン酸を溶解したクエン酸水は,pHが1.0~2.0に調整され,刺激臭がなく,鉄を添加したクエン酸鉄水溶液に生成した際に,酸濃度に対するFe2+イオン濃度を特に高くすることができる。
[水]
クエン酸を溶解する水としては,特に限定されず,例えば純水及びイオン交換水等の高度に精製された水であってもよく,また水道水,工業用水,農業用水及び地下水等の通常使用される水であってもよい。
[鉄]
クエン酸水に添加される鉄は,FeOに限定されず,鉄を主成分とするFe,Fe4等の固体であってもよいため,本発明においては,固体鉄と称する。固体鉄に含有される鉄量は,特に限定されないが,鉄を50質量%以上(好ましくは65質量%以上,更に好ましくは95質量%であってもよい)含有したものが適している。
この固体鉄は,例えばスチールウール,鉄分を含有するダスト,伸線加工時に発生する鱗片状鉄スケール,鋳物砂の含鉄部,及び各種市販の鉄粉末等を用いることができる。これらの中では,クエン酸で溶解しやすい細かい粒度の鉄粉末が好ましい。クエン酸水溶液に対する固体鉄の添加量は,クエン酸水100に対して固体鉄1~25の割合で添加してクエン酸鉄水溶液に調整される。
[炭酸水素ナトリウム]
炭酸水素ナトリウム(重曹)としては,炭酸水素ナトリウムを主成分(通常,純度99%以上)とする固体又は粉体で,その純度であれば粒子形状などは特に限定されない。水に溶解しやすいので,細かい粒度であることが好ましい。
炭酸水素ナトリウムは,クエン酸鉄水溶液に添加して化合させることにより安定度が高いクエン酸鉄ナトリウムを生成すると共にpHの上昇により酸化還元電位を還元位置まで到達させてFe2+イオンが酸化してFe3+イオンへ遷移するのを抑制することを可能にする。
[クエン酸鉄ナトリウム]
上記したクエン酸と固体鉄及び水を攪拌混合したり,予め水で溶解したクエン酸に固体鉄を添加して攪拌混合したり,予め所要量を溶解させたクエン酸に固体鉄及びクエン酸粉末を添加し,必要に応じて加熱しながら攪拌混合したりするいずれかの態様によりクエン酸鉄水溶液を生成した後に,該クエン酸鉄水溶液に炭酸水素ナトリウムを混合し,必要に応じて加熱したクエン酸鉄ナトリウムの水溶液が生成される。該クエン酸鉄ナトリウムにあっては,炭酸水素ナトリウムの添加によりpH5~8になるようにアルカリ化される。
上記においてクエン酸,固体鉄,炭酸水素ナトリウムの量は,特に限定されないが,例えば水100mlに対し,クエン酸10g(好ましくは15g~水溶液温度におけるクエン酸溶解限度量の範囲で任意に決定する。),水100ml当りにおいて固体鉄を,クエン酸含有量を100重量部とした場合においては5~60重量部,水100ml当りにおいて炭酸水素ナトリウムを,クエン酸含有量を100重量部とした場合においては80~120重量部とする。
なお,上記により攪拌混合して得られたクエン酸鉄ナトリウムの水溶液中に非溶解のクエン酸,固体鉄,炭酸水素ナトリウムが残存する場合には,ろ過手段や遠心分離機等により水不溶性成分を分離除去すればよい。ろ過手段とする場合のろ過条件としては,特に限定されないが,例えば孔径10μm以下,より好ましくは5μm以下,更に好ましくは3μm以下のメンブレンフィルター,濾過フィルター等を使用すればよい。
なお,上記生育用鉄剤の水溶液には,例えば木酢液のような水溶性防黴剤を添加(木酢液の場合,生育用鉄剤に対して1~10質量%以下)し,黴の発生を防カビ防止することができる。
また,生育用鉄剤の水溶液にあっては,特に保存温度は限定されないが,例えば15℃以下の低温で保存するのが好ましい。更に,生育用鉄剤の水溶液にあっては,嫌気環境下での保存が好ましい。
クエン酸鉄水溶液中のFe2+イオン濃度変化を図1に,また上記のように生成された各種生育用鉄剤水溶液1乃至3のFe2+イオン濃度変化を図2乃至図4に示す。図1において炭酸水素ナトリウムが非化合のクエン酸鉄水溶液にあっては,クエン酸水溶液に鉄を混合して攪拌しても,Fe2+イオン濃度の上昇が確認されないため,生育用鉄剤としては不適当であると判断した。
図2乃至図4に示すクエン酸鉄ナトリウム水溶液1乃至3にあっては,図1のクエン酸鉄水溶液と比べてFe2+イオン濃度の上昇を確認することができ,生育用鉄剤として適当であると判断した。
なお,図1に示すクエン酸鉄及び図4に示すクエン酸鉄ナトリウムにおいて使用した「鉄」としての「線引鉄」は,ダイスに鉄材を通過させて鉄線材を製造する際に,ダイスにより切削されて排出される切削鉄(スケール)である。
[生育用鉄供給剤]
生育用鉄供給剤は,上記クエン酸鉄ナトリウムを所要の濃度に希釈した水溶液としての形態,上記クエン酸鉄ナトリウムを,活性炭やゼオライト等のミクロポーラス材,軽石等のマクロポーラス材等の多孔質担持体に担持させた固体としての形態,上記クエン酸鉄ナトリウムを生分解性増量剤に混合したずれであってもよいが,いずれの場合であっても,生育用鉄供給剤を100質量%とした場合に,生育用鉄剤(完全乾燥質量換算)を5~95質量%,好適値として50質量%以下,最好適値として30質量%で含有する必要がある。
生育用鉄供給剤には,上記生育用鉄剤の他に,例えばリポ酸,各種ビタミン類,Mn,Zn,Cu,Cr,Si,Mg,Ca,Co,Mo,Ni,B等の各成分,S及びCl等の水溶性化合物,水溶性金属塩等の他の成分や増量剤を,単体又は複合体として含有することができる。含有される他の成分は,生育用鉄剤を100質量部とした場合に30質量部以下とすることが好ましい。また,増量剤としては,例えばゼオライト、堆肥、粘土、泥炭、もみ殻、珪藻土、生分解性樹脂等が適している。
[生育用鉄供給剤の使用例]
生育用鉄供給剤の使用方法は,特に限定されないが,例えば土壌,対象植物の根元等へ灌水,葉面へ散布したり,水耕栽培用の培養液等として使用する場合には,対象植物の根を浸漬したり,土壌に混合したりして使用される。
特に,生育用鉄供給剤は,アルカリ土壌において好適に使用することができる。ここでアルカリ土壌とは,風乾した土壌10gに蒸留水25mlを加えて1時間振とうし,得られた懸濁液のpHを測定した場合に,そのpHが7を超える土壌で,本来的なアルカリ土壌及び非アルカリ土壌が施肥,砂漠化等により後天的にアルカリ化したアルカリ土壌も含まれる。
本来的なアルカリ土壌としては,貝化石土壌,石灰質土壌,珊瑚質土壌等の各種石灰質成分が単独,又は複合形態の土壌が挙げられる。また,これらの各種石灰質成分が含有された土壌と非アルカリ土壌との混合土壌であって,全体としてアルカリ土壌であるものが含まれる。
[生育用鉄剤の製造方法]
(クエン酸鉄生成工程)
上記したように,例えばクエン酸粉末と,固体鉄と,水とを含む混合物を攪拌混合して溶解し,クエン酸鉄を生成する工程を備える。
上記クエン酸鉄を生成する際のクエン酸と固体鉄と水との仕込み量は,特に限定されないが,例えばクエン酸(純度100%と仮定):鉄粉末(純度100%と仮定):水(純度100%と仮定)の質量比を8~40:1~25:60~90,好適例として10~35:2~15:65~88,最適例として15~30:2.5~10:70~85の範囲で調整すればよい。
上記攪拌混合の条件は,特に限定されないが,対象物質が十分に接触して化合反応が発生する必要があり,例えば回転翼付撹拌機などの専用の攪拌混合装置を利用しても良く,またガラス棒や櫂等を使用して人力でかき混ぜてもよい。
また,クエン酸鉄の水溶液を生成する際,又は/及びクエン酸鉄水溶液に炭酸水素ナトリウムを化合する際においては,必要に応じて加熱してもよく,加熱条件としては,加熱温度を150℃以下,好適例として140℃以下,最適例として130℃以下に保持することが好ましい。加熱温度を150℃以上とすると,水溶液中におけるFe3+イオン濃度が高くなる,したがって水溶液中のFe2+イオン濃度が低くなる現象が発生する。
一方,加熱温度の下限に付いては,特に限定されず,例えば40℃以上,好適例として50℃以上,最適例として60℃以上とし,上記上限温度及び下限温度を上記の範囲で任意に組み合わせて40~150℃の範囲(好適例として50~140℃,最適例として60~130℃,これら以外の組合せであってもよい。)に設定する。
上記加熱によりクエン酸の溶解量が多くなり,これに伴って鉄の溶解量も増える結果,水溶液中におけるFe2+イオン又はFe2+イオン錯体の濃度が高くなっている。
(クエン酸鉄ナトリウム生成工程)
上記精製工程で生成されたクエン酸鉄水溶液に重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して攪拌混合することによりクエン酸鉄ナトリウムの水溶液である生育用鉄供給剤を生成する。
クエン酸鉄ナトリウムにあっては,水100ml当りにおいてクエン酸含有量を100重量部とした場合においては80~120重量部の添加量になるように調整して生成される。
以下においては,植物に生育用鉄供給剤を散布した使用例により生育状況を示す。
灌注するクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,850mlの水道水にクエン酸を150g投入してクエン酸水を生成した後に還元鉄粉25gを投入して攪拌した後に、炭酸水素ナトリウム150gを攪拌混合することで作成した。
使用例1
図5は,植物としての栽培例をモロヘイヤとし,栽培期間30日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注したモロヘイヤにあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
使用例2
図6は,植物としての栽培例を小松菜とし,栽培期間23日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注した小松菜にあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
使用例3
図7は,植物としての栽培例をオクラとし,栽培期間19日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注したオクラにあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
使用例4
図8は,植物としての栽培例をサニーレタスとし,栽培期間19日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注したサニーレタスにあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
使用例5
図9は,植物としての栽培例をパセリとし,栽培期間19日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注したパセリにあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
使用例6
図10は,植物としての栽培例をイタリアンパセリとし,栽培期間19日後における鉄剤非灌注(図左側),クエン酸鉄水溶液(図中央部)及び本願に係る生育用鉄供給剤としてのクエン酸ナトリウム水溶液(図右側)を,1週間に1回の割合で灌注した生育状態を示す。なお,クエン酸鉄水溶液及びクエン酸鉄ナトリウム水溶液は,全鉄量がそれぞれ15000ppmで,Fe 2+ がクエン酸鉄で3000ppm,クエン酸鉄ナトリウムが12500ppmで,各水溶液を10000倍で希釈調整した。
クエン酸鉄ナトリウムを灌注したイタリアンパセリにあっては,他に比べて根張りが向上し,地上部の重量の増加が確認できた。
[考察]
使用例1乃至6の結果から以下のように考察する。
鉄剤非灌注の指数を100とすると,地上部重量に関しては,クエン酸鉄水溶液灌注にあっては116,クエン酸鉄ナトリウム水溶液灌注にあっては209,また根重に関しては,クエン酸鉄水溶液灌注にあっては134,クエン酸鉄ナトリウム水溶液灌注にあっては464になる。
これらの事実から根及び地上部の成長にFe2+が大きく寄与していると考察する。
本実施例の生育用鉄剤,生育用鉄供給剤あっては,時間経過や温度変化によって有機酸鉄塩の沈殿物が発生して水溶液中におけるFe2+イオン濃度が著しく低下するのを防止して高いFe2+イオン濃度を保つことができる。また,動植物への取り込みを効率的に行うことを可能にすると共に土壌汚染や水汚染を防止することができる。
本実施例の生育用鉄剤の製造方法にあっては,時間経過や温度変化による有機酸鉄塩の沈殿物が発生するのを抑制し,高いFe2+イオン濃度で,かつ土壌汚染や水汚染の危険性が少ない生育用鉄剤を効率的に製造することができる。

Claims (13)

  1. 動植物の生育に不可欠な微量必須元素としての鉄を供給する動植物生育用鉄剤は,
    クエン酸,水,鉄を攪拌混合したクエン酸鉄に炭酸水素ナトリウムを化合したクエン酸鉄ナトリウム水溶液からなり,
    上記クエン酸鉄ナトリウムは,水100ml当りのクエン酸(純度100%と仮定)を10g~水温度のクエン酸溶解限度量,水100ml当りの鉄(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に5~60質量部,水100ml当りの炭酸水素ナトリウム(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に80~120質量部としたことを特徴とする。
  2. 請求項1において,
    上記クエン酸鉄は,クエン酸(純度100%と仮定)と水(純度100%と仮定)及び鉄(純度100%と仮定)を8~40:1~25:60~90の割合としたことを特徴とする動植物生育用鉄剤。
  3. 請求項1において,
    鉄は,鉄分が50質量%以上の固体鉄とした動植物生育用鉄剤。
  4. 請求項1において,
    クエン酸鉄ナトリウム水溶液に防黴剤を添加した動植物生育用鉄剤。
  5. 請求項4において,
    防黴剤は,クエン酸鉄ナトリウム水溶液全体に対し,10質量%以下とした動植物生育用鉄剤。
  6. クエン酸と水のクエン酸水溶液に鉄を,水100ml当りのクエン酸(純度100%と仮定)を10g~水温度のクエン酸溶解限度量,水100ml当りの鉄(純度100%と仮定)を,クエン酸含有量を100質量部とした場合に5~60質量部の割合で溶解したクエン酸鉄水溶液を生成する工程と,
    クエン酸鉄水溶液に炭酸水素ナトリウム(純度100%と仮定)を,水100ml当り,クエン酸含有量を100質量部とする場合に80~120質量部の割合で化合してクエン酸鉄ナトリウムを生成する工程と,
    により請求項1に係る動植物生育用鉄剤の製造方法。
  7. 請求項6において,
    クエン酸水溶液に鉄を溶解してクエン酸鉄を生成する際,又は/及びクエン酸鉄水溶液に炭酸水素ナトリウムを化合する際において,加熱温度を150℃以下で加熱することを特徴とする動植物生育用鉄剤の製造方法。
  8. 請求項6において,
    鉄は,鉄分が50質量%以上の固体鉄とした動植物生育用鉄剤の製造方法。
  9. 請求項6において,
    生成されたクエン酸鉄ナトリウム水溶液に防黴剤を添加する工程を含む動植物生育用鉄剤の製造方法。
  10. 請求項1乃至5にいずれかに係る動植物生育用鉄剤を完全乾燥質量換算にて5~95質量%,含有する動植物生育用鉄供給剤。
  11. 請求項10において,
    動植物生育用鉄剤を多孔質材に担持させた動植物生育用鉄供給剤。
  12. 請求項10において,
    動植物生育用鉄剤に,リポ酸,各種ビタミン類,Mn,Zn,Cu,Cr,Si,Mg,Ca,Co,Mo,Ni,Bの各成分,S及びClの水溶性化合物,水溶性金属塩の少なくともいずれかを,動植物生育用鉄剤を100質量部とした場合に30質量部以下で添加した動植物生育用鉄供給剤。
  13. 請求項10において,
    動植物生育用鉄剤に,ゼオライト、堆肥、粘土、泥炭、もみ殻、珪藻土、生分解性樹脂の少なくともいずれかの増量剤を,動植物生育用鉄剤を100質量部とした場合に30質量部以下で添加した動植物生育用鉄供給剤。
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