この実施形態に係る本願発明のグルコン酸含有酢は、グルコン酸と酢酸の酸組成を持ち、かつ前記グルコン酸と前記酢酸の合計の質量に対して前記グルコン酸を10質量%以上含有するものである。
発明者の検討によれば、グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上のグルコン酸含有酢を含有させた酢入り飲食物は、前記酢入り飲食物を調製するにあたって加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができた。
また、グルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が上述したように10%以上となっているのではない、グルコン酸と酢酸の酸組成を持つ従来の食酢を含有させた酢入り飲食物と、グルコン酸と酢酸を含みかつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上であるグルコン酸含有酢を含有させた酢入り飲食物とを比較すると、前記酢入り飲食物を調製するにあたって加えられている原料素材を減量させても前記グルコン酸含有酢を含有させた酢入り飲食物の方が、加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができた。
本願発明による上述した作用・機序を発揮させる上で、グルコン酸と酢酸の合計の質量に対して上述したようにグルコン酸が10質量%以上含有されていることが望ましいが、グルコン酸と酢酸の合計の質量に対してグルコン酸が20質量%以上含有されていることが本願発明による上述した作用・機序を発揮させる上でより望ましく、グルコン酸と酢酸の合計の質量に対してグルコン酸が40質量%以上含有されていることが本願発明による上述した作用・機序を発揮させる上で更に望ましく、グルコン酸と酢酸の合計の質量に対してグルコン酸が80質量%以上含有されていると本願発明による上述した作用・機序を発揮させる上で一層望ましい。
グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である上述したグルコン酸含有酢において、グルコン酸としては濃縮されているグルコン酸を使用することができる。
発明者の検討によれば、濃縮されているグルコン酸を使用することで、より顕著に原料素材に由来する香りと風味を強く感じられて、同様の香りと風味を維持するのに原料素材の添加量を減少させることができた。
また、グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である上述したグルコン酸含有酢において、前記グルコン酸の配合成分割合が0.4質量%以上であるようにすることもできる。
原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができ、原料素材の添加量を減少させても同様の香りと風味を維持する上で、このようにすることが有利である。
グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である上述したグルコン酸含有酢は、従来公知のように、発酵によって製造されているものにすることができる。
グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である上述したグルコン酸含有酢を従来公知のように発酵によって製造する場合、従来公知のように、原料には、穀類、果汁、アルコールの中のいずれか一種又は複数種を使用することができる。
なお、本願発明者の検討によれば、グルコン酸は発酵で得られたものに限らず、試薬のグルコン酸を使用しても同様の効果を発揮させることができた。
本発明のグルコン酸含有酢(=GA酢)のような食酢を発酵によって製造する場合、微量の2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸が産生される。本願発明者が検討したところ、本発明に係るグルコン酸含有酢(=GA酢)を発酵によって製造する場合、生成される2-ケトグルコン酸と5-ケトグルコン酸との総量は発酵のどの段階でもグルコン酸1質量%あたり0.1%以上になると認められた。
グルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である上述したいずれのグルコン酸含有酢においても、糖を配合成分に含まなくても、上述したように、これを含有させて調製した酢入り飲食物は当該酢入り飲食物を調製するにあたって加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができ、前記酢入り飲食物を調製するにあたって加えられている原料素材を減量させても、加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができるという上述した作用・効果を発揮させることができる。これは、本願発明の特徴の一つである。
グルコン酸と酢酸の酸組成を持つ食酢であって糖を配合成分として含むものが従来から知られている。
本願発明のグルコン酸と酢酸を含み、かつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上であるグルコン酸含有酢は、上述したように、糖を配合成分に含まなくても上述した作用・効果を発揮できるものである。糖を配合成分に含まなくても上述した作用・効果を発揮できるものであることから、本発明の実施形態において糖を配合成分に含む場合であっても、糖の配合成分割合は3質量%未満として上述した作用・効果を発揮させることができる。
この実施形態に係る本願発明の酢入り飲食物は、上述したいずれかのグルコン酸含有酢が添加されて製造されている酢入り飲食物である。
酢入り飲食物としては、食酢を成分に含む調味酢など、従来からこの技術分野で公知の種々の酢入り飲食物を例示することができる。
例えば、柑橘果汁入り調味酢、だし(かつお、さば、いわし、あご、鶏、昆布、貝類など)入り調味酢、トマト入り調味酢、香辛料入り調味酢、香草(青じそ、ハーブ、バジル、クレソンなど)入り調味酢などの調味酢や、酢飲料などを例示することができる。柑橘果汁入り調味酢としては、例えば、ぽん酢醤油などがある。酢飲料としては、例えば、果汁(りんご、ぶどう、マスカット、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、桃、いちご、ライチ、スイカ、メロン、さくらんぼなどの果汁)入り酢飲料や発酵乳入り酢飲料、乳入り酢飲料、豆乳入り酢飲料などがある。
また、上述した果汁などが使用されているゼリーなど、上述したいずれかのグルコン酸含有酢が添加されて製造されている種々の菓子類なども例示できる。
従来からこの技術分野で公知の種々の酢入り飲食物を調製する際に、グルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が上述したように10%以上となっているのではない、グルコン酸と酢酸の酸組成を持つ従来の食酢を含有させて調製した酢入り飲食物と、グルコン酸と酢酸を含みかつグルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率が10%以上である本実施形態の上述したグルコン酸含有酢を含有させた酢入り飲食物とを比較すると、加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができ、また、前記酢入り飲食物を調製するにあたって加えられている原料素材を減量させても本実施形態の上述したグルコン酸含有酢を含有させた酢入り飲食物の方が、加えられている原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができる。
このような本実施形態の酢入り飲食物において、グルコン酸濃度は0.2質量%~30.0質量%とすることができる。上述した作用・効果をよりよく発揮させる上で、グルコン酸濃度をこのような範囲に設定することが有利である。
以下、発明者が本願のグルコン酸含有酢、酢入り飲食物について検討した結果を実施例として説明する。なお、本願発明は上述した実施形態及び後述する実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
なお、以下の実施例において「%」は特にことわりが無い限り「質量%」である。
グルコン酸濃度を0%~13.72%、酢酸濃度を0%~4.20%の範囲で総酸度(酢酸換算)4.20%になるように食酢を、糖を添加せずに、調製した(表1)。調製した食酢は、グルコン酸比率(=グルコン酸と酢酸の質量合計に対するグルコン酸質量比率)毎に13段階に分け13種類の食酢を調製した。
調製した13種類の食酢のそれぞれ51.5gに対して柑橘果汁を10g、薄口醤油を28.5g加えて13種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した。
6名の官能パネラーで13種類の柑橘果汁入り調味酢の官能比較を実施した。官能評価は、柑橘果汁入り調味酢の柑橘果汁の香りの強さを以下のように5段階評価した。5:香りが強い、4:香りがやや強い、3:香りがやや弱い、2:香りが弱い、1:香りがない。
この結果は以下の表1の通りであった。表1は、グルコン酸含有酢を含有させて調製したこの実施例の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を喫食した際に感じる原料素材(かんきつ果汁)に由来する香りの強さについての官能評価の結果を表すものである。
表1における右端の「点数」欄に記載されている数字は13種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数の平均点である。なお、13種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表2の通りであった。表2は、表1に結果を示した官能評価で各パネラーが各試料(酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢))に対して下した評価点数の一覧を表すものである。表2において、AA濃度は酢酸濃度、GA濃度はグルコン酸濃度である。
表1のように、グルコン酸比率10%未満では、香りがない~香りが弱いという評価であった。
グルコン酸比率10%になると弱くではあるが柑橘果汁の香りを感じるようになり、グルコン酸比率が10%を越えて高くなるにつれて次第に強く柑橘果汁の香りを感じるようになると評価された。
すなわち、グルコン酸比率が10%以上でグルコン酸比率が10%未満の柑橘果汁入り調味酢に比較すると明らかに柑橘果汁の香りを感じるようになった。
また、グルコン酸比率が10%以上で20%未満の柑橘果汁入り調味酢よりも、グルコン酸比率20%以上で50%未満の柑橘果汁入り調味酢の方が柑橘果汁の香りを強く感じるようになった。
グルコン酸比率が50%になると香りがやや強いという評価を受けるようになり、グルコン酸比率が50%以上で高くなるにつれて柑橘果汁の香りを感じる感じ方がより強くなった。
そこで、グルコン酸と酢酸の酸組成を持ち、かつ前記グルコン酸と前記酢酸の合計の質量に対して前記グルコン酸を10質量%以上含有する食酢(=グルコン酸含有酢)は、これを含有させて、酢入り飲食物の一種である柑橘果汁入り調味酢を調製した際に、酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製するにあたって加えられている原料素材(柑橘果汁)に由来する香りを強く感じることができるものになることを確認できた。この場合のグルコン酸比率は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましいと認められた。
(試薬を用いたグルコン酸含有酢)
試薬(フジグルコン(商品名)、扶桑化学)を用いて、表1に従って、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を調製した。
調製したグルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)のそれぞれについて表3に記載した配合で柑橘果汁(ゆず果汁)3~10g、濃口醤油等28.5gに、GA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。
果汁 の配合比率を6段階に分けて、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)それぞれについて6種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した(表4~表7)。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製した柑橘果汁入り調味酢中のグルコン酸濃度はそれぞれ0.2、0.5、1.2、3.9%、酢酸濃度はそれぞれ2.1%、2.0%、1.8%、1.0%とした。
この6種類の柑橘果汁入り調味酢について、表4~表7にそれぞれA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:柑橘果汁の香りが強い、4:柑橘果汁の香りがやや強い、3:柑橘果汁の香りがやや弱い、2:柑橘果汁の香りが弱い、1:柑橘果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表4~表7のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表8のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表9である。表9においてGAが表4~表7に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢で、AAが表8に官能評価結果が示されている比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。柑橘果汁入り調味酢に占める柑橘果汁の割合が6段階に分けられている6種類の柑橘果汁入り調味酢のそれぞれについて表4~表8に示されている6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した数値が表9に記載されている。
表9に示されているように、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、柑橘果汁の配合割合が7.0~9.0%の範囲で柑橘の香りを強く感じさせる効果があることが分かった。
特に、20%比率以上のグルコン酸酢を用いることで、顕著な効果が見られた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した柑橘果汁入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加される原料素材(柑橘果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加されている原料素材(柑橘果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(柑橘果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)は、原料素材(柑橘果汁)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に比較して、酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加される原料素材(柑橘果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加されている原料素材(柑橘果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(柑橘果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)は、原料素材(柑橘果汁)に由来する香りを強く感じることができる。
表3の配合に記載されている原料素材の市販品での標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)では柑橘果汁入り調味酢全体に占める柑橘果汁の割合が10.0%の時に評価点4.0であった(表9)。
これに対して80%比率のGA酢を使用している酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)では、柑橘果汁入り調味酢全体に占める柑橘果汁の割合が7.0%の時に評価点4.0であった(表9)。
評価点4.0を得ている、グルコン酸比率80%のGA酢を使用している酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)で、柑橘果汁入り調味酢全体に占める果汁の割合が7.0%の時の原材料代金は、表3の配合で157円/kgと計算された。
一方、評価点4.0を得ている、柑橘果汁入り調味酢全体に占める果汁の割合が10.0%である比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)の原材料代金は、表3の配合で171円/kgと計算された。
そこで酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)1kgあたりで171円-157円=14円/kgの製造コスト削減となり、約8%のコスト削減率となっていた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
このような効果が、試薬を用いて調製されている本発明のグルコン酸含有酢によって発揮されることを確認できた。
(発酵グルコン酸を用いたグルコン酸含有酢)
発酵グルコン酸を用いて、実施例1の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製する際に使用したグルコン酸濃度7.55%、酢酸濃度1.89%、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を調製した。
柑橘果汁(ゆず果汁)3~10g、濃口醤油等28 .5gに、GA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。この際、GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は3.9%とし、果汁の配合比率を6段階に分けて6種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した。
この6種類の柑橘果汁入り調味酢について、表10にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:柑橘果汁の香りが強い、4:柑橘果汁の香りがやや強い、3:柑橘果汁の香りがやや弱い、2:柑橘果汁の香りが弱い、1:柑橘果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表10のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表11のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をとりまとめたものが表12である。表12は、表10、表11に示されている官能評価結果を比較できるように取りまとめたものである。
表12において、GA欄が表10に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表11に官能評価結果が示されている比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
各欄における「得点」は、表10、表11に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点である。
AA酢で調製した柑橘果汁配合率10%の柑橘果汁入り調味酢とGA酢で調製した柑橘果汁配合率が7%の柑橘果汁入り調味酢が同じ得点評価となった。また、AA酢添加の柑橘果汁配合率7%の柑橘果汁入り調味酢とGA酢で調製した柑橘果汁配合率が5%の柑橘果汁入り調味酢が同じ得点評価となった。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した柑橘果汁入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加される原料素材(柑橘果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加されている原料素材(柑橘果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(柑橘果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)は、原料素材(柑橘果汁)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に比較して、酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加される原料素材(柑橘果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)に添加されている原料素材(柑橘果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(柑橘果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)は、原料素材(柑橘果汁)に由来する香りを強く感じることができる。
このような効果は発酵グルコン酸を用いて調製されている本発明のグルコン酸含有酢によっても発揮されることを確認できた。
ここでは発酵グルコン酸を用いて調製したグルコン酸比率80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)について検討したが、上述したように、試薬を用いて調製したグルコン酸比率10%、20%、40%、80%の本発明のグルコン酸含有酢によって上述した効果が確認されていることから、発酵グルコン酸を用いて調製されるグルコン酸比率10%、20%、40%の本発明のグルコン酸含有酢によっても上述した効果が発揮されると考えられた。
(柑橘フレーバーを添加した柑橘果汁入り調味酢)
実施例1の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製する際に使用したグルコン酸濃度7.55%、酢酸濃度1.89%、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を調製した。
柑橘果汁(ゆず果汁)10g、濃口醤油等28.5gに、GA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。この際、GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は3.9%とし、ここに柑橘フレーバーを8段階に分けて添加し、8種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した。
この8種類の柑橘果汁入り調味酢について、表13にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:柑橘果汁の香りが強い、4:柑橘果汁の香りがやや強い、3:柑橘果汁の香りがやや弱い、2:柑橘果汁の香りが弱い、1:柑橘果汁の香りがない、の5段階で評価した。
8種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表13のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、8種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
8種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表14のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をとりまとめたものが表15である。表15において、GA欄が表13に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表14に官能評価結果が示されている比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
各欄における「得点」は、表13、表14に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点である。
AA酢で調製した柑橘フレーバー1.00%添加の柑橘果汁入り調味酢とGA酢で調製した柑橘フレーバー0.90%添加の柑橘果汁入り調味酢が同じ得点評価、AA酢で調製した柑橘フレーバー0.90%添加の柑橘果汁入り調味酢とGA酢で調製した柑橘フレーバー0.70%添加の柑橘果汁入り調味酢が同じ得点評価となった。
このことから、GA酢を使用し、柑橘フレーバーを添加して柑橘果汁入り調味酢を調製すると、AA酢使用に比較して柑橘果汁フレーバーの添加量を10%(添加1.00%→0.90%)、22.2%(添加0.90%→0.70%)低減させることが可能であることがわかった。
上述したように、柑橘果汁(ゆず果汁)10g、濃口醤油等28.5gに、GA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製し、GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は3.9%とし、ここに柑橘フレーバーを8段階に分けて添加し、8種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した際の原料素材についての市販品での標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した柑橘果汁入り調味酢について製造コストの検討を行った。
比較対象の柑橘果汁入り調味酢では柑橘果汁入り調味酢全体に占めるフレーバーの割合が1.00%の時に評価点4.8であった(表15)。
これに対してGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢では、柑橘果汁入り調味酢全体に占めるフレーバーの割合が0.90%の時に評価点4.8であった(表15)。
評価点4.8を得ているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢で、柑橘果汁入り調味酢全体に占めるフレーバーの割合が0.90%の時の原材料代金は上述の配合で199円/kgと計算された。
一方、評価点4.8を得ている、柑橘果汁入り調味酢全体に占めるフレーバーの割合が1.00%である比較対象の柑橘果汁入り調味酢の原材料代金は上述の配合で218円/kgと計算された。
そこで柑橘果汁入り調味酢1kgあたりで218円-199円=19円/kgの製造コスト削減となり、約9%のコスト削減率となっていた。
このことから、GA酢を含有させて酢入りフレーバー入りの柑橘果汁入り調味酢を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
(柑橘果汁入り調味酢-濃縮-再稀釈)
発酵で得たグルコン酸に糖を加えることなく減圧濃縮し、グルコン酸濃度50%、総酸度(酢酸換算)約15%の高濃度グルコン酸酢を調製した。濃縮の方法はこの技術分野で公知の種々の方法を採用できる。
これを、グルコン酸を7.55%、酢酸を1.89%で総酸度(酢酸換算)4.2%となるように水及びアルコール酢で調整した。
柑橘果汁(ゆず果汁)3~10g、濃口醤油等28.5gに、前記のように調整したGA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。この際、GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は3.9%とし、果汁の配合比率を6段階に分けて6種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した。
この6種類の柑橘果汁入り調味酢について、表16にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:柑橘果汁の香りが強い、4:柑橘果汁の香りがやや強い、3:柑橘果汁の香りがやや弱い、2:柑橘果汁の香りが弱い、1:柑橘果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表16のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表17のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をとりまとめたものが表18である。表18において、GA欄が表16に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表17に官能評価結果が示されている比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
各欄における「得点」は、表16、表17に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点である。
AA酢で調製した柑橘果汁配合率10%の柑橘果汁入り調味酢よりもGA酢で調製した柑橘果汁配合率が7%の柑橘果汁入り調味酢の方が高得点であった。また、AA酢添加の柑橘果汁配合率9%の柑橘果汁入り調味酢とGA酢で調製した柑橘果汁配合率が5%の柑橘果汁入り調味酢が同じ得点評価となった。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した柑橘果汁入り調味酢に比較して、柑橘果汁の配合率を30%(配合10%→7%)、44.4%(配合9%→5%)低減させることが可能であることが分かった。
(柑橘果汁入り調味酢-濃縮-稀釈なし)
発酵で得たグルコン酸に糖を加えることなく減圧濃縮し、グルコン酸濃度50%、総酸度(酢酸換算)約15%の高濃度グルコン酸酢(GA酢)を調製した。なお、濃縮の方法はこの技術分野で公知の種々の方法を採用できる。
柑橘果汁(ゆず果汁)2~10g、濃口醤油等28.5gに、GA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。この際、GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は25.3%とし、果汁の配合比率を5段階に分けて5種類の柑橘果汁入り調味酢を調製した。
この5種類の柑橘果汁入り調味酢について、表19にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:柑橘果汁の香りが強い、4:柑橘果汁の香りがやや強い、3:柑橘果汁の香りがやや弱い、2:柑橘果汁の香りが弱い、1:柑橘果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表19のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えて酸度15%のアルコール高濃度酢を用いた以外は上記と同じにして、5種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この5種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
5種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表20のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をとりまとめたものが表21である。表21において、GA欄が表19に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表20に官能評価結果が示されている比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
各欄における「得点」は、表19、表20に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点である。
AA酢で調製した柑橘果汁配合率10%の柑橘果汁入り調味酢よりもGA酢で調製した柑橘果汁配合率が6%の柑橘果汁入り調味酢の方が高得点であった。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した柑橘果汁入り調味酢に比較して、柑橘果汁の配合率を低減させることが可能であることが分かった。
(柑橘果汁入り調味酢を希釈したときの検討)
通常鍋料理を食する際、柑橘果汁入り調味酢(例えば、ぽん酢など)で食べるのが一般的である。その際、器内の柑橘果汁入り調味酢が鍋の具材やだし(スープ)で温まると同時に、だしで薄まる。そしてだんだん柑橘果汁の香りや味、調味酢自体の味を感じなくなる。これは温まって揮発する酢酸臭が強くなることによると考えられる。
このような場合、一般的には、新たに、柑橘果汁入り調味酢(例えば、ぽん酢など)を器に加えて味を濃くする。
本発明のグルコン酸含有酢は、酢入り飲食物(例えば、柑橘果汁入り調味酢)に添加される原料素材の使用量を多くすることなく、あるいは、原料素材の使用量を従来よりも減少させても、原料素材に由来する香りと風味を強く感じることができるものである。
そこで、本発明のグルコン酸含有酢を用いて調製されている酢入り飲食物(例えば、柑橘果汁入り調味酢)であれば、温まっても、薄まっても柑橘果汁の風味や調味酢自体の味を長く感じることができ、新たに柑橘果汁入り調味酢(例えば、ぽん酢など)を加えなくても鍋料理を食べ続けることができる。
これを確認する目的で次のような検討を行った。
実施例1の酢入り飲食物(柑橘果汁入り調味酢)を調製する際に使用したグルコン酸濃度7.55%、酢酸濃度1.89%、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、柑橘果汁10g、濃口醤油等28.5gにGA酢51.5gを加えた柑橘果汁入り調味酢100gを調製した。
GA酢を加えるにあたってグルコン酸濃度は3.9%とし、お湯で2~8倍に希釈し、原液状態のものと、2倍、3倍、5倍、8倍希釈のものを準備した。
この5種類について、表22にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢の味の強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:味が強い、4:味がやや強い、3:味がやや弱い、2:味が弱い、1:味がない、の5段階で評価した。
5種それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表22のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、5種の比較対象のものを調製し、この5種のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で比較対象の柑橘果汁入り調味酢の味の強さについて官能比較を行った。
5種のそれぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表23のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をまとめたものが表24である。表24において、GA欄が表22に官能評価結果が示されているGA酢を使用しているもので、AA欄が表23に官能評価結果が示されている比較対象のものである。
各欄における「得点」は、表22、表23に記載した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点である。
GA酢で調製した5倍希釈のものがAA酢で調製した原液のものよりも高得点で、GA酢で調製した3倍希釈のもの、2倍希釈のものは、いずれもAA酢で調製した原液のものよりも高得点であった。
この結果、GA酢を用いて柑橘果汁入り調味酢(例えば、ぽん酢など)を調製すると、AA酢を用いて柑橘果汁入り調味酢(例えば、ぽん酢など)を調製する場合に比較して使用量を2.5倍~3倍減少させることが可能であることが分かった。
これにより、本願発明のグルコン酸含有酢を用いて酢入り飲食物を調製すれば、減塩効果や消費者の出費を抑える効果を期待できると考えられる。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)を用い 、この食酢(=グルコン酸含有酢)と、薄口しょうゆと、かつお出汁と、上白糖とからなる調味液とを用いて酢入り飲食物の一例としてだし入り調味酢を調製した。調製しただし入り調味酢の配合は表25の通りである。
かつおだしは4.3~42.8g、薄口醤油は4.3~42.8g、砂糖は0.5~5.3gの範囲で、GA酢は9.1g~90.9g の範囲で、合計が100gになるように調製した。この際、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製しただし入り調味酢のグルコン酸濃度はそれぞれ0.04~0.4%、0.1%~0.9%、0.2%~2.1%、0.7%~6.9%、酢酸濃度はそれぞれ0.4%~3.7%、0.4%~3.5%、0.3%~3.2%、0.2%~1.7%とした 。
だし入り調味酢に配合するだし汁の割合を変えて10種類のだし入り調味酢を調製した。この10種類のだし入り調味酢について、表26~表29にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーによりかつお出汁におけるカツオの香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:かつおの香りが強い、4:かつおの香りがやや強い、3:かつおの香りがやや弱い、2:かつおの香りが弱い、1:かつおの香りがない、の5段階で評価した。
10種類のだし入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表26~表29のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、10種類の比較対象のだし入り調味酢を調製し、この10種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、5名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価でかつお出汁におけるカツオの香りの強さについて官能比較を行った。
10種類の比較対象のだし入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表30のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表31である。表31において、GA欄が表26~表29に官能評価結果が示されているGA酢を使用しているだし入り調味酢である。また、AA欄が表30に官能評価結果が示されている、比較対象のだし入り調味酢である。
表31の各欄には表26~表30に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表31に示されているように、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、かつおだし配合率4.3%~31.3%の酢入り飲食物(だし入り調味酢)のいずれにおいても、比較対象のだし入り調味酢よりもかつおの香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(だし入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製しただし入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(だし入り調味酢)に添加される原料素材(かつお出汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(だし入り調味酢)に添加されている原料素材(かつお出汁)の使用量に比較して少ない原料素材(かつお出汁)の使用量でも、GA酢を含有させて酢入り飲食物(だし入り調味酢)は、原料素材(かつお出汁)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製しただし入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(だし入り調味酢)に添加される原料素材(かつお出汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(だし入り調味酢)に添加されている原料素材(かつお出汁)の使用量に比較して少ない原料素材(かつお出汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(だし入り調味酢)は、原料素材(かつお出汁)に由来する香りを強く感じることができる。
表25の配合に記載されている原料素材についての市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(だし入り調味酢)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(だし入り調味酢)では調味酢全体に占めるだしの割合が42.7%の時に評価点4.7であった(表31)。
これに対して80%比率のGA酢を使用している酢入り飲食物(だし入り調味酢)では、調味酢全体に占めるだしの割合が29.4%の時に評価点4.7であった(表31)。
評価点4.7を得ている、グルコン酸比率80%のGA酢を使用している酢入り飲食物(だし入り調味酢)で、調味酢全体に占めるだしの割合が29.4%の時の原材料代金は、表25の配合で80円/kgと計算された。
一方、評価点4.7を得ている、調味酢全体に占めるだしの割合が42.7%である比較対象の酢入り飲食物(だし入り調味酢)の原材料代金は、表25の配合で87円/kgと計算された。
そこで酢入り飲食物(だし入り調味酢)1kgあたりで87円-80円=7円/kgの製造コスト削減となり、約8%のコスト削減率となっていた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(だし入り調味酢)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従って、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)と、トマト、水、調味料とを用いて酢入り飲食物の一例としてトマト入り調味酢を調製した。調製したトマト入り調味酢の配合は表32の通りである。
トマトは21.6g~86.2g、水は0g~64.6gの範囲で、調味料を5.2g、GA酢8.6gを加えて合計が100gになるようにトマト入り調味酢を調製した。この際、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製したトマト入り調味酢中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.04、0.1、 0.2、0.7%、酢酸濃度はそれぞれ0.3、0.3、0.3、0.2%とした。トマトの配合率を9段階に分けて表33~表36のようにトマト入り調味酢を調製した。
この9種類のトマト入り調味酢について、表33~表36にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーによりトマト入り調味酢におけるトマト果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:トマト果汁の香りが強い、4:トマト果汁の香りがやや強い、3:トマト果汁の香りがやや弱い、2:トマト果汁の香りが弱い、1:トマト果汁の香りがない、の5段階で評価した。
9種類のトマト入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表33~表36のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)を用いた以外は上記と同じにして、9種類の比較対象のトマト入り調味酢を調製し、この9種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価でトマト入り調味酢におけるトマト果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
9種類の比較対象のトマト入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表37のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表38である。表38において、GA欄が表33~表36に官能評価結果が示されているGA酢を使用しているトマト入り調味酢である。また、AA欄が表37に官能評価結果が示されている、比較対象のトマト入り調味酢である。
表38の各欄には表33~表37示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表38に示されているように、トマト入り調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が43.1%以上になると、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象のトマト入り調味酢よりもトマト果汁の香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製したトマト入り調味酢では、トマト入り調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が77.6%で評価点3.0であったが、GA酢で調製したトマト入り調味酢では、GA比率20%以上で、トマト入り調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が64.7%の時点で評価点3.2以上となり、GA比率10%以上でも、トマト入り調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が69.0%の時点で評価点3.2以上であった。
このように、表33~表38の評価結果から、GA酢で調製したトマト入り調味酢では、AA酢で調製したトマト入り調味酢と比較してトマト果汁の配合率を低減しても、トマト果汁の配合率が高いAA酢で調製したトマト入り調味酢と同等の原料素材(トマト果汁)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食物(トマト入り調味酢)を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製したトマト入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(トマト入り調味酢)に添加される原料素材(トマト)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(トマト入り調味酢)に添加されている原料素材(トマト)の使用量に比較して少ない原料素材(トマト、調味料)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(トマト入り調味酢)は、原料素材(トマト)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(トマト入り調味酢)に比較して、酢入り飲食物(トマト入り調味酢)に添加される原料素材(トマト)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(トマト入り調味酢)に添加されている原料素材(トマト)の使用量に比較して少ない原料素材(トマト)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(トマト入り調味酢)は、原料素材(トマト)に由来する香りを強く感じることができる。
表32の配合に記載されている原料素材の市販品での標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(トマト入り調味酢)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(トマト入り調味酢)では調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が77.6%以上になると評価点3.0以上になる(表38)。
これに対してGA酢を使用している酢入り飲食物(トマト入り調味酢)では、グルコン酸比率40%以上で調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が43.14%の時に評価点3.0を超え(表38)、グルコン酸比率80%では調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が25.9%の時に評価点3.0でであった(表38)。
評価点3.0を得ている、80%比率のGA酢を使用している酢入り飲食物(トマト入り調味酢)で、調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が25.9%の時の原材料代金は、表29の配合で215円/kgと計算された。
一方、評価点3.0を得ている、調味酢全体に占めるトマト果汁の割合が77.6%である比較対象の酢入り飲食物(トマト入り調味酢)の原材料代金は、表29の配合で619円/kgと計算された。
そこで酢入り飲食物(トマト入り調味酢)1kgあたりで 619 円-225円=404円/kgの製造コスト削減となり、約65%のコスト削減率となっていた。
GA酢を含有させて酢入り飲食物(トマト入り調味酢)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、りんご果汁、水を用いて酢入り飲食物の一例としての酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)の配合は表39の通りである。
りんご果汁は9.1g~90.9g、水は0g~81.8gの範囲で、GA酢9gを加えて合計が100gになるように酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.04、0.1 、0.2、0.7%、酢酸濃度はそれぞれ0.4、0.4、0.3、0.2%とした。りんご果汁の配合率を9~91%の範囲で表40~表43のように8段階に分けて酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。
この8種類の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)について、表40~表43にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)におけるりんごの香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:りんごの香りが強い、4:りんごの香りがやや強い、3:りんごの香りがやや弱い、2:りんごの香りが弱い、1:りんごの香りがない、の5段階で評価した。
8種類の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表40~表43のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、8種類の比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製し、この8種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)におけるりんごの香りの強さについて官能比較を行った。
8種類の比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表44のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表45である。表45において、GA欄が表40~表43に官能評価結果が示されているGA酢を使用している酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)である。また、AA欄が表44に官能評価結果が示されている、比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)である。
表45の各欄には表40~表44に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表45に示されているように、飲料全体に占めるりんご果汁の割合が18.2%以上になると、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)よりもりんご果汁の香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるりんご果汁の割合が90.9%の時に評価点4.2であったが、GA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるりんご果汁の割合が72.7%の時に評価点4.2であった。
AA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるりんご果汁の割合が72.7%の時に評価点3.5であったが、GA酢比率80%の食酢(=グルコン酸酢)(=GA酢)で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるりんご果汁の割合が63.6%の時に評価点3.7であった。
このように、表40~表45の評価結果から、GA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では、AA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)と比較してりんご果汁の配合率を低減しても、りんご果汁の配合率が高いAA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)と同等の原料素材(りんご)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させてりんご果汁入り酢飲料のような酢飲料を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)に比較して、酢入り飲食物(酢飲料)に添加される原料素材(りんご)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(酢飲料)に添加されている原料素材(りんご)の使用量に比較して少ない原料素材(りんご)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)は、原料素材(りんご)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)に比較して、酢入り飲食物(酢飲料)に添加される原料素材(りんご)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(酢飲料)に添加されている原料素材(りんご)の使用量に比較して少ない原料素材(りんご)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)は、原料素材(りんご)に由来する香りを強く感じることができる。
表39の配合に記載されている原料素材の市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)ではりんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が90.9%で評価点4.2、りんご果汁の割合が63.6%で評価点3.3であった(表45)。
これに対してGA酢を使用している酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)では、グルコン酸比率80%でりんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が72.7%の時に評価点4.2、りんご果汁の割合が54.5%の時に評価点3.3であった(表45)。
評価点4.2を得ている、GA比率80%のGA酢を使用している酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)で、りんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が72.7%の時の原材料代金は、表39の配合で109円/kgと計算された。評価点3.3を得ている、GA酢を使用している酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)でグルコン酸比率80%、りんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が54.5%の時の原材料代金は、表39の配合で83円/kgと計算された。
一方、評価点4.2を得ている、りんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が90.9%である比較対象の酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)の原材料代金は、表39の配合で131円/kgと計算された。また、評価点3.3を得ている、りんご果汁入り酢飲料全体に占めるりんご果汁の割合が63.6%である比較対象の酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)の原材料代金は、表39の配合で92円/kgと計算された。
そこで、評価点4.2を得ている酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)1kgあたりで131円-109円=22円/kgの製造コスト削減となり、約17%のコスト削減率、評価点3.3を得ている酢入り飲食物(りんご果汁入り酢飲料)1kgあたりで92円-83円=10円/kgの製造コスト削減となり、約11%のコスト削減率となっていた。
GA酢を含有させて酢入り飲食物(酢飲料)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、ぶどう果汁、水を用いて酢入り飲食物の一例としての酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)を調製した。調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)の配合は表46の通りである。
ぶどう果汁は9.1g~90.9g、水は0g~81.8gの範囲で、GA酢9gを加えて合計が100gになるように酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.04、0.1、0.2、0.7%、酢酸濃度はそれぞれ0.4、0.4、0.3、0.2%とした。
ぶどう果汁の配合率を9.1~90.9%の範囲で表47~表50のように8段階に分けて酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)を調製した。
この8種類の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)について、表47~表50にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)におけるぶどうの香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:ぶどうの香りが強い、4:ぶどうの香りがやや強い、3:ぶどうの香りがやや弱い、2:ぶどうの香りが弱い、1:ぶどうの香りがない、の5段階で評価した。
8種類の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表47~表50のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、8種類の比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)を調製し、この8種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)におけるぶどうの香りの強さについて官能比較を行った。
8種類の比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表51のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表52である。表52において、GA欄が表47~表50に官能評価結果が示されているGA酢を使用している酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)である。また、AA欄が表51に官能評価結果が示されている、比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)である。
表52の各欄には表47~表51に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表52に示されているように、飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が45.5%以上になると、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)よりもぶどう果汁の香りが強くなることを確認できた。飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が27.3%でもグルコン酸比率40%以上のGA酢を用いることにより、比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)よりもぶどう果汁の香りが強くなり、飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が18.2%でもグルコン酸比率80%以上のGA酢を用いることにより、比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)よりもぶどう果汁の香りが強くなることを確認できた。
また、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が、酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)におけるぶどうの香りを強く感じるようになることを確認できた。
AA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が72.7%の時に評価点3.2であったが、グルコン酸比率80%のGA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が54.5%の時に評価点3.2であった。また、グルコン酸比率20%以上のGA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が63.6%の時に評価点3.5以上になっていた。
このように、表47~表52の評価結果から、GA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)では、AA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)と比較してぶどう果汁の配合率を低減しても、ぶどう果汁の配合率が高いAA酢で調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)と同等の原料素材(ぶどう)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させてぶどう果汁入り酢飲料のような酢飲料を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)に比較して、酢入り飲食物(酢飲料)に添加される原料素材(ぶどう果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(酢飲料)に添加されている原料素材(ぶどう果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(ぶどう果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)は、原料素材(ぶどう果汁)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)に比較して、酢入り飲食物(酢飲料)に添加される原料素材(ぶどう果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(酢飲料)に添加されている原料素材(ぶどう果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(ぶどう果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食物(酢飲料)は、原料素材(ぶどう果汁)に由来する香りを強く感じることができる。
表46の配合に記載されている原料素材の市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物の一例としての酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)ではぶどう果汁入り酢飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が72.7%で評価点3.2であった(表52)。
これに対して80%比率のGA酢を使用している酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)では、ぶどう果汁入り酢飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が54.5%で評価点3.2であった(表52)。
評価点3.2を得ている、GA酢を使用している酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)でグルコン酸比率80%、ぶどう果汁入り酢飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が54.5%の時の原材料代金は、表46の配合で127円/kgと計算された。
一方、評価点3.2を得ている、ぶどう果汁入り酢飲料全体に占めるぶどう果汁の割合が72.7%である比較対象の酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)の原材料代金は、表46の配合で165円/kgと計算された。
そこで、評価点3.2を得ている酢飲料(ぶどう果汁入り酢飲料)1kgあたりで165円-127円=38円/kgの製造コスト削減となり、約23%のコスト削減率となっていた。
GA酢を含有させて酢入り飲食物(酢飲料)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従って、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、香草及び香草エキス、水を用いて酢入り飲食物の一例としての香草入り調味酢を調製した。香草及び香草エキスとしては青じそ及び青じそエキスを用いた。調製した香草入り調味酢の配合は表53の通りである。
香草及び香草エキスはその合計が1.03~10.93g、水は0g~9.90gの範囲で、調味液を76.7g、GA酢12.37gを加えて合計が100gになるように香草入り調味酢を調製した。この際、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって調製した香草入り調味酢中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.06、0.1 、0.3、0.9%、酢酸濃度はそれぞれ0.5、0.5、0.4、0.2%とした。香草及び香草エキスの配合率を表54~表57のように8段階に分けて香草入り調味酢を調製した。
この8種類の香草入り調味酢について、表54~表57にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより香草入り調味酢における香草の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:香草の香りが強い、4:香草の香りがやや強い、3:香草の香りがやや弱い、2:香草の香りが弱い、1:香草の香りがない、の5段階で評価した。
8種類の香草入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表54~表57のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、8種類の比較対象の香草入り調味酢を調製し、この8種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で香草入り調味酢における香草の香りの強さについて官能比較を行った。
8種類の比較対象の香草入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表58のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表59である。表59において、GA欄が表54~表57のGA酢を使用している香草入り調味酢である。また、AA欄が表58に官能評価結果が示されている、比較対象の香草入り調味酢である。
表59の各欄には表54~表58に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表59に示されているように、香草入り調味酢調味料全体に占める青じそ割合が異なる8種類のいずれにおいても、グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の香草入り調味酢よりも香草の香りが強くなることを確認できた。
この傾向はグルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=GA酢)のいずれを用いた場合でも確認できた。また、いずれにおいても、この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製した香草入り調味酢では調味酢全体に占める「青じそ」の比率10.9%の時に最高の評価点4.0であったが、グルコン酸比率80%のGA酢で調製した香草入り調味酢では調味酢全体に占める青じその比率7.7%の時点で、既に評価点4.0であった。
このように、表54~表59の評価結果から、GA酢で調製した香草入り調味酢では、AA酢で調製した香草入り調味酢と比較して青じそ及び青じそエキスの配合率を低減しても、青じそ及び青じそエキスの配合率が高いAA酢で調製した香草入り調味酢と同等の原料素材(青じそ)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させて香草入り調味酢を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した香草入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(香草入り調味酢)に添加される原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の香草入り調味酢に添加されている原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量に比較して少ない原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した香草入り調味酢は、原料素材(青じそ及び青じそエキス)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した香草入り調味酢に比較して、香草入り調味酢に添加される原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食物(香草入り調味酢)に添加されている原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量に比較して少ない原料素材(青じそ及び青じそエキス)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した香草入り調味酢は、原料素材(青じそ及び青じそエキス)に由来する香りを強く感じることができる。
表52の配合に記載されている原料素材の市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(香草入り調味酢)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(香草入り調味酢)では香草入り調味酢全体に占める青じその割合が10.9%で評価点4.0、青じその割合が7.7%で評価点4.0であった(表59)。
評価点4.0を得ている、GA酢を使用している酢入り飲食物(香草入り調味酢)でグルコン酸比率40%、香草入り調味酢料全体に占める青じその割合が7.7%の時の原材料代金は、表53の配合で160円/kgと計算された。
一方、評価点4.0を得ている、香草入り調味酢料全体に占める青じその割合が10.9%である比較対象の酢入り飲食物(香草入り調味酢)の原材料代金は、表53の配合で195円/kgと計算された。
そこで、評価点4.0を得ている酢入り飲食物(香草入り調味酢)1kgあたりで195円-160円=35円/kgの製造コスト削減となり、約18%のコスト削減率となっていた。
GA酢を含有させて酢入り飲食物(香草入り調味酢)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、香辛料、水、卵、油、調味料(砂糖、塩、MSG)を用いて酢入り飲食物の一例としての香辛料入り調味酢を調製した。調製した香辛料入り調味酢の配合及び、香辛料の配合は表60の通りである。
香辛料0.8~2.5g、水0~1.7gの範囲で、卵14.52g、油65.4g、調味料(砂糖・塩・MSG)3.06gとGA酢を14.52gで、合計100gになるように、香辛料入り調味酢を調製した。加えた香辛料の内訳は、からし76.72%、こしょう15.65%、シナモン3.82%、オールスパイス1.91%、クローブ1.91%とした。香辛料入りマヨネーズ風調味料といえる香辛料入り調味酢を調製したものである。
この際、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製した香辛料入り調味酢中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.07、0.1 、0.3、1.1%、酢酸濃度はそれぞれ0.6、0.6、0.5、0.3%とした。
表61~表64に示したように香辛料入り調味酢全体に占める香辛料の割合を5段階に分けて5種類の香辛料入り調味酢を調製した。
この5種類の香辛料入り調味酢について、表61~表64にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより香辛料入り調味酢における香辛料の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:香辛料の香りが強い、4:香辛料の香りがやや強い、3:香辛料の香りがやや弱い、2:香辛料の香りが弱い、1:香辛料の香りがない、の5段階で評価した。
5種類の香辛料入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表61~表64のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、5種類の比較対象の香辛料入り調味酢を調製し、この5種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で香辛料入り調味酢における香辛料の香りの強さについて官能比較を行った。
5種類の比較対象の香辛料入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表65のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
この結果をとりまとめたものが表66である。表66において、GA欄が表61~表64に官能評価結果が示されているGA酢を使用している香辛料入り調味酢である。また、AA欄が表65に官能評価結果が示されている、比較対象の香辛料入り調味酢である。
表66の各欄には表61~表65に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表66に示されているように、香辛料入り調味酢調味料全体に占める香辛料の割合が1.3%以上であれば、グルコン酸含有酢(=GA酢)を用いることにより、比較対象の香辛料入り調味酢よりも香辛料の香りが強くなることを確認できた。また、香辛料入り調味酢調味料全体に占める香辛料の割合が0.8%の場合でも、グルコン酸比率40%以上のGA酢を用いると、比較対象の香辛料入り調味酢よりも香辛料の香りが強くなることを確認できた。
いずれにおいても、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が、香辛料入り調味酢における香辛料の香りをより強く感じることを確認できた。
AA酢で調製した香辛料入り調味酢では調味酢全体に占める「香辛料」の比率2.5%の時に最高の評価点3.7であったが、GA酢で調製した香辛料入り調味酢では調味酢全体に占める「香辛料」の比率1.8%の時点で、既に評価点3.7であった。
このように、表61~表66の評価結果から、GA酢で調製した香辛料入り調味酢では、AA酢で調製した香辛料入り調味酢と比較して香辛料の配合率を低減しても、香辛料の配合率が高いAA酢で調製した香辛料入り調味酢と同等の原料素材(香辛料)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させて香辛料入り調味酢を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した香辛料入り調味酢に比較して、酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)に添加される原料素材(香辛料)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の香辛料入り調味酢に添加されている原料素材(香辛料)の使用量に比較して少ない原料素材(香辛料)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した香辛料入り調味酢は、原料素材(香辛料)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した香辛料入り調味酢に比較して、香辛料入り調味酢に添加される原料素材(香辛料)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の香辛料入り調味酢に添加されている原料素材(香辛料)の使用量に比較して少ない原料素材(香辛料)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した香辛料入り調味酢は、原料素材(香辛料)に由来する香りを強く感じることができる。
表60の配合に記載されている原料素材の市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製した酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)について製造コストの検討を行った。
比較対象の酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)では香辛料入り調味酢全体に占める香辛料の割合が2.5%で評価点3.7であった(表66)。
これに対してGA酢を使用している酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)では、グルコン酸比率80%で香辛料入り調味酢全体に占める香辛料の割合が1.8で評価点3.7であった(表66)。
評価点3.7を得ている、80%比率のGA酢を使用している酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)で、香辛料入り調味酢全体に占める香辛料の割合が1.8%の時の原材料代金は、表60の配合で527円/kgと計算された。
一方、評価点3.7を得ている、香辛料入り調味酢全体に占める香辛料の割合が2.5%である比較対象の酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)の原材料代金は、表60の配合で535円/kgと計算された。
そこで、評価点3.7を得ている酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)1kgあたりで535円-517円=18円/kgの製造コスト削減となり、約3%のコスト削減率となっていた。
GA酢を含有させて酢入り飲食物(香辛料入り調味酢)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、醤油、水を用いて酢入り飲食物の一例としての調味酢(醤油入り調味酢)を調製した。調製した調味酢(醤油入り調味酢)の配合は表67の通りである。
醤油は1.5g~15g、水は0g~13.5gの範囲で、GA酢31.5gを加えて合計が100gになるように調味酢(醤油入り調味料)を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製した酢飲料調味酢(醤油入り調味酢)中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.14 、0.3、0.7、2.4%、酢酸濃度はそれぞれ1.3、1.2、1.1、0.6%とした。醤油の配合率を1.5~15.0%の範囲で表68~表71のように6段階に分けて醤油入り調味酢調味酢(醤油入り調味料)を調製した。
この6種類の醤油入り調味酢について、表68~表71にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより醤油入り調味酢における醤油の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:醤油の香りが強い、4:醤油の香りがやや強い、3:醤油の香りがやや弱い、2:醤油の香りが弱い、1:醤油の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の醤油入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表68~表71のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の醤油入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で醤油入り調味酢における醤油の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の醤油入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表72のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表73である。表73において、GA欄が表68~表71に官能評価結果が示されているGA酢を使用している醤油入り調味酢である。また、AA欄が表72に官能評価結果が示されている、比較対象の醤油入り調味酢である。
表73の各欄には表68~表72に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表73に示されているように、醤油入り調味酢全体に占める醤油の割合が1.5%、10.5%、15.0の時、グルコン酸比率20%以上の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の醤油入り調味酢よりも醤油汁の香りが強くなることを確認できた。
また、醤油入り調味酢全体に占める醤油の割合が6種類のどの場合でも、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が、醤油入り調味酢における醤油の香りが強くなる傾向にあった。
AA酢で調製した醤油入り調味酢では調味酢全体に占める醤油の割合が15.0%の時に評価点4.5であったが、グルコン酸比率40%以上のGA酢で調製した醤油入り調味酢では調味酢全体に占める醤油の割合が13.5%の時に評価点4.5であった。
また、AA酢で調製した醤油入り調味酢では調味酢全体に占める醤油の割合が13.5%の時に評価点4.2であったが、グルコン酸比率80%のGA酢で調製した醤油入り調味酢では調味酢全体に占める醤油の割合が10.5%の時に評価点4.3であった。
このように、表68~表73の評価結果から、GA酢で調製した醤油入り調味酢では、AA酢で調製した醤油入り調味酢と比較して醤油の配合率を低減しても、醤油の配合率が高いAA酢で調製した醤油入り調味酢と同等の原料素材(醤油)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させて醤油入り調味料のような調味酢を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した調味酢(醤油入り調味酢)に比較して、調味酢(醤油入り調味酢)に添加される原料素材(醤油)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の調味酢(醤油入り調味酢)に添加されている原料素材(醤油)の使用量に比較して少ない原料素材(醤油)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した調味酢(醤油入り調味酢)は、原料素材(醤油)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した調味酢(醤油入り調味酢)に比較して、調味酢(醤油入り調味酢)に添加される原料素材(醤油)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の調味酢(醤油入り調味酢)に添加されている原料素材(醤油)の使用量に比較して少ない原料素材(醤油)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した調味酢(醤油入り調味酢)は、原料素材(醤油)に由来する香りを強く感じることができる。
GA酢を含有させて酢入り調味酢(醤油入り調味料)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できる可能性があることを確認できた。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用い、この食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、りんご果汁、水を用いて酢入り飲食物の一例としてのりんご果汁入りゼリーを調製した。調製したりんご果汁入りゼリーの配合は表74の通りである。
りんご果汁は14.4g~20.6g、水は45.4g~51.6gの範囲で、GA酢7.3gを加えて合計が100gになるようにりんご果汁入りゼリーを調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製したりんご果汁入りゼリー中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.03、0.1、0.2、0.6%、酢酸濃度はそれぞれ0.3、0.3、0.3、0.1%とした。りんご果汁の配合率を14.4~20.6%の範囲で表75~表78のように5段階に分けてりんご果汁入りゼリーを調製した。
この5種類のりんご果汁入りゼリーについて、表75~表78にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーによりりんご果汁入りゼリーにおけるりんご果汁の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:りんご果汁の香りが強い、4:りんご果汁の香りがやや強い、3:りんご果汁の香りがやや弱い、2:りんご果汁の香りが弱い、1:りんご果汁の香りがない、の5段階で評価した。
5種類のりんご果汁入りゼリーそれぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表75~表78のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、5種類の比較対象のりんご果汁入りゼリーを調製し、この5種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価でりんご果汁入りゼリーにおけるりんご果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
5種類の比較対象のりんご果汁入りゼリーそれぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表79のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表80である。表80において、GA欄が表75~表78に官能評価結果が示されているGA酢を使用しているりんご果汁入りゼリーである。また、AA欄が表79に官能評価結果が示されている、比較対象のりんご果汁入りゼリーである。
表80の各欄には表75~表79に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表80に示されているように、りんご果汁の配合率が異なる5種類のりんご果汁入りゼリーのいずれにおいても、グルコン酸比率10%以上の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象のりんご果汁入りゼリーよりもりんご果汁の香りが強くなることを確認できた。
また、りんご果汁の配合率が異なる5種類のりんご果汁入りゼリーのいずれにおいても、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が、りんご果汁入りゼリーにおけるりんご果汁の香りが強くなる傾向にあった。
AA酢で調製したりんご果汁入りゼリーでは酢全体に占めるりんご果汁の割合が20.6%の時に評価点3.2であったが、グルコン酸比率20%以上のGA酢で調製したりんご果汁入りゼリーでは全体占めるりんご果汁の割合が18.5%の時に評価点3.3以上であった。
また、AA酢で調製したりんご果汁入りゼリーでは酢全体に占めるりんご果汁の割合が20.6%の時に評価点3.2であったが、グルコン酸比率40%以上のGA酢で調製したりんご果汁入りゼリーでは全体占めるりんご果汁の割合が16.5%の時に評価点3.2であった。
このように、表75~表80の評価結果から、GA酢で調製したりんご果汁入りゼリーでは、AA酢で調製したりんご果汁入りゼリーと比較してりんご果汁の配合率を低減しても、りんご果汁の配合率が高いAA酢で調製したりんご果汁入りゼリーと同等の原料素材(りんご果汁)の香りを感じられることを確認できた。
このことから、GA酢を含有させてりんご果汁入りゼリーのような酢入り飲食品を調製すると、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に比較して、酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に添加される原料素材(りんご果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に添加されている原料素材(りんご果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(りんご果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)は、原料素材(りんご果汁)に由来する香りを強く感じることができることを確認できた。
上述したように、GA酢に替えてAA酢を含有させて調製した酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に比較して、酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に添加される原料素材(りんご果汁)の使用量を多くすることなく、また、AA酢を含有させて調製した比較対象の酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)に添加されている原料素材(りんご果汁)の使用量に比較して少ない原料素材(りんご果汁)の使用量でも、GA酢を含有させて調製した酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)は、原料素材(りんご果汁)に由来する香りを強く感じることができる。
表74の配合に記載されている原料素材の市販品の標準的な価格を参考にして、この実施例で調製したりんご果汁入りゼリーについて製造コストの検討を行った。
比較対象のりんご果汁入りゼリーではりんご果汁入りゼリー全体に占めるリンゴ果汁の割合が20.6%の時に評価点3.2であった(表80)。
評価点3.2を得ている、80%比率のGA酢を使用しているりんご果汁入りゼリーで、りんご果汁入りゼリー全体に占めるりんご果汁の割合が16.5%の時の原材料代金は、表74の配合で111円/kgと計算された。
一方、評価点3.2を得ている、りんご果汁入りゼリー全体に占めるりんご果汁の割合が20.6%である比較対象のりんご果汁入りゼリーの原材料代金は、表74の配合で121円/kgと計算された。
そこでりんご果汁入りゼリー1kgあたりで121円-111円=10円/kgの製造コスト削減となり、約8%のコスト削減率となっていた。
このことから、GA酢を含有させて酢入り飲食品(りんご果汁入りゼリー)を調製することで原料素材の使用量を減少させ、ひいては製造コストを低減させて、消費者に対してより安価に製品を提供できることを確認できた。
発酵法により生産されたグルコン酸含有酢(=GA酢)でも前述した実施例で確認できた効果が発揮されるかについて検討を行った。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を発酵法を用いて調製した。この発酵法を用いて調製した食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、柑橘果汁(ゆず果汁)、水を用いて酢入り飲食物の一例としての調味酢(柑橘果汁入り調味酢)を調製した。調製した調味酢(柑橘果汁入り調味酢)の配合は表81の通りである。
柑橘果汁(ゆず果汁)は3g~10g、水は3g~10gの範囲で、GA酢51.5gを加えて合計が100g になるように柑橘果汁入り調味酢を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製した柑橘果汁入り調味酢中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.2 、0.5、1.2、3.9%、酢酸濃度はそれぞれ2.1、2.0、1.8、1.0%とした。柑橘果汁(ゆず果汁)の配合率を3.0~10.0%の範囲で表82~表85のように6段階に分けて調味酢(柑橘果汁入り調味酢)を調製した。
この6種類の柑橘果汁入り調味酢について、表82~表85にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより柑橘果汁入り調味酢における柑橘果汁(ゆず果汁)の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:ゆず果汁の香りが強い、4:ゆず果汁の香りがやや強い、3:ゆず果汁の香りがやや弱い、2:ゆず果汁の香りが弱い、1:ゆず果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表82~表85のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢におけるゆず果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表86のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表87である。表87において、GA欄が表82~表85に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表86に官能評価結果が示されている、比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
表87の各欄には表82~表86に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表87に示されているように、柑橘果汁入り調味酢全体に占める柑橘果汁(ゆず果汁)の割合がいずれの場合であっても、グルコン酸比率10%以上の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の柑橘果汁入り調味酢よりもゆず果汁の香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製した柑橘果汁入り調味酢では全体に占める果汁(ゆず果汁)の割合が10.0%の時に評価点4.0であったが、GA酢で調製した柑橘果汁入り調味酢ではグルコン酸比率40%以上で全体に占める果汁(ゆず果汁)の割合が8.0%の時に評価点4.0、グルコン酸比率80%で全体に占める果汁(ゆず果汁)の割合が7.0%の時に評価点4.2であった。
この結果、発酵法により生産されたGA酢でも上述している実施例で確認できた効果が発揮されていた。
米由来のグルコン酸含有酢(=GA酢)でも前述した実施例で確認できた効果が発揮されるかについて検討を行った。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を原料に米を用いて調製した。原料に米を用いて調製したこの食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)と、柑橘果汁(ゆず果汁)、水を用いて酢入り飲食物の一例としての調味酢(柑橘果汁入り調味酢)を調製した。調製した調味酢(柑橘果汁入り調味酢)の配合は表88の通りである。
柑橘果汁(ゆず果汁)は3g~10g、水は3g~10gの範囲で、GA酢51.5gを加えて合計が100g になるように柑橘果汁入り調味酢 を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製した柑橘果汁入り調味酢中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.2 、0.5、1.2、3.9%、酢酸濃度はそれぞれ2.1、2.0、1.8、1.0%とした。柑橘果汁(ゆず果汁)の配合率を3.0~10.0%の範囲で表89~表92のように6段階に分けて柑橘果汁入り調味酢を調製した。
この6種類の調味酢(柑橘果汁入り調味酢)について、表89~表92にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより調味酢(柑橘果汁入り調味酢)における柑橘果汁(ゆず果汁)の香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:ゆず果汁の香りが強い、4:ゆず果汁の香りがやや強い、3:ゆず果汁の香りがやや弱い、2:ゆず果汁の香りが弱い、1:ゆず果汁の香りがない、の5段階で評価した。
6種類の調味酢(柑橘果汁入り調味酢)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表89~表92のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢を調製し、この6種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で柑橘果汁入り調味酢におけるゆず果汁の香りの強さについて官能比較を行った。
6種類の比較対象の柑橘果汁入り調味酢それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表93のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表94である。表94において、GA欄が表89~表92に官能評価結果が示されているGA酢を使用している柑橘果汁入り調味酢である。また、AA欄が表93に官能評価結果が示されている、比較対象の柑橘果汁入り調味酢である。
表94の各欄には表89~表93に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表94に示されているように、柑橘果汁入り調味酢全体に占める柑橘果汁(ゆず果汁)の割合がいずれの場合であっても、グルコン酸比率10%以上の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の柑橘果汁入り調味酢よりもゆず果汁の香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製した柑橘果汁入り調味酢では全体に占める果汁(ゆず果汁)の割合が10.0%の時に評価点3.7であったが、GA酢で調製した柑橘果汁入り調味酢ではグルコン酸比率40%以上で全体に占める果汁(ゆず果汁)の割合が8.0%の時に評価点4.0であった。
この結果、米由来のGA酢でも上述している実施例で確認できた効果が発揮されることを確認できた。
実施例5の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)の調製にあたって果実系のグルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いて検討を行った。
表1に従い、総酸度(酢酸換算)4.20%、グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を調製する際、果実系のグルコン酸含有酢(=GA酢)(この実施例では、従来公知のりんご酢)として調製を行った。
この果実系のグルコン酸含有酢(=GA酢)(りんご酢)と、りんご果汁、水を用いて酢入り飲食物の一例としての酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)の配合は表95の通りである。
りんご果汁は9.1g~90.9g、水は0g~81.8gの範囲で、GA酢9gを加えて合計が100gになるように酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。グルコン酸比率10%、20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を加えるにあたって、調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)中のグルコン酸の濃度はそれぞれ0.04、0.1 、0.2、0.7%、酢酸濃度はそれぞれ0.4、0.4、0.3、0.2%とした。りんご果汁の配合率を9.1~90.9%の範囲で表96~表99のように8段階に分けて酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製した。
この8種類の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)について、表96~表99にA、B、C、D、E、Fで示している6名の官能パネラーにより酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)におけるりんごの香りの強さについて官能比較を行った。官能評価は、5:りんごの香りが強い、4:りんごの香りがやや強い、3:りんごの香りがやや弱い、2:りんごの香りが弱い、1:りんごの香りがない、の5段階で評価した。
8種類の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表96~表99のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
次に、GA酢に替えてアルコール酢(酢酸換算酸度=4.2%)(=AA酢)を用いた以外は上記と同じにして、8種類の比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)を調製し、この8種類のそれぞれについても、上述したのと同様に、6名の官能パネラー(A、B、C、D、E、F)により、上述の5段階評価で酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)におけるりんごの香りの強さについて官能比較を行った。
8種類の比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)それぞれについて各パネラーが下した官能評価点数は表100のA、B、C、D、E、F欄に記載されている通りであった。
以上の結果をとりまとめたものが表101である。表101において、GA欄が表96~表99に官能評価結果が示されているGA酢を使用している酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)である。また、AA欄が表100に官能評価結果が示されている、比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)である。
表101の各欄には表96~表100に示した6名の官能パネラーがそれぞれの試料に対して下した官能評価点を平均した得点を記載している。
表101に示されているように、飲料全体に占めるりんご果汁の割合が18.2%以上になると、グルコン酸比率20%、40%、80%の食酢(=グルコン酸含有酢)(=GA酢)を用いることにより、比較対象の酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)よりもりんご果汁の香りが強くなることを確認できた。
この傾向は、グルコン酸比率10%の場合よりも20%の場合、20%の場合よりも40%の場合、40%の場合よりも80%の場合の方が強く見られた。
AA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるリンゴ果汁の割合が90.9%の時に評価点4.2であったが、GA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)ではグルコン酸比率40%以上で飲料全体に占めるリンゴ果汁の割合が72.7%の時に評価点4.3であった。
AA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)では飲料全体に占めるりんご果汁の割合が72.7%の時に評価点3.7であったが、GA酢で調製した酢飲料(りんご果汁入り酢飲料)ではグルコン酸比率40%以上で飲料全体に占めるリンゴ果汁の割合が63.6%の時に評価点3.8であった。
この結果、果実系のグルコン酸含有酢(=GA酢)でも上述している実施例で確認できた効果が発揮されることを確認できた。
本発明の実施形態に係るグルコン酸含有酢(=GA酢)を発酵によって製造する場合、微量の2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸が産生される。
発酵によって本発明の実施形態に係るグルコン酸含有酢(=GA酢)を製造する際の2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸の産生量を検討した。
発酵の経過時間と産生される2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸の量を測定したところ表102の結果となった。
表102において、day欄は発酵開始からの経過日数、GA欄、AA欄はそれぞれグルコン酸及び酢酸の量(質量%)、2-ケトグルコン酸、5-ケトグルコン酸の欄はそれぞれ2-ケトグルコン酸及び5-ケトグルコン酸の量(質量%)である。
表102で発酵開始から6.5日経過時点での計測でグルコン酸の量が最大となった。このとき、2及び5-ケトグルコン酸の総量はグルコン酸1質量%あたり16.9%であった。
発明者の検討によれば、発酵開始後、発酵のどの時点においても、2及び5-ケトグルコン酸の総量はグルコン酸1質量%あたり少なくとも0.1%以上であることを確認できた。
本発明に係るグルコン酸含有酢(=GA酢)を発酵によって製造する場合、生成される2-ケトグルコン酸と5-ケトグルコン酸との総量はグルコン酸1質量%あたり0.1%以上になると認められた。