以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の水処理装置の第1の実施の形態を示す図である。本形態における水処理装置は図1に示すように、流量計110と、温度計120と、活性炭ろ過器130と、制御部140とを有する。
流量計110は、本水処理装置への被処理水の単位時間当たりの通水流量(以下、「通水流量」または単に「流量」と称する。)を測定する。温度計120は、被処理水の水温を測定する。活性炭ろ過器130は、被処理水に含まれる残留遊離塩素を被処理水から除去する。制御部140は、流量計110が測定した通水流量と、温度計120が測定した水温と、残留遊離塩素の濃度とに基づいて、活性炭ろ過器130が残留遊離塩素を除去する能力を判定する。ここで、残留遊離塩素の濃度は、あらかじめ設定されているものであっても良いし、システムの管理者や運用者によって外部から定期的に設定(更新)されるものであっても良い。制御部140が行う判定は、活性炭ろ過器130が交換時期に近づいているかどうかを判定するものである。つまり、活性炭ろ過器130に被処理水を通すことで、活性炭ろ過器130における残留遊離塩素の除去能力が低下してきて、除去能力を十分に発揮することができなくなった状態に近くなったかどうかを判定するものである。なお、流量計110および温度計120は、活性炭ろ過器130の後段(下流側)に設けられていても良い。
本発明者らは、実験によって、被処理水の水温、流量および残留遊離塩素の濃度のそれぞれが、活性炭ろ過器130の収量と相関があるという結果を得た。以下にその実験の結果を示す。なお、実験で用いた標準条件は、水温を20(℃)、SV(空間速度Space Velocityとは、単位時間あたりに原水がろ過層に接触する時間の逆数)を68.4(1/hr)、残留遊離塩素の濃度を1(mg/L)とした。また、実験では、水温を5から40(℃)、SVを40から100(1/hr)、残留遊離塩素の濃度を0.5から2(mg/L)の範囲で変化させた。また、活性炭は粒状活性炭5Lを用い、FRP製の塔に入れて使用した。また、実験では連続通水運転を行った。また、DPD試薬による比色で検知できる最小限の濃度である0.02mg/Lがリークするまでの積算通水量を収量とした。なお、具体的な変数は活性炭の種類に応じて異なる。
図2は、実験で得られた、水温を変化させたときの活性炭ろ過器130の収量の変化を示すグラフである。図2に示すように、水温x(℃)と活性炭ろ過器130の収量y(m3)との関係は一次関数となった。
y=ax+b … (式1)
図3は、実験で得られた、SVを変化させたときの活性炭ろ過器130の収量の変化を示すグラフである。図3に示すように、SVx(1/hr)と活性炭ろ過器130の収量y(m3)との関係は累乗関係となった。
y=cxd … (式2)
図4は、実験で得られた、残留遊離塩素の濃度を変化させたときの活性炭ろ過器130の収量の変化を示すグラフである。図4に示すように、残留遊離塩素の濃度x(mg/L)と活性炭ろ過器130の収量y(m3)との関係は累乗関係となった。
y=mxn … (式3)
なお、上述した(式1)のaおよびb、(式2)のcおよびd、(式3)のmおよびnは、水温、通水流量(SV)および残留遊離塩素の濃度それぞれと、活性炭ろ過器130の収量との相関を求める実験から得た係数である。
また、制御部140は、(式1)~(式3)の相関式を用いて、補正係数および換算収量を算出する。例えば、水温が15℃、流量SVが62、残留遊離塩素の濃度が0.5mg/Lで通水している場合を例に挙げる。15℃の水温の補正係数(水温補正係数)は、
(a×15+b)÷標準収量
となる。同様に、SV62(1/hr)の流量の補正係数(流量補正係数)は、
(c×62d)÷標準収量
となる。同様に、0.5mg/Lの残留遊離塩素の濃度の補正係数(濃度補正係数)は、
(m×0.5n)÷標準収量
となる。また、換算収量は、
換算収量=(標準収量)×(換算係数) … (式4)
である。ここで、標準収量は上述したように、標準条件の実験から求めた、活性炭ろ過器130の種類と量とに基づいて定める固定値である。また、換算係数は、
換算係数=(水温補正係数)×(流量補正係数)×(濃度補正係数) … (式5)
である。このように換算収量は、水温、流量および残留遊離塩素の濃度に応じて変化する。例えば、標準条件よりも、水温が低く、流量が多く、残留遊離塩素の濃度が高い場合、換算収量の値はさらに小さな値となる。一方、標準条件よりも、水温が高く、流量が少なく、残留遊離塩素の濃度が低い場合、換算収量の値はさらに大きな値となる。
制御部140は、算出した換算収量に対する積算通水量の割合を収量比として算出する。
収量比=(積算通水量)/(換算収量) … (式6)
例えば、積算通水量が1200m3、換算収量が3000m3である場合、制御部140は収量比を
1200/3000×100=40%
と算出する。制御部140は、算出した収量比に基づいて、活性炭ろ過器130が残留遊離塩素を除去する能力を判定する。この収量比は、現在の給水条件において活性炭ろ過器130が十分に機能を発揮できなくなる期限(残留遊離塩素を後段へリークし始める)までの割合を示す。
制御部140は、あらかじめ設定された閾値と算出した収量比とを比較する。算出した収量比が閾値以上である場合、制御部140は、所定の通知を行う。例えば、閾値が80%であって、算出した収量比が90%である場合、制御部140は通知を行う。この通知について、いくつか例を挙げる。例えば、制御部140は、水処理装置に設けられた警告灯等を点灯させるものであっても良いし、水処理装置に設けられたディスプレイ等の表示部に所定の表示を行わせるものであっても良い。また、制御部140は、水処理装置から所定の音を出力させるものであっても良い。また、制御部140は、水処理装置と接続された他の装置やシステムに対して、活性炭ろ過器130の使用期限(交換時期)が近いことを知らせるための所定の信号を送信するものであっても良い。
このように制御部140が通知を行うことで、残留遊離塩素のリークのリスクの大きさを活性炭ろ過器130から残留遊離塩素がリークする前に知ることができる。
以下に、図1に示した水処理装置を管理する装置管理方法について説明する。図5は、図1に示した水処理装置を管理する装置管理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
温度計120が被処理水の水温を測定する(ステップS1)。また、流量計110が、被処理水の流量を測定する(ステップS2)。このステップS1の処理と、ステップS2の処理とは、どちらを先に行っても良く、また同時に行っても良く、その順序は規定しない。続いて、制御部140は、温度計120が測定した水温と、(式1)の相関式とを用いて、水温補正係数を算出する。また、制御部140は、流量計110が測定した流量と、(式2)の相関式とを用いて、流量補正係数を算出する。また、制御部140は、残留遊離塩素の濃度と、(式3)の相関式とを用いて、濃度補正係数を算出する。このように、制御部140は、補正係数を算出する(ステップS3)。続いて、制御部140は、算出した補正係数に基づいて(式4)および(式5)を用いて換算収量を算出する(ステップS4)。そして、制御部140は、算出した換算収量と積算通水量とに基づいて(式6)を用いて収量比を算出する(ステップS5)。
続いて、制御部140は、算出した収量比とあらかじめ設定された閾値とを比較し、収量比の値が閾値以上かどうかを判定する(ステップS6)。収量比の値が閾値以上である場合、制御部140は所定の通知を行う(ステップS7)。一方、収量比の値が閾値以上でない場合は、制御部140は通知を行わない。
なお、上述した処理は、所定のタイミングで行われる。例えば、上述した処理は、1日間や1週間という間隔で周期的に行われるものであっても良い。また、水処理装置は、ステップS1~S5までの処理を1分間ごとに行い、1分間ごとに算出された収量比の1日間での平均値を算出し、平均値を用いてステップS6,S7の処理を1日単位で行うものであっても良い。
また、制御部140は、通知を行った後、活性炭ろ過器130への被処理水の通水流量を少なくするように制御するものであっても良い。また、制御部140は、通知を行った後、被処理水の水温を上げるように制御するものであっても良い。
このように、本形態における水処理装置は、被処理水の流量および水温を測定し、流量、水温および被処理水の残留遊離塩素の濃度といった現在の環境に基づいて、活性炭ろ過器を一例に挙げた活性炭が残留遊離塩素を除去する能力を判定し、判定した能力が所定の基準以上である場合、通知を行う。そのため、活性炭の能力を環境に応じて判定することができる。
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の水処理装置の第2の実施の形態を示す図である。本形態における水処理装置は図1に示すように、流量計110と、温度計120と、活性炭ろ過器130と、制御部141と、濃度計150とを有する。
流量計110、温度計120および活性炭ろ過器130は、図1に示した第1の実施の形態におけるものと同じものである。濃度計150は、被処理水に含まれる残留遊離塩素の濃度を測定する。制御部141は、温度計120が測定した水温と、流量計110が測定した通水流量と、濃度計150が測定した残留遊離塩素の濃度とに基づいて、活性炭ろ過器130が残留遊離塩素を除去する能力を判定する。制御部141の動作と、図1に示した制御部140の動作とで異なる点は、制御部141が、活性炭ろ過器130が残留遊離塩素を除去する能力を判定するために用いる残留遊離塩素の濃度の値が、あらかじめ設定されている値ではなく、濃度計150が測定した値であるということである。なお、流量計110および温度計120は、活性炭ろ過器130の後段(下流側)に設けられていても良い。また、濃度計150は、活性炭ろ過器130の前段(上流側)に設けられる。
以下に、図6に示した水処理装置を管理する装置管理方法について説明する。図7は、図6に示した水処理装置を管理する装置管理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
温度計120が被処理水の水温を測定する(ステップS11)。また、流量計110が、被処理水の流量を測定する(ステップS12)。また、濃度計150が、被処理水の残留遊離塩素の濃度を測定する(ステップS13)。このステップS11~13の処理を行う順序は規定しない。つまり、ステップS13に処理を行った後、ステップS12の処理を行い、続いてステップS11の処理を行うものであっても良いし、ステップS11~S13の処理を互いに同じタイミングで行うものであっても良い。続いて、制御部141は、温度計120が測定した水温と、(式1)の相関式とを用いて、水温補正係数を算出する。また、制御部141は、流量計110が測定した流量と、(式2)の相関式とを用いて、流量補正係数を算出する。また、制御部141は、濃度計150が測定した残留遊離塩素の濃度と、(式3)の相関式とを用いて、濃度補正係数を算出する。このように、制御部141は、補正係数を算出する(ステップS14)。続いて、制御部141は、算出した補正係数に基づいて(式4)および(式5)を用いて換算収量を算出する(ステップS15)。そして、制御部141は、算出した換算収量と積算通水量とに基づいて(式6)を用いて収量比を算出する(ステップS16)。
続いて、制御部141は、算出した収量比とあらかじめ設定された閾値とを比較し、収量比の値が閾値以上かどうかを判定する(ステップS17)。収量比の値が閾値以上である場合、制御部141は所定の通知を行う(ステップS18)。一方、収量比の値が閾値以上でない場合は、制御部141は通知を行わない。
なお、上述した処理は、所定のタイミングで行われる。例えば、上述した処理は、1日間や1週間という間隔で周期的に行われるものであっても良い。また、水処理装置は、ステップS11~S16までの処理を1分間ごとに行い、1分間ごとに算出された収量比の1日間での平均値を算出し、平均値を用いてステップS17,S18の処理を1日単位で行うものであっても良い。
また、制御部141は、通知を行った後、活性炭ろ過器130への被処理水の通水流量を少なくするように制御するものであっても良い。また、収量比が閾値を超えた通知が発生しやすい通水条件である場合(例えば、低温となる状況が多い地域)は、制御部141は、被処理水の水温を上げるように制御するものであっても良い。
ここで、自動流量調整機能を搭載した水処理装置について、例を挙げて説明する。図8は、自動流量調整機能を搭載した水処理装置である膜ろ過装置の一実施形態を示す図である。図8に示すように、本実施形態の膜ろ過装置10は、原水(被処理水)に含まれる不純物を除去して処理水を生成する装置であって、原水を、不純物を含む濃縮水と、不純物が除去された透過水とに分離するろ過手段11を有する。ろ過手段11は、逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)を有する。
また、膜ろ過装置10は、ろ過手段11にそれぞれ接続された複数のライン、すなわち、ろ過手段11に原水を供給する供給ライン1と、ろ過手段11からの透過水を流通させる透過水ライン2と、ろ過手段11からの濃縮水を流通させる濃縮水ライン3とを有する。加えて、膜ろ過装置10は、濃縮水ライン3から分岐した2つのライン、すなわち、濃縮水ライン3を流れる濃縮水の一部を外部へ排出する排水ライン4と、濃縮水の残りを供給ライン1に還流させる還流水ライン5とを有する。還流水ライン5は、濃縮水ライン3から分岐した後、後述する加圧ポンプ21の上流側で供給ライン1に接続されている。なお、還流水ライン5は、供給ライン1に直接接続される代わりに、供給ライン1に設けられた原水タンク(図示せず)に接続されていてもよい。
さらに、膜ろ過装置10は、透過水ライン2を流れる透過水の流量を検出する透過水流量計(第1の流量検出手段)12と、その流量を設定流量に調整する透過水流量制御機構(第1の流量制御手段)20を有する。
透過水流量制御機構20は、供給ライン1に設けられ、供給ライン1を流れる原水の圧力(ろ過手段11への原水の供給圧力)を調整する加圧ポンプ(圧力調整手段)21と、透過水流量計12による透過水の検出流量(検出値)に基づいて、加圧ポンプ21を制御する透過水流量制御部22とを有する。
透過水流量制御部22は、加圧ポンプ21の回転数を制御するインバータ(図示せず)を含み、透過水流量計12が検出する透過水の流量が一定になるように、加圧ポンプ21の回転数を制御する。例えば、水温が変化すると、水の粘性が変化することで、RO膜またはNF膜で分離される透過水の流量も変化する。この変化に応じて、透過水流量制御部22は、加圧ポンプ21の回転数を制御する。すなわち、水温が低くなると、水の粘性は高くなり、その結果、RO膜またはNF膜で分離される透過水の流量は減少する。そのため、透過水流量制御部22は、この減少分を補うように、加圧ポンプ21の回転数を上げることで、原水の供給圧力を増加させる。また、水温が高くなると、水の粘性は低くなり、その結果、RO膜またはNF膜で分離される透過水の流量は増加する。そのため、透過水流量制御部22は、この増加分を打ち消すように、加圧ポンプ21の回転数を下げることで、原水の供給圧力を低下させる。なお、加圧ポンプ21の回転数が、あらかじめ設定された上限値を上回ったり、同じくあらかじめ設定された下限値を下回ったりしないように、透過水流量制御部22がその回転数を制御する。そのため、加圧ポンプ21の回転数が下限値になるように制御された場合でも、透過水の流量が設定流量を上回ってしまう場合がある。このような場合を考慮して、加圧ポンプ21とろ過手段11との間に、原水の供給圧力を調整するための手動弁や比例制御弁が設けられていてもよい。
このように、本実施形態では、加圧ポンプ21の回転数、すなわち原水の供給圧力を調整することで、透過水の流量は一定(あらかじめ設定された目標流量)に維持されるが、その原水の供給圧力の変化に応じて、RO膜またはNF膜で分離される濃縮水の流量も変化することになる。このような濃縮水の流量変化そのものを抑制するために、濃縮水ライン3には、濃縮水ライン3を流れる濃縮水の流量を一定に保持する定流量弁13が設けられている。これにより、透過水流量制御部22が加圧ポンプ21の回転数を変化させて、ろ過手段11への原水の供給圧力が変化した場合にも、濃縮水の流量を一定に保持することができる。
ここで、定流量弁13の規定流量は、一方では、ファウリングやスケーリングによる膜の詰まりが発生しない程度であればよく、他方では、圧力損失の増大によって膜を破損させない程度であればよい。ただし、定流量弁13の規定流量を必要以上に大きくすることは、加圧ポンプ21に要求される流量が必要以上に大きくなり、結果的に加圧ポンプ21のサイズが大きくなるため、エネルギー消費の点で好ましくない。そのため、定流量弁13の規定流量は、ろ過手段11の透過流束とろ過手段11に要求される濃縮水の最低流量も考慮して設定され、例えば、ろ過手段11として直径が約20.32cm(8インチ)のRO膜を用いる場合、1~15m3/hの範囲である。
ところで、定流量弁13には、定流量弁13を正常に作動させるための作動差圧範囲(定流量弁の一次側と二次側との圧力差の許容範囲)が規定されている。そのため、例えば、ろ過手段11として中高圧用のRO膜を使用する場合や、水温が極端に低下した場合など、条件によっては、原水の供給圧力が著しく上昇して濃縮水の圧力が上昇し、定流量弁13の一次側と二次側との圧力差が作動差圧範囲を超えてしまう場合がある。その場合、濃縮水ライン3を流れる濃縮水の流量が一定に保持されないおそれがある。
そこで、定流量弁13の上流側の濃縮水ライン3に、濃縮水ライン3を流れる濃縮水の圧力を減圧する(すなわち、二次側の圧力を一次側の圧力よりも低くすることができる)減圧弁が設けられていてもよい。これにより、ろ過手段11への原水の供給圧力が著しく上昇する場合であっても、定流量弁13の一次側と二次側との圧力差を作動差圧範囲内に収めて定流量弁13を正常に作動させることができ、濃縮水ライン3を流れる濃縮水の流量を一定に保持することができる。また、減圧弁を設けることで、それよりも下流側の周辺部材(配管など)にそれほどの耐圧性能が要求されなくなる。そのため、減圧弁の設置は、安全面で有利であるだけでなく、耐圧性能がそれほど高くない安価な汎用品が利用可能になることで、コスト面でも有利である。なお、減圧弁の種類は、濃縮水の圧力を定流量弁13の作動差圧範囲内に減圧することができるものであれば特に限定されるものではないが、定流量弁13の規定流量以上の流量が流れるものや、二次側の圧力が排水ライン4や還流水ライン5の通水差圧よりも大きくなるものを選定する必要がある。
上述したように、定流量弁13を設置することで、透過水の流量制御が濃縮水の流量に影響を及ぼすことがなくなり、その結果、排水ライン4または還流水ライン5を流れる濃縮水の流量制御が容易に実行可能になる。そこで、本実施形態の膜ろ過装置10は、排水ライン4を流れる濃縮水(以下、「濃縮排水」と称する)の流量を検出する排水流量計(第2の流量検出手段)14と、その流量を設定流量に調整する排水流量制御機構(第2の流量制御手段)30とを有する。この排水流量制御機構30が行う濃縮排水の流量制御は、透過水流量制御機構20が行う透過水の流量制御とは独立して行われる。
排水流量制御機構30は、排水ライン4に設けられた流量調整弁31と、排水流量計14が検出する濃縮排水の流量(検出値)に基づいて、流量調整弁31の開度を調整する排水流量制御部32とを有する。
排水流量制御部32は、透過水の流量と濃縮排水の流量との和に対する透過水の流量の割合である回収率を考慮して濃縮排水の設定流量を決定し、排水流量計14が検出する検出値がその設定流量となるように、流量調整弁31の開度を調整する。このときの回収率は、水の有効利用(節水)の観点から、できるだけ高いことが好ましい。すなわち、濃縮排水の流量はできるだけ少ないことが好ましい。しかしながら、定流量弁13を用いて濃縮水の流量が一定に保持されているため、濃縮排水の流量が少なくなると、当然のことながら、還流水ライン5から供給ライン1へ還流する濃縮水の流量が増加する。それにより、原水の不純物濃度が高まると、ろ過手段11のRO膜またはNF膜の膜面に不純物(特に、シリカまたはカルシウム)が析出するスケーリングが起こりやすくなってしまう。したがって、濃縮排水の流量は、濃縮水の不純物濃度が溶解度以上の濃度にならない範囲で回収率が最大になるように、すなわち、不純物であるシリカまたはカルシウムが析出しない範囲で回収率が最大になるように設定される。
ただし、不純物の溶解度は、水温に応じて変化する。例えば、シリカの場合、その溶解度は温度上昇に比例して増加し、カルシウム(炭酸カルシウム)の場合、温度が上昇するにつれてその溶解度は減少する。そのため、水温が低い場合には、シリカの溶解度が相対的に低く、シリカが析出しやすい(シリカスケールが発生しやすい)。一方、水温が高くなると、カルシウムの溶解度が相対的に低くなるため、カルシウムが析出しやすく(カルシウムスケールが発生しやすく)なる。そこで、本実施形態では、図示していないが、原水と透過水と濃縮水とのいずれかの水温を検出する温度センサ(水温検出手段)が設けられており、この温度センサが検出した水温に基づいて、濃縮排水の最適な設定流量が算出される。
具体的には、まず、検出された水温でシリカが析出する理論上の回収率(以下、「シリカの析出回収率」と称する)と、検出された水温でカルシウム(炭酸カルシウム)が析出する理論上の回収率(以下「カルシウムの析出回収率」と称する)とが算出される。なお、シリカの析出回収率とカルシウムの析出回収率とのそれぞれの算出方法については後述する。続いて、シリカの析出回収率とカルシウムの析出回収率とが比較され、目標回収率として、より小さな方の析出回収率が設定される。そして、この目標回収率と、透過水流量計12が検出する透過水の流量とに基づいて、以下に示す(式7)を用いて、濃縮排水の目標流量が算出されて設定される。
濃縮排水の目標流量=
(透過水の検出流量/目標回収率)-(透過水の検出流量) … (式7)
スケーリングの発生を確実に抑制するという観点からは、上記(式7)を用いて算出された目標流量を上回る流量を濃縮排水の設定流量として設定することもできるが、節水の観点からは、算出された目標流量を濃縮排水の設定流量として設定することが好ましい。なお、回収率(目標回収率)として、通常は、パーセントで表した値が用いられるが、上記(式7)では、小数で表した値が用いられることは言うまでもない。
以下に、シリカの析出回収率の算出方法とカルシウムの析出回収率の算出方法とについてそれぞれ説明する。
(シリカの析出回収率の算出方法)
シリカの析出回収率YSは、検出された水温でのシリカの溶解度(mg/L)をCSとし、あらかじめ測定された原水のシリカ濃度(mg/L)をFSとすると、以下に示す(式8)を用いて算出される。
YS=(CS-FS)/CS … (式8)
なお、シリカの溶解度の算出方法としては、ASTM(American Society for Testing and Materials)D4993-89などに規定された方法を用いることができる。
(カルシウムの析出回収率の算出方法)
カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数を算出する方法を利用して算出される。ここで、ランゲリア指数(飽和指数)とは、カルシウム(炭酸カルシウム)の析出の可能性を示す指標であり、水の実際のpHと、理論pH(pHs:水中の炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときのpH)との差(pH-pHs)を意味する。すなわち、ランゲリア指数が正の値で絶対値が大きいほど炭酸カルシウムが析出しやすくなり、負の値では炭酸カルシウムは析出されない。そのため、カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数がゼロになるときの回収率として算出される。なお、より安全側の値として設定するために、カルシウムの析出回収率は、濃縮水のランゲリア指数が負の値になるときの回収率であってもよい。
濃縮水のランゲリア指数は、濃縮水のpHと、濃縮水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)と、検出された水温とから算出される。ランゲリア指数の算出方法としては、例えば、特開平11-267687号公報(段落[0025]~[0027])などに記載された方法を用いることができる。また、濃縮水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)は、あらかじめ測定された原水の不純物濃度(カルシウム濃度、総アルカリ度、および蒸発残留物濃度)と、回収率とから算出される。したがって、カルシウムの析出回収率YCは、濃縮水のランゲリア指数がゼロになるときの濃縮水の不純物濃度(mg/L)をCCとし、予め測定された原水の不純物濃度(mg/L)をFCとすると、以下に示す(式9)の関係で表される。
YC=(CC-FC)/CC … (式9)
なお、シリカおよびカルシウムの析出回収率の算出方法や濃縮排水の設定流量の算出方法は、例えば加圧ポンプの容量や原水の流量などの装置設計上の制約によって、回収率や流量にあらかじめ制約がある場合には、上述した限りではない。また、濃縮排水の設定流量の算出には、あらかじめ設定された透過水の目標流量を用いることもできるが、この方法は、透過水の目標流量と実際の流量とが一致していない場合に、実際の回収率が目標回収率からずれる可能性があるため好ましくない。すなわち、透過水の実際の流量が目標流量よりも大きな場合には、実際の回収率が目標回収率を上回ることでスケーリングが発生したりする。一方、透過水の実際の流量が目標流量よりも小さな場合には、実際の回収率が目標回収率を下回ることで節水を図ることができなくなったりする。
したがって、濃縮排水の設定流量の算出には、上述したように、透過水流量計12が検出する透過水の流量を用いることが好ましい。これにより、透過水の流量制御が適切に実施されない事態が発生しても、実際の回収率が目標の回収率からずれることを抑制することができる。なお、実際の算出には、透過水の検出流量のばらつきなどによる影響を最小限に抑えるために、所定検出時間や所定検出回数における平均流量を用いることが好ましい。
ただし、装置起動時や運転再開時など、透過水の流量が安定せず、検出流量のばらつきが非常に大きな場合には、透過水の流量が安定するまでの一定期間、あらかじめ設定された透過水の目標流量を用いて、濃縮排水の設定流量を算出するようになっていてもよい。また、透過水の目標流量と実際の流量との差に応じて、濃縮排水の設定流量の算出に用いる透過水の流量を切り替えるようになっていてもよい。すなわち、その差が所定範囲内にある場合には、目標流量を用いて算出し、その差が所定範囲を外れた場合には、実際の流量を用いて算出するようになっていてもよい。
上述したように回収率制御を行う場合、流量調整弁31として、電動比例制御弁を用いることが好ましい。これにより、電動比例制御弁の分解能に応じて開度調整を細かく行うことができ、電磁弁の組み合わせなどによる段階式での開度調整と比べて、回収率を滑らかに調整することができる。例えば、50~70%の範囲の回収率を5段階(50%、55%、60%、65%、70%)にしか制御できない段階式では、目標回収率が64%に設定された場合、回収率を60%にしか調整することができず、無駄な濃縮排水が発生してしまう。したがって、流量調整弁31として電動比例制御弁を用いることは、このような濃縮排水の無駄も削減することができるため、節水の観点からも有利である。
ただし、流量調整弁31として電動比例制御弁を用いる場合には、その開閉速度と、排水流量制御部32による濃縮排水の設定流量の算出速度(演算速度)との関係に注意が必要である。例えば、これら2つの速度が互いに大きく異なっている場合、電動比例制御弁の開閉が完了して濃縮排水の流量が安定する前に濃縮排水の設定流量が変更されると、ハンチングが発生する可能性がある。また、透過水流量計12が検出する透過水の流量に基づいて濃縮排水の設定流量が決定されるため、濃縮排水の流量制御は、加圧ポンプ21の回転数を制御するインバータの応答速度にも影響を受ける可能性がある。したがって、排水流量制御部32が濃縮排水の設定流量の演算速度を決定する際には、電動比例制御弁の開閉速度とインバータの応答速度とを考慮することが好ましい。なお、本実施形態では、上述したように、定流量弁13を設置することで透過水の流量制御と濃縮水の流量制御とが互いに独立して行われるため、互いの流量制御が干渉することを抑制することができる。その結果、上述のようなハンチングの発生を極力抑制することができ、実際の回収率が目標の回収率からずれることを抑制することができる。このような観点からも、濃縮水ライン3に定流量弁13が設けられていることが好ましい。
さらなる節水を実現するためには、回収率の目標値をより高く設定する必要があるが、本実施形態では、上述した析出回収率をより高くすることを目的として、スケール防止剤を原水に添加するようになっていてもよい。この場合、定流量弁13の規定流量を小さくすることができ、結果として、より小さな容量の加圧ポンプ21を用いることで省エネルギー化を実現することもできる。スケール防止剤の添加は、薬注ポンプを用いて行うことができる。
スケール防止剤は、シリカやカルシウムなどのスケール成分の析出を抑制可能な物質であれば、特定のものに限定されるものではない。その種類としては、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチルホスホン酸などのホスホン酸とその塩類などのホスホン酸系化合物;正リン酸塩、重合リン酸塩などのリン酸系化合物;ポリマレイン酸、マレイン酸共重合物などのマレイン酸系化合物;アクリル酸系ポリマーなどが挙げられ、アクリル酸系ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、マレイン酸/(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸/スルホン酸、(メタ)アクリル酸/ノニオン基含有モノマーなどのコポリマーや、(メタ)アクリル酸/スルホン酸/ノニオン基含有モノマー、(メタ)アクリル酸/アクリルアミド-アルキルスルホン酸/置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸/アクリルアミド-アリールスルホン酸/置換(メタ)アクリルアミドのターポリマーなどが挙げられる。ターポリマーを構成する(メタ)アクリル酸としては、例えば、メタアクリル酸およびアクリル酸と、それらのナトリウム塩などの(メタ)アクリル酸塩などが挙げられる。ターポリマーを構成するアクリルアミド-アルキルスルホン酸としては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とその塩などが挙げられる。また、ターポリマーを構成する置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、t-ブチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。
これらの中でも、ホスホン酸系化合物とアクリル酸系ポリマーとのうち少なくとも1種類を含むものを用いることが好ましい。また、カルシウムとシリカに由来するスケールを同時に抑制するためには、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸と、アクリル酸と(メタ)アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/置換(メタ)アクリルアミドのターポリマーとの混合物とからなるスケール防止剤を用いることが特に好ましい。
なお、RO膜用の市販のスケール防止剤としては、オルガノ株式会社製の「オルパージョン」シリーズ、BWA Water Additives社製の「Flocon(登録商標)」シリーズ、Nalco社製の「PermaTreat(登録商標)」シリーズ、ゼネラル・エレクトリック社製の「Hypersperse(登録商標)」シリーズ、栗田工業株式会社製の「クリバーター(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
上述したように、本実施形態では、定流量弁13を用いて濃縮水の流量が一定に維持されるため、排水ライン4と還流水ライン5との一方を流れる濃縮水の流量を規定するだけで、他方を流れる濃縮水の流量も規定することができる。そのため、図示した実施形態では、排水ライン4に排水流量計14と流量制御手段(流量調整弁31)とが設けられ、還流水ライン5には、排水ライン4および還流水ライン5を流れる濃縮水の圧力バランスを調整するための手動弁(圧力調整弁)15が設けられているが、その逆であってもよい。すなわち、還流水ライン5に、流量計と流量制御手段としての流量調整弁(比例制御弁)とが設けられ、排水ライン4に、圧力バランス調整のための手動弁が設けられていてもよい。あるいは、排水ライン4と還流水ライン5との双方に、流量計と流量制御手段としての流量調整弁(比例制御弁)とを設けることもできる。また、上述した実施形態では、透過水流量制御部と排水流量制御部とが互いに個別に設けられているが、1つの流量制御部が、透過水の流量調整と濃縮排水の流量調整とを行うようになっていてもよい。
また、ろ過手段の数は1つに限定されるものではなく、2つ以上のろ過手段が互いに直列に接続されて設けられていてもよい。その場合にも、定流量弁は、2つ以上のろ過手段のうち最も上流側のろ過手段に接続された濃縮水ラインに設けられ、最も下流側のろ過手段を用いて分離された透過水が設定流量(あらかじめ設定された目標流量)に調整されることになる。ただし、最も上流側のろ過手段を除いた他のすべてのろ過手段において、任意の流量調整手段により透過水と濃縮水との流量分配が適切に設定・調整される必要があることは言うまでもない。さらに、最も上流側のろ過手段からの濃縮排水の設定流量の算出には、最も下流側のろ過手段を用いて分離された透過水ではなく、最も上流側のろ過手段を用いて分離された透過水の流量(検出流量)が用いられることに留意されたい。なお、ここでいう「互いに直列に接続される」とは、被処理水が複数のろ過手段を用いて順次処理されることを意味し、隣接する2つのろ過手段において、上流側のろ過手段を用いて分離された透過水が下流側のろ過手段に被処理水として供給されることを意味する。また、各ろ過手段は、複数のRO膜またはNF膜から構成されていてもよい。この場合、複数のRO膜またはNF膜は、一次側(原水および濃縮水の流通側)が直列に接続されて最終的に濃縮水ラインに接続され、二次側(透過水の流通側)が並列に接続されて最終的に透過水ラインに接続されることになる。
上述したように、ろ過手段11を用いて分離された透過水の流量(透過水流量計12が測定する流量)を一定に保つために、透過水流量制御機構20は、水温の変化に応じて加圧ポンプ21の回転数、すなわちろ過手段11への原水の供給圧力を変化させる。このとき排水流量制御部32は、回収率を考慮して排水流量計14が検出する検出値がその回収率における設定流量となるように、流量調整弁31の開度を調整する。例えばここで、回収率を上げるには、排水流量制御部32は、流量調整弁31の開度を調整して排水流量を減少させるように制御する。このとき、回収率は透過水の流量と濃縮排水の流量との和、すなわち供給ライン1を流れる原水の流量に対する透過水の流量の割合である。そのため、透過水の流量(透過水流量計12が測定する流量)が一定に保たれていれば、排水流量を減少させた分だけ原水の流量を減少させたことと同義となる。このように、ろ過手段11の回収率も変化させることで、ろ過手段11へ供給する原水の流量を変化させることができる。上述したように、一般的に活性炭(不図示)は膜ろ過装置10の前段、すなわち供給ライン1に搭載される。そのため、このような流量制御を行うことで、供給ライン1に搭載された活性炭の被処理水の流量を減少させることができる。このような処理を用いれば、ろ過手段11からの残留遊離塩素のリークのリスクが高くなり、つまり、収量比が閾値以上となって、上述した通知が発生した場合、透過水流量制御機構20および排水流量制御機構30がろ過手段11の回収率を一時的に高くすることで、ろ過手段11の原水の流量を減らし、ろ過手段11の前段に搭載される活性炭の塩素除去の負荷を下げるということもできる。
このように、本形態における水処理装置は、被処理水の流量、水温および残留遊離塩素の濃度を測定し、流量、水温および残留遊離塩素の濃度といった現在の環境に基づいて、活性炭が残留遊離塩素を除去する能力を判定し、判定した能力が所定の基準以上である場合、通知を行う。そのため、活性炭の能力を環境に応じて判定することができる。現在の環境に応じた判定ができるため、信頼性の高い判定結果を得ることができる。さらに、通知が行われた際に、被処理水の水温や活性炭への通水量を制御することで、活性炭にかかる負荷を下げることができ、活性炭のより長い期間の利用を実現することができる。