JP7362822B1 - 内燃機関の油路構造 - Google Patents
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Description
しかしながら、エンジンオイルがオイルパンに還流された際、オイルパンに他部品から還流されたエンジンオイルと合流するため、エンジンオイルが昇温する。そのため、オイルパンから燃焼室周辺に供給されるエンジンオイルが昇温することを抑えることに関して改善の余地がある。
クランク軸が回転自在に支持されるクランクケースと、同クランクケースに接続され、シリンダ部を形成するシリンダブロックと、同シリンダブロックに接続され前記シリンダ部との間に燃焼室を形成し吸気ポートおよび排気ポートが形成されたシリンダヘッドとを備えた内燃機関において、
前記シリンダヘッドおよび前記シリンダブロックには、シリンダ軸線を中心とした同心円上に複数の貫通孔が形成され、
前記複数の貫通孔に挿通される複数のスタッドボルトは、前記クランクケースに前記シリンダヘッドおよび前記シリンダブロックを固定し、
前記シリンダブロックおよび前記シリンダヘッドには油路が設けられ、
前記油路のうち少なくともシリンダブロック内の油路であるシリンダブロック内供給油路は、前記複数の貫通孔が形成する前記同心円よりも外側の位置に設けられ、
前記シリンダブロック内供給油路は、前記スタッドボルトの軸線および前記シリンダ軸線と平行であることを特徴とする内燃機関の油路構造である。
シリンダブロック内供給油路よりシリンダ部の近くにスタッドボルトが介在するので、スタッドボルトによりシリンダ部からの熱をクランクケースへ伝えることができる。そのため、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
そのため、スタッドボルトは、シリンダ部からの熱をクランクケースへ伝え、所定の間隔をあけたシリンダブロック内供給油路への熱の伝達が減じ、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
前記シリンダブロックは、前記シリンダブロック内供給油路を冷却する第1の冷却フィンを備える。
そのため、第1の冷却フィンにより、走行風によってシリンダブロック内供給油路が冷却されるので、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
前記シリンダヘッドは、同シリンダヘッド内の油路である第一油路を冷却する第2の冷却フィンを備える。
そのため、第2の冷却フィンにより、走行風によってシリンダヘッド内の第一油路が冷却されるので、エンジンオイルが燃焼室周辺や動弁機構を冷却するまえに昇温することを抑えることができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
第1の冷却フィンを備える前記シリンダブロックの外壁面と前記シリンダブロック内供給油路の中心線とのシリンダ部半径方向距離は、前記スタッドボルトの軸線と前記シリンダブロック内供給油路の中心軸とのシリンダ部半径方向距離よりも小さい。
そのように、シリンダブロック内供給油路を第1の冷却フィンに近づけた構造としたので、第1の冷却フィンによるエンジンオイル冷却効果が向上し、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却するまえに昇温することを抑えることができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
シリンダブロック内供給油路よりシリンダ部の近くにスタッドボルトが介在するので、スタッドボルトによりシリンダ部からの熱をクランクケースへ伝えることができる。そのため、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
また、シリンダ軸線およびスタッドボルトの軸線とシリンダブロック内供給油路が平行であるので、シリンダブロック内供給油路とスタッドボルトとの間に、所定の間隔に設けることができる。
そのため、スタッドボルトは、シリンダ部からの熱をクランクケースへ伝え、所定の間隔をあけたシリンダブロック内供給油路への熱の伝達が減じ、エンジンオイルが燃焼室周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係る内燃機関を備えたパワーユニットを搭載した車両の向きに従うものとする。本実施形態において車両は具体的にはスクータ型自動二輪車(以下、単に「自動二輪車」という)である。
また、図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
自動二輪車1は、車体前部1Fと車体後部1Rとが、低いフロア部1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレーム2は、概ねダウンチューブ21とメインパイプ22とからなる。
すなわち車体前部1Fのヘッドパイプ20からダウンチューブ21が下方へ延出し、ダウンチューブ21は下端で水平に屈曲してフロア部1Cの下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインパイプ22が連結され、メインパイプ22は連結部から斜め後方に立ち上がる立上り部22aを経て所定高さで略水平に屈曲して後方に延びている。
一方車体前部1Fにおいては、ヘッドパイプ20に軸支されて上方にハンドル12が設けられ、下方にフロントフォーク13が延びてその下端に前輪14が軸支されている。
すなわち、本実施形態の自動二輪車1は、パワーユニット3の上部リンク支持構造を採っている。
また、内燃機関4は、クランクケース40に接続されシリンダボア(本発明における「シリンダ部」)42aを形成するシリンダブロック42と、シリンダブロック42に接続され、シリンダボア42aとの間に燃焼室65を形成し吸気ポート45および排気ポート46が形成される(図4参照)シリンダヘッド43と、シリンダヘッド43を覆うヘッドカバー44を備え、シリンダブロック42、シリンダヘッド43、ヘッドカバー44を略水平に近い状態にまで大きく前傾させて取付けた姿勢でパワーユニット3に設けられる。
シリンダヘッド43の下部の排気ポート46の出口に接続した排気管55は後方へ屈曲し車両右側に沿って後方に延びて、後輪15の右側のマフラ56に接続している。マフラ56は、マフラステー56aを介してユニットケース30に取付けられている。
フロア部1Cは、ステッププレート17dが張設され、このステッププレート17dの左右側縁に沿って各々下方にロアサイドカバー17eが延設されている。
本実施形態の内燃機関4は、強制空冷型であり、クランクケース40の右側はファンカバー70で覆われ、ファンカバー70には、クランク軸41の軸心周りの冷却空気取入窓71が開口し、冷却空気取入窓71の内部には図示しない回転ファンがクランク軸41に同心に設けられている。
シリンダブロック42とシリンダヘッド43は、2点鎖線で示すシュラウド72で覆われ、シュラウド72はファンカバー70と連通している。クランク軸41とともに回転する回転ファンによって冷却空気取入窓71から取り入れられた冷却用の外気は、ファンカバー70経由シュラウド72内に強制的に送り込まれ、シリンダブロック42とシリンダヘッド43を冷却した後、排出される。
なお、伝動部材として代わりに伝動ベルトを用い、従動スプロケット61aの代わりに従動プーリ、駆動スプロケットの代わりに駆動プーリを備えてもよい。
シリンダヘッド43の上端部において、ヘッドカバー44との間には、カムシャフト61がクランク軸41と平行に回動自在に支承されている。
すなわち、ピストンの上下動により、図2の図示において時計方向で回転駆動されるクランク軸41の回転トルクが、掛け回されたカムチェーン62を介して、カムシャフト61に伝達され、内燃機関4の燃焼行程に対して、吸気弁および排気弁が所定のタイミングで、吸気ポート45の吸気弁口66と、排気ポート46の排気弁口67(図4参照)を開閉するようになっている。
しかし、運転者の急な加減速によるクランク軸41の回転速度の急激な変化や、路面からの走行抵抗の変化により、カムチェーン62に振動が発生することがある。
また、クランクケース40内には、クランク軸41の動力により駆動される図示しないオイルポンプが設けられており、クランク軸41によりオイルポンプが駆動されると、オイルパン47内に貯留されたエンジンオイルが、図示しないストレーナを経て吸入されて、オイルポンプから複数の油路を通じて、内燃機関4の各所に送られるようになっている。
なお、図2中符号57は、排気ガスのO2センサである。
また、符号33は、上述のパワーユニット3の上部リンク支持構造のためのパワーユニット側ブラケットである。
前述の動弁機構60は、カムシャフト61周囲の軸受け、カム等の潤滑のためのカムシャフト61へのエンジンオイルの供給が必要である。
シリンダブロック42の合わせ面42bには、ほぼ中央にシリンダボア42aが開口し、その周囲のシリンダ軸線X回りの同心円Y上に、シリンダ軸線Xと平行な4つの貫通孔48が形成されている。
合わせ面42bに接続するシリンダヘッド43にも同位置にシリンダ軸線Xと平行に4つの貫通孔48が穿たれていて、シリンダヘッド43の前方から挿入されたスタッドボルト49の先端は、シリンダヘッド43とシリンダブロック42の貫通孔48を通り、クランクケース40に螺入され、シリンダヘッド43とシリンダブロック42をクランクケース40に締結固定する。
図4において、シリンダボア42aの中には、シリンダブロック42に取付けられたシリンダヘッド43の燃焼室65に開口する吸気ポート45の吸気弁口66の位置、排気ポート46の排気弁口67の位置が想像線(2点鎖線)で示される。
したがって、シリンダボア42aから離れた位置で、しかもシリンダボア42aの貫通孔48とスタッドボルト49の外方の位置において、エンジンオイルが接続部92まで供給されるので、比較的温度の低いエンジンオイルを第一油路91Aに送り出して、吸気弁口66近傍やカムシャフト61に供給することができる。そのため、吸気の温度を抑制してノッキングを抑制することができる。
シリンダブロック内供給油路91にはクランクケース40内の図示しないオイルポンプからの油路90を通じ、オイルパン47のエンジンオイルが供給され、接続する第一油路91Aはシリンダヘッド43前方へ、動弁機構60のカムシャフト61に向けて配設されていることが示されている。
また、シリンダブロック内供給油路91は、スタッドボルト49の軸線Zおよびシリンダ軸線Xと平行である。
そして、シリンダヘッド43は、シリンダヘッド43内の油路である第一油路91Aを冷却するために、シリンダヘッド43の外壁面43cに第2冷却フィン(本発明における「第2の冷却フィン」)76を備えている。
スタッドボルト49の軸線Zと、シリンダブロック内供給油路91の中心線Pとのシリンダボア半径方向距離(本発明における「シリンダ部半径方向距離」)b、すなわち、複数のスタッドボルト49を挿通する複数の貫通孔48がなす同心円Yとシリンダブロック内供給油路91の中心線Pとのシリンダボア半径方向距離b、よりも小さく設定されている。
したがって、シリンダブロック内供給油路91が、第1冷却フィン75に近づけて配置されている。
すなわち、クランク軸41が回転自在に支持されるクランクケース40と、クランクケース40に接続されシリンダボア42aを形成するシリンダブロック42と、シリンダブロック42に接続されシリンダボア42aとの間に燃焼室65を形成し吸気ポート45および排気ポート46が形成されたシリンダヘッド43とを備えた内燃機関4において、
シリンダヘッド43およびシリンダブロック42には、シリンダ軸線Xを中心とした同心円Y上に複数の貫通孔48が形成されている。
シリンダブロック42およびシリンダヘッドには油路91、91Aが設けられ、油路91、91Aのうち少なくともシリンダブロック42内の油路であるシリンダブロック内供給油路91は、複数の貫通孔48が形成する同心円Yよりも外側の位置に設けられている。
そのため、エンジンオイルが燃焼室65周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口66近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
なお、図4に示されるように、シリンダ軸線Xからの同一半径方向で、スタッドボルト49が、シリンダブロック内供給油路91とシリンダボア42aとの間に並ぶように配置された場合は、その効果がより高まる。
そのため、シリンダブロック内供給油路91とスタッドボルト49との間に、所定の間隔に設けることができ、スタッドボルト49はシリンダボア42aからの熱をクランクケース40へ伝えるので、所定の間隔をあけたシリンダブロック内供給油路91へは熱の伝達が減じ、エンジンオイルが燃焼室65周辺を冷却する前に昇温することを抑制することができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口66近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
そのように、シリンダブロック内供給油路91を第1冷却フィン75に近づけた構造としたので、第1冷却フィン75によるエンジンオイル冷却効果が向上し、エンジンオイルが燃焼室65周辺を冷却するまえに昇温することを抑えることができる。その結果、より冷えたエンジンオイルが、吸気弁口66近傍を通過するので、ノッキングを抑制することができる。
Claims (4)
- クランク軸(41)が回転自在に支持されるクランクケース(40)と、
同クランクケース(40)に接続され、シリンダ部(42a)を形成するシリンダブロック(42)と、
同シリンダブロック(42)に接続され前記シリンダ部(42a)との間に燃焼室(65)を形成し吸気ポート(45)および排気ポート(46)が形成されたシリンダヘッド(43)とを備えた内燃機関(4)において、
前記シリンダヘッド(43)および前記シリンダブロック(42)には、シリンダ軸線(X)を中心とした同心円(Y)上に複数の貫通孔(48)が形成され、
前記複数の貫通孔(48)に挿通される複数のスタッドボルト(49)は、前記クランクケース(40)に前記シリンダヘッド(43)および前記シリンダブロック(42)を固定し、
前記シリンダブロック(42)および前記シリンダヘッド(43)には油路(91,91A)が設けられ、
前記油路(91,91A)のうち少なくともシリンダブロック(42)内の油路であるシリンダブロック内供給油路(91)は、前記複数の貫通孔(48)が形成する前記同心円(Y)よりも外側の位置に設けられ、
前記シリンダブロック内供給油路(91)は、前記スタッドボルト(49)の軸線(Z)および前記シリンダ軸線(X)と平行であることを特徴とする内燃機関の油路構造。 - 前記シリンダブロック(42)は、前記シリンダブロック内供給油路(91)を冷却する第1の冷却フィン(75)を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の油路構造。
- 前記シリンダヘッド(43)は、同シリンダヘッド(43)内の油路である第一油路(91A)を冷却する第2の冷却フィン(76)を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の油路構造。
- 前記第1の冷却フィン(75)を備える前記シリンダブロック(42)の外壁面(42c)と前記シリンダブロック内供給油路(91)の中心線(P)とのシリンダ部半径方向距離(a)は、前記スタッドボルト(49)の軸線(Z)と前記シリンダブロック内供給油路(91)の中心線(P)とのシリンダ部半径方向距離(b)よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の油路構造。
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