以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る揮散装置10は、前面側の筐体2(第1の筐体)と、筐体2に接合して組み合わせることによりケース1を構成する背面側の筐体3(第2の筐体)と、薬剤Yを含侵したシート材4(薬剤担持体)と、薬剤Yの効果の終了時期を表示するための表示シート6と、を有する。シート材4および表示シート6はケース1内に配置される。本実施形態では、表示シート6をシート材4と別体に設けたが、シート材4に表示シート6の機能を持たせて表示シート6を省略することもできる。
以下の説明では、ケース1の後述するフック3eを介してハンガーパイプなどに揮散装置10を吊り下げた状態で、揮散装置10を筐体2側から見て、上下左右を規定するとともに、前面側および背面側を規定する。
前面側の筐体2は、略矩形の平らな板状部分2aと板状部分2aの外周縁に一体に設けた略矩形枠状の周壁2bとを有する。板状部分2aは、4つの角部が円弧状に湾曲している。周壁2bは、図2に示すように、板状部分2aの外周縁から筐体2の内側、すなわち背面側に向けて板状部分2aと直交する方向に延設されている。周壁2bは、板状部分2aの4つの角部にならって湾曲している。板状部分2aの端縁と周壁2bの間の連結部分もなだらかに湾曲した曲面形状を有する。
板状部分2aは、表示シート6の表示面6aを外部に露出するための略矩形の窓部5を有する。窓部5は、筐体2の長手方向(図示左右方向)の一端側(本実施形態では右側)に偏った位置に設けられている。窓部5の位置は任意に変更可能である。また、板状部分2aは、窓部5とは別の場所に、長円形の複数の揮散孔2cを有する。窓部5および複数の揮散孔2cは、板状部分2aを貫通して設けられている。複数の揮散孔2cは、板状部分2aの長手方向に沿って整列して配置されている。
表示シート6は、図2に示すように、その表示面6aが筐体2の窓部5に対向する向きで前面側の筐体2の内面2dに取り付けられる。表示シート6は、窓部5より一回り大きいサイズの矩形板状に形成されており、窓部5を筐体2の内側から塞ぐように配置される。表示シート6は、薬剤Yを含侵している。表示面6aには、例えば、含侵した薬剤Yがほとんど無くなったときに薬剤Yの効果の終了時期を知らせるための「おわり」などの文字が現れる。含侵した薬剤が無くなったときに文字を表示する技術は周知であるため、ここではそのメカニズムに関する説明を省略する。
図3に示すように、窓部5の縁に沿った筐体2の内面2dには、表示シート6の上端縁に係合する2つの固定爪7a、7b、および表示シート6の下端縁に係合する2つの固定爪7c、7dが突設されている。2つの固定爪7a、7bは、窓部5の上端縁に沿って互いに離間して配置され、2つの固定爪7c、7dは、窓部5の下端縁に沿って互いに離間して配置されている。4つの固定爪7a、7b、7c、7dは、表示シート6の端縁に係合して表示シート6の上下方向への移動を規制するとともに表示シート6の脱落を防止する。
また、窓部5の縁に沿った筐体2の内面2dには、4本の位置決めピン8a、8b、8c、8dが突設されている。2本の位置決めピン8a、8bは、筐体2を内側から見て窓部5の左端縁に沿って互いに離間して設けられ、2本の位置決めピン8c、8dは、筐体2を内側から見て窓部5の右端縁に沿って互いに離間して設けられている。4本の位置決めピン8a、8b、8c、8dは、それぞれ、表示シート6の端縁に当接して表示シート6の左右方向への移動を規制する。
表示シート6は、4つの固定爪7a~7dおよび4本の位置決めピン8a~8dにより囲まれた領域に配置され、4つの固定爪7a~7dおよび4本の位置決めピン8a~8dにより上下左右を押えられて、筐体2の窓部5に対して位置決めして固定される。このため、表示面6aの文字を窓部5の中心に配置することができ、且つ表示シート6を筐体2の板状部分2aと平行に配置することができ、薬剤Yの残量が少なくなったことを示す「おわり」などの文字を揮散装置10の前面側から見易くすることができる。
なお、本実施形態では、4本の位置決めピン8a、8b、8c、8dのうちの2本の位置決めピン8a、8bは、シート材4の後述するシート片4aを押すための突起(以下、押圧ピン8a、8bと称する場合もある)としても機能する。しかし、位置決めピン8a、8bとは別にシート片4aを押すための押圧ピンを設けてもよい。
さらに、窓部5の縁に沿った筐体2の内面2dには、4つのスペーサ突起9a、9b、9c、9dが突設されている。各スペーサ突起9a、9b、9c、9dの突出高さは、例えば0.5mm程度である。スペーサ突起9aは固定爪7aと位置決めピン8aの間に配置され、スペーサ突起9bは固定爪7bと位置決めピン8cの間に配置され、スペーサ突起9cは固定爪7cと位置決めピン8bの間に配置され、スペーサ突起9dは固定爪7dと位置決めピン8dの間に配置されている。4つのスペーサ突起9a、9b、9c、9dは、それぞれ、表示シート6の角部近くで表示面6aに当接し、表示シート6が筐体2に接触する不具合を防止している。
筐体2の内面2dには、この他に、複数のスペーサ突起10a、10b、10c、10d、10e、および複数のボス部11a、11b、11c、11dが突設されている。これら複数のスペーサ突起10a~10eおよび複数のボス部11a~11dは、筐体2の板状部分2aの内面2dと後述するシート材4との間に隙間を形成するために設けられている。つまり、シート材4を筐体2の内側に配置した場合、シート材4の表面が複数のスペーサ突起10a~10eの先端および複数のボス部11a~11dの先端に当接し、シート材4が筐体2の内面2dに接触することを防止することができる。
以上のように、本実施形態では、スペーサ突起9a~9dにより表示シート6が筐体2の内面2dに接触する不具合を防止し、且つスペーサ突起10a~10eによりシート材4が筐体2の内面2dに接触する不具合を防止している。このため、表示シート6に含侵した薬剤Yやシート材4に含侵した薬剤Yが筐体2に付着して薬剤Yで濡れてしまう不具合を防止することができ、使用者が使用する際に手などに薬剤Yが付着してしまう不具合を防止することができる。
図4に示すように、背面側の筐体3は、略矩形の平らな板状部分3aと板状部分3aの外周縁に一体に設けた略矩形枠状の周壁3bとを有する。背面側の筐体3は、前面側の筐体2と略同じ構造を有する。背面側の筐体3の板状部分3aは、4つの角部が円弧状に湾曲している。周壁3bは、板状部分3aの外周縁から内側に向けて板状部分3aと直交する方向に延設されている。周壁3bは、板状部分3aの4つの角部にならって湾曲している。板状部分3aの端縁と周壁3bの間の連結部分もなだらかに湾曲した曲面形状を有する。
前面側の筐体2には無い構造として、背面側の筐体3の板状部分3aの上端に連続した周壁3bの部分には、揮散装置10を例えばクローゼットのハンガーパイプ(図示せず)に引っ掛けるためのフック3eが一体に設けられている。フック3eは、筐体3の右側から左側に向けて湾曲している。つまり、フック3eをハンガーパイプに掛けた状態でケース1の端壁1a(右端の壁)が手前に配置される向きでフック3eが湾曲している。また、板状部分3aは、長円形の複数の揮散孔3cを有する。複数の揮散孔3cは、板状部分3aを貫通して設けられており、板状部分3aの長手方向に沿って整列して配置されている。
板状部分3aの内面3dには、シート材4の後述する嵌合孔26に嵌合する嵌合体12(規制手段)が突設されている。嵌合体12は、概ね、前面側の筐体2の窓部5に対向する位置に配置されている。嵌合体12は、筐体3の長手方向に延設された板状片12aと板状片12aと交差する短手方向に延設された2つの板状片12b、12cを井桁状に組み合わせた構造を有する。嵌合体12は、必ずしも図4に示した構造に限らず、いかなる構造であってもよい。
また、板状部分3aの内面3dには、複数(本実施形態では2本)のスペーサ突起13a、13b、および複数(本実施形態では3つ)のボス部14a、14b、14cが突設されている。ボス部14cは、筐体3の内面3dと嵌合体12の間に配置されている。2本のスペーサ突起13a、13bは、後述するシート材4の第1部分21の背面に当接して第1部分21を支え、第1部分21を前面側の筐体2の内面2dに近付けるために設けられている。また、嵌合体12もシート材4の第1部分21の背面に当接して支えることで第1部分21を前面側の筐体2の内面2dに近付けるために設けられている。つまり、嵌合体12、及び2本のスペーサ突起13a、13bは、押圧ピン8a、8bによる押圧位置から外れた位置で押圧ピン8a、8bによる押圧方向と反対側からシート材4の第1部分21を支える支え部材として機能する。
ボス部14cは、筐体3の板状部分3aの内面3dと後述するシート材4の第2部分22との間に隙間を形成するために設けられている。つまり、シート材4を2つの筐体2、3の間に配置した場合、シート材4の第2部分に設けた後述する嵌合孔26に筐体3の嵌合体12が嵌合し、第2部分22の表面がボス部14cの端面に当接する。これにより、シート材4の第2部分22の表面が筐体3の内面3dに接触する不具合を防止することができる。つまり、背面側の筐体3においても、薬剤Yの付着の問題を生じることはない。
なお、背面側の筐体3の板状部分3aと前面側の筐体2の板状部分2aは同じサイズに形成されており、周壁3bも周壁2bと同じサイズに形成されている。よって、周壁2bの板状部分2aから離間した端縁と周壁3bの板状部分3aから離間した端縁を当接させて前面側の筐体2と背面側の筐体3を接合すると、内部にシート材4を収納するための空間を有するケース1(図1)が組み立てられる。
2つの筐体2、3を組み合わせてケース1を形成するため、前面側の筐体2の周壁2bには5つの係合爪15a、15b、15c、15d、15eが設けられており、背面側の筐体3の周壁3bのそれぞれ対応する位置に5つの係合爪16a、16b、16c、16d、16eが設けられている。2つの筐体2、3を接合する構造は、本実施形態の構造に限らず、例えば圧入などの他の接合構造を選択することもできる。
図5に示すように、シート材4は、長尺な矩形の吸液シートを長手方向に沿った2位置(折れ線L1、L2)で略直角に折り曲げた形状を有する。すなわち、シート材4は、J字状に折り曲げられている。シート材4は、図示の状態でケース1内に収容配置される。シート材4と表示シート6の材質は、同じものを使用してもよく、異なる材質のものを使用してもよい。
本実施形態では、シート材4を天然パルプやマーセル化パルプなどのパルプにより形成し、パルプで作成したシートに合成樹脂製のフィルムを貼り合わせた2層のシートにより表示シート6を形成した。シート材4は、フレキシブルに折り曲げ可能なものであり、2つの折れ線L1、L2での折り曲げ角度も外部からの押圧力によって変化するものである。
当然のことながら、シート材4および表示シート6は、薬剤Yを良好に浸透させて保持することができる材質により形成する必要がある。本実施形態では、シート材4および表示シート6にパルプ類を用いたが、ケナフやバガスなどの非木材紙やレーヨンなどの合成紙、ポリエチレンやポリプロピレンなどによる不織布などを用いることもでき、シート材4および表示シート6の材質はパルプに限定されるものではない。
シート材4および表示シート6に含侵させる薬剤Yは、例えば揮散性を持つ防虫剤として、エムペントリン、シフェノトリン、フェノトリン、アレスリン、プラレトリン、ペルメトリン、フタルスリン、シフルスリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フラメトリン、プロフルトリン、トランスフルスリン等があげられ、これらの1種もしくは2種以上の混合物を使用することができる。また、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等を使用することができ、2-N-置換ベンゾトリアゾール誘導体などの添加剤の他、様々な薬剤を混合して使用することができる。
シート材4は、前面側の筐体2の内面2dに対向する第1部分21と、背面側の筐体3の内面3dに対向する第2部分22と、第1部分21と第2部分22の間をつないだ第3部分23と、を一体に連続して有する。第1部分21は、揮散装置10のケース1の長手方向の全長よりわずかに短い長さを有する。第2部分22は、例えばケース1の全長の1/3よりわずかに短い長さを有する。第3部分23は、ケース1の長手方向の一端(窓部5に近い右端)にある端壁1a(図1)に対向する部分であり、端壁1aより一回り小さい幅および長さを有する。第2部分22の長さは、当該揮散装置10に必要とされる薬剤Yの揮散性能(揮散量や揮散速度など)に応じて任意に変更可能である。
ケース1の端壁1aは、前面側の筐体2の周壁2bと背面側の筐体3の周壁3bを接合した枠状の周壁の一部であり、周壁2bと周壁3bを足した幅を有する。この端壁1aには、シート材4の第3部分23の外面23aに設けた表示部24(例えば「おわり」などの文字)をケース1の外部から視認可能にし得るようにするための略矩形の窓部25(図1)が設けられている。すなわち、窓部25の約半分は筐体2の周壁2bに形成され、残りの半分は筐体3の周壁3bに形成されている。なお、ケース1の周壁のうちケース1の左端にある周壁やケース1の下端にある周壁には、揮散孔(図示せず)を設けてもよい。
シート材4の第2部分22には、背面側の筐体3の板状部分3aの内面3dに突設した嵌合体12を勘合するための嵌合孔26が設けられている。嵌合孔26の大きさおよび形状は、嵌合体12を勘合した状態で第2部分22が筐体3に対してほとんど移動不能となる大きさおよび形状であることが望ましい。本実施形態では、嵌合孔26を、嵌合体12の板状片12aよりわずかに短い長軸および板状片12b、12cよりわずかに短い短軸を有する長円形に形成した。なお、嵌合孔26の位置は、嵌合孔26に嵌合体12を勘合した状態で、シート材4の第2部分22と第3部分23の間の折れ線L2がケース1の端壁1aの内面に略接触する程度に近接する位置とすることが望ましい。
シート材4の第1部分21には、コ字状の切り込み27(変向手段)が形成されている。コ字状の切り込み27は、第1部分21の長手方向と直交する短手方向(幅方向)に直線状に延びた第1の切り込み27aと、この第1の切り込み27aの両端から第1部分21の長手方向に沿って折れ線L1に向けて直線状に延びた2本の第2の切り込み27bと、をコ字状につなげた形状を有する。2本の第2の切り込み27bは同じ長さに形成されている。シート材4の切り込み27によりコ字状に囲まれたシート片28は、図5において破線で示す仮想線28aを介してシート材4に対して折り曲げ可能である。仮想線28aの位置でシート材4に予め折罫線を設けておいてもよく、予め折罫線を設けておかなくてもよい。
コ字状の切り込み27は、切り込み27および仮想線28aにより囲まれたシート材4の矩形の領域(ここでは、この領域のシート材4の一部をシート片28と称する)が、前面側の筐体2の板状部分2aの内面2dに突設した2本の押圧ピン8a、8bに対向する位置に設けられている。つまり、シート片28(すなわち、切り込み27)は、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合する際に、前面側の筐体2に設けた2本の押圧ピン8a、8bの先端がシート片28の表面に当接する位置に設けられている。
シート材4の第3部分23の外面23aに設けた表示部24は、上述した表示シート6の表示面6aに現れる文字と同様に、例えば、含侵した薬剤Yがほとんど無くなったときに現れる「おわり」などの文字である。ケース1の端壁1aに設けた窓部25を介して表示部24を見易くするためには、シート材4の第3部分23の外面23aを端壁1aの内面に近付けて配置することに加えて、第3部分23の外面23aを端壁1aと平行に配置することが望ましい。また、第3部分23の外面23aを端壁1aの内面に接触させないように、端壁1aの内面に図示しないスペーサ突起などを設けてもよい。
上記のように、シート材4の第3部分23を端壁1aと平行にして窓部25に近付けて配置することで、第3部分23を外気に触れ易くすることができ、その分、薬剤Yの揮散効率を良くすることができる。また、ケース1の色とシート材4の色が違うため、シート材4の第3部分23を端壁1aと平行にして窓部25に近付けて配置すると、窓部25を介してケース1の外側からシート材4を視認し易くなり、第3部分23の外面23aに文字や図形の印刷などが無かった場合でも、シート材4を目立ち易くすることができる。
以下、上記構造の揮散装置10の組み立て方法の一例、および本実施形態の効果について説明する。
本実施形態の揮散装置10を組み立てる場合、まず、薬剤Yを含侵させた表示シート6を前面側の筐体2の内面2dに取り付ける。この際、表示面6aが窓部5を介して前面側に露出する向きで表示シート6を筐体2の内面2dに取り付ける。表示シート6は、4つの固定爪7a~7dにより上端縁と下端縁を係止されるため、筐体2の内面2dから脱落することはない。
次に、シート材4を背面側の筐体3の内面3dに取り付ける。このとき、シート材4の第2部分22に設けた嵌合孔26に筐体3の内面3dに突設した嵌合体12を勘合させる。これにより、第2部分22が背面側の筐体3の内面3dに対して移動不能となる。この状態で、シート材4の第1部分21の筐体3に対向した背面に、スペーサ突起13a、13bの先端が当接し、第1部分21が背面側から支えられる。なお、この状態で、シート材4の第2部分22と第3部分23の間の折れ線L2における折り曲げ角度は、直角よりわずかに小さい鋭角にして癖をつけておくことが望ましい。
最後に、表示シート6を保持した筐体2とシート材4を保持した筐体3を接合し、図1の状態に組み立てる。このとき、筐体2の周壁2bに設けた5つの係合爪15a、15b、15c、15d、15eが、それぞれ筐体3の周壁3bに設けた5つの係合爪16a、16b、16c、16d、16eと係合する。接合する際に2つの筐体2、3を移動する方向は、筐体2、3が互いに近付く方向であり、筐体2、3の板状部分2a、3aと直交する方向である。
前面側の筐体2を背面側の筐体3に近付けると、筐体2の内面2dに突設した2本の押圧ピン8a、8bの先端がシート材4のシート片28に当接し、シート片28が背面側の筐体3に向けて押圧されて仮想線28aを介して内側に折り曲げられる。このとき、シート片28以外の第1部分21はスペーサ突起13a、13bにより支えられているため、背面側の筐体3に向けて移動することが抑制される。
押圧ピン8a、8bによる押圧力は、折り曲げにより傾斜したシート片28の表面に作用する。このため、シート片28の傾斜方向、すなわちシート材4をケース1の端壁1aに向けて移動させる方向の力がシート片28に加えられる。そして、シート材4(シート片28の折り曲げ部分28a)の腰により、押圧ピン8a、8bを押し返す方向の力が作用し、シート材4の第1部分21が端壁1aの内面に向けてその長手方向に付勢される。
これにより、第1部分21と第3部分23の間の折れ線L1が、端壁1aに近付く方向に移動され、折れ線L1を介して第1部分21に連続した第3部分23が端壁1aと平行な姿勢に配置される。このとき、端壁1aの内面にスペーサ突起を有する場合、第3部分23の外面23aがスペーサ突起の先端に当接して、第3部分23の外面23aと端壁1aの内面との間にわずかな隙間を介して第3部分23が端壁1aと平行な姿勢に配置される。
この場合、筐体2の押圧ピン8a、8bから受ける押圧力をシート材4を移動させるための力に変える変向手段は、シート材4のシート片28を形成したコ字状の切り込み27となる。コ字状の切り込み27は、必ずしも本実施形態の形状に限定されるものではなく、押圧ピン8a、8bによってシート材4の一部(本実施形態ではシート片28)を押圧したときに、シート材4の第1部分21を端壁1aに向けて移動させることができる形状であればいかなる形状であってもよい。例えば、切り込み27は、シート材4の移動方向と逆方向に湾曲した反円弧状の切り込みなどであってもよい。
以上のように、本実施形態によると、揮散装置10の組み立てと同時にシート材4の第3部分23を所望する姿勢に位置決めすることができ、第3部分23の表示部24(例えば「おわり」などの文字)をケース1の窓部25を介して見易くすることができる。これに対し、仮に、シート材4に切り込み27を設けずにシート材4の筐体2に対する移動方向を制御しない場合、シート材4の第3部分23がケース1の端壁1aに対して傾斜してしまい、表示部24が見え難くなってしまう可能性がある。
また、本実施形態によると、2つの筐体2、3を接合する動作時に、シート材4の第1部分21を端壁1aに向けてわずかに移動させるため、シート材4の第1部分21の折れ線L1と反対の長手方向の左側の端縁が筐体2、3の周壁2b、3bの間に挟まれる不具合を防止することができる。これにより、揮散装置10の組み立て時における作業性を向上させることができる。
また、本実施形態によると、2つの筐体2、3を接合する動作によりシート材4の第1部分21を端壁1aに向けて移動させて第1部分21を所定位置に位置決めすることができるため、シート材4に表示シート6の機能を持たせて表示シート6を省略した場合に、シート材4の第1部分21の表面に設けた表示部(図示せず)を窓部5の中心に位置合わせすることもできる。
(第1の変形例)
図6および図7は、上述した第1の実施形態の第1の変形例に係る揮散装置30の要部を示す概略図である。図6は2つの筐体2、3を接合する前の状態を示し、図7は2つの筐体2、3を接合した後の状態を示す。第1の変形例の揮散装置30は、シート材4の第2部分22が嵌合孔26の代わりにコ字状の切り込み31を有し、背面側の筐体3が嵌合体12の代わりに押圧ピン32を有する。それ以外の構造は、上述した揮散装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
第2部分22の切り込み31は、シート材4の第1部分21に設けた切り込み27と略同じ形状に形成されており、切り込み27に対向する位置に同じ向きで形成されている。つまり、シート材4の第2部分22には、コ字状の切り込み31によって3辺を囲まれた略矩形のシート片33が設けられている。また、押圧ピン32は、背面側の筐体3の内面3dからシート片33に向けて突設されている。押圧ピン32は、前面側の筐体2の内面2dから突設した2本の押圧ピン8a、8bに対向する位置に2本設けてもよい。
第1の変形例によると、シート材4を背面側の筐体3に移動不能に取り付けていないため、ケース1内でシート材4が自由に移動可能な状態となっている。このため、図6に示す状態から図7に示す状態に、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合させると、シート材4の第1部分21および第2部分22が共にケース1の端壁1aに向けて移動される。
つまり、第1の変形例では、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を互いに近付けると、前面側の筐体2から突設した押圧ピン8a、8bがシート材4の第1部分21に設けたシート片28を押圧し、背面側の筐体3から突設した押圧ピン32がシート材4の第2部分22に設けたシート片33を押圧する。これにより、シート材4の折れ線L1がケース1の端壁1aに近付く方向に第1部分21が移動され、シート材4の折れ線L2がケース1の端壁1aに近付く方向に第2部分22が移動される。
よって、第1の変形例においても、ケース1の組み立て動作によって、シート材4の第3部分23をケース1の端壁1aに近付けるとともに第3部分23を端壁1aと平行に配置することができ、第3部分23の表示部24(例えば「おわり」などの文字)をケース1の窓部25を介して見易くすることができ、薬剤Yの揮散効率を高めることができる。
また、第1の変形例によると、押圧ピン8a、8bによって押圧されて内側に折り曲げられたシート片28と押圧ピン32によって押圧されて内側に折り曲げられたシート片33が図7に示すように互いに接触した場合、2つのシート片28、33がそれ以上折り曲げられることができなくなる。この場合、押圧ピン8a、8b、31による押圧力の大半がシート材4を端壁1aに向けて移動させる力に変換され、シート材4の第3部分23をより強い力で端壁1aに向けて付勢することができる。
このため、例えば、第1の変形例の揮散装置30をクローゼットのハンガーパイプに吊り下げて使用する際に、衣類の取り出し動作によって揮散装置30に手が触れて窓部25を介してシート材4の第3部分23を指で押してしまった場合であっても、第3部分23を端壁1aと平行な姿勢にしっかりと保持することができる。
(第2の変形例)
図8および図9は、上述した第1の実施形態の第2の変形例に係る揮散装置40の要部を示す概略図である。図8および図9では、シート材4の第1部分21を実線で図示し、前面側の筐体2および窓部5を破線で図示してある。なお、図8は、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合する前の筐体2と第1部分21の相対的な位置関係を示し、図9は、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合した後の筐体2と第1部分21の相対的な位置関係を示す。
第2の変形例の揮散装置40は、シート材4と別体の表示シート6を設ける代わりに、シート材4の第1部分21の表面に薬剤Yが無くなったときに「おわり」などの文字を表示する表示部41を備えている。また、第2の変形例の揮散装置40は、シート材4の第1部分21に、シート片43を設けるための切り込み42と、シート片45を設けるための切り込み44と、を有する。さらに、第2の変形例の揮散装置40は、シート片43に対向する押圧ピン46およびシート片45に対向する押圧ピン47を前面側の筐体2の内面2dから突設している。それ以外の構造は、上述した揮散装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
切り込み42は、例えば、揮散装置10のシート材4の第1部分21に設けた切り込み27と同じ形状を有し、同じ向きで同じ位置に設けられている。よって、シート片43に対向する押圧ピン46は、押圧ピン8a、8bであってもよい。もう一方の切り込み44は、切り込み42と90度異なる角度で設けられている。つまり、切り込み44は、第1部分21の長手方向に沿った第1の切り込み44aと、この第1の切り込み44aの両端から第1部分21の長手方向と直交する幅方向に延びた2本の第2の切り込み44bと、をコ字状につなげた形状を有する。第2の切り込み44bは、第1の切り込み44aの両端から揮散装置40の上端壁1b(図1)に向けて延設されている。
第1部分21に上述した2つの切り込み42、44を有するシート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合すると、前面側の筐体2の内面2dから突設した押圧ピン46の先端がシート片43を背面側に押し込み、押圧ピン47の先端がシート片45を背面側に押し込む。押圧ピン46により押し込まれて傾斜したシート片43は、第1部分21をケース1の端壁1aに向けて移動する方向(図示右方向)の力を受ける。また、押圧ピン47により押し込まれて傾斜したシート片45は、第1部分21をケース1の上端壁1bに向けて押し上げる方向の力を受ける。そして、これら2つの力の合力により、シート材4の第1部分21が図8に示す位置から図9に示す位置へ移動される。
以上のように、第2の変形例によると、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合させることにより、第1部分21に設けた表示部41を筐体2の窓部5の中央に位置合わせすることができ、表示部41を見易くすることができる。
(第3の変形例)
図10および図11は、上述した第1の実施形態の第3の変形例に係る揮散装置50の要部を示す概略図である。図10および図11では、シート材4の第1部分21を実線で図示し、前面側の筐体2および窓部5を破線で図示してある。なお、図10は、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合する前の筐体2と第1部分21の相対的な位置関係を示し、図11は、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合した後の筐体2と第1部分21の相対的な位置関係を示す。
第3の変形例の揮散装置50は、シート材4の第1部分21に、上述した2つの切り込み42、44を設ける代わりに、シート片51を設けるためのコ字状に湾曲した切り込み52を有する。そして、第3の変形例の揮散装置50は、シート片51に対向する押圧ピン53を前面側の筐体2の内面2dから突設している。また、第3の変形例の揮散装置50は、ケース1の端壁1aの内面にシート材4の第1部分21の端縁を当接させる突き当て凸部54を有し、ケース1の上端壁1bの内面に第1部分21の上端縁を当接させる突き当て凸部55を有する。それ以外の構造は、上述した第2の変形例の揮散装置40と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第2の変形例の揮散装置40と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
切り込み52は、シート材4の第1部分21を移動する方向と逆方向に湾曲して突出したコ字状に形成されている。ここで言う移動する方向とは、シート材4の第1部分21をケース1に対して位置決めする方向であり、第3の変形例では、ケース1の端壁1aと上端壁1bの間の角部に向かう方向に第1部分21を移動させて位置決めするようにした。
第1部分21に上述した切り込み52を有するシート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合すると、前面側の筐体2の内面2dから突設した押圧ピン53の先端がシート片51を背面側に押し込む。押圧ピン53により押し込まれて傾斜したシート片51は、ケース1の端壁1aと上端壁1bの間の角部に向けて第1部分21を移動する方向(図示右斜め上方向)の力を受ける。これにより、シート材4の第1部分21が図10に示す位置から図11に示す位置へ移動され、ケース1の内面に設けた突き当て凸部54、55にそれぞれ対応する第1部分21の端縁が当接する。
以上のように、第3の変形例によると、シート材4を間に挟んで2つの筐体2、3を接合させることにより、ケース1に対して第1部分21を位置決めすることができ、第1部分21に設けた表示部41を筐体2の窓部5の中央に位置合わせすることができ、表示部41を見易くすることができる。
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る揮散装置60のシート材61(薬剤担持体)を部分的に示す斜視図である。本実施形態の揮散装置60は、シート材61の構造が異なる以外、上述した第1の実施形態の揮散装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第1の実施形態の揮散装置10と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成についてのみ詳細に説明する。
本実施形態の揮散装置60は、表示シート6を有しておらず、その代わりに、シート材61の第1部分21の表面に、上述した第1の実施形態の第2の変形例におけるシート材4の表示部41と同様の表示部62を備えている。表示部62は、薬剤Yの効果が終了する時期をユーザーに知らせるための「おわり」などの文字を表示することができる。また、本実施形態では、シート材61の第3部分23の外面23aには表示部を設けていないが、第1の実施形態と同様に第3部分の外面23aに表示部24を設けてもよい。
さらに、シート材61は、コ字状の切り込み27を有する代わりに、2本の直線状のスリット63、64(変向手段)を備えている。スリット63、64は、上述した第1の実施形態で第1の切り込み27aを設けた位置に重なる位置でシート材61の第1部分21を貫通して設けられている。スリット63、64は、第1部分21の長手方向と直交する幅方向に互いに離間して幅方向に一直線に並んで設けられている。各スリット63、64は、筐体2の内面2dに設けた押圧ピン8a、8bによる第1部分21に対する押圧位置がそのスリットの幅方向の中心に対向する位置に配置されている。スリット63、64は、第1部分21の長手方向におけるスリット63、64の下流側でシート材61の第1部分21に押圧ピン8a、8bが当接する位置に配置されている。スリット63、64は、押圧ピン8a、8bによる押圧位置に近接して配置することが望ましい。2本のスリット63、64は、同じ長さを有し、表示部62と折れ線L1との間に設けられている。押圧ピン8a、8bによる第1部分21に対する押圧位置は、それぞれ対応するスリット63、64と折れ線L1との間に設定されていればよい。なお、スリット63、64は、本実施形態のように必ずしも直線状である必要はなく、わずかに湾曲したり屈曲したり傾斜したりしていてもよい。
スリット63、64の配置位置や長さ、シート材61の材質や腰、後述する押圧ピン8a、8bによる第1部分21に対する押圧位置は、後述するケース1の組み立て動作により押圧ピン8a、8bによって押圧されたシート材61の第1部分21がケース1の端壁1aに向けて少なくとも移動することができるように選択される。例えば、シート材61を端壁1aに向けて良好に移動させるためには、スリット63、64の長さを、シート材61の幅の20%~45%程度に設定することが望ましく、より好ましくは、15%~30%程度の長さに設定することが望ましい。また、シート材61を端壁1aに向けて良好に移動させるためには、各スリット63、64から押圧ピン8a、8bによる押圧位置までの距離は、スリット63、64と折れ線L1との間の距離を100%とした場合、0%よりも大きく60%程度までの距離に設定することが望ましく、より好ましくは0%よりも大きく40%程度の距離に設定することが望ましい。
以下、本実施形態の揮散装置60を組み立てる手順及び本実施形態の効果について説明する。
上述した形状のスリット63、64を有するシート材61を収容してケース1の2つの筐体2、3を接合すると、筐体2の内面2dに突設した押圧ピン8aがスリット63に隣接する第1部分21の部位を押圧し、もう一方の押圧ピン8bが他方のスリット64に隣接する第1部分21の部位を押圧する。押圧ピン8a、8bによる押圧前のシート材61の状態を図12に二点鎖線で示し、押圧後の状態を実線で示す。これによると、押圧前のスリット63、64の形状は直線状であるのに対し、押圧後のスリット63’、64’は、スリットの押圧側(図12で右側)の縁が押圧方向にわずかに湾曲してスリット63’、64’の幅が拡がっているのがわかる。
図13及び図14には、シート材61の第1部分21を実線で示し、前面側の筐体2及び窓部5を破線で示してある。図13は、2つの筐体2、3を接合する前の状態、すなわち押圧ピン8a、8bによって第1部分21を押圧する前の状態を示し、図14は、2つの筐体2、3を接合した後の状態、すなわち押圧ピン8a、8bによって第1部分21を押圧した後の状態を示す。
図12に二点鎖線で示す状態、すなわち図13に示す状態から、押圧ピン8a、8bがそれぞれスリット63、64に対向する部位で第1部分21を押圧すると、シート材61は、図12に実線で示す状態、すなわち図14に示す状態に変位される。このとき、押圧ピン8aの先端がスリット63の折れ線L1側を背面側に押し込んでスリット63が図12に実線で示す形状(スリット63’)にわずかに変形され、押圧ピン8bの先端がスリット64の折れ線L1側を背面側に押し込んでスリット64が図12に実線で示す形状(スリット64’)にわずかに変形される。また、このとき、シート材61の第2部分22が背面側の筐体3に対して移動を規制され、且つ第1部分21が嵌合体12、及びスペーサ突起13a、13bによって背面側から支えられているため、スリット63、64と折れ線L1との間の第1部分21の押圧ピン8a、8bによる押圧部位が部分的に背面側に向けて押し込まれてわずかに湾曲される。
上記のようにスリット63、64が変形し且つシート材61の第1部分21が湾曲することで、第1部分21の押圧ピン8a、8bによる押圧部位が押圧方向に対して傾斜し、押圧ピン8a、8bによる押圧力の一部が第1部分21をケース1の端壁1aに向かう方向に付勢する力として作用する。これにより、シート材61の第1部分21と第3部分23の間の折れ線L1がケース1の端壁1aに近付く方向に移動され、第1部分21が図12に二点鎖線で示す位置(図13に示す状態)から実線で示す位置(図14に示す状態)に移動される。
つまり、本実施形態においても、揮散装置60の筐体2、3を接合してケース1を組み立てる動作により、シート材61の第1部分21を所定位置に位置決めすることができ、表示部62を筐体2の窓部5の中央に位置合わせすることができ、表示部62を見易くすることができる。
なお、本実施形態のように、ピン8a、8bによる押圧力をシート材61を移動させる方向の力に変える変向手段としてスリット63、64を第1部分21に設けた場合、上述した第1の実施形態のコ字状の切り込み27を設けた場合と比較して、第1部分21を端壁1aに向けて移動させる方向の付勢力をより強くすることができ、表示部62を窓部5の中心により確実に位置合わせすることができる。
また、本実施形態によると、背面側の筐体3の内面3dに突設した嵌合体12やスペーサ突起13a、13bがシート材61の第1部分21を背面側から支える支え部材として機能するため、第1部分21の一部が押圧ピン8a、8bによって背面側に押し込まれた際に第1部分21の背面側への移動を規制することができ、第1部分21の変形を助けることができる。しかし、このような支え部材は本願発明に必須の構成ではなく、支え部材が無くても、押圧ピン8a、8bによる押圧によって第1部分21を変形させることができ、第1部分21を端壁1aに向けて移動させることができる。
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態に係る揮散装置(図示省略)のシート材71(薬剤担持体)を部分的に示す斜視図である。本実施形態の揮散装置は、シート材71の構造が異なる以外、上述した第1の実施形態の揮散装置10と略同じ構造を有する。よって、ここでは、第1の実施形態の揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成についてのみ詳細に説明する。
本実施形態の揮散装置は、表示シート6を有しておらず、その代わりに、シート材71の第1部分21の表面に、上述した第1の実施形態の第2の変形例におけるシート材4の表示部41と同様の表示部72を備えている。表示部72は、薬剤Yの効果が終了する時期をユーザーに知らせるための「おわり」などの文字を表示することができる。また、本実施形態では、シート材71の第3部分23の外面23aには表示部を設けていないが、第1の実施形態と同様に第3部分の外面23aに表示部24を設けてもよい。
さらに、シート材71は、第1の実施形態のシート材のコ字状の切り込み27と同様のコ字状の切り込み73(変向手段)を有する。また、シート材71は、切り込み73の両端につながった2本の折罫線74、75を有する。背面側の筐体3の内面3dには、シート材71の切り込み73により囲まれた矩形のシート片76の背面に当接してシート片76を背面側から支える支えピン77(支え部材)が突設されている。シート材71の第2部分22には、支えピン77を挿通する孔22aが設けられている。孔22aの直径は、支えピン77の直径より十分に大きい。また、前面側の筐体2の内面2dには、第1部分21の幅方向において切り込み73の後述する第2の切り込み73bの外側の部位に当接してこの部位を背面側に向けて押圧する2本の押圧ピン78、79(押圧部材)が突設されている。
コ字状の切り込み73は、シート材71の第1部分21の長手方向(第1の方向)と直交する短手方向(第2の方向)に直線状に延びた第1の切り込み73aと、この第1の切り込み73aの両端から第1部分21の長手方向に沿って折れ線L1に向けて直線状に延びた2本の第2の切り込み73bと、をコ字状につなげた形状を有する。2本の第2の切り込み73bは同じ長さに形成されている。この切り込み73は、表示部72と折れ線L1の間に設けられている。
折罫線74、75は、それぞれ、コ字状の切り込み73の第1の切り込み73aから離間した第2の切り込み73bの端部から第1部材21の幅方向の外側に延びて設けられている。2本の折罫線74、75は、シート材71の第1部分21をこの部位で折り曲げ易く加工したものであり、第1部分21の幅方向に互いに離間して第1部分21の上端縁及び下端縁まで延びている。2本の折罫線74、75は、表示部72と折れ線L1との間で折れ線L1と略平行且つ折れ線L1から略等距離となる位置に設けられている。
以下、本実施形態の揮散装置の作用効果について説明する。
上述した切り込み73及び折罫線74、75を有するシート材71を収容してケース1の2つの筐体2、3を接合すると、前面側の筐体2の内面2dに突設した押圧ピン78、79が第1部分21の幅方向における第2の切り込み73bの外側で第1部分21を押圧する。押圧ピン78、79による押圧前のシート材71の状態を図15に二点鎖線で示し、押圧後の状態を実線で示す。
図15に二点鎖線で示す状態から、押圧ピン78、79がそれぞれ切り込み73の幅方向の外側を押圧すると、シート材71が図15に実線で示す状態に近づくように変形され、シート材71の第1部分21が2本の折罫線74、75で折り曲げられ、押圧ピン78、79によるシート材71の押圧部分が押圧方向に対して傾斜する。この状態から押圧ピン78、79によってシート材71がさらに背面側に押し込まれると、押圧ピン78、79による押圧力の一部がシート材71の第1部分21を端壁1aに向けて移動させる方向の力として作用する。このとき、シート材71の第2部分22が背面側の筐体3に対して移動を規制されているため、第1部分21がケース1の端壁1aに向けて移動され、図15に実線で示す状態に配置される。
つまり、本実施形態においても、筐体2、3を接合してケース1を組み立てる動作により、シート材71の第1部分21を所定位置に位置決めすることができ、表示部72を筐体2の窓部5の中央に位置合わせすることができ、表示部72を見易くすることができる。
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
例えば、上述した実施形態では、シート材4を折れ線L1、L2でJ字状に折り曲げた場合について説明したが、これに限らず、シート材4はL字状に折り曲げたものであってもよく、折り曲げずに平板状のものであってもよい。また、ケース1の中に収容する薬剤担持体はシート状に限らず、板状やブロック状であってもよい。例えば、薬剤担持体をブロック状とした場合には、上述した各実施形態のように切り込み27、31、42、44、52を設ける代わりに、押圧ピンが当接する薬剤担持体の表面に移動方向に傾斜した傾斜面を設ければよい。
また、上述した実施形態では、シート材4の第2部分22の移動を規制する嵌合体12を背面側の筐体3の内面3dに設けたり、第1部分21の端縁を当接させるスペーサ突起や突き当て凸部をケース1の内面に設けたりして、シート材4の移動を規制するようにしたが、例えば、ケース1の内面から突設した突起をシート材4に設けた孔に通してシート材4の所定方向への移動を規制するようにしてもよい。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
薬剤の効果の終了時期を知らせるための表示部を備えた薬剤担持体と、
前記薬剤担持体を内部に収容して互いに接合する第1の筐体及び第2の筐体と、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体の少なくとも一方に設けられ、前記薬剤担持体の前記表示部を外部に露出するための窓部と、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体の少なくとも一方の内面から前記薬剤担持体に向けて突設した突起と、
前記突起に対向して前記薬剤担持体に設けられ、前記第1の筐体および前記第2の筐体を接合する動作によって前記突起から受ける押圧力を、前記表示部を前記窓部に対して位置合わせする方向へ前記薬剤担持体を移動させる方向の力に変える変向手段と、
を有する揮散装置。
[2]
前記薬剤担持体は、薬剤を含侵したシート材であり、
前記突起は、前記シート材の表面と交差する方向に突設されており、
前記変向手段は、前記位置合わせする方向と直交する方向に延びた第1の切り込みとこの第1の切り込みの両端から前記位置合わせする方向に延びた2つの第2の切り込みを前記シート材を貫通して設けたコ字状の切り込みを含み、前記コ字状の切り込みにより囲まれた領域の前記シート材の表面に前記突起が当接する位置に前記コ字状の切り込みが配置されている、
[1]の揮散装置。
[3]
前記シート材は、前記第1の筐体に対向する第1部分、前記第2の筐体に対向する第2部分、および前記第1部分と前記第2部分をつなげた第3部分を有し、
前記第1部分が前記コ字状の切り込みを有し、
前記第1部分が前記表示部を有し、
前記第2の筐体は、前記第2部分の移動を規制する規制手段を備え、
前記第1の筐体は、前記突起を備えている、
[2]の揮散装置。
[4]
前記第1の筐体に設けた他の窓部と、
前記他の窓部に固定され、薬剤の効果の終了時期を知らせるための他の表示部を備えた表示シートと、
をさらに有する[1]の揮散装置。
[5]
前記薬剤担持体は、薬剤を含浸したシート材であり、
前記突起は、前記シート材の表面と交差する方向に突設されており、
前記変向手段は、前記位置合わせする方向と交差する方向に延びて前記シート材を貫通して設けたスリットを含み、前記位置合わせする方向における前記スリットの下流側で前記シート材の表面に前記突起が当接する位置に前記スリットが配置されている、
[1]の揮散装置。
[6]
前記突起による押圧位置から外れた位置で前記突起による押圧方向と反対側から前記シート材を支える支え部材をさらに有する、
[2]、[3]、[5]のいずれか1つの揮散装置。
[7]
薬剤を含浸し、含浸した薬剤の効果の終了時期を知らせるための表示部を備えたシート材と、
前記シート材を内部に収容して互いに接合する第1の筐体及び第2の筐体と、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体の少なくとも一方に設けられ、前記シート材の前記表示部を外部に露出するための窓部と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体を接合する方向と略直交し且つ前記表示部を前記窓部に対して位置合わせする第1の方向と略直交する第2の方向に延びた第1の切り込みとこの第1の切り込みの両端から前記第1の方向に延びた2つの第2の切り込みを前記シート材を貫通して設けたコ字状の切り込みと、
前記コ字状の切り込みにより囲まれた領域のシート片に対向する位置で前記第1の筐体及び前記第2の筐体の一方の内面から突設され、前記シート片を支える支え部材と、
前記2つの第2の切り込みの前記シート片の反対側の前記シート材に対向する位置で前記第1の筐体及び前記第2の筐体の他方の内面からそれぞれ突設され、前記第1の筐体及び前記第2の筐体を接合する動作によって、前記シート片の前記第2の方向の外側の前記シート材の表面を押圧する2つの押圧部材と、
を有する揮散装置。