JP7360231B2 - 切削用チップ及びビット - Google Patents
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従来の超硬チップとして、球状のラウンドチップ、円錐形のスパイクチップ、円錐形の頂部が球状に構成されたセミボタン、2種類の円錐を組み合わせたダブルコニカルチップ、円錐形の側面(傾斜面)が球面であり或いはアールがついて弾丸状の形状をしているバリスティック(バリスティックボタン)チップ、バリスティックチップの側面におけるアールをさらに大きくしたパラボリックチップ、セミボタンチップをより先鋭な形状(尖った或いはシャープな形状)にしたスパイクチップその他が存在する。さらに、回転体形状ではなく平面形状が概略矩形であり、断面形状が不等辺五角形(ハウス形状)のハウスチップ、ハウスチップをビットで直交して配置したクロスチップ等も存在する。
バリスティックチップ21は打撃用のビットで用いられる場合が多く、図7の矢印A方向(ビット30に装着した場合の掘削方向)の打撃や荷重に強い。しかし、チップ21を取り付けたビット30が回転する際に、図7における矢印Bで示す様に相対的にチップ21に衝突する掘削対象物(地盤、岩盤等)に対しては最適とは言い難い。
図8で示す従来のハウスチップ22は、その形状が不等辺五角形であり、チップ22を取り付けたビット30が回転する際に、図8における矢印Cで示す様に相対的にチップ22に衝突する掘削対象物である地盤や岩盤を好適に切削することが出来る。しかし、切削対象となる地盤が例えば粘性土である場合には、ハウスチップ22で切削された粘性土が移動する場所(いわゆる「逃げ道」)が存在しないので、当該切削された粘性土はチップ22やビット30に付着して、ビットによる切削を阻害することがある。或いは、チップ22やビット30に付着した粘性土がビット30を締め固めて、ビット30の回転を阻害する場合もある。
しかし、特許文献1のハウスチップは軟質岩や粘土層を効率良く切削することは出来るが、切削された土壌が付着することによるジャミングの防止を目的とするものではなく、上述した問題を解決する技術ではない。
断面がバリスティック形状をしており、平面形状が矩形状であり、矩形状の長手方向の切削対象(例えば地盤)と最初に当たる端部(1A)は平坦な端面を形成しており、
当該端面(1A)側の突出寸法(h2)が他端部(1B)の突出寸法(h1)よりも長く、矩形状の長手方向について(例えば5°の)傾斜(1C)が形成されていることを特徴としている。
本発明において、チップ(1)の最初に切削対象には当たらない側(高さ寸法が小さい側:突出量がh1の側)の端部(1B)に湾曲面(或いはアール)が形成されているのが好ましい。
ビット先端部(10A)の半径方向内側の領域と半径方向外側の領域では、それぞれ等間隔に前記切削用チップ(1)が配置され、ビット先端部(10A)の円周方向については半径方向内側の切削用チップ(1-1)と半径方向外側の切削用チップ(1-2)が交互に配置されており、
半径方向内側の切削用チップ(1-1)と半径方向外側の切削用チップ(1-2)の各々のビット回転方向前方には凹部(11、12)が形成されていることを特徴としている。
また、半径方向外側の切削用チップ(1-2)の半径方向最外方部分(1-2D)がビット外周面(10B)よりも(僅かに:例えば1mm程度)半径方向外方に突出しているのが好ましい。
そして、矩形状の長手方向の切削対象(例えば地盤)と最初に当たる端部(1A)側の突出寸法(h2)が他端部(1B)の突出寸法(h1)よりも長く、矩形状の長手方向について(例えば5°の)傾斜(1C)が形成されているので、切削された地盤には矩形状の長手方向に形成された傾斜(1C)に対応する空間(S)が形成される。その空間(S)が逃げ溝として作用し、切削対象(例えば地盤)と最初に当たる端部(1A)側の端面で切削された地盤は、当該傾斜(1C)に逃げることが出来るので、チップ(1)やビット(10)に付着することが防止される。その結果、切削された地盤(例えば粘性土)がチップ(1)やビット(10)に付着して、切削を阻害してしまうことが防止される。また、切削された地盤(例えば粘性土)がチップ(1)やビット(10)に付着して、ビット(10)を締め固めてしまうことも無い。
さらに、本発明の切削用チップ(1)の断面形状がバリスティック形状であり、全体形状が砲弾状或いはコニカル形状であるため、打撃を作用させる場合でも切削対象である硬い地盤や岩盤を好適に切削することが出来る。
チップ(1)の最初に切削対象には当たらない側の端部(1B)も平坦だとチップ(1)が破損するが、当該端部(1B)に湾曲面(或いはアール)を形成すればチップ(1)の破損を防止出来ることが、発明者の実験で確認されている。
また、半径方向内側のチップ(1-1)と半径方向外側のチップ(1-2)の回転方向前方に凹部(11、12)が形成されているので、負圧の発生を抑制して、切削された地盤等がチップ(1)やビット(10)に付着することを防止出来る。
これに加えて本発明のビット(10)において、半径方向外側のチップ(1-2)の半径方向最外方部分(1-2D)がビット外周面(10B)よりも半径方向外方に(例えば1mmほど)突出していれば、当該半径方向最外方部分(1-2D)によりビット(10)の半径方向外方の切削対象物が切削されるので、切削が良好に実行され且つ切削対象物によりビット(10)が締め固められてしまうことが防止される。
さらに、礫や軽石が存在していたとしても、ビット(10)により打撃を付加することにより、切削、穿孔するこが可能となった。
ここで、二重管ビットでは鉄筋コンクリートを切削すると鉄筋が絡まり切削できなくなるため、鉄筋コンクリートを切削する場合には、本発明はリングビットとして構成される。
図1~図3を参照して、本発明の実施形態に係る切削用チップについて説明する。
図1、図2において、全体を符号1で示す切削用チップは、バリスティック形状の断面を有している(左側端面1A参照)。そして、図2に示す様に、切削用チップ1の平面形状は概略矩形状である。
図1では、切削用チップ1における切削用ビット10から突出した部分が示されている。ここで、切削用チップ1を切削用ビット10に装着して切削対象(地盤等)を切削する際に、切削用チップ1の上方(図1で上方)が切削用ビット10の掘削方向(地中側)であり、バリスティック形状は、掘削方向に打撃を加えて掘削する場合(例えば、ダウンザホールハンマー)に、強い耐久性を発揮する。
掘削の際、切削用チップ1の図1における左側端部1Aはビット回転方向側であり、切削対象の地盤等と最初に衝突する端部である。
図1、図2において、切削用チップ1の端面1Aは平坦な端面を形成しており、一方、端面1Aと反対側(図1、図2では右側)の端部1Bには湾曲面(アール)が形成されている。
本明細書において、切削用チップ1の図1において左側の端部1Aを切削側端部1A、図1において右側の端部1Bを後側端部1Bと記載する場合がある。
切削用チップ1を切削用ビット10に埋設した状態を示す図3において、切削側端部1A側の高さ寸法L2は、後側端部1B側(他端部側)の高さ寸法L1よりも大きく設定されている(L2>L1)。そしてチップ1は、切削側端部1Aから後側端部1Bに至るまでビット10の埋設用凹部10Cに埋設されており、埋設用凹部10Cの深さ寸法は符号d1で示されている。
図3或いは後述する図4では、深さ寸法d(d1、d3、d4)、チップ1の高さ寸法L(L1、L2、L3、L4)、チップ1の突出寸法h(h1、h2、h3、h4)の各々において、大小関係を明示するため、実際の切削用チップ1に比較して、深さ寸法dをチップ1の高さ寸法L、突出寸法hに比較して小さく表示している。
図3において、切削側端部1A側のビット10の埋設面からの突出寸法h2(=L2-d1)は、後側端部1B側の突出寸法h1(=L1-d1)よりも大きい。すなわち、 h2>h1 である。そして突出寸法h1とh2との差異(h1-h2)は、高さ寸法の差異(L1-L2)に等しい(h1-h2=L1-L2)。
一方、チップ1の後側端部1Bを湾曲した形状とすれば、後側端部1Bを平坦に形成した場合に比較して破損が防止覚めるという事実が、発明者の実験で確認されている。
図示の実施形態に係る切削用チップ1においては、切削用ビット10の回転方向前方に位置する切削側端部1Aのみが切削し(切削抵抗を発生し)、後側端部1Bは切削しない(切削抵抗は発生しない)。
それに対して、図4で示す切削用チップ1-3では、切削側端部1-3A(図3における左側の端部)の高さ寸法L4と、後側端部1-3B(右側の端部)の高さ寸法L3が等しい。それと共に、切削用ビット10のチップ埋設用の凹部10Cの底部には傾斜が形成されており、凹部10Cの切削側端部1-3A側(図4の左側)の深さ寸法d4は、後側端部1-3B側(図4の右側)の深さ寸法d3よりも小さい(d4<d3)。その結果、チップ1の切削側端部1-3Aの突出寸法h4(図1のh2に相当)は、後側端部1-3Bの突出寸法h3(図1のh1に相当)よりも大きい(h4>h3)。
そのため、図1~図3の実施形態の様に、チップ1自体において、切削側端部1Aの高さ寸法L2を後側端部1Bの高さ寸法L1より大きくなる様に加工して(L1<L2として)、ビット10の凹部10C(チップ埋め込み用の凹部)の底部に傾斜を設けず、深さ寸法d1を均一にする方が、加工の労力及びコストを節減することが出来る。
ただし、図4で示す様に、切削用チップ1の切削側端部1-3Aの高さ寸法L4と後側端部1-3Bの高さ寸法L3を等しくして、ビット10の凹部10Cの底部を加工して傾斜をつける(d4<d3)ことも可能である。
そして、切削用チップ1の切削側端部1Aの突出寸法h2を後側端部の突出寸法h1よりも大きく(h2>h1)設定することにより、図1の矢印E方向(平面形状である矩形状の長手方向:図1~図4の左右方向)について傾斜1Cが形成される。切削用チップ1の長手方向長さ(矢印E方向長さ)が一定値であれば、左右両端部の突出寸法の差異「h2-h1」を適宜調整することにより、傾斜1Cも決定することが出来る。傾斜1Cは、例えば5°に設定される。ただし、傾斜角度5°は限定的な数値ではなく、変更可能である。図1、図3、図4では傾斜1Cを明示するために、傾斜角度は例示された角度である5°よりも大きく表示している。
所謂「逃げ溝」として作用する空間Sは、切削用チップ1によって切削された粘性土が移動するに際して抵抗がない。そのため、切削された粘性土はチップ1やビット10に付着すること無く、抵抗の無い空間Sを選択的に通過して移動する。すなわち、切削された粘性土はチップ1やビット10に付着せず、チップ1の切削を阻害することや、ビット10を締め固めてしまうことは防止される。
換言すると、図示の切削用チップ1では、切削対象である地盤を構成する粘性土等(土壌)が図1、図2の矢印Dで示す様にチップ1に衝突して切削されると、切削された粘性土等(土壌)は空間Sを通過して逃げる。そのため、切削された粘性土はチップ1やビット10に付着しないのである。
図5において、切削用ビット10はリングビットを構成しており、円環状の先端部10Aには、図1~図3を参照して説明した切削用チップ1が埋設されている。切削用チップ1はビット10の先端部10Aのチップ埋め込み用凹部10C(図5、図6)に嵌合しており、例えばロウ付け等の公知技術により固定されている。
図示の実施形態では切削用ビット10はリングビットとして構成しているが、その他のタイプのビットにも適用可能であり、例えばリングビットとインナービットにより構成される二重管ビットに適用することも可能である。
説明の便宜上、半径方向内側の領域に配置される切削用チップを符号1-1で示し、半径方向外側の領域に配置される切削用チップを符号1-2で示しているが、チップ1-1及びチップ1-2は同様の構成を有するチップである。
そのため、半径方向内側の切削用チップ1-1、半径方向外側の切削用チップ1-2において、切削側端部(1-1A、1-2A:図1、図2の切削側端部1Aに相当)が各々ビット回転方向前方(時計回転方向前方)となる様に切削用ビット10の地中側先端に配置されている。
また、半径方向内側の切削用チップ1-1、半径方向外側の切削用チップ1-2において、切削側端部1-1A、1-2Aの各々のビット回転方向前方(時計回転方向前方)には、それぞれ凹部11、12が4個ずつ形成されている。そして凹部11、12は、チップ1-1、1-2のビット回転方向直前の位置が最も窪み量(凹部の幅及び深さ)が大きくなる様に形成されている。
凹部11、12を形成することにより切削対象を確実に切削すると共に、半径方向内側の切削用チップ1-1と半径方向外側の切削用チップ1-2のビット回転方向前方の領域における負圧の発生を防止して、粘性土等がチップ1-1、1-2やビット10に付着することを防止している。
逃げ溝13により、(例えば切削用ビット10の側部における)負圧の発生を防止し、粘性土がチップ1やビット10に付着することを防止するために形成されている。
また、逃げ溝13におけるビット回転方向後方の部分には、それぞれ硬装盛14が施されている。逃げ溝13のビット回転方向後方の部分は、岩盤や地盤と接触或いは衝突して破損する可能性があるが、硬装盛14を施すことにより破損を防止して、リングビット10の長寿命化を図ることが出来る。
そして、切削用チップ1-1、1-2の掘削方向前方(図5では紙面に垂直な方向で看者側:図6では左側:図1、図2では上側)には傾斜1Cによる空間S(図1参照)が形成され、図1、図2を参照して上述した様に、空間Sは切削側端部1-1A、1-2Aにより切削された地盤、土壌の「逃げ溝」として作用する。図5において、半径方向外側のチップ1-2により切られた粘土が逃げる方向が矢印Gで示されている。
半径方向最外方部分1-2Dにより、切削用ビット1直近の半径方向外方の地盤を切削すれば、当該地盤により切削用ビット10が締め固められてしまうことが防止され、切削効率が向上する。
明確には図示されていないが、図5、図6の切削用ビット1により、鉄筋コンクリートの鉄筋も切断することも可能である。
鉄筋コンクリートの鉄筋を切断する場合、二重管ビットでは鉄筋が絡まって切断が困難になるが、単管のリングビットである実施形態の切削用ビット10であれば、鉄筋コンクリート内の鉄筋が絡まることなく切断される。
そして、切削用チップ1を切削用ビット10に装着した際、切削用チップ1の切削側端部1A(切削対象と最初に当たる側の端部)側の切削用ビット10からの突出寸法h2が後側端部1Bの突出寸法h1よりも長く、切削用チップ1の長手方向(切削用チップ1の平面形状である矩形の長手方向)について例えば5°の傾斜1Cが形成されているので、切削された地盤には、常に、傾斜1Cに対応する空間Sが形成される。その空間Sが切削された切削対象の逃げ溝として作用し、切削側端部1Aの端面で切削された切削対象物は、傾斜1C(空間S)に抵抗なく移動する(逃げる)ことが出来るので、チップ1やビット10に付着することが防止され、切削を阻害してしまうことが防止される。
また、切削用チップ1の切削側端部1A(切削対象と最初に当たる側の端部)の断面形状がバリスティック形状であり、砲弾状のコニカル形状となっているため、打撃が作用しても切削対象である地盤を切削することが可能である。
端部1Bを湾曲面として構成すれば、端部1Bを平坦面として構成した場合よりも破損し難いことは、発明者の実験で確認されている。
そのため、切削用チップ1-1、1-2の回転方向前方の領域における負圧の発生を防止し、粘性土等がチップ1、1-2やビット10に付着することを防止して、チップ1-1、1-2の切削能力を向上できる。
加えて、逃げ溝13におけるビット回転方向後方には、硬装盛14が施されているので、逃げ溝13のビット回転方向後方の領域における破損を防止することが出来る。
1A・・・切削側端部(左側端部、切削対象と最初に当たる端部)
1B・・・後側端部(右側端部)
1C・・・傾斜(部)
1-1・・・半径方向内側の切削用チップ
1-2・・・半径方向外側の切削用チップ
1-2D・・・半径方向外側の切削用チップの半径方向最外方部分
10・・・切削用ビット
10A・・・切削用ビットの先端部
10B・・・切削用ビット外周面
11、12・・・凹部
h1・・・突出寸法(後側端部側の突出寸法)
h2・・・突出寸法(切削側端部側の突出寸法)
Claims (4)
- 切削用ビット(10)の先端部(10A)に埋設された切削用チップ(1)において、
断面がバリスティック形状をしており、平面形状が矩形状であり、矩形状の長手方向の切削対象と最初に当たる端部(1A)は平坦な端面を形成しており、
長手方向と直交する幅方向寸法よりも長手方向寸法が長く、
前記切削対象と最初に当たる端部(1A)の長手方向他端部(1B)は平面形状が湾曲しており、
前記切削対象と最初に当たる端部(1A)側の突出寸法(h2)は前記他端部(1B)の突出寸法(h1)よりも長く、矩形状の長手方向について傾斜(1C)が形成されており、当該傾斜(1C)の上方の領域における空間(S)は切削された切削対象の逃げ溝を構成しており、
深さ方向寸法(d1)が長手方向全域に亘って均一である様に切削用ビット(10)に埋設されることを特徴とする切削用チップ。 - 先端部(10A)に請求項1の切削用チップ(1)が埋設されている切削用ビット(10)において、
ビット先端部(10A)の半径方向内側の領域と半径方向外側の領域では、それぞれ等間隔に前記切削用チップ(1)が配置され、前記半径方向内側の領域の切削用チップ(1-1)の突出方向は切削用ビット(10)の中心軸に対して半径方向内方に向かって傾斜しており、前記半径方向外側の領域の切削用チップ(1-2)の突出方向は切削用ビット(10)の中心軸に対して半径方向外方に向かって傾斜しており、ビット先端部(10A)の円周方向については半径方向内側の切削用チップ(1-1)と半径方向外側の切削用チップ(1-2)が交互に配置されており、
半径方向内側の切削用チップ(1-1)と半径方向外側の切削用チップ(1-2)の各々のビット回転方向前方には凹部(11、12)が形成されていることを特徴としている切削用ビット。 - 切削用チップ(1-1、1-2)の各々のビット回転方向前方に形成されている凹部(11、12)は、切削用チップ(1-1、1-2)の直前の位置で最も凹み量が大きい請求項2の切削用ビット。
- 半径方向外側の切削用チップ(1-2)の半径方向最外方部分(1-2D)がビット外周面(10B)よりも半径方向外方に突出している請求項2、3の何れかの切削用ビット。
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