従来、この種の全一次燃焼式バーナとして、燃焼板部を、額縁状のバーナ枠と、バーナ枠で囲われる開口部をバーナボディ側から覆う耐熱繊維製の混合気透過材と、混合気透過材のバーナボディ側を向く裏面に重ねられる、多数の分布孔が形成された分布板とで構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、分布板の外周縁部を、バーナ枠との間に混合気透過材の外周縁部を挟んだ状態でバーナ枠にスポット溶接している。
また、他の従来例として、燃焼板部を、額縁状のバーナ枠と、バーナ枠で囲われる開口部をバーナボディと反対側から覆う耐熱繊維製の混合気透過材とで構成したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
上記前者の従来例では、分布板とバーナ枠との間で混合気透過材が圧縮されることから、バーナ枠に近い開口部周縁領域に合致する混合気透過材の部分がある程度圧縮された状態になり、この部分を通って少量の混合気が開口部周縁領域に滲み出る。そして、開口部周縁領域では、滲み出た噴出速度の遅い混合気でリフトしにくい火炎が形成され、この火炎による保炎作用で耐リフト性が向上する。
一方、上記後者の従来例では、開口部周縁領域に流れた混合気が混合気透過材を透過して、他の部分と同じ速度で噴出する。そのため、開口部周縁領域にリフトしにくい火炎が形成されなくなり、耐リフト性が悪化する。
本発明は、以上の点に鑑み、額縁状のバーナ枠と、バーナ枠で囲われる開口部をバーナボディと反対側から覆う耐熱繊維製の混合気透過材とで構成される燃焼板部を備える全一次燃焼式バーナであって、耐リフト性を向上できるようにしたものを提供することをその課題としている。
上記課題を解決するために、本発明は、内部に混合気が供給されるバーナボディと、バーナボディの開放面を覆う、混合気が噴出する燃焼板部とを備える全一次燃焼式バーナであって、燃焼板部は、額縁状のバーナ枠と、バーナ枠で囲われる開口部をバーナボディと反対側から覆う耐熱繊維製の混合気透過材とで構成されるものにおいて、バーナ枠の内周縁から外方に所定距離離れた部分に、混合気透過材の外周縁部が結合され、バーナ枠と混合気透過材との少なくとも一方に、混合気透過材の外周縁部より内方に位置させて、バーナ枠と混合気透過材との他方から離れる方向に屈曲する段差部が形成され、この段差部により、バーナ枠と混合気透過材との間に、バーナ枠の内周縁に達する隙間が確保されることを特徴とする。
本発明によれば、バーナ枠で囲われる開口部周縁からバーナ枠と混合気透過材との間の隙間に流れた混合気がこの隙間に面する混合気透過材の部分を透過する。そのため、上記隙間に流れる混合気の量を少量に制限することで、この隙間に面する混合気透過材の部分からの混合気の噴出速度を遅くすることができる。従って、上記隙間に面する混合気透過材の部分、即ち、バーナ枠で囲われる開口部周縁の外方に隣接する部分にリフトしにくい火炎を形成でき、耐リフト性を向上できる。
尚、熱変形等を生じても、バーナ枠と混合気透過材との間に隙間が確保されるようにするには、隙間をある程度大きくする必要があり、隙間に流れる混合気の量を少量に制限することが困難になる。この場合、バーナ枠の内周縁に、混合気透過材側に屈曲する曲げ縁部を形成すれば、上記隙間を大きくしても、この隙間に流れる混合気の量を少量に制限できる。
但し、上記曲げ縁部を形成するだけでは、熱変形等により曲げ縁部と混合気透過材とが近付き過ぎて、上記隙間に流れる混合気の量が過少になってしまう恐れがある。この場合、バーナ枠の上記隙間に面する部分に、周方向に間隔を存して複数の透孔を形成し、或いは、曲げ縁部に、周方向に間隔を存して複数の切欠きを形成すれば、上記隙間にこれら透孔や切欠きを通して混合気が流入するため、上記隙間に流れる混合気の量が過少になってしまうことを防止できる。
尚、本発明においては、混合気透過材のバーナ枠側を向く裏面に、多数の分布孔が形成された分布板を重ね合わせてもよい。
図1乃至図4に示す燃焼装置は、内部に混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)が供給されるバーナボディ11と、バーナボディ11の下向きの開放面111を覆う燃焼板部12とを備える本発明の実施形態の全一次燃焼式バーナ1と、バーナボディ11の開放面111を囲うボディフランジ部112にビス21で締結される上端の筐フランジ部22を有する燃焼筐2とを備えている。燃焼筐2の内部には、給湯用の熱交換器3が収納されている。
熱交換器3は、多数のフィン31とこれらフィン31を貫通する複数の吸熱管32とを備えるフィンチューブ型熱交換器で構成されている。燃焼筐2の横方向一側と他側の側板23,24の外面には、隣り合う2本の吸熱管32,32の接続路を各側板23,24との間に画成する接続蓋33が複数取付けられており、全ての吸熱管32が直列に接続される。また、上流端の吸熱管32に接続される接続路を横方向他側の側板24との間に画成する接続蓋33には入水口34が設けられている。
また、燃焼筐2の後側の側板25の熱交換器3より上方の部分の内側には、管から成る上下3本の第1水路51が側板25に接するように配置され、燃焼筐2の前側の側板26の熱交換器3より上方の部分の内側にも、管から成る上下3本の第3水路53が側板26に接するように配置されている。また、燃焼筐2の横方向一側の側板23の外面には、上下3本の第1水路51と熱交換器3の下流端の吸熱管32との接続路を側板23との間に画成する流入側ヘッダ蓋51と、上下3本の第3水路53の接続路を側板23との間に画成する流出側ヘッダ蓋52とを取付け、流出側ヘッダ蓋52に出湯口53を設けている。更に、燃焼筐2の横方向他側の側板24には、図2、図3に示す如く、後側の第1水路51と前側の第3水路53とを接続する第2水路52が設けられている。第2水路52は、側板24に形成した横方向内方への窪みとこの窪みを覆うように側板24の外面に取付けた蓋54とで構成されている。そして、入水口34から供給される水が熱交換器3で加熱され、加熱された水が流入側ヘッダ蓋51内の接続路と第1水路51と第2水路52と第3水路53と流出側ヘッダ蓋52内の接続路とを介して出湯口53から出湯されるようにしている。また、燃焼筐2の横方向一側の側板23には、流出側ヘッダ蓋52内の接続路の上部から後方にのびる、側板23に形成した横方向内方への窪みとこの窪みを覆う流出側ヘッダ蓋52に一体の蓋52aとで構成される第4水路54が設けられている。そして、これら第1乃至第4水路51~54に流れる水により燃焼筐2の各側板23~26が冷却されるようにしている。
また、燃焼筐2の前側の側板26には、上方から1番目と2番目の2本の第3水路53,53の間の側板部分を貫通して燃焼筐2内に突出する点火電極61と接地電極62とフレームロッド63とを有する電極部品6が装着されている。尚、電極部品6には、燃焼筐2内を視認できる覗き窓64が付設されている。
次に、全一次燃焼式バーナ1について詳述する。バーナボディ11には、混合気を供給するファン4を接続する流入口113が開設されている。流入口113には、ファン4停止時にバーナボディ11内に残留する混合気がファン4側に逆流することを阻止する逆止弁13が装着されている。逆止弁13は、流入口113に嵌め込まれる樹脂製の弁筐131と、バーナボディ11内を向く弁筐131の開口部に開閉自在に軸着された樹脂製の弁板132とで構成されている。
図5、図6も参照して、燃焼板部12は、額縁状のバーナ枠121と、バーナ枠121で囲われる開口部122をバーナボディ11と反対側(下方)から覆う耐熱繊維製の混合気透過材123とで構成されている。混合気透過材123は、金属或いはSiC等の非金属の耐熱繊維のニット状の織物やフェルト状の不織布で構成される。そして、バーナ枠121の内周縁から外方に所定距離離れた部分に、混合気透過材123の外周縁部123aをスポット溶接で結合している。バーナボディ11内に供給された混合気は、開口部122を通過した後、混合気透過材123を透過して噴出し全一次燃焼する。
バーナ枠121の外周部には、バーナボディ11側(上方)に屈曲した側板部121aと、側板部121aの上端から外方に張出す枠フランジ部121bとが形成されている。そして、枠フランジ部121bをボディフランジ部112と筐フランジ部22との間に挟み込み、更に、枠フランジ部121bとボディフランジ部112との間にパッキン7を介設して、シール性を確保している。また、枠フランジ部121bの下面に断熱材8を装着している。尚、図4に明示する如く、開口部122は、前後方向に沿う断面形状が円弧状に湾曲しており、混合気透過材123も同様に前後方向に沿う断面形状が円弧状に湾曲している。
ここで、本実施形態では、混合気透過材123に、混合気透過材123の外周縁部123aよりも内方に位置させて、バーナ枠121から離れる方向(下方)に屈曲する段差部123bを形成している。そして、この段差部123bにより、バーナ枠121と混合気透過材123との間に、バーナ枠121の内周縁に達する隙間124が確保されるようにしている。これによれば、バーナ枠121で囲われる開口部122の周縁からバーナ枠121と混合気透過材123との間の隙間124に流れた混合気がこの隙間124に面する混合気透過材123の部分を透過する。そのため、上記隙間124に流れる混合気の量を少量に制限することで、この隙間124に面する混合気透過材123の部分からの混合気の噴出速度を遅くすることができる。従って、上記隙間124に面する混合気透過材123の部分、即ち、バーナ枠121で囲われる開口部122の周縁外方に隣接する部分にリフトしにくい火炎を形成でき、耐リフト性を向上できる。
尚、熱変形等を生じても、バーナ枠121と混合気透過材123との間に隙間124が確保されるようにするには、隙間124をある程度大きくする必要があり、隙間124に流れる混合気の量を少量に制限することが困難になる。そこで、本実施形態では、バーナ枠121の内周縁に、混合気透過材123側(下方)に屈曲する曲げ縁部121cを形成している。これによれば、上記隙間124を大きくしても、この隙間124に流れる混合気の量を少量に制限できる。
但し、曲げ縁部121cを形成するだけでは、熱変形等により曲げ縁部121cと混合気透過材123とが近付き過ぎて、上記隙間124に流れる混合気の量が過少になってしまう恐れがある。この場合、図7に示す第2実施形態の如く、バーナ枠121の上記隙間124に面する部分に、周方向に間隔を存して複数の透孔121dを形成し、或いは、図8に示す第3実施形態の如く、曲げ縁部121cに、周方向に間隔を存して複数の切欠き121eを形成すれば、上記隙間124にこれら透孔121dや切欠き121eを通して混合気が流入するため、上記隙間124に流れる混合気の量が過少になってしまうことを防止できる。
また、本実施形態では、混合気透過材123のバーナ枠121側を向く裏面に、多数の分布孔125aが形成された分布板125を重ね合わせている。そして、混合気透過材123の外周縁部123aとバーナ枠121との間に分布板125の外周縁部125bを挟み込んだ状態で、混合気透過材123の外周縁部123aをバーナ枠121にスポット溶接している。また、分布板125に、混合気透過材123の段差部123bに重なる段差部125cを形成している。尚、分布板125は省略してもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、混合気透過材123にバーナ枠121から離れる方向に屈曲する段差部123bを形成して、バーナ枠121と混合気透過材123との間に隙間124を確保しているが、バーナ枠121に混合気透過材123から離れる方向に屈曲する段差部を形成し、或いは、混合気透過材123にバーナ枠121から離れる方向に屈曲する段差部を形成すると共にバーナ枠121に混合気透過材123から離れる方向に屈曲する段差部を形成して、バーナ枠121と混合気透過材123との間に隙間124を確保してもよい。また、上記実施形態の全一次燃焼式バーナは、バーナボディ11の開放面111が下を向くように配置しているが、この開放面11が上を向くように配置する全一次燃焼式バーナにも同様に本発明を適用できる。