JP7359656B2 - ポリウレタンフォーム - Google Patents

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Description

本発明は、反発弾性率のばらつきを抑えたポリウレタンフォームに関する。
ポリウレタンフォームは、例えば、ソファーや枕、マットレスなどの家具や寝具用クッション材、緩衝材、電子部品、自動車部品、靴底部材(ミッドソール、インソール)などあらゆる用途に利用されている材料である。また、これらの用途に応じ、衝撃吸収性や反発弾性などの機能を有するポリウレタンフォームの開発が行われている。
ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを混合し発泡及び硬化反応させることで成形され、その方法としては当該混合液を金型に注入して金型内で発泡及び硬化反応さて成形する方法や、コンベア上の紙やプラスチックフィルムに当該混合液を吐出し発泡及び硬化反応させて、ブロック状のスラブフォームを成形する方法が知られている。その中でも、金型内で発泡及び硬化反応させてポリウレタンフォームを成形する方法では、任意の形状に成形することが容易である。
一方で、ポリウレタンフォームの高反発化が進められている。反発弾性率の高いポリウレタンフォームはクッション性に優れるため、家具や寝具、靴底部材など人との接触を伴う用途には最適である。例えば、特許文献1には金型を用いて成形され反発弾性率の高いポリウレタンフォームであって、クッション材に有用なことが開示されている。
しかしながら、このような金型を用いて成形されたポリウレタンフォームでは、同じ成形品の中で反発弾性率が異なる部分が散見されることがあった。このように反発弾性率が同じ成形品の中でばらついてしまうと、規定値よりも反発弾性率が低い部分が存在してしまい、成形品の物性安定性が得られず不良品が発生しやすくなる虞があった。このような反発弾性率のばらつきや低下は、反発弾性率の高いポリウレタンフォームで顕著に見られた。
特開2003-147044号公報
本発明は、金型内で発泡及び硬化反応させて成形されるポリウレタンフォームであって、同じ成形品の中でも反発弾性率のばらつきを抑えることのできるポリウレタンフォームを提供することを課題とするものである。
本出願人は、金型内で発泡及び硬化反応させて成形されたポリウレタンフォームにおいて、反発弾性率が高い部分と低い部分のセル形状に注目したところ、セル角度に差異があることを見出し、本発明にいたったものである。
すなわち、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料を金型内で発泡及び硬化反応させることで成形されるポリウレタンフォームであって、当該ポリウレタンフォームの表層の測定領域に存在するセルにおいて、平均セル角度が45°以下、平均アスペクト比(長径/ 短径)が1.2以上2.0以下であり、かつセル角度が45°以下のセルが全セル数の50%以上を占め、さらに前記表層の測定領域に存在するセルの平均セル角度は、当該ポリウレタンフォームの中間層の測定領域に存在するセルの平均セル角度よりも小さく、前記表層とは、表面からの厚さ2mmの領域であり、前記中間層とは、厚さDとしたときの表面から(D/2)±1mmの間の領域であることを特徴とする。
このように本発明のポリウレタンフォームは、表層の測定領域では平均セル角度が45°以下、平均アスペクト比(長径/短径)が1.2以上2.0以下であり、かつセル角度が45°以下のセルが全セル数の50%以上を占めているため、同じ成形品でも反発弾性率のばらつきを抑えることができ、しかも表層における平均セル角度が中間層における平均セル角度よりも小さいため、高い反発弾性を有するポリウレタンフォームであっても、反発弾性率のばらつきを抑えることができる。
本発明によれば、同じ成形品の中でも反発弾性率のばらつきを抑えることのできるポリウレタンフォームを得ることができる。
本発明の試験片を説明する図である。 図1の点線Lで切断した切断面を示す図である。 本発明のセル角度を説明する図である。 (a)表層でのセル形状 (b)中間層のセル形状 を示す模式図である。
本発明は、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料を金型内で発泡及び硬化反応させることで成形されるポリウレタンフォームである。
本発明のポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールが含まれており、これらは単独でまたは混合して用いてもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等のアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適であり、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールを付加したポリエーテルポリオールを使用することができる。
ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとから重縮合して得られたものが使用できる。
ポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオールに、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体などをグラフト共重合させたポリマーポリオールなどを使用できる。
ポリオール成分において、数平均分子量が300~4000、平均官能基数が2~3、及び平均水酸基価が35~200mgKOH/gの範囲内のポリエーテルポリオールが好ましい。
以上のようなポリオール成分は、必要に応じて、架橋剤を含んでもよい。
架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ショ糖、ソルビトール、グルコース等のアルコール類が使用できる。特に、これらのうち、3官能以上のものが好ましい。
本発明のイソシアネート成分は、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)、変性MDI、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)などの芳香族イソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDIなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することもできる。変性MDIの具体例としては、ポリメリック体(クルードMDI)の他、ウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体などが挙げられる。
また、イソシアネート成分として、イソシアネート基末端プレポリマーを使用できる。イソシアネート基末端プレポリマーは、前述したイソシアネートとポリオールとをイソシアネートを過剰に反応させることで得られる。具体的には、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(PTMG)と4,4’-MDIを反応させてなるイソシアネート基末端プレポリマーを用いることが好ましい。
イソシアネート基末端プレポリマーは、反発弾性に寄与するハードセグメント(高分子鎖において結合が比較的強い部分。ポリウレタンの場合、ウレタン結合(-CONH-)部分などをさす)と、クッション性に寄与するソフトセグメント(アルキル鎖など)とが、交互に配置された規則的な分子構造をとりやすいため、高い反発弾性を備えたポリウレタンフォームが得られやすいと考えられる。
本発明では、ポリオール成分とイソシアネート成分との混合において、イソシアネートインデックス(NCO基/OH基のモル比)が0.9~2.0の範囲とすることが好ましい。
本発明の発泡剤としては、水(イオン交換水)を用いることができる。添加量は、ポリオール成分100質量部に対し、0.2~3質量部が好ましい。
添加量が0.2質量部未満であれば、発泡が少なく後述する成形条件であってもセル形状の調整が難しくなり、得られるポリウレタンフォームの反発弾性率のばらつきが大きくなる傾向にある。また、添加量が3質量部を超えると、発泡しすぎて得られるポリウレタンフォームのセルが荒れ、フォーム内部が割れやすいなどフォーム状態が劣り、良好な成形品が得られにくい。
本発明の触媒としては、従来から使用されているものであればよく、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミンなどのアミン系触媒、ビスマス触媒などの金属触媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。
触媒の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
本発明の整泡剤としては、ポリウレタンフォームで使用できるものであれば特に限定されないが、シリコーン系化合物が好ましい。例えば、ポリシロキサン鎖およびポリオキシアルキレン鎖を有するシリコーン系化合物を含有するものが好ましく用いられる。シリコーン系化合物中のポリシロキサン鎖およびポリオキシアルキレン鎖は、ブロック型構造を有していてもよいし、主鎖のポリシロキサン鎖にポリオキシアルキレン鎖がグラフトしたグラフト型構造を有していてもよい。また、これらが混在した構造を有していてもよい。シリコーン系化合物のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等の単一のオキシアルキレン基から構成されるもの、または、オキシエチレンオキシプロピレンブロック鎖、オキシエチレンオキシプロピレンランダム鎖等の複数種のオキシアルキレン基から構成されるものが挙げられ、これらの組み合わせから構成されていてもよい。
整泡剤の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.5~9質量部が好ましい。0.5質量部未満であると、整泡作用が弱く、得られるポリウレタンフォームのセルサイズは大きくなり、反発弾性に劣るものとなる。一方、9質量部を超えると、フォーム表面から整泡剤が染み出すブリードアウトが生じ、金型へ密着してしまい脱型がしにくくなる。特に、5質量部を超えると、目的とする反発弾性は得られるものの、使用には問題ない程度にタック感(ベタベタ感)が生じるので、好ましくは、0.5~5質量部である。
本発明のポリウレタン原料には、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤の他に、必要に応じて、さらに他の添加剤が添加されてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤などポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用可能な添加剤をあげることができる。他の添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜選択されてよい。
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料を金型内で発泡及び硬化反応させることで成形される。このとき、金型は密閉型及び開放型のどちらでもよく、常圧下、或いは加圧・減圧下で成形されたものでもよい。なお、密閉型には射出成形を含むものとする。
本発明のポリウレタンフォームのセル形状は、成形条件によって任意に調整できる。特定のセル形状を有するポリウレタンフォームは、同じ成形品の中でも反発弾性率のばらつきを抑えることができる。
例えば、金型の体積よりも発泡後の体積が大きくなるようにポリウレタン原料の注入量を調整する方法がある。この方法では、金型からポリウレタン原料を適度に流出させることで、表層において縦長でセル角度が45°以下のセルを多数形成しやすくなる。
具体的には、金型の体積と同等のポリウレタンフォームを形成可能な注入量に対し、1.01倍以上1.20倍以下の原料を注入すると、本発明のセル形状を有するポリウレタンフォームが得られる。
その他、縦長でセル角度が45°以下のセルを表層に多数形成する方法としては、金型温度を部分的に異ならせて反応速度を偏らせる方法、金型内部に圧力や荷重を付加して発泡方向や発泡性を調整する方法などが挙げられる。
さらに、本発明のポリウレタンフォームは、JIS K 7222に準拠して測定した見かけ密度が0.2~0.7g/cmであることが好ましい。また、JIS K 7312に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定されたポリウレタンフォームの硬度が40以上65以下であることが好ましい。
上記密度及び硬度を備えたポリウレタンフォームであれば、反発弾性率が高いものが得られやすくなる。
本発明のポリウレタンフォームの評価方法について図面を用いて説明する。
図1は得られた成形品から試験片を分割した状態を説明する図、図2は図1の点線Lで切断した切断面を示す図、図3は本発明のセル角度を説明する図、図4(a)は表層でのセル形状を、図4(b)は中間層のセル形状を模式的に示した図である。
まず、図1に示すように、金型で成形された縦350mm、横200mm、厚さ12.5mmのポリウレタンフォーム1を等間隔で15分割したものを試験片2とする。ここで、分割数は得られるポリウレタンフォームの大きさによって適宜設定するものであり、図1に示すように隣接した試験片2の中央部bの間隔aが10~70mmの範囲となるように分割するものとする。当該間隔が70mmを超える場合には分割数を増やし、10mm未満の場合には分割数を減らせばよい。
各試験片2について、以下の通り反発弾性率およびセル形状を測定し、評価を行う。
〔反発弾性率〕
各試験片2から、直径29.5mm、厚さ12.5mmの円柱状に切り出して反発弾性率測定用試験小片とし、当該反発弾性率測定試験片を用いてJIS K 6255に準拠して反発弾性率(%)を測定し、15個の試験片の平均値を算出する。本発明のポリウレタンフォームは、当該平均された反発弾性率が60%以上のものであることが好ましい。
金型を用いて成形されたポリウレタンフォームでは、同じ成形品の中で反発弾性率が異なる部分が散見され、反発弾性率が同じ成形品でばらついてしまうことがあった。このばらつきは、分割された試験片2のうちの最大値と最小値、及び平均値から以下の式で求められる。
[(最大値-最小値)/平均値] × 100 (%)
なお、本発明では、当該数値が10%以下であるものを反発弾性率のばらつきの少ないフォームと評価する。当該ばらつきが10%を超えるポリウレタンフォームは、成形品の物性安定性が得られず不良品が発生しやすくなる虞がある。
〔セル形状〕
本発明のセル形状の測定方法について説明する。
まず、金型で成形された縦350mm、横200mm、厚さ12.5mmのポリウレタンフォーム1を等間隔で15分割して試験片2とする。各試験片2を図1の点線Lで切断した切断面を図2に示す。図2より、表面からの厚さ2mmを表層3とし、当該表層の厚み方向の略中央領域において無作為に3箇所の測定領域51,52,53を選択する。このとき、各測定領域51,52,53の大きさは各々縦640μm、横640μmとする。
各試験片2において、表層3の測定領域51,52,53内に存在するセルの個数、セル角度、セル面積、及びセル径(長径m、短径n)を、形状測定レーザマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名「VK-8500」)で撮影した画像を用いて計測し、得られた結果から、平均セル角度、平均セル面積、平均アスペクト比(長径m/短径n)を算出する。本発明では、各試験片2の平均値をさらに15個の試験片2で平均化し、その値で評価する。すなわち、本発明における表層3の測定領域5とは、15個の試験片2の表層3の測定領域51,52,53を合わせたものであり、平均値とは15個の試験片の表層3の測定領域5に存在するセルの全て(以下、全セルと示す)を対象とするものである。
また、本発明のセル角度とは、図3に示す通り、反発弾性率を測定するときの力の入力方向(設置面に対して垂直方向)を基準軸Yとし、当該Y軸に対する角度θ、θ’のことである。ここで、角度θはセルの傾きが右方向のときに正の値を示し、セルの傾きが左方向のときは負の値を示すが、その際は絶対値|θ|をθ’とする。本発明のセル角度とはこの角度θ及びθ’の両方を示すものとする。すなわち、セル角度が45°以下とはセルが設置面に対して立っている状態を示し、セル角度が45°を超えるとはセルが寝ている状態を示している。
そして、本発明のポリウレタンフォームは、図4に模式的に示すように、特定のセル形状を有することを特徴としている。
本発明において、表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル角度が45°以下であって、セル角度が45°以下のセルは全セル数の50%以上を占めている。
セル角度が45°以下のセルが多いポリウレタンフォームは、図4(a)に示すようにセル角度が45°以下のセルが連なっており反発弾性率が高くなる傾向にあり、セル角度が45°を超えるセルが多いと反発弾性率が劣る傾向にある。そのため、セル角度が45°以下となるようセル形状を調整することで、得られるポリウレタンフォームの反発弾性率のばらつきを抑えることができる。
本発明において、表層3の測定領域5に存在するセルの平均アスペクト比(長径m/短径n)は1.2以上2.0以下である。
アスペクト比が1.2未満だと、セルが球状に近くなり、反発弾性率の高いポリウレタンフォームが得られにくく、アスペクト比が2.0を超えると、縦に広がった楕円形のセルとなり脱型後に成形品の収縮が大きくなるなどの成形不良が発生する。
また、表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル角度は、中間層4の測定領域6に存在するセルの平均セル角度よりも小さい。
中間層4とは、図2に示すように、試験片2の厚さ方向の中央部から上下1mmの領域、すなわち厚さDとしたときの表面から(D/2)±1mmの間の領域である。当該中間層4の厚み方向の略中央領域において無作為に3箇所の測定領域61,62,63を選択する。このとき、各測定領域61,62,63の大きさは縦640μm、横640μmとする。
各試験片2の中間層4の測定領域61,62,63に存在するセルの個数、セル角度、セル面積を、形状測定レーザマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名「VK-8500」)で撮影した画像を用いて計測し、得られた結果から、平均セル角度、平均セル面積を算出する。本発明では、各試験片2の平均値からさらに15個の試験片2の平均値を用いて評価している。すなわち、本発明における中間層4の測定領域6とは、15個の試験片2の中間層4の測定領域61,62,63を合わせたものであり、平均値とは15個の試験片の中間層4の測定領域6に存在するセルの全て(以下、全セルと示す)を対象とするものである。
このように、表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル角度が、中間層4の測定領域6に存在するセルの平均セル角度よりも小さいセル形状を備えたポリウレタンフォームは、反発弾性率が高くても反発弾性率のばらつきを抑えることができる。これは、表層3では図4(a)で示すようにセル角度が45°以下のセルが多く、一方で中間層4では図4(b)に示すようにセルが寝た状態のセルが多いため、力の入力に対してポリウレタンフォームの変形が一定となるためであると想定される。
本発明は、さらに中間層4の測定領域6に存在するセルの平均セル角度は45°を超えるものであり、かつ表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル面積が中間層4よりも小さいことが好ましい。特に、表層3及び中間層4の測定領域5,6に存在するセルの平均セル面積は、700μm以上8000以下μmが好ましく、この範囲であると反発弾性の高いフォームが得られやすい。
すなわち、本発明のポリウレタンフォームにおいて、中間層4の測定領域6に存在するセルの平均セル角度は45°を超えるものであり、かつ表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル面積が中間層4よりも小さいと、中間層4での衝撃吸収性が向上する。このようなポリウレタンフォームであれば、反発弾性率のばらつきを抑えるとともに、反発弾性と相反する機能である衝撃吸収性をも得られる。
本発明の実施の形態に係るポリウレタンフォームについて、実施例を挙げて説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
〔実施例1~3、比較例1~3〕
以下に示すポリウレタン原料を容量875mlの金型に注入し、蓋をして金型温度40℃の条件下で発泡及び硬化反応させた後、脱型してポリウレタンフォームを得た。得られたポリウレタンフォームの大きさは、縦350mm、横200mm、厚さ12.5mmであった。このとき、ポリウレタン原料の注入量は表1に示す通りであり、当該注入量によってセル形状の調整を行った。具体的には、この金型の容量と同等の大きさに発泡硬化し密度が0.38g/cmとなるポリウレタンフォームを得るのに必要なポリウレタン原料の注入量は、理論値で332mlである。当該理論値より多くなるよう注入量を調整することで原料を流出させながら成形した。
得られたポリウレタンフォームについて、等間隔で15分割したものを試験片とし、各試験片の反発弾性率を測定し、セル形状の測定を行った。結果を表1に示す。
ポリウレタン原料としては、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を混合して使用した。
具体的には、ポリオール成分としてはポリエーテルポリオール(数平均分子量2000、平均水酸基価57.2mgKOH/g、平均官能基数2)を用い、ポリオール成分100質量部に対して、触媒としてトリエチレンジアミン(東ソー(株)製、製品名“TEDA-L33”)を3.5質量部、及びビスマス触媒(日本化学産業(株)製、製品名“プキャット25”)を0.8質量部、整泡剤としてシリコーン系化合物を1.0質量部、発泡剤としてイオン交換水を1.1質量部を混合して原料Aを準備した。次いで、イソシアネート成分として、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(PTMGに4,4'-MDIを反応させたもの。数平均分子量1000、平均官能基数2、イソシアネート基含有率8.01質量%)を90質量部、カルボジイミド変性MDI(平均官能基数2、イソシアネート基含有率28.2質量%)を10質量部混合し、原料Bを準備した。
原料Aと原料Bとをイソシアネートインデックスが1.0となる割合で混合したものをポリウレタン原料とした。
得られたポリウレタンフォームの反発弾性率は、以下の通り測定した。
各試験片から、直径29.5mm、厚さ12.5mmの円柱状に切り出して反発弾性率測定用試験片とし、当該反発弾性率測定試験片を用いてJIS K 6255に準拠して反発弾性率(%)を測定し、15個の試験片の平均値を算出した。また、反発弾性率のばらつきは、分割された試験片のうちの最大値と最小値、及び平均値から以下の式で求めた。
[(最大値-最小値)/平均値] × 100 (%)
また、セル形状の測定としては、図2に示すように、各試験片の表層3と中間層4のそれぞれから、無作為に3箇所ずつ測定領域51,52,53,61,62,63を選択した。測定領域の選択は上述した通りである。このとき、各測定領域の大きさは縦640μm、横640μmとし、形状測定レーザマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名「VK-8500」)で撮影した画像を用いて計測した。各試験片において、表層3と中間層4のそれぞれの測定領域に存在するセルに対し、平均セル面積、平均セル角度、平均アスペクト比を測定し、さらに15個の試験片の平均値を求め、その結果を表1に示す。なお、平均アスペクト比は表層3のみ測定した。
ここで、セル角度は、図3に示すように基準軸Yに対する角度θ、θ’のことであり、各試験片の表層3と中間層4のそれぞれの測定領域に存在するセルの角度の平均値を測定し、さらに15個の試験片の平均値を求め、その結果を表1に示す。
また、表層3に存在する測定領域5における全セル数に対し、セル角度が45°以下のセルが占める割合を求めた。
アスペクト比は長径m/短径nから求め、測定領域におけるセルの長径/短径の平均値を平均アスペクト比として求めた。
表1から、実施例1~3は、ポリウレタン原料の金型への注入量を調整することで、ポリウレタンフォームの表層の測定領域に存在するセルの平均セル角度が45°以下で、かつセル角度が45°以下のセルが全セル数の50%以上を占めるポリウレタンフォームを形成できた。さらに、表層の測定領域では、平均アスペクト比(長径/短径)が1.2以上2.0以下であり、表層の測定領域に存在するセルの平均セル角度は、中間層の測定領域に存在するセルの平均セル角度よりも小さいものであった。このように実施例1~3のポリウレタンフォームは、反発弾性率が60%以上と高いものであっても、そのばらつきを10%以下とすることができた。
一方、比較例1では、注入量が多すぎてセル角度が45°以下のセルが全セル数の40%と低いものであり、反発弾性率も57%と不十分であった。また、比較例2では、表層の平均アスペクト比が1.1と球状に近いセル形状となり、反発弾性率のばらつきが12%と大きくなった。比較例3は注入量が理論値よりも少なく、平均セル角度が中間層でも42°と設置面に対して立っているセルが多く、平均セル角度が表層よりも中間層の方が小さくなってしまい、反発弾性率のばらつきが18%と大きくなった。
すなわち、本発明は、ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料を金型内で発泡及び硬化反応させることで成形されるポリウレタンフォームであって、当該ポリウレタンフォームの表層の測定領域に存在するセルにおいて、平均セル角度が45°以下、平均アスペクト比(長径/短径)が1.2以上2.0以下であり、かつセル角度が45°以下のセルが全セル数の50%以上を占め、さらに前記表層の測定領域に存在するセルの平均セル角度は、当該ポリウレタンフォームの中間層の測定領域に存在するセルの平均セル角度よりも小さいことを特徴とし、このように特定のセル構造を備えたポリウレタンフォームは、同じ成形品でも反発弾性率のばらつきを抑えることができる。しかも表層における平均セル角度が中間層における平均セル角度よりも小さいため、反発弾性率の高いポリウレタンフォームであっても、反発弾性率のばらつきを抑えることができる。
さらに、本発明のポリウレタンフォームにおいて、中間層4の測定領域6に存在するセルの平均セル角度は45°を超えるものであり、かつ表層3の測定領域5に存在するセルの平均セル面積が中間層4よりも小さいと中間層4での衝撃吸収性が向上するため、このようなポリウレタンフォームであれば、反発弾性率のばらつきを抑えるとともに、反発弾性と相反する機能である衝撃吸収性をも得られる。
本発明のポリウレタンフォームは、反発弾性率のばらつきを抑えることが可能であるため、成形品の物性安定性が得られ不良品の発生を抑えることができる。例えば、ソファーや枕、マットレスなどの家具や寝具用クッション材、緩衝材、電子部品、自動車部品、靴底部材(ミッドソール、インソール)などあらゆる用途に利用できる。
1 ポリウレタンフォーム
2 試験片
3 表層
4 中間層
5,51,52,53 表層の測定領域
6,61,62,63 中間層の測定領域
7 セル
a 測定点距離
b 試験片の中央部
m 長径
n 短径
L 切断線
Y 基準軸

Claims (1)

  1. ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリウレタン原料を金型内で発泡及び硬化反応させることで成形されるポリウレタンフォームであって、
    当該ポリウレタンフォームの表層の測定領域に存在するセルにおいて、平均セル角度が45°以下、平均アスペクト比(長径/短径)が1.2以上2.0以下であり、かつセル角度が45°以下のセルが全セル数の50%以上を占め、
    さらに前記表層の測定領域に存在するセルの平均セル角度は、当該ポリウレタンフォームの中間層の測定領域に存在するセルの平均セル角度よりも小さく、
    前記表層とは、表面からの厚さ2mmの領域であり、
    前記中間層とは、厚さDとしたときの表面から(D/2)±1mmの間の領域であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
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