以下、本発明に係るステアリング装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、このステアリング装置を、従来と同様、自動車の操舵装置に適用したものを示している。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置のシステム構成図を示している。
図1に示すように、ステアリング装置は、ステアリング装置本体1と、第1ポンプP1と、第2ポンプP2と、リザーバタンクTと、第1電動モータM1と、第2電動モータM2と、制御装置(ECU)であるコントローラ2と、を備える。すなわち、このステアリング装置は、図示外のステアリングホイール又は第1電動モータM1よりステアリング装置本体1に入力された操舵力を、第1ポンプP1又は第2ポンプP2により圧送された作動液の液圧をもって増幅させて図示外の操舵輪に伝達する。
ステアリング装置本体1は、いわゆるインテグラル型のパワーステアリング装置であって、手動操縦状態、すなわち運転者により操舵が行われる運転状態では、運転者の操舵操作に伴い図示外のステアリングホイールを介してステアリング装置本体1に操舵力が入力される。一方、自動操縦状態、すなわちコントローラ2を介して伝達される車両側からの指令信号に基づき操舵が行われる運転状態では、コントローラ2によって駆動制御される第1電動モータM1を介してステアリング装置本体1に操舵力が入力される。そして、ステアリング装置本体1には、図示外のパワーシリンダが設けられ、第1ポンプP1ないし第2ポンプP2から前記パワーシリンダに圧送される作動液の液圧に基づいて操舵力が増幅される。
第1ポンプP1は、車両のエンジンEにより駆動されるメインポンプである。すなわち、通常は、第1ポンプP1を介してステアリング装置本体1に作動液が供給される。第2ポンプP2は、第2電動モータM2により駆動されるサブポンプである。すなわち、例えばアイドリングストップなどエンジンEが停止している状態、あるいは第1ポンプP1の失陥など後述する第1液圧経路L1における作動液の液圧が低下している状態においては、第2電動モータM2により駆動制御される第2ポンプP2を介してステアリング装置本体1に作動液が供給される。
リザーバタンクTは、底壁から鉛直方向へ延びるように設けられた仕切り壁TWにより、第1貯留部T1と第2貯留部T2とに仕切られている。第1貯留部T1は、第1供給通路F1と第1還流通路R1からなる第1液圧経路L1を介してステアリング装置本体1に接続されていて、主として第1ポンプP1が吸入及び吐出する作動液の貯留に供される。第2貯留部T2は、第2供給通路F2と第2還流通路R2からなる第2液圧経路L2を介してステアリング装置本体1に接続されていて、主として第2ポンプP2が吸入及び吐出する作動液の貯留に供される。そして、リザーバタンクT内の作動液の液面が仕切り壁TWの高さよりも高い場合には、第1、第2貯留部T1,T2において作動液を相互に共有する。一方、リザーバタンクT内の作動液の液面が仕切り壁TWの高さよりも低い場合には、第1、第2貯留部T1,T2において作動液をそれぞれ独立して保持する。なお、リザーバタンクT内の作動液の液面の高さは、リザーバタンクTの周壁に仕切り壁TWとほぼ同じ高さ位置に配置された液量センサFSによって検知される。
第1電動モータM1は、ステアリング装置本体1に付設されていて、ステアリング装置本体1と一体的に設けられている。そして、第1電動モータM1は、ステアリング装置本体1における後述する図示外の操舵軸31(図2参照)に接続され、コントローラ2からの制御電流に基づき操舵軸31に操舵力を付与する。なお、第1電動モータM1は、前記自動操縦状態において、車両側からの指令信号に基づき操舵軸31に操舵力を付与する。あるいは、前記手動操縦状態又は前記自動操縦状態において、第2ポンプP2の作動液圧のみでは十分な操舵力が得られない場合に、操舵軸31に対し、不足した操舵力を付与する。第2電動モータM2は、第2ポンプP2と一体ないし別体に設けられていて、第2ポンプP2に設けられた図示外のポンプ回転軸に接続される。すなわち、第2電動モータM2は、コントローラ2からの制御電流に基づいて前記ポンプ回転軸に回転力を付与することにより、第2ポンプP2を駆動する。
コントローラ2は、マイクロコンピュータ等の電子部品を備えて構成された電子コントロールユニット(ECU)であり、車両側からイグニッションオン信号であるIGN信号及び各種車両情報信号であるCAN信号が入力される。IGN信号は、車両のイグニッションスイッチがON状態となったときに送信されるイグニッションオン信号であり、このIGN信号を受けてコントローラ2が通電状態となる。CAN信号は、車両の運転状態に係る各種車両情報信号、例えば車両の走行速度に係る車速信号や、前記自動運転状態における舵角指令信号及び実舵角信号などが含まれる。
また、コントローラ2には、ステアリング装置本体1に設けられた後述する図示外の第1レゾルバ77(図2参照)から図示外の操舵軸31の回転角である舵角信号θsが入力される。さらに、ステアリング装置本体1に設けられた後述する図示外の第2レゾルバ78(図2参照)から第1電動モータM1の回転角である第1モータ回転角信号θm1が入力される。同様に、第2電動モータM2に設けられた図示外の回転角センサから第2電動モータM2の回転角である第2モータ回転角信号θm2が入力される。さらに、コントローラ2には、液量センサFSからリザーバタンクTに貯留された作動液の液面の高さを示す液面レベル信号OLが入力されるほか、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)に設けられた圧力スイッチである第1検知スイッチ81から第1検知スイッチ信号OP1が入力される。そして、これら各種信号等に基づき、コントローラ2は、第1、第2電動モータM1,M2に駆動制御信号Tm1,Tm2を出力するなど、当該第1、第2電動モータM1,M2の駆動制御をはじめとする各種制御処理を行う。
図2は、ステアリング装置本体1の具体的な構成を表したステアリング装置本体1の縦断面図を示している。なお、本図の説明では、操舵軸31の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、操舵軸31の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、そして操舵軸31の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、「軸方向」については、図示外のステアリングホイールに連係される側である図中の上側を「一端側」、下側を「他端側」として説明する。
図2に示すように、ステアリング装置本体1は、操舵軸31の回転を図示外の操舵輪に伝達する操舵機構3と、作動液の液圧により操舵アシスト力を生成するパワーシリンダ4と、パワーシリンダ4の後述する第1、第2液室X1,X2に作動液を選択的に供給するロータリバルブ5と、を備える。すなわち、操舵機構3に入力された操舵力に応じ、ロータリバルブ5を介してパワーシリンダ4の第1、第2液室X1,X2に作動液が選択的に供給されることにより、操舵力を補助する操舵アシスト力が付与されて、図示外の操舵輪の向きが変更される。
操舵機構3は、軸方向の一端側がハウジング30の外部へと臨んで図示外のステアリングホイールに接続され、かつ他端側がハウジング30の内部に収容される操舵軸31と、操舵軸31の他端側に接続され、操舵軸31の回転を図示外の操舵輪に伝達する伝達機構32と、を有する。
操舵軸31は、一端側が図示外のステアリングホイールに一体回転可能に接続された入力軸33(本発明に係る第1軸に相当)と、一端側が第1トーションバー34(本発明に係るトーションバーに相当)を介して入力軸33の他端側に相対回転可能に接続された出力軸35(本発明に係る第2軸に相当)と、を有する。
入力軸33は、図示外のステアリングホイールに接続される軸方向一端側の第1入力軸331と、第1入力軸331に第2トーションバー330を介して相対回転可能に接続された他端側の第2入力軸332と、を有する。第1入力軸331は、中空状に形成されていて、内部に第2トーションバー330の大部分を収容している。また、第1入力軸331は、前記ステアリングホイール側の一端部に比べて他端部が小径に形成されていて、他端部が第2入力軸332の前記ステアリングホイール側の一端部に形成された開口凹部332aに収容されている。さらに、第1入力軸331の他端部の外周面と第2入力軸332の開口凹部332aの内周面との間には、2つのニードルベアリングB1,B1が設けられている。すなわち、これらニードルベアリングB1,B1を介して、第1入力軸331が、第2入力軸332に回転可能に支持されている。
出力軸35は、中空状に形成されていて、内部に第1トーションバー34の大部分を収容している。また、出力軸35は、入力軸33側の一端部が他端部よりも大径に形成されていて、一端部の内部に第2入力軸332の他端部を収容している。
第1トーションバー34は、その捩れ方向や捩れ角に応じてロータリバルブ5の流路や流路断面積を変動させる機能を有する。一方、第2トーションバー330は、図示外のトルクセンサ用のトーションバーとして構成されており、前記トルクセンサは、第2トーションバー330の捩れ量に応じて操舵トルクを検出する。
伝達機構32は、出力軸35に入力された操舵力(回転力)を操舵軸31の回転軸線Z方向の軸方向移動力に変換するボールねじ機構36と、ボールねじ機構36により変換された前記軸方向移動力に基づき回動するセクタシャフト37と、を有する。すなわち、伝達機構32は、操舵軸31に入力された操舵力を、ボールねじ機構36を介して回転軸線Z方向の軸方向移動力に変換し、後述する歯部370,380の噛み合いにより構成されるセクタギヤを介して操舵輪に伝達する。
ボールねじ機構36は、外周に螺旋溝状の軸側ボール溝35aが形成されたねじ軸としての出力軸35と、出力軸35の外周側に配置され、内周に螺旋溝状のナット側ボール溝38aが形成されたボールナットとしてのピストン38と、両ボール溝35a,38a内に収容された複数のボール39と、を有する。そして、ピストン38の外周には、セクタシャフト37と対向する所定範囲に、セクタギヤの一部を構成する歯部380が形成されている。
セクタシャフト37は、操舵軸31の回転軸線Zにほぼ直交するように配置されている。また、セクタシャフト37は、その軸線方向の一端部の外周に、ピストン38の歯部380と噛み合い可能な歯部370が形成されている一方、他端部には、伝達機構32の一部を構成する図示外のピットマンアームが接続されている。このピットマンアームは、セクタシャフト37の回動に伴い車体の幅方向へ引っ張られることで、図示外の操舵輪の向きが変更される。
ハウジング30は、図示外のステアリングホイール側となる軸方向一端側が開口形成され、内部にパワーシリンダ4を構成する第1ハウジング301と、第1ハウジング301の一端側開口を閉塞し、内部にロータリバルブ5を構成する第2ハウジング302と、を有する。なお、第1ハウジング301と第2ハウジング302は、操舵軸31の回転軸線Zに対する周方向の所定位置に配置される図示外の複数のボルトによって締結されている。
第1ハウジング301は、内部にピストン38を収容してパワーシリンダ4の構成に供するシリンダ部301aと、内部にセクタシャフト37を収容するシャフト収容部301bと、を有する。シリンダ部301aは、操舵軸31の回転軸線Z方向に沿って形成される円筒状を呈し、内部にピストン38が摺動可能に収容されることにより、パワーシリンダ4が構成される。シャフト収容部301bは、シリンダ部301aとほぼ直交し、かつ一部がシリンダ部301aへ臨むように形成されていて、内部には、セクタシャフト37が回動可能に収容される。
第2ハウジング302は、第1ハウジング301の軸方向一端側の開口部を閉塞するように、当該第1ハウジング301の一端側開口部に取り付けられている。そして、第2ハウジング302の内部には、入力軸33と出力軸35とが軸方向において重なる入力軸33と出力軸35との接続部が収容されている。なお、この際、入力軸33と出力軸35との接続部は、第2ハウジング302の内部に設けられた第2軸受B2を介して回転可能に支持されている。また、第2ハウジング302の側部には、ロータリバルブ5と第1、第2ポンプP1,P2との接続を切り換える切換バルブ6が収容されている。
パワーシリンダ4は、パワーシリンダ本体部を構成する第1ハウジング301のシリンダ部301aと、シリンダ部301aの内部に収容されたピストン38と、で構成される。ピストン38は、ボビン状を呈し、回転軸線Z方向における図示外のステアリングホイールに近い側の一端部381と遠い側の他端部382とが、それぞれシリンダ部301aの内周面に摺動可能な外径に形成されている。また、ピストン38の他端部382の外周には、円環状のシール部材383が取り付けられている。そして、このシール部材383によって、シリンダ部301aの内部空間が、シール部材383よりも前記ステアリングホイール側に位置する第1液室X1と、前記ステアリングホイールから離間する側に位置する第2液室X2と、に仕切られている。すなわち、パワーシリンダ4の第1液室X1ないし第2液室X2に作動液が選択的に供給されることで、第1、第2液室X1,X2の間に発生した差圧によって、操舵アシスト力がピストン38に付与される。なお、この際、シャフト収容部301bには、第1液室X1の作動液が導かれる構成となっていて、第1液室X1に作動液の供給に際して歯部370,380間の潤滑が可能となっている。
ロータリバルブ5は、第2入力軸332と出力軸35との相対回転に基づく第1トーションバー34の捩れ量に応じて開弁し、パワーシリンダ4の第1、第2液室X1,X2等に対して、作動液の供給及び排出を行う。具体的には、ロータリバルブ5は、図示外のステアリングホイールが一方向へ操舵されると、出力軸35の内部に設けられた第1連通路51を介して第1液室X1に作動液を供給すると共に、第1、第2ハウジング301,302に跨って設けられた第2連通路52を介して第2液室X2から作動液を排出する。一方、ロータリバルブ5は、前記ステアリングホイールが他方向へ操舵されると、第2連通路52を介して第2液室X2に作動液を供給すると共に、第1連通路51を介して第1液室X1から作動液を排出する。
第1電動モータM1は、入力軸33を包囲するように設けられる中空モータであって、いわゆる3相交流式のブラシレスモータであり、操舵アシスト力の生成に供するモータ要素71と、モータ要素71を内部に収容するモータハウジング72と、を有する。すなわち、第1電動モータM1は、モータ要素71が入力軸33に接続されると共に、モータハウジング72がアダプタ部材73を介して複数のボルト80aによりハウジング30(第2ハウジング302)に固定される。
モータ要素71は、入力軸33と一体回転可能に固定された円筒状のモータロータ74と、モータロータ74の外周側に所定の隙間を介して設けられた円筒状のステータコイルであるモータステータ75と、を有する。モータロータ74は、結合部材76を介して第2入力軸332に接続されている。モータステータ75は、圧入や焼き嵌め等によってモータハウジング72の内周側に固定されている。
モータハウジング72は、ハウジング30側に向かって開口し、かつ内部にモータ要素71を収容する有蓋円筒状の第1モータハウジング構成部721と、第1モータハウジング構成部721の開口部を閉塞可能な円板状の第2モータハウジング構成部722と、を有する。この第1、第2モータハウジング構成部721,722は、いずれも所定の金属材料、例えばアルミニウム合金材料によって形成されている。
第1モータハウジング構成部721は、筒状部721aの内径がモータステータ75の外径とほぼ同一に形成されていて、内周側に、モータステータ75が圧入や焼き嵌め等によって固定される。また、第1モータハウジング構成部721は、開口部の外周側にフランジ部721bを有し、このフランジ部721bが、円板状のアダプタ部材73に、複数のボルト80bによって締結されている。また、アダプタ部材73は、複数のボルト80aにより、ハウジング30(第2ハウジング302)に締結される。このようにして、第1モータハウジング構成部721は、アダプタ部材73を介して第2ハウジング302に固定されている。
また、第1モータハウジング構成部721の蓋部721cには、操舵軸31(結合部材76)を貫通可能な貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔内には、結合部材76との間に、ボールベアリングである第3軸受B3が設けられている。
また、蓋部721cよりも図示外のステアリングホイール側には、第1レゾルバ77が設けられる。第1レゾルバ77は、第1入力軸331の外周に一体回転可能に固定された円環状のレゾルバロータ771と、レゾルバロータ771の外周側に所定の隙間を介して設けられた円環状のレゾルバステータ772と、を有する。そして、レゾルバステータ772によってレゾルバロータ771の回転位置を検出することで、第1入力軸331の回転角度、すなわち前記ステアリングホイールの舵角が検出される。この検出されたステアリングホイールの舵角は、舵角信号θsとして、第1センサハーネスSH1を介してコントローラ2に送信される(図1参照)。
また、第1レゾルバ77は、有蓋円筒状のカバー部材79によって覆われている。このカバー部材79は、第1モータハウジング構成部721に、複数のボルト80cによって締結されている。また、カバー部材79の中心位置には、第1入力軸331を貫通可能な貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔内には、第1入力軸331との間に、第1入力軸331を回転可能に支持するボールベアリングである第4軸受B4と、前記貫通孔と第1入力軸331との間を液密にシールするシール部材70と、が設けられている。
第2モータハウジング構成部722は、その中心位置に、操舵軸31(結合部材76)を貫通可能な貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔内には、結合部材76との間に、結合部材76を回転可能に支持するボールベアリングである第5軸受B5が設けられている。
また、第2モータハウジング構成部722のハウジング30側の部位には、第2レゾルバ78が設けられる。第2レゾルバ78は、結合部材76を介して第2入力軸332の外周に一体回転可能に固定された円環状のレゾルバロータ781と、レゾルバロータ781の外周側に所定隙間を介して設けられた円環状のレゾルバステータ782と、を有する。そして、レゾルバステータ782によってレゾルバロータ781の回転位置を検出することで、第2入力軸332の回転角度を検出する。なお、この第2入力軸332の回転角度は、第1電動モータM1のモータロータ74の回転角度と同等であり、第2レゾルバ78は、モータロータ74の回転角度であるモータ回転角を検出するモータ回転角センサとしても機能する。また、この検出されたモータ回転角(第2入力軸332の回転角)は、第1モータ回転角信号θm1として、第2センサハーネスSH2を介してコントローラ2に送信される(図1参照)。
図3は、図2に示すステアリング装置の液圧回路図を示している。図4は、図2に示すA-A線に沿って切断した断面図であって、(a)は第1液圧経路L1における作動液の液圧が正常な状態を表した図、(b)は第1液圧経路L1における作動液の液圧が不足した状態を表した図を示している。
図3に示すように、ロータリバルブ5と第1、第2ポンプP1,P2との間には、第1、第2液圧経路L1,L2のうち作動液の戻り通路に相当する第1、第2還流通路R1,R2を切り換え可能なパイロット弁である切換バルブ6が設けられている。すなわち、本実施形態では、切換バルブ6により、ロータリバルブ5に接続される第1、第2ポンプP1,P2を切り換えるのではなく、リザーバタンクT(第1、第2貯留部T1,T2)に作動液を還流する第1、第2還流通路R1,R2のみを切り換える構成となっている。換言すれば、本実施形態では、ロータリバルブ5に対して第1、第2ポンプP1,P2を選択的に接続させるのではなく、第1、第2ポンプP1,P2をロータリバルブ5に同時に接続可能とし、これによって、第1、第2ポンプP1,P2の併用が可能となっている。
具体的には、図4に示すように、切換バルブ6は、軸方向一端側が開口するバルブハウジング60と、バルブハウジング60の一端側開口を閉塞するプラグ61と、バルブハウジング60内に移動可能に設けられた弁体62と、バルブハウジング60の他端側に配置される付勢部材としてのスプリング63と、を有する。すなわち、切換バルブ6は、第1、第2ポンプP1,P2から供給される作動液の液圧をパイロット圧として切り換え作動するものであって、弁体62が図4(a)に示す第1の位置(第1ポジション)にあるとき、第1ポンプP1から吐出された作動液をロータリバルブ5に供給する。一方、弁体62が図4(b)に示す第2の位置(第2ポジション)にあるとき、切換バルブ6は、第2ポンプP2から吐出された作動液をロータリバルブ5に供給する。
バルブハウジング60は、長手方向の一端側が開口し、かつ他端側が閉塞された有底筒状を呈し、第2ハウジング302においてロータリバルブ5の側方(外周側)に取り付けられ、内部に、弁体62を移動可能に収容する弁体収容穴64を有する。そして、バルブハウジング60の周壁には、第1ポンプ接続ポートPC1と、第2ポンプ接続ポートPC2と、供給ポートIPと、排出ポートXPと、第1タンク接続ポートTC1と、第2タンク接続ポートTC2を有する。
図3、図4に示すように、第1ポンプ接続ポートPC1は、第1供給通路F1を介して第1ポンプP1に接続され、第1ポンプP1から吐出された作動液を弁体収容穴64内に導入する。同様に、第2ポンプ接続ポートPC2は、第2供給通路F2を介して第2ポンプP2に接続され、第2ポンプP2から吐出された作動液を弁体収容穴64内に導入する。また、第1、第2ポンプ接続ポートPC1,PC2には、それぞれ第1、第2逆止弁V1,V2が設けられ、この第1、第2逆止弁V1,V2によって、第1、第2ポンプP1,P2から弁体収容穴64内に導入された作動液の逆流が抑止されている。
供給ポートIPは、弁体収容穴64とロータリバルブ5とを接続し、第1、第2ポンプP1,P2の一方又は両方を介して弁体収容穴64に導入された作動液をロータリバルブ5へ供給する。同様に、排出ポートXPは、弁体収容穴64とロータリバルブ5とを接続し、ロータリバルブ5を介してパワーシリンダ4から排出された作動液を弁体収容穴64へ還流する。
第1タンク接続ポートTC1は、第1還流通路R1を介してリザーバタンクT(第1貯留部T1)に接続され、パワーシリンダ4から弁体収容穴64内に排出された作動液をリザーバタンクTの第1貯留部T1へ還流する。同様に、第2タンク接続ポートTC2は、第2還流通路R2を介してリザーバタンクT(第2貯留部T2)に接続され、パワーシリンダ4から弁体収容穴64内に排出された作動液をリザーバタンクTの第2貯留部T2へ還流する。
より具体的に説明すれば、図4(a)に示す第1液圧経路L1が正常な状態、すなわち第1液圧経路L1の作動液の液圧が第1所定値Px1以上の状態では、第1ポンプP1から供給される液圧により、スプリング63の付勢力に抗して弁体62が同図中の左側へと移動する(以下、「第1の位置」という。)。この第1の位置では、弁体62の第1縮径部D1と弁体収容穴64との間に画定される第1環状通路C1、弁体62の第1ランド部L1と弁体収容穴64の第1シール部S1との間に形成される微小隙間A1ないし弁体62の第1内部通路H1、及び第1環状溝G1を介して、第1ポンプ接続ポートPC1と供給ポートIPとが連通する。これにより、第1ポンプP1から吐出された作動液が、供給ポートIPへ導かれる。なお、弁体62の内部に形成された第2内部通路H2は、スプリング63が収容される背圧室65と第1環状溝G1とを連通させ、弁体62の移動に伴う背圧室65の容積変化を吸収する。また、微小隙間A1はいわゆるオリフィスとして機能し、該オリフィスの前後となる第1環状通路C1内の液圧と第1環状溝G1内の液圧との間には差圧が発生する。一方、第1ランド部L1と第1環状溝G1との間に画定される第2環状通路C2を介して、第2ポンプ接続ポートPC2が供給ポートIPに常時接続される。これにより、第2ポンプP2から吐出された作動液が、供給ポートIPへ導かれる。
また、第1の位置では、弁体62の第2縮径部D2と弁体収容穴64の第2シール部S2との間に画成される第3環状通路C3、第2ランド部L2と第2シール部S2との間に形成される隙間A2、及び第2ランド部L2の外周側に形成される第2環状溝G2を介して、排出ポートXPと第1タンク接続ポートTC1とが連通する。一方、第1ランド部L1が第3環状溝G3側の端部と重なることにより、排出ポートXPと第2タンク接続ポートTC2との連通は遮断される。その結果、ロータリバルブ5から排出された作動液は、第1タンク接続ポートTC1を介して、リザーバタンクTの第1貯留部T1に還流される。
一方で、図4(b)に示すエンジンが停止した状態、或いは第1ポンプP1が失陥するなど第1液圧経路L1における作動液の液圧が低下した状態、すなわち第1液圧経路L1の作動液の液圧が第1所定値Px1未満の状態では、スプリング63の付勢力によって、弁体62が同図中の右側へ移動することとなる(以下、「第2の位置」という。)。この第2の位置では、第1ランド部L1が第1シール部S1の第1環状溝G1側の端部と重なることにより、第1ポンプ接続ポートPC1と供給ポートIPとの連通は遮断される。一方、第2環状通路C2を介して、第2ポンプ接続ポートPC2と供給ポートIPとの連通状態は維持される。これにより、第2ポンプ接続ポートPC2のみが供給ポートIPと連通する。
また、第2の位置では、第2ランド部L2が第2シール部S2の第2環状溝G2側の端部と重なることにより、第1タンク接続ポートTC1と排出ポートXPとの連通は遮断される。一方、第3環状通路C3、第1ランド部L1と第2シール部S2との間に形成される微小の隙間A3、及び第3環状溝G3を介して、排出ポートXPと第2タンク接続ポートTC2とが連通する。これにより、ロータリバルブ5から排出された作動液は、第2タンク接続ポートTC2を介して、リザーバタンクTの第2貯留部T2に還流される。
また、プラグ61の内周側には、弁体62との接触状態を検知する円柱状の圧力スイッチである第1検知スイッチ81が設けられている。すなわち、弁体62が図4(a)に示すように第1検知スイッチ81から離間した状態では、コントローラ2に電気信号が入力(通電)されることなく、コントローラ2において、弁体62は第1の位置に位置している、と認識される。一方、弁体62が図4(b)に示すように第1検知スイッチ81に接触した状態では、コントローラ2に電気信号が入力(通電)され、コントローラ2において、弁体62が第2位置に位置している、と認識される。
図5は、コントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。図6は、第1電動モータトルク指令演算部211における車速Vsと第1電動モータトルク指令Tm1*の関係性を表したグラフを示している。なお、図6において、同図中の実線は車速Vsが比較的低い状態における操舵トルクTrに対する第1電動モータトルク指令Tm1*を示し、同図中の破線は車速Vsが比較的高い状態における操舵トルクTrに対する第1電動モータトルク指令Tm1*を示している。
図5に示すように、コントローラ2は、マイクロコンピュータ内部に、第1液圧経路L1(図1参照)における作動液の状態を判断する第1液圧経路状態判断部20と、第1電動モータM1を駆動制御する第1電動モータ制御部21と、第2電動モータM2を駆動制御する第2電動モータ制御部22とを有する。また、コントローラ2のマイクロコンピュータには、インターフェースとして、車速信号受信部23、エンジン回転数信号受信部24、アクセル開度信号受信部25、第1検知スイッチ信号受信部261、操舵トルク信号受信部27及び第2モータ回転角信号受信部28など各種信号受信部が設けられている。
第1液圧経路状態判断部20は、アイドリングストップ判断部201と、アクセルオフ判断部202と、液圧低下判断部203と、これら各判断部201,202,203からの判断結果に基づいて第1液圧経路L1が失陥した状態にあるか否かを判断する最終判断部204と、有する。
アイドリングストップ判断部201では、車速信号受信部23を介して入力された車速信号Vs、又はエンジン回転数信号受信部24を介して入力されたエンジン回転数信号Neに基づき、車両がアイドリングストップ制御期間中であるか否かが判断される。なお、車速信号Vs及びエンジン回転数信号Neは、CAN(Controller Area Network)通信等によって取得される。
より詳しくは、アイドリングストップ判断部201は、車速信号Vs又はエンジン回転数信号Neがそれぞれ予め設定された所定値以下である場合に、エンジンE(図1参照)がアイドリングストップ制御期間中であると判断される。具体的には、アイドリングストップ判断部201から最終判断部204に対し、アイドリングストップ判定信号SigAが出力される。
アクセルオフ判断部202では、アクセル開度信号受信部25を介して入力されたアクセル開度信号AOが0(ゼロ)である場合に、車両のアクセルペダル操作がオフ状態であると判断される。具体的には、アクセルオフ判断部202から最終判断部204に対し、アクセルオフ判定信号SigBが出力される。なお、アクセル開度信号AOは、車速信号Vs及びエンジン回転数信号Neと同様、CAN通信等によって取得される。
液圧低下判断部203では、切換バルブ6の弁体62が第2の位置に移動して(図4(b)参照)、第1検知スイッチ信号受信部261を介して受信した第1検知スイッチ81の第1検知スイッチ信号OP1がオンとなったとき(「OP1=1」が入力されたとき)、すなわち第1液圧経路L1における作動液の液圧が第1所定値Px1未満となったとき、第1液圧経路L1の作動液の液圧が低下していると判断される。具体的には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
最終判断部204は、前記各判断部201,202,203から出力された、アイドリングストップ判定信号SigA、アクセルオフ判定信号SigB、又は液圧低下判定信号SigCが入力された場合に、第1液圧経路L1が失陥した状態にあると判断する。具体的には、第1液圧経路L1が失陥した状態にあることを示す第1液圧経路失陥信号SigDが、第1電動モータ制御部21と、第2電動モータ制御部22とに出力される。
第1電動モータ制御部21は、第1電動モータM1の駆動制御に係る第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する第1電動モータトルク指令演算部211と、第1電動モータトルク指令Tm1*に基づき第1電動モータM1を駆動制御する第1電動モータ駆動部212と、を有する。第1電動モータトルク指令演算部211は、例えば前記自動操縦状態において、操舵トルク信号Trに基づき、操舵入力に係る第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する。
また、第1電動モータ制御部21は、第1液圧経路失陥信号SigDが入力され、第2ポンプP2による液圧供給に切り替わっても、当該第2ポンプP2による液圧のみでは操舵アシスト力が不足する場合に、第1電動モータM1を駆動制御する。すなわち、第1電動モータトルク指令演算部211は、例えば前記手動操縦状態ないし前記自動操縦状態において、第2ポンプP2を介して供給される液圧のみでは操舵アシスト力が不足する場合に、当該不足分の操舵アシスト力の補填に係る第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する。
なお、例えば前記手動操縦状態において、第1、第2ポンプP1,P2より供給される液圧に基づいて操舵アシストが行われている場合であっても、第1電動モータM1を駆動制御することで、前記液圧による操舵アシスト力を補助することができる。換言すれば、本実施形態に係るステアリング装置は、要求される操舵力に応じて、第1ポンプP1ないし第2ポンプP2より供給される液圧によって生成された操舵アシスト力と、第1電動モータM1の駆動トルクによって生成された操舵アシスト力とを併用することができる。
また、第1電動モータ制御部21は、第2電動モータM2の回転数に応じて、第1電動モータM1を駆動制御する。すなわち、第2電動モータ制御部22により第2電動モータM2の回転数が上昇するように第2電動モータM2が駆動制御されたとき、第1電動モータM1を駆動制御する。具体的には、第1電動モータトルク指令演算部211は、第2モータ回転数Nm2の上昇を検知すると、この上昇した第2モータ回転数Nm2に応じて、操舵アシスト力の補填に係る第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する。この際、第2モータ回転数Nm2は、第2モータ回転数演算部281において、第2電動モータM2に備える図示外のモータ回転角センサによって検出された第2モータ回転角信号θm2に基づき演算される。
さらに、第1電動モータ制御部21は、第2電動モータM2の回転速度に応じて、第1電動モータM1を駆動制御する。すなわち、第1電動モータトルク指令演算部211は、第2モータ回転速度演算部282より入力された第2モータ回転速度信号Vm2に応じて、操舵アシスト力の補填に係る第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する。この際、第2モータ回転速度Vm2は、第2モータ回転速度演算部282において、第2電動モータM2に備える図示外のモータ回転角センサによって検出され第2モータ回転角信号θm2に基づき演算される。
また、第1電動モータ制御部21は、車両速度に応じて、第1電動モータM1を駆動制御する。すなわち、第1電動モータトルク指令演算部211は、車速信号受信部23を介して入力された車速信号Vsに基づいて第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する。具体的には、第1電動モータトルク指令演算部211は、車速信号受信部23から入力された車速信号Vsが大きいほど、第1電動モータM1の駆動トルクが小さくなるように、第1電動モータトルク指令Tm1*を演算する(図6参照)。
第2電動モータ制御部22は、第2電動モータM2の駆動制御に係る第2電動モータトルク指令Tm2*を演算する第2電動モータトルク指令演算部221と、第2電動モータトルク指令Tm2*に基づき第2電動モータM2を駆動制御する第2電動モータ駆動部222と、を有する。すなわち、第2電動モータトルク指令演算部221は、前記手動操縦状態ないし前記自動操縦状態において、第1液圧経路L1が失陥した場合に、第1ポンプP1の代替として第2ポンプP2による操舵アシスト力の生成に係る第2電動モータトルク指令Tm2*を演算する。これにより、例えば第1ポンプP1が失陥するなど第1液圧経路L1によってはパワーシリンダ4に十分な液圧の供給が困難となった場合に、バックアップデバイスとしての第2ポンプP2を駆動制御することにより、パワーシリンダ4に対し、第1ポンプP1に代えて、第2ポンプP2による液圧の供給が可能となる。
図7は、コントローラ2による第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。なお、本図において、第1ポンプP1が駆動されている状態において算出される第1電動モータトルク指令Tm1*及び第2電動モータトルク指令Tm2*を、「第1電動モータトルク指令Tm1*(A)」及び「第2電動モータトルク指令Tm2*(A)」と表示する。また、第1液圧経路L1が失陥した状態において算出される第1電動モータトルク指令Tm1*及び第2モータトルク指令Tm2*を、「第1電動モータトルク指令Tm1*(B)」及び「第2電動モータトルク指令Tm2*(B)」と表示する。
図7に示すように、まず、液圧低下判断部203において、第1検知スイッチ81より出力された第1検知スイッチ信号OP1を取り込んだ後(ステップS101)、この取り込んだ第1検知スイッチ信号OP1が「1」であるか否か、つまり第1検知スイッチ81がオンになっているか否かを判断する(ステップS102)。ここで、Yesと判断された場合には、第1ポンプP1が失陥するなど第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われていないものとして、続くステップS112に移行する。
一方、ステップS102においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS103)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS104)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS112に移行する。
一方、ステップS104においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS105)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS106)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS112に移行する。なお、ステップS105でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS106でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS106では、前ステップS105で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS106においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われているものとして、トルクセンサTSから操舵トルク信号受信部27を介して操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS107)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS108,S109)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS110,S111)、本プログラムが終了する。
ステップS112に移行した場合、前述したように、第1ポンプP1が停止状態にあるなど操舵機構3に対して正常な液圧供給が行えない異常状態にある、すなわち第1液圧経路L1が失陥した状態にあると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS112)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS113)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS110へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS110,S111)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS113においてYesと判断された場合には、ステップS114において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS115において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS110へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS110)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS111)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS115においてYesと判断された場合には、ステップS116において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS110へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS110)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS111)、本プログラムが終了する。
以上のように、本実施形態では、第1液圧経路L1における作動液の液圧が不足するときは、第2電動モータM2の回転数を上昇させ、第2ポンプP2を介して供給される作動液の液圧に基づいて操舵アシストを行う。ここで、第1液圧経路L1における作動液の液圧が不足する原因としては、第1ポンプP1や、第1ポンプP1を介して供給される作動液が流れる配管等を含む第1液圧経路L1において異常が発生している場合、或いは第1駆動源であるエンジンEが停止している場合、などが想定される。なお、前記エンジンEが停止している場合には、エンジンEの故障による停止のみならず、意図的にエンジンEを停止している場合(例えばアイドリングストップなど)も含まれる。また、前記「第2電動モータM2の回転数を上昇させる」とは、第2電動モータM2が回転している状態において、第2電動モータM2の回転数を上昇させる場合だけでなく、第2電動モータM2が停止している状態から当該第2電動モータM2を始動させる場合も含まれる。
(本実施形態の作用効果)
従来のステアリング装置では、エンジンによって駆動されるポンプ(本実施形態の第1ポンプP1に相当)を用いて、パワーシリンダに供給された液圧に基づいて操舵力をアシストしていた。このため、例えばアイドリングストップ時や液圧系統の失陥時には、パワーシリンダに対する作動液の供給が不足し、第2軸に十分な操舵アシスト力を付与することが困難であった。
これに対して、本実施形態に係るステアリング装置では、以下の効果が奏せられることで、前記従来のステアリング装置の課題を解決することができる。
すなわち、本実施形態に係るステアリング装置は、操舵機構3であって、操舵軸31と、伝達機構32を含み、操舵軸31は、第1軸(入力軸33)と、第2軸(出力軸35)と、第1軸(入力軸33)と第2軸(出力軸35)の間に設けられたトーションバー(第1トーションバー34)を備え、伝達機構32は、操舵軸31の回転を操舵輪(図示外)に伝達可能である、操舵機構3と、パワーシリンダ4であって、パワーシリンダ本体部(シリンダ部301a)と、ピストン38と、第1液室X1と、第2液室X2を備え、パワーシリンダ4は、伝達機構32に対し操舵輪(図示外)を操舵させる操舵力を付与可能であり、ピストン38は、パワーシリンダ本体部(シリンダ部301a)の内部に設けられ、パワーシリンダ本体部(シリンダ部301a)の内部空間を第1液室X1と第2液室X2に分割している、パワーシリンダ4と、第1電動モータであって、ステータコイル(モータステータ75)と、モータロータ74を備え、第1軸(入力軸33)に回転力を付与する、第1電動モータM1と、第1ポンプであって、第1の駆動源(エンジンE)によって駆動され、作動液を吐出する、第1ポンプP1と、第2ポンプであって、第2の駆動源である第2電動モータM2によって駆動され、作動液を吐出する、第2ポンプP2と、ロータリバルブであって、トーションバー(第1トーションバー34)の捩れに応じて第1ポンプP1又は第2ポンプP2から供給される作動液を第1液室X1と第2液室X2に選択的に供給する、ロータリバルブ5と、コントローラであって、第1液圧経路状態判断部20と、第1電動モータ制御部21と、第2電動モータ制御部22を含み、第1液圧経路状態判断部20は、第1ポンプP1から吐出される作動液が流れる第1液圧経路L1における作動液の状態を判断し、第1電動モータ制御部21は、車両の運転状態に基づき、第1電動モータM1を駆動制御し、第2電動モータ制御部22は、第1液圧経路状態判断部20により、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足していると判断されるとき、第2電動モータM2の回転数を上昇させる、コントローラ2と、を有する。
このように、本実施形態では、例えば第1ポンプP1や、第1ポンプP1を介して供給される作動液が流れる配管等を含む第1液圧経路L1に異常が発生、或いは第1駆動源であるエンジンEが停止し、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足するときは、第2電動モータM2の回転数を上昇させて、第2ポンプP2を介して供給される作動液の液圧に基づいて操舵アシストを行う。これにより、パワーシリンダ4に供給される作動液の不足が抑制され、ステアリング装置の操舵性能が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態では、第1液圧経路状態判断部20は、第1液圧経路L1における作動液の圧力に基づき、第1液圧経路L1の異常の有無を判断し、第2電動モータ制御部22は、第1液圧経路状態判断部20が、第1液圧経路L1に異常有りと判断するとき、第2電動モータM2の回転数を上昇させる。
このように、本実施形態では、例えば第1液圧経路L1における作動液の液圧が所定値以下となったことをもって、第1液圧経路L1の異常の有無を判断する。これにより、第1の駆動源(エンジンE)、第1ポンプP1、第1ポンプP1から吐出される作動液が流れる配管、作動液を貯留するリザーバタンクTなど、何れの失陥についても検出することができる。
また、本実施形態に係るステアリング装置は、さらに、切換バルブを備え、切換バルブ6は、第1ポンプP1及び第2ポンプP2とロータリバルブ5との間に設けられ、切換バルブ6は、バルブハウジング60と、バルブハウジング60の中で移動可能に設けられた弁体62を含み、弁体62は、第1ポンプP1から吐出され切換バルブ6に供給される作動液の圧力が第1所定値以上のとき、第1の位置に移動し、第1所定値未満のとき、第2の位置に移動するように設けられており、切換バルブ6は、弁体62が前記第1の位置にあるとき、第1ポンプP1から吐出された作動液をロータリバルブ5に供給可能であり、弁体62が前記第2の位置にあるとき、第2ポンプP2から吐出された作動液をロータリバルブ5に供給可能である。
このように、本実施形態では、弁体62が第2の位置(第2ポジション)にあるときは、第1ポンプP1から切換バルブ6に供給される作動液の液圧が第1所定値未満となっており、切換バルブ6は、第2ポンプP2から吐出された作動液をロータリバルブ5に供給可能な状態とする。これにより、パワーシリンダ4に供給される作動液の不足が抑制され、ステアリング装置の操舵性能が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態では、切換バルブ6は、さらに、第1検知スイッチ81を含み、第1検知スイッチ81は、弁体62が前記第2の位置にあることを検知可能であり、第1液圧経路状態判断部20は、第1検知スイッチ81により、弁体62が前記第2の位置にあると検知されるとき、第1液圧経路L1に異常有りと判断する。
このように、本実施形態では、弁体62が第2の位置(第2ポジション)にあるときは、第1ポンプP1から切換バルブ6に供給される作動液の液圧が所定値未満となっている。これにより、例えば第1ポンプP1や第1ポンプP1から吐出される作動液が流れる配管など、第1液圧経路L1の何れかに異常が発生し、第1ポンプP1から切換バルブ6に充分な作動液を供給できない状態であると判断することができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、第2電動モータ制御部22が第2電動モータM2の回転数が上昇するように第2電動モータM2を駆動制御しているとき、第1電動モータM1を駆動制御する。
このように、本実施形態において、第2電動モータM2が駆動制御されているときは、第1液圧経路L1における作動液が不足していると判断されたときであり、十分な操舵力を発生できないおそれがある。そこで、第2電動モータM2と併せて第1電動モータM1を駆動制御することによって、操舵力不足を抑制することができる。
例えば、第1液圧経路L1における作動液の供給が正常に行われているときは、第2ポンプP2は駆動せず、異常時のみ、第2ポンプP2を駆動する場合、第2ポンプP2の吐出容量や第2電動モータM2の駆動トルクを最小限のものとし、ステアリング装置全体の大型化の抑制やステアリング装置の製造コストの削減を図ることができる。しかしながら、このような場合、第2ポンプP2の吐出性能は、第1ポンプP1の吐出性能に対し劣り、十分な作動液の供給が得られない可能性がある。そこで、このように、第1ポンプP1に対して第2ポンプP2の吐出性能が劣るような場合には、第1電動モータM1を駆動制御することで、操舵力不足を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、車両速度Vsに応じて、第1電動モータM1を駆動制御する。
すなわち、ステアリング装置では、車両速度Vsの変化に伴い、要求される操舵トルクの特性が変化する。具体的には、車両速度Vsが比較的低いときは、路面との摩擦抵抗が大きくなるため、大きな操舵アシスト力が必要になる一方、車両速度Vsが比較的高いときは、路面との摩擦抵抗が小さくなるため、小さな操舵アシスト力で足りることなる。そこで、かかる特性の変化に応じて第1電動モータM1の駆動制御を行うことで、操舵フィーリングの向上を図ることができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、車両速度Vsが高いほど、第1電動モータM1の駆動トルクが低くなるように第1電動モータM1を駆動制御する。
前述のように、車両速度Vsが高いほど、操舵輪と路面の間の摩擦抵抗は低下する。そこで、その分、第1電動モータM1の駆動トルクが低減するように第1電動モータM1を駆動制御することで、操舵負荷に応じた第1電動モータM1の駆動制御を行うことができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、第2電動モータM2の回転速度に応じて、第1電動モータM1を駆動制御する。
すなわち、ステアリング装置では、第2電動モータM2の回転速度Vm2の変化に伴い、パワーシリンダ4が発生可能となる操舵力は変化する。そこで、この変化に応じて第1電動モータM1を駆動制御することで、操舵特性の改善を図ることができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、第2電動モータM2の回転速度Vm2が高いほど、第1電動モータM1の駆動トルクが低くなるように第1電動モータM1を駆動制御する。
すなわち、ステアリング装置では、第2電動モータM2の回転速度Vm2が高いほど、ロータリバルブ5に供給される作動液の量が増大する結果、パワーシリンダ4で発生可能となる操舵アシスト力が増大する。そこで、かかる第2電動モータM2の回転速度Vm2の変化に応じて、第1電動モータM1の駆動トルクが低減するように第1電動モータM1を駆動制御することで、操舵負荷に応じた第1電動モータM1の駆動制御を行うことができる。
また、本実施形態では、前記第1の駆動源は、車両のエンジンEである。
このように、本実施形態では、車両のエンジンEによって第1ポンプP1を駆動することで、別途、第1ポンプP1を駆動するための駆動源を設ける必要がなくなる。これにより、ステアリング装置の構造の簡素化や、製造コストの低減を図ることができる。
(第1変形例)
図8~図11は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置の第1変形例を示す。なお、本変形例では、第1液圧経路L1における作動液の状態を検知する手段を変更したものであり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図8は、本変形例に係るステアリング装置のシステム構成図を示している。また、図9は、本変形例に係るステアリング装置における第1液圧経路L1の液圧と時間との関係を表したグラフを示している。
図8に示すように、本変形例に係るステアリング装置は、第1液圧経路L1において、第1検知スイッチ81よりも下流側の位置に、第1検知スイッチ81よりも高い閾値を有する第2検知スイッチ82を備える。第2検知スイッチ82は、図9に示すように、第1液圧経路L1の正常な液圧(正常値Pnom)よりも低く、かつ第1検知スイッチ81の閾値である第1所定値Px1よりも高い第2所定値Px2を閾値とする。すなわち、この第2検知スイッチ82は、第2所定値Px2未満となったときに通電し、第2検知スイッチ信号OP2がコントローラ2に送信される(図8参照)。
このように、本実施形態では、図9に示すように、まず、第1液圧経路L1の作動液の液圧が正常値Pnomを下回り、さらに第2所定値Px2を下回ったところで第2検知スイッチ82がオンになる。これにより、第1液圧経路L1の異常が第1次的に判断される。続いて、第1液圧経路L1の失陥により、さらに液圧が低下し、第1所定値Px1を下回ったところで第1検知スイッチ81がオンになる。これにより、第1液圧経路L1の異常が第2次的に確定判断される。その後、液圧はさらに低下し、やがて最小値Pminとなる。
図10は、本変形例に係るコントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。
図10に示すように、本変形例では、コントローラ2における第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203に、第1検知スイッチ信号受信部261を介して第1検知スイッチ信号OP1が入力されると共に、第2検知スイッチ信号受信部262を介して第2検知スイッチ信号OP2が入力される。そして、液圧低下判断部203では、まず、第2検知スイッチ82の第2検知スイッチ信号OP2がオンとなったとき(「OP2=1」が入力されたとき)、第1液圧経路L1の異常が、第1次的に判断される。続いて、第1検知スイッチ81の第1検知スイッチ信号OP1がオンとなったとき(「OP1=1」が入力されたとき)、すなわち切換バルブ6の弁体62が第2の位置(第2ポジション)に移動したとき(図4(b)参照)、第1液圧経路L1の異常が、第2次的に、確定判断される。このように、第1、第2検知スイッチ信号OP1,OP2に基づき第1液圧経路L1に異常があると判断された場合には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
図11は、本変形例における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図11に示すように、まず、液圧低下判断部203において、第2検知スイッチ82より出力された第2検知スイッチ信号OP2を取り込んだ後(ステップS201)、この取り込んだ第2検知スイッチ信号OP2が「1」であるか否か、つまり第2検知スイッチ82がオンになっているか否かを判断する(ステップS202)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS215に移行する。
一方、ステップS202においてNoと判断された場合は、液圧低下判断部203において、第1検知スイッチ81より出力された第1検知スイッチ信号OP1を取り込んだ後(ステップS203)、この取り込んだ第1検知スイッチ信号OP1が「1」であるか否か、つまり第1検知スイッチ81がオンになっているか否かを判断する(ステップS204)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているとして、続くステップS215に移行する。
一方、ステップS204においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS205)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS206)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS215に移行する。
一方、ステップS206においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS207)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS208)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS214に移行する。なお、ステップS207でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS208でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS208では、前ステップS207で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS208においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1における作動液の液圧は正常であるとして、操舵トルク信号受信部27を介して受信された操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS209)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS210,S211)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS212,S213)、本プログラムが終了する。
ステップS214に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS214)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS215)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS212へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS212,S213)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS215においてYesと判断された場合には、ステップS216において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS217において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS212へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS212)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS213)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS217においてYesと判断された場合には、ステップS218において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS212へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS212)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS213)、本プログラムが終了する。
(第1変形例の作用効果)
以上のことから、本変形例に係るステアリング装置は、さらに、第2検知スイッチ82を備え、切換バルブ6は、さらに、第1検知スイッチ81を含み、第1検知スイッチ81は、弁体62が前記第2の位置にあることを検知可能であり、第2検知スイッチ82は、第1ポンプP1から吐出され切換バルブ6に供給される作動液の液圧が第1所定値Px1より高い第2所定値Px2未満となったことを検知可能であり、第1液圧経路状態判断部20は、第2検知スイッチ82により、第1ポンプP1から切換バルブ6に供給される作動液の液圧が第2所定値Px2未満となったと検知されたとき、第1液圧経路L1に異常有りと判断する。
このように、本変形例では、第1検知スイッチ81に加えて、当該第1検知スイッチ81の閾値である第1所定値Px1よりも高い第2所定値Px2を閾値とする第2検知スイッチ82が設けられている。すなわち、本変形例では、第2検知スイッチ82により、作動液の液圧が第1所定値Px1よりも高い第2所定値Px2以上であるか、又は第2所定値Px2未満であるかを判断することが可能である。その結果、前記第1実施形態と比べて、より早いタイミングにおいて、第1液圧経路L1における異常の発生を検知することができる。これにより、より早いタイミングで第2電動モータM2の回転数を上昇させることが可能となり、第1液圧経路L1による液圧供給から第2液圧経路L2による液圧供給へとスムーズに移行することができる。
すなわち、第1液圧経路L1に異常が発生すると、図9に示すように、当該第1液圧経路L1の作動液の液圧は、いわゆるハンチングを伴いながら、漸次減衰していくことになる。そこで、第1検知スイッチ81のみでは、第1液圧経路L1の液圧が第1所定値Px1を下回ったところで、第2電動モータM2が駆動されて第2液圧経路L2による液圧供給に移行する一方、前記ハンチングにより液圧が第1所定値Px1を上回ったところで、第2電動モータM2が停止して第1液圧経路L1による液圧供給となる。そうすると、ステアリング装置における操舵アシスト力の発生が断続的となってしまい、操舵フィーリングが悪化してしまう。そこで、第2検知スイッチ82を設けることによって、第1液圧経路L1の液圧が大きく低下する前に、第2液圧経路L2による液圧供給へと移行することが可能となる。これにより、前述のようなハンチングが発生しても、ステアリング装置の操舵アシスト力の断続的な発生が抑制され、良好な操舵フィーリングを確保することができる。
一方で、第1液圧経路L1における異常の発生をより早く検知するために、第2検知スイッチ82を追加するのではなく、第1検知スイッチ81の閾値である第1所定値Px1を、より高い値に設定することが考えられる。しかし、第1検知スイッチ81は、切換バルブ6を切り換える、すなわち第1液圧経路L1による液圧供給を第2液圧経路L2による液圧供給へと切り換える役割を有するものである。このため、第1検知スイッチ81では、第1液圧経路L1の異常により第1液圧経路L1における作動液の液圧が十分に(確実に)下がった後に切換バルブ6を切り換えることが望ましく、第1検知スイッチ81の閾値(第1所定値Px1)を必要以上に高く設定することは適切でない。そこで、本変形例のように、第2検知スイッチ82を追加することによって、第1検知スイッチ81の閾値(第1所定値Px1)を維持し、切換バルブ6の適切な作動を維持したまま、第1液圧経路L1における異常の発生を、より早く検知することができる。
(第2変形例)
図12~図14は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置の第2変形例を示す。なお、本変形例では、第1液圧経路L1における作動液の状態を検知する手段を変更したものであり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図12は、本変形例に係るステアリング装置のシステム構成図を示している。
図12に示すように、本変形例に係るステアリング装置は、第1液圧経路L1において、第1ポンプP1とロータリバルブ5との間に、第1検知スイッチ81に代えて、作動液の液圧を検出する圧力センサ83を備える。圧力センサ83は、第1ポンプP1から切換バルブ6に供給される作動液の液圧の変化を検出可能である図示外の素子を備え、当該圧力センサ83によって検出された液圧信号OPが、コントローラ2に送信される。
図13は、本変形例に係るコントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。
図13に示すように、本変形例では、コントローラ2の第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203において、圧力センサ信号受信部263を介して入力された液圧信号OPが、閾値である第3所定値Px3以下となったとき、第1液圧経路L1に異常が発生していると判断される。このように、液圧信号OPによって第1液圧経路L1に異常があると判断された場合には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
図14は、本変形例における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図14に示すように、まず、液圧低下判断部203において、圧力センサ83より検出された液圧信号OPを取り込んだ後(ステップS301)、この取り込んだ液圧信号OPが第3所定値Px3未満であるか否かを判断する(ステップS302)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS312に移行する。
一方、ステップS302においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS303)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS304)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS312に移行する。
一方、ステップS304においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS305)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS306)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS312に移行する。なお、ステップS305でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS306でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS306では、前ステップS305で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS306においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われているものとして、操舵トルク信号受信部27を介して受信された操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS307)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS308,S309)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS310,S311)、本プログラムが終了する。
ステップS312に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS312)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS313)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS310へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS310,S311)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS313においてYesと判断された場合には、ステップS314において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS315において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS310へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS310)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS311)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS315においてYesと判断された場合には、ステップS316において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS310へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS310)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS311)、本プログラムが終了する。
(第2変形例の作用効果)
以上のことから、本変形例に係るステアリング装置は、さらに、圧力センサ83を備え、圧力センサ83は、第1ポンプP1から吐出され切換バルブ6に供給される作動液の液圧の変化を検出可能である素子を備えており、第1液圧経路状態判断部20は、圧力センサ83により、第1ポンプP1から切換バルブ6に供給される作動液の液圧が第3所定値Px3未満となったと検知されたとき、第1液圧経路L1に異常有りと判断する。
このように、本変形例では、圧力センサ83によって第1液圧経路L1における作動液の液圧を直接検知することで、第1液圧経路L1における異常の発生をより高い精度で判断することができる。
また、圧力センサ83によれば、第1液圧経路L1における作動液の液圧を直接検出できるため、前記第1、第2検知スイッチ81,82のような機械的な圧力スイッチを複数設ける必要がなくなる。その結果、ステアリング装置の構造の簡素化を図ることができる。
〔第2実施形態〕
図15~図17は、本発明に係るステアリング装置の第2実施形態を示す。なお、本実施形態では、第1液圧経路L1における作動液の状態を検知する手段を変更したものであり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図15は、本発明の第2実施形態に係るコントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。
図15に示すように、本実施形態では、コントローラ2の第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203に、第1モータトルク信号受信部91を介して第1電動モータM1の駆動トルクである第1モータトルク信号Tm1が入力される。或いは、この第1モータトルク信号Tm1の代わりに、第1モータ電流信号受信部92を介して第1電動モータM1の駆動電流である第1モータ電流信号Im1が入力される。そして、液圧低下判断部203では、第1モータトルク信号Tm1が所定トルクTx以上のとき、又は第1モータ電流信号Im1が所定電流値Ix以上のとき、第1液圧経路L1に異常が発生していると判断される。このように、第1モータトルク信号Tm1又は第1モータ電流信号Im1に基づいて第1液圧経路L1に異常があると判断された場合には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
また、第1モータトルクTm1ないし第1モータ電流信号Im1に基づき、パワーシリンダ4による操舵アシスト力が不足すると判断されると、第1液圧経路状態判断部20(最終判断部204)から第1電動モータ制御部21に、第1液圧経路失陥信号SigDが出力される。これを受けて、第1電動モータ制御部21では、第1電動モータM1の駆動トルクをさらに増大させるように当該第1電動モータM1を駆動制御する。
図16は、本実施形態に係るステアリング装置における第1電動モータM1の操舵補助の有無と操舵アシスト力との関係を表したグラフを示している。
図16に示すように、時間t1において第1液圧経路L1の異常が判断されると、線Aに示すように、パワーシリンダで生成される操舵アシスト力が徐々に低下し、時間t2で最小となる。すると、図中に破線Bで示すように、前記パワーシリンダの操舵アシスト力の低下に伴い、操舵トルクが大きく増大する。これに対し、本実施形態では、時間t1において第1液圧経路L1の異常が判断されると、線Cに示すように、第1電動モータM1の駆動トルクが増大制御され、当該第1電動モータM1の駆動トルクが徐々に増大し、時間t2で最大となる。この第1電動モータM1の駆動トルクの増大制御に基づく操舵補助により、線Dに示すように、操舵トルクの増大を最小限に抑えることができる。
図17は、本実施形態における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図17に示すように、まず、液圧低下判断部203において、第1モータトルク信号受信部91を介して入力された第1モータトルク信号Tm1を取り込んだ後(ステップS401)、この取り込んだ第1モータトルク信号Tm1が所定トルクTx以上であるか否かを判断する(ステップS402)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS412に移行する。なお、前記第1モータトルク信号Tm1の代わりに、ステップS401で第1モータ電流信号Im1を取り込んで、この第1モータ電流信号Im1によって、ステップS402で第1液圧経路L1の異常を判断してもよい。この場合、ステップS402では、前ステップS401で取り込んだ第1モータ電流信号Im1が所定電流値Ix以上である場合に、第1液圧経路L1に異常が発生していると判断することができる。
一方、ステップS402においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS403)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS404)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS412に移行する。
一方、ステップS404においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS405)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS406)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS412に移行する。なお、ステップS405でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS406でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS406では、前ステップS405で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS406においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われているものとして、操舵トルク信号受信部27を介して受信された操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS407)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS408,S409)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS410,S411)、本プログラムが終了する。
ステップS412に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS412)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS413)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS410へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS410,S411)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS413においてYesと判断された場合には、ステップS414において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS415において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS410へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS410)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS411)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS415においてYesと判断された場合には、ステップS416において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS410へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS410)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS411)、本プログラムが終了する。
(第2実施形態の作用効果)
以上のことから、本実施形態に係るステアリング装置では、第1電動モータ制御部21は、パワーシリンダ4の操舵力が不足するとき、第1電動モータM1の駆動トルクが増大するように第1電動モータM1を駆動制御し、第1液圧経路状態判断部20は、第1電動モータM1の駆動トルク(第1モータトルクTm1)が所定トルクTx以上、又は第1電動モータM1に流れる電流(第1モータ電流Im1)が所定電流値Ix以上のとき、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足していると判断する。
すなわち、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足することで、第1電動モータM1の駆動トルクが増大制御され、第1モータトルクTm1ないし第1モータ電流Im1が増大することになる。より具体的には、前記手動操縦状態の場合は、第1液圧経路L1における作動液の供給不足によって、トルクセンサ(図示外)にて検出される操舵トルクが増大する結果、第1電動モータM1の駆動トルクが増大制御され、第1モータトルクTm1ないし第1モータ電流Im1が増大する。一方、前記自動操縦状態の場合は、第1液圧経路L1における作動液の供給不足により、ステアリング装置の舵角指令(目標操舵角)に対し実操舵角が不足する結果、第1電動モータM1の駆動トルクが増大制御され、第1モータトルクTm1ないし第1モータ電流信号Im1が増大する。このように、本実施形態では、第1モータトルクTm1ないし第1モータ電流Im1の上昇を検知することにより、第1液圧経路L1における作動液の液圧が低下していると推定できる。換言すれば、第1液圧経路L1における作動液の液圧を直接検出することなく、第1液圧経路L1の異常を判断し、第2電動モータM2の回転数を上昇させ、第2ポンプP2による液圧供給に切り換えることができる。
〔第3実施形態〕
図18~図20は、本発明に係るステアリング装置の第3実施形態を示す。なお、本実施形態では、第1液圧経路L1における作動液の状態を検知する手段を変更したものであり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図18は、本実施形態に係るステアリング装置のシステム構成図を示している。
図18に示すように、本実施形態に係るステアリング装置は、コントローラ2が車両の統合コントローラ86に接続され、統合コントローラ86には、車両の走行状態を監視する車載カメラ84を作動制御するカメラコントローラ85が接続されている。このように、本実施形態に係るステアリング装置は、統合コントローラ86を介して、車載カメラ84によって撮影されカメラコントローラ85によって演算処理された車両の走行状態に係る情報、例えば車両の操舵輪と走行車線との距離である車線距離などを、カメラ信号CSとして受信可能となっている。
図19は、本実施形態に係るコントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。
図19に示すように、本実施形態では、コントローラ2において、第1液圧経路状態判断部20より上流側に、カメラ信号受信部93を介して入力されるカメラ信号CSに基づき車線の逸脱又はそのおそれを判断する車線逸脱判断部94が設けられている。そして、この車線逸脱判断部94において車線の逸脱又はそのおそれがあると判断された場合は、車線逸脱信号受信部95を介して、第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203に、車線逸脱信号LOが入力される。これにより、液圧低下判断部203では、前記車線逸脱信号LOをもって、第1液圧経路L1における作動液の液圧の低下が判断される。具体的には、第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203に車線逸脱信号LO(LO=1)が入力されると、第1液圧経路L1に異常が発生していると判断される。このように、車線逸脱信号LOによって第1液圧経路L1に異常があると判断された場合には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
図20は、本実施形態における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図20に示すように、まず、液圧低下判断部203において、車線逸脱判断部94より車線逸脱信号受信部95を介して入力された車線逸脱信号LOを取り込んだ後(ステップS501)、この取り込んだ車線逸脱信号LOが「1」であるか否か、つまり車線逸脱又はそのおそれがあるか否かを判断する(ステップS502)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS512に移行する。
一方、ステップS502においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS503)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS504)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS512に移行する。
一方、ステップS504においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS505)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS506)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS512に移行する。なお、ステップS505でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS506でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS506では、前ステップS505で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS506においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われているものとして、操舵トルク信号受信部27を介して受信された操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS507)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS508,S509)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS510,S511)、本プログラムが終了する。
ステップS512に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS512)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS513)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS510へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS510,S511)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS513においてYesと判断された場合には、ステップS514において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS515において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS510へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS510)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS511)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS515においてYesと判断された場合には、ステップS516において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS510へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS510)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS511)、本プログラムが終了する。
(第3実施形態の作用効果)
以上のことから、本実施形態に係るステアリング装置では、コントローラ2は、車線逸脱判断部94を備え、車線逸脱判断部94は、車両が走行車線から逸脱しているか否か、又は走行車線から逸脱するおそれがあるか否かを判断し、第1液圧経路状態判断部20は、車線逸脱判断部94により、車両が走行車線から逸脱している、又は車両が走行車線から逸脱するおそれがある、と判断するとき、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足していると判断する。
前記自動操縦状態など、いわゆるレーンキープ制御中に、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足すると、パワーシリンダ4で生成される操舵アシスト力が不足し、車両を所望の走行位置に維持させることが困難となる。そこで、本実施形態では、車線逸脱判断部94において車線の逸脱又はそのおそれを判断し、かかる車線逸脱判断部94の車線逸脱判断をもって、第1液圧経路状態判断部20において、第1液圧経路L1の作動液の供給が不足していると判断する。これにより、第2電動モータ制御部22において、第2電動モータM2の回転数が上昇制御される結果、パワーシリンダ4に供給される作動液の不足の発生を抑制され、操舵性能が低下することを抑制することができる。
なお、コントローラ2の車線逸脱判断部94は、本実施形態のように、車載カメラ84の情報に基づいて車両が走行車線から逸脱又はそのおそれがあるか否かを判断してもよく、また、別のコントローラ(例えば統合コントローラ86)から車線逸脱判断結果に係る信号を受信し、車両が走行車線から逸脱又はそのおそれがあると認識するようにしてもよい。
〔第4実施形態〕
図21~図22は、本発明に係るステアリング装置の第4実施形態を示す。なお、本実施形態では、第1液圧経路L1における作動液の状態を検知する手段を変更したものであり、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図21は、本実施形態に係るコントローラ2の演算回路の構成を表した制御ブロック図を示している。
図21に示すように、本実施形態では、コントローラ2の第1液圧経路状態判断部20の液圧低下判断部203に、実舵角センサ信号受信部96を介して実舵角信号θaが入力されると共に、目標舵角信号受信部97を介して目標舵角信号θtが入力される。なお、実舵角信号θaは、ステアリング装置に設けられた図示外の実舵角センサにより検出される。また、目標舵角信号θtは、前記第3実施形態で例示した車載カメラ84等による車両情報に基づいて統合コントローラ86により演算処理された信号であって、車両の操舵輪を所定の操舵角に操舵させるための舵角指令信号である。
そして、液圧低下判断部203では、目標舵角信号θtと実舵角信号θaとの差分|θt-θa|に基づき、第1液圧経路L1における作動液の液圧の低下が判断される。具体的には、目標舵角信号θtと実舵角信号θaとの差分|θt-θa|が所定値θxよりも大きくなった場合に、第1液圧経路L1に異常が発生していると判断される。このように、目標舵角信号θtと実舵角信号θaとの差分|θt-θa|に基づき、第1液圧経路L1に異常があると判断された場合には、液圧低下判断部203から最終判断部204に対し、液圧低下判定信号SigCが出力される。
図22は、本実施形態における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図22に示すように、まず、液圧低下判断部203において、実舵角センサ信号受信部96を介して入力された実舵角信号θaを取り込んだ後(ステップS601)、目標舵角信号受信部97を介して入力された目標舵角信号θtを取り込む(ステップS602)。その後、取り込んだ目標舵角信号θtと実舵角信号θaとの差分|θt-θa|が所定値θxよりも大きいか否かを判断する(ステップS603)。当該ステップS603においてYesと判断された場合には、舵角不足カウンタCθをインクリメント(Cθ=+1)した後(ステップS604)、舵角不足カウンタCθが所定値Cx以上であるか否かを判断する(ステップS605)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS615に移行する一方、Noと判断された場合には、前記ステップS601に戻る。
一方、ステップS603においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS606)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS607)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS615に移行する。
一方、ステップS607においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vsを取り込んだ後(ステップS608)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であるか否かを判断する(ステップS609)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS615に移行する。なお、ステップS608でエンジン回転数Neを取り込み、このエンジン回転数信号Neによって、ステップS609でエンジンEがアイドリングストップの状態にあるか否かを直接判断してもよい。この場合、ステップS609では、前ステップS608で取り込んだエンジン回転数Neが所定回転数Nx以下である場合に、第1ポンプP1がエンジンEのアイドリングストップに伴う停止状態にあると判断することができる。
一方、ステップS609においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1における作動液の液圧は正常であるとして、操舵トルク信号受信部27を介して受信された操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS610)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS611,S612)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づいて第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御することをもって(ステップS613,S614)、本プログラムが終了する。
ステップS615に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS615)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS616)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS613へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS613,S614)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS616においてYesと判断された場合には、ステップS617において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS618において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS613へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS613)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS614)、本プログラムが終了する。
一方、ステップS618においてYesと判断された場合には、ステップS619において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS613へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS613)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS614)、本プログラムが終了する。
(第4実施形態の作用効果)
以上のことから、本実施形態に係るステアリング装置では、コントローラ2は、操舵輪を所定の操舵角に操舵させるための指令信号である舵角指令信号(目標舵角信号θt)を受信し、かつ検出された前記操舵輪の操舵角情報に関する信号である実舵角信号θaを受信し、第1電動モータ制御部21は、舵角指令信号(目標舵角信号θt)に基づき、第1電動モータM1を駆動制御し、第1液圧経路状態判断部20は、所定時間(Cθ<Cx)内において、舵角指令信号(目標舵角信号θt)の値と実舵角信号θaの値の差が所定値θx以内に収束しないとき、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足していると判断する。
前記自動操舵状態における自動操舵制御中には、コントローラ2は、舵角指令信号(目標舵角信号θt)を受信し、操舵輪が所定の操舵角に操舵されるよう、第1電動モータM1を駆動制御する。このとき、第1液圧経路L1における作動液の供給が不足すると、パワーシリンダ4で生成される操舵アシスト力が不足し、操舵輪を所望の操舵角に操舵させることが困難となる。そこで、本実施形態では、舵角指令信号(目標舵角信号θt)の値と実舵角信号θaの値の差が所定時間内(Cθ<Cx)に所定値θx以内に収束しない場合に、第1液圧経路状態判断部20は、第1液圧経路L1の作動液の供給が不足していると判断する。これにより、第2電動モータ制御部22において、第2電動モータM2の回転数が上昇制御される結果、パワーシリンダ4に供給される作動液の不足の発生を抑制され、操舵性能が低下することを抑制することができる。
〔第5実施形態〕
図23は、本発明に係るステアリング装置の第5実施形態を示す。なお、本実施形態では、前記第1実施形態において第2電動モータM2の回転数を上昇させ第2ポンプP2を駆動しても操舵アシスト力が不足してしまう場合の実施態様を示すものであって、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、本実施形態は、各変形例を含む前記第1実施形態のほか、前記第2~第4実施形態に係る制御に適用することも可能である。
図23は、本実施形態における第2ポンプP2の駆動制御に係る制御フローを表したフローチャートを示している。
図23に示すように、まず、液圧低下判断部203において、第1検知スイッチ81より出力された第1検知スイッチ信号OP1を取り込んだ後(ステップS701)、この取り込んだ第1検知スイッチ信号OP1が「1」であるか否か、つまり第1検知スイッチ81がオンになっているか否かを判断する(ステップS702)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1に異常が発生しているものとして、続くステップS712に移行する。
一方、ステップS702においてNoと判断された場合は、続いてアクセルオフ判断部202において、アクセル開度信号AOを取り込んだ後(ステップS703)、この取り込んだアクセル開度信号AOが「0」であるか否か、つまりアクセル(スロットル)が閉じているか否かを判断する(ステップS704)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がアクセルオフに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS712に移行する。
一方、ステップS704においてNoと判断された場合は、続いてアイドリングストップ判断部201において、車速信号Vs及びエンジン回転数信号Neを取り込んだ後(ステップS705)、この取り込んだ車速信号Vsが所定車速Vx以下であって、かつエンジン回転数信号Neが所定回転数Nx以下あるか否かを判断する(ステップS706)。ここで、Yesと判断された場合には、第1液圧経路L1における液圧低下がエンジンEのアイドリングストップに伴う第1ポンプP1の停止状態によるものであるとして、続くステップS712に移行する。
一方、ステップS706においてNoと判断された場合には、第1液圧経路L1(第1供給通路F1)において正常な液圧供給が行われているものとして、トルクセンサTSから操舵トルク信号受信部27を介して操舵トルク信号Trを取り込む(ステップS707)。その後、この取り込んだ操舵トルク信号Trに基づき、第1電動モータトルク指令Tm*(A)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(A)を演算する(ステップS708,S709)。そして、これらモータトルク指令Tm1*(A),Tm2*(A)に基づき、第1電動モータM1と第2電動モータM2とを駆動制御する(ステップS710,S711)。この場合、エンジンEは停止状態にないため(ステップS706でNoと判断)、エンジン始動信号ESは送信せず、本プログラムが終了する(ステップS717,S718)。
ステップS712に移行した場合、前述したように、第1液圧経路L1に異常が発生していると考えられる。そこで、まず、操舵トルク信号Trを取り込んだ後(ステップS712)、この取り込んだ操舵トルク信号Trの値が第1トルクT1以上であるか否かを判断する(ステップS713)。ここでNoと判断された場合には、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)及び第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第1、第2モータトルク指令Tm1*(B),Tm2*(B)を「0」として、ステップS710へと移行する。この場合、第1、第2電動モータM1,M2は駆動制御されることなく(ステップS710,S711)、続くステップS717に移行する。
一方、ステップS713においてYesと判断された場合には、ステップS714において第1電動モータトルク指令Tm1*(B)を演算した後、ステップS715において、操舵トルク信号Trの値が第2トルクT2以上であるか否かを判断する。ここでNoと判断された場合には、第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算することなく、第2モータトルク指令Tm2*(B)を「0」として、ステップS710へと移行する。この場合、第1電動モータトルク指令Tm1*(B)によって第1電動モータM1のみが駆動制御され(ステップS710)、第2電動モータM2は駆動制御されることなく(ステップS711)、続くステップS717に移行する。
一方、ステップS715においてYesと判断された場合には、ステップS716において第2電動モータトルク指令Tm2*(B)を演算した後、ステップS710へと移行する。この場合、第1電動モータM1が第1電動モータトルク指令Tm1*(B)に基づき駆動制御され(ステップS710)、さらに第2電動モータM2が第2電動モータトルク指令Tm2*(B)に基づき駆動制御され(ステップS711)、続くステップS717に移行する。
ステップS717では、第1モータトルク指令Tm1*(B)が所定トルクTx以上である、又は第1モータ電流Im1が所定電流値Ix以上であるか否かを判断する(ステップS717)。ここでNoと判断された場合は、エンジン始動信号ESを送信することなく、本プログラムが終了する。
一方、ステップS717においてYesと判断された場合、第1電動モータM1による操舵補助、及び第2ポンプP2による液圧供給に基づく操舵補助をもってしても、操舵力(操舵アシスト力)が不足すると判断されたことになる。このため、ステップS718において、エンジンEの始動を促すエンジン始動信号ESを送信し(ステップS718)、本プログラムが終了する。なお、エンジン始動信号ESは、例えば図5に示すように、第1電動モータ制御部21の第1電動モータトルク指令演算部211に設けられるエンジン始動信号送信部より、車両のエンジンECU(図示外)に送信される。
(第5実施形態の作用効果)
以上のことから、本実施形態に係るステアリング装置では、第2電動モータ制御部22は、車両速度Vsが所定車速Vx以下の状態で、かつ車両のエンジンEが停止したアイドリングストップ状態(エンジン回転数信号Neが所定回転数Nx以下の状態)において、第2電動モータM2の回転数を上昇させる。
すなわち、いわゆるアイドリングストップ制御中など第1ポンプP1の駆動源であるエンジンEが停止した状態では、第1ポンプP1が駆動されず、停止した状態となる。そこで、本実施形態では、かかるエンジン停止中において、第2電動モータM2の回転数を上昇させ、第2ポンプP2を駆動させることで、当該エンジン停止中においても、操舵補助を行うことができる。これにより、例えばいわゆるEV走行モード(ハイブリッド車においてエンジンを停止させ電動モータのみを駆動源として走行するモード)において操舵操作を行う場合にも、操舵補助機能を確保することができる。その他、アイドリングストップ制御期間中に据え切りを行う必要がある場合や、同制御期間中に例えば右左折待ちのステアリングの切り始めなどアイドリングストップ状態からエンジン再始動までの間に操舵を行う必要がある場合にも、操舵補助を行うことができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、前記アイドリングストップ状態において、第1電動モータM1を駆動制御する。
アイドリングストップ制御期間中は、車両速度が零か、又は極低速の状態であり、路面と操舵輪の間の摩擦抵抗が大きくなる。そこで、本実施形態では、かかるアイドリングストップ状態において、第2電動モータM2に加え、第1電動モータM1も駆動制御することにより、操舵アシスト力不足の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1電動モータ制御部21は、車両速度Vsが所定車速Vx以下の状態で、かつ車両のエンジンEが停止したアイドリングストップ状態(エンジン回転数信号Neが所定回転数Nx以下の状態)において、第1電動モータM1を駆動制御し、コントローラ2は、エンジン始動信号送信部98を備え、エンジン始動信号送信部98は、前記アイドリングストップ状態において、第1電動モータM1の駆動トルク(第1モータトルクTm1)が所定トルクTx以上、又は第1電動モータM1に流れる電流値(第1モータ電流Im1)が所定電流値Ix以上のとき、エンジンEを始動させるエンジン始動信号を送信する。
すなわち、第1モータトルクTm1や、第1モータ電流Im1が過大となる状態では、第1ポンプP1により吐出される作動液圧に基づくパワーシリンダ4の操舵アシスト力が必要になっていると判断することができる。そこで、本実施形態では、かかる状態においてエンジン始動信号ESを送信し、エンジンEを始動させることにより、第1ポンプP1の駆動が可能となり、必要十分な操舵アシスト力を得ることができる。
〔第6実施形態〕
図24~図25は、本発明に係るステアリング装置の第6実施形態を示す。なお、本実施形態では、前記第1実施形態において第1電動モータM1を入力軸33とは別体に構成した実施態様を示すものであって、他の構成については前記第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図24は、本発明の第6実施形態に係るステアリング装置の縦断面図を示し、図25は、図24のB-B線に沿って切断した断面図を示している。
前記第1実施形態では、第1電動モータM1を入力軸33と一体に構成した態様を例示したが、本発明は、図24、図25に示すように、第1電動モータM1と入力軸33とが別体に構成されたステアリング装置にも適用可能である。すなわち、本実施形態に係るステアリング装置では、第1電動モータM1が、減速機、例えばウォームギヤ10を介して、入力軸33(第2入力軸332)と繋がっている。ウォームギヤ10は、第1電動モータM1に繋がるウォームシャフト11と、入力軸33と繋がるウォームホイール12と、によって構成され、第2ハウジング302の図示外のステアリングホイール側の端部に取り付けられる第3ハウジング303の内部に収容される。第3ハウジング303は、第2ハウジング302と対向する端部に設けられたフランジ部303aを介して、複数のボルト80dにより、第2ハウジング302に固定されている。
ウォームシャフト11は、一端側が、軸継手13を介して電動モータM1の回転軸M1aと一体回転可能に連結されると共に、他端側の所定領域に設けられた歯部110が、ウォームホイール12の外周側に設けられた歯部120と噛み合っている。また、ウォームシャフト11の両端部は、ボールベアリングである1対の第6軸受B6,B6によって、回転可能に支持されている。
ウォームホイール12は、入力軸33(第2入力軸332)の外周側に固定される金属製の芯金部121と、芯金部121を内部に包み込むかたちで一体成形(インサート成形)された樹脂製のホイール部122と、で構成される。芯金部121は、円環状を呈し、中心部に設けられた貫通孔121aに第2入力軸332が貫通した状態で固定される。ホイール部122は、芯金部121の外面を包むように設けられ、外周側に形成された歯部120が、ウォームシャフト11の歯部120と噛み合う。
第1電動モータM1は、図25に示すように、入力軸33に対して直行するかたちで、操舵軸31の回転軸線Zに直行する回転軸線Yに沿って配置される。そして、この第1電動モータM1は、モータハウジング72に設けられたフランジ部720を介して、複数のボルト80eにより、第3ハウジング303の側部に固定されている。また、第1電動モータM1は、いわゆる機電一体に構成され、第1電動モータM1の固定部(フランジ部720)と反対側の端部に、コントローラ2が一体に設けられている。
また、図24中の符号TSは、入力軸33を介して入力される操舵トルク、すなわち第1トーションバー34に発生するトルクを検出するトルクセンサである。このトルクセンサTSは、センサ本体部TS1と、基板TS2とで構成され、基板TS2はコネクタCNを介してコントローラ2(図1参照)と電気的に接続される。
以上のように、本発明は、入力軸33と第1電動モータM1とが別体に構成されたステアリング装置に適用することが可能である。また、本実施形態では、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられることは勿論、第1電動モータM1と入力軸33との間に減速機(ウォームギヤ10)を介在させることで、第1電動モータM1の駆動トルクを増幅でき、第1電動モータM1による操舵アシスト力を増大させることができる。その結果、第1電動モータM1の併用を前提に、第2電動モータM2や第2ポンプP2の小型化を図ることができる。
〔その他の実施形態〕
本発明は、前記各実施形態等で例示された構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、適用するステアリング装置の仕様等に応じて自由に変更可能である。
例えば、前記各実施形態等では、インテグラル型のパワーステアリング装置に本発明を適用した実施態様について説明したが、ラックバー及びタイロッドからなる伝達機構を備えたラック・ピニオン型のステアリング装置や、コラム型のパワーステアリング装置に適用することもできる。
さらに、本実施形態では、第1電動モータ制御部21と第2電動モータ制御部22とが、共に同じコントローラのマイクロコンピュータ内に設けられた構成を例示したが、それぞれを1つの(同一の)コントローラの異なるマイクロコンピュータ内に設けることも可能である。
また、第1電動モータ制御部21を有するコントローラと、第2電動モータ制御部22を有するコントローラは、必ずしも同一のコントローラである必要はない。換言すれば、第1電動モータ制御部21と第2電動モータ制御部22は、1つの(同一の)コントローラに設けられている必要はない。すなわち、例えば第2ポンプP2専用のコントローラに第2電動モータ制御部22が設けられ、これとは別個のコントローラに第1電動モータ制御部21が設けられていてもよい。
以上説明した実施形態に基づくステアリング装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該ステアリング装置は、その1つの態様において、ステアリング装置であって、操舵機構であって、操舵軸と、伝達機構を含み、前記操舵軸は、第1軸と、第2軸と、前記第1軸と前記第2軸の間に設けられたトーションバーを備え、前記伝達機構は、前記操舵軸の回転を操舵輪に伝達可能である、前記操舵機構と、パワーシリンダであって、パワーシリンダ本体部と、ピストンと、第1液室と、第2液室を備え、前記パワーシリンダは、前記伝達機構に対し前記操舵輪を操舵させる操舵力を付与可能であり、前記ピストンは、前記パワーシリンダ本体部の内部に設けられ、前記パワーシリンダ本体部の内部空間を前記第1液室と前記第2液室に分割している、前記パワーシリンダと、第1電動モータであって、ステータコイルと、モータロータを備え、前記第1軸に回転力を付与する、前記第1電動モータと、第1ポンプであって、第1の駆動源によって駆動され、作動液を吐出する、前記第1ポンプと、第2ポンプであって、第2の駆動源である第2電動モータによって駆動され、作動液を吐出する、前記第2ポンプと、ロータリバルブであって、前記トーションバーの捩れに応じて前記第1ポンプ又は前記第2ポンプから供給される作動液を前記第1液室と前記第2液室に選択的に供給する、前記ロータリバルブと、コントローラであって、第1液圧経路状態判断部と、第1電動モータ制御部と、第2電動モータ制御部を含み、前記第1液圧経路状態判断部は、前記第1ポンプから吐出される作動液が流れる第1液圧経路における作動液の状態を判断し、前記第1電動モータ制御部は、車両の運転状態に基づき、前記第1電動モータを駆動制御し、前記第2電動モータ制御部は、前記第1液圧経路状態判断部により、前記第1液圧経路における作動液の供給が不足していると判断されるとき、前記第2電動モータの回転数を上昇させる、前記コントローラと、を有する。
前記ステアリング装置の好ましい態様において、前記第1液圧経路状態判断部は、前記第1液圧経路における作動液の圧力に基づき、前記第1液圧経路の異常の有無を判断し、前記第2電動モータ制御部は、前記第1液圧経路状態判断部が、前記第1液圧経路に異常有りと判断するとき、前記第2電動モータの回転数を上昇させる。
別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記切換バルブは、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプと前記ロータリバルブとの間に設けられ、前記切換バルブは、バルブハウジングと、前記バルブハウジングの中で移動可能に設けられた弁体を含み、前記弁体は、前記第1ポンプから吐出され前記切換バルブに供給される作動液の圧力が第1所定値以上のとき、第1の位置に移動し、前記第1所定値未満のとき、第2の位置に移動するように設けられており、前記切換バルブは、前記弁体が前記第1の位置にあるとき、前記第1ポンプから吐出された作動液を前記ロータリバルブに供給可能であり、前記弁体が前記第2の位置にあるとき、前記第2ポンプから吐出された作動液を前記ロータリバルブに供給可能である。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記切換バルブは、さらに、第1検知スイッチを含み、前記第1検知スイッチは、前記弁体が前記第2の位置にあることを検知可能であり、前記第1液圧経路状態判断部は、前記第1検知スイッチにより、前記弁体が前記第2の位置にあると検知されるとき、前記第1液圧経路に異常有りと判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、さらに、第2検知スイッチを備え、前記切換バルブは、さらに、第1検知スイッチを含み、前記第1検知スイッチは、前記弁体が前記第2の位置にあることを検知可能であり、前記第2検知スイッチは、前記第1ポンプから吐出され前記切換バルブに供給される作動液の液圧が前記第1所定値より高い第2所定値未満となったことを検知可能であり、前記第1液圧経路状態判断部は、前記第2検知スイッチにより、前記第1ポンプから前記切換バルブに供給される作動液の液圧が前記第2所定値未満となったと検知されたとき、前記第1液圧経路に異常有りと判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、さらに、圧力センサを備え、前記圧力センサは、前記第1ポンプから吐出され前記切換バルブに供給される作動液の液圧の変化を検出可能である素子を備えており、前記第1液圧経路状態判断部は、前記圧力センサにより、前記第1ポンプから前記切換バルブに供給される作動液の液圧が第3所定値未満となったと検知されたとき、前記第1液圧経路に異常有りと判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、前記パワーシリンダの操舵力が不足するとき、前記第1電動モータの駆動トルクが増大するように前記第1電動モータを駆動制御し、前記第1液圧経路状態判断部は、前記第1電動モータの駆動トルクが所定トルク以上、又は前記第1電動モータに流れる電流値が所定電流値以上のとき、前記第1液圧経路における作動液の供給が不足していると判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、車線逸脱判断部を備え、前記車線逸脱判断部は、前記車両が走行車線から逸脱しているか否か、又は走行車線から逸脱するおそれがあるか否かを判断し、前記第1液圧経路状態判断部は、前記車線逸脱判断部により、前記車両が走行車線から逸脱している、又は前記車両が走行車線から逸脱するおそれがある、と判断するとき、前記第1液圧経路における作動液の供給が不足していると判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記コントローラは、前記操舵輪を所定の操舵角に操舵させるための指令信号である舵角指令信号を受信し、かつ検出された前記操舵輪の操舵角情報に関する信号である実舵角信号を受信し、前記第1電動モータ制御部は、前記舵角指令信号に基づき、前記第1電動モータを駆動制御し、前記第1液圧経路状態判断部は、所定時間内において、前記舵角指令信号の値と前記実舵角信号の値の差が所定値以内に収束しないとき、前記第1液圧経路における作動液の供給が不足していると判断する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、前記第2電動モータ制御部が前記第2電動モータの回転数が上昇するように前記第2電動モータを駆動制御しているとき、前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、車両速度に応じて、前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、車両速度が高いほど、前記第1電動モータの駆動トルクが低くなるように前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、前記第2電動モータの回転速度に応じて、前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、前記第2電動モータの回転速度が高いほど、前記第1電動モータの駆動トルクが低くなるように前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1の駆動源は、前記車両のエンジンである。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第2電動モータ制御部は、車両速度が所定車速以下の状態で、かつ前記車両のエンジンが停止したアイドリングストップ状態において、前記第2電動モータの回転数を上昇させる。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、前記アイドリングストップ状態において、前記第1電動モータを駆動制御する。
さらに別の好ましい態様では、前記ステアリング装置の態様のいずれかにおいて、前記第1電動モータ制御部は、車両速度が所定車速以下の状態で、かつ前記車両のエンジンが停止したアイドリングストップ状態において、前記第1電動モータを駆動制御し、前記コントローラは、エンジン始動信号送信部を備え、前記エンジン始動信号送信部は、前記アイドリングストップ状態において、前記第1電動モータの駆動トルクが所定トルク以上、又は前記第1電動モータに流れる電流値が所定電流値以上のとき、前記エンジンを始動させるエンジン始動信号を送信する。