以下に、本発明に係る可変容量形ポンプの実施例を図面に基づいて詳述する。なお、下記実施例では、この可変容量形ポンプを、従来と同様に、自動車の操舵装置であって液圧式のパワーステアリング装置に適用したものを示している。
図1~図8は本発明の第1実施例を示し、まず、本発明に係る可変容量形ポンプ(以下、単に「ポンプ」という。)が適用される前記パワーステアリング装置について説明すれば、このパワーステアリング装置は、図1に示すように、その一端側がステアリングホイール1と一体回転可能に連係され、運転者からの操舵入力を行う入力軸2と、その一端側が後記のラック・ピニオン機構4を介して図外の転舵輪に連係されると共に、他端側が入力軸2の他端側に図外のトーションバーを介して相対回転可能に連結されて入力軸2からの操舵入力に基づく前記トーションバーの捩れ変形の反力によって操舵出力を行う出力軸3と、該出力軸3と転舵輪との間に介装され、ピストンによってその内部が区切られた後記の一対の圧力室P1,P2(作動液室)に選択して作動液を供給することによって出力軸3による操舵出力を補助(アシスト)するパワーシリンダ5と、該パワーシリンダ5へ供給する作動液を貯留するリザーバタンク6と、該リザーバタンク6内に貯留された作動液を吸い上げて、これをパワーシリンダ5の一対の圧力室P1,P2へと圧送するポンプ10と、前記トーションバーの捩れ変形により入力軸2と出力軸3とが相対回転することによって開閉し、これら両軸2,3の相対回転量(前記トーションバーの捩れ量)に応じてパワーシリンダ5へ供給する作動液の液量を制御するコントロールバルブ7と、から主として構成されている。
前記ラック・ピニオン機構4は、出力軸3の一端部外周に形成された図外のピニオン歯と当該出力軸3の一端部にほぼ直交するように配置されるラック軸8の軸方向の所定範囲に形成される図外のラック歯とが噛合してなるもので、出力軸3の回転方向に応じてラック軸8が図1中の左右方向へ移動するようになっている。そして、このラック軸8が左右方向へ移動することで、該ラック軸8の両端に連係された図外のナックルが押し引きされて、これによって前記転舵輪の向きが変更されることとなる。
前記パワーシリンダ5は、ほぼ円筒状に形成されたシリンダチューブ5aにピストンロッドとしてのラック軸8が軸方向に沿って貫装され、該ラック軸8の外周に固定された図外のピストンによってシリンダチューブ5a内に一対の圧力室である第1圧力室P1及び第2圧力室P2が隔成されている。そして、これらの第1圧力室P1,第2圧力室P2に作用する液圧に基づいてラック軸8に対する推進力が発生し、これによって操舵出力がアシストされるようになっている。具体的には、前記第1圧力室P1,第2圧力室P2が第1~第4配管9a~9dをもってコントロールバルブ7を通じてリザーバタンク6及びポンプ10に接続されていて、コントロールバルブ7を介してポンプ10から吐出された作動液を前記第1圧力室P1,第2圧力室P2の一方の圧力室へ選択的に供給すると共に他方の圧力室の作動液をリザーバタンク6へと還流するようになっている。
前記ポンプ10は、ベーン式の可変容量形ポンプであって、その内部にほぼ円柱状の空間であるポンプ要素収容空間11aを有するポンプハウジング11と、該ポンプハウジング11に回転可能に支持され、図外のエンジンによる駆動力をもって回転駆動される駆動軸12と、ポンプ要素収容空間11a内に収容され、駆動軸12によって図1中の反時計方向に回転駆動されることで作動液を吸入すると共にこの吸入した作動液を吐出するといったいわゆるポンプ作用を行うポンプ要素13と、ポンプ要素収容空間11a内においてポンプ要素13の外周側に駆動軸12の軸心に対し偏心(移動)可能に設けられ、この偏心量に基づいてポンプ要素13の1回転あたりの吐出流量(以下、「固有吐出量」という。)を可変にするほぼ円環状のカムリング14と、ポンプハウジング11内に設けられ、その内部にて摺動可能に収容されたスプール弁15aの軸方向位置に基づいて後記の第1流体圧室21a,第2流体圧室21bの差圧を変化させることによりカムリング14の偏心量を制御する制御バルブ15と、ポンプハウジング11内に収容固定され、後記のECU40(コントローラ)から出力される制御電流に基づいて後記の第1圧力室15b,第2圧力室15cの差圧を変化させることにより前記固有吐出量を制御するソレノイドであるソレノイドバルブ16と、を備えている。制御バルブ15は配管6b及び吸入通路30と接続される。本実施例のポンプハウジング11には、フロントハウジング、リアハウジング、プレッシャプレート、およびアダプタリングが含まれる。
前記ポンプ要素13は、カムリング14の内周側に回転可能に収容配置され、駆動軸12によって回転駆動されるロータ17と、該ロータ17の外周部に径方向へ沿って放射状に切欠形成された複数のスリット内でそれぞれ移動可能に設けられ、ロータ17の回転時に外方へ飛び出してカムリング14の内周面に摺接することでカムリング14とロータ17の間に形成される空間に複数のポンプ室20を隔成するほぼ矩形板状のベーン18と、から構成されている。複数のポンプ室20には、吸入ポート13aと、吐出ポート13bが形成されている。吸入ポート13aは、複数のポンプ室20にうち、駆動軸12の回転に伴いポンプ室20の容積が増大する吸入領域に開口し、吸入通路30と接続される。吸入通路30は制御バルブ15と連通している。吐出ポート13bは、複数のポンプ室20にうち、駆動軸12の回転に伴いポンプ室20の容積が減少する吐出領域に開口し、吐出通路25と接続されている。
前記カムリング14は、その外周部に切欠形成された横断面ほぼ半円形状の支持溝を介して揺動支点ピン22により支持され、この揺動支点ピン22を支点として図1中の左右方向において揺動可能となっている。そして、このカムリング14が同図中の左右方向へと揺動することによって前記各ポンプ室20の容積が増減し、これによって、前記固有吐出量が変化するようになっている。また、前記カムリング14の外周側には、揺動支点ピン22と径方向においてほぼ対向する位置にシール部材23が配置されており、このシール部材23と前記揺動支点ピン22とによって、当該カムリング14の外周域に、このカムリング14の揺動制御に供される図1中の左側の第1流体圧室21aと右側の第2流体圧室21bとが隔成されている。さらに、第1流体圧室21a,第2流体圧室21bの圧力のほか、前記カムリング14には、第2流体圧室21b内に配置されたコイルばね24のばね力が作用し、このコイルばね24のばね力により第1流体圧室21a側、つまりカムリング14の偏心量が最大となる側に常時付勢されている。
第1流体圧室21aは、駆動軸12の回転軸線の径方向においてカムリング14の径方向外側に設けられた空間であり、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が減少する部分に設けられている。
第2流体圧室21bは、駆動軸12の回転軸線の径方向においてカムリング14の径方向外側に設けられた空間であり、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が増大する部分に設けられている。
このようにカムリング14は、第1流体圧室21aと第2流体圧室21bの圧力差に基づき、ポンプ要素収容空間11aの中を移動可能に設けられている、
前記制御バルブ15は、ポンプハウジング11の内部に形成された弁穴11b内に摺動可能に収容されたスプール弁15aによって当該弁穴11b内が図1中の左側の第1圧力室15bと右側の第2圧力室15cとに隔成されている。第2圧力室15cには、第1圧力室15bと第2圧力室15cとの差圧により動作するスプール弁15aを付勢するコイルばね15dが備えられている。
そして、第1圧力室15bにはソレノイドバルブ16の上流側の液圧が作用し、第2圧力室15cにはソレノイドバルブ16の下流側の液圧が作用するようになっている。すなわち、吐出ポート13bを介して吐出側のポンプ室20に接続される吐出通路25が第1吐出通路25aと第2吐出通路25bとに分岐形成されていて、第1吐出通路25aは固定オリフィス部48を介して第1圧力室15bに接続され、該第1圧力室15bには吐出圧が作用するようになっている。一方、第2吐出通路25bはその途中に配置されたソレノイドバルブ16の下流側において外部に開口すると共に第2圧力室15cに接続され、該第2圧力室15c及び外部にはソレノイドバルブ16において減圧された液圧が作用するようになっている。かかる構成から、スプール弁15aが図1中の左側に位置する場合には、第1流体圧室21aには吸入圧である低圧が導入されることとなって、カムリング14はコイルばね24のばね力により押圧されて最大偏心状態に保持される一方、スプール弁15aが同図中の右側に位置する場合には、第1流体圧室21aには吐出圧である高圧が導入されることとなって、カムリング14はコイルばね24のばね力に抗して偏心量が減少する方向へと移動することとなる。
前記ソレノイドバルブ16は、車載のECU40に接続されていて、このECU40に入力される操舵角、車速、エンジン回転数、フットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション及び前記操舵角を基に算出される操舵角加速度等の各情報に基づいて駆動制御される。そして、このソレノイドバルブ16は、その内部に固定オリフィス部26と可変オリフィス部27とにより構成された可変メータリングオリフィス28が設けられていて、前記ECU40からの各情報に基づいて可変オリフィス部27に設けたバルブ部16bにより可変オリフィス部27の流路面積を変化させて前記可変メータリングオリフィス28の前後差圧、つまり制御バルブ15内の前記両圧力室15b,15cの差圧を可変制御することによって、当該制御バルブ15のスプール弁15aの軸方向位置を制御してカムリング14の偏心量を制御することで、前記固有吐出量が制御される。第2吐出通路25bは、可変オリフィス部27に連通する第2吐出通路25b1と、固定オリフィス部26に連通する第2吐出通路25b2に分岐される。また、第2圧力室15cに接続される第2吐出通路25bには固定オリフィス部29が設けられている。
前記ECU40は、車載のバッテリ31からイグニッションスイッチ32を介して電力が供給されるようになっていると共に、当該ECU40には、運転者による操舵角を検出する舵角センサ33、車両の速度を検出する車速センサ34、エンジンの回転数を検出するエンジン回転センサ35、フットブレーキの動作状況を検出するフットブレーキセンサ36、サイドブレーキの動作状況を検出するサイドブレーキセンサ37及びシフトポジションの位置を検出するシフトポジションセンサ38等が接続されていて、当該各センサ33,34,35,36,37,38等からの情報が入力されるようになっている。
より具体的に説明すれば、このECU40では、図2に示すように、ソレノイドバルブ16を駆動制御するMPU(Micro Processor Unit)50に、前記パワーステアリング装置の入力軸2に設けられた舵角センサ33からの操舵角信号と、図外の各車輪に備えるブレーキ制御装置に設けられた車速センサ34からの車速信号と、図外のエンジン制御装置に設けられたエンジン回転センサ35からのエンジンの回転数信号とがCANインターフェース41を介して与えられ、前記各センサ33,34,35,36,37,38の出力に基づいてMPU50がソレノイドバルブ16を駆動するためのPWM駆動制御信号を出力するようになっている。そして、前記MPU50への電源の供給は、バッテリ31からヒューズ39、イグニッションスイッチ32、ダイオード42、及びレギュレータ43を介して行われる。ここで、レギュレータ43は、通常12V程度のバッテリ電圧をMPU50の動作電圧である5Vに降圧するものである。
また、前記MPU50からのPWM駆動制御信号は、いわゆるスイッチング手段としてのFET(Field Effect Transistor)44に与えられ、このFET44は、バッテリ31からヒューズ39、イグニッションスイッチ32、及びダイオード42を介して供給される電流をPWM駆動制御信号に基づいてスイッチングすることで、ソレノイドバルブ16のソレノイド部16aに励磁電流を供給するようになっている。
ここで、前記ソレノイドバルブ16のソレノイド部16aは、一端がFET44に接続されている一方、他端が電流検出用の抵抗45を介してグラウンドに接続されていて、ソレノイド部16aに流れる電流に応じて抵抗45の両端に発生する電圧が、増幅器(AMP)46を介してMPU50に実供給電流信号として与えられる。なお、このソレノイド部16aには、当該ソレノイド部16aと並列に設けられたフリーホイールダイオード47が接続されている。
前記MPU50は、図3に示すように、車速センサ34からの車速信号に基づき車速Vを算出する車速算出部51と、舵角センサ33からの操舵角信号に基づき操舵角θを算出する操舵角算出部52と、該操舵角算出部52にて算出された操舵角θに基づき操舵角速度ωを算出する操舵角速度算出部53と、該操舵角速度算出部53にて算出された操舵角速度ωに基づき操舵角加速度ωdを算出する操舵角加速度算出部54と、前記操舵角速度算出部53にて算出された操舵角速度ωと車速算出部51にて算出された車速Vとに基づき基本吐出流量Qω_CMDを算出する基本吐出流量算出部55と、車速算出部51にて算出された車速Vに基づき補正加算流量Qωd_CMDを算出する補正加算流量算出部56と、基本吐出流量算出部55において算出された基本吐出流量Qω_CMDに補正加算流量算出部56により算出された補正加算流量Qωd_CMDを加算することで得られた目標吐出流量QCMDをソレノイドバルブ16に供給するための指令電流である目標指令電流ICMDを算出する目標電流算出部57と、該目標電流算出部57において算出された目標指令電流ICMDとソレノイド電流検出部58により検出されたソレノイド部16aに流れる実供給電流Irealとの差に基づきPI制御によりPWMデューティを算出するPI制御部59と、該PI制御部59により算出されたPWMデューティに基づきFET44へPWM駆動制御信号を出力するPWM信号出力部60と、を備えている。
そして、前記PI制御部59において算出されたPWMデューティに基づき、FET44により、ソレノイド駆動手段61を介してソレノイドバルブ16が駆動される。なお、前記ソレノイド駆動手段61は、当該ソレノイド駆動手段61の温度が所定以上となった際にその出力を遮断する機能や、過電流が流れた場合に通電量を制限する機能等を有している。
前記基本吐出流量算出部55では、車速Vと操舵角速度ωとに基づいて図外の所定のマップから基本吐出流量Qω_CMDを求める。換言すれば、この基本吐出流量算出部55は、車速Vと操舵角速度ωとに基づいてソレノイドバルブ16の駆動制御のベースとなる基本通電量の演算に供する本発明に係る基本通電量演算回路を構成する。なお、前記車速V及び操舵角速度ωと基本吐出流量Qω_CMDとの関係については、車速Vが高くなるにつれて基本吐出流量Qω_CMDを減少させるような特性になっていると共に、同一車速内においては、操舵角速度ωが高くなるにつれて基本吐出流量Qω_CMDを増加させるような特性になっている。
前記補正加算流量算出部56では、車速Vに基づいて図7に示すような車速-補正加算流量マップから補正加算流量Qωd_CMDを求める。なお、この車速Vと補正加算流量Qωd_CMDとの関係については、同図に示すように、基本的には、車速Vが高くなるにつれて補正加算流量Qωd_CMDを減少させるような特性になっていて、このうち、車速Vが、第1所定値V1以上となる高速走行状態、並びに前記第1所定値V1よりも低い第2所定値V2以下となる車両停止状態ないし低速走行状態においては、補正加算流量Qωd_CMDが一定となるような特性となっている。
このように、基本的には、車速Vが高くなるにつれて補正加算流量Qωd_CMDを減少させることで、急転舵に対する車両挙動の安定化を図り得る、車速Vに応じた適切な操舵アシスト力を付与する特性となっている。そして、このうち、車速Vが第1所定値V1以上となる高速走行状態では、補正加算流量Qωd_CMDを一定とすることにより、当該高速走行時における操舵安定性の向上及び車両挙動の不安定化の抑制が図れるようになっている。また、車速Vが第2所定値V2以下となる車両停止状態ないし低速走行状態では、操舵性を高めることによる車両挙動の不安定化を考慮する必要がないことから、補正加算流量Qωd_CMDを一定とする、すなわち当該補正加算流量Qωd_CMDを最大とすることによって、当該車両停止状態ないし低速走行時における操舵応答性の向上が図れるようになっている。
前記目標電流算出部57では、基本吐出流量算出部55において算出された基本吐出流量Qω_CMDと補正加算流量算出部56において算出された補正加算流量Qωd_CMDとを加算し、図外の所定マップに基づいてソレノイドバルブ16に供給する目標指令電流ICMDを求める。換言すれば、この目標電流算出部57は、操舵角速度ωに依存する基本吐出流量Qω_CMDに操舵角加速度ωdに依存する補正加算流量Qωd_CMDを加算することで、ソレノイドバルブ16に供給する総通電量として前記基本通電量よりも増加速度の大きい通電量の演算に供し、補正加算流量算出部56と共に本発明に係る総通電量演算回路を構成している。
また、前記MPU50には、車速算出部51により算出された車速Vと操舵角加速度算出部54により算出された操舵角加速度ωdとをもって急転舵状態にあるか否かを判定する舵角急転判定部62を備えている。この舵角急転判定部62は、所定の信号切換手段63を介して補正加算流量算出部56及び目標電流算出部57と連係されていて、当該舵角急転判定部62にて急転舵状態と判断された場合には、急転判定フラグFcに「1」をセットして、前記補正加算流量算出部56により算出された補正加算流量Qωd_CMDを、前記信号切換手段63を介してそのまま目標電流算出部57へ出力する一方、当該舵角急転判定部62にて急転舵状態と判断されない場合には、急転判定フラグFcに「0」をセットして、前記補正加算流量算出部56により算出された補正加算流量Qωd_CMDを、前記信号切換手段63を介してゼロに切り換えて目標電流算出部57へ出力するようになっている。
さらに、前記MPU50には、舵角センサ33からの操舵角信号に基づいて当該舵角センサ33の異常(故障)を判定する舵角センサ故障判定部64を備えている。そして、この舵角センサ故障判定部64による判定結果は舵角急転判定部62へ出力されるようになっていて、当該舵角センサ故障判定部64において舵角センサ33に異常が生じていると判断された場合には、判定フラグFeに「1」をセットして、前記補正制御を中止する一方、当該舵角センサ故障判定部64において舵角センサ33は正常と判断された場合には、判定フラグFeに「0」をセットして、前記舵角急転判定部62の判定に従い前記補正制御が行われる。このように、操舵角加速度ωdが異常値を示すときは当該操舵角加速度ωdを用いた前記補正制御を中止することにより、適正なポンプ制御に供され、前記パワーステアリング装置の安全性を確保することができる。
以下、前記MPU50による舵角急転判定に基づいたソレノイドバルブ16の具体的な制御内容につき、図4に基づいて説明する。
同図に示すように、まずイニシャライズを行い(ステップS101)、ソレノイド部16aに流れる実供給電流Irealを読み込んだ後に(ステップS102)、舵角センサ33からの操舵角信号に基づき、当該舵角センサ33の故障判定処理を行う(ステップS103)。この故障判定処理については、具体的な図示は省略するが、舵角センサ33が異常と判断された場合には、前述のように前記補正制御は中止とし、後記のステップS111へ移行する。一方、舵角センサ33が正常と判断された場合には、次のステップS104にて操舵角θを読み込み、この読み込んだ操舵角θから操舵角速度ωを算出した後(ステップS105)、この算出した操舵角速度ωに基づいて操舵角加速度ωdを算出する(ステップS106)。その後、車速Vを読み込んだ後(ステップS107)、以下の急転判定処理を行う。
すなわち、次のステップS108において前記車速V及び操舵角加速度ωdに基づいて図6に示すような車速-操舵角加速度マップから舵角急転判定用閾値ωdthを算出した後、この算出した舵角急転判定用閾値ωdthに基づいて、操舵角加速度の絶対値|ωd|≧舵角急転判定用閾値ωdthの条件を満たすか否かを判断する(ステップS109)。ここで、当該条件を満たすと判断された場合は、車速Vに応じた補正加算流量Qωd_CMDを算出する(ステップS110)一方、当該条件を満たさないと判断された場合には、補正加算流量Qωd_CMDを「0」に設定する(ステップS111)。
そして、かかる急転判定処理を行った後、次のステップS112にて操舵角速度ωに応じた基本吐出流量Qω_CMDを算出し、この算出した基本吐出流量Qω_CMDに前記舵角急転判定結果に応じた補正加算流量Qωd_CMDを加算することによって、目標吐出流量QCMDを算出する(ステップS113)。その後、この算出した目標吐出流量QCMDについて上限値制限をかける上限リミット処理を行うと共に(ステップS114)、当該処理後の値につき、所定時間の間、上限保持を継続した後にこれを所定の割合で漸減するピークホールド及び漸減処理を行うことで、これらの処理により得られた値に基づいて指令吐出流量Qoutを算出する(ステップS115)。その後、この算出した指令吐出流量Qoutに基づいてソレノイドバルブ16に供給する目標指令電流ICMDを算出した後に(ステップS116)、この算出した目標指令電流ICMDとソレノイド部16aに流れる実供給電流Irealとの差分からPI制御を用いてPWMデューティを算出し(ステップS117)、この算出したPWMデューティに基づいてソレノイドバルブ16に対してPWM駆動制御信号を出力することによって(ステップS118)、当該プログラムが終了することとなる。
続いて、上記フローに基づく制御内容につき、図5に示すタイムチャートをもって説明すれば、前記舵角急転判定処理にて操舵角加速度の絶対値|ωd|が閾値ωdthを上回ると(図中t1)、車速Vに応じた補正加算流量Qωd_CMDが基本吐出流量Qω_CMDに加算されることとなるが、この時点では、操舵角速度ωに基づいて算出される基本吐出流量Qω_CMDは制御の遅れから未だ低い状態にあることから、補正加算流量Qωd_CMD分が指令吐出流量Qoutとして出力されることになる。これによって、基本吐出流量Qω_CMDを指令吐出流量Qoutとする従来(図中の実吐出流量Qrealを示す欄における破線)に比べ、ポンプの実吐出流量Qrealを早期に増大させることが可能となる。その後、操舵角速度ωの増大に伴って基本吐出流量Qω_CMDが追従して増大すると、当該操舵角速度ωに応じた基本吐出流量Qω_CMDが指令吐出流量Qoutに上乗せされることとなるが、当該指令吐出流量Qoutは、基本吐出流量Qω_CMDの目標値に到達したところで前記ピークホールド処理が開始される(図中t2)。
やがて、操舵角加速度の絶対値|ωd|が前記閾値ωdthを下回ると(図中t3)、これに応じて補正加算流量Qωd_CMDに「0」が入力されることになるが、指令吐出流量Qoutは、前記ピークホールド処理によって基本吐出流量Qω_CMDの目標値がピークを過ぎても当該基本吐出流量Qω_CMDの目標値にて保持されることとなる(図中t4)。その後、前記ピークホールド処理開始から所定時間が経過すると(図中t5)、当該処理を終了して前記漸減処理が開始されることによって、その間に前記閾値ωdthを超えない程度の操舵角加速度ωdを伴う操舵操作が行われても、指令吐出流量Qoutは当該操舵操作に関係なく所定の割合をもって漸減されて初期値へ戻されることとなる(図中t6)。
以上のように、本実施形態では、運転者の要求する操舵応答性が反映される操舵角加速度ωdをもってポンプ10の吐出流量補正を行うこととしたため、操舵角速度ωに基づいて吐出流量補正を行っていた従来に比べて、当該ポンプ10において、前記固有吐出量をより早期に増大させ、必要な吐出流量を確保することができ(図5中の実吐出流量Qrealを示す欄におけるハッチング参照)、これによって、運転者から求められる操舵応答性に応じたポンプ制御が可能となる。
換言すれば、操舵角加速度ωdが大きい状態とは、運転者が急転舵している状態であってポンプ10の吐出流量を増加させる必要が生じている状態であることから、本実施形態では、この操舵角加速度ωdを基準として、具体的には当該操舵角加速度ωdが前記閾値ωdthを超えているか否かの判断をもって、基本吐出流量Qω_CMDの増加速度より目標吐出流量QCMD(指令吐出流量Qout)の増加速度が大きくなるように、つまり前記基本通電量の増加速度より前記総通電量の増加速度が大きくなるように補正制御することで、従来よりも早期にポンプ10の吐出流量の増大化を図ることが可能となり、これによって、前記パワーステアリング装置に対する作動液供給に際し、高い応答性の確保に供される。
しかも、上記補正制御において、操舵角加速度ωdが前記閾値ωdth以上となったときの目標吐出流量QCMDの目標値と基本吐出流量Qω_CMDの目標値とが等しくなる、すなわち前記総通電量の目標値と前記基本通電量の目標値とが等しくなるように構成されていることから、前記総通電量の前記基本通電量に対する増加分はソレノイドバルブ16の応答性を高めることにのみ使用されることとなり、操舵操作に対する操舵アシスト力の大きさを変化させてしまうおそれがない。このため、当該操舵操作における操舵違和感を抑制することができる。
また、前記ポンプ10の場合、車両停止状態となるエンジンのアイドル状態において、非操舵状態では、図8に示すように前記固有吐出量は5L/minが最大となる一方で、操舵状態では、図7に示すように最大で7L/minの補正加算流量Qωd_CMDを加算するようになっている。このように、エンジンのアイドル運転状態では、操舵状態に比べて非操舵状態の方が前記固有吐出量が小さくなるようにソレノイドバルブ16が制御されることで、操舵時における適切な操舵アシスト力の発生を担保しつつ、ポンプ負荷の低減化を図ることができる。
さらに、前記ポンプ10では、前記ソレノイドバルブ16によって、カムリング14を直接駆動するのではなく、制御バルブ15のスプール弁15aを駆動する構成としたため、当該ソレノイドバルブ16の駆動対象の重量の低減化が図れ、当該ソレノイドバルブ16による駆動応答性を高めることも可能となる。これにより、前記パワーステアリング装置に係る操舵応答性のさらなる向上に供される。
近年、環境性能の向上を目的として自動車の更なる低燃費化が求められている。低燃費化には、エンジンの効率化に加え、エンジンを駆動源とする機器の負荷低減が有効である。パワーステアリング装置では、作動液の供給源となるポンプ負荷の低減が求められる。例えば、車両停止状態となるエンジンのアイドル状態において、フットブレーキやサイドブレーキが動作している場合、シフトレバーの位置がニュートラルNやパーキングPといった場合は、ステアリング操作が行なわれる可能性は低いので、ポンプの固有吐出量をより小さくしても問題はない。従来のポンプでは、オリフィス差圧の制御範囲が狭いため、非操舵状態におけるポンプの固有吐出量を低減することについて改良の余地があった。
以下、ポンプ負荷の更な低減を図り、操舵状態へのスムーズな復帰を実現するための本実施例に構成について図面を用いて説明する。
図9は本発明に第1実施例に係るソレノイドの断面図、図10は図9の切断線X-Xにおけるソレノイドの断面図、図11~図13は図9の切断線XI-XIのおけるソレノイドの断面図である。
図9~図13に示すように、ソレノイドバルブ16は、ハウジング部材70の内部に、ソレノイド部16aとプランジャ71とステータ72とを有する。また、ハウジング部材70には、コネクタ部73が備えられている。コネクタ部73の内部には、端子73aが備えられ、ECU40と電気的に接続される。
ソレノイド部16aは、通電により磁力を発生する電磁コイルであり、端子73aを介して駆動電流が供給される。ソレノイド部16aは、通電時に磁力線を発生し、磁界を形成することで、ステータ72にプランジャ71を磁気吸引させる。プランジャ71は、軟磁性体の金属材料により形成された可動コアであり、ソレノイド部16aの内周側にX軸方向に移動(ストローク)可能に支持される。
プランジャ71は、ソレノイド部16aへの通電により形成される磁気回路の磁束による推力(X軸正方向への磁気吸引力)を受けて、所定範囲内で軸方向に移動可能に配置されている。プランジャ71の軸心には棒状の部材であるロッド74が圧入等により固定されている。ロッド74は、プランジャ71の軸心に貫通形成された孔に貫通して設置され、プランジャ71の軸方向両端から突出している。
ロッド74のX軸正方向端部はバルブ部16bに当接可能に設けられている。ロッド74は、ソレノイド部16aに供給される駆動電流に応じてプランジャ71に作用するX軸正方向の推力をバルブ部16bに伝達し、バルブ部16bを付勢する。
可変オリフィス部27は中空に形成された筒状部75を有しており、内部にバルブ部16bとスプリング76が配置されている。スプリング76は非線形特性を有している。バルブ部16bは可変オリフィス部27の筒状部75内を移動し、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置の変化に応じて流路面積を変化させる。スプリング76は、バルブ部16bをX軸負方向(ソレノイド部16a側)に向かって付勢している。
ソレノイド部16aへ通電されると、プランジャ71はスプリング76の付勢力に打ち勝ってバルブ部16bをX軸正方向へ移動させる。ソレノイド部16aは、ソレノイド部16aに供給される駆動電流を制御することでプランジャ71への磁気吸引を変化させ、バルブ部16bの位置を変化させる。
バルブ部16bには、作動液が通過する貫通孔である複数の可変オリフィス通路部77(77a、77b)が形成されている。本実施例においては、可変オリフィス通路部77aの開口面積は可変オリフィス通路部77bの開口面積より大きくしている。
次に流路構成について説明する。可変オリフィス部27の筒状部75には、合流部78が接続されている。図10に示すように、合流部78の直径は、筒状部75の直径よりも大きく形成されている。換言すると、合流部78は筒状部75の外周を覆うような形で配置されている。
合流部78には、固定オリフィス部26を介して第2吐出通路25b(25b2)と、第4配管9dが接続されている(図9及び図10)。さらに合流部78は、固定オリフィス部29を介して制御バルブ15の第2圧力室と接続されている(図11)。換言すると、合流部78は、第2吐出通路25b1,25b2が合流しており、吐出通路25としての第2吐出通路25bを構成している。
図9に示すように、吐出通路25は、第1吐出通路25aと第2吐出通路25b1とに分岐され、第2吐出通路25b1は可変オリフィス部27における筒状部75のスプリング76側に接続されている。第1吐出通路25aは、図11~図13に示すように、制御バルブ15の第1圧力室15bに接続されている。制御バルブ15には、配管79が接続され、この配管79には配管6b及び吸入通路30と接続される。
次に、ソレノイドバルブ16及び制御バルブ15の動作について図11~図13を用いて説明する。
図11に示すように、ソレノイド部16aに駆動電流が供給された場合(通電された場合)、バルブ部16bはスプリング76の付勢力に打ち勝って、X軸正方向、すなわち図11の左側に移動する。この時、可変オリフィス部27のバルブ部16bは、バルブ部16bに形成された複数の可変オリフィス通路部77a、77bのうち、可変オリフィス通路部77aに比べ小孔である可変オリフィス通路部77bが合流部78とオーバーラップする位置に移動する。第2吐出通路25b1を通過した作動液は、可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された可変オリフィス通路部77bを通過して合流部78に吐出され、固定オリフィス部26を介して供給される第2吐出通路25b2の作動液と合流する。第2吐出通路25b1と第2吐出通路25b2とから供給された作動液は、固定オリフィス部29を介して制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する。可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの開口は最小となり、制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する作動液も最小となる。本実施例においては、可変オリフィス部27の流路面積が最小となる領域を第1の領域と称する。
可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された可変オリフィス通路部77bが合流部78とオーバーラップする位置にある場合は、第2圧力室15cに比べ、第1圧力室15bの圧力が大きい(第1圧力室15bと第2圧力室15cと差圧が大きい)ので、第1圧力室15bの圧力がコイルばね15dの付勢力に打ち勝って、スプール弁15aは図11における右側、すなわちX軸負方向に移動する。第1流体圧室21aには高圧が導入されることとなり、カムリング14はコイルばね24のばね力に打ち勝って最小偏心状態に保持される。換言すると、カムリング14は、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心が一致する位置に対し、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心が最大となる最大偏心状態の反対側のマイナス偏心状態まで移動する。マイナス偏心状態になるのは、バルブ部16bが、前記第1の領域のみ合流部78に対し開口しているときである。そして、カムリング14が最小偏心状態では、ポンプの固有吐出量が減少する。
次にソレノイド部16aに駆動電流が供給されていない場合について、図12を用いて説明する。図12に示すようにソレノイド部16aに駆動電流が供給されていない場合(通電量が零の場合)、バルブ部16bはスプリング76の付勢力により、X軸負方向、すなわちソレノイド部16a側に付勢される。この時、可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された複数の可変オリフィス通路部77a、77bは、合流部78とオーバーラップする位置にある。第2吐出通路25b1を通過した作動液は、可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された複数の可変オリフィス通路部77a、77bから合流部78に吐出され、固定オリフィス部26を介して供給される第2吐出通路25b2の作動液と合流する。第2吐出通路25b1と第2吐出通路25b2とから供給された作動液は、固定オリフィス部29を介して制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する。可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの開口は最大となり、制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する作動液も最大となる。可変オリフィス部27の流路面積が最大(第1の領域より大きい)となる領域を第2の領域と称する。
可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された複数の可変オリフィス通路部77a、77bが合流部78とオーバーラップする位置にある場合は、第1圧力室15bと第2圧力室15cと差圧が小さいので、コイルばね15dの付勢力が第1圧力室15bの圧力に勝り、スプール弁15aは図12における左側、すなわちX軸正方向に位置する。第1流体圧室21aには吸入圧である低圧が導入されることとなり、カムリング14はコイルばね24のばね力により押圧されて最大偏心状態に保持される。カムリング14が最大偏心状態では、ポンプの固有吐出量が増加する。
本実施例のソレノイドバルブ16は、ソレノイド部16aへの通電量が零のとき、第2の領域が合流部78に対し開口するようにしている。本実施例によれば、ソレノイドバルブ16を所謂ノーマルオープン弁とすることで、ソレノイドバルブ16への通電不良時においても必要流量を確保することができる。
次にバルブ部16bを中間の位置に制御する手段について図13を用いて説明する。図13に示すようにソレノイド部16aに駆動電流が供給されると、バルブ部16bはスプリング76の付勢力に打ち勝って、X軸正方向、すなわち図13の左側に移動する。この時、可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された複数の可変オリフィス通路部77a、77bのうち、可変オリフィス通路部77aの一部(例えば半分)及び可変オリフィス通路部77bが合流部78とオーバーラップする位置とする。第2吐出通路25b1を通過した作動液は、可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された可変オリフィス通路部77aの一部(例えば半分)及び可変オリフィス通路部77bから合流部78に吐出され、固定オリフィス部26を介して供給される第2吐出通路25b2の作動液と合流する。第2吐出通路25b1と第2吐出通路25b2とから供給された作動液は、固定オリフィス部29を介して制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する。可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの開口は中間となり、制御バルブ15の第2圧力室15cに流入する作動液も中間となる。可変オリフィス部27の流路面積が第1の領域と第2の領域の間にあり、流路面積が第2の領域より小さくなる領域を第3の領域と称する。
可変オリフィス部27のバルブ部16bに形成された可変オリフィス通路部77aの一部(例えば半分)及び可変オリフィス通路部77bが合流部78とオーバーラップする位置にある場合は、第2圧力室15cに比べ、第1圧力室15bの圧力が大きい(第1圧力室15bと第2圧力室15cと差圧が大きい)ので、第1圧力室15bの圧力がコイルばね15dの付勢力に打ち勝って、スプール弁15aは図11における右側、すなわちX軸負方向に位置する。第1流体圧室21aには第2の領域よりは低い圧の作動液が導入されることとなり、カムリング14はコイルばね24のばね力に打ち勝って偏心状態が第2の領域よりは小さくなる位置に保持される。カムリング14の偏心状態が小さくなると、ポンプの固有吐出量が減少する。本実施例では可変オリフィス通路部77aにおける合流部78とのオーバーラップ量は半分としたが、例えばオーバーラップ量1/3程度にしても良い。この場合、第3の領域における可変オリフィス通路部77aは、前記第2の領域における可変オリフィス通路部77aよりも、バルブ部16bの移動方向に直角な方向の幅が小さくなる。本実施例によれば、バルブ部16bの移動方向に対し直角な方向の幅、即ち開口幅が第3の領域で小さいことにより、バルブ部16bのストロークの変化に対する開口面積の変化が小さくなり、バルブ部16bを移動させながら、流量が少ないまま、流量復帰の応答性がよい状態を得ることができる。
このように、本実施例では、ソレノイド部への通電量を変化させて可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置を変化させている。
可変オリフィス通路部77a、77bは、前記第1の領域、前記第2の領域、または前記第3の領域に設けられており、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置の変化に応じて合流部78に対する可変オリフィス通路部77a、77bの開口量が変化可能である。前記第3の領域における可変オリフィス通路部77a、77bは、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置の変化に伴う可変オリフィス通路部77a、77bと合流部78とのオーバーラップ量の変化量が前記第2の領域よりも小さくなっている。本実施例によれば、バルブ部16bのストローク変化に対する可変オリフィス通路部77のオーバーラップ量の変化量を小さくすることで、バルブ部16bを移動させながら、流量が少ないまま、流量復帰の応答性がよい状態を得ることができる。
また、可変オリフィス通路部77bは、第1の領域、第2の領域、第3の領域において合流部78に対し常に開口しており、可変オリフィス通路部77bは、固定オリフィス通路部としての機能を有している。換言すると、本実施例のバルブ部16bは、作動液が通過する貫通孔である固定オリフィス通路部と可変オリフィス通路部を備えていることとなる。可変オリフィス通路部77aは第2の領域と第3の領域をあわせた領域に設けられている。本実施例では、第1の領域を所謂固定オリフィスとすることで、バルブ部の位置の変化に拘わらず最小流量を確保することができる。
さらに、可変オリフィス通路部77aは、開口部の全てが合流部78とオーバーラップする第1の開口部と、開口部の一部が合流部78とオーバーラップする第2の開口部とを備えている。固定オリフィスとして機能する可変オリフィス通路部77bは、第1の開口部または第2の開口部の面積よりも小さくしている。本実施例によれば、固定オリフィスとして機能する可変オリフィス通路部77bの開口面積を充分に小さくすることで、吐出量が最小の状態における吐出量を充分に少なくすることができる。
次にポンプの固有吐出量とバルブ部16bの移動量との関係について図14A及び図14Bを用いて説明する。図14Aは比較例に係るポンプの固有吐出量とバルブ部の移動量との関係を示す図、図14Bは本実施例に係るポンプの固有吐出量とバルブ部の移動量との関係を示す図である。
図14Aにおいて、車速が低速時においてステアリング操作を行う操舵状態では、ソレノイド部を制御してポンプの固有吐出量が多くなるようにする。車速が上がり通常走行になると、ステアリング操作が行われる可能性が低いのでポンプの固有吐出量を抑え、操舵準備状態に移行する。比較例における操舵準備状態においては、操舵状態へのスムーズな移行に備え、ポンプの固有吐出量を所定の状態に保っているので、ポンプの固有吐出量の更なる低減を図ることが困難であった。
これに対し、本実施例では図14Bに示すように、第1の領域としてポンプの固有吐出量が最小となる最小吐出状態を備えている。本実施例ではポンプの固有吐出量が最小となる最小吐出状態を備えているので、ポンプが必要以上に運転するのを抑制し、省エネルギー化が図れる。例えば、本実施例の構成を自動車用にパワーステアリング装置に適用した場合、低燃費化が図れる。
本実施例では種々の条件に応じて、ソレノイドバルブ16を第1の領域、第2の領域、第3の領域に制御して、ポンプの固有吐出量を制御するようにしている。特にステアリング操作に対する操舵補助が必要でないときは、ポンプの固有吐出量を最小にしている。以下、ポンプの固有吐出量を最小になるようにする条件について図15を用いて説明する。
図15は本実施例に係る車両状態、フットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジションとポンプ吐出量との関係を示す図である。
図15において、例えばA~Fまでのパターンがある。パターンAでは車両が停止していることを車速センサ34で検出し、フットブレーキがONの状態であることをフットブレーキセンサ36で検出し、ECU40がこれらの信号を受信している。車両が信号待ちで停車しているような状態である。図中「-」とあるのは、状態を問わない。このような状態では、ステアリング操作を行う可能性は低いので、ポンプの固有吐出量が最小となるようにソレノイドバルブ16を制御する。
パターンBでは車両が停止していることを車速センサ34で検出し、サイドブレーキがONの状態であることをサイドブレーキセンサ37で検出し、ECU40がこれらの信号を受信している。エンジンがアイドリングの状態で車両が駐停車しているような状態である。このような状態では、ステアリング操作を行う可能性は低いので、ポンプの固有吐出量が最小となるようにソレノイドバルブ16を制御する。
パターンCでは車両が停止していることを車速センサ34で検出し、シフトポジションがニュートラルN、もしくはパーキングPの位置にある状態をシフトポジションセンサ38が検出し、ECU40がこれらの信号を受信している。エンジンがアイドリングの状態で車両が駐停車しているような状態である。このような状態では、ステアリング操作を行う可能性は低いので、ポンプの固有吐出量が最小となるようにソレノイドバルブ16を制御する。
パターンDでは、フットブレーキがOFFの状態である。車両が信号待ちで停車しているようなパターンAの状態から走り出す状態である。このような状態では、運転者がステアリング操作を行い交差点を右折、左折する可能性があるので、ポンプの固有吐出量が多くなるようにソレノイドバルブ16を制御する。
パターンEでは、サイドブレーキがOFFの状態である。車両が駐停車しているようなパターンBの状態から走り出す状態である。このような状態では、運転者がステアリング操作を行い、車両を駐停車位置から車道の本線戻す可能性があるので、ポンプの固有吐出量が多くなるようにソレノイドバルブ16を制御する。
パターンFでは、シフトポジションがドライブDの状態である。車両が駐停車しているようなパターンCの状態から走り出す状態である。このような状態では、運転者がステアリング操作を行い、車両を駐停車位置から車道の本線戻す可能性があるので、ポンプの固有吐出量が多くなるようにソレノイドバルブ16を制御する。
本実施例では、図1及び図2で示したように、車速センサ34、フットブレーキセンサ36、サイドブレーキセンサ37、シフトポジションセンサ38を備え、これらセンサで検出した車両の運転状態に関する信号をECU40で受信し、ソレノイドバルブ16を制御してポンプの固有吐出量を制御している。
本実施例によれば、バルブ部16bの第1の領域により吐出量が最小の状態、第3の領域で吐出量が少なく、かつ流量復帰(増大)の応答性が確保された状態、第2の領域で必要な流量が確保された状態、の3つの状態を実現することができる。
また、本実施例によれば、パワーステアリング装置は、操舵補助が必要でないとき、ポンプの吐出量を最小とすることでポンプ駆動負荷を低減し、燃料(電力)消費量を低減することができる。そこで、車両の運転状態または操舵状態に応じて第1、第2、または第3の領域を選択して使用することで、操舵応答性の確保と省エネの両立を図ることができる。
また、本実施例では、ECU40は、車両のフットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション、または車速に関する信号に基づき、前記第1の領域のみが合流部78に開口するようにソレノイドバルブ16を駆動制御するようにしている。車両の停車中は操舵補助の必要性が低いため、ポンプの吐出量を最小とすることができる。 この停車中の判断は、フットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション、車速によって判断することができる。
さらに、舵角センサ33の信号を用いてソレノイドバルブ16を制御するようにしても良い。例えば、操舵軸がストロークエンドにあることを舵角センサ33が検出した時、ECU40はその信号を受信し、バルブ部16bが前記第1の領域のみが合流部78に開口するようにソレノイドバルブ16を駆動制御するようにする。
転舵軸がストロークエンド付近にあるときは、操舵補助の必要性が低いため、ポンプ吐出量を最小とすることで、省エネ効果向上を図ることができる。
また、ECU40は、所定車速以上、かつ操舵操作が行われていないとき、第3の領域が合流部78に開口するようにソレノイドバルブ16を駆動制御するようにしても良い。操舵操作が行われていないときは、多くの吐出流量は必要としないため、第2の領域を使用する状態よりも吐出流量が少ない状態としておくと良い。一方、車速が所定車速以上のため、操舵操作が行われ、必要な吐出流量が急に増加する可能性がある。そこで、第1の領域のみを使用する状態よりも吐出流量を増加させ、かつ、バルブ部の位置も第2の領域に近い位置としておくことにより、操舵応答性を確保することができる。
さらにまた、ECU40は、操舵輪の転舵軸にかかる荷重の変化に応じてソレノイドバルブ16を駆動制御するようにしても良い。転舵軸にかかる荷重を検出する手段としては、例えばトーションバーの捩れを検出するトルクセンサを用いる。操舵輪の操舵軸(例えば前側転舵軸)にかかる荷重が大きいとき(例えば積載量が多いとき)、操舵負荷が増大するため、吐出流量を多くすることにより、操舵負荷の低減を図ることができる。一方、操舵軸にかかる荷重が小さいときは、吐出流量を少なくすることにより、省エネ効果の向上を図ることができる。このように、操舵軸にかかる荷重の変化に応じてソレノイドを制御することにより、操舵負荷の低減と省エネ効果の向上の両立を図ることができる。
次に図19を用いて本発明に係る第3実施例について説明する。図19は本発明に係る第3実施例に係るソレノイドの断面図であり、第3の領域の状態を示している。
バルブ部16bには、作動液が通過する貫通孔である複数の可変オリフィス通路部77(77a、77b)が形成されている。本実施例においては、可変オリフィス通路部77aの開口面積は可変オリフィス通路部77bの開口面積より大きくしている。
ソレノイド部16aに駆動電流が供給された場合(通電された場合)は、バルブ部16bの可変オリフィス通路部77bが合流部78とオーバーラップする位置になるようにバルブ部16bを移動させる。この状態は第1の領域となる。
また、ソレノイド部16aに駆動電流が供給されない場合(通電されない場合)は、バルブ部16bの可変オリフィス通路部77aが合流部78とオーバーラップする位置になるようにバルブ部16bを移動させる。この状態は第2の領域となる。第1の領域及び第2の領域における制御バルブ15、ポンプの動作については、第1実施例、第2実施例と同様である。
バルブ部16bを中間の位置に制御する場合、図19に示すようにソレノイド部16aに駆動電流が供給されると、バルブ部16bはスプリング76の付勢力に打ち勝って、X軸正方向、すなわち図19の左側に移動する。この時、可変オリフィス部27のバルブ部16bは可変オリフィス通路部77(77a、77b)が合流部78とオーバーラップしない位置に移動する。換言すると、第3の領域において、可変オリフィス通路部77は、バルブ部16bの移動方向に直角な方向の幅が零となる。
このようにすることにより、本実施例によれば、バルブ部16bの位置が変化しても、第3の領域における開口面積が零であるため、バルブ部16bのストローク変化に対する開口面積お変化を少なく(零)とすることができる。
(各実施例の効果)
近年、環境性能の向上を目的として自動車の更なる低燃費化が求められている。低燃費化には、エンジンの効率化に加え、エンジンを駆動源とする機器の負荷低減が必要である。エンジンを駆動源とする機器の負荷低減の1つとして、本実施例ではパワーステアリング装置のポンプ装置の改良に着目した。
本実施例では、ポンプ装置において、ポンプハウジング11であって、ポンプ要素収容空間11a、吸入通路30、吐出通路25、吸入ポート13a、吐出ポート13bを有し、吸入通路30は、吸入ポート13aと接続されており、吐出通路25は、吐出ポート13bと接続されている、ポンプハウジング11と、ポンプハウジング11に回転可能に設けられた駆動軸12と、駆動軸12に設けられ、複数のスリットを有するロータ17と、前記複数のスリットの夫々の中で移動可能に設けられた複数のベーン18と、カムリング14であって、環状に形成されており、ポンプ要素収容空間11aの中に設けられており、ロータ17および複数のベーン18と共に複数のポンプ室20を形成し、ポンプ要素収容空間11aに第1流体圧室21aと第2流体圧室21bを形成しており、吸入ポート13aは、複数のポンプ室20のうち、駆動軸12の回転に伴いポンプ室20の容積が増大する吸入領域に開口しており、吐出ポート13bは、複数のポンプ室20のうち、駆動軸12の回転に伴いポンプ室20の容積が減少する吐出領域に開口しており、第1流体圧室21aは、駆動軸12の回転軸線の径方向においてカムリング14の径方向外側に設けられた空間であって、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が減少する部分に設けられており、第2流体圧室21bは、駆動軸12の回転軸線の径方向においてカムリング14の径方向外側に設けられた空間であって、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が増大する部分に設けられており、カムリング14は、第1流体圧室21aと第2流体圧室21bの圧力差に基づき、ポンプ要素収容空間11aの中を移動可能に設けられている、カムリング14と、制御バルブ15であって、スプール弁15aと、第1圧力室15bと、第2圧力室15cを備え、第1圧力室15bは、スプール弁15aの移動方向においてスプール弁15aの一方側に設けられ、吐出ポート13bから吐出された作動液が導入されており、第2圧力室15cは、スプール弁15aの移動方向においてスプール弁15aに対し第1圧力室15bの反対側に設けられ、吐出通路25に設けられた可変オリフィス部27よりも作動液の流れの方向において下流側の作動液が導入されており、スプール弁15aは、第1圧力室15bの作動液の液圧と第2圧力室15cの作動液の液圧の差に基づき制御され、第1流体圧室21aの作動液の液圧を制御可能である、制御バルブ15と、ソレノイドバルブ16であって、ソレノイド部16aと、バルブ部16bを備え、ソレノイド部16aは、通電量の変化に応じて駆動制御され、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置を変化させるものであり、バルブ部16bは、可変オリフィス部27に設けられ、可変オリフィス部27における位置の変化に応じて、可変オリフィス部27における位置に応じて流路面積が最小となる第1の領域と、バルブ部16bの位置の変化に応じて前記流路面積が変化する第2の領域と、バルブ部16bの位置が前記第1の領域と前記第2の領域の間に位置しておりバルブ部16bの位置の変化に伴う前記流路面積の変化量が前記第2の領域よりも小さい第3の領域を有するバルブ部16bと、を有している。
本実施例によれば、バルブ部16bの第1の領域により吐出量が最小の状態、第3の領域で吐出量が少なく、かつ流量復帰(増大)の応答性が確保された状態、第2の領域で必要な流量が確保された状態、の3つの状態を実現することができる。
また、本実施例では上記において、バルブ部16bは、作動液が通過する貫通孔である可変オリフィス通路部77を備え、可変オリフィス通路部77は、前記第1の領域、前記第2の領域、または前記第3の領域に設けられており、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置の変化に応じて吐出通路25(合流部78)に対する可変オリフィス通路部77の開口量が変化可能であり、前記第3の領域における可変オリフィス通路部77は、可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置の変化に伴う可変オリフィス通路部77と吐出通路25(合流部78)とのオーバーラップ量の変化量が前記第2の領域よりも小さい。
本実施例によれば、バルブ部16bのストローク変化に対する可変オリフィス通路部77のオーバーラップ量の変化量を小さくすることで、バルブ部16bを移動させながら、流量が少ないまま、流量復帰の応答性がよい状態を得ることができる。
また、本実施例では上記において、前記第3の領域における可変オリフィス通路部77は、前記第2の領域における可変オリフィス通路部77よりも、バルブ部16bの移動方向に直角な方向の幅が小さい。
本実施例によれば、バルブ部16bの移動方向に対し直角な方向の幅、即ち開口幅が第3の領域で小さいことにより、バルブ部16bのストロークの変化に対する開口面積の変化が小さくなり、バルブ部16bを移動させながら、流量が少ないまま、流量復帰の応答性がよい状態を得ることができる。
また、本実施例では上記において、前記第3の領域における可変オリフィス通路部77は、バルブ部16bの移動方向に直角な方向の幅を零とした。
本実施例によれば、バルブ部16bの位置が変化しても、第3の領域における開口面積が零であるため、バルブ部16bのストロークの変化に対する開口面積の変化を少なく(零)とすることができる。
また、本実施例では上記において、バルブ部16bは、作動液が通過する貫通孔である固定オリフィス通路部(可変オリフィス通路部77b)と可変オリフィス通路部77aを備え、固定オリフィス通路部(可変オリフィス通路部77b)は、前記第1の領域に設けられており、吐出通路25(合流部78)に対し常に開口しており、可変オリフィス通路部77aは、前記第2の領域と第3の領域を併せた領域に設けられている。
本実施例によれば、第1の領域を所謂固定オリフィスとすることで、バルブ部16bの位置の変化に拘わらず最小流量を確保することができる。
また、本実施例では上記において、可変オリフィス通路部77aは、第1の開口部と、第2の開口部を備え、固定オリフィス通路部(可変オリフィス通路部77b)は、前記第1の開口部または前記第2の開口部の開口面積よりも小さくした。
本実施例によれば、固定オリフィス通路部(可変オリフィス通路部77b)の開口面積を充分に小さくすることで、吐出量が最小の状態における吐出量を充分に少なくすることができる。
また、本実施例では上記において、バルブ部を、スプール弁16cとした。
本実施例によれば、ソレノイドバルブ16のストロークに対する開口面積の調整を行い易くなる。
また、本実施例では上記において、ソレノイドバルブ16は、スプリング76を備え、ソレノイド部16aは、スプリング76の付勢力に抗してバルブ部16bを付勢することにより可変オリフィス部27におけるバルブ部16bの位置を変化させるものであり、スプリング76は、非線形特性を有するものとした。
本実施例によれば、ソレノイド部16aの推力変化に対するバルブ部16bのストロークの変化量を非線形特性とすることができるため、第2の領域と第3の領域とで、ソレノイド部16aの推力変化に対する開口面積変化に差を設けることができる。
また、本実施例では上記において、カムリング14は、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心が一致する位置に対し、駆動軸12の回転軸線とカムリング14の内周縁の中心が最大となる最大偏心状態の反対側のマイナス偏心状態まで移動可能であり、バルブ部16bが、前記第1の領域のみ吐出通路25(合流部78)に対し開口しているとき、前記マイナス偏心状態となるようにした。
本実施例によれば、第1の領域においてもカムリング14を移動させる場合、マイナス偏心状態を使用することにより、カムリング14の偏心量の変化に伴う吐出量の変化を抑制することができる。
また、本実施例では上記において、ソレノイドバルブ16は、ソレノイド部16aへの通電量が零のとき、前記第2の領域が吐出通路25(合流部78)に対し開口するようにした。
本実施例によれば、ソレノイドバルブ16を所謂ノーマルオープン弁とすることで、通電不良時においても必要流量を確保することができる。
また、本実施例では上記において、ポンプ装置は、車両に搭載されるパワーステアリング装置に作動液を供給可能であり、前記パワーステアリング装置は、ピストンで区切られた1対の作動液室を有するパワーシリンダ5を有し、前記1対の作動液室に選択して作動液を供給することにより転舵輪に操舵力を付与可能であり、ソレノイドバルブ16は、コントローラ(ECU40)によって駆動制御され、コントローラは、車両の運転状態に関する信号を受信可能とした。
本実施例によれば、パワーステアリング装置は、操舵補助が必要でないとき、吐出量を最小とすることでポンプ駆動負荷を低減し、燃料(電力)消費量を低減することができる。そこで、車両の運転状態または操舵状態に応じて第1、第2、または第3の領域を選択して使用することで、操舵応答性の確保と省エネの両立を図ることができる。
また、本実施例では上記において、コントローラ(ECU40)は、前記車両のフットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション、または車速に関する信号に基づき、前記第1の領域のみが吐出通路25(合流部78)に開口するようにソレノイドバルブ16を駆動制御するようにした。
本実施例によれば、車両の停車中は操舵補助の必要性が低いため、ポンプの吐出量を最小とすることができる。 この停車中の判断は、フットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション、車速によって判断することができる。
また、本実施例では上記において、コントローラ(ECU40)は、転舵軸がストロークエンドにあるとき、前記第1の領域のみが前記吐出通路に開口するように前記ソレノイドバルブ16を駆動制御するようにした。
本実施例によれば、転舵軸がストロークエンド付近にあるときは、操舵補助の必要性が低いため、ポンプ吐出量を最小とすることで、省エネ効果向上を図ることができる。
また、本実施例では上記において、コントローラ(ECU40)は、所定車速以上、かつ操舵操作が行われていないとき、第3の領域が前記吐出通路に開口するようにソレノイドバルブ16を駆動制御するようにした。
本実施例では、操舵操作が行われていないときは、多くの吐出流量は必要としないため、第2の領域を使用する状態よりも吐出流量が少ない状態としておく。一方、車速が所定車速以上のため、操舵操作が行われ、必要な吐出流量が急に増加する可能性がある。そこで、本実施例では、第1の領域のみを使用する状態よりも吐出流量を増加させ、かつ、バルブ部の位置も第2の領域に近い位置としておくことにより、操舵応答性を確保することができる。
また、本実施例では上記において、コントローラ(ECU40)は、操舵輪の転舵軸にかかる荷重の変化に応じてソレノイドバルブ16を駆動制御するようにした。
本実施例によれば、操舵輪の操舵軸(例えば前側転舵軸)にかかる荷重が大きいとき(例えば積載量が多いとき)、操舵負荷が増大するため、吐出流量を多くすることにより、操舵負荷の低減を図ることができる。一方、操舵軸にかかる荷重が小さいときは、吐出流量を少なくすることにより、省エネ効果の向上を図ることができる。このように、操舵軸にかかる荷重の変化に応じてソレノイドを制御することにより、操舵負荷の低減と省エネ効果の向上の両立を図ることができる。
(実施例に基づくポンプ装置の態様)
以上説明した実施例に基づくポンプ装置としては、例えば以下に述べられる態様のものが考えられる。
ポンプ装置において、ポンプハウジングであって、ポンプ要素収容空間、吸入通路、吐出通路、吸入ポート、吐出ポートを有し、前記吸入通路は、前記吸入ポートと接続されており、前記吐出通路は、前記吐出ポートと接続されている、
前記ポンプハウジングと、前記ポンプハウジングに回転可能に設けられた駆動軸と、前記駆動軸に設けられ、複数のスリットを有するロータと、前記複数のスリットの夫々の中で移動可能に設けられた複数のベーンと、カムリングであって、環状に形成されており、前記ポンプ要素収容空間の中に設けられており、前記ロータおよび複数の前記ベーンと共に複数のポンプ室を形成し、前記ポンプ要素収容空間に第1流体圧室と第2流体圧室を形成しており、前記吸入ポートは、複数の前記ポンプ室のうち、前記駆動軸の回転に伴い前記ポンプ室の容積が増大する吸入領域に開口しており、前記吐出ポートは、複数の前記ポンプ室のうち、前記駆動軸の回転に伴い前記ポンプ室の容積が減少する吐出領域に開口しており、前記第1流体圧室は、前記駆動軸の回転軸線の径方向において前記カムリングの前記径方向外側に設けられた空間であって、前記駆動軸の回転軸線と前記カムリングの内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が減少する部分に設けられており、前記第2流体圧室は、前記駆動軸の回転軸線の径方向において前記カムリングの径方向外側に設けられた空間であって、前記駆動軸の回転軸線と前記カムリングの内周縁の中心との偏心量が増大するほど容積が増大する部分に設けられており、前記カムリングは、前記第1流体圧室と前記第2流体圧室の圧力差に基づき、前記ポンプ要素収容空間の中を移動可能に設けられている、前記カムリングと、制御バルブであって、スプール弁と、第1圧力室と、第2圧力室を備え、前記第1圧力室は、前記スプール弁の移動方向において前記スプール弁の一方側に設けられ、前記吐出ポートから吐出された作動液が導入されており、前記第2圧力室は、前記スプール弁の移動方向において前記スプール弁に対し前記第1圧力室の反対側に設けられ、前記吐出通路に設けられた可変オリフィス部よりも作動液の流れの方向において下流側の作動液が導入されており、前記スプール弁は、前記第1圧力室の作動液の液圧と前記第2圧力室の作動液の液圧の差に基づき制御され、前記第1流体圧室の作動液の液圧を制御可能である、前記制御バルブと、ソレノイドバルブであって、ソレノイド部と、バルブ部を備え、前記ソレノイド部は、通電量の変化に応じて駆動制御され、前記可変オリフィス部における前記バルブ部の位置を変化させるものであり、前記バルブ部は、前記可変オリフィス部に設けられ、前記可変オリフィス部における位置の変化に応じて、前記可変オリフィス部における位置に応じて流路面積が最小となる第1の領域と、前記バルブ部の位置の変化に応じて前記流路面積が変化する第2の領域と、前記バルブ部の位置が前記第1の領域と前記第2の領域の間に位置しており前記バルブ部の位置の変化に伴う前記流路面積の変化量が前記第2の領域よりも小さい第3の領域を有する前記バルブ部と、を有している。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記バルブ部は、作動液が通過する貫通孔である可変オリフィス通路部を備え、前記可変オリフィス通路部は、前記第1の領域、前記第2の領域、または前記第3の領域に設けられており、前記可変オリフィス部における前記バルブ部の位置の変化に応じて前記吐出通路に対する前記可変オリフィス通路部の開口量が変化可能であり、前記第3の領域における前記可変オリフィス通路部は、前記可変オリフィス部における前記バルブ部の位置の変化に伴う前記可変オリフィス通路部と前記吐出通路とのオーバーラップ量の変化量が前記第2の領域よりも小さくなるようにしている。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記第3の領域における前記可変オリフィス通路部は、前記第2の領域における前記可変オリフィス通路部よりも、前記バルブ部の移動方向に直角な方向の幅が小さくなるようにしている。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記第3の領域における前記可変オリフィス通路部は、前記バルブ部の移動方向に直角な方向の幅が零となるようにしている。
別の好ましい態様では、前記バルブ部は、作動液が通過する貫通孔である固定オリフィス通路部と可変オリフィス通路部を備え、前記固定オリフィス通路部は、前記第1の領域に設けられており、前記吐出通路に対し常に開口しており、前記可変オリフィス通路部は、前記第2の領域と第3の領域を併せた領域に設けられている。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記可変オリフィス通路部は、第1の開口部と、第2の開口部を備え、前記固定オリフィス通路部は、前記第1の開口部または前記第2の開口部の開口面積よりも小さくなるようにしている。
別の好ましい態様では、記バルブ部は、スプール弁としている。
別の好ましい態様では、前記ソレノイドバルブは、スプリングを備え、前記ソレノイド部は、前記スプリングの付勢力に抗して前記バルブ部を付勢することにより前記可変オリフィス部における前記バルブ部の位置を変化させるものであり、 前記スプリングは、非線形特性を有している。
別の好ましい態様では、前記カムリングは、前記駆動軸の回転軸線と前記カムリングの内周縁の中心が一致する位置に対し、前記駆動軸の回転軸線と前記カムリングの内周縁の中心が最大となる最大偏心状態の反対側のマイナス偏心状態まで移動可能であり、前記バルブ部が、前記第1の領域のみ前記吐出通路に対し開口しているとき、前記マイナス偏心状態となるようにしている。
別の好ましい態様では、前記ソレノイドバルブは、前記ソレノイド部への通電量が零のとき、前記第2の領域が前記吐出通路に対し開口するようにしている。
別の好ましい態様では、ポンプ装置は、車両に搭載されるパワーステアリング装置に作動液を供給可能であり、前記パワーステアリング装置は、ピストンで区切られた1対の作動液室を有するパワーシリンダを有し、前記1対の作動液室に選択して作動液を供給することにより転舵輪に操舵力を付与可能であり、前記ソレノイドバルブは、コントローラによって駆動制御され、前記コントローラは、車両の運転状態に関する信号を受信可能とした。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記コントローラは、前記車両のフットブレーキ、サイドブレーキ、シフトポジション、または車速に関する信号に基づき、前記第1の領域のみが前記吐出通路に開口するように前記ソレノイドバルブを駆動制御するようにした。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記コントローラは、転舵軸がストロークエンドにあるとき、前記第1の領域のみが前記吐出通路に開口するように前記ソレノイドバルブを駆動制御するようにした。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記コントローラは、所定車速以上、かつ操舵操作が行われていないとき、第3の領域が前記吐出通路に開口するように前記ソレノイドバルブを駆動制御するようにした。
前記ポンプ装置の好ましい態様において、前記コントローラは、操舵輪の転舵軸にかかる荷重の変化に応じて前記ソレノイドバルブを駆動制御するようにした。
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。