JP7357078B2 - ガス充填微小胞 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス充填微小胞の新規の製剤に関し、それらを調製する方法およびそのような微小胞の使用に関する。
近年における造影剤の迅速な進歩によって、ヒトまたは動物の身体の臓器および組織のコントラスト増強イメージングならびにそれらの治療的処置において有用な複数の異なる組成物および製剤が生産されている。
コントラスト増強超音波イメージング(「CEUS」イメージング)に特に有用である造影剤の1つのクラスには、水性媒体中に分散されたナノおよび/またはマイクロメートルのサイズの気泡の懸濁液が含まれる。ガスは典型的に、例えば乳化剤、油類、増粘剤または糖類を含むフィルム層内にトラップまたは封入される。これらの安定化された気泡(適切な生理学的溶液中に分散される)は一般に当該分野において、典型的にはその調製に用いられる安定化材料によって様々な専門用語で呼ばれ;これらの用語は、例えば、「マイクロスフェア」、「微小気泡」、「マイクロカプセル」または「マイクロバルーン」を含み、ここでは包括的に「ガス充填微小胞」(または「微小胞」)と呼ぶ。
超音波造影剤(「USCA」)は、様々な製造方法によって生産することができる。これらの方法の1つは(例えばWO94/09829を参照)、両親媒性材料(例えばリン脂質および/または脂肪酸)および凍結乾燥保護化合物(例えばポリエチレングリコール)の、有機溶媒中への溶解を必然的に伴い;得られた混合物はそれから、典型的にバイアル内に充填された後に凍結乾燥に曝されて溶媒が除去されて、凍結乾燥産物が取得される。別の方法は(例えばWO2004/069284を参照)、水非混和性有機溶媒と水のマイクロエマルションの調製を必然的に伴い、前記エマルションは、両親媒性材料および凍結乾燥保護化合物を含んでいる。それから、エマルションを(バイアル中への分配の際に)凍結乾燥ステップに曝して、水および溶媒を除去する。
それから、底部に粉末形態の凍結乾燥固形産物を含んでいるバイアルのヘッドスペースに適切なガス(例えばフッ素化ガス)を充填し、最終的に保管のため密封する。使用前に、適切な液体(例えば食塩水)をバイアル中に導入してバイアルを穏やかに振って凍結乾燥産物を溶かすことによって、微小気泡の水性懸濁液が簡単に調製される。
上記方法に従って製造することのできる市販されるUSCAは、BraccoによるSonoVue(登録商標)(または米国ではLumason(登録商標))である。
出願人はここで、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC、ジステアロイルホスファチジルコリンとも呼ばれる)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-PEG5000(DPPE-PEG5000、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン-PEG500とも呼ばれる)およびパルミチン酸の、有利な相対モル比での組み合わせを含む、安定したガス充填微小胞の調製に特に適切な新規の製剤を見いだした。その製剤は、超音波を用いた治療的適用での使用に特に有用である。
Schneider et al.(2011),「BR38,a New Ultrasound Blood Pool Agent.」Inv.Radiology,Vol.46,Number 8,486-494には、イメージング超音波造影剤として使用するための、DSPC、DPPE-MPEG5000およびパルミチン酸を含んでいる凍結乾燥組成物の再構成によって得られるリン脂質安定化微小気泡の懸濁液が開示されている。
本発明は、脂質成分(a)1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、(b)5000g/molのMwを有するポリエチレングリコールとコンジュゲートされた1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE-PEG5000)および(c)パルミチン酸の、混合物を含んでいるガス充填微小胞に関し、ここで前記脂質成分は、それぞれの相対モル比(a/b/c)が、65~85/4~10/12~22である。好ましくは、モル比は70~80/5~9/15~21であり、より好ましくは約72~76/6~8/16~20であり、特に好ましいそれぞれのモル比は、74(+/-1)/7.5(+/-0.5)/18.5(+/-1)である。
別の態様は、凍結乾燥保護化合物、好ましくはPEG4000との混合で、上記脂質成分を上記それぞれのモル比で含んでいる凍結乾燥製剤の形態での、そのようなガス充填微小胞の前駆体に関する。凍結乾燥保護化合物の量に対する3つの脂質成分の合計量は、重量で0.08%~0.75%、好ましくは0.10%~0.50%、より好ましくは0.12%~0.45%の任意の範囲内であってよい。
一実施態様では、3つの脂質成分の混合物は、凍結乾燥保護化合物の合計量に対して重量で0.08%~0.3%の量、より好ましくは重量で約0.10%~0.20%、さらにより好ましくは重量で0.12%~0.18%であり、凍結乾燥保護化合物に対して約0.16%(w/w)の量が特に好ましい。
別の実施態様では、3つの脂質成分の前記混合物は、凍結乾燥保護化合物の合計量に対して重量で0.3%超~0.5%、好ましくは0.35%~0.45%、より好ましくは重量で0.38%~0.40%の量である。
別の態様は、生理的に許容できるガス、好ましくはパーフルオロブタン(C10)と、より好ましくは窒素との混合(例えば35/65 v/v)で、接触している前記凍結乾燥製剤を含む密封されたバイアルに関する。
実施例3において議論される、洗浄されたガス充填微小胞の懸濁液中のDPPE-PEG5000の量と比較した、ネイティブのガス充填微小胞の懸濁液中のDPPE-PEG5000の相対量を示す。
本明細書において用いられる用語「DSPC」は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「ジステアロイルホスファチジルコリン」とも呼ばれる)を指し、用語DPPE-PEG5000は、5000g/molのMwを有するポリエチレングリコールとコンジュゲートされた1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(「ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン」とも呼ばれる)を指し、より具体的には、メトキシ基末端PEG誘導体N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール5000)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたは1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](DPPE-MPEG5000)を指す。
出願人は、予期せずに、DSPC、DPPE-PEGおよびパルミチン酸を含む組成物の脂質成分のそれぞれのモル比を適切に調整することによって、耐圧性の観点でとりわけ改善された特性を有するガス充填微小胞を調製することが可能であることを見いだした。
実施例において詳細に説明されるように、出願人は特に、少なくとも8%、好ましくは少なくとも12%、より好ましくは少なくとも15%、さらにより好ましくは16%よりも高いが、22%よりも高くない、好ましくは21%よりも高くない、より好ましくは20%よりも高くない、さらにより好ましくは20%未満のパルミチン酸のモル量(他の2つの成分に対して)を含む組成物を有するガス充填微小胞に、特性の改善(より高い耐圧性を含む)が与えられることを見いだした。特に好ましい実施態様では、前記量は、18.5%(+/-1)、より好ましくは18.5%(+/-0.5)である。
さらに、また実施例において詳細に説明されるように、出願人は、製剤内に取り込まれる増加する量のDPPE-PEGによって、改善された特性、例えば、サイズ分布を有する微小胞(特に、DV50値およびD値の減少によって特徴付けられる)、および、より少ない量の大きな微小胞(8μmよりも大きなサイズを有する気泡の数として表される)を得ることが可能になることを観察した。他方で、出願人は、DPPE-PEG5000のモル量が8%よりも高いと、形成される微小胞の安定化層内にしばしば効果的に取り込まれないことも観察した。さらに、出願人が観察したように、過剰量のDPPE-PEG5000を含む製剤は、増加する量の大きな微小胞を有する微小胞を生じさせ得る。したがって、出願人は、DPPE-PEG5000の相対モル量(他の2つの成分に対して)が、少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも6%、さらにより好ましくは6%よりも高いが、10%よりも高くない、好ましくは9%よりも高くない、より好ましくは8%よりも高くない、さらにより好ましくは8%未満であるべきであることを決定した。特に好ましい一実施態様では、前記量は、7.4%(+/-0.5)、より好ましくは7.4%(+/-0.4)である。
DSPCについては、出願人は、他の2つの成分に対するその相対モル量は、上記に説明した相対比も考慮して、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも72%、さらにより好ましくは72%よりも高いが、85%よりも高くない、好ましくは80%よりも高くない、より好ましくは76%よりも高くない、さらにより好ましくは76%未満であるべきであることを見いだした。特に好ましい一実施態様では、前記量は、74%(+/-1)、より好ましくは74%(+/-0.8)である。
本発明の好ましい実施態様は、DSPC/DPPE-PEG/パルミチン酸を65~85/4~10/8~22のそれぞれのモル量で含んでいる組成物である(相対%モル量として表され、合計は100%である)。好ましくは、モル量は、70~80/5~8/12~21であり、より好ましくは、約72~76/6~9/15~20であり、74(+/-1)/7.5(+/-0.5)/18.5(+/-1)のモル比が特に好ましい。
上記製剤は、本明細書中に説明される凍結乾燥プロセスに従って、凍結乾燥産物として一般に調製される。凍結乾燥産物は、適切な凍結乾燥保護化合物、好ましくはPEG4000を含む。出願人が観察したように、3つの脂質成分に対する凍結乾燥保護化合物(特にPEG4000)の量は、相対的に高くあるべきである。特に、凍結乾燥保護化合物の量に対する3つの脂質成分の合計量は、重量で0.08%~0.75%、好ましくは0.10%~0.50%、より好ましくは0.12%~0.45%に変化し得る。出願人が観察したように、この相対的に高い量の凍結乾燥保護化合物は、特にWO2004/069284に開示される製造方法に従って調製した場合に、成分の凍結乾燥質量における、製剤の成分の適切に均質な分散を可能にする。
一実施態様によれば、製剤の3つの脂質成分の合計重量は、凍結乾燥保護化合物の合計量に対して、重量で0.08%~0.3%、好ましくは重量で約0.10%~0.20%、より好ましくは重量で0.12%~0.18%、さらにより好ましくは約0.16%である。
別の実施態様によれば、製剤の3つの脂質成分の合計重量は、凍結乾燥保護化合物の合計量に対して、重量で0.30%超~0.50%、好ましくは0.35%~0.45%、より好ましくは0.38%~0.40%である。
出願人が観察したように、この後者の実施態様は、より高い量の微小胞が投与されることが望ましくあり得る特定の治療的適用に有用であり得るガス充填微小胞の高濃度懸濁液を調製するのに特に有用である。実際のところ、より高い量の注入微小胞は、特定の懸濁液の投与容量を増大することによって達成され得るが、それにもかかわらず、より高濃度の微小胞を含んでいる相対的に減少した容量の懸濁液を投与することがより賢明であり得る。原理的に、懸濁液中のより高い量のガス充填微小胞は、再構成される凍結乾燥製剤中の脂質の相対量を増大することによって達成することができる。また、凍結乾燥産物を再構成するための液体の容量を一定に保つことにより、そのようなより高い量の脂質は、再構成された懸濁液において、より高濃度の微小胞を生じさせる。しかしながら、出願人が観察したように、(再構成される凍結乾燥産物中の)脂質成分の量を単純に増加させることは、最終の再構成された懸濁液において、それ相応により多い数の微小胞を必ずしも生じさせ得ない。実際のところ、出願人は、製剤中の脂質成分の量に対する微小胞の数の最適量は、凍結乾燥化合物の量に対する、そのような脂質の量のバランスを適切にとることによって得ることができることを観察した。したがって、特に有利な結果は、製剤の3つの脂質成分の合計重量が、凍結乾燥保護化合物の合計量に対して重量で0.30%超~0.50%、好ましくは0.35%~0.45%、より好ましくは0.38%~0.40%である場合に得ることができる。特定の一実施態様によれば、製剤の3つの脂質成分の合計重量は、1000μg~1300μg、好ましくは1050μg~1250μg、より好ましくは1100μg~1200μgに変化することができ、凍結乾燥保護化合物(PEG4000)の合計重量は、225mg~375mg、好ましくは250~350mg、さらにより好ましくは275mg~325mgに変化することができる。
本明細書において用いられる、Dは、微小胞の母集団の数平均直径であり、DV50は、微小胞の前記母集団の体積メジアン直径であり、母集団内に含まれる全ガスの半分がDV50未満の直径を有する微小胞内に存在することを示す。比DV50/Dは、母集団の多分散性について一般的な示度を提供し:典型的に、DV50/D比が低いほど、サイズ分布はより狭くなる。上記のDV50、Dの値(ならびに、微小胞の合計数または8μmよりも大きな微小胞の数のような他のパラメーター)は、コールターカウンター(例えば、0.7~20μmの測定範囲を有する、30μmアパチャーが付いた、Coulter Counter Multisizer 3器具)を用いた測定によって得ることができる。
凍結乾燥保護化合物
本明細書において定義される凍結乾燥保護化合物は、凍結保護(cryoprotective)および/または溶解保護(lyoprotective)効果を有する化合物である。適切な凍結乾燥保護化合物は、例えば、炭水化物、例えば、単糖類、二糖類、または多糖類、例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、グルコース、ラクトース、ガラクトース、ラフィノース、シクロデキストリン、デキストラン、キトサンおよびその誘導体(例えばカルボキシメチルキトサン、トリメチルキトサン);ポリオール類、例えば糖アルコール類、例えば、ソルビトール、マンニトールまたはキシリトール;または親水性ポリマー、例えばポリオキシアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール(例えばPEG2000、PEG4000またはPEG8000)またはポリプロピレングリコールを含む。一実施態様によれば、前記凍結乾燥保護化合物は、ポリエチレングリコール、好ましくはPEG4000である。本明細書において用いられるPEG4000は、当該分野におけるその通常の意味を有し、約4000g/モルの分子量を有するポリエチレングリコールを指し、一般に、前記値付近の+/-10%の変動を有する。
ガス充填微小胞の調製
ガス充填微小胞の懸濁液を調製するのに適切な方法は、適切な生理的に許容できるガスの存在下で、(例えば液体-ガス界面で安定化層を形成することによって)前記微小胞を安定化することが可能な脂質成分を含む凍結乾燥産物の、水性担体を用いた再構成を含む。
凍結乾燥産物は、前記脂質成分および凍結乾燥保護化合物を含む液体混合物を適切な溶媒において凍結乾燥させることによって典型的に得られる。
凍結乾燥プロセスを受ける液体混合物は、当該分野において公知の方法(例えばWO2004/069284に開示される)に従って得ることができる。
WO2004/069284に開示されるプロセスに従って、脂質成分を含む組成物を、水非混和性有機溶媒と水のエマルション中に、撹拌下で、好ましくは凍結乾燥保護化合物との混合で、分散させてよい。好ましくは、DSPCおよびパルミチン酸を含む有機溶液を最初に調製して、それから、DPPE-PEG5000および凍結乾燥保護化合物を含む水溶液と一緒に乳化される。
適切な水非混和性有機溶媒としては、例えば、分岐または直鎖のアルカン類、アルケン類、シクロアルカン類(例えばシクロオクタン)、芳香族炭化水素、アルキルエーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素、ペルフルオロ化炭化水素またはそれらの混合物が含まれる。
エマルションは、水性媒体および溶媒を、脂質成分および凍結乾燥保護化合物の存在下で、例えば、超音波処理、振とう、高圧均質化、微小混合、膜乳化、高速撹拌または高剪断混合のような当技術分野で知られている任意の適切なエマルション生成技術に曝すことによって得てよい。凍結乾燥保護化合物は、エマルションの形成の前または後のいずれかに、例えば、かかる凍結乾燥保護化合物を含む水溶液として添加することができる。そのようにして得られたマイクロエマルションは、脂質成分によって囲まれて安定化された溶媒の微小滴を含み、それをそれから、従来の技術に従って凍結乾燥させて凍結乾燥材料を取得し、それを、ガス充填微小胞の懸濁液を調製するために用いることができる。
凍結乾燥プロセスについて、脂質成分と凍結乾燥保護化合物とを含むエマルション(例えば、以前に説明した製造プロセスに従って得られる)を、典型的に、ガラスバイアル(例えば、様々な寸法のDIN/ISO8362クリンプバイアル)中にサンプリングして、それを凍結乾燥器中に入れる。しかしながら、出願人が観察したように、凍結乾燥されるべき過剰な容量のマイクロエマルションをバイアル内に誘導することは、凍結乾燥プロセス中にバイアルにひび割れを生じさせ得る。したがって、例えば、DIN 8Rバイアル(およそ11.5mLの容量)は、好ましくは、2mL未満の容量のマイクロエマルション、好ましくは1.5mLを超えない容量で満たさなければならない。そのような相対的に少ない容量は、バイアル内に導入することのできる脂質成分の合計量を必然的に制限し、その結果、凍結乾燥産物の再構成の際に得ることのできるガス充填微小胞の数が制限されることとなる。したがって、より多い量の微小胞が単一バイアル内に必要である場合、より大きなキャパシティを有するバイアルを用いるべきである。例えば、DIN20Rバイアル(約25mLのキャパシティを有する)は、凍結乾燥プロセス中にひび割れずに、4mLまでのマイクロエマルション(好ましくは3mLを超えない)で満たされ得る。
凍結乾燥プロセスは一般に、バイアルが急速に深冷されて(deep-cooled)(例えば-35℃~-70℃の温度)、混合物の液体(単数または複数)が凍結され、それから真空(例えば0.1~0.8mbar)に曝される、最初のステップ(一次乾燥)を含み;一次乾燥中に、凍結した液体(単数または複数)(例えば水および/または溶媒)の実質的な全体が、昇華によって、典型的に液体の全量の約95%まで、好ましくは約99%までが除去される。一次乾燥後、残留液体(あり得る間隙水を含む)を、典型的に室温よりも高い温度にて真空下で(好ましくは一次乾燥中に適用されたのと同じ真空を維持することによって)行われる二次乾燥中にさらに除去することができる。二次乾燥中の温度は、好ましくは35℃よりも高くない。二次乾燥は、液体(単数または複数)の残留含有量が、所望の最小値、例えば、残留凍結乾燥産物の総質量に対する水の重量で3%未満(less 3%)(好ましくは1%未満)、または、例えば、残留溶媒(単数または複数)に関して0.01重量%未満、好ましくは0.08%未満に到達したときに止めることができる。
凍結乾燥ステップの完了(すなわち加熱ストップおよび真空除去)の後、凍結乾燥産物は、さらなる熱処理ステップを受けることができる。好ましくは、熱処理は、凍結乾燥産物を含んでいるバイアルのヘッドスペースを適切な生理的に許容できるガスで飽和させて、それから栓をして(例えばブチルゴムのようなゴムのストッパーを用いる)、バイアルを密封した後に(例えば、アルミニウムのような金属のクリンプシールを用いる)、密封されたバイアル上で行われる。この場合、バイアルは好ましくは凍結乾燥器から取り出されて、熱処理のために適切なオーブン内に導入される。あるいは、かかる熱処理は、オープンバイアル(好ましくは凍結乾燥器の中に維持される)上で行なうことができ、それから、ガスで飽和させてから、栓/密封される。
適切な生理的に許容できるガスの例は、例えば、SF、C、C10のようなフッ素化ガスを含み、空気または窒素との混合であってもよい。
好ましくはC10、または、窒素とC10の混合物を、上記に定義したDSPC、DPPE-PEG5000およびパルミチン酸を含む脂質混合物と組み合わせて用いる。
本出願人が観察したように、凍結乾燥産物の上記のさらなる加熱処理によって、凍結乾燥産物の再構成の際に得られるガス充填微小胞の懸濁液の特性が、驚くべきことに、かかる加熱処理を受けない凍結乾燥産物から得られる懸濁液よりも改善される。
出願人は特に、そのような処理によって、得られる微小胞の耐圧が増大されることを観察した。
凍結乾燥産物は、好ましくは35℃よりも高い温度(例えば36℃)、より好ましくは38℃以上の温度で加熱される。加熱処理の最高温度は一般に、凍結乾燥産物内に含まれる材料に依存する。例えば、かかる温度は、凍結乾燥添加剤として用いられる材料の融点よりも低く、それは、凍結乾燥産物の質量の大部分を形成する成分である(典型的に、微小胞の安定化層を形成する活性成分の重量の50倍から600倍を超えるまで)。例えば、PEG4000は、53~58℃の融解温度を有する。一実施態様によれば、加熱温度は、好ましくは50℃以下である。加熱処理に好ましい温度は、38℃~45℃である。
加熱処理の持続時間は一般に、処理の温度に依存し;典型的に、温度が高ければ高いほど、加熱の持続時間は短くなる。ガス充填微小胞エンベロープを形成する材料(特にリン脂質)は、過剰な温度に曝される時間が長すぎると分解反応を受け得るので(再構成される微小胞の特性に負の結果を及ぼす可能性がある)、加熱処理の持続時間は不必要に長くしない。約8時間の処理持続時間は十分であり得るが(特に、45℃よりも高い温度、例えば48℃と組み合わせて)、加熱処理の持続時間は、好ましくは12時間、例えば20時間まで、より好ましくは14~18時間行われる。特定の場合にはより長い持続時間が適用され得るが(例えば、45℃未満、好ましくは42℃未満の温度と組み合わせて)、出願人は、最終的なガス充填微小胞の特性は、さらに改善されるとしてもほんの僅かである(only slightly if not at all further improved)ことを観察しており;したがって、そのような持続時間の増大は、ほとんどの場合において不必要であり、産業規模での製造経済の観点から一般に不都合である。
熱処理は、凍結乾燥保護化合物と上記に定義した脂質成分の混合物を含む凍結乾燥産物を再構成することによって得られるガス充填微小胞の特性を改善するのに特に効果的であることが証明された。好ましくは、前記凍結乾燥産物は、約36℃~45℃、特に約39℃(+/-3℃)の温度で、少なくとも8時間、好ましくは約15時間(+/-5時間)加熱される。
上述のように、凍結乾燥産物の熱処理は、圧力に対するガス充填微小胞の耐性を増大させる。有利に、圧力に対する耐性が増大した微小胞は一般に、注入された時点で血流における時間持続性の増大を示す。
ガス充填微小胞の耐圧性は、実験パラメーター「Pc50」または「臨界圧」を決定することによって評価することができる。
実験部分に詳細に説明するように、ガス充填微小胞の懸濁液のPc50は、微小胞の懸濁液の吸光度が大気圧で測定される懸濁液の吸光度の半分まで低下するのに適用された過剰圧力(大気圧に対して)の値を特定し、前記の適用された過剰圧力は、微小胞の母集団を、最初の母集団(大気圧)に対して実質的に減少させる。実際のところ、微小胞の懸濁液の吸光度の減少は、ガス充填微小胞の最初の母集団の減少に関連し、したがって、最初は乳白色の懸濁液(高濃度の微小胞)は、圧力増加によって次第に透明になる(微小胞の崩壊に起因する濃度減少)。Pc50値が高ければ高いほど、微小胞の耐圧性は高くなる。超音波の診断適用のためには、少なくとも12kPa(約90mmHg)の最小Pc50値がガス充填微小胞に関して望ましく、好ましくは少なくとも13kPa(約100mmHg)、より好ましくは少なくとも14kPa(105mmHg)である。超音波の治療適用のためには一般に、血流におけるより長い持続時間が必要であり、少なくとも55kPa(約412mmHg)の最小Pc50値が望ましく、好ましくは、少なくとも70kPa(約525mmHg)、より好ましくは少なくとも80kPa(約600mmHg)であるが、より高いPc50値がさらにより好ましい。
典型的に、凍結乾燥産物の熱処理は、微小胞の再構成された懸濁液のPc50を、そのような熱処理に曝されていない凍結乾燥産物から得られる再構成された懸濁液のPc50に対して、少なくとも5kPa、好ましくは少なくとも8kPa、より好ましくは少なくとも10kPa増大させる。Pc50のそのような増大は、15kPaまでであってよく、一部の実施態様では25kPaまでである。
特に、本明細書において定義した凍結乾燥産物から再構成され、上記に定義した熱処理に曝された微小胞の懸濁液は、少なくとも75kPa、好ましくは少なくとも80kPa、より好ましくは少なくとも90kPa、例えば110kPaまで、好ましくは105kPaまでの、Pc50値を有する。
ガス充填微小胞の懸濁液
それから、生理的に許容できる(水性)担体を用いて、穏やかに撹拌しながら、凍結乾燥産物を再構成することによって、ガス充填微小胞の懸濁液を調製することができる。適切な生理的に許容できる(水性)担体は、例えば、注射用水、食塩水またはグルコース溶液を含み、賦形剤または添加剤、例えばpH調節剤、浸透圧調整剤、増粘剤を含んでもよい。
調剤キット、投与および使用方法
凍結乾燥産物を含むバイアルは、二成分の診断および/または治療キットにおいて、好ましくは注入による投与のために、有利にパッケージングすることができる。キットは、凍結乾燥産物を含んでいるバイアル、および、再構成のための生理的に許容できる水性担体を含んでいる第2のコンテナー(例えばシリンジバレル)を好ましくは備える。一実施態様では、バイアルは、約50~約150mgの凍結乾燥産物を含んでいるDIN8Rガラスバイアル(または同等物)であり;好ましくは、凍結乾燥化合物に対する脂質成分の量は、重量で0.10%~0.30%である。別の実施態様では、バイアルは、約250~350mgの凍結乾燥産物を含んでいるDIN20Rバイアル(または同等物)であり;好ましくは、凍結乾燥化合物に対する脂質成分の量は、重量で0.30%超~0.50%である。再構成のための水性担体の容量は、典型的に約5mLである。特定の治療的適用のために、DIN20Rバイアル内の凍結乾燥産物の再構成から得られる懸濁液は、懸濁液の持続投与のために、ある容量(例えば50mL)の、生理的に許容できる注入用液体(例えば食塩水)と混合され得る。
本発明の微小胞は、特に超音波を含む、様々な診断および/または治療技術において用いられ得る。
治療的技術は、患者の任意の治療方法を含み、それは、超音波およびガス充填微小胞の併用を、それ自体として含み(例えば、超音波によって仲介される血栓溶解、高密度焦点式超音波アブレーション、血液脳関門の透過化、免疫調節、神経調節、放射線増感において)、または、治療剤と組み合わせて含み(すなわち、超音波によって仲介される送達、例えば、選択部位または組織への薬物または生体活性化合物の送達のため、例えば、腫瘍治療、遺伝子療法、感染性疾患の療法、代謝疾患の療法、慢性疾患の療法、変性疾患の療法、炎症性疾患の療法、免疫性または自己免疫性疾患の療法において、または、ワクチンとしての使用において)、したがって、ガス充填微小胞の存在は、例えば、生物学的効果をインビトロおよび/またはインビボで与えるか、または与える要因となることによって、それ自体によって、または様々な物理的方法による特定の活性化の際に(例えば超音波によって仲介される送達を含む)、治療的効果自体を提供し得て、または、適用される超音波の治療的効果を増強することができる。
本発明に係る微小胞は典型的に、例えば、それぞれの組成、治療対象のタイプ、治療される組織または臓器および/または用いられる治療的方法に依存して、患者のkgあたり約0.01~約5.0μLのガスの濃度で治療的目的のために投与することができる。
一実施態様では、超音波の治療的処置の前記方法は、
(i)本発明のプロセスに従って得られる凍結乾燥産物の再構成によって得られるガス充填微小胞の懸濁液を患者へ投与するステップ;
(ii)治療的処置に曝される前記患者における関心領域を同定するステップ(前記関心領域は、ガス充填微小胞の前記懸濁液を含んでいる);および
(iii)前記関心領域を治療的に処置するために超音波ビームを適用するステップ;を含み、
それにより、前記超音波の治療的処置は、前記関心領域におけるガス充填微小胞の前記懸濁液の存在によって増強される。
微小胞の前記懸濁液は、好ましくは、少なくとも84kPa、より好ましくは少なくとも88kPa、さらにより好ましくは少なくとも90kPa、例えば約105kPaまでのPc50値を有する。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのを助けるであろう。
材料
DSPC:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(ジステアロイルホスファチジルコリン)
DPPE-PEG5000:1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)
PEG4000=ポリエチレングリコール(Mw=4000g/モル)
耐圧性(Pc50)の測定
ガス充填微小胞の圧力に対する耐性を、社内で開発した圧力比濁計を用いて評価した。手短には、微小胞懸濁液を、分光光度計サンプルセル内に導入した(加圧システムに気密接続される)。セル内のサンプルに適用される圧力を大気圧(760mmHg、101.3kPa、)から2バールの過剰圧力(2280mmHg、303,9kPa)まで、約4mmHg/s(533Pa/s)の速度で直線的に増加させながら、懸濁液の光学密度(700nmでの吸光度)を連続的に記録する。
それぞれの懸濁液を特徴付けるPc50パラメーター(「臨界圧」、kPaで表される)は、微小胞懸濁液の吸光度がその最初の値の半分まで低下する過剰圧力(大気圧に対して)を特定する。
ガス充填微小胞のパラメーターの決定
サイズ分布パラメーター(Dv50およびDn、μmで表される)、微小胞の数(懸濁液の粒子/mLとして表される)、および、8μmよりも大きな直径を有する微小胞のパーセンテージ(粒子の合計量に対する粒子のパーセンテージとして表される)を、0.7~20μmの測定範囲を有する、30μmアパチャーが付いた、Coulter Counter Multisizer 3器具を用いて決定した。50μLの微小気泡サンプルを、100mlの食塩水中に室温で希釈して、測定前に3分間平衡化させた。
[実施例1]
DSPC/パルミチン酸/DPPE-PEGを含んでいる微小胞の調製
(a)25mgのDSPC/パルミチン酸混合物(80/20モル比)を、シクロオクタン(4mL)中に、70℃で5分間溶解させる。
(b)別個に、DPPE-PEG5000(16.7mg、合計脂質成分のモル量に対して7.4%モル)を、蒸留水(1mL)中に70℃で溶解させて、10%(w/w)PEG4000溶液(蒸留水(49mL)中)をそれに添加した。
(c)水相および有機相を乳化させた(Megatron MT3000、10’000rpm、3.5分)。エマルションを100mLフラスコ(Duran)内に回収して、それから、80℃で1時間加熱して、最終的に室温まで冷却した(約1時間)。
(d)それから、エマルションを上記10%PEG4000溶液で5倍に希釈して(すなわち、216mLの10%PEG4000溶液を54mLのエマルションに添加した)、DIN8Rバイアル中にサンプリングした(0.75mL/バイアル)。
エマルション中の相対的DSPC/パルミチン酸/DPPE-PEG5000モル比は、約74/18.5/7.5であった。PEG4000の合計量に対する3つの成分の合計重量は、約0.16%である。
バイアルを真空下にて-50℃で冷却して、それから凍結乾燥に曝し、その後に、実施例1において説明されるように、水および溶媒の完全な除去まで(0.5重量%未満)、室温よりも高い温度で二次乾燥させた。凍結乾燥プロセスの最後に、バイアルのヘッドスペースをC10/Nの35/65混合物で飽和させて、バイアルに封をして密封する。
それから、バイアルを38℃で16時間加熱した。
それから、バイアル内の産物を、使用前に穏やかに振とうして食塩水(5mL/バイアル)中に再分散させた。
[実施例2]
異なる濃度のパルミチン酸の効果
同量のDPPE-PEG5000を維持して、DSPCに対するパルミチン酸の相対モル量を改変することにより(すなわち、それぞれ、0、10、20、40および60)、実施例1を繰り返した。これは、最終製剤において、約0%、9.3%、18.5%、37.1%および55.6%のパルミチン酸の相対モル量に相当する。
結果を以下の表1に報告し、10~20のパルミチン酸の量は、特に、耐圧性、微小胞の数およびサイズ分布の観点から、改善された特性を微小胞に与えることを示す。全ての特性を考慮すると、DSPCに対して約20%w/rのパルミチン酸のモル量を有する製剤が特に好ましい。

[実施例3]
異なる濃度のDPPE-PEG5000の効果
同じ量および比のDSPC/パルミチン酸を維持することによって、DPPE-PEG5000のモル量を変化させることにより(脂質成分の合計モル量に対して、0、1%、3%、7.4%、12%)、実施例1を繰り返した。
結果を表2に説明し、約7.4%のDPPE-PEG5000の量が、8ミクロンよりも大きな直径を有する微小胞の数(Nb Mv>8μm)が減少し、かつ、より狭い分布の製剤を提供することを示す。

上記製剤(ネイティブの微小胞)を、それから2回の洗浄ステップに供して、微小胞の安定化層を形成しない成分を除去した。図1から推測されるように、DPPE-PEG5000の量は、7.4%の濃度までは、ネイティブの懸濁液および洗浄した懸濁液において実質的に同様であるが(DPPE-PEGが、微小胞の安定化層内に所望のモル量で取り込まれることを示す)、より高い濃度では、洗浄した懸濁液におけるDPPE-PEG5000の量は、ネイティブの懸濁液における量よりもずっと少ない(安定化層は、7.4%に対して過剰すぎるDPPE-PEG5000を取り込むことが実質的にできないことを示す)。この理由から、過剰すぎる、例えば10%よりも多い量は望ましくなく、9%以下、好ましくは8%以下の量が望ましい。
[実施例4]
異なる量のPEG4000の効果
実施例1を繰り返したが、ステップ(d)においてエマルションの5倍希釈に使用するPEG4000溶液を、異なる濃度で、すなわち、重量で2%、5%、10%、15%および20%で用い;PEG4000の量に対する脂質成分の合計重量はしたがって、それぞれ約0.77%、0.31%、0.16%、0.10%および0.08%であった。
結果を表3に説明し、凍結乾燥前のエマルションの5倍希釈のために重量で2%超または20%未満の濃度でPEG4000の溶液を使用することは(PEG4000の合計量に対する3つの成分の合計重量が0.77%未満かつ0.08%超である組成物をもたらす)、特に有利な特性(例えば、相対的に狭いサイズ分布、改善された耐圧性、および、特に、大きなサイズの微小胞の数がより少ない)を有するガス充填微小胞の懸濁液を提供することを示す。

[実施例5]
エマルション希釈の効果
実施例1を繰り返したが、ステップ(d)におけるエマルションの希釈を変更した。最初のバッチでは、エマルションを希釈せずにバイアル中にサンプリングした(この場合、PEG4000の量に対する脂質成分の合計重量は0.78%であった)。2番目のバッチでは、エマルションを2倍希釈して(54mLのエマルション+54mLのPEG4000 10%溶液)、それからバイアル中にサンプリングした(この場合、PEG4000の量に対する脂質成分の合計重量は0.39%であった)。これらの2つのバッチを、エマルションの5倍希釈による実施例1の製剤と比較した(この場合、PEG4000の量に対する脂質成分の合計重量は0.16%であった)。結果を表4に説明する。

表4のデータから推測されるように、凍結乾燥前の10%(w/w)PEG4000溶液を用いたエマルションの2倍希釈によって得られた製剤(PEG4000の量に対する脂質成分の合計重量は0.39%である)は、希釈なし(脂質の量は0.78%)または5倍希釈(脂質の量は0.16%)の場合の製剤に対して改善された特性を有するガス充填微小胞の懸濁液を提供する。さらに、脂質成分のμgあたりの微小胞の数は、2倍希釈の製剤に関して9.48・10であったが、希釈なしの製剤については、たった6.68・10であり、5倍希釈の製剤については7.76・10であった;これらの結果は、PEG4000に対する脂質成分の比のバランスを適切にとることによって、決定された量の脂質成分によって形成され得る微小胞の数を最適化することが可能であることを示す。
[実施例6]
試験規模の製剤
実施例1を試験規模で繰り返し(材料の量は実験室規模の実験の約50倍である)、ステップ(d)を10%(w/w)PEG4000溶液を用いたエマルションの2倍希釈によって行なう点が異なった。
最終エマルションをDIN20Rガラスバイアル中にサンプリングして(3mLエマルション/バイアル)、バイアルあたり約300mgのPEG4000の合計量および脂質成分の量は各々約0.39重量%であった。
凍結乾燥および食塩水中の再構成後、以下の結果が決定された:
微小胞の合計数:13・10
微小胞の数/脂質(μg):1.12・10
Dv50(μm):3.7
Dn(μm):1.48
Nb Mv>8μm(%):0.06
[実施例7]
凍結乾燥産物の調製(7a~7h)
WO2004/069284の実施例において説明される手順を、8個の異なるバッチ(7a~7h)を調製するために用いて、それぞれ、凍結乾燥産物を含んでいる数個のバイアルから構成された。
手短には、約90mg/LのDSPC、7mg/Lのパルミチン酸、60mg/LのDPPE-PEG5000(約75/18/7のモル比)および100g/LのPEG4000を含むシクロオクタンと水のエマルション(約1.5/100 v/v)を調製して(Megatron MT3000,Kinematica;10’000rpm、3.5分)、DIN8Rバイアル中にサンプリングする(約1mL/バイアル)。
実施例1に記載のとおりに、バイアルを、真空下にて-50℃で冷却して、それから、凍結乾燥に曝し、その後に、水および溶媒の完全な除去(0.5重量%未満)まで、室温よりも高い温度で二次乾燥させた。凍結乾燥プロセスの最後に、バイアルのヘッドスペースをC10/Nの35/65混合物で飽和させて、バイアルに栓をして密封する。
異なるバッチ(7a~7h)をこの後の加熱処理実験に用いた。
[実施例8]
実施例7に従って製造されたバッチに対する、加熱処理の効果
実施例7に従って調製した様々なバッチ(7a~7h)のバイアルを異なる加熱処理に曝して、ガス充填微小胞の再構成された懸濁液の特性に対する効果を観察した。
実験8.1
バッチ7aのバイアルを、40℃または45℃の加熱温度に16時間曝し、または加熱しなかった。それから、バイアル内の産物を5mlの食塩水で再構成して、懸濁液中の微小胞の特性を測定した。結果を以下の表5に報告する。

上記データから推測できるように、実施例7の手順に従って製造されたバッチについても加熱処理によって耐圧性の実質的な増大が得られる。
実験8.2
バッチ7bのバイアルを、16~88時間の範囲の時間、40℃の加熱温度に曝し、または加熱しなかった。それから、バイアル内の産物を5mlの食塩水で再構成して、懸濁液中の微小胞の特性を測定した。結果を以下の表6に報告する。
上記データから推測できるように、耐圧性の実質的な増大が、40℃での加熱処理によって得られる。16時間の処理の持続時間は、より長い熱処理に起因する微小胞の他の特性に対するあり得る負の効果(例えば、再構成された懸濁液中の大きなサイズの微小胞の増大)を避けるためにも、十分であると一般に考えられる。
実験8.3
バッチ7c~7gのバイアルを、16時間、40℃の加熱温度に曝し、または加熱しなかった。それから、バイアル内の産物を5mLの食塩水で再構成して、懸濁液中の微小胞の特性を測定した。結果を以下の表5に報告する。

上記表から推測されるように、様々なバッチから再構成された微小胞の懸濁液について、15kPaを超えて約25kPaまでの耐圧性の増大が凍結乾燥産物の加熱処理後に得られる。
実験8.4
バッチ7hのバイアルを、2~24時間の範囲の時間、38℃で加熱処理に曝した。それから、バイアル内の産物を5mLの食塩水で再構成して、懸濁液中の微小胞の特性を測定した。結果を以下の表6に報告する。

上記表から推測されるように、38℃で8~12時間までの増大する時間、凍結乾燥材料を加熱することによって、再構成された懸濁液中の微小胞の増大する耐圧性が得られる。材料のさらなる加熱(16または24時間)は、耐圧性を実質的にさらに増大させない。

Claims (14)

  1. ガス充填微小胞を調製するための凍結乾燥製剤であって、
    以下の脂質成分:
    (a)ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、
    (b)5000g/molのMwを有するポリエチレングリコールとコンジュゲートされたジパルミトイルホスファチジル-エタノールアミン(DPPE-PEG5000)、および
    (c)パルミチン酸
    の混合物を含み;
    前記脂質成分は、それぞれのモル量a/b/cが65~85/4~10/8~22であり、
    前記剤はポリエチレングリコール4000g/mol(PEG4000)をさらに含み、前記脂質成分の混合物はPEG4000の重量に対して0.3%超~0.5%の重量を有する
    凍結乾燥製剤。
  2. 請求項1の凍結乾燥製剤であって、
    前記それぞれのモル量が、70~80/5~8/12~21である、
    凍結乾燥製剤。
  3. 請求項1の凍結乾燥製剤であって、
    前記それぞれのモル量が、72~76/6~9/15~20である、
    凍結乾燥製剤。
  4. 請求項1の凍結乾燥製剤であって、
    前記それぞれのモル量が、74(+/-1)/7.5(+/-0.5)/18.5(+/-1)である、
    凍結乾燥製剤。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤であって、
    前記重量が、重量で0.35%~0.45%である、
    凍結乾燥製剤。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤であって、
    前記重量が、重量で0.38%~0.4%である、
    凍結乾燥製剤。
  7. ガス充填微小胞の懸濁液であって、
    前記微小胞が、脂質成分DSPC、DPPE-PEGおよびパルミチン酸の混合物を、65~85/4~10/8~22のそれぞれのモル量で含み、
    前記懸濁液はポリエチレングリコール4000g/mol(PEG4000)をさらに含み、前記脂質成分の混合物はPEG4000の重量に対して0.3%超~0.5%の重量を有する
    懸濁液。
  8. 請求項の懸濁液であって、
    前記それぞれのモル量が、70~80/5~8/12~21である、
    懸濁液。
  9. 請求項の懸濁液であって、
    前記それぞれのモル量が、72~76/6~9/15~20である、
    懸濁液。
  10. 請求項の懸濁液であって、
    前記それぞれのモル量が、74(+/-1)/7.5(+/-0.5)/18.5(+/-1)である、
    懸濁液。
  11. 請求項7~10のいずれか一項に記載の懸濁液であって、
    脂質成分の混合物が、PEG4000の重量に対して0.35%~0.45%の重量を有する、
    懸濁液。
  12. 請求項11に記載の懸濁液であって、
    前記重量が、重量で0.38%~0.40%である、
    懸濁液。
  13. 請求項からのいずれかに記載の凍結乾燥製剤を約250mg~約350mg含む、
    密封されたバイアル。
  14. 超音波治療的処置の方法において使用するための、請求項8~12のいずれか一項に記載の懸濁液であって、
    前記方法が、
    (i)請求項から12のいずれかに定義されるガス充填微小胞の懸濁液および治療剤を患者に投与するステップ;
    (ii)治療的処置に曝すべき前記患者における関心領域を同定するステップであって、前記関心領域がガス充填微小胞の前記懸濁液を含んでいる、関心領域を同定するステップ;および
    (iii)前記関心領域を治療的に処置するために超音波ビームを適用するステップ;を含み、
    それにより、前記超音波治療的処置が、前記関心領域内のガス充填微小胞の前記懸濁液の存在によって増強される、
    懸濁液
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