JP7355513B2 - プロセスチーズ類の製造方法 - Google Patents

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本発明は、プロセスチーズ類の製造方法に関する。
プロセスチーズは、概略、ナチュラルチーズに溶融塩を添加し、加熱乳化した後、冷却する方法で製造される。近年、プロセスチーズの製品は多様化しており、差別化を図るために、特徴的な風味が強い製品が求められる。
ナチュラルチーズの中でも、例えばゴーダチーズやチェダーチーズ等の熟成チーズは特徴的な風味を有する。
特許文献1には、原料チーズとしてゴーダチーズとチェダーチーズを用いてプロセスチーズを製造した実施例が記載されている。
特開2011-182655号公報
熟成チーズは熟成期間が長い方が、乳由来のタンパク質、脂肪、炭水化物等の分解がより進み、その特徴的な風味が強くなる。
しかし、本発明者等の知見によれば、熟成期間が長い熟成チーズを用いると製造工程上の問題が生じうる。
本発明は、熟成チーズの風味が強いプロセスチーズ類を製造工程上の問題を生じさせずに製造できる方法を提供する。
本発明者等の検討によれば、熟成期間によっては熟成チーズ中でアミノ酸が結晶化しているため、原料が熟成チーズを含む場合は、結晶および異物を除去するためのフィルターを設けていた。しかしながら、アミノ酸結晶が多く取り除かれると、フィルターがアミノ酸結晶によって閉塞し、製造に支障が出るため工程管理上の問題が生じうる。そしてさらに検討を進めた結果、コロイドミルのような湿式粉砕機で熟成チーズ中のアミノ酸結晶を微細化できること、及び低粘度の流動物であればコロイドミルを通過できることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 熟成チーズを含む原料チーズと溶融塩とを含む加熱乳化物を、湿式粉砕機で微細化処理し、冷却してプロセスチーズ類を得る、プロセスチーズ類の製造方法。
[2] 前記熟成チーズが、下記半硬質の熟成チーズ(A)、下記硬質の熟成チーズ(B)及び下記特別硬質の熟成チーズ(C)からなる群から選ばれる1種以上である、[1]の製造方法。
半硬質の熟成チーズ(A):エダム(ソフトエダム)、ステッペン、サムソー、マリボー、エグモント。
硬質の熟成チーズ(B):エダム(ハードエダム)、ゴーダ、チェダー、エメンタール、グリュイエール。
特別硬質の熟成チーズ(C):パルメザン、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノ。
[3] 前記溶融塩が、少なくともモノリン酸塩及びポリリン酸塩を含む、[1]または[2]の製造方法。
[4] 前記加熱乳化物の総質量に対して、ジリン酸塩の含有量が0.55質量%以下である、[3]の製造方法。
本発明の製造方法によれば、熟成チーズの風味が強いプロセスチーズ類が得られる。
コロイドミルの例を示す断面図である。
本発明において、「プロセスチーズ類」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)で定めるプロセスチーズ、公正競争規約で定めるプロセスチーズ及びチーズフードのうちいずれかに該当するものを意味する。また、このほか、当業界において一般的にチーズ様食品と呼ばれるプロセスチーズ類似物をも包含するものとする。
本実施形態の製造方法は、熟成チーズを含む原料チーズと、溶融塩とを含む加熱乳化物を、湿式粉砕機で微細化処理し、冷却してプロセスチーズ類を得る方法である。
<原料チーズ>
原料チーズはナチュラルチーズの1種以上からなる。一般にプロセスチーズ類の原料として用いられるナチュラルチーズであれば、特に制限なく用いることができる。
原料チーズは少なくとも熟成チーズを含む。熟成チーズは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
原料チーズは、熟成チーズ以外のナチュラルチーズを1種以上含んでもよい。
FAO/WHO チーズ一般国際規格において、ナチュラルチーズは、脂肪を除く重量中の水分含量によって、軟質チーズ、半軟質チーズ、半硬質チーズ、硬質チーズ、特別硬質チーズに分類される。
本実施形態における熟成チーズとして、風味の点で半硬質の熟成チーズ、硬質の熟成チーズ、特別硬質の熟成チーズが好ましい。熟度チーズとなるまでの熟成期間はチーズの種類によって異なる。以下は具体例である。
半硬質の熟成チーズ(A):エダム(ソフトエダム)、ステッペン、サムソー、マリボー、エグモント。
硬質の熟成チーズ(B):エダム(ハードエダム)、ゴーダ、チェダー、エメンタール、グリュイエール。
特別硬質の熟成チーズ(C):パルメザン、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノ。
特に風味に優れる点で、熟成チーズが、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
本実施形態における熟成チーズとして、例えば、ゴーダチーズは熟成期間が4~144週、好ましくは26~144週のもの、チェダーチーズは24~96週のもの、パルミジャーノ・レッジャーノは72~144週のもの、ペコリーノ・ロマーノは20~48週のものが好ましい。
原料チーズの総質量に対して、前記(A)、(B)及び(C)からなる群に含まれる熟成チーズの合計の含有量は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は100質量%でもよいが、風味のバランスを調整しやすい点で25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
熟成チーズは、アミノ酸結晶を含んでもよい。アミノ酸結晶が多いほど強い風味が得られやすい。熟成期間が長いほどアミノ酸結晶の含有量は多くなる傾向がある。
例えば、原料チーズの総質量に対して、下記の方法で測定されるアミノ酸結晶の含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.50質量%以上がより好ましく、1.00質量%以上がさらに好ましく、1.50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されず現実的な範囲でよい。例えば3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.6質量%以下がさらに好ましい。
(アミノ酸結晶の含有量の測定方法)
原料チーズをお湯(60~90℃)に溶解した溶液を、セジメントディスクで濾過し、セジメントディスク上に残る固体の乾燥質量をアミノ酸結晶の質量として測定する。
セジメントディスクは、「ADVANTEC社製、品番5C φ125mm」又はこれと同等品を使用する。
原料チーズとして用いる、熟成チーズ以外のナチュラルチーズは、特に限定されない。例えばチェダー、ゴーダ等が挙げられる。これらのうち、風味の点で、チェダーが好ましい。
加熱乳化物の総質量に対して、原料チーズの合計は60~85質量%が好ましく、75~85質量%がより好ましく、80~83質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると風味の点で好ましく、上限値以下であると、原料チーズ以外の成分とのバランスの点で好ましい。
<溶融塩>
溶融塩は乳化剤として作用する。一般にプロセスチーズ類の製造に用いられる溶融塩を使用できる。例えば、モノリン酸塩、ジリン酸塩(ピロリン酸塩)、ポリリン酸塩、クエン酸塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。ナトリウム塩が好ましい。
溶融塩による乳化作用は、溶融塩の種類によって異なる。例えばリン酸塩類では、モノリン酸塩<ピロリン酸塩<ポリリン酸塩の順に乳化作用が強くなる。
溶融塩は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
モノリン酸塩としては、モノリン酸ナトリウムが好ましい。例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが挙げられる。
ジリン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウムが好ましい。
ポリリン酸塩としては、ポリリン酸ナトリウムが好ましい。
クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウムが好ましい。例えばクエン酸三ナトリウムが挙げられる。
加熱乳化物の総質量に対して、溶融塩の合計は1.0~3.0質量%が好ましく、2.0~3.0質量%がより好ましく、2.0~2.5質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、乳化性に優れる。
本実施形態において、溶融塩が、少なくともポリリン酸塩とモノリン酸塩を含むことが好ましい。比較的乳化作用の弱いモノリン酸塩と、pHの緩衝作用を有するポリリン酸塩を組み合わせて用いることにより、プロセスチーズ類の良好な食感が得られやすい。
加熱乳化物の総質量に対して、ポリリン酸塩の含有量は0.5~2.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましく、0.5~1.0質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、乳化性に優れる。
加熱乳化物の総質量に対して、モノリン酸塩の含有量は0.5~2.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましく、1.0~1.7質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、乳化性に優れる。
また、プロセスチーズ類の良好な食感が得られやすい点で、加熱乳化物の総質量に対して、ジリン酸塩の含有量は0.55質量%以下が好ましく、0.40質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましく、0.10質量%以下が特に好ましく、ゼロが最も好ましい。
<その他の成分>
加熱乳化物は、原料チーズ及び溶融塩以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでもよい。その他の成分は水溶性であり、その他の成分の水溶液(25℃)をセジメントディスクで濾過したときに、セジメントディスク上に固体は残らない。
その他の成分の例としては、プロセスチーズ類において公知の調味料、保存料、増粘安定剤(又はゲル化剤)、溶融塩以外の乳化剤、pH調整剤、香料等が挙げられる。
調味料の例としては、食塩、糖質類、香辛料等が挙げられる。
保存料の例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ナイシン等が挙げられる。
増粘安定剤(又はゲル化剤)の例としては、寒天、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、グアガム、キサンタンガム等が挙げられる。
溶融塩以外の乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセライド類等が挙げられる。
pH調整剤の例としては、重曹、乳酸等が挙げられる。
<プロセスチーズ類の製造方法>
まず、原料チーズ、溶融塩、必要に応じたその他の成分を含む全原料を、乳化機に投入して加熱乳化し、加熱乳化物を得る。必要に応じて水(添加水)も投入する。
原料チーズは予め粉砕して用いてもよい。全原料の一部又は全部を、乳化機に投入する前に予備混合してもよい。
加熱乳化は、原料を撹拌しながら加熱処理を行う工程であり、殺菌工程も兼ねる。加熱処理は、好ましくは直接又は間接蒸気を用いて行われる。
乳化機は、バッチ式でもよく、連続式でもよい。例えば、ケトル型、2軸スクリューをもつクッカー型、サーモシリンダー型等の乳化機を使用できる。
加熱乳化条件は、目的のプロセスチーズ類の性状により異なる。例えば以下の条件が好ましい。
加熱乳化時の温度は、75~95℃が好ましく、80~90℃がより好ましい。加熱乳化温度が上記の範囲内であると、適正な組織及び物性が得られやすい。
加熱乳化時の撹拌条件は、例えばカッタータイプの撹拌羽根を使用し、回転数120~1500rpmで撹拌することが好ましい。
乳化機から排出される加熱乳化物は、原料チーズ、溶融塩、必要に応じたその他の成分及び水を含み、流動性を有している。
次いで得られた加熱乳化物を、湿式粉砕機を用いて微細化処理し、微細化処理物を得る。
本明細書において、湿式粉砕機とは、液中に分散されている粒子を粉砕する装置である。一般には、スラリー(粉体粒子と液体とを混合・撹拌させた流動状の物質)に対して物理的な衝撃を与え、スラリー中の粒子を粉砕して分散させる装置になる。かかる湿式粉砕機としては、媒体撹拌型ミル(ボールミル、ビーズミル、アトライター等)、磨砕式粉砕機のような機械的粉砕機のほか、高圧湿式超微粒化装置のように圧力をかけて衝突粉砕する粉砕機を採用することができる。一般には機械的粉砕機が好ましく、コロイドミルがもっとも好ましい。
図1はコロイドミルの例を示す断面図である。本例のコロイドミルは、円錐状のロータ(回転部)1とロータ1の外側に隙間を介して設けられたステータ(固定部)2を備える。ロータ1の外周面とステータ2の内周面には、それぞれ、ロータ1の回転軸に対して斜め方向に延びる筋状の溝(図示略)が多数本、周方向に所定の間隔で形成されている。符号3は加熱乳化物の入口を示し、符号4は微細化処理物の出口を示す。
入口3から供給された加熱乳化物は、高速回転するロータ1と、固定されているステータ2との隙間を通る間に、せん断力、圧縮力及び衝撃力を受けて微細化され、排出口4から排出される。ロータ1とステータ2とでは、その円錐角度が僅かに異なり、両者の間の隙間は、上流から下流へ向かって漸次縮小し、該隙間の出口5で最も小さくなるように設計されている。ロータ1とステータ2との間の隙間の大きさは調整可能であり、隙間の出口5におけるロータ1とステータ2の距離を微細化ギャップという。
前記筋状の溝の形状は、特に限定されない。市販品ではクロスカットタイプや、ストレートタイプ等があり、いずれも使用できる。
微細化ギャップは、大きすぎると、アミノ酸結晶の微細化が不充分となり、微細化処理物をフィルターで濾過したときにアミノ酸結晶が除去されてしまう。小さすぎると、乳化が進み最終製品の物性へ影響を及ぼす。したがって、これらの不具合が生じないように設定することが好ましい。例えば0.15~0.40mmが好ましく、0.15~0.35mmがより好ましい。
また、コロイドミルに投入する加熱乳化物の温度(投入温度)が低すぎると、加熱乳化物の粘度が充分に低くならず微細化処理物が詰まりやすい。加熱乳化物の投入温度は70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。加熱乳化物の投入温度は、乳化機から排出された直後の加熱乳化物の温度を超えない範囲が好ましい。
コロイドミルのロータ1の回転数は、高すぎると乳化が進み最終製品の物性へ影響を及ぼし、低すぎるとアミノ酸結晶の微細化が不充分となる。したがって、これらの不具合が生じないように設定することが好ましい。例えば2000~5000rpmが好ましく、2000~3000rpmがより好ましい。
次いで、コロイドミルから排出される微細化処理物を、冷却してプロセスチーズ類を得る。プロセスチーズ類は、均質であり、水分以外の組成は微細化処理物と同じである。
プロセスチーズ類の性状は特に限定されず、流動性を有するペースト状(スプレッドチーズ等)であってもよく、固体状であってもよい。
目的の製品形態に応じて、微細化処理物を冷却する前又は冷却後に、成形及び包装を行ってもよい。
例えば、微細化処理物の温度が高い状態で、すなわち微細化処理物が流動性を有する状態で、容器や包装材料内に充填した後に冷却するホットパック法を用いてもよい。又は、微細化処理物の温度が高い状態で、シート状やロープ状等に成形し、冷却して固化させた後、所望の大きさにカットして、包装するコールドパック法を用いてもよい。
ホットパック法において、充填直前の微細化処理物の温度は60~90℃が好ましい。
ホットパック法で最終製品を製造する場合は、高温の微細化処理物との接触によって容器や包装材料が殺菌されるという利点を有する。
またホットパック法で中間製品を製造してもよい。例えばホットパック法でブロック状又はシート状の中間製品を製造し、得られた中間製品を切断加工し、得られた切断加工品を包装して最終製品としてもよい。切断加工品の形状は特に限定されないが、例えば、シュレッド状、ダイス状、棒状、スライス状、短冊状、粒状等が挙げられる。
また、微細化処理物を冷却固化した均質なプロセスチーズ類と、該プロセスチーズ類中に不均一に存在する副原料(具材)とを有する複合体の製品形態であってもよい。
副原料の例としては、肉類(例えば、サラミ等の食肉加工品)、魚介類(例えば水産加工品)、野菜、アーモンド等の植物の種子等の食品を粉砕した食品粉砕物;七味唐辛子や粉山葵等の粉末食品;明太子等のペースト状食品;ソースやシロップ等の液状食品が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロセスチーズ類中に副原料を存在させる場合は、コロイドミルから排出された微細化処理物に、副原料を添加する。
本実施形態の製造方法によれば、熟成チーズを含む原料チーズを用いて、熟成チーズの風味が強いプロセスチーズ類を製造できる。
仮に、コロイドミルのような湿式粉砕機を備えていない従来の設備において、原料チーズにアミノ酸結晶が含まれていると、加熱乳化物をフィルターで濾過して異物を除去する工程で、連続製造中にアミノ酸結晶が除去されてフィルターの詰まりが生じやすい。
これに対して、本実施形態の製造方法では、原料チーズがアミノ酸結晶を含んでいても、原料チーズを加熱乳化した後にコロイドミルを通す際にアミノ酸結晶は微細化されるため、微細化処理物をフィルターで濾過する工程におけるアミノ酸の含有量の低下を防止でき、フィルターの詰まりも防止できる。又は微細化処理物をフィルターで濾過する工程を省くこともできる。したがって、熟成チーズの風味が強いプロセスチーズ類を効率良く製造できる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
[原料チーズのアミノ酸結晶の含有量]
測定対象の原料チーズ30gを80℃のお湯で溶解して試料溶液を得た。試料溶液(70℃)の全量をセジメントディスク(ADVANTEC社製、品番5C φ125mm、乾燥質量0.9g)で濾過した。濾過条件は減圧濾過とした。濾過終了後のセジメントディスクの乾燥質量(W、単位:g)を測定し、下記式によりアミノ酸結晶の含有量(単位:質量%)を算出した。
アミノ酸結晶の含有量=(W-0.9)/30×100
<微細化評価方法>
[微細化処理物中のアミノ酸結晶の有無の評価]
コロイドミルから排出された微細化処理物が流れる配管中にフィルター(目開き0.42mm)を設置した。各例においてコロイドミルを連続運転し、2時間おきにフィルターの内部を肉眼で観察した。運転が終了するまでの2時間ごとのフィルター内部の観察の結果、フィルター内部にアミノ酸結晶が全く観察されなかった場合をAと評価し、少しでも観察された場合をBとした。
フィルターに残留するアミノ酸結晶の量(以下、アミノ酸結晶の残量という。)が少ないほど、フィルターつまりがなく工程が安定していることを意味する。
[食感]
各例で製造したスライスチーズを、よく訓練されたパネラー5名が試食し、食感について以下の基準で採点した。5名の合計点に基づき、下記の基準で評価した。
(採点基準)
4点:弾力があり特に良好。
3点:もろさが感じられず良好。
2点:ややもろい。
1点:もろい。
(評価基準)
A:合計点が15点以上。
B:合計点が10点以上15点未満。
C:合計点が5点以上10点未満。
D:合計点が5点未満。
<実施例1~9>
[原料チーズ]
原料チーズとして、ゴーダチーズ(熟成期間53週)12質量部と、熟成チーズではないナチュラルチーズ(チェダーチーズおよびゴーダチーズ)70質量部との混合物を用いた。原料チーズは予め粉砕したものを使用し、ブレンダーで混合した。原料チーズ(混合物)中のアミノ酸結晶の含有量を上記の方法で測定したところ、濾過終了後のミルクセジメントディスクの乾燥質量(W)は1.38gであり、アミノ酸結晶の含有量は1.6質量%であった。
[溶融塩]
以下の溶融塩を用いた。
モノリン酸塩:リン酸水素二ナトリウム。
ジリン酸塩:ピロリン酸ナトリウム。
ポリリン酸塩:ポリリン酸ナトリウム。
クエン酸塩:クエン酸三ナトリウム。
表1に示す配合で、原料チーズ(混合物)、溶融塩、その他の成分及び添加水を、カッタータイプの撹拌羽根を備えたバッチ式の乳化機(ステファン社製)に投入した。
次いで、回転数600rpmで撹拌しながら乳化機にスチームを吹き込み、88℃に達するように加熱して加熱乳化を行い、流動性を有する加熱乳化物を得た。
得られた加熱乳化物(投入温度75℃)を、コロイドミル(マウンテック社製品名:PUCコロイドミル、ロータとステータの形状:クロスカット(K)、微細化ギャップ0.35mm、ロータ回転数3000rpm)に投入して微細化処理し、微細化処理物を得た。
得られた微細化処理物(充填直前の温度65℃)を、充填機を用いて、200gずつポリエチレン製のフィルム上に吐出し、さらにフィルムで覆い、フィルム内で2mm厚さのシート状に伸ばしてシート状に成形した。これを温度-2℃の冷却室内で冷却して、目的のスライスチーズ(プロセスチーズ類)を得た。
表1に示す項目について上記の方法で評価した。結果を表1に示す。
Figure 0007355513000001
表1の結果に示されるように、実施例1~9において、原料チーズは、セジメントディスクを通過しないアミノ酸結晶を1.6質量%含んでいたが、微細化処理物は全量がフィルターを通過しており、フィルター内のアミノ酸結晶の残量はゼロであった。
実施例1~9を比較すると、ジリン酸塩の含有量が少ないほど食感が向上した。その理由としては、加熱乳化物をコロイドミルで微細化処理することによって乳化が促進される一方で、乳化作用が比較的強いジリン酸塩の使用量を抑えることによって、より良好な乳化状態が得られたと考えられる。
1 ロータ
2 ステータ
3 入口
4 排出口
5 隙間の出口

Claims (5)

  1. 熟成チーズを含む原料チーズと溶融塩とを含む加熱乳化物を、回転するロータと固定されたステータとの隙間の最小値が0.15~0.40mmであるコロイドミルで微細化処理し、冷却してプロセスチーズ類を得る、プロセスチーズ類の製造方法。
  2. 前記熟成チーズが、下記半硬質の熟成チーズ(A)、下記硬質の熟成チーズ(B)及び下記特別硬質の熟成チーズ(C)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
    半硬質の熟成チーズ(A):エダム(ソフトエダム)、ステッペン、サムソー、マリボー、エグモント。
    硬質の熟成チーズ(B):エダム(ハードエダム)、ゴーダ、チェダー、エメンタール、グリュイエール。
    特別硬質の熟成チーズ(C):パルメザン、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノ。
  3. 前記溶融塩が、少なくともモノリン酸塩及びポリリン酸塩を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記加熱乳化物の総質量に対して、ジリン酸塩の含有量が0.55質量%以下である、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記熟成チーズがアミノ酸結晶を含み、
    前記コロイドミルから排出された微細化処理物を、目開き0.42mmのフィルターに通したときに前記フィルターにアミノ酸結晶が残留しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
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