JP7353954B2 - マゼンタトナー - Google Patents

マゼンタトナー Download PDF

Info

Publication number
JP7353954B2
JP7353954B2 JP2019224181A JP2019224181A JP7353954B2 JP 7353954 B2 JP7353954 B2 JP 7353954B2 JP 2019224181 A JP2019224181 A JP 2019224181A JP 2019224181 A JP2019224181 A JP 2019224181A JP 7353954 B2 JP7353954 B2 JP 7353954B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymerizable monomer
polymer
monomer
group
carbon atoms
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019224181A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021092710A (ja
Inventor
敬 見目
茜 桝本
祐 吉田
崇 松井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2019224181A priority Critical patent/JP7353954B2/ja
Publication of JP2021092710A publication Critical patent/JP2021092710A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7353954B2 publication Critical patent/JP7353954B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Developing Agents For Electrophotography (AREA)

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット法の如き画像形成方法における静電荷潜像を現像するためのマゼンタトナーに関する。
近年、複合機やプリンターに於いては、省エネルギー化と高画質化を両立させることが要求されている。省エネルギー化を達成するためには、より低い温度で速やかに溶融することにより、素早く、かつ低エネルギーで定着させることができ、低温定着性に優れるトナーの実現が望まれている。
低温での定着を可能にするための手法としては、トナー中の結着樹脂のガラス転移点(Tg)を低下させることが挙げられる。しかしながら、Tgを低下させることは、トナーの耐熱保存性を低下させることにつながるため、この手法においては、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは困難であるとされている。
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させるために、トナーの結着樹脂に結晶性樹脂を用いることで低温定着性と耐熱保存性を両立させる技術が知られている。結晶性樹脂には、結晶性ポリエステルに代表される、主鎖が結晶化する主鎖結晶性樹脂と、長鎖アルキルアクリレート重合体に代表される、側鎖が結晶化する側鎖結晶性樹脂が知られている。中でも、側鎖結晶性樹脂は結晶化度を高めやすいために、優れた低温定着性を示すことが知られており、広く検討されている。
特許文献1や特許文献2には、炭素数が18以上の長鎖(以降、長鎖と略す)のアルキル基を有する重合性単量体と、非晶性の重合性単量体を共重合した側鎖結晶性樹脂をコアに使用したトナーが提案されている。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立が図られるとしている。
特開2014-130243号公報 WO2018/110593
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の長鎖のアルキル基を多く有する側鎖結晶性樹脂は、一般的に極性が低く、通常のマゼンタ顔料表面との親和性が低い。特に、定着画像上において顔料が偏在しやすく、着色力が低下することがわかった。
一方、着色力を補う手段としてマゼンタ染料を用いることもできるが、その場合、耐光性が悪化するという欠点がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものである。具体的には、低温定着性と耐熱保存性に優れ、かつ定着画像において彩度が高く、耐光性に優れたマゼンタトナーを提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、結着樹脂、顔料を含有するトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、
該結着樹脂が、第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを有する重合体Aを含有し、
該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、該重合体A中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該重合体A中の該第二のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下であり、
該第一のモノマーユニットのSP値をSP11(J/cm30.5とし、該第二のモノマーユニットのSP値をSP21(J/cm30.5としたとき、下記式(1)を満たし、
3.00≦(SP21-SP11)≦25.00 式(1)
該顔料は、アセトン濡れ性試験におけるアセトン濡れ性(W)が下記式(2)を満たし、該顔料のXRD測定において、3°<2θ<60°の範囲内の最大強度を有するピークにおいて算出される結晶子サイズDが下記式(3)を満たすことを特徴とする。
5.5≦W≦10.0 式(2)
1.0nm≦D≦7.0nm 式(3)
また、本発明は、結着樹脂、顔料を含有するトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、
該結着樹脂が、第一の重合性単量体、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体を含有する組成物の重合体である重合体Aを含有し、
該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、該組成物中の該第一の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下であり、
該第一の重合性単量体のSP値をSP12(J/cm30.5とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP22(J/cm30.5としたとき、下記式(4)を満たし、0.60≦(SP22-SP12)≦15.00 ・・・(4)
該顔料は、アセトン濡れ性試験におけるアセトン濡れ性(W)が下記式(2)を満たし、該顔料のXRD測定において、3°<2θ<60°の範囲内の最大強度を有するピークにおいて算出される結晶子サイズDが下記式(3)を満たすことを特徴とする。
5.5≦W≦10.0 式(2)
1.0nm≦D≦7.0nm 式(3)
本発明によれば、低温定着性と耐熱保存性に優れ、かつ定着画像において彩度が高く、耐光性に優れたマゼンタトナーを提供できる。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
本発明において、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
本発明により、低温定着性と耐熱保存性に優れ、かつ定着画像において彩度が高く、耐光性に優れたマゼンタトナーが得られる。本発明の効果を発現するメカニズムについて、以下のように推察している。
一般に、定着画像において、結着樹脂中に顔料が均一に高分散して存在することで彩度は良化する。しかしながら、長鎖のアルキル基を多く有する側鎖結晶性樹脂は、一般的に極性が低く、通常のマゼンタ顔料表面との親和性が低い。特に、定着画像上において顔料が偏在しやすく、着色力が低下することがわかった。一方、着色力を補う手段としてマゼンタ染料を用いることもできるが、その場合、耐光性が悪化するという欠点がある。
定着画像上において、定着画像上で顔料が偏在するメカニズムとして、
(1)極性が低い長鎖のアルキル基部位と通常のマゼンタ顔料表面との馴染みが悪いため、結着樹脂内に顔料が取り込めず、結果として顔料が排斥されやすくなった。
(2)通常のマゼンタ顔料の結晶子サイズが大きいため、結着樹脂内に顔料が取り込めず、結果として顔料が排斥されやすくなった。
が考えられ、これにより、結着樹脂中にマゼンタ顔料が凝集した状態で存在することにより、彩度が低下したと推察した。
そこで、本発明者らは、長鎖のアルキル基を多く有する側鎖結晶性樹脂中において、
(1)マゼンタ顔料を結着樹脂中に均一に分散させること
(2)彩度と耐光性を両立させること
について鋭意検討したところ、マゼンタ顔料の顔料表面と結着樹脂の結晶性を示すための構成材料となる第一のモノマーユニットとの親和性を高め、且つ定着時における顔料同士の凝集を抑え、且つ結着樹脂中に顔料が取り込めるようにするために、マゼンタ顔料の結晶子サイズDを1.0nm≦D≦7.0nmの範囲に制御することによって、定着画像上での彩度が高く、耐光性に優れたマゼンタトナーが得られることを見出した。
本発明において、マゼンタ顔料表面の親和性を表す指標として、顔料のアセトンに対する濡れ性を用いる。これは、第一のモノマーユニットのSP値:SP12(J/cm30.5が、18.5前後であり、アセトンのSP値:18.55(J/cm30.5と近いため、本発明のような長鎖のアルキル基を有する側鎖結晶性樹脂とマゼンタ顔料の顔料表面の親和性を表すのに好適である。
本発明において、顔料のアセトンに対する濡れ性を5.5≦W≦10.0とすることが必要である。
一方、長鎖のアルキル基を多く有する側鎖結晶性樹脂を含む結着樹脂中で、マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性とともに、マゼンタ顔料の結晶子サイズDを1.0nm≦D≦7.0nmとすることが必要である。
高い結晶性を持つ結晶性樹脂は屈折率が高く、紫外光領域の吸収が強くなる。本発明のように、マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性と、マゼンタ顔料の結晶子サイズを制御することにより、長鎖のアルキル基を有する側鎖結晶性樹脂中において、顔料同士の凝集を抑えることができる。また、太陽光などの紫外光を含んだ光が照射された場合でも、顔料表面近傍に高屈折率の結晶性樹脂が存在することで紫外光を吸収し、定着画像中のマゼンタ顔料を保護し、耐光性を高めることができたと推察している。
一方、マゼンタ顔料の結晶子サイズが1.0nm未満の場合、顔料同士の再凝集が起こりやすくなり、顔料分散性が悪化するとともに、耐光性が悪化する。一方、7.0nmを超えると結着樹脂中に顔料が取り込めず、顔料が排斥され、彩度が悪化する。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、後述する結着樹脂を含有するトナー粒子を有するマゼンタトナーにおいて、着色剤として下記を満足するマゼンタ顔料を含有する。
マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性試験におけるアセトン濡れ性(W)が、
5.5≦W≦10.0 式(2)
を満たし、且つマゼンタ顔料のXRD測定において、3°<2θ<60°の範囲内の最大強度を有するピークにおいて算出される結晶子サイズDが、
1.0nm≦D≦7.0nm 式(3)
を満足する。
上記を制御する方法としては公知の手法を用いることができるが、マゼンタ顔料製造時において
マゼンタ顔料の結晶成長を制御するために、顔料合成時の反応速度や混晶により、マゼンタ顔料の結晶子サイズを制御すること
マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性を制御するために、マゼンタ顔料粒子製造後において、溶媒加熱処理等による顔料表面処理を行うこと
の(1)、(2)の工程を経る方法等を挙げることができる。
なお、本発明に用いることができるマゼンタ顔料は、マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性(W)とマゼンタ顔料の結晶子サイズDを本件範囲内に満足すれば、キナクリドン系マゼンタ顔料、チオインジゴ系マゼンタ顔料、キサンテン系マゼンタ顔料、ペリレン系マゼンタ顔料、モノアゾ系マゼンタ顔料何れも選択できる。中でも、本発明に用いられるマゼンタ顔料は、モノアゾ系マゼンタ顔料が好ましい。
具体的には、下記式(C)で示されるモノアゾ系マゼンタ顔料を用い、アゾカップリン反応における反応温度や混晶とすることで制御し、且つマゼンタ顔料を溶媒加熱処理により顔料表面処理を行うことが好適な手段としてあげることができる。
Figure 0007353954000001
(式中、R21は、メチル基、または炭素数3以上8以下のアルキル基の何れかを示す。
22は、水素、または炭素数1以上4以下のアルキル基の何れかを示す。
23は、炭素数1以上4以下のアルキル基または炭素数1以上4以下のアルコキシ基の何れかを示す。
24は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、シアノ基、ニトロ基の何れかを示す。)
上記モノアゾ系マゼンタ顔料の製造方法として、下記式(E)のアミン化合物を酸性媒体中でジアゾ化することでジアゾニウム化合物とした後、得られたジアゾニウム化合物と下記式(F)とアゾカップリング反応を行うことにより製造することができる。
先ず、アゾカップリング反応による製造方法について説明する。製造方法としては公知の方法を利用できる。例えば、下記に示す方法が挙げられる。
先ず、メタノール等の溶剤、又は水中、式(E)のアミン化合物を塩酸、又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム化合物を製造する。更に、このジアゾニウム化合物と式(F)のカップリング化合物とカップリングさせて、式(C)の化合物を製造することができる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,及びN-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、及びプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、式(C)の化合物に対し5.0倍量以上-50.0倍量以下の範囲が好ましい。
アゾカップリン反応は、通常-5℃~30℃の温度範囲で行われる、通常24時間以内に完結する。
Figure 0007353954000002
(式中、R11は、メチル基、または炭素数3以上8以下のアルキル基の何れかを示す。R12は、水素、または炭素数1以上4以下のアルキル基の何れかを示す。R13は、炭素数1以上4以下のアルキル基または炭素数1以上4以下のアルコキシ基の何れかを示す。)
Figure 0007353954000003
(式中、R14は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、シアノ基、ニトロ基の何れかを示す。)
本発明において、用いることができるモノアゾ系マゼンタ顔料としては式(C1)及び式(C2)の混合物(混晶)であることが好ましい。
Figure 0007353954000004
この場合、ジアゾ化に用いるアミン化合物は、
Figure 0007353954000005
を用い、アゾカップリング反応に用いるカップリング化合物は、
Figure 0007353954000006
の混合物を用いることにより製造することができる。
式(C1)で示される化合物と式(C2)で示される化合物の質量比を質量比(C1/C2)としたとき、質量比(C1/C2)が、95/5≦(C1/C2)≦5/95の範囲を満たすことが好ましい。
上記の式(C1)及び式(C2)の混合物(混晶)とすることで、顔料のアセトンに対する濡れ性(W)と結晶子サイズDの制御がより容易となる。
上記のようなモノアゾ系マゼンタ顔料を用い、結晶子サイズDを制御する方法として、アゾカップリン反応における反応温度や混晶とすることで制御することができる。結晶子サイズを反応温度により制御する場合には、-5℃~30℃の温度範囲で行われる。マゼンタ顔料の結晶子サイズDを小さくする場合には、結晶成長を抑制するために、反応温度を下げることが好ましい。一方、顔料の結晶子サイズDを大きくする場合には、結晶成長促進するために、反応温度を上げることが好ましい。
結晶子サイズを混晶により制御する場合には、アゾカップリング反応に用いるカップリング化合物は、式(F1)及び式(F2)を用い、製造されたマゼンタ顔料の質量比が、(95/5)≦(C1/C2)である場合、結晶子サイズを大きくすることができ、耐光性が向上し易い。(C1/C2)<(50/50)である場合、結晶子サイズを小さくすることができ、彩度が向上し易い。(95/5)>(C1/C2)である場合、上記範囲に比べて結晶子サイズの制御がし難い傾向がある。式(C1)、式(C2)のより好ましい比率としては(80/20)≦(C1/C2)≦(60/40)、もしくは(40/60)≦(C1/C2)≦(20/80)である。
マゼンタ顔料のアセトンに対する濡れ性(W)を5.5≦W≦10.0に制御する方法として、マゼンタ顔料粒子を溶媒加熱処理により顔料表面処理を行うことが有効である。これにより、マゼンタ顔料表面を所望の濡れ性にすることができる。本発明において、溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、アセトン、MIBKなどケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサンやヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒を用いることができる。溶媒加熱処理における加熱温度は、30℃~60℃が好ましい。また、処理時間は、30分~24時間が好ましい。
本発明のような長鎖のアルキル基を多く有する側鎖結晶性樹脂において、上記のマゼンタ顔料を用いることで彩度を高く維持することができる。
また、式(C)で示されるモノアゾ系マゼンタ顔料は、本発明のような長鎖のアルキル基を有する側鎖結晶性樹脂と馴染みが良い。連続使用におけるマゼンタ顔料と結着樹脂との界面での割れ欠けが抑制され、トナーの耐久性が良好な結果が得られる。
本発明において、前述のマゼンタ顔料の含有量は、好ましくは結着樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部以上15.0質量部以下である。
本発明は、結着樹脂が重合体Aを含有する。重合体Aは、第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを有する。該第一の重合性単量体は、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つである。該第一のモノマーユニットを有することで、重合体Aは結晶性を示す樹脂となる。
重合体Aは、第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、及び、該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを有し、該第一のモノマーユニットのSP値をSP11(J/cm30.5とし、該第二のモノマーユニットのSP値をSP21(J/cm30.5としたとき、下記式(1)を満足する。
3.00≦(SP21-SP11)≦25.00 (1)
また、重合体Aは、該第一の重合性単量体のSP値をSP12(J/cm30.5とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP22(J/cm30.5としたとき、下記式(4)を満足する。
0.60≦(SP22-SP12)≦15.00 (4)
本発明におけるSP値の単位は、(J/cm30.5であるが、1(cal/cm30.5=2.045(J/cm30.5によって(cal/cm30.5の単位に換算することができる。
上記式(1)又は式(4)を満足することで、重合体Aの結晶性が低下することなく、融点が維持される。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立が図られる。このメカニズムについて、以下のように推察している。
該第一のモノマーユニットは、重合体に組み込まれ、該第一のモノマーユニット同士が集合することで結晶性を発現するが、通常の場合、他のモノマーユニットが組み込まれていると結晶化を阻害するため、重合体として結晶性を発現しにくくなる。この傾向は、重合体の一分子内にて該第一のモノマーユニットと該他のモノマーユニットがランダムに結合されていると顕著になる。
一方、本発明においては、SP22-SP12が上記式(4)の範囲となる重合性単量体を使用することで、重合時に該第一の重合性単量体と該第二の重合性単量体がランダムに結合するのではなく、ある程度連続して結合できると考えられる。それにより、該重合体Aは、該第一のモノマーユニット同士が集合できるようになり、他のモノマーユニットが組み込まれていても結晶性を高めることが可能となることで、融点も維持できると考えられる。すなわち、重合体Aは第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニットを含む結晶性部位を有することが好ましい。また、重合体Aは、第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを含む非晶性部位を有することが好ましい。
また、SP21-SP11が上記式(1)の範囲にあることで、重合体Aにおいて該第一のモノマーユニットと該第二のモノマーユニットが相溶することなく明確な相分離状態を形成しうると考えられ、結晶性を低下させることなく、融点が維持されると考えられる。
SP22-SP12が0.60よりも小さいと、重合体Aの融点が低下し、耐熱保存性が低下する。また、15.00よりも大きいと、該重合体Aの共重合性が劣ると考えられ、不均一化が生じ、低温定着性が低下する。SP22-SP12の下限は、2.00以上であることが好ましく、3.00以上であることがより好ましい。また上限は、10.00以下であることが好ましく、7.00以下であることがより好ましい。
同様に、SP21-SP11が3.00よりも小さいと、該重合体Aの融点が低下し、耐熱保存性が低下する。また、25.00よりも大きいと、該重合体Aの共重合性が劣ると考えられ、不均一化が生じ、低温定着性が低下する。SP21-SP11の下限は、4.00以上であることが好ましく、5.00以上であることがより好ましい。また上限は、20.00以下であることが好ましく、15.00以下であることがより好ましい。
なお、本発明において重合体A中に上記第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニットが複数種類存在する場合、式(1)におけるSP11の値はそれぞれのモノマーユニットのSP値を加重平均した値とする。例えば、SP値がSP111のモノマーユニットAを第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準としてAモル%含み、SP値がSP112のモノマーユニットBを第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準として(100-A)モル%含む場合のSP値(SP11)は、
SP11=(SP111×A+SP112×(100-A))/100
である。第一のモノマーユニットの要件を満たすモノマーユニットが3以上含まれる場合も同様に計算する。一方、SP12も同様に、それぞれの第一の重合性単量体のモル比率で算出した平均値を表す。
一方、第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットは、上記方法で算出したSP11に対して式(1)を満たすSP21を有するモノマーユニット全てが該当する。同様に、第二の重合性単量体は、上記方法で算出したSP12に対して式(4)を満たすSP22を有する重合性単量体全てが該当する。
すなわち、該第二の重合性単量体が2種類以上の重合性単量体である場合、SP21はそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SP21-SP11はそれぞれの第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットに対して決定される。同様に、SP22はそれぞれの重合性単量体のSP値を表し、SP22-SP12はそれぞれの第二の重合性単量体に対して決定される。
重合体A中の第一のモノマーユニットの含有割合は、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、重合体A中の該第二のモノマーユニットの含有割合が、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下である。
また、重合体Aは、第一の重合性単量体、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体を含有する組成物の重合体である。該組成物中の該第一の重合性単量体の含有割合は、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、10.0モル%以上60.0モル%以下であり、該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下である。
重合体A中の第一のモノマーユニットの含有割合、及び該組成物中の第一の重合性単量体の含有割合が上記範囲であることで、重合体Aのシャープメルト性が発揮され、低温定着性にすぐれたトナーとなる。該含有割合が5.0モル%よりも小さいと、重合体Aの結晶量が少なくなり、シャープメルト性が低下する。それにより、低温定着性が低下する。一方、該含有割合が60.0モル%よりも大きいと、室温付近での弾性が低下し、トナーの耐久性が低下する。
重合体A中の第一のモノマーユニットの含有割合、及び該組成物中の第一の重合性単量体の含有割合は、好ましくは20.0モル%以上40.0モル%以下である。
なお、重合体Aが、2種以上の炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを有する場合、第一のモノマーユニットの含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。また、重合体Aに用いる組成物が2種以上の炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む場合も同様に、第一の重合性単量体の含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。
重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合、及び該組成物中の第二の重合性単量体の含有割合が上記範囲であることで、重合体Aの室温付近での弾性が向上し、耐久性に優れたトナーとなる。加えて、重合体Aにおいて該第一のモノマーユニットの結晶化を阻害しないため、融点維持も可能となる。
該含有割合が20.0モル%よりも小さいと、重合体Aの弾性が低下し、トナーの耐久性が低下する。また、該含有割合が90.0モル%よりも大きいと、重合体Aのシャープメルト性が低下し、低温定着性が低下する。重合体A中の第二のモノマーユニットの含有割合、及び該組成物中の第二の重合性単量体の含有割合の好ましい範囲は、重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、40.0モル%以上90.0モル%以下である。
重合体Aにおいて、式(1)を満足する第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットが2種類以上存在する場合、第二のモノマーユニットの割合は、それらの合計のモル比率を表す。また、重合体Aに用いる組成物が2種以上の第二の重合性単量体を含む場合も同様に、第二の重合性単量体の含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。
第一の重合性単量体は、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つである。
炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18以上36以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサ、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタ等]及び炭素数18以上36以下の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらの内、トナーの保存安定性の観点から好ましくは炭素数18以上36以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、より好ましいのは炭素数18以上30以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、さらに好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一つである。
第一の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第二の重合性単量体としては、例えば以下に挙げる重合性単量体のうち、式(1)、又は式(4)を満たす重合性単量体が挙げられる。
第二の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等。
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1以上30以下のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体。
ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上22以下のアルコール(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1以上30以下のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた単量体、及び
炭素数1以上26以下のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のイソシアネート[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた単量体等。
ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3以上22以下のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t―ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2以上30以下のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等。
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
中でも、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、又はウレア基を有する単量体を使用することが好ましい。より好ましくは、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、及びウレア基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体である。これらを有することで、重合体Aの融点が高くなりやすく、耐熱保存性が向上しやすい。また室温付近の弾性が高まり、耐久性が向上しやすくなる。
第二の重合性単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルといったビニルエステル類も好ましく用いられる。ビニルエステル類は、非共役モノマーであり、第一の重合性単量体との反応性が低い。その結果、重合体Aにおいて第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットが集合して結合している状態を形成させやすくなると考えられ、重合体Aの結晶性が高まり、低温定着性と耐熱保存性をより両立させやすくなる。
また、第二の重合性単量体が、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
Figure 0007353954000007
(式中、Xは単結合又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を示す。
1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基))、
ヒドロキシ基、
-COOR11(R11は炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のヒドロキシアルキル基)、
ウレタン基(-NHCOOR12(R12は炭素数1以上4以下のアルキル基))、
ウレア基(-NH-C(=O)-NH(R132(R13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基))、
-COO(CH22NHCOOR14(R14は炭素数1以上4以下のアルキル基)、又は
-COO(CH22-NH-C(=O)-NH(R152(R15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下(好ましくは1以上4以下)のアルキル基)
であり、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。)
重合体Aは、ビニル重合体であることが好ましい。ビニル重合体は、例えば、エチレン性不飽和結合を含むモノマーの重合体が挙げられる。エチレン性不飽和結合とは、ラジカル重合することが可能な炭素-炭素二重結合を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
重合体Aには、上述した該第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、該第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットのモル比率を損ねない範囲で、上記式(1)又は式(4)の範囲に含まれない第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットが含まれていてもよい。
第三の重合性単量体としては、上記第二の重合性単量体として例示した単量体のうち、上記式(1)又は式(4)を満たさない単量体を用いることができる。
また、以下の単量体も用いることが可能である。例えば、スチレン、o-メチルスチレン等のスチレン及びその誘導体、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル類。なお、これらの単量体が上記式(1)又は式(4)を満たす場合には、第二の重合性単量体として用いることができる。
結晶性の指標としては吸熱ピークの吸熱量を用いることができる。低温定着性の観点から、トナーを示差走査熱量計で測定した際の、重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量が、20(J/g)以上100(J/g)以下であることが好ましい。上記吸熱量は、30(J/g)以上80(J/g)以下であることがより好ましい。上記吸熱量は、第一のモノマーユニット又は第一の重合性単量体の添加量により制御することができる。
トナーの結晶性維持の観点から、重合体Aの酸価は、30.0mgKOH/g以下であることが好ましく、20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が30.0mgKOH/g以下であると、重合体Aの結晶化を阻害しにくく、融点を適切に制御しやすい。該酸価の下限は特に制限されないが、好ましくは0mgKOH/g以上である。
また、重合体Aは、GPCにより測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量(Mw)が、10,000以上200,000以下であることが好ましく、20,000以上150,000以下であることがより好ましい。Mwが上記範囲内であることで、室温付近での弾性が維持しやすくなる。
また、低温定着性と耐熱保存性の両立の観点から、重合体Aの融点は、50℃以上80℃以下であることが好ましく、53℃以上70℃以下であることがより好ましい。重合体Aの融点が50℃以上であると耐熱保存性が良好になり、80℃以下であると低温定着性が良好になる。重合体Aの融点は、使用する第一の重合性単量体の種類や量、第二の重合性単量体の種類や量などによって調整可能である。
結着樹脂中の重合体Aの含有量が、50.0質量%以上であることが好ましい。50.0質量%以上であることで、トナーのシャープメルト性が維持されやすく、低温定着性が向上する。より好ましくは80.0質量%以上100質量%以下であり、該結着樹脂が該重合体Aであることがさらに好ましい。
結着樹脂として重合体A以外に使用可能な樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、電子写真特性の観点から、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
ビニル系樹脂に使用可能な重合性単量体は、上述した第一の重合性単量体、第二の重合性単量体、第三の重合性単量体に使用可能な重合性単量体等が挙げられる。必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの反応により得ることができる。
多価カルボン酸としては例えば以下の化合物が挙げられる。琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール及び1,3-プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。さらに、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも使用することができる。
ポリエステル樹脂の製造方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
次に、ポリウレタン樹脂について述べる。ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する物質との反応物であり、ジオール及びジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。
ジイソシアネート成分としては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物。
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらの中でも好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものは、XDI、IPDI及びHDIである。
また、ジイソシアネート成分に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ポリウレタン樹脂に用いることのできるジオール成分としては、前述した該ポリエステル樹脂に用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
<重合開始剤>
重合体Aを得るための重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。
具体的には以下のものが挙げられる。過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等に代表される過酸化物系重合開始剤;
2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等に代表されるアゾ系またはジアゾ系重合開始剤が挙げられる。
<荷電制御剤>
トナーは荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、特段の制限なく従来公知の荷電制御剤を用いることができる。具体的には、負帯電制御剤として以下の、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物又は上記芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体若しくは共重合体;
スルホン酸基、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;
アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;
ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。
また、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。
なお、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体、あるいは結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体等を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
<ワックス>
トナー粒子はワックスを含有してもよい。ワックスは、例えば以下のものが挙げられる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル等の1価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
セバシン酸ジベヘニル等の2価カルボン酸とモノアルコールのエステル類;
エチレングリコールジステアレート、ヘキサンジオールジベヘネート等の2価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
グリセリントリベヘネート等の3価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート等の4価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート等の6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ポリグリセリンベヘネート等の多官能アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステルワックス類;
ワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して5.0質量部以上25.0質量部以下であることが好ましい。
<外部外添剤>
トナーは、外部添加剤を含有してもよい。外部添加剤としては特段の制限なく従来公知の外部添加剤を用いることができる。具体的には、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子、フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子等の樹脂微粒子等が挙げられる。
外部添加剤を含有する場合の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
続いて、トナーの製造方法について詳細に述べる。
トナー粒子は、本件構成の範囲内であれば、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、粉砕法といった、従来公知のいずれの方法において製造されてもよいが、懸濁重合法によって製造されることが好ましい。
例えば、重合体Aを含む結着樹脂を生成する重合性単量体、離型剤及び必要に応じて着色剤などその他の添加剤を混合して重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を連続相(例えば、水系媒体(必要に応じて、分散安定剤を含有させてもよい。))中に加える。そして、連続相中(水系媒体中)で重合性単量体組成物の粒子を形成し、該粒子に含有される重合性単量体を重合させる。こうすることによって、トナー粒子を得ることができる。
トナー及びトナー材料の各種物性についての算出方法及び測定方法について以下に記す。
<重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定方法>
重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合の測定は、1H-NMRにより以下の条件にて行う。
・測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
・測定周波数:400MHz
・パルス条件:5.0μs
・周波数範囲:10500Hz
・積算回数 :64回
・測定温度 :30℃
・試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られた1H-NMRチャートより、第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。
同様に、第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
さらに、第三の重合性単量体を使用している場合は、第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークから、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合は、上記積分値S1、S2及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
第一の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
同様に、第二の重合性単量体、第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの割合は以下のように求める。
第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
第三の重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
なお、重合体Aにおいて、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、1H-NMRにて同様にして算出する。
また、トナーが懸濁重合法によって製造される場合、離型剤やその他の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、重合体A中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合が算出できない場合が生じる。その場合、離型剤やその他の樹脂を使用しないで同様の懸濁重合を行うことで、重合体A’を製造し、重合体A’を重合体Aとみなして分析することができる。
<SP値の算出方法>
SP12、SP22及びSPwは、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。
それぞれの重合性単量体について、分子構造中の原子又は原子団に対して、「polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm3/mol)を求め、(4.184×ΣΔei/ΣΔvi)0.5をSP値(J/cm30.5とする。
なお、SP11、SP21は、該重合性単量体の二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造の原子又は原子団に対して、上記と同様の算出方法によって算出する。
SP3は、該重合体Aを構成する重合性単量体に由来するモノマーユニットの蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)をモノマーユニット毎に求め、各モノマーユニットの該重合体Aにおけるモル比(j)との積をそれぞれ算出し、各モノマーユニットの蒸発エネルギーの総和をモル体積の総和で割ることによって求め、下記式(4)より算出する。
SP3={4.184×(Σj×ΣΔei)/(Σj×ΣΔvi)}0.5 (4)
<重合体AのMwの測定方法>
重合体AのTHF可溶分の分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
・カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0ml/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<トナーの吸熱ピークの吸熱量の測定方法>
トナーの重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
一回目の昇温過程における重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量をトナーの吸熱ピークの吸熱量とする。また、重合体Aとワックスとを有するトナーにおいて、重合体Aの融解に由来する吸熱ピークとワックスの融解に由来する吸熱ピークとが重なって観察される場合には、別途ワックスについて上記測定を行い、ワックスの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量を決定する。そして、重なって観察された吸熱ピークの吸熱量から、ワックスの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量を減じた値を、重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量とする。
<重合体A及びワックスの融点の測定方法>
本発明における重合体A及びワックスの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
1回目の昇温過程における最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。
<トナー粒子からの顔料の単離方法>
本件顔料の結晶子サイズおよびアセトン濡れ性の測定においては、以下の方法でトナーから顔料を単離し、測定することができる。
THF 500gが入った1Lビーカー中にトナー50gを投入し、マグネチックスターラーを用いて100rpmの回転数で24時間撹拌した。前記分散液を24時間静置し、不溶分が沈降させた。次に顔料分散体を含んだTHF可溶分(上澄み)をデカンテーションによって回収した。回収した上澄み液を遠心分離に掛け、沈降した顔料を回収した。回収した顔料を蒸留水で3回水洗し、乾燥後、乳鉢で凝集した粗大粒子を砕いた。測定に要する顔料量に満たない場合は、前記操作を繰り返し行った。
<顔料のアセトン濡れ性>
顔料のアセトン濡れ性Wは粉体濡れ性試験機を用いて以下のような方法で測定を行った。顔料は、前述した方法によってトナーより単離し、下記装置および測定条件で測定を行った。
測定装置:WET101P(株式会社レスカ製)
顔料50mgを量り取り、蒸留水70.0mlを入れた200mlトールビーカーの上に静かに浮かべた。スターラーで上記液を撹拌しながら、アセトンを0.5ml/minの速度で水相に供給し、半導体レーザーによって透過率を測定した。測定において得られた透過率が50%となった時の水-アセトン混合溶媒中におけるアセトンの体積分率をWとした。なお、前記顔料のアセトン濡れ性は、波長780nmの光の透過率を測定したものである。
<顔料の結晶子サイズ測定>
顔料の結晶子サイズは、X線回折(XRD)を用いて、以下のような方法で測定した。顔料は、前述した方法によってトナーより単離し、下記装置および測定条件で測定を行った。
測定装置:RINT-TTR II(リガク社製)
管球:Cu
開始角度:3°
終了角度:60°
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:4.00°/min
電圧:50kV
電流:300mA
平行ビーム光学系
発散スリット:開放
発散縦スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
上記測定条件により得られたスペクトルは以下のようにして波形処理を行い、計算スペクトルを算出した。
得られたスペクトルに対し、マニュアルでバックグラウンド処理を行った。その後、分割型疑Voigt関数でフィッティングを行い、元のスペクトルとのピーク形状との乖離があれば、手動で計算スペクトルの調整を行った。
上記操作にて得られた計算スペクトルのブラッグ角が3°から60°(3°<2θ<60°)の範囲内におけるピークの結晶子サイズの中で、最小の値を結晶子サイズDとした。
<酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明における酸価は、JIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
0.1モル/L水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学(株)製)を用いて滴定を行う。前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクターは、電位差滴定装置(京都電子工業(株)製 電位差滴定測定装置AT-510)を用いて求めることができる。0.100モル/L塩酸100mLを250mLトールビーカーに取り、前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液の量から求める。前記0.100モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
下記に酸価測定の際の測定条件を示す。
滴定装置:電位差滴定装置AT-510(京都電子工業(株)製)
電極:複合ガラス電極ダブルジャンクション型(京都電子工業(株)製)
滴定装置用制御ソフトウエア:AT-WIN
滴定解析ソフト:Tview
滴定時における滴定パラメーター並びに制御パラメーターは下記のように行う。
滴定パラメーター
滴定モード:ブランク滴定
滴定様式:全量滴定
最大滴定量:20mL
滴定前の待ち時間:30秒
滴定方向:自動
制御パラメーラー
終点判断電位:30dE
終点判断電位値:50dE/dmL
終点検出判断:設定しない
制御速度モード:標準
ゲイン:1
データ採取電位:4mV
データ採取滴定量:0.1mL
本試験;
測定サンプル0.100gを250mLのトールビーカーに精秤し、トルエン/エタノール(3:1)の混合溶液150mLを加え、1時間かけて溶解する。前記電位差滴定装置を用い、前記水酸化カリウムエチルアルコール溶液を用いて滴定する。
空試験;
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(3:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.611]/S
(式中、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウムエチルアルコール溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。)
<樹脂分散液の個数平均粒径D1の測定>
動的光散乱式マイクロトラック粒度分布測定装置[UPA-150](日機装(株))を用い、樹脂分散液の粒度分布を算出する。測定に用いる水系媒体と測定セル温度が同じになるように、セルの温調を行ないながら測定を行う。粒径測定は、温度25℃で行う。
(1)セル内部にRO水:3.0gを入れた後、Back ground checkを行う。サンプルローディングが、0.0010以下になるのを確認する。
(2)セル内部にRO水:3.0gを入れた後、Set Zeroを行う。Set Z
eroの条件は、時間:60秒で行う。
(3)以下の条件を入力する。
測定時間:30s、測定回数:2回
粒子条件:透過性、屈折率:1.62、形状:非球形、密度:3.17
溶媒条件:WATERを選択
屈折率:1.333
高温時粘度:0.797(30℃)、低温時粘度:1.002(20℃)
表示設定:標準を選択
分布表示:体積を選択
(4)測定セルに乳化粒子を含有する水系媒体:3.0gを入れ、測定を開始する。
(5)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、個数平均粒径(D1)を算出する。
<トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)を用いることができる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトで「グラフ/体積%」と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。また、前記専用ソフトで「グラフ/個数%」と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。実施例及び比較例中の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<マゼンタ顔料1の製造例>
(ジアゾ化合物含有溶液の調製)
Figure 0007353954000008
アミン化合物(E1)90g(0.500mol)を蒸留水1000mLに分散させ、溶液を20℃にて撹拌させた。これを4℃にした後、12Nの塩酸(キシダ化学(株)製)を140mL滴下し、塩酸塩を得た。これに亜硝酸ナトリウム水溶液(日産化学(株)製)を90g加え、15℃で20分撹拌し、ジアゾ化合物含有溶液を得た。
(カップリング反応水溶液の調製)
Figure 0007353954000009
別途、カップリング化合物(F1)97g(0.350mol)、カップリング化合物(F2)47g(0.150mol)を蒸留水1000mLに分散させ、95℃に加熱した後、33%の水酸化ナトリウム水溶液 165gを加えて、95℃で2分間撹拌した。その後、70℃に保持し、カップリング反応水溶液を得た。
(アゾカップリング反応によるマゼンタ顔料の製造)
ジアゾ化合物含有溶液に、19gの酢酸ナトリウムを加えて、pHを4.5にして、10℃に冷却した。その後、カップリング反応水溶液を1時間かけて滴下し、反応液が10℃以上に上がらないように冷却しながら反応させた。その際に、pHが4.9に維持されるように、12Nの塩酸(キシダ化学(株)製)を随時添加した。その後、20℃で4時間反応させた。その後、固形分をろ過、水洗した後、乾燥させて式(C1)と式(C2)を70:30で含有する未処理のマゼンタ顔料1を得た。
(溶媒加熱処理によるマゼンタ顔料表面特性調整)
・アセトン 1000部
・マゼンタ顔料1 100部
上記材料を撹拌・混合し、マゼンタ顔料1をアセトンに懸濁させた。液温を60℃に昇温した後、温度を保ったまま1時間撹拌した。室温に降温した後、ろ別し、100部の蒸留水によって洗浄した後乾燥し、マゼンタ顔料1を得た。
Figure 0007353954000010
得られたマゼンタ顔料1の物性値を表1に示す。
<マゼンタ顔料2~11の製造例>
アミド化合物(F1)、アミド化合物(F2)の添加量、アゾカップリング反応における12Nの塩酸添加後の反応温度、溶媒加熱処理によるマゼンタ顔料表面特性調整に用いる溶媒を表1に記載の通りに変更する以外は、マゼンタ顔料1と同様の方法により、マゼンタ顔料2~11を得た。
<マゼンタ顔料12の製造例>
(ロジン処理によるマゼンタ顔料表面特性調整)
・蒸留水 1000部
・マゼンタ顔料7 100部
上記材料を撹拌・混合し、マゼンタ顔料7を水中に懸濁させた。その後、テトラヒドロアビエチン酸15.0部、アビエチン酸5.0部および33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液30部を添加した。液温を98℃に昇温した後、温度を保ったまま1時間撹拌した。65℃に降温した後、12Nの塩酸(キシダ化学(株)製)を添加して樹脂を沈殿させた。沈殿した組成物をろ別し、蒸留水によって洗浄した後乾燥し、マゼンタ顔料12を得た。
<マゼンタ顔料13>
マゼンタ顔料としてC.I.PigmentRed122を用いた。
<マゼンタ顔料14>
マゼンタ顔料としてC.I.PigmentRed269を用いた。
<マゼンタ顔料15>
マゼンタ顔料としてC.I.PigmentRed150を用いた。
Figure 0007353954000011
<重合性単量体の製造例>
(ウレタン基含有単量体)
メタノール50.0部を反応容器に仕込んだ。その後、撹拌下、40℃にてカレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート](昭和電工株式会社)5.0部を滴下した。滴下終了後、40℃を維持しながら2時間撹拌を行った。その後、エバポレーターにて未反応のメタノールを除去することで、ウレタン基含有単量体を調製した。
(ウレア基含有単量体)
ジブチルアミン50.0部を反応容器に仕込んだ。その後、撹拌下、室温にてカレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート]5.0部を滴下した。滴下終了後、2時間撹拌を行った。その後、エバポレーターにて未反応のジブチルアミンを除去することで、ウレア基含有単量体を調製した。
<非晶性樹脂の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・溶媒 トルエン 100.0部
・スチレン 91.7部
・メタクリル酸メチル 2.5部
・メタクリル酸 3.3部
・メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル 2.5部
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)5.0部
上記反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して非晶性樹脂1を得た。非晶性樹脂1は、重量平均分子量は13500、酸価は21.3mgKOH/g、ガラス転移温度は93℃、SP値は20.3(J/cm30.5であった。
<非晶性樹脂微粒子分散液1の製造例>
温度計を備えた反応容器に下記の材料を秤量した。
・イオン交換水 350.0部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5.0部
・ラウリン酸ナトリウム 10.0部
上記反応容器内を高速撹拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで撹拌しながら、90℃に昇温して水系媒体S1を得た。別途、トルエン 100.0部に非晶性樹脂1:100.0部を90℃で溶解した。得られた非晶性樹脂1のトルエン溶液を、上記条件の撹拌下、水系媒体S1に投入し、上記条件で撹拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。
エバポレーターを用いて、トルエンを除去した後、イオン交換水で濃度を20質量%に調整し、非晶性樹脂1の微粒子が分散した非晶性樹脂微粒子分散液1を得た。
非晶性樹脂微粒子1の体積分布基準の50%粒径(Dv50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.09μmであった。
<重合体A0の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・溶媒 トルエン 100.0部
・単量体組成物 100.0部
(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル(モノマーユニットSP値:18.25、単量体SP値:17.69)・メタクリロニトリル(モノマーユニットSP値:25.96、単量体SP値:21.97)・スチレン(モノマーユニットSP値:20.11、単量体SP値:17.94)を以下に示す割合で混合したものとする)
・アクリル酸ベヘニル(炭素数22) 67.0部(28.9モル%)
・メタクリロニトリル 22.0部(53.8モル%)
・スチレン 11.0部(17.3モル%)
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)0.5部
上記反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して重合体A0を得た。重合体A0の重量平均分子量は68400、酸価は0.0mgKOH/g、融点は62℃であった。
上記重合体A0をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが28.9モル%、メタクリロニトリル由来のモノマーユニットが53.8モル%、スチレン由来のモノマーユニットが17.3モル%含まれていた。
<トナー1の製造例>
・単量体組成物 100.0部
(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル(モノマーユニットSP値:18.25、単量体SP値:17.69)・メタクリロニトリル(モノマーユニットSP値:25.96、単量体SP値:21.97)・スチレン(モノマーユニットSP値:20.11、単量体SP値:17.94)を以下に示す割合で混合したものとする)
・アクリル酸ベヘニル 67.0部(28.9モル%)
・メタクリロニトリル 22.0部(53.8モル%)
・スチレン 11.0部(17.3モル%)
・マゼンタ顔料1 7.0部
・非晶性樹脂1 5.0部
・ワックス パラフィンワックス 20.0部
(日本精蝋社製:HNP-51 融点Tm:74℃)
・トルエン 100.0部
からなる混合物を調製した。上記混合物をアトライター(日本コークス社製)に投入し、直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水735.0部とリン酸三ナトリウム(12水和物)16.0部を添加し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、イオン交換水65.0部に塩化カルシウム(2水和物)9.0部を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを9.0に調整し、ヒドロキシアパタイトを含む無機分散安定剤が水中に分散した水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)8.0部を添加して60℃を保持しながら100rpmで5分間撹拌した後、上記高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体中に投入した。60℃を保持しながら上記高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。
上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで10時間重合反応を行った。その後、反応容器から還流冷却管を外し、反応液を95℃に昇温した後、95℃を保持しながら150rpmで5時間撹拌することでトルエンを除去し、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液を150rpmで撹拌しながら20℃まで冷却した後、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて分散安定剤を溶解させた。固形分をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して、単量体組成物の重合体A1を含むトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子は、分級により、重量平均粒径(D4)を6.5μmにした。
得られたトナー粒子1:100.0部に対して、外部添加剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えてヘンシェルミキサー(日本コークス社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。トナー1の物性を表3に示す。なお、得られたトナーの重量平均粒径(D4)を6.5μmであった。
また、上記トナー1の製造例において、着色剤、非晶性樹脂及びワックスを除いた条件で同様に製造を行い、重合体a1を得た。重合体a1の重量平均分子量は56000、酸価は0.0mgKOH/g、融点は62℃であった。重合体a1をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが28.9モル%、メタクリロニトリル由来のモノマーユニットが53.8モル%、スチレン由来のモノマーユニットが17.3モル%含まれていた。重合体a1の物性値を重合体A1の物性値とした。
<トナー5~39の製造例>
使用する材料を表2に記載のように変更する以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー5~39を得た。なお、トナー17、19、26の製造例においては、反応液を95℃に昇温する前に、反応液にt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油社製:パーブチルO)を1.5部添加した。トナーの物性を表3に示す。また、用いた単量体のSP値を表4に示す。なお、トナー粒子及びトナーは、分級により重量平均粒径(D4)を6.5μmにそろえた。
Figure 0007353954000012
<トナー2~4の製造例>
<トナーコア分散液の製造>
<トナーコア分散液1(乳化凝集法)>
[重合体微粒子分散液G1の製造]
温度計を備えた反応容器に下記の材料を秤量した。
・イオン交換水 350.0部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5.0部
・ラウリン酸ナトリウム 10.0部
上記反応容器内を高速撹拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで撹拌しながら、90℃に昇温して水系媒体E1を得た。別途、トルエン 100.0部に重合体A0:100.0部を90℃で溶解した。得られた重合体A0のトルエン溶液を、上記条件の撹拌下、水系媒体に投入し、上記条件で撹拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。
エバポレーターを用いて、トルエンを除去した後、イオン交換水で濃度を20質量%に調整し、重合体微粒子が分散した重合体微粒子分散液G1を得た。
重合体微粒子G1の体積分布基準の50%粒径(Dv50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.40μmであった。
[ワックス微粒子分散液G1の製造]
温度計を備えた反応容器に下記の材料を秤量した。
・ワックス パラフィンワックス 100.0部
(日本精蝋社製:HNP-51 融点Tm:74℃)
・アニオン性界面活性剤 5.0部
(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
・イオン交換水 395.0部
上記反応容器内を高速撹拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで撹拌しながら、90℃に加熱して分散処理を60分間行った。
分散処理後、40℃まで冷却することで、濃度20質量%のワックス微粒子分散液G1を得た。
ワックス微粒子の体積分布基準の50%粒径(Dv50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装社製)を用いて測定したところ、0.15μmであった。
[マゼンタ顔料微粒子分散液G1の製造]
・マゼンタ顔料1 50.0部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 7.5部
・イオン交換水 442.5部
上記材料を秤量・混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子の濃度10質量%の水系分散液(着色剤微粒子分散液G1)を得た。
[トナーコアの製造]
温度計を備えた反応容器に下記材料を秤量した。
・重合体微粒子分散液G1(20質量%) 500.0部
・ワックス微粒子分散液G1(20質量%) 50.0部
・着色剤微粒子分散液G1(10質量%) 70.0部
・イオン交換水 160.0部
上記材料を反応容器中で、ホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000r/minで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子の重量平均粒径(D4)が6.0μmである凝集粒子が形成された。5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、撹拌を継続しながら、75℃まで加熱した。そして、75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。
その後、25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒径(D4)が6.0μmのトナーコアを得た。
[トナーコア分散液の製造]
・イオン交換水 395.0部
・トナーコア1 100.0部
・アニオン性界面活性剤 5.0部
(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、トナーコア分散液1を得た。
<トナーコア分散液2(粉砕法)>
[トナーコアの製造]
・結着樹脂 重合体A0 100.0部
・マゼンタ顔料1 7.0部
・ワックス パラフィンワックス 20.0部
(日本精蝋社製:HNP-51 融点Tm:74℃)
上記材料をヘンシェルミキサー(日本コークス社製)で前混合した後、二軸混練押し出し機(池貝鉄工社製:PCM-30型)によって、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業社製:T-250)で粉砕し、得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.0μmのトナーコア2を得た。
[トナーコア分散液の製造]
・イオン交換水 395.0部
・トナーコア2 100.0部
・アニオン性界面活性剤 5.0部
(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、トナーコア分散液2を得た。
<トナーコア分散液3(溶解懸濁法)>
[微粒子分散液Y1の作製]
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、下記材料を投入した。
・水 683.0部
・メタクリル酸EO付加物硫酸エステルのナトリウム塩 11.0部
(三洋化成工業社製:エレミノールRS-30)
・スチレン 130.0部
・メタクリル酸 138.0部
・アクリル酸-n-ブチル 184.0部
・過硫酸アンモニウム 1.0部
上記反応容器内を400rpmで15分間撹拌したところ、白色の懸濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30.0部を加え、75℃にて5時間熟成してビニル重合体の微粒子分散液Y1を得た。微粒子分散液Y1の体積平均粒径は0.15μmであった。
[着色剤分散液Y1の調製]
・マゼンタ顔料1 100.0部
・酢酸エチル 150.0部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液Y1を得た。
[ワックス分散液Y1の調製]
・ワックス パラフィンワックス 20.0部
(日本精蝋社製:HNP-51 融点Tm:74℃)
・酢酸エチル 80.0部
上記を密閉できる反応容器に投入し、80℃で加熱撹拌した。ついで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら3時間かけて25℃にまで冷却し、乳白色の液体を得た。
この溶液を直径1mmのガラスビーズ30.0部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液Y1を得た。
[油相Y1の調製]
・重合体A0 100.0部
・酢酸エチル 85.0部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで1分間撹拌した。
・ワックス分散液Y1(固形分20質量%) 100.0部
・着色剤分散液Y1(固形分40質量%) 15.0部
・酢酸エチル 5.0部
さらに上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い6000rpmで3分間撹拌し、油相Y1を調製した。
[水相Y1の調製]
・微粒子分散液Y1 15.0部
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液 30.0部
(三洋化成工業社製:エレミノールMON7)
・イオン交換水 955.0部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、水相Y1を調製した。
[トナーコアの製造]
水相Y1に油相Y1を投入し、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて回転数10000rpmで10分間分散した。その後、30℃、50mmHgの減圧下にて30分間脱溶剤した。次いで、ろ過を行い、ろ別とイオン交換水への再分散の操作をスラリーの電導度が100μSとなるまで繰り返すことで、界面活性剤の除去を行い、ろ過ケーキを得た。
上記ろ過ケーキを真空乾燥した後、風力分級を実施することで、重量平均粒径(D4)6.0μmのトナーコア3を得た。
[トナーコア分散液の製造]
・イオン交換水 395.0部
・トナーコア3 100.0部
・アニオン性界面活性剤 5.0部
(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、トナーコア分散液3を得た。
[トナー2の調製例]
温度計を備えた反応容器に下記材料を秤量した。
・トナーコア分散液1(20質量%) 500.0部
・非晶性樹脂微粒子分散液1(20質量%) 25.0部
上記材料を反応容器中で、ホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000rpmで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱して、非晶性樹脂微粒子1をトナーコアに付着させた。形成された凝集粒子の重量平均粒径(D4)が6.5μmである粒子が形成されたところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、撹拌を継続しながら、75℃まで加熱した。そして、75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。
その後、25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥し、分級することで、重量平均粒径(D4)が6.5μmのトナー粒子2を得た。
得られたトナー粒子2:100.0部に対して、外部添加剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えてヘンシェルミキサー(日本コークス社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー2を得た。トナー2の物性を表3に示す。
[トナー3、4の調製例]
使用するトナーコア分散液1を、トナーコア分散液2、トナーコア分散液3に変更する以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー3、4を得た。得られたトナーの物性を表3に示す。また、用いた単量体のSP値を表4に示す。なお、トナー粒子及びトナーは、分級により重量平均粒径(D4)を6.5μmにそろえた。
Figure 0007353954000013
Figure 0007353954000014
Figure 0007353954000015
〔実施例1~28、比較例1~11〕
上記トナー1~39を、それぞれ下記の方法で評価を行った。
<トナーの評価方法>
評価に際しては、評価機としてLBP712Ci(キヤノン社製)の改造機を使用した。本体のプロセススピードを240mm/secに改造した。そして、この条件で画像形成が可能となるように必要な調整を行った。また、マゼンタカートリッジからトナーを除去し、代わりにトナーを140g充填した。
<1>低温定着性
140gのトナーが充填されたプロセスカートリッジを常温常湿(N/N)環境(23℃、60%RH)にて48時間放置した。定着器を外しても動作するように改造したLBP-712Ciを用いて、10mm×10mmの四角画像が転写紙全体に均等に9ポイント配列された画像パターンの未定着画像を出力した。転写紙上のトナー乗り量は、0.80mg/cm2とし、定着開始温度を評価した。なお、転写紙は、Fox River Bond(90g/m2)を使用した。
定着器は、LBP-712Ciの定着器を外部へ取り外し、レーザービームプリンター外でも動作するようにした外部定着器を用いた。なお、外部定着器は、定着温度を温度100℃から10℃刻みに上げて行き、プロセススピード:240mm/secの条件で定着を行った。
定着画像を50g/cm2の荷重をかけシルボン紙〔Lenz Cleaning Paper“dasper(R)”(Ozu Paper Co.Ltd)〕で擦った。そして、擦り前後の濃度低下率が20%以下になった温度を定着開始温度として、低温定着性を以下の基準で評価した。評価結果を表5に示す。
[評価基準]
A:定着開始温度が100℃
B:定着開始温度が110℃
C:定着開始温度が120℃
D:定着開始温度が130℃以上
評価は、Cランク以上であれば良好な低温定着性があると判断した。
<2>耐熱保存性
保存時の安定性を評価するために耐熱保存性の評価を実施した。6gのトナーを100mlの樹脂製カップに入れ、温度50℃、湿度20%環境下で10日放置した後、トナーの凝集度を以下のようにして測定し、下記の基準にて評価を行った。
測定装置としては、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)の振動台側面部分に、デジタル表示式振動計「デジバイブロ MODEL 1332A」(昭和測器社製)を接続したものを用いた。そして、パウダーテスターの振動台上に下から、目開き38μm(400メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き150μm(100メッシュ)の篩の順に重ねてセットした。測定は、23℃、60%RH環境下で、以下の様にして行った。
(1)デジタル表示式振動計の変位の値を0.60mm(peak-to-peak)になるように振動台の振動幅を予め調整した。
(2)上記のように10日放置したトナーを、予め23℃、60%RH環境下において24時間放置し、そのうちトナー5gを精秤し、最上段の目開き150μmの篩上に静かにのせた。
(3)篩を15秒間振動させた後、各篩上に残ったトナーの質量を測定して、下式に基づき凝集度を算出した。評価結果を表5に示す。
凝集度(%)={(目開き150μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100
+{(目開き75μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.6
+{(目開き38μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.2
[評価基準]
A:凝集度が20%未満
B:凝集度が20%以上25%未満
C:凝集度が25%以上30%未満
D:凝集度が30%以上
評価は、Cランク以上であれば良好な耐熱保存性があると判断した。
<3>画質評価(彩度及び色相角評価)
得られたトナーを用いて、画像サンプルを出力し画質評価した。
尚、画像特性の比較に際し、トナーが充填されたプロセスカートリッジを常温常湿(N/N)環境(23℃、60%RH)にて48時間放置した。定着器を外しても動作するように改造したLBP-712Ciを用いて、メディア(GF-C081、坪量81.4g/m2)上に、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.40mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。
定着器は、LBP-712Ciの定着器を外部へ取り外し、レーザービームプリンター外でも動作するようにした外部定着器を用いた。なお、外部定着器の定着温度は、各トナーの低温定着性評価における定着開始温度とし、プロセススピード:240mm/secの条件で定着を行った。
上記のようにして得られた画像サンプルについて、反射濃度計SpectroLino(旧Gretag Macbeth社製)にて、L*a*b*表色系における色度を測定した。
得られた結果の彩度(C*)および色相角(h)の値を読み取った。以下のような基準でランク付けし、Cランク以上を本発明において許容できる基準とした。色相角(h)は、300°≦h≦355°の範囲外である場合、C*の値にかかわらず、Dランクとした。以下の判定基準によって行った。評価結果を表5に示す。
[評価基準]
A:C*が75.0以上、300°≦h≦355°
B:C*が72.0以上、300°≦h≦355°
C:C*が69.0以上、300°≦h≦355°
D:C*が69.0未満
<4>耐光性試験
スーパー蛍光灯フェードメーター FL(スガ試験機社製)中にて強度80000(lux)の光を300時間照射し、光照射前後の画像濃度の残存率を求めた。その残存率の値から、以下の評価基準に基づき耐光性の評価を行った。
評価は、転写紙上のトナー乗り量を0.40mg/cm2とし、前述の画質評価と同じ条件にて定着画像を得た。得られた定着画像について、X-Riteカラー反射濃度計(color refledtion densitometer X-Rite404A)を用いて測定した。原稿濃度が0.00の白下地部分とベタ画像部の相対濃度を測定し、9点の濃度を測定し、平均値を画像濃度として評価した。その後、上記耐光性試験を実施し、画像濃度を評価し、画像濃度残存率を算出した。評価基準は以下の判定基準によって行った。評価結果を表5に示す。
[評価基準]
A:画像濃度残存率が90%以上であり、耐光性に非常に優れる。
B:画像濃度残存率が85%以上90%未満であり、耐光性に優れる。
C:画像濃度残存率が75%以上85%未満であり、耐光性が良い。
D:画像濃度残存率が75%未満であり、耐光性が劣る。
評価は、Cランク以上であれば良好な耐光性があると判断した。
<5>耐久性評価
トナーの耐久性評価は、スジ画像の有無により判定を実施した。スジ画像は、外添剤による部材汚染やトナー劣化により発生する0.5mm程度の縦スジであり、全面ハーフトーン画像を出力した際に観察されやすい画像不良である。
スジ画像の評価は、トナーが充填されたプロセスカートリッジを常温常湿(N/N)環境(23℃、60%RH)にて48時間放置した。
評価に際しては、評価機としてLBP712Ci(キヤノン社製)の改造機を使用した。本体のプロセススピードを240mm/secに改造した。そして、この条件で画像形成が可能となるように必要な調整を行った。
評価紙として、XEROX4200用紙(XEROX社製75g/m2)を用いた。
常温常湿(N/N)環境(23℃、60%RH)において、印字率1%となるE文字画像を4秒ごとに2枚出力する間欠連続使用を15000枚実施した。
15000枚の連続使用試験を行った後、全面ハーフトーン画像を出力し、スジの有無を観察した。以下の判定基準によって行った。評価結果を表5に示す。
[評価基準]
A:スジやトナー塊が未発生。
B:斑点状のスジはないが、1~3個所の小さなトナー塊がある。
C:端部に斑点状スジが若干ある、又は4、5個所の小さなトナー塊がある。
D:全面に斑点状のスジある、又は5個所以上小さなトナー塊若しくは明らかなトナー塊がある。
評価は、Cランク以上であれば良好な耐久性があると判断した。
Figure 0007353954000016

Claims (7)

  1. 結着樹脂、顔料を含有するトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、
    該結着樹脂が、第一の重合性単量体に由来する第一のモノマーユニット、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体に由来する第二のモノマーユニットを有する重合体Aを含有し、
    該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、該重合体A中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
    該重合体A中の該第二のモノマーユニットの含有割合が、該重合体A中の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下であり、
    該第一のモノマーユニットのSP値をSP11(J/cm30.5とし、該第二のモノマーユニットのSP値をSP21(J/cm30.5としたとき、下記式(1)を満たし、
    3.00≦(SP21-SP11)≦25.00 式(1)
    該顔料は、アセトン濡れ性試験におけるアセトン濡れ性(W)が下記式(2)を満たし、該顔料のXRD測定において、3°<2θ<60°の範囲内の最大強度を有するピークにおいて算出される結晶子サイズDが下記式(3)を満たすことを特徴とするマゼンタトナー。
    5.5≦W≦10.0 式(2)
    1.0nm≦D≦7.0nm 式(3)
  2. 結着樹脂、顔料を含有するトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、
    該結着樹脂が、第一の重合性単量体、及び該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体を含有する組成物の重合体である重合体Aを含有し、
    該第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つであり、該組成物中の該第一の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、5.0モル%以上60.0モル%以下であり、
    該組成物中の該第二の重合性単量体の含有割合が、該組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、20.0モル%以上90.0モル%以下であり、
    該第一の重合性単量体のSP値をSP12(J/cm30.5とし、該第二の重合性単量体のSP値をSP22(J/cm30.5としたとき、下記式(4)を満たし、ことを特徴とする
    0.60≦(SP22-SP12)≦15.00 式(4)
    該顔料は、アセトン濡れ性試験におけるアセトン濡れ性(W)が下記式(2)を満たし、該顔料のXRD測定において、3°<2θ<60°の範囲内の最大強度を有するピークにおいて算出される結晶子サイズDが下記式(3)を満たすことを特徴とするマゼンタトナー。
    5.5≦W≦10.0 式(2)
    1.0nm≦D≦7.0nm 式(3)
  3. 前記重合体A中の前記第二のモノマーユニットの含有割合、又は前記組成物中の前記第二の重合性単量体の含有割合が、前記重合体A中の全モノマーユニットの総モル数、又は前記組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、40.0モル%以上90.0モル%以下である請求項1または2に記載のマゼンタトナー。
  4. 前記第一の重合性単量体が、炭素数18以上36以下の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のマゼンタトナー。
  5. 前記第二の重合性単量体が、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1~4のいずれか一項に記載のマゼンタトナー。
    Figure 0007353954000017
    (式中、Xは単結合又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を示す。
    1は、ニトリル基(-C≡N)、
    アミド基(-C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基))、
    ヒドロキシ基、
    -COOR11(R11は炭素数1以上6以下のアルキル基若しくは炭素数1以上6以下のヒドロキシアルキル基)、
    ウレタン基(-NHCOOR12(R12は炭素数1以上4以下のアルキル基))、
    ウレア基(-NH-C(=O)-NH(R132(R13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下のアルキル基))、
    -COO(CH22NHCOOR14(R14は炭素数1以上4以下のアルキル基)、又は
    -COO(CH22-NH-C(=O)-NH(R152(R15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1以上6以下のアルキル基)
    であり、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。)
  6. 前記トナーを示差走査熱量計で測定した際の、前記重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量が、20(J/g)以上100(J/g)以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のマゼンタトナー。
  7. 前記顔料が下記式(C1)と下記式(C2)で示される化合物とを含有し、下記式(C1)と下記式(C2)との質量比(C1/C2)が95/5≦(C1/C2)≦5/95である請求項1~6のいずれか一項に記載のマゼンタトナー。
    Figure 0007353954000018
JP2019224181A 2019-12-12 2019-12-12 マゼンタトナー Active JP7353954B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019224181A JP7353954B2 (ja) 2019-12-12 2019-12-12 マゼンタトナー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019224181A JP7353954B2 (ja) 2019-12-12 2019-12-12 マゼンタトナー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021092710A JP2021092710A (ja) 2021-06-17
JP7353954B2 true JP7353954B2 (ja) 2023-10-02

Family

ID=76312377

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019224181A Active JP7353954B2 (ja) 2019-12-12 2019-12-12 マゼンタトナー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7353954B2 (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001249498A (ja) 2000-03-07 2001-09-14 Mitsubishi Chemicals Corp 静電荷像現像用トナー
JP2011158578A (ja) 2010-01-29 2011-08-18 Fujifilm Corp 感光性着色組成物、これを用いた赤色画素、カラーフィルタ、及び液晶表示装置
JP2013068947A (ja) 2011-09-09 2013-04-18 Canon Inc トナー
JP2018089020A (ja) 2016-11-30 2018-06-14 サミー株式会社 ぱちんこ遊技機
JP2018528278A (ja) 2015-06-25 2018-09-27 クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド 新規ナフトールas顔料
JP2018528988A (ja) 2015-06-25 2018-10-04 クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド 印刷材料中での新規ナフトールas顔料混合物の使用
JP2019200415A (ja) 2018-05-09 2019-11-21 三洋化成工業株式会社 トナーバインダー
JP2019207400A (ja) 2018-05-24 2019-12-05 三洋化成工業株式会社 トナーバインダー

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001249498A (ja) 2000-03-07 2001-09-14 Mitsubishi Chemicals Corp 静電荷像現像用トナー
JP2011158578A (ja) 2010-01-29 2011-08-18 Fujifilm Corp 感光性着色組成物、これを用いた赤色画素、カラーフィルタ、及び液晶表示装置
JP2013068947A (ja) 2011-09-09 2013-04-18 Canon Inc トナー
JP2018528278A (ja) 2015-06-25 2018-09-27 クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド 新規ナフトールas顔料
JP2018528988A (ja) 2015-06-25 2018-10-04 クラリアント・プラスティクス・アンド・コーティングス・リミテッド 印刷材料中での新規ナフトールas顔料混合物の使用
JP2018089020A (ja) 2016-11-30 2018-06-14 サミー株式会社 ぱちんこ遊技機
JP2019200415A (ja) 2018-05-09 2019-11-21 三洋化成工業株式会社 トナーバインダー
JP2019207400A (ja) 2018-05-24 2019-12-05 三洋化成工業株式会社 トナーバインダー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021092710A (ja) 2021-06-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10877388B2 (en) Toner
US11287758B2 (en) Toner and method for producing toner
US10877389B2 (en) Toner
EP3582018B1 (en) Positive-charging toner
JP7297502B2 (ja) トナー及び該トナーの製造方法
JP7250598B2 (ja) 正帯電性トナー
JP7353954B2 (ja) マゼンタトナー
JP2022163694A (ja) トナー及びトナーの製造方法
JP7292973B2 (ja) トナー
JP7391648B2 (ja) トナー及びトナーの製造方法
JP7463086B2 (ja) トナー
JP7446801B2 (ja) トナー
US20220187725A1 (en) Toner and method for producing toner
US20220342329A1 (en) Toner and method for producing toner
JP7297503B2 (ja) トナー
US20230418172A1 (en) Nonmagnetic toner
US20230418176A1 (en) Toner
JP2023159604A (ja) トナー及びトナーの製造方法
JP2022162968A (ja) トナー及びトナーの製造方法
US20230098426A1 (en) Toner
JP2023043843A (ja) トナー
JP2022094915A (ja) トナー及びトナーの製造方法
JP2024001609A (ja) トナー
JP2023028372A (ja) トナー及びトナーの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221206

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230817

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230822

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230920

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7353954

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151