JP2022094915A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Yuna Yamamoto
昇平 芝原
Shohei Shibahara
健二 青木
Kenji Aoki
努 嶋野
Tsutomu Shimano
崇 松井
Takashi Matsui
隆之 豊田
Takayuki Toyoda
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Abstract

【課題】 優れた低温定着性、耐熱保存性及び離型性を有し得るとともに、優れた耐久性を有し得るトナーを提供すること。【解決手段】 樹脂成分及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、樹脂成分が、式(A)で示されるモノマーユニットAを有するビニル系重合体Aを含有し、トナー粒子の断面のSTEM観察から輝度ヒストグラムを得たとき、輝度0~9における合計ピクセル数をCとし、輝度0~245における合計ピクセル数をAとしたとき、C及びAが式(1)を満たし、輝度10~輝度245の範囲においてピクセル数の最大値P個を示す輝度を輝度Xとし、輝度Xから輝度245に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Mとし、輝度Xから輝度10に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Nとしたとき、輝度M-輝度Nの値が120~235であることを特徴とするトナー。【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置に対する省エネルギー対応への要求が高まっている。省エネルギーへの対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーを低い温度で定着させる技術が検討されている。
トナーの低温定着性を向上させるために、トナーの樹脂成分のガラス転移点を低下させる手法が挙げられる。しかしながら、樹脂成分のガラス転移点を低下させることはトナーの耐熱保存性を低下させることにつながるため、この手法では、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは難しい。
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させるために、トナーに結晶性樹脂を使用する方法が検討されている。トナーの樹脂成分として一般的に用いられる非晶性樹脂は、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示さない。一方、結晶性樹脂は、DSC測定において吸熱ピークを示す。結晶性樹脂は、分子間又は分子内のアルキル基同士が規則的に配列することにより、融点まではほとんど軟化しないといった性質を有する。このような性質を持つことから、結晶性樹脂は、融点を境に結晶が急激に溶融(シャープメルト)し、それに伴った急激な粘度の低下が起こる。
このため、シャープメルト性に優れ、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立する材料として、結晶性樹脂が注目されている。結晶性樹脂の一種として、結晶性のビニル樹脂が知られている。結晶性のビニル樹脂は、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有するビニル系重合体である。つまり、結晶性のビニル樹脂は、主鎖骨格と、側鎖としての長鎖アルキル基と、を有している。そして、側鎖の長鎖アルキル基同士が規則的に配列し、結晶化することで、樹脂として結晶性を示す。
特許文献1では、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有する結晶性のビニル樹脂を使用したトナーが提案されている。
特開2014-130243号公報
特許文献1に記載のトナーについて本発明者らが検討した結果、トナーの耐久性について、より一層の改善が必要であることを認識した。具体的には、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有する結晶性のビニル樹脂とワックスを併用したときに、トナーの割れ欠けが生じやすくなる場合があることが分かった。
本開示の一態様は、優れた低温定着性、耐熱保存性及び離型性を有し得るとともに、優れた耐久性を有し得るトナーの提供に向けたものである。
本開示の一態様によれば、樹脂成分及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂成分が、下記式(A)で示されるモノマーユニットAを有するビニル系重合体Aを含有し、
前記トナー粒子の断面の走査透過電子顕微鏡観察において、前記トナー粒子の断面の反射電子像を取得し、前記反射電子像を構成する各ピクセルの輝度を輝度0から輝度255の256階調に振り分けて、横軸を輝度、縦軸をピクセル数とする輝度ヒストグラムを得たとき、
輝度0~9における合計ピクセル数をCとし、輝度0~245における合計ピクセル数をAとしたとき、
前記C及び前記Aが下記式(1)を満たし、
0.000≦C/A≦0.250 ・・・ (1)
前記ヒストグラムの輝度10~輝度245の範囲においてピクセル数の最大値P個を示す輝度を輝度Xとし、
前記輝度Xから輝度245に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Mとし、
前記輝度Xから輝度10に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Nとしたとき、
輝度M-輝度Nの値が120~235である
ことを特徴とするトナーが提供される。
Figure 2022094915000001

(式(A)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数18~36のアルキル基を示す。)
本開示の一態様によれば、優れた低温定着性、耐熱保存性及び離型性を有し得るとともに、優れた耐久性を有し得るトナーを提供できる。
本開示の実施例におけるトナー1のトナー粒子の断面画像から得られた、256階調の輝度ヒストグラムの1例である。 本開示の実施例におけるトナー35のトナー粒子の断面画像から得られた、256階調の輝度ヒストグラムの1例である。
数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
モノマーユニットとは、ポリマー(重合体)を構成するユニット(単位)であり、モノマー(重合性単量体)の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の炭素-炭素結合1区間が1モノマーユニットである。ビニル系モノマーは、下記式(Z)で示すことができ、ビニル系モノマーユニットは、重合体の構成単位であり、下記式(Z)で示されるモノマーが反応した形態である。また、モノマーユニットを、単に「ユニット」と表記する場合もある。
Figure 2022094915000002

(式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基を表し、RZ2は、任意の置換基を表す。)
結晶性樹脂とは、樹脂、トナー粒子、又はトナーを測定試料とする示差走査熱量計(DSC)測定において、明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す(示差走査熱量計測定をDSC測定とも表記する。)。
共晶している状態とは、二つ以上の物質の微結晶が混ざり合った状態で結晶化している状態を意味する。
<発明に至った経緯、及び本開示の効果が発現する推測メカニズム>
特許文献1に係るトナーの耐久性について、より一層の改善が必要である理由を本発明者らは以下のように考えている。
長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有する重合体を、トナーの樹脂成分として含有するトナーは、優れた低温定着性及び耐熱保存性を発揮しやすい。これは、該重合体の側鎖部分に長鎖アルキル基を有するため、側鎖の長鎖アルキル基同士が規則的に配列することで結晶性が高まりやすいためであると本発明者らは考えている。これは、電子写真の画像形成プロセスにおける、定着工程で必要な熱量を小さくするうえで有利な特性と言える。
しかしながら、上記のトナーに離型性向上のためにワックスを含有させると、トナーの耐久性が十分でなくなる場合があることを発見した。具体的には、トナーの割れ欠けが生じやすい場合があることを発見した。トナーの割れ欠けが生じる場合がある要因としては、トナー粒子中の樹脂成分及びワックスがそれぞれ単独で結晶化しやすい場合があり、樹脂成分に対して明確な境界を有するワックスドメインを形成しやすいということが考えられる。
上記トナー粒子の断面の輝度ヒストグラムを確認したところ、ワックスに該当する低輝度のピークと、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有する結晶性のビニル樹脂に該当する高輝度のピークがそれぞれ独立して観察された。該輝度ヒストグラムの1例を図2に示す。即ち、樹脂成分とワックスがそれぞれ明確な境界を有し、独立している状態でトナー粒子に含有されていることが分かった。
そこで本発明者らは、樹脂成分に該当するピークと、ワックスに該当するピークとを独立させにくくするため、ワックスを樹脂成分と共晶させ、トナー粒子断面の輝度ヒストグラムにおいて、樹脂成分のピークがブロードになるように制御するという思想に達した。これによって、ワックスによって発揮される離型性を損なうことなく、樹脂成分とワックスがそれぞれ明確な境界を有しにくくなり、優れた耐久性を有するトナーが得られやすくなると本発明者らは考えた。
上記考察に基づき本発明者らが検討した結果、上記の構成要件を有するトナーは、優れた低温定着性、耐熱保存性及び離型性を有し得るとともに、優れた耐久性を有し得るトナーとなりやすいことを見出した。以下に、それぞれの構成要件について詳細に説明する。
<トナー粒子断面における輝度ヒストグラム>
走査透過電子顕微鏡観察により、本開示に係る輝度ヒストグラムを得たとき、
ヒストグラムの輝度10~輝度245の範囲においてピクセル数の最大値P個を示す輝度を輝度Xとし、
前記輝度Xから輝度245に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Mとし、
前記輝度Xから輝度10に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Nとしたとき、
輝度M-輝度Nの値が120~235である
ことを特徴とするトナーである。
後述する、トナー粒子の断面画像の取得条件では、トナー粒子断面の暗視野像において、ワックスが存在する部分は暗く、樹脂成分が存在する部分は比較的明るくなる。該トナー粒子断面画像を構成する各ピクセルの輝度を、輝度0から輝度255の256階調に振り分け、横軸を輝度、縦軸をピクセル数とする輝度ヒストグラムを得る。最暗部を0、最明部を255としたときの、上記輝度ヒストグラムにおける、輝度10~輝度245において、ピクセル数の最大値P個を示す輝度を輝度Xとする。上記範囲における最大値P個を示す輝度Xとは、トナーに含有される樹脂成分を主成分とする部分に該当する輝度のうち、ピクセル数が最大となるときの輝度である。また、後述するが、本開示における輝度ヒストグラムを得る際には、輝度Xが輝度150になるように設定して得られた画像を用いた。即ち、上記の輝度ヒストグラムは、樹脂成分を主成分とする部分に該当する輝度のうち、ピクセル数が最大となる輝度を150として得られることが好ましい。輝度ヒストグラムにおける輝度のうち、どの輝度が樹脂成分を主成分とする部分に該当するかどうかは、上記輝度ヒストグラムと上記トナー粒子断面画像を対応させて観察することで判断することができる。一般にトナー粒子断面画像において、最も大きな領域を占めている部分が樹脂成分に該当するためである。
また、輝度246以上のピクセルは、白飛び等のノイズを含む場合があるため除外する。
上記の輝度ヒストグラムにおいて、輝度が低い方が暗く、輝度が高い方が明るいため、輝度0~輝度9のピクセルは、単独ワックスに該当するものである。また、輝度10~輝度245のピクセルは、樹脂成分、及びワックスと樹脂成分との共晶構造に該当するものである。本開示において、単独ワックスとは、樹脂成分に対して明確な境界を有するワックスを意味する。
また、輝度Xから輝度245に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Mとし、
輝度Xから輝度10に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Nとしたとき、
輝度M-輝度Nの値が120~235である。
輝度M-輝度Nの値は、輝度Xにおけるピクセル数P個を最大値とするピークがどれだけブロードしているかを示しており、この値が大きいほど、ワックスと樹脂成分との共晶構造がトナー粒子に多く含有されていると考えられる。該共晶構造がトナー粒子に含有されていることで、トナーの離型性を損なうことなく、樹脂成分とワックスがそれぞれ明確な境界を有しにくくなり、優れた耐久性を有するトナーが得られやすくなると考えられる。
即ち、輝度M-輝度Nの値が120以上であることで、優れた離型性及び耐久性を有するトナーが得られやすい。そのため、120以上であり、150以上であることが好ましい。上限は特に制限されず、235以下であり、より好ましくは、200以下であり、さらに好ましくは180以下である。
輝度M-輝度Nの値が119以下であると、離型性又は耐久性が不十分となる場合がある。ここで、輝度M-輝度Nの値が小さくなる理由として以下の(1)及び/又は(2)が考えられる。
(1)トナー粒子中において、ワックスが完全に樹脂成分と相溶している。
(2)トナー粒子中において、樹脂成分中でワックスが明確な境界を持って含有されている。
上記(1)においては、輝度ヒストグラムにおいて、ワックスと樹脂成分とが相溶した状態に該当するピークがシャープに観察される。ワックスと樹脂成分とが相溶しているため、トナーの割れ欠けの起点も少なく耐久性には有利であると考えられるが、ワックスが樹脂成分と相溶しているため、ワックスが定着時にトナー表面に染み出しにくく、離型性が低下しやすいと考えられる。
上記(2)においては上述したように、トナーの割れ欠けが生じやすく、トナーの耐久性が低下しやすい。
輝度M-輝度Nの値を上記範囲内に制御する方法として、ワックスの種類や添加量を制御することや、ワックスと樹脂成分を共晶させる熱処理を行うことが挙げられる。
上記熱処理としては、一度、ワックスと樹脂成分が両方、溶融状態となる温度まで昇温し、その後、ワックスが優先的に結晶化する温度で保持する処理が挙げられる。即ち、ワックスの融点より低く、樹脂成分の融点より高い温度で保持する処理である。これによって、ワックスと樹脂成分が混ざり合った状態から、ワックスに有利な条件で結晶化が進むため、共晶構造がトナー粒子に含有されやすいと考えられる。
また、上記熱処理を行わない場合でも、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネートのように、複数の長鎖のアルキル基を有し、且つ分岐構造を有するエステルワックスを多量に用いた場合に、輝度M-輝度Nの値が好ましい範囲となる場合があることが分かった。
また、上記の輝度ヒストグラムにおいて、輝度0~9における合計ピクセル数をCとし、輝度0~245における合計ピクセル数をAとしたとき、前記C及び前記Aが下記式(1)を満たす。
0.000≦C/A≦0.250 ・・・ (1)
上述したように、輝度ヒストグラムにおいて、輝度0~9における合計ピクセル数は単独ワックスに該当するものである。上記式(1)を満たす、即ち、トナー粒子中の、単独ワックスの量が少ないほど、トナーの割れ欠けの起点が少なくなるため、優れた耐久性を有するトナーが得られやすい。好ましくは、下記式(2)を満たすことであり、より好ましくは、下記式(3)を満たすことであり、さらに好ましくは、下記式(4)を満たすことである。
0.000≦C/A≦0.100 ・・・ (2)
0.000≦C/A≦0.080 ・・・ (3)
0.000≦C/A≦0.040 ・・・ (4)
<樹脂成分>
樹脂成分は結着樹脂であることが好ましい。即ち、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂が、上記式(A)で示されるモノマーユニットAを有するビニル系重合体Aを含有することが好ましい。
<ビニル系重合体A及びモノマーユニットA>
ビニル系重合体Aは、下記式(A)で示されるモノマーユニットAを有する。
Figure 2022094915000003

(式(A)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数18~36のアルキル基を示す。)
ビニル系重合体Aが有するモノマーユニットAが、ビニル系重合体Aの側鎖として長鎖アルキル基(炭素数18~36のアルキル基)を有することで、ビニル系重合体Aの結晶性が高まりやすく、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られやすい。また、ビニル系重合体Aは、DSC測定において明確な吸熱ピークを示す結晶性樹脂であることが好ましい。
モノマーユニットAは、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合性単量体としてビニル重合させることで、ビニル系重合体Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサ、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタ等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらの内、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましいのは炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、更に好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルである。即ち、上記式(A)中、Rは炭素数18~36の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数18又は22のアルキル基である。また、Rは水素であることが好ましい。
モノマーユニットAを形成する重合性単量体(以下、単量体(a)とも表記する。)及びモノマーユニットAは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、ビニル系重合体A中のモノマーユニットAの含有割合が、20.0~80.0質量%であることが好ましい。該含有割合が、20.0質量%以上であれば、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られやすい。そのため、20.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上が好ましく、45.0質量%以上がより好ましい。また、該含有割合が、80.0質量%以下であれば、適切な弾性を有するトナーが得られやすい。そのため、80.0質量%以下が好ましく、75.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以下がさらに好ましい。
また、モノマーユニットAの含有割合は、上記式(A)で示されるモノマーユニット全ての含有割合の和とする。単量体(a)が複数存在する場合も同様である。
また、樹脂成分中のビニル系重合体Aの含有割合が、30.0質量%以上であることが好ましい。該含有割合が、30.0質量%以上であると、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られやすい。そのため、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましく、80.0質量%以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、該含有割合が100.0質量%、即ち樹脂成分がビニル系重合体Aのみであることである。上限は特に制限されず、100.0質量%である。
また、ビニル系重合体Aの重量平均分子量(Mw)が、10000~200000以下であることが好ましい。また、該Mwが20000以上150000以下であることがより好ましく、40000~70000であることがさらに好ましい。Mwが上記範囲内であることで、トナーの弾性を適切に制御しやすくなるため好ましい。
また、低温定着性の観点から、ビニル系重合体Aの融点は、50~80℃であることが好ましい。
<その他のモノマーユニット>
トナーの物性を適切に制御する観点から、ビニル系重合体Aは、上記のモノマーユニットA以外の、その他のモノマーユニットを有することが好ましい。
その他のモノマーユニットを有するビニル系重合体Aは、対応する重合性単量体(以下、その他の単量体とも表記する。)としてビニル重合させることで、ビニル系重合体Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
その他の単量体としては、例えば、以下に挙げる単量体が挙げられ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
・ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
・ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等。
・アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1~30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を反応させた単量体。
・ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~22のアルコール(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1~30のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを反応させた単量体、及び炭素数1~26のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネート[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを反応させた単量体等。
・ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3~22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t―ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートと反応させた単量体等。
・ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル
・カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
・(メタ)アクリル酸エステル類:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等。
・スチレン系単量体:スチレン、α-メチルスチレン等。
上記の中でも、ニトリル基を有する単量体であることが好ましい。これらを使用することで、ビニル系重合体Aの結晶性を過度に低下させずに、融点を制御しやすく、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られやすい。また、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸-t-ブチル又はスチレンを使用することでトナーの弾性を適切に制御しやすいため、好ましい。
<ビニル系重合体A以外の樹脂>
ビニル系重合体A以外に、トナーの樹脂成分として使用可能なものとしては、ビニル系重合体Aには該当しないビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、電子写真特性の観点から、ビニル系重合体Aには該当しないビニル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタンが好ましい。
ビニル系重合体Aには該当しないビニル系樹脂を構成する単量体は、上述した単量体のうち、単量体(a)以外のものが挙げられる。必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルは、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの縮重合反応により得ることができる。
多価カルボン酸としては例えば以下の化合物が挙げられる。
琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール及び1,3-プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本開示においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。更に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも使用することもできる。
ポリエステルの製造方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法が挙げられる。
ポリウレタンは、ジオール成分とジイソシアネート成分の反応により得られる。
ジイソシアネート成分としては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物。
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらの中でも好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものは、XDI、IPDI及びHDIである。
また、ジイソシアネート成分に加えて、トリ以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
ポリウレタンに用いることのできるジオール成分としては、前述したポリエステルに用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
<ワックス>
トナー粒子に含有されるワックスとしては、エステルワックスであることが好ましい。エステルワックスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本開示におけるエステルワックスとは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。
エステルワックスとしては特に限定はないが、例えば以下のものが挙げられる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル等の1価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
セバシン酸ジベヘニル等の2価カルボン酸とモノアルコールのエステル類;
エチレングリコールジステアレート、ヘキサンジオールジベヘネート等の2価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
グリセリントリベヘネート等の3価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート等の4価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート等の6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ポリグリセリンベヘネート等の多官能アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステルワックス類;
エステルワックスは、アルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルであることが好ましい。また、モノマーユニットA中のRで示される直鎖のアルキル基の炭素数をAc、エステルワックスに含有される直鎖のアルキル基の炭素数の平均をWcとしたとき、下記式(5)を満たすことが好ましい。
|Ac-Wc|≦6.0 ・・・ (5)
本開示における、直鎖のアルキル基とは、アルキレンや分枝のアルキル基を含まない。
上記式(5)を満たすことで、エステルワックスとビニル系重合体Aが共晶しやすくなると考えられ、優れた離型性及び耐久性を有するトナーが得られやすい。エステルワックスとビニル系重合体Aが共晶しやすくなる理由は、ビニル系重合体A及びワックスが有する直鎖のアルキル鎖の長さが近いことで、各々が完全に分かれて単独で結晶化した状態だけでなく、絡み合った状態においても安定な結晶構造を形成しやすい。その結果、エステルワックスとビニル系重合体Aが共晶しやすくなると本発明者らは考えている。より好ましくは、|Ac-Wc|≦4.0であり、さらに好ましくは|Ac-Wc|≦2.0である。
モノマーユニットA中のRで示される直鎖のアルキル基が複数種存在する場合には、Acの値は下記のように算出する。例えば、モノマーユニットA中のRが、炭素数nの直鎖のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルをX質量%と、炭素数mのアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルをY質量%含んでいる場合、上記Acは、下記式(6)より算出する。
Ac=(n+m)/100 ・・・ (6)
上記エステルワックスが複数種類存在する場合には、|Ac-Wc|の値は、算出されたAcに対して、それぞれのエステルワックスのWcを用いて計算し、それぞれのエステルワックスに対して、|Ac-Wc|の値が上記の範囲内であるかを判断する。即ち、|Ac-Wc|の値が上記の範囲内となるエステルワックスが含有されることが好ましい。また、|Ac-Wc|の値が上記の範囲内とならないエステルワックスが含有されてもよい。
また、本開示では、エステルワックスが、3価以上のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルであることが好ましい。より好ましくは4価以上のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルであり、さらに好ましくは6価以上のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルである。
3価以上のアルコールの価数は、エステルワックスの分岐構造の数に相当する。分岐した構造を持つワックスを用いることで、ビニル系重合体Aとワックスが共晶しやすくなるため、耐久性と離型性が向上しやすくなる。共晶しやすくなる理由としては、ワックスが分岐していることで、ワックスの結晶の間隙にビニル系重合体A中のモノマーユニットAが有するRが入り込みやすくなることが考えられる。さらに、該Rがワックスの間隙に入り込むことで、トナー粒子中のワックスが網目状の構造を取りやすくなると考えられるため、ワックスと樹脂成分との境界が明確になりにくく、トナーの割れ欠けの起点になりにくくなると考えられる。
トナー粒子に含有されるワックスとして、さらに、炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。炭化水素系ワックスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭化水素系ワックスとしては特に限定はないが、例えば以下のものが挙げられる。
脂肪族炭化水素系ワックス:低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、フィッシャートロプシュワックス、又はこれらが酸化、酸付加されたワックス。
樹脂成分の質量に対するワックスの質量の割合が、1.0~25.0質量%であることが好ましい。1.0質量%以上であることで、優れた離型性を有するトナーが得られやすい。そのため、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。また、25.0質量%以下であることで、トナー粒子中の単独ワックスの量が過大になりにくく、トナーの割れ欠けが生じにくい。そのため、25.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。トナー粒子中にワックスが複数種含有される場合は、それらのワックス質量の総和を用いて算出する。
ワックスの分子量が1000~3000であることが好ましい。ワックスの分子量が、1000以上であると、ビニル系重合体Aとワックスが相溶しにくくなると考えられ、優れた低温定着性、耐熱保存性、及び離型性を有するトナーが得られやすい。そのため、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。また、3000以下であると、トナーの離型性が適切に保たれやすい。そのため、3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましい。
ワックスの融点が、トナーに含有されるビニル系重合体Aの融点よりも大きいことが好ましい。融点が上記のように制御され、トナーの製造工程において、後述する熱処理を実施することで、上記の輝度M-輝度Nの値の範囲を満たすトナーとなりやすいため好ましい。
また、ワックスの融点が60~120℃であることがより好ましい。ワックスの融点が該範囲にあることで、定着時に溶融してトナー粒子表面に染み出しやすいと考えられる。より好ましくは70~100℃である。
<コアシェル構造>
本開示のトナーには、樹脂成分及びワックスを有するコアに、コアを被覆するシェル相があってもよい。
シェル相を形成する樹脂は、樹脂成分としてビニル系重合体A以外に使用可能な樹脂として記載した樹脂が使用可能である。中でも、帯電安定性の観点から、ビニル樹脂やポリエステルが好ましい。
<各種添加剤>
トナーは、必要により、着色剤、磁性体、荷電制御剤及び流動化剤などから選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。トナーに用いられる各種添加剤について具体的に記載する。
<着色剤>
着色剤としては、以下のものが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本開示のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナー粒子中の分散性の点から選択される。
着色剤が磁性粒子ではない場合、着色剤は、樹脂成分100.0質量部に対し、1.0~20.0質量部含有されることが好ましい。着色剤として磁性粒子を用いる場合、その添加量は樹脂成分100.0質量部に対し、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、特段の制限なく用いることができる。
負帯電制御剤の例として以下のものが挙げられる。
モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びジカルボン酸系の金属化合物。
また、正帯電制御剤の例としては、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ピリジン系化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。
荷電制御剤は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.01~20.0質量部含有されることが好ましい。より好ましくは0.5~10.0質量部である。
<外添剤>
外添剤としては、以下のものが挙げられる。
シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子からなる群から選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物など。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミニウム微粒子やチタン酸ストロンチウム微粒子などが挙げられる。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.01~8.0質量部含有されることが好ましい。また、0.1~4.0質量部であることがより好ましい。
<トナーの製造方法>
トナー及びトナー粒子は、粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法などの何れの方法において製造されてもよいが、これらに限定されるものではない。上記の中でも、懸濁重合法によって製造されることが好ましい。
上記の輝度M-輝度Nの値の範囲を満たすため、ビニル系重合体A及びワックスの含有量を制御し、ビニル系重合体Aとワックスの融点の間の温度で、30分以上、トナー粒子を熱処理することが好ましい。
即ち、本開示に係るトナーの製造方法が、
ワックス及び樹脂成分を含有するトナー母粒子を得る工程、及び
ワックスの融点をTmWとし、ビニル系重合体Aの融点をTmAとしたとき、TmA~TmWの温度範囲で、トナー母粒子に対して30分以上熱処理を行い、トナー粒子を得る工程、
を有することを特徴とするトナーの製造方法であることが好ましい。
上記の輝度M-輝度Nの値の範囲を満たしやすいため、樹脂成分中のビニル系重合体Aの含有割合が30.0質量%以上であり、樹脂成分の質量に対するワックスの含有割合が1.0~25.0質量%であることが好ましい。
また、熱処理を行う温度がTmA~TmWの範囲であることで、ビニル系重合体Aよりもワックスが優先的に結晶化すると考えられ、ワックスとビニル系重合体Aとの共晶構造がトナー粒子に含有されやすく、輝度M-輝度Nの値が大きくなりやすいため好ましい。また、TmA<TmWであることが好ましい。
また、上記熱処理工程の前にトナー粒子の温度をTmW以上とすることが好ましい。これにより、トナー粒子に含有されるビニル系重合体A及びワックスが溶融状態となりやすく、そのあとに上記の熱処理工程を行うことで、両者が混ざり合った状態から、ワックスに有利な条件で結晶化が進み、共晶構造が形成されやすいと考えられる。
また、上記の熱処理を行う時間が30分以上であることで、トナー粒子に含有されるワックスを優先的にかつ十分に結晶化させやすくなると考えられる。そのため、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、2.5時間以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、5時間以下であることが好ましい。
<トナー粒子を得る工程>
上記のトナー粒子を得る工程は、懸濁重合法によりトナー粒子を得る工程であることが好ましい。懸濁重合法によるトナー粒子の作製では、重合性単量体及びワックス、必要に応じて着色剤等を含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物を造粒して重合性単量体組成物の粒子を形成する。そして、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合して樹脂成分を生成することで、トナー粒子を得ることができる。
また、上記のトナー粒子を得る工程は、粉砕法によりトナー粒子を得る工程であってもよい。粉砕法によるトナー粒子の作成では、まず、ビニル系重合体Aを含む樹脂材料及びワックス、必要に応じて着色剤等のトナー成分を混合する。これらをヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合する。次に、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融させる。さらに、捏和及び混練して樹脂等を互いに相溶せしめた中に、各種材料を分散させる。冷却固化の後、粉砕及び分級を行うことで、トナー粒子を得ることができる。
また、上記のトナー粒子を得る工程は、乳化凝集法によりトナー粒子を得る工程であってもよい。乳化凝集法によるトナー粒子の作成では、ビニル系重合体Aを含む樹脂材料及びワックス、必要に応じて着色剤等のそれぞれの水分散体を作製し(水分散工程)、混合後、金属塩などを用いて所望の粒径に凝集する(凝集工程)。得られた凝集体を加熱して融合させ(加熱融合工程)、その後、冷却工程、洗浄乾燥工程を行うことによりトナー粒子を得ることができる。
また、上記のトナー粒子を得る工程は、溶解懸濁法によりトナー粒子を得る工程であってもよい。溶解懸濁法によるトナー粒子の作成では、まず、ビニル系重合体Aを含む樹脂材料及びワックス、必要に応じて着色剤などを有機溶媒に溶解又は分散させる(樹脂溶解工程)。そして、得られた溶液又は分散液を水などの貧溶媒中に、トナー粒子の大きさ程度に分散させて造粒物(液滴)を得る(造粒工程)。得られた造粒物に含まれる有機溶媒を留去(脱溶剤工程)後、洗浄乾燥する(洗浄乾燥工程)ことにより、トナー粒子を得ることができる。
<各種測定方法等>
以下、各種の測定方法等に関して記載する。
<走査透過電子顕微鏡(STEM)によるトナー粒子断面画像の取得>
トナー粒子中でのワックスの存在状態は、走査透過電子顕微鏡を用い、トナー粒子の断面を観察することにより確認する。トナー粒子の断面観察は、ルテニウム染色を実施してから行う。即ち、本開示に係るトナー粒子の断面画像は、ルテニウム染色されたトナー粒子の断面画像であることが好ましい。
トナーの断面の観察手順は以下の通りである。
トナーができるだけ分散した状態になるようにして、可視光硬化性樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(UC7、ライカ社製)により100nm厚に切削する。
得られた薄片サンプルを、真空染色装置(VSC4R1H、フィルジェン社製)を用いて、RuOガス500Pa雰囲気で15分間染色し、走査透過電子顕微鏡(JEM2800、JEOL社)を用いて、STEM画像を取得する。上記の染色条件においては結晶化したワックスと樹脂との間では染色の度合いに差が生じるため、そのコントラスト差により、ワックスの存在状態を確認できる。観察条件として、加速電圧は200kV、STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズは1024×1024pixel、倍率は30000に設定し、暗視野(STEM-DF)画像を取得した。Contrast及びBrightnessは、下記のIMAGE Jによる輝度ヒストグラムにおいて、樹脂成分を主成分とする部分の最大ピクセル数を有するときの輝度が150になるように調整する。また、トナー粒子の断面においてワックスの輝度が0となるように調整する。
この際、断面画像を取得するトナー粒子を選択する際は、後述する測定方法で、トナーの重量平均粒径(D4)の測定した後、該D4に対して、0.8~1.1倍の長軸径を有するトナー粒子を任意に10個選択する。また、画像1枚の視野の中に2つ以上のトナーが入らないようにして、画像を取得する。
<輝度ヒストグラム及びヒストグラムから求める物性値>
輝度ヒストグラムは、上記手法で得られたトナー粒子断面のSTEM画像を、画像処理ソフトImage J(開発元 Wayne Rashand)を用いて解析することで取得する。即ち、輝度ヒストグラムは、トナー粒子断面の画像解析から得られる画像に対して256階調の輝度スペクトルを測定したときの輝度ヒストグラムであることが好ましい。以下に具体的な手順を示す。
まず、ImageメニューのTypeから、解析対象の反射電子像を8-bitに変換する。
次に、解析する範囲をトナーの輪郭から内側のみに指定する。ここで、トナーの輪郭は、上記の可視光硬化性樹脂とトナー断面の界面を境界線としている。解析する範囲外は、EditメニューのClear Outsideにより消しておく。
ProcessメニューのFiltersから、Median径を2.0ピクセルに設定し、画像ノイズを低減させる。
次に、AnalyzeメニューのHistgramを選択し、輝度ヒストグラムを新しいウインドウに表示させる。また、該ウインドウのListから、輝度ヒストグラムの数値を取得する。取得した数値を用いて、以下の値を算出する。
・輝度10~245において、輝度Pにおけるピクセル数の20%以上のピクセル数を有する輝度の値の幅
・輝度0~9における合計ピクセル数C、及び輝度0~245における合計ピクセル数A
取得したヒストグラムにおいて、輝度10~245におけるピクセル数が最大値P個となる輝度Xが、140以上160未満にある場合は、動画編集ソフトMicrosoft フォト(Microsoft Corporation)を用いて、上記のSTEM画像の明るさを調整してもよい。その場合には、あらかじめ、IMAGE Jにより、解析範囲以外を消した上記STEM画像を、動画編集ソフトMicrosoftフォトで開く。編集と作成メニューから編集を選択し、調整画面のライトのカーソルを動かして、明るさを調整し、輝度Xが150になるようにする。
明るさ調整後のSTEM画像を再びIMAGE Jで開き、トナーの輪郭から内側を解析範囲として選択し、輝度ヒストグラムを得る。得られた輝度ヒストグラムのListから、輝度ヒストグラムの数値を取得する。
また、輝度Pが輝度140以上160未満の範囲にない場合は、再度、輝度Pが150になるように、STEM画像を取得する必要がある。
各トナーのSTEM画像10枚について、同様の画像解析を行い、上記の値を算出する。得られた10枚の各値の平均を各トナーの物性値とする。
<樹脂中の各種モノマーユニットの含有割合の測定方法>
樹脂中の各種モノマーユニットの含有割合の測定は、H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られたH-NMRチャートを解析し、各モノマーユニットの構造を同定する。ここでは一例として、ビニル系重合体A中のモノマーユニットAの含有割合の測定について記載する。得られたH-NMRチャートにおいて、モノマーユニットAの構成要素に帰属されるピークの中から、その他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。ビニル系重合体A中に含有されるその他のモノマーユニットについても、それぞれ同様に積分値を算出する。
ビニル系重合体Aを構成するモノマーユニットがモノマーユニットAとその他のモノマーユニット1種である場合、モノマーユニットAの含有割合は、上記積分値S1、及びその他のモノマーユニットのピークの積分値S2を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
モノマーユニットAの含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
その他のモノマーユニットが2種以上ある場合でも同様にモノマーユニットAの含有割合を算出できる。
なお、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、H-NMRにて同様にして算出する。
上記方法によって算出した各ユニットの割合(モル%)に、各ユニットの分子量を乗じて、各ユニットの含有割合を質量%に変換する。
また、トナーを試料としてNMRを測定する場合、ワックスやビニル系重合体A以外の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、ビニル系重合体A中の各ユニットの含有割合が算出できない場合がある。その場合には、ワックスやその他の樹脂を使用しないで同様の製造を行うことで、ビニル系重合体A’を製造し、それをビニル系重合体Aとみなして分析することができる。
<樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ワックスの分子量測定>
離型剤の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。ゲルクロマトグラフ用のo-ジクロロベンゼンに、特級2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を濃度が0.10質量/体積%となるように添加し、室温で溶解する。
サンプルビンに離型剤と上記のBHTを添加したo-ジクロロベンゼンとを入れ、150℃に設定したホットプレート上で加熱し、離型剤を溶解する。離型剤が溶けたら、予め加熱しておいたフィルターユニットに入れ、本体に設置する。フィルターユニットを通過させたものをGPCサンプルとする。なお、サンプル溶液は、濃度が0.15質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)
・検出器:高温用RI
・カラム:TSKgel GMHHR-H HT 2連(東ソー社製)
・温度:135.0℃
・溶媒:ゲルクロマトグラフ用o-ジクロロベンゼン(BHT 0.10質量/体積%添加)
・流速:1.0mL/分
・注入量:0.4mL
離型剤の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<融点の測定方法>
融点の測定は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて行う。
昇温速度:10℃/分
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
1回目の昇温過程における最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、これらは本開示をなんら限定するものではない。なお、以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
実施例中における、それぞれの測定結果は、上記で記載した測定方法で測定した結果である。また、分散液の体積分布基準の50%粒径(D50)は動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定した。
<シェル用樹脂の製造例>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に下記材料を投入した。
・テレフタル酸 32.3質量部(50.0モル%)
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物 67.7質量部(50.0モル%)
・シュウ酸チタンカリウム 0.02部
窒素雰囲気下、常圧下、220℃で8時間反応を行うことで非晶性ポリエステルであるシェル用樹脂を得た。得られたシェル用樹脂の重量平均分子量(以下、Mwとも記載する)及びガラス転移温度(Tg)を測定したところ、Mwは20000、Tgは70℃であった。
<トナーの製造に用いたワックス>
表1に、トナーの製造に用いたワックスの種類及び物性を示す。
Figure 2022094915000004
<トナー1の製造例>
[懸濁重合法によるトナーの製造]
(トナー粒子1の調製)
下記材料をアトライター(日本コークス社製)に投入した。
・メタクリロニトリル(単量体(b)) 25.0部
・スチレン(単量体(c)) 10.0部
・メタクリル酸エチル(単量体(d))15.0部
・着色剤 ピグメントブルー15:3 6.5部
直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水を735.0部、及びリン酸三ナトリウム・12水和物を16.0部を投入し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。続いて、上記容器の中に、イオン交換水65.0部に9.0部の塩化カルシウム・2水和物を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを6.0に調整し、ヒドロキシアパタイトを含む分散安定剤が水中に分散した水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、下記材料を投入した。
・アクリル酸ベヘニル(単量体(a)) 50.0部
・シェル用樹脂 4.0部
・ワックス1 9.0部
60℃を保持しながら100rpmで30分間撹拌した後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)5.0部を添加してさらに1分間撹拌し、上記の高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体に投入した。60℃を保持しながら上記の高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。
上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで12時間重合反応を行い、トナー粒子分散液を得た。
得られたトナー粒子分散液を、95℃まで昇温し、95℃を保持したまま150rpmで1時間撹拌を続けた後、撹拌しながら70℃まで冷却し、70℃を保持したまま、3時間熱処理を行った。熱処理後、30℃まで冷却し、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて上記の分散安定剤を溶解させた。その後、固形分を濾別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、30℃で24時間真空乾燥して、重合体A1を含むトナー粒子1を得た。
100.0部のトナー粒子1に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。得られたトナー1の断面のSTEM画像から得た、256階調の輝度ヒストグラム10枚のうちの1つを図1に示す。図1においては、輝度Xが150であり、Pが7336個であり、輝度Mが215であり、輝度Nが30であった。また、トナー1の物性を表5及び表6に示す。
<トナー2~20、27~38の製造例>
トナー1の製造例において、使用する単量体の種類と添加量を表2のように変更し、ワックスの種類と添加量、及び熱処理の温度と時間を表3のように変更する以外はすべて同様の操作を行い、トナー2~20、及び27~38を得た。トナー2~20、27~38の物性を表5及び表6に示す。
また、得られたトナー35の断面のSTEM画像から得た、256階調の輝度ヒストグラム10枚のうちの1つを図2に示す。図2においては、輝度Xが150であり、Pが15709個であり、輝度Mが179であり、輝度Nが120であった。
Figure 2022094915000005
表2中の略号が以下の通り。
BEA:アクリル酸ベヘニル
STA:アクリル酸ステアリル
OCA:アクリル酸オクタコサ
MYA:アクリル酸ミリスチル
CEA:アクリル酸セチル
MN:メタクリロニトリル
VA:酢酸ビニル
St:スチレン
VBA:安息香酸ビニル
ME:メタクリル酸エチル
AB:アクリル酸ブチル
Figure 2022094915000006
表3において、トナー14とトナー38は、熱処理を行わなかった。
<トナー21の製造例>
(重合体A2の製造例)
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・トルエン 100.0質量部
・単量体組成物 100.0質量部
(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル、メタクリロニトリル、メタクリル酸エチル及びスチレンを以下に示す割合で混合したものとした。
・アクリル酸ベヘニル(単量体(a)) 50.0質量部
・メタクリロニトリル 25.0質量部
・メタクリル酸エチル 15.0質量部
・スチレン 10.0質量部)
・t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV) 0.5部
上記反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。得られた溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分を濾別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して重合体A2を得た。
[粉砕法によるトナーの製造]
・重合体A2 100.0質量部
・着色剤 ピグメントブルー15:3(大日精化製) 6.5質量部
・ワックス1 9.0質量部
・荷電制御剤(LR147:日本カーリット社製) 2.0質量部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業社製)で前混合した後、温度120℃に設定した二軸混練押し出し機(池貝鉄工社製PCM-30型)にて、吐出温度135℃で溶融混練し、混練物を得た。
得られた混練物を冷却する過程において、95℃で1時間保持し、その後、70℃で3時間保持することで熱処理を行った。熱処理後の混錬物を、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業社製T-250)で粉砕し、微粉砕粉末を得た。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)が、7.0μmのトナー粒子21を得た。
100.0部のトナー粒子21に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー21を得た。トナー21の物性を表5及び表6に示す。
<トナー22の製造例>
[乳化凝集法によるトナーの製造]
(重合体A2分散液の調製)
・トルエン 300.0質量部
・重合体A2 100.0質量部
上記材料を秤量・混合し、90℃で重合体A2を溶解させ、トルエン溶液を得た。
別途、イオン交換水700.0質量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0質量部、ラウリン酸ナトリウム10.0質量部を加え90℃で加熱溶解させ、水溶液を得た。次いで、上記のトルエン溶液と水溶液を混ぜ合わせ、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで攪拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い、重合体A2の微粒子が20質量%で含有された、重合体A2分散液を得た。
重合体A2分散液に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.40μmであった。
(ワックス分散液1の調製)
・ワックス1 100.0質量部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 5.0質量部
・イオン交換水 395.0質量部
上記材料を、攪拌装置付きの混合容器に投入し、90℃に加熱した。その後、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環させて分散処理を60分間行った。分散処理の条件は、以下のようにした。
・ローター外径:3cm
・クリアランス:0.3mm
・ローター回転数:19000rpm
・スクリーン回転数:19000rpm
分散処理後、ローター回転数1000rpm、スクリーン回転数0rpm、冷却速度10℃/分の冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、ワックス1の微粒子が20質量%含有されるワックス分散液1を得た。
ワックス1の微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.15μmであった。
(着色剤分散液1の調製)
・着色剤(ピグメントブルー 15:3) 50.0質量部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 7.5質量部
・イオン交換水 442.5質量部
上記材料を秤量・混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて1時間分散して、着色剤の微粒子が10質量%含有された着色剤分散液1を得た。
上記着色剤の微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.20μmであった。
(トナー22の調製)
下記材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、混合した。
・重合体A2分散液 500.0質量部
・ワックス分散液1 45.0質量部
・着色剤分散液1 80.0質量部
・イオン交換水 160.0質量部
混合した後、ホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000rpmで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子を適宜確認し、重量平均粒径(D4)が6.0μmである凝集粒子が形成されたところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを9.0にした。その後、攪拌を継続しながら、75℃まで加熱した。75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。
続いて、90℃まで昇温した後、90℃を保持しながら1時間保持し、その後70℃で3時間保持することで熱処理を行った。
熱処理後、30℃まで冷却し、濾過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒径(D4)が6.1μmのトナー粒子22を得た。
100.0部のトナー粒子22に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー22を得た。トナー22の物性を表5及び表6に示す。
<トナー23の製造例>
[溶解懸濁法によるトナーの製造]
(着色剤分散液2の調製)
下記材料を耐熱性のガラス容器に投入した。
・着色剤(ピグメントブルー15:3) 100.0質量部
・酢酸エチル 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
ペイントシェーカーを用いて5時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液2を得た。着色剤分散液2の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.20μmであった。
(ワックス分散液2の調製)
・ワックス1 20.0質量部
・酢酸エチル 80.0質量部
上記材料を密閉できる反応容器に投入し、80℃で加熱攪拌した。続いて、系内を50rpmで緩やかに攪拌しながら3時間かけて25℃にまで冷却し、乳白色の液体を得た。
この溶液を直径1mmのガラスビーズ30.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行った後、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液2を得た。ワックス分散液2に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.23μmであった。
(油相の調製)
下記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで1分間攪拌した。
・上記重合体A2 100.0質量部
・酢酸エチル 85.0質量部
さらに下記材料を上記ビーカーに添加し、ディスパー(特殊機化社製)を用い6000rpmで3分間攪拌し、油相を調製した。
・ワックス分散液2(固形分が20質量%含有) 45.0質量部
・着色剤分散液2(固形分が40質量%含有) 12.5質量部
・酢酸エチル 5.0質量部
(水相の調製)
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業社製) 100.0質量部
・イオン交換水 900.0質量部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、水相を調製した。
(トナー23の調製)
水相に油相を投入し、T.K.ホモミクサー(特殊機化社製)を用いて、10000rpmで10分間分散した。その後、30℃、50mmHgの減圧下にて30分間脱溶剤した。得られたスラリーを昇温し、90℃を保持しながら1時間撹拌を行った。その後、70℃まで冷却し、70℃を保持しながら3時間熱処理を行った。続いて、濾過を行い、濾別とイオン交換水への再分散の操作を5回行うことで、界面活性剤の除去を行い、濾過ケーキを得た。
上記濾過ケーキを真空乾燥した後、風力分級を実施することで、トナー粒子23を得た。
トナー粒子23に対し、トナー1と同様の外添を行い、トナー23を得た。トナー23の物性を表5及び表6に示す。
<トナー24~26の製造例>
(非晶性樹脂1の調製)
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら、下記材料を投入した。
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン 33.0質量部
・テレフタル酸 21.0質量部
・ドデセニルコハク酸 15.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
系内を窒素置換した後、215℃にて5時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。その後、空冷して反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂1を得た。非晶性樹脂1の重量平均分子量(Mw)及びガラス転移温度(Tg)を測定したところ、Mwは23,500であり、Tgは55℃であった。
(非晶性樹脂分散液1の調製)
下記材料を混合し、90℃で溶解させた。
・トルエン 300.0質量部
・非晶性樹脂1 100.0質量部
また、別途、下記材料を混合し、90℃で溶解させた。
・イオン交換水 700.0質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5.0質量部
・ラウリン酸ナトリウム 10.0質量部
得られた水溶液と上記トルエン溶液を混ぜ合わせ、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで攪拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い非晶性樹脂1の微粒子が20質量%含有された、非晶性樹脂1分散液を得た。
非晶性樹脂微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.38μmであった。
[乳化凝集法によるトナーの製造]
トナー22の製造例において、重合体A2分散液の添加量、非晶性樹脂分散液1の添加量を表4のように変更する以外はすべて同様の操作を行い、トナー24~26を得た。トナー24~26の物性を表5及び表6に示す。
Figure 2022094915000007
<トナー39の製造例>
(重合体A3の調製)
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・トルエン
・ドデカンチオール
・単量体組成物
(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル、アクリル酸を以下に示す割合で混合したものとする。
・アクリル酸べヘニル(単量体(a)) 91.5質量部
・アクリル酸 8.5質量部
・アゾイソブチロニトリル(AIBN) 0.75質量部)
上記の反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して、16時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。得られた溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分を濾別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して重合体A3を得た。
(重合体A3分散液の調製)
・重合体A3 30質量部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1.5質量部
・イオン交換水 150質量部
上記材料を秤量・混合し、90℃に加熱して、乳化機(Ultra Turrax T-50、IKA製)を用いて、8000rpmで撹拌し、重合体A3分散液を調製した。重合体A3分散液に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.30μmであった。
<非晶性樹脂2の調製>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら下記材料を投入した。
・ポリオキシエチレン(2,0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン 19.0質量部
・ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン 51.0質量部
・テレフタル酸 23.0質量部
・n-ドデセニルコハク酸 4.5質量部
・イソフタル酸 3.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.02質量部
系内を窒素置換した後、昇温し、150~230℃で約12時間反応させた。その後、210~250℃で徐々に減圧し、非晶性樹脂2を得た。得られた非晶性樹脂2の重量平均分子量(Mw)及びガラス転移温度(Tg)を測定したところ、Mwは、15400であり、Tgは65℃であった。
(非晶性樹脂2分散液の調製)
・非晶性樹脂2 30質量部
・酢酸エチル 100質量部
上記材料を秤量・混合し、非晶性樹脂2を溶解させた。さらに、下記材料を投入した。
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1.5質量部
・イオン交換水 150g
60℃に加熱して、乳化機(Ultra Turrax T-50、IKA製)を用いて8000rpmで撹拌し、その後、酢酸エチルを蒸発させることで、非晶性樹脂2分散液を調製した。非晶性樹脂2分散液に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ0.18μmであった。
(着色剤分散液3の調製)
・着色剤(ピグメントブルー 15:3) 50質量部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC (第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 200.0質量部
上記材料を混合溶解して、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)を用いて10分間分散し、中心粒径が175nm、固形分量が22.5質量部の着色剤分散液3を得た。
(ワックス分散液3の調製)
・ワックス7 25.0質量部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC (第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 200.0質量部
上記材料を混合し、97℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)にて分散した。その後、ゴーリンホモジナイザー(明和商事製)を用いて105℃、550kg/cmの条件で20回分散処理を行い、ワックス分散液3を得た。ワックス分散液3に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.20μmであった。
(トナー39の調製)
・非晶性樹脂2分散液 400.0質量部
・重合体A3分散液 100.0質量部
・着色剤分散液3 20.0質量部
・ワックス分散液3 70.0質量部
・10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液(浅田化学社製) 1.5質量部
上記材料を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散した後、フラスコ中の内容物を攪拌しながら45℃まで加熱し、45℃で30分間保持した。
その後、得られた内容物の温度を徐々に上げて55℃にし、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調整した。その後、温度を上げて90℃にし、1時間かけて凝集体を合一させた。その後、冷却及び濾過を行い、イオン交換水で洗浄を行った後、乾燥してトナー粒子39を得た。
100.0部のトナー粒子39に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー39を得た。トナー39の物性を表5及び表6に示す。
Figure 2022094915000008
※トナー27:ワックス1が7.0部と、ワックス9が2.0部
トナー28:ワックス1が2.0部と、ワックス9が7.0部
トナー29:ワックス1が5.0部と、ワックス9が4.0部
トナー30:ワックス1が4.0部と、ワックス9が5.0部
表5においてエステルワックスのWcとは、エステルワックスに含有される直鎖のアルキル基の炭素数の平均を意味する。
表5における重合体Aの融点及びMwは、対応するトナーの製造例において、シェル用樹脂、ワックス、及び着色剤の添加を行わず、シリカ微粒子を用いて混合を行う工程を行わなかったこと以外は同様の操作を行って得られた重合体の融点及びMwである。
このようにして得られた重合体は、対応するトナーに含有されている樹脂と同様の方法で製造されているため、トナーに含有されるそれぞれの重合体Aと同等の物性を有していると判断した。
Figure 2022094915000009
<実施例1>
トナー1を以下の様に評価した。評価結果を表7に示す。
<トナーの低温定着性の評価>
トナーの低温定着性の評価には、画像形成装置として、レーザービームプリンター(商品名:LBP-7700C、キヤノン社製)の改造機を用いた。該改造機の改造点としては、定着器を外しても動作するようにしたこと、及び定着温度を自由に設定できるようにした点であった。また、画像を出力する際に用いた用紙は、白色用紙(商品名:Fox River Bond(90g/m)、FOX RIVER社)であった。
まず、カートリッジ内部からトナーを取り出し、エアブローによって清掃した後、該カートリッジにトナー1を300g充填した。そして、そのカートリッジを温度25℃、湿度40%RHの環境下で48時間放置し、該環境下にて上記プリンターのシアンステーションに装着し、その他は、ダミーカートリッジを装着した。以下、上記と同様の環境下で評価を行った。
続いて、定着器を取り外した、上記の画像形成装置を用い、10mm×10mmの四角画像を、用紙の長辺と短辺をそれぞれ4等分する線の交点となる9ポイントに転写した画像パターンの未定着画像を出力した。用紙上のトナー乗り量は、0.80mg/cmとした。
取り外した定着器を用い、プロセススピードを250mm/sに設定し、初期温度を90℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記の未定着画像の定着を行い、各温度での定着画像を得た。得られた定着画像に対して、50g/cmの荷重をかけ、シルボン紙〔Lenz Cleaning Paper “dasper(R)”(Ozu Paper Co.Ltd)〕で摺擦を行った。該摺擦の前後の画像濃度を測定し、摺擦前の画像濃度に対する、摺擦後の画像濃度の低下率が20%以下になったときの温度を定着開始温度とし、この値を用いてトナーの低温定着性を評価した。定着開始温度が120℃以下であったものを、本開示の効果が得られているものと判断した。評価結果を表7に示す。
<トナーの耐久性の評価>
トナーの離型性の評価は、上記の低温定着性の評価で用いた画像形成装置の改造機、及び用紙を用い、温度25℃、湿度40%RHの常温常湿環境で評価を行った。また、トナーの耐久性の評価は、トナーの割れ欠けによって生じる微細粉末が引き起こす、非画像部の汚染濃度を評価指標としている。
まず、中央下あたりに付箋を貼った評価紙に対して、全白画像をプロセススピード:120mm/秒で出力した。出力した評価紙の付箋で隠れていた部分の反射率D1(%)と隠れていなかった部分の反射率D2(%)を測定し、その差を耐久前の非画像部の汚染濃度の値Di(%)(Di=D2-D1(%))とした。上記の反射率は「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS(東京電色社製)」にAmberフィルタをセットして測定した。
次に、印字率1%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンが一旦停止してから次のジョブが始まるように設定した。このモードで、計15000枚の画像出力を行い、画像出力の終了直後から72時間、評価機の電源を切って、放置した。放置後、再度評価機の電源を入れ、上記と同様にして、中央下あたりに付箋を貼った評価紙に対して、全白画像を出力し、耐久後の非画像部の汚染濃度の値(Dr(%))を算出した。
得られた2つの値から(Dr-Di)を算出し、この値を用いてトナーの耐久性を評価した。評価結果を表7に示す。(Dr-Di)の値が、4.0%未満のものを本開示の効果が得られているものと判断した。
<トナーの離型性の評価>
トナーの離型性の評価は、上記の低温定着性の評価で用いた画像形成装置の改造機を用い、用紙として、白色用紙(商品名:GF-500(A4、坪量64.0g/m、キヤノンマーケティングジャパン社)を使用した。また、上記と同様の操作で、カートリッジにトナー1を300g充填してから実施した。
定着器を取り外した上記の改造機を用いて、評価紙の先端から1mm空けて、通紙方向に幅100mm、通紙方向に直交する方向に幅200mmの、未定着画像を出力した。通紙方向は縦向きとし、未定着画像のトナー載り量は、0.8mg/cmとした。
そして、取り外した定着器を用い、上記低温定着性の評価における定着開始温度から10℃ごとに6点上げていき、定着画像が定着ローラに巻きつかない温度が何点あるかを測定し、その点数でトナーの離型性を評価した。評価結果を表7に示す。定着画像が定着ローラに巻きつかない温度が1点以上あるものを本開示の効果が得られているものと判断した。
<トナーの耐熱保存性の評価>
6gのトナー1を100mLのポリカップに入れ、温度50℃、湿度20%RH環境下で10日放置した後、該放置したトナー1の凝集度を以下のようにして測定した。
測定装置として、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)の振動台側面部分に、デジタル表示式振動計「デジバイブロ MODEL 1332A」(昭和測器社製)を接続したものを用いた。そして、パウダーテスターの振動台上に下から、目開き38μm(400メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き150μm(100メッシュ)の篩の順に重ねてセットした。測定は、23℃、60%RH環境下で、以下手順で行った。
(1)デジタル表示式振動計の変位の値を0.60mm(peak-to-peak)になるように振動台の振動幅を予め調整した。
(2)上記のように10日放置したトナーを、予め23℃、60%RH環境下において24時間放置し、そのうちトナー5gを精秤し、最上段の目開き150μmの篩上に静かにのせた。
(3)篩を15秒間振動させた後、各篩上に残ったトナーの質量を測定して、下記式を用いて凝集度(%)を算出した。評価結果を表7に示す。凝集度が30%以下であるものを、本開示の効果が得られているものと判断した。
凝集度(%)={(目開き150μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100
+{(目開き75μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.6
+{(目開き38μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.2
Figure 2022094915000010

Claims (11)

  1. 樹脂成分及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記樹脂成分が、下記式(A)で示されるモノマーユニットAを有するビニル系重合体Aを含有し、
    前記トナー粒子の断面の走査透過電子顕微鏡観察において、前記トナー粒子の断面の反射電子像を取得し、前記反射電子像を構成する各ピクセルの輝度を輝度0から輝度255の256階調に振り分けて、横軸を輝度、縦軸をピクセル数とする輝度ヒストグラムを得たとき、
    輝度0~9における合計ピクセル数をCとし、輝度0~245における合計ピクセル数をAとしたとき、
    前記C及び前記Aが下記式(1)を満たし、
    0.000≦C/A≦0.250 ・・・ (1)
    前記ヒストグラムの輝度10~輝度245の範囲においてピクセル数の最大値P個を示す輝度を輝度Xとし、
    前記輝度Xから輝度245に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Mとし、
    前記輝度Xから輝度10に向かってピクセル数が初めてP個の20%を下回るときの輝度を輝度Nとしたとき、
    輝度M-輝度Nの値が120~235である
    ことを特徴とするトナー。
    Figure 2022094915000011

    (式(A)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数18~36のアルキル基を示す。)
  2. 前記C及び前記Aが下記式(2)を満たす
    0.000≦C/A≦0.100 ・・・ (2)
    請求項1に記載のトナー。
  3. 前記ビニル系重合体A中の前記モノマーユニットAの含有割合が、20.0~80.0質量%である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記樹脂成分中の前記ビニル系重合体Aの含有割合が、30.0質量%以上である請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
  5. 前記ワックスがエステルワックスであり、
    前記エステルワックスが、アルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルであり、
    前記モノマーユニットA中のRで示される直鎖のアルキル基の炭素数をAc、エステルワックスに含有される直鎖のアルキル基の炭素数の平均をWcとしたとき、下記式(5)を満たす
    |Ac-Wc|≦6.0 ・・・ (5)
    請求項1~4の何れか一項に記載のトナー。
  6. 前記ワックスがエステルワックスであり、
    前記エステルワックスが、3価以上のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルである
    請求項1~5の何れか一項に記載のトナー。
  7. 前記トナー粒子が、炭化水素系ワックスをさらに含有する請求項5又は6に記載のトナー。
  8. 前記樹脂成分の質量に対する前記ワックスの質量の割合が、1.0~25.0質量%である請求項1~7の何れか一項に記載のトナー。
  9. 前記ワックスの分子量が1000~3000である請求項1~8の何れか一項に記載のトナー。
  10. 前記樹脂成分中の前記ビニル系重合体Aの含有割合が、60.0質量%以上である請求項1~9の何れか一項に記載のトナー。
  11. 請求項1~10の何れか一項に記載のトナーの製造方法であって、
    前記製造方法が、
    前記ワックス及び前記樹脂成分を含有するトナー母粒子を得る工程、及び
    前記ワックスの融点をTmWとし、前記ビニル系重合体Aの融点をTmAとしたとき、TmA~TmWの温度範囲で、前記トナー母粒子に対して30分以上熱処理を行い、トナー粒子を得る工程、
    を有することを特徴とするトナーの製造方法。
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