JP2022163694A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Yuna Yamamoto
崇 松井
Takashi Matsui
健二 青木
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祐 吉田
Yu Yoshida
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Abstract

【課題】トナー載り量の多少に関わらず耐折り曲げ性に優れ、かつ低温定着性及び耐久性に優れたトナー。【解決手段】結着樹脂を有するトナー粒子を有するトナーであって、該結着樹脂が、樹脂A及び樹脂Bを含有し、該トナーを試料とする示差走査熱量測定において、該樹脂Aに由来する吸熱ピークが観察され、最大の吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃~90.0℃の範囲に存在し、該樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、トナー1g当たり、30J/g~70J/gであり、該トナー粒子中における該樹脂Aの含有割合が、60.0質量%~90.0質量%であり、該樹脂Aは長鎖アルキル基(炭素数16~32のアルキル基)を有する特定式で示されるモノマーユニット(a)、及び該樹脂Bは長鎖アルキル基(炭素数10~32のアルキル基)を有する特定式で示されるモノマーユニット(b)をそれぞれ特定の範囲で含むことを特徴とするトナー。【選択図】なし

Description

本開示は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置に対する省エネルギー対応への要求が高まっている。省エネルギーへの対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーを低い温度で定着させる技術が検討されている。トナーの低温定着性を向上させるために、トナーの樹脂成分のガラス転移点を低下させる手法が挙げられる。しかし、トナーの樹脂成分のガラス転移点を低下させることはトナーの耐熱保存性を低下させることにつながるため、この手法では、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは難しい。
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させるために、トナーに結晶性樹脂を使用する手法が検討されている。トナーの結着樹脂として一般的に用いられる非晶性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC測定)において明確な吸熱ピークを示さない。一方で、結晶性樹脂は、吸熱ピークを示す。これは、結晶性樹脂が融点まではほとんど軟化せず、融点に達した際に急激に溶融(シャープメルト)して軟化するという特徴を持つためである。シャープメルトが可能なことにより、結晶性樹脂を結着樹脂に用いたトナーは、優れた低温定着性と耐熱保存性を両立することができると注目されている。
トナーの結着樹脂に用いる結晶性樹脂の一つとして、結晶性ビニル樹脂が挙げられる。結晶性ビニル樹脂は、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットが主鎖に組み込まれたビニル系重合体である。主鎖骨格に加えて、側鎖としての長鎖アルキル基を有しており、側鎖の長鎖アルキル基同士が分子内や分子間で規則的に配列し、結晶化することで結晶性を示す。例えば、特許文献1では、長鎖アルキルを有する(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂を含むトナーが開示されている。
特開2002-108018号公報 特開2014-130243号公報 特開2019-219646号公報
結晶化した結晶性ビニル樹脂は、その特徴としてラメラ構造を形成している。規則的に分子が並んだラメラ構造は、分子がほぐれやすく、低温定着に有利な性質を有するが、一方で、衝撃に対する耐性が衝撃を受けた向きによって異なるという性質がある。例えば、ラメラ構造に対して平行に入ったクラックは、進行方向に延びやすく、広がりやすいことがある。そのため、結晶性ビニル樹脂を結着樹脂として用いたトナーは、耐久時に衝撃を受けて欠けやすい可能性がある。また、定着画像の折り曲げによって発生したスジやひびが広がりやすいことがある。
特許文献2では、シェルとして、結晶性ビニル樹脂の結着樹脂(コア)とSP値が近い非晶性樹脂を用いることで、耐折り曲げ性を改善している。この時、耐折り曲げ性が改善するメカニズムは、定着時に溶融したコアとシェルが馴染み合い、コアとシェルの主鎖同士が絡まることによるものである。一方、特許文献3では、結晶化を阻害しないようSP
値を指定した架橋剤を用いて、結晶性ビニル樹脂自体の弾性を強化することで、耐久性及び耐折り曲げ性を改善している。
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、特許文献2は、定着前のトナーの耐久性が不十分であること、及びトナー載り量が多いときに定着画像の耐折り曲げ性が低下しやすいことが判明した。耐久性が不十分である理由として、本発明者らは、シェルである非晶性樹脂と結晶性ビニル樹脂の結晶部の密着性が不十分であったためと推測している。
すなわち、シェルとコアの樹脂同士が馴染みやすくても、結晶性ビニル樹脂の側鎖が形成する結晶そのものと、シェルである非晶性樹脂との相互作用は少なく、シェルと結晶の密着性が不十分であったと考えている。そのため、シェルが結晶中のクラックを止める役割を十分に果たせていないと考えられる。また、比較的クラックが発生しやすいと考えられるトナー載り量の多い定着画像において、耐折り曲げ性が低下しやすい理由も同様であると考えている。
一方、特許文献3では、検討を重ねたところ、トナー載り量が少ない定着画像の耐折り曲げ性が不十分であることが分かった。その理由は、以下のように推測している。特許文献3は、架橋剤を用いて、耐久性及び耐折り曲げ性を改善している。しかし、弾性が上がると、定着時のトナー同士の接着性やトナーの紙への染み込みやすさが低下しやすいことが想定される。そのため、トナー載り量が十分にある定着画像では問題ないが、載り量が少ない、トナーが疎な状態で定着した画像の折り曲げを行うと、トナーが紙上から剥離しやすく、耐折り曲げ性が低下したと考えられる。
本開示は、トナー載り量の多少に関わらず耐折り曲げ性に優れ、かつ低温定着性及び耐久性に優れたトナー及び該トナーの製造方法を提供する。
本開示は、結着樹脂を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該トナーを試料とする示差走査熱量測定において、該樹脂Aに由来する吸熱ピークが観察され、最大の吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃~90.0℃の範囲に存在し、該樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、該トナー1g当たり、30J/g~70J/gであり、
該トナー粒子中における該樹脂Aの含有割合が、60.0質量%~90.0質量%であり、
該樹脂Aが、下記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
該樹脂Bが、下記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有するトナーに関する。
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは15~31の整数を表す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは9~31の整数を表す。
Figure 2022163694000001
また、本開示は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該結着樹脂は、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該樹脂Aは上記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
該樹脂Bは上記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有し、
該製造方法が、該樹脂Aを形成し得る重合性単量体及び該樹脂Bを含む重合性単量体組成物を調製する工程、及び
該重合性単量体組成物に含まれる該重合性単量体を重合させて該トナー粒子を得る工程を有するトナーの製造方法に関する。
本開示によれば、トナー載り量の多少に関わらず耐折り曲げ性に優れ、かつ低温定着性及び耐久性に優れたトナーを提供することができる。
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
モノマーユニットとは、ポリマー(重合体、樹脂)を構成するユニット(単位)であり、モノマー(重合性単量体)の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の炭素-炭素結合1区間が1モノマーユニットである。ビニル系モノマーは、下記式(Z)で示すことができ、ビニル系モノマーユニットは、重合体の構成単位であり、下記式(Z)で示されるモノマーが反応した形態である。また、モノマーユニットを、単に「ユニット」と表記する場合もある。式(Z)中、RZ1は水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、RZ2は任意の置換基を表す。
Figure 2022163694000002
結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定において、明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す(示差走査熱量測定をDSC測定とも表記する。
本発明者らは、上述した課題に対する考察から、結晶性ビニル樹脂を有するトナーの耐久性及び耐折り曲げ性を十分に確保するには、(1)結晶性ビニル樹脂と、該結晶性ビニル樹脂に併用する樹脂の結晶部の密着性が高いこと、(2)定着時にトナー同士や紙とトナーの馴染みが良いこと、の2点の両立が必要であると考えた。
検討を重ねた結果、トナーの吸熱ピーク、吸熱量、主成分として使用する結晶性ビニル樹脂の含有量を適切に制御し、さらに結晶性ビニル樹脂に用いられるモノマーと同等の特定のモノマーを含有する樹脂を併用することで、上記課題を解決できることを見出した。具体的には、該特定のモノマーは、トナーの主成分となる結晶性ビニル樹脂に含まれる、結晶性を持たせるための側鎖を形成するモノマーと同等のモノマーである。該特定のモノマーを少量含む、示差走査熱量測定において明確な吸熱ピークを有しない樹脂(非晶性樹脂)を、結晶性ビニル樹脂と併用してトナーの結着樹脂に用いた。これにより、優れた低温定着性を維持したまま、優れた耐久性及び耐折り曲げ性が得られることがわかった。
よって、本開示は、結着樹脂を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該トナーを試料とする示差走査熱量測定において、該樹脂Aに由来する吸熱ピークが観察され、最大の吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃~90.0℃の範囲に存在し、該樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、該トナー1g当たり、30J/g~70J/gであり、
該トナー粒子中における該樹脂Aの含有割合が、60.0質量%~90.0質量%であり、
該樹脂Aが、上記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
該樹脂Bが、上記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有するトナーに関する。
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは15~31の整数を表す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは9~31の整数を表す。]
まず、優れた耐久性が得られるメカニズムについて、本発明者らは以下の様に考えている。樹脂Bに樹脂Aと同等のモノマーを組込んだことで、トナー内の樹脂Aと樹脂Bの間で、側鎖同士の相互作用が生まれ、ラメラ構造を持つ樹脂Aとラメラ構造を持たない樹脂Bの密着性が上がったと考えられる。これにより、樹脂A中で発生したクラックの広がりを樹脂Bが止めやすくなり、優れた耐久性が得られると考えられる。トナー載り量の多い定着画像において、優れた耐折り曲げ性が得られる想定メカニズムも同様であると考えている。その他の理由として、定着画像内で、樹脂Bが樹脂Aの結晶中に分散しやすいために、効果的にクラックを止めやすくなったことも挙げられる。
トナー載り量の少ない定着画像において、優れた耐折り曲げ性が得られるメカニズムについて、さらに、本発明者らは以下のように考えている。樹脂Aは、側鎖に長鎖アルキル
基を多量に含むため、疎水性が高く、紙と馴染みにくい。そこに、アルキル基を多量に含まず、比較的疎水性の低い樹脂Bが分散することで紙への馴染みやすさが良化できると考えられる。また、樹脂Aと樹脂Bは密着しやすいため、定着画像内で近接するトナー同士の接着を阻害しにくいと考えられ、折り曲げによる紙からのトナーの剥がれが起きにくいと考えている。
<トナー及びトナー粒子の物性>
トナーを試料とする示差走査熱量測定において、樹脂Aに由来する吸熱ピークが観察され、観察された吸熱ピークのうち最大の吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃~90.0℃の範囲に存在する。トナーが吸熱ピークを持つことは、トナー中において樹脂Aが、結晶性を有する状態で含有されていることを示す。最大吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃以上であることで、優れた保存性を有するトナーとなり、90.0℃以下であることにより、優れた低温定着性を有するトナーとなる。よって上記範囲内に融点が存在することで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立できる。より好ましくは、50.0℃~70.0℃であり、低温定着性がより良くなる。
また、樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量は、トナー1g当たり、30J/g~70J/gである。樹脂Aに由来する吸熱ピークが複数観察される場合には、それらの複数のピークの吸熱量を合計したものが、本発明における吸熱量である。吸熱量は、トナー中において結晶状態で存在する樹脂Aの量を示し、30J/g以上であることで、低温定着性及び耐熱保存性が優れたトナーとなる。また、70J/g以下であることにより、結晶のクラックが延長しにくく耐折り曲げ性が優れたトナーとなる。該吸熱量は、好ましくは35J/g~60J/gであり、より好ましくは40J/g~50J/gである。該吸熱量は、使用する樹脂A中の長鎖アルキル基の種類や量、トナー粒子中の樹脂Aの含有量等により制御できる。
<樹脂成分>
トナー粒子は、少なくとも樹脂A及び樹脂Bを有する。
<樹脂A>
樹脂Aは、下記式(1)に示されるモノマーユニットであるモノマーユニット(a)を有する。
Figure 2022163694000003
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは15~31の整数を表す]
樹脂Aが有するモノマーユニット(a)が、ビニル系重合体である樹脂Aの側鎖として長鎖アルキル基(炭素数16~32のアルキル基)を有することで、樹脂Aが結晶性を有
し、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られる。また、樹脂Aは、好ましくはDSC測定において明確な吸熱ピークを示す結晶性樹脂である。モノマーユニット(a)は、炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合性単量体としてビニル重合させることで、樹脂Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル等]が挙げられる。
これらの内、トナーの低温定着性及び耐熱保存性の観点から、好ましくは炭素数16~32の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭素数18~30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一である。すなわち、上記式(1)中、炭素数(n)は、好ましくは15~29であり、より好ましくは17~29であり、さらに好ましくは17又は21である。また、Rは水素原子であることが好ましい。
モノマーユニット(a)を形成する重合性単量体(以下、単量体(a)とも表記する。)及びモノマーユニット(a)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。樹脂A中のモノマーユニット(a)の含有割合は、40.0質量%~70.0質量%である。該含有割合が、40.0質量%以上であれば、優れた低温定着性及び耐熱保存性を有するトナーが得られる。該含有割合は45.0質量%以上が好ましい。一方、該含有割合が、70.0質量%以下であれば、疎水性の度合やラメラの量が適性となり、トナー載り量によらず優れた耐折り曲げ性を有するトナーが得られる。該含有割合は、65.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましい。また、モノマーユニット(a)の含有割合は、上記式(1)で示されるモノマーユニット全ての含有割合の和とし、モノマーユニット(a)が複数存在する場合も同様である。
トナー粒子中の樹脂Aの含有割合は、60.0質量%~90.0質量%である。該含有割合が、60.0質量%以上であると、優れた低温定着性を有するトナーが得られる。該含有割合は、70.0質量%以上であることが好ましく、75.0質量%以上であることがより好ましく、80.0質量%以上であることがさらに好ましい。好ましくは、該トナー中の樹脂B、着色剤、離型剤等の添加物を除いた残りの成分はすべて樹脂Aであることである。一方、該含有割合は、85.0質量%以下であることが好ましい。
トナーの物性を適切に制御する観点から、樹脂Aは、上記のモノマーユニット(a)とは異なる、その他のモノマーユニット(c)を有することが好ましい。その他のモノマーユニットは、後述の重合性単量体(以下、その他の単量体とも表記する。)を、モノマーユニット(a)を形成する重合性単量体と共にビニル重合させることで、樹脂Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。モノマーユニット(a)のSP値をSPaとし、モノマーユニット(c)のSP値をSPcとしたとき、下記式(3)を満足することが好ましい。
3.0≦(SPc-SPa)≦25.0 ・・・(3)
SPc-SPaは、より好ましくは5.0以上10.0以下である。上記式(3)を満
足することで、樹脂Aの結晶性が低下しにくくなり、融点が維持されやすい。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立が図りやすくなる。
なお、モノマーユニット(a)が、2種類以上の炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる場合、SPaはそれぞれのモノマーユニットを形成する単量体(a)量のモル比率で算出した平均値を表す。
一方、モノマーユニット(c)が2種類以上の重合性単量体からなる場合、SPcはそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SPc-SPaはそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットに対して決定される。
樹脂A中の上記式(3)を満たすモノマーユニット(c)の含有割合は、20.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることがより好ましい。モノマーユニット(c)の含有割合が20.0質量%以上あることで、樹脂Aのシャープメルト性が発揮されやすく、低温定着性がより良くなる。また、結晶性が低下しにくく、融点が維持されやすいため、耐熱保存性がより良くなる。一方、該含有割合の上限は特に制限されないが、40.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以下であることがより好ましい。なお、樹脂Aにおいて、上記式(3)を満足するモノマーユニット(c)が2種類以上存在する場合、モノマーユニット(c)の割合は、それらの合計の質量%とする。
モノマーユニット(c)を形成する重合性単量体(c)としては、例えば以下に挙げる重合性単量体のうち、上記式(3)を満たす重合性単量体が挙げられる。重合性単量体(c)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等。
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1~30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体。
ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~22のアルコール(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1~30のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレン
ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた単量体、及び
炭素数1~26のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネート[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた単量体等。
ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3~22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t-ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等。
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
また、重合性単量体(c)として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルといったビニルエステル類も用いられる。
中でも、モノマーユニット(c)は、下記式(4a)~(4c)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、下記式(4)で示されることがより好ましい。
Figure 2022163694000004
[式中Rは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。]
上記式(4)に示されるモノマーユニットを含有することで、樹脂Aの結晶化が阻害されにくく、加えて、融点が高くなりやすいため、低温定着性及び耐熱保存性がより良くなる。モノマーユニット(c)を形成するモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一であることが好ましい。さらに好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルである。
樹脂Aは、モノマーユニット(a)、上記式(3)を満たすモノマーユニット(c)の他に、上記式(3)を満たさないその他のモノマーユニットを1種以上含有してもよい。上記式(3)を満たさないユニットに特に制限はないが、上記した重合性単量体の他、以下のような重合性単量体からなることが好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステル類:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等
・スチレン類:スチレン、α-メチルスチレン等
中でも、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸-t-ブチル又はスチレンを使用することでトナーの弾性を適切に制御しやすいため、好ましい。すなわち、好ましくは、樹脂Aは、下記式(St)で表されるスチレンが重合したモノマーユニット及び下記式(Ac)で表される(メタ)アクリル酸エステルが重合したモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一を有する。樹脂Aは、より好ましくは下記式(St)で表されるモノマーユニットを有する。式(Ac)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~4(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは2)のアルキル基を表す。
Figure 2022163694000005
樹脂A中の、式(St)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0質量%~30.0質量%であり、より好ましくは4.0質量%~25.0質量%である。樹脂A中の、式(Ac)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは0.0質量%~20.0質量%であり、より好ましくは5.0質量%~15.0質量%である。
樹脂Aの酸価AvAは、5.0mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂Aに酸価を付与することが可能な重合性単量体は、モノマーユニット(a)の結晶化を阻害する傾向にある。そのため、酸価AvAが5.0mgKOH/g以下であることにより、樹脂Aの結晶性がより十分になり、低温定着性及び耐熱保存性がより良くなりやすい。より好ましくは、0mgKOH/g以上3.0mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0mgKOH/g以上1.0mgKOH/g以下であり、さらにより好ましくは樹脂Aが酸価を持たない、すなわち0mgKOH/gである。
<樹脂B>
樹脂Bは、下記式(2)に示されるモノマーユニットであるモノマーユニット(b)を有する。
Figure 2022163694000006

[式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、mは9~31の整数を表す。]
樹脂Bが有するモノマーユニット(b)が、樹脂Aの結晶性を発現するモノマーユニット(a)の側鎖と構造の近い長鎖アルキル基(炭素数10~32のアルキル基)を有することで、樹脂Aと樹脂Bが馴染みやすくなり、さらに、長鎖アルキル同士の相互作用によ
って、樹脂Aの結晶と樹脂Bが密着しやすくなる。そのため、上述のメカニズムのようになることが想定され、耐久性及び耐折り曲げ性の優れたトナーが得られる。また、樹脂Bは、好ましくはDSC測定において明確な吸熱ピークを示さない樹脂、すなわち、好ましくは非晶性樹脂である。樹脂Bのガラス転移温度TgBは、30.0℃~90.0℃であることが好ましく、50.0℃~80.0℃であることがより好ましい。
樹脂Bが非晶性であることにより、樹脂Aの結晶が広範囲に繋がりにくく、樹脂Bがクラックを止める役割を果たしやすくなるため、耐久性及びトナー載り量が多い画像の耐折り曲げ性がより良くなる。TgBが30.0℃以上であることにより、耐熱保存性がより良くなり、90.0℃以下であることにより低温定着性がより良くなる。
モノマーユニット(b)は、炭素数10~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合性単量体としてビニル重合させることで、モノマーユニットとして樹脂Bに組み込むことが可能である。炭素数(m)は、好ましくは11~29であり、より好ましくは15~23である。
炭素数10~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数10~32の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル等]が挙げられる。
これらのうち、式(1)中のn、すなわちモノマーユニット(a)中の長鎖アルキル基の炭素数nと、式(2)中のm、すなわちモノマーユニット(b)中の長鎖アルキル基の炭素数mとの差の絶対値|n-m|が、10以下であることが好ましい。nとmが近いことで、長鎖アルキル基同士の相互作用がより強くなり、樹脂Aと樹脂Bの密着性が上がりやすいため、耐久性及び耐折り曲げ性がよりよくなる。より好ましくは、|n-m|が0以上5以下であり、さらに好ましくは|n-m|が0以上2以下であり、さらにより好ましくは|n-m|が0であることである。樹脂Bは、モノマーユニット(b)1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂B中のモノマーユニット(b)の含有割合は、5.0質量%~30.0質量%である。該含有割合が、5.0質量%以上であれば、樹脂Aと樹脂Bが馴染みやすくなり、密着性も上がるため、優れた耐久性及び耐折り曲げ性を有するトナーが得られる。さらに、定着時に溶融した樹脂A中に樹脂Bが分散しやすいため、優れた耐久性、耐折り曲げ性(載り量多量時)が得られる。加えて、定着画像中のトナー同士がくっつきやすくなり、優れた耐折り曲げ性(載り量少量時)が得られる。一方、該含有割合が、30.0質量%以下であることにより、樹脂Bに結晶性が生じにくく、ラメラ構造ができにくいため、クラックが広がりにくい。また、樹脂Aと密着しつつも、組成が異なり、相溶しにくいものなるため、クラックの延長を防ぎやすい。
以上より、優れた耐久性及び耐折り曲げ性(載り量多量時)が得られる。樹脂Bは、式(2)で示されるモノマーユニット(b)を、好ましくは5.0質量%~25.0質量%有し、より好ましくは10.0質量%~20.0質量%有する。なお、モノマーユニット(b)の含有割合は、上記式(2)で示されるモノマーユニット全ての含有割合の和とする。モノマーユニット(b)が複数存在する場合も同様である。
樹脂Bは、モノマーユニット(b)に加え、上記条件を満たさないその他のモノマーユニットを1種又は複数含有してもよい。その他のモノマーユニットを形成する重合性単量体としては、樹脂Aにて例示したモノマーユニット(c)やその他のモノマーユニットを形成するモノマー類等が挙げられる。
樹脂Bは、好ましくは下記式(7)で表されるモノマーユニット及び下記式(8)で表されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一を有する。樹脂Bは、より好ましくは下記式(7)及び式(8)で表されるモノマーユニットを有する。また、樹脂Bは、好ましくはさらに下記式(St)で表されるモノマーユニットを有する。式中、R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R10は、水素原子、炭素数1~4(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは2)のアルキル基又は、炭素数1~4(好ましくは1~3)のヒドロキシアルキル基を表す。
Figure 2022163694000007
樹脂B中の、式(7)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは3.0質量%~25.0質量%であり、より好ましくは10.0質量%~20.0質量%である。樹脂B中の、式(8)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは0.5質量%~35.0質量%であり、より好ましくは2.0質量%~30.0質量%である。樹脂B中の、式(St)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは40.0質量%~80.0質量%であり、より好ましくは50.0質量%~70.0質量%である。
トナー粒子中の樹脂Bの含有割合は、1.0質量%~20.0質量%であることが好ましい。該含有割合が、1.0質量%以上であると、耐久性及び耐折り曲げ性がより良くなり、20.0質量%以下であると、低温定着性がより良くなる。より好ましくは、2.0~15.0質量%であり、さらに好ましくは3.0質量%~8.0質量%である。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、樹脂Bのテトラヒドロフラン可溶分(THF可溶分)の重量平均分子量MwBが、10000~20000であることが好ましく、15000~19500であることがより好ましい。MwBが10000以上であることで、樹脂Bの弾性が高く、クラックを止める役割を果たしやすい。MwBが20000以下であることで、定着画像において、樹脂Bが樹脂A中で微分散した状態となりやすく、クラックが延長しにく。そのため、上記範囲内であることにより、耐折り曲げ性(載り量多量時)がより良好になりやすい。また、MwBが20000以下であることにより、定着時のトナー同士の接着を、樹脂Bが阻害しにくくなり、耐折り曲げ性(載り量少量時)が良好になりやすい。
樹脂Bの酸価AvBは、5.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gであることが
好ましい。酸価AvBが5.0mgKOH/g以上であることにより、トナーの親水性が向上し、紙との親和性が高まりやすいため、耐折り曲げ性(載り量少量時)が良好になりやすい。酸価AvBが30.0mgKOH/g以下であることにより、樹脂Bが酸価の小さいモノマーユニット(a)にも近づきやすく、樹脂Aと樹脂Bが密着しやすいため、耐久性、耐折り曲げ性がより良くなる。より好ましくは、10.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gである。
樹脂Aの酸価AvAと樹脂Bの酸価AvBとの差(AvB-AvA)は、5.0mgKOH/g以上であることが好ましい。5.0mgKOH/g以上あることによって、樹脂A及びBが密着しつつも、樹脂Bは樹脂Aに完全に相溶せず、クラックの延長を防ぐ役割を果たしやすい。そのため、耐久性及び耐折り曲げ性がより良好になりやすい。より好ましくは、AvB-AvAは10.0mgKOH/g以上である。AvB-AvAの上限は特に制限されないが、好ましくは30.0mgKOH/g以下であり、より好ましくは20.0mgKOH/g以下である。
また、樹脂AのSP値をSPA(J/cm0.5とし、樹脂BのSP値をSPB(J/cm0.5としたとき、SPAとSPBの差の絶対値|SPA-SPB|が下記式(5)を満たすことが好ましい。
0.2≦|SPA-SPB|≦2.0 ・・・(5)
|SPA-SPB|が0.2以上であることで、樹脂Bが樹脂Aに完全に相溶した一様な状態にはなりにくいため、樹脂Bがクラックを止める樹脂として働きやすい。そのため、耐久性、及び耐折り曲げ性がより良好になりやすい。また、|SPA-SPB|が2.0以下であることにより、樹脂Aと樹脂Bが密着した状態になりやすいため、耐久性、及び耐折り曲げ性がより良好になりやすい。すなわち、上記関係式が成り立つとき、樹脂Aと樹脂Bが密着していても、樹脂Bが樹脂Aに相溶せず、単独で存在している状態となりやすい。より好ましくは、0.2≦|SPA-SPB|≦1.6である。
結着樹脂における樹脂A及び樹脂Bの含有量の合計は、80.0質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90.0質量%~100.0質量%であり、さらに好ましくは95.0質量%~100.0質量%である。上記範囲であると、樹脂Aによる低温定着性をより発揮しやすくなる。
<樹脂A,B以外の樹脂>
結着樹脂は、樹脂A及び樹脂B以外に、トナーの樹脂成分として使用可能な他の樹脂を含んでいてもよい。例えば、樹脂A及び樹脂Bには該当しないビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
他の樹脂がビニル系樹脂である場合、上述した樹脂A及び樹脂Bに使用しうるモノマーを樹脂A及び樹脂Bに該当しない組み合わせで使用できる。他の樹脂のモノマーは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸と多価アルコールの縮重合反応により得ることができる。多価カルボン酸としては例えば以下の化合物が挙げられる。琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸のような二塩基酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル、並びに、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級アルキルエステル。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール及び1,3-プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド)付加物。アルキレングリコール及びアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。さらに、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸及び安息香酸のような1価の酸、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのような1価のアルコールも使用することもできる。ポリエステル樹脂の製造方法については特に限定されないが、例えばエステル交換法や直接重縮合法が挙げられる。
ポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート成分の反応により得られる。ジイソシアネート成分としては、以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物。以下、「変性ジイソシアネート」ともいう。)、並びに、これらの2種以上の混合物。
芳香族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びドデカメチレンジイソシアネート。
また、脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート及びメチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
これらの中でも好ましいものは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものは、XDI、IPDI及びHDIである。また、ジイソシアネート成分に加えて、トリ以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。ポリウレタンに用いることのできるジオール成分としては、前述したポリエステルに用いることのできる2価のアルコールと同様のものを採用できる。
<ワックス>
トナー粒子は、離型剤としてワックスを含有してもよい。ワックスは特に制限はないが、好ましくは、炭化水素系ワックス及び/又はエステルワックスである。炭化水素系ワックス及び/又はエステルワックスを使用することで、有効な離型性を確保しやすくなる。炭化水素系ワックスとしては特に限定はないが、例えば以下のものが挙げられる。
脂肪族炭化水素系ワックス:低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、フィッシャートロプシュワックス、またはこれらが酸化、酸付加
されたワックス。
エステルワックスは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。
エステルワックスとしては特に限定はないが、例えば以下のものが挙げられる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチル等の1価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
セバシン酸ジベヘニル等の2価カルボン酸とモノアルコールのエステル類;
エチレングリコールジステアレート、ヘキサンジオールジベヘネート等の2価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
グリセリントリベヘネート等の3価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート等の4価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート等の6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;
ポリグリセリンベヘネート等の多官能アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステルワックス類;
なかでも、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート等の6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類が好ましい。
ワックスは、炭化水素系ワックス又はエステルワックスを単独で用いてもよく、炭化水素系ワックス及びエステルワックスを併用してもよく、それぞれ二種類以上を混合して用いてもよい。
<各種添加剤>
トナーは、必要により、着色剤、磁性体、荷電制御剤及び流動化剤などから選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。トナーに用いられる各種添加剤について具体的に記載する。
<着色剤>
トナーは、着色剤を含有してもよい。着色剤として、公知の有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粒子などが挙げられる。そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いてもよい。イエロー用着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、
7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナー粒子中の分散性の点から選択すればよい。着色剤が磁性粒子ではない場合、着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対し、1.0~20.0質量部が好ましい。着色剤として磁性粒子を用いる場合、その含有量は結着樹脂100.0質量部に対し、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、特段の制限なく公知のものを用いることができる。負帯電制御剤の例として以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びジカルボン酸系の金属化合物。また、正帯電制御剤の例としては、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ピリジン系化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。荷電制御剤は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.01~20.0質量部含有されることが好ましい。より好ましくは0.5~10.0質量部である。
<外添剤>
トナー粒子に外添剤を添加してトナーとしてもよい。外添剤としては、以下のものが挙げられる。シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子からなる群から選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物など。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミナ微粒子やチタン酸ストロンチウム微粒子などが挙げられる。外添剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部~8.0質量部含有されることが好ましい。また、0.1質量部~4.0質量部であることがより好ましい。
<トナーの製造方法>
トナー粒子の製造方法は特に制限されず、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、粉砕法といった、公知の方法を採用しうる。中でも、トナー粒子間での、樹脂Aと樹脂Bの含有比率のばらつきが抑えられ、低温定着性、耐久性及び耐折り曲げ性を向上させやすいことから、懸濁重合法が好ましい。特に、上記トナーの製造には、以下の製法を用いることが好ましい。
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該結着樹脂は、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該樹脂Aは、上記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
該樹脂Bは上記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有し、
該製造方法が、該樹脂Aを形成し得る重合性単量体及び該樹脂Bを含む重合性単量体組成物を調製する工程、及び該重合性単量体組成物に含まれる該重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
上記製造方法について、詳細を述べる。樹脂A及び樹脂Bについては、上述した通りである。上記製造方法を採用することにより、低温定着性、耐久性、及び耐折り曲げ性がより優れたトナーが得られやすい。
樹脂Aを形成し得る重合性単量体は、炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。重合性単量体組成物は、重合性単量体組成物に含まれる重合
性単量体のうち、炭素数16~32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを40.0質量%~70.0質量%(好ましくは45.0質量%~65.0質量%、より好ましくは45.0質量%~60.0質量%)含有する。重合性単量体組成物は、上記モノマーユニット(c)を形成する重合性単量体、上記式(St)で表されるモノマーユニットを形成する重合性単量体及び上記式(Ac)で表されるモノマーユニットを形成する重合性単量体を含んでいてもよい。
例えば、予め合成した樹脂Bを、樹脂Aを生成する各重合性単量体の混合物に添加し、そこに、必要に応じて、着色剤、ワックス、荷電制御剤及び架橋剤などのその他材料を添加した重合性単量体組成物を均一に溶解、又は分散して重合性単量体組成物を調製する。その後、該重合性単量体組成物を水系媒体中に撹拌器などを用いて分散し、重合性単量体組成物の懸濁粒子を調製する。その後、粒子に含有される重合性単量体を重合開始剤等によって重合させることにより、トナー粒子を得る。
トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要に応じて外添剤を添加して、トナーを得るとよい。予め重合した樹脂Bを、未重合の樹脂Aの単量体液中に溶解させる工程を含むことで、樹脂Aと樹脂Bが、密着しつつ相溶はしていない状態を形成しやすい。加えて、トナー粒子間で、樹脂Aと樹脂Bの含有量比のばらつきを抑えられるため、低温定着性、耐久性、及び耐折り曲げ性が優れたトナーとなりやすい。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることが可能である。例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドのような過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
また、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤を用いてもよい。該水系媒体は、無機又は有機の分散安定剤を含有してもよい。分散安定剤としては、公知の分散安定剤を用いることが可能である。
無機の分散安定剤としては、例えば、ヒドロキシアパタイト、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛のようなリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような硫酸塩;メタケイ酸カルシウム;ベントナイト;シリカ;アルミナが挙げられる。
一方、有機の分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンが挙げられる。分散安定剤として、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒子を得るために、水系媒体中にて上記無機化合物を生成させて用いてもよい。例えば、ヒドロキシアパタイトや第三リン酸カルシウムのようなリン酸カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸塩水溶液とカルシウム塩水溶液を混合するとよい。
水系媒体は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、公知の界面活性剤を用いることが可能である。例えば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
以下、各物性などの測定方法等に関して記載する。
<トナーからの樹脂A及び樹脂Bの分離方法>
トナーからの樹脂A及び樹脂Bの分離については、公知の方法により可能であるが、以下に一例を示す。トナーからの樹脂成分を分離する方法として、グラジエントLCを使用する。本分析では、分子量によらず、結着樹脂中の樹脂の極性に応じた分離をすることができる。まず、トナーをクロロホルムに溶解する。試料はクロロホルムにてサンプル濃度が0.1質量%となるように調整し、その溶液を0.45μmのPTFEフィルターで濾過したものを測定に供した。グラジエントポリマーLC測定条件を以下に示す。
装置 :UlTIMATE3000 (Thermo Fisher Scientific製)
移動相 :A クロロホルム(HPLC)、B アセトニトリル(HPLC)
グラジエント:2min(A/B=0/100)→25min(A/B=100/0)
(なお、移動相の変化の勾配は直線になるようにした。)
流速 :1.0mL/分
注入 :0.1質量%×20μL
カラム :Tosoh TSKgel ODS(4.6mmφx150mm x 5μm)
カラム温度 :40℃
検出器 :Corona荷電化粒子検出器(Corona-CAD)(Therm
o Fisher Scientific製)
測定で得られた時間-強度のグラフについて、極性の高い成分、すなわち樹脂Bに相当するピークと、極性の低い成分、すなわち樹脂Aに相当するピークが確認される。また、樹脂A、樹脂B以外の樹脂が含有される場合には、その極性に応じたピークが観察される。その後、再度上記測定を行い、それぞれのピークの谷になる時間で分取することで、樹脂A、樹脂B及びその他の樹脂を分離することが可能である。
なお、トナー中に離型剤を含有する場合、トナーから離型剤を分離する必要がある。離型剤の分離は、リサイクルHPLCにより、分子量2000以下の成分を離型剤として分離する。測定方法を以下に示す。まず、上記した方法にてトナーのクロロホルム溶液を作製する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、クロロホルムに可溶な成分の濃度が1.0質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:LC-Sakura NEXT(日本分析工業社製)
・カラム:JAIGEL2H、4H(日本分析工業社製)
・溶離液:クロロホルム
・流速:10.0ml/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料注入量:1.0ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使
用する。
こうして得られた分子量曲線から、分子量2000以下となる成分を繰り返し分取し、トナーから離型剤を除去する。
<樹脂中の各種モノマーユニットの含有割合の測定方法>
樹脂中の各種モノマーユニットの含有割合の測定は、H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。得られたH-NMRチャートを解析し、各モノマーユニットの構造を同定する。ここでは一例として、樹脂A中のモノマーユニット(a)の含有割合の測定について記載する。得られたH-NMRチャートにおいて、モノマーユニット(a)の構成要素に帰属されるピークの中から、その他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。樹脂A中に含有されるその他のモノマーユニットについても、それぞれ同様に積分値を算出する。
樹脂Aを構成するモノマーユニットがモノマーユニット(a)とその他のモノマーユニット1種である場合、モノマーユニット(a)の含有割合は、上記積分値S1、及びその他のモノマーユニットのピークの積分値S2を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
モノマーユニット(a)の含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2))}×100
その他のモノマーユニットが2種以上ある場合でも同様にモノマーユニット(a)の含有割合を算出できる。
なお、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、H-NMRにて同様にして算出する。上記方法によって算出した各モノマーユニットの割合(モル%)に、各モノマーユニットの分子量を乗じて、各モノマーユニットの含有割合を質量%に変換する。
また、トナーを試料としてNMRを測定する場合、ワックスや樹脂A以外の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、樹脂A中の各モノマーユニットの含有割合が算出できない場合がある。その場合には、ワックスやその他の樹脂を使用しないで同様の製造を行うことで、樹脂A’を製造し、それを樹脂Aとみなして分析することができる。樹脂Bにおいても同様の方法を用いて測定を行う。
<樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液
を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<吸熱ピーク温度及び吸熱量の測定方法>
トナー又は樹脂の吸熱ピーク温度(融点)及び吸熱量は、DSC Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料5mgを精秤し、アルミ製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。昇温過程として、10℃/minの速度で180℃まで昇温させる。そして、各ピークからピークトップの温度及び吸熱量を算出する。
トナーを試料とするDSC測定において、樹脂Aに由来する吸熱ピークが、離型剤等のその他の吸熱ピークとは重なっていない場合は、得られた吸熱ピークをそのまま“樹脂Aに由来する吸熱ピーク”とみなす。一方、離型剤等のその他の成分の吸熱ピークが樹脂Aに由来する吸熱ピークと重複する場合は、離型剤等に由来する吸熱ピークを分離する必要がある。
例えば、以下の方法により、離型剤に由来する吸熱ピークを分離して、樹脂Aに由来する吸熱ピークを得ることができる。まず、別途離型剤単体のDSC測定を行い、吸熱特性を求める。次いで、トナー中の離型剤含有量を求める。トナー中の離型剤含有量の測定は、公知の構造解析によって行うことができる。その後、トナー中の離型剤含有量から離型剤に起因する吸熱ピークを確定し、樹脂Aに由来するピークからこの分を差し引けばよい。
離型剤が樹脂Aと相溶しやすい場合には、離型剤の含有量に相溶率を乗じた上で離型剤に起因する吸熱量を算出して差し引いておく必要がある。相溶率は、樹脂成分の溶融混合物と離型剤とを、離型剤の含有率と同比率で溶融混合したものについて求めた吸熱量を、予め求めておいた溶融混合物の吸熱量と離型剤単体の吸熱量から算出される理論吸熱量で除した値から算出する。吸熱量は、対応する吸熱ピークTpよりも20.0℃低い温度からTpよりも10.0℃高い温度までの吸熱量をDSC解析ソフトによって算出する。
なお、樹脂Aに由来する吸熱ピークが複数存在する場合、最もピーク高さが高いピークのピーク温度が、“最大の吸熱ピークのピーク温度”であり、複数のピークの合計の吸熱量が、“樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量”である。
<ガラス転移温度の測定>
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲-10~200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて-10℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとする。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<樹脂の酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。樹脂A、Bなど樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。上記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウム溶液の量から求める。上記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<SP値の算出方法>
SPa、及びSPcなどモノマーユニットのSP値は、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。それぞれの重合性単量体の二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造における原子または原子団に対して、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm/mol)を求め、(4.184×ΣΔei/ΣΔvi)0.5をSP値(J/cm0.5とする。
一方、樹脂のSP値であるSPA及びSPBは、その樹脂を構成するモノマーユニット
の蒸発エネルギー(Δei)及びモル体積(Δvi)をモノマーユニットごとに求め、各モノマーユニットの樹脂中におけるモル比(j)との積をそれぞれ算出し、各ユニットの蒸発エネルギーの総和をモル体積の総和で割ることによって求め、下記式により算出する。
SPs={(Σj×ΣΔei)/(Σj×ΣΔvi)}1/2
上述のように、各樹脂について、SP値を算出する。SP値の単位は、1(cal/cm0.5=2.045(J/cm0.5によって、(cal/cm0.5の単位に変換することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
<樹脂B1の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・溶媒 トルエン 100.0部
・スチレン 64.0部
・アクリル酸ベヘニル 18.0部
・アクリロニトリル 15.0部
・メタクリル酸 3.0部
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)5.0部
上記反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して樹脂B1を得た。樹脂B1の物性値を表1に示す。樹脂B1をNMRで分析し、mоl%を質量%に換算すると、スチレンが重合したモノマーユニットが64.0質量%、アクリル酸べヘニルが重合したモノマーユニットが18.0質量%、アクリロニトリルが重合したモノマーユニットが15.0質量%、メタクリル酸が重合したモノマーユニットが3.0質量%含まれていた。
<樹脂B2~9、12~18の製造例>
重合性単量体の種類及び仕込み量を、表1のように変更する以外は、樹脂B1の製造方法と同様にして、樹脂B2~9、12~18を得た。物性値を表1に示す。
<樹脂B10の製造例>
重合開始剤t-ブチルパーオキシピバレートの部数を7.0部に変更する以外は、樹脂B1の製造方法と同様にして、樹脂B10を得た。樹脂B10の物性値を表1に示す。
<樹脂B11の製造例>
重合開始剤t-ブチルパーオキシピバレートの部数を3.0部に変更する以外は、樹脂B1の製造方法と同様にして、樹脂B11を得た。樹脂B11の物性値を表1に示す。
樹脂B2~B18をNMRで分析したところ、樹脂B1と同様に、使用したモノマーと同じ質量比率で各モノマーユニットが存在することが確認できた。
Figure 2022163694000008
表中、酸価の単位はmgKOH/gであり、SP値の単位は(J/cm0.5である。
以下も含め、表中、以下のように略称で表記している。
・BeA:アクリル酸ベヘニル (炭素数m=22)
・AN:アクリロニトリル
・MAA:メタクリル酸
・St:スチレン
・StA:アクリル酸ステアリル (炭素数m=17)
・MiA:アクリル酸ミリシル (炭素数m=29)
・LaA:アクリル酸ラウリル (炭素数m=11)
・DcA:アクリル酸デシル (炭素数m=9)
・HEMA:メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル
<非晶性樹脂1の製造例>
反応容器に投入する材料を下記のように変更する以外は、樹脂B1の製造方法と同様にして、非晶性樹脂1を得た。
・溶媒 トルエン 100.0部
・スチレン 64.0部
・n-ブチルアクリレート 36.0部
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)5.0部
<トナー1の製造例>
[懸濁重合法によるトナーの製造]
(トナー粒子1の調製)
下記材料をアトライター(日本コークス社製)に投入した。
・メタクリロニトリル 28.8部
・スチレン 6.7部
・メタクリル酸エチル 12.5部
・着色剤 ピグメントブルー15:3 6.0部
直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。
一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水を735.0部、及びリン酸三ナトリウム・12水和物を16.0部投入し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。続いて、上記容器の中に、イオン交換水65.0部に9.0部の塩化カルシウム・2水和物を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌することで、ヒドロキシアパタイトを含む分散安定剤が水中に分散した水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、下記材料を投入した。
・アクリル酸ベヘニル 48.2部
・樹脂B1 3.8部
・ワックス ヘキサステアリン酸ジペンタエリスリトール 9.0部
60℃を保持しながら100rpmで30分間撹拌した後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)5.0部を添加してさらに1分間撹拌し、上記の高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体に投入した。60℃を保持しながら上記の高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。
上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで12時間重合反応を行い、トナー粒子分散液を得た。得られたトナー粒子分散液を、150rpmで撹拌しながら45℃まで冷却した後、45℃を維持したまま5時間熱処理を行った。熱処理後、30℃まで冷却し、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて上記の分散安定剤を溶解させた。その後、固形分を濾別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、30℃で24時間真空乾燥して、樹脂A1を含むトナー粒子1を得た。
また、上記トナー粒子1の製造方法において、ピグメントブルー15:3、樹脂B、ワックスを使用しないようにする以外はすべて同様にして、樹脂A1’を得た。樹脂A1’の重量平均分子量(Mw)は56,000、融点は63℃、酸価は0.0mgKOH/gであった。樹脂A1’をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニルが重合したモノマーユニットが50.0質量%、メタクリロニトリルが重合したモノマーユニットが30.0質量%、スチレンが重合したモノマーユニットが7.0質量%、メタクリル酸エチルが重合したモノマーユニットが13.0質量%含まれていた。前述の方法でトナーから分離して得られる樹脂Aと、この樹脂A’とが同様の物性を有していることが確認された。また、前述の方法でトナーから分離して得られる樹脂Bと原料として用いた樹脂B1とが、同様の物性を有していることも確認された。
100.0部のトナー粒子1に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ジメチルシリコーン処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。
トナー1から前述の方法で樹脂Aと樹脂Bとを分離し、得られた各樹脂の物性を測定した。各物性を表5に、評価結果を表6に示す。
<トナー2~30の製造例>
トナー1の製造例において、使用する単量体の種類と添加量、樹脂Bの種類と添加量、その他の添加物の種類と添加量を表2のように変更する以外はすべて同様にして、トナー
粒子2~30を得た。さらに、トナー1と同様の外添を行い、トナー2~30を得た。トナーの物性を表5に、評価結果を表6に示す。尚、トナー28に関しては、上記の樹脂A1’と同様にして樹脂A’を作成して、その物性を測定することで、樹脂Aの物性とした。
Figure 2022163694000009
表中、以下のように略称で表記している。その他の略称は表1と同様である。
MAN:メタクリロニトリル
VA:酢酸ビニル
AD:アクリルアミド
<トナー31の製造例>
(樹脂A31の製造例)
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・トルエン 100.0部
・アクリル酸ベヘニル 50.0部
・メタクリロニトリル 30.0部
・メタクリル酸エチル 13.0部
・スチレン 7.0部
・t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV) 0.5部
上記反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。得られた溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分を濾別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して樹脂A31を得た。
[粉砕法によるトナーの製造]
・樹脂A31 96.2部
・樹脂B1 3.8部
・着色剤 ピグメントブルー15:3(大日精化製) 6.0部
・ワックス ヘキサステアリン酸ジペンタエリスリトール 9.0部
・荷電制御剤(LR147:日本カーリット社製) 2.0部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業社製)で前混合した後、二軸混練押し出し機(池貝鉄工社製PCM-30型)を用いて150℃で溶融混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却する過程において、45℃において5時間保持する熱処理を行った。熱処理後の混錬物を、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T-250)で粉砕し、微粉砕粉末を得た。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)が、7.0μmのトナー粒子31を得た。
100.0部のトナー粒子31に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー33を得た。トナー31の物性を表5に、評価結果を表6に示す。
<トナー32の製造例>
[乳化凝集法によるトナーの製造]
(樹脂A31分散液の調製)
・トルエン 300.0部
・樹脂A31 100.0部
上記材料を秤量・混合し、90℃で樹脂A31を溶解させ、トルエン溶液を得た。別途、イオン交換水700.0部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0部、ラウリン酸ナトリウム10.0部を加え90℃で加熱溶解させ、水溶液を得た。次いで、上記のトルエン溶液と水溶液を混ぜ合わせ、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで攪拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い、樹脂A31の微粒子が20質量%で含有された、分散液を得た。樹脂A31分散液に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.40μmであった。
(樹脂B1分散液の調製)
上記樹脂A31分散液の調製において、樹脂A31を樹脂B1に変更すること以外は、すべて樹脂A31分散液の調製と同様に行い、樹脂B1の微粒子が20質量%で含有された、樹脂B1の分散液を得た。樹脂B1分散液に対して、体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.38μmであった。
(ワックス分散液1の調製)
・ワックス (ヘキサステアリン酸ジペンタエリスリトール) 100.0部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 5.0部
・イオン交換水 395.0部
上記材料を、攪拌装置付きの混合容器に投入し、90℃に加熱した。その後、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環させて分散処理を60分間行った。分散処理の条件は、以下のようにした。
・ローター外径:3cm
・クリアランス:0.3mm
・ローター回転数:19000rpm
・スクリーン回転数:19000rpm
分散処理後、ローター回転数1000rpm、スクリーン回転数0rpm、冷却速度10℃/分の冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、ワックスの微粒子が20質量%含有されるワックス分散液1を得た。ワックスの微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.15μmであった。
(着色剤分散液1の調製)
・着色剤(ピグメントブルー 15:3) 50.0部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 7.5部
・イオン交換水 442.5部
上記材料を秤量・混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて1時間分散して、着色剤の微粒子が10質量%含有された着色剤分散液1を得た。上記着色剤の微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を測定したところ、0.20μmであった。
(トナー32の調製)
下記材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、混合した。
・樹脂A31分散液: 480.0部
・樹脂B1分散液: 20.0部
・ワックス分散液1: 45.0部
・着色剤分散液1: 60.0部
・イオン交換水: 160.0部
混合した後、ホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000rpmで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子を適宜確認し、重量平均粒径(D4)が6.0μmである凝集粒子が形成されたところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを9.0にした。その後、攪拌を継続しながら、75℃まで加熱した。75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。
続いて、90℃まで昇温した後、90℃を保持しながら1時間保持し、その後70℃で3時間保持することで熱処理を行った。熱処理後、30℃まで冷却し、濾過・固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒径(D4)が6.1μmのトナー粒子32を得た。
100.0部のトナー粒子32に対して、外添剤として、シリカ微粒子(ジメチルシリコーン処理、1次粒子の個数平均粒径:10nm)2.0部を加えてFMミキサ(日本コークス工業社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー32を得た。トナー32の物性を表5に、評価結果を表6に示す。
<比較用樹脂B1,B3,B5,B6の製造例>
重合性単量体の種類及び添加量(質量部)を、表3のように変更する以外は、樹脂B1
の製造方法と同様にして、比較用樹脂B1,B3,B5,B6を得た。物性値を表3に示す。
<比較用樹脂B2の製造例>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に以下の材料を添加した。
・テレフタル酸 32.3部
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物 67.7部
・シュウ酸チタンカリウム(触媒) 0.02部
続いて、窒素雰囲気下、常圧下220℃で所望の分子量に到達するまで反応を行った。降温後粉砕し、比較用樹脂B2を得た。比較用樹脂B2の物性値を表3に示す。
<比較用樹脂B4の製造例>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.0部
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
33.0部
・テレフタル酸 21.0部
・ドデセニルコハク酸 15.0部
・酸化ジブチルスズ 0.1部
減圧操作により系内を窒素置換した後、215℃にて5時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更にさらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂を合成した。比較用樹脂B4の物性値を表3に示す。
Figure 2022163694000010
表中の略称は以下の通り。
BPA-PO2モル付加物:ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2モル付加物
CeA:アクリル酸セチル(炭素数16)
Figure 2022163694000011
<比較トナー1,2,5~8製造例>
トナー1の製造例において、使用する単量体の種類と添加量、比較用樹脂Bの種類と添加量を表4のように変更する以外はすべて同様にして、比較トナー粒子1,2、5~8を得た。さらに、トナー1と同様の外添を行い、比較トナー1,2,5~8を得た。トナーの物性を表5に、評価結果を表6に示す。
Figure 2022163694000012
表中、比較用樹脂Bの番号は使用した比較用樹脂の番号を示すが、比較トナー7,8においては表1に記載の樹脂B1を用いたことを示している。
BMA:メタクリル酸ブチル
<比較トナー3の製造例>
・アクリル酸べヘニル 63.6部
・メタクリル酸ブチル 27.3部
・1,10-デカンジオールジアクリレート(架橋剤) 0.7部
・ピグメントブルー15:3 6.5部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
・パラフィンワックス 9.0部
(日本精鑞製:HNP-51 融点74℃)
・比較用樹脂B3 9.1部
・トルエン 100.0部
上記材料からなるモノマーの混合物を調製した。これに15mmのジルコニアビーズを入れ、アトライター(三井三池化工機製)を用いて2時間分散して、モノマー組成物を得た。また、高速撹拌装置TK-ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えた容器に、イオン交換水800部とリン酸三カルシウム15.5部を添加し、回転数を15000回転/分に調整し、70℃に加温して分散媒系とした。該モノマー組成物に重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート6.0部を添加し、これを上記分散媒系に投入した。前記高速撹拌装置にて12000回転/分を維持しつつ20分間の造粒工程を行った。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150回転/分で撹拌しながら70℃を保持して10時間重合を行った後、95℃で5時間脱溶媒を行った。
得られたトナー粒子分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。さらに、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥して、比較トナー粒子3を得た。さらに、トナー1と同様の外添を行い、比較トナー3を得た。
<比較トナー4の製造例>
・アクリル酸ベヘニル 63.1部
・メタクリロニトリル 20.7部
・スチレン 10.4部
・ポリプロピレングリコールジアクリレート 1.9部
(新中村化学工業社製, APG-400, 分子量536)
・ピグメントブルー15:3 6.5部
・ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム 1.0部
・フィッシャートロプッシュワックス 20.0部
(日本精蝋社製:HNP-51、 融点Tm:74℃)
・比較用樹脂B4 3.8部
・トルエン 100.0部
上記材料からなる混合物を調製した。上記該混合物をアトライター(日本コークス社製)に投入し、直径5mmのジルコニアビーズを用いて、200rpmで2時間分散することで原材料分散液を得た。一方、高速撹拌装置ホモミクサー(プライミクス社製)及び温度計を備えた容器に、イオン交換水735.00部とリン酸三ナトリウム(12水和物)16.00部を添加し、12000rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、イオン交換水65.00部に塩化カルシウム(2水和物)9.00部を溶解した塩化カルシウム水溶液を投入し、60℃を保持しながら12000rpmで30分間撹拌した。そこに、10%塩酸を加えてpHを6.0に調整し、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
続いて、上記原材料分散液を撹拌装置及び温度計を備えた容器に移し、100rpmで撹拌しながら60℃に昇温した。そこに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)8.00部を添加して60℃を保持しながら100rpmで5分間撹拌した後、上記高速撹拌装置にて12000rpmで撹拌している水系媒体中に投入した。60℃を保持しながら上記高速撹拌装置にて12000rpmで20分間撹拌を継続し、造粒液を得た。
上記造粒液を還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下において150rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。70℃を保持しながら150rpmで10時間重合反応を行った。その後、反応容器から還流冷却管を外し、反応液を95℃に昇温した後、95℃を保持しながら150rpmで5時間撹拌することでトルエンを除去し、トナー粒子分散液を得た。得られたトナー粒子分散液を150rpmで撹拌しながら20℃まで冷却した後、撹拌を保持したままpHが1.5になるまで希塩酸を加えて分散安定剤を溶解させた。固形分をろ別し、イオン交換水で充分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して比較トナー粒子4を得た。さらに、トナー1と同様の外
添を行い、比較トナー4を得た。トナーの物性を表5に、評価結果を表6に示す
<比較トナー9の製造例>
(比較用樹脂A9粒子分散液の作製)
・スチレン 300.0部
・アクリル酸ステアリル 700.0部
・ドデシルメルカプタン 6.0部
・デカンジオールジアクリル酸エステル 4.0部
以上を混合し、溶解したものを、アニオン性界面活性剤ニューレックスペーストH(日油社製)20.0部をイオン交換水1300.0部に溶解したものに、フラスコ中にて分散、乳化した。10分間攪拌しながら、過硫酸アンモニウム20.0部を溶解したイオン交換水200.0部を投入し、窒素置換を行った後、内容物が70℃になるまで加熱し、6時間乳化重合を行った。その後、反応液を室温まで冷却することで比較用樹脂A9粒子分散液を作製した。
(比較用樹脂B7粒子分散液の作製)
・スチレン 300.0部
・アクリル酸ステアリル 700.0部
・アクリル酸 20.0部
・ドデシルメルカプタン 12.0部
・デカンジオールジアクリル酸エステル 4.0部
以上を混合し、溶解したものを、アニオン性界面活性剤ニューレックスペーストH(日油社製)20.0部をイオン交換水1300.0部に溶解したものに、フラスコ中にて分散、乳化した。10分間攪拌しながら、過硫酸アンモニウム20.0部を溶解したイオン交換水200.0部を投入し、窒素置換を行った後、内容物が70℃になるまで加熱し、6時間乳化重合を行った。その後、反応液を室温まで冷却することで比較用樹脂B7粒子分散液を作製した。分散液の一部から採取した比較用樹脂B7の分析を行った。比較用樹脂B7のMwは16800、酸価は18.0mgKOH/g、SP値は20.2(J/cm0.5、Tmは56℃であった。
(着色剤分散液の調製)
フタロシアニン顔料 ・・・・・・・・・・250部
(大日精化(株)製:PV FAST BLUE)
アニオン界面活性剤 ・・・・・・・・・・20部
(第一工業製薬(株)社製:ネオゲンRK)
イオン交換水 ・・・・・・・・・・730部
以上を混合し、溶解させた後、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)を用いて分散し、着色剤分散液を得た。
(ワックス粒子分散液の調製)
ポリエチレンワックス ・・・・・・・・・・400部
(東洋ペトロライト社製:Polywax725)
アニオン界面活性剤 ・・・・・・・・・・20部
(日本油脂(株)製:ニュ-レックスR)
イオン交換水 ・・・・・・・・・・580部
以上を混合し、溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、ワックス粒子(ポリエチレンワックス)を分散させてなるワックス粒子分散液を調製した。
(比較用トナー粒子9の製造)
比較用樹脂A9粒子分散液 900.0部
比較用樹脂B7粒子分散液 225.0部
着色剤粒子分散液 100.0部
ワックス粒子分散液 63.0部
硫酸アルミニウム 5.0部
(和光純薬社製)
イオン交換水 1000.0部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中に収容させ、pH2.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた後、加熱用オイルバス中で64℃まで攪拌しながら加熱した。61℃で3時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.0μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。さらに4時間61℃で加熱攪拌を保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.4μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。この凝集粒子のpHは2.5であった。そこで炭酸水素ナトリウム(和光純薬社製)を0.5質量%に希釈した水溶液を添加し、pHを7.2に調整した後、攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、6時間保持した。その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより比較用トナー粒子9を得た。得られた比較用トナー粒子9の平均粒径は5.5μmであった。さらに、実施例1と同様の外添を行い、比較用トナー9を得た。トナーの物性を表5に、評価結果を表6に示す。
Figure 2022163694000013
Figure 2022163694000014
表中、酸価の単位はmgKOH/gであり、SP値の単位は(J/cm0.5である。
Figure 2022163694000015
以下に、トナーの評価について説明する。
<トナーの低温定着性の評価>
トナーの低温定着性の評価には、画像形成装置として、レーザービームプリンター(商品名:LBP-7700C、キヤノン社製)の改造機を用いた。改造機の改造点としては、定着器を外しても動作するようにしたこと、及び定着温度を自由に設定できるようにした点である。また、画像を出力する際に用いた用紙は、ラフ紙であるFox River
Bond(110g/m)、FOX RIVER社であった。まず、カートリッジ内部からトナーを取り出し、エアーブローによって清掃した後、カートリッジにトナーを300g充填した。そして、そのカートリッジを温度25℃、湿度40%RHの環境下(N/N環境下)で48時間放置し、該環境下にて上記プリンターのシアンステーションに装着し、その他は、ダミーカートリッジを装着した。以下、上記と同様の環境下で評価を行った。
続いて、定着器を取り外した、上記の画像形成装置を用い、10mm×10mmの四角画像を、用紙の長辺と短辺をそれぞれ4等分する線の交点となる9ポイントに転写した画像パターンの未定着画像を出力した。用紙上のトナー乗り量は、0.80mg/cmとした。取り外した定着器を用い、プロセススピードを250mm/sに設定し、初期温度を90℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記の未定着画像の定着を行い、各温度での定着画像を得た。得られた定着画像に対して、50g/cmの荷重をかけ、シルボン紙〔Lenz Cleaning Paper “dasper(R)”(Ozu Paper Co.Ltd)〕で5往復摺擦を行った。摺擦の前後の画像濃度を測定し、摺擦前の画像濃度に対する、摺擦後の画像濃度の低下率が20%以下になったときの温度を定着開始温度とし、この値を用いてトナーの低温定着性を評価した。C以上を良好と判断した。評価結果を表6に示す。
A:定着開始温度が100℃以下
B:定着開始温度が105℃以上110℃以下
C:定着開始温度が115℃以上120℃以下
D:定着開始温度が125℃以上
<トナーの耐久性の評価>
市販のキヤノン製プリンターLBP-712Ciを使用し、耐久性の評価を行った。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを200g充填したものを使用した。上記カートリッジを25℃、40%RH環境にて48時間放置した後、シアンステーションに装着し耐久性評価を実施した。このとき、他色のステーションにはダミーカートリッジを装着した。
25℃、40%RH環境下にて、Canon Oce Red Label(80g/m)を使用し、印字率が1%の横線パターン画像を20000枚連続して出力した。その後、ベタ画像、ハーフトーン画像を出力し、規制部材へのトナー融着に起因する周方向のスジ、いわゆる現像スジ発生の有無を目視で確認した。なお、C以上を良好と判断した。評価結果を表6に示す。
A:現像スジが未発生
B:現像スジが1カ所以上2カ所以下発生
C:現像スジが3カ所以上4カ所以下発生
D:現像スジが5カ所以上発生
<トナー多量積載画像の耐折り曲げ性の評価>
市販のキヤノン製プリンターLBP-712Ciを使用して、耐折り曲げ性の評価を行った。トナーが充填されたプロセスカートリッジを25℃、40%RH環境にて48時間放置した。上記プリンターを用いて、50mm×50mm、トナー載り量1.0mg/cmのベタ画像を上記定着開始温度+10℃で、転写紙の中心に形成したものを2枚印刷した。
1枚は、谷折り線が上記ベタ画像の対角線を描くように転写紙を折り曲げ、山折り線が転写画像の各辺を二等分する十字を描くように転写紙を折り曲げた。折り曲げの操作は3回ずつ行った。4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙(商品名「ダスパー」、小津産業社製)により5往復摺擦した。4本の折り曲げ線の交点を中心として画像濃度を測定した。もう1枚は、折り曲げ操作は行わず、上記摺擦操作のみを行い、ベタ画像の中心に合わせて画像濃度を測定した。折り曲げを行った転写紙と行っていない転写紙の画像濃度の比較を行い、その濃度低下率を評価した。C以上を良好と判断した。
A:濃度の減少率が5.0%未満
B:濃度の減少率が5.0%以上8.0%未満
C:濃度の減少率が8.0%以上10.0%未満
D:濃度の減少率が10.0%以上
<トナー少量積載画像の耐折り曲げ性の評価>
市販のキヤノン製プリンターLBP-712Ciを使用して、耐折り曲げ性の評価を行った。トナーが充填されたプロセスカートリッジをN/N環境にて48時間放置した。上記プリンターを用いて、50mm×50mm、トナー載り量0.3mg/cmのベタ画像を上記定着開始温度+10℃で、転写紙の中心に形成したものを2枚印刷した。
1枚は、谷折り線が上記ベタ画像の対角線を描くように転写紙を折り曲げ、山折り線が転写画像の各辺を二等分する十字を描くように転写紙を折り曲げた。折り曲げの操作は3回ずつ行った。4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙(商品名「ダスパー」、小津産業社製)により5往復摺擦した。4本の折り曲げ線の交点を中心として画像濃度を測定した。もう1枚は、折り曲げ操作は行わず、上記摺擦操作のみを行い、ベタ画像の中心に合わせて画像濃度を測定した。折り曲げを行った転写紙と行っていない転写紙の画像濃度の比較を行い、その濃度低下率を評価した。C以上を良好と判断した。
A:濃度の減少率が7.0%未満
B:濃度の減少率が7.0%以上9.0%未満
C:濃度の減少率が9.0%以上12.0%未満
D:濃度の減少率が12.0%以上
<トナーの耐熱保存性の評価>
6gのトナーを100mLの樹脂製カップに入れ、温度50℃、湿度20%RH環境下で10日放置した後、放置したトナーの凝集度を以下のようにして測定した。測定装置として、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)の振動台側面部分に、デジタル表示式振動計「デジバイブロ MODEL 1332A」(昭和測器社製)を接続したものを用いた。そして、パウダーテスターの振動台上に下から、目開き38μm(400メッシュ)の篩、目開き75μm(200メッシュ)の篩、目開き150μm(100メッシュ)の篩の順に重ねてセットした。測定は、23℃、60%RH環境下で、以下手順で行った。
(1)デジタル表示式振動計の変位の値を0.60mm(peak-to-peak)になるように振動台の振動幅を予め調整した。
(2)上記のように10日放置したトナーを、予め23℃、60%RH環境下において24時間放置し、そのうちトナー5gを精秤し、最上段の目開き150μmの篩上に静かにのせた。
(3)篩を15秒間振動させた後、各篩上に残ったトナーの質量を測定して、下記式を用いて凝集度(%)を算出した。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
凝集度(%)=
{(目開き150μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100
+{(目開き75μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.6
+{(目開き38μmの篩上の試料質量(g))/5(g)}×100×0.2
A:凝集度が20%未満
B:凝集度が20%以上25%未満
C:凝集度が25%以上30%未満
D:凝集度が30%以上
各トナーの評価結果を表6に示す。
Figure 2022163694000016

Claims (14)

  1. 結着樹脂を有するトナー粒子を有するトナーであって、
    該結着樹脂が、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
    該トナーを試料とする示差走査熱量測定において、該樹脂Aに由来する吸熱ピークが観察され、最大の吸熱ピークのピークトップ温度が、50.0℃~90.0℃の範囲に存在し、該樹脂Aに由来する吸熱ピークの吸熱量が、該トナー1g当たり、30J/g~70J/gであり、
    該トナー粒子中における該樹脂Aの含有割合が、60.0質量%~90.0質量%であり、
    該樹脂Aが、下記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
    該樹脂Bが、下記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有することを特徴とするトナー。
    Figure 2022163694000017
    [式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは15~31の整数を表す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは9~31の整数を表す。]
  2. 前記式(1)中のn及び前記式(2)中のmの差の絶対値|n-m|が、10以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記トナー粒子中の前記樹脂Bの含有割合が、1.0質量%~20.0質量%である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記樹脂Aが、前記モノマーユニット(a)とは異なるモノマーユニット(c)を有し、
    前記モノマーユニット(a)のSP値をSPaとし、該モノマーユニット(c)のSP値をSPcとしたとき、下記式(3)を満たし、
    前記樹脂A中の下記式(3)を満たす該モノマーユニット(c)の含有割合が、20.0質量%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
    3.0≦(SPc-SPa)≦25.0 ・・・(3)
  5. 前記モノマーユニット(c)が下記式(4)で表される請求項4に記載のトナー。
    Figure 2022163694000018
    [式(4)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す]
  6. ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される、前記樹脂Bのテトラヒドロフラン可溶分の重量平均分子量MwBが、10000~20000である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記樹脂Bの酸価AvBが、5.0mgKOH/g~30.0mgKOH/gであり、
    前記樹脂Aの酸価AvAと、該酸価AvBとの差(AvB-AvA)が、5.0mgKOH/g以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 前記樹脂Aの酸価AvAが、5.0mgKOH/g以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. 前記樹脂AのSP値をSPA(J/cm0.5とし、該樹脂BのSP値をSPB(J/cm0.5としたとき、SPAとSPBの差の絶対値が下記式(5)を満たす請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
    0.2≦|SPA-SPB|≦2.0 ・・・(5)
  10. 前記樹脂Bのガラス転移温度TgBが、30.0℃~90.0℃である請求項1~9のいずれか一項に記載のトナー。
  11. 前記樹脂Bが、前記式(2)で示される前記モノマーユニット(b)を5.0質量%~25.0質量%有する請求項1~10のいずれか一項に記載のトナー。
  12. 前記結着樹脂における前記樹脂A及び前記樹脂Bの含有量の合計が、80.0質量%以上である請求項1~11のいずれか一項に記載のトナー。
  13. 前記樹脂Aが、示差走査熱量測定において明確な吸熱ピークを有する結晶性樹脂であり、
    前記樹脂Bが、示差走査熱量測定において明確な吸熱ピークを有しない樹脂である請求項1~12のいずれか一項に記載のトナー。
  14. 結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
    該結着樹脂は、樹脂A及び樹脂Bを含有し、
    該樹脂Aは下記式(1)で示されるモノマーユニット(a)を40.0質量%~70.0質量%有し、
    該樹脂Bは下記式(2)で示されるモノマーユニット(b)を5.0質量%~30.0質量%有し、
    該製造方法が、
    該樹脂Aを形成し得る重合性単量体及び該樹脂Bを含む重合性単量体組成物を調製する
    工程、及び
    該重合性単量体組成物に含まれる該重合性単量体を重合させて該トナー粒子を得る工程を有する、ことを特徴とするトナーの製造方法。
    Figure 2022163694000019
    [式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは15~31の整数を表す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは9~31の整数を表す。]
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