以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部2の踏面3を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、踏面3として形成されている。踏面3には、タイヤ赤道面CLを中心とするタイヤ幅方向における両側のそれぞれに複数の溝10が形成されており、複数の溝10によって複数の陸部15が区画されている。本実施形態では、溝10としては、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝11と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝12とが形成されており、複数の溝10により区画される陸部15は、これらの複数の周方向溝11やラグ溝12によって、ブロック状の形状で形成されている。即ち、空気入りタイヤ1は、トレッド部2に形成される溝10や陸部15により表れるトレッドパターンが、いわゆるブロックパターンになっている。
本実施形態では、周方向溝11は2本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、2本の周方向溝11は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ1本ずつ配設されている。これにより、陸部15は、タイヤ幅方向における両側が周方向溝11によって区画されるセンター陸部16と、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側で、それぞれ周方向溝11のタイヤ幅方向外側に配置されるショルダー陸部17とを有している。
また、踏面3には、複数のサイプ20が形成されている。ここでいうサイプ20は、踏面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部15の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部15の変形によって互いに接触するものをいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。本実施形態では、サイプ20は、後述する円形部36(図3参照)以外の位置でのサイプ壁31(図3参照)同士の間隔であるサイプ幅が、0.6mm未満になっている。
サイプ20は、所定の深さでタイヤ幅方向に延びて形成されており、溝10によって区画される各陸部15に配置されている。即ち、サイプ20は、センター陸部16とショルダー陸部17とのいずれの陸部15にも配置されている。各陸部15に配置されるサイプ20は、それぞれの陸部15に、延在方向が互いに略平行となる向きで複数ずつが設けられている。
図2は、図1のA部詳細図である。図3は、図1のB部詳細図である。陸部15に備えられるサイプ20は、タイヤ幅方向における端部25が陸部15内で終端する、いわゆるクローズドサイプになっている。クローズドサイプとして形成される各サイプ20は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に複数回繰り返し屈曲することにより振幅している。また、各サイプ20は、サイプ20の平面視における長さ方向における両側の端部25付近に、ストレート部26が形成されている。ストレート部26は、サイプ20の平面視において、即ち、サイプ20を深さ方向に見た場合において、屈曲することなく直線状に形成されている。
本実施形態では、ストレート部26はタイヤ幅方向に延びている。また、サイプ20の長さ方向における両側に位置するストレート部26は、互いにほぼ同一線上に位置している。なお、ストレート部26は、正確にタイヤ幅方向に延びていなくてもよく、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に±15°の範囲内で傾斜していてもよい。サイプ20は、このように長さ方向における両端部25側に形成されるストレート部26同士の間の位置が、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に振幅している。
陸部15に配置されるサイプ20は、センター陸部16に配置されるサイプ20と、ショルダー陸部17に配置されるサイプ20とで、配置されるサイプ20の形態が異なっている。センター陸部16には、サイプ20として幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとが配置されている。また、ショルダー陸部17には、サイプ20として幅変化サイプ20vと定幅サイプ20cとが配置されている。
図4は、図2のC-C断面図である。サイプ20は、サイプ20の長さ方向と深さ方向との双方に対してサイプ20の幅方向に振幅する、いわゆる三次元サイプになっている。このため、サイプ20は、サイプ20の幅方向にサイプ壁31が振幅する三次元壁部32を有している。サイプ壁31が有する三次元壁部32は、サイプ20の長さ方向におけるストレート部26(図2、図3参照)同士の間の位置でサイプ20の長さ方向に延びつつサイプ20の幅方向に振幅すると共に、サイプ20の深さ方向に延びつつサイプ20の幅方向に振幅している。つまり、三次元壁部32は、サイプ20の長さ方向を法線方向とする断面視と、サイプ20の深さ方向を法線方向とする断面視の双方にて、サイプ20の幅方向に繰り返し屈曲することにより振幅している。
また、サイプ20は、三次元壁部32よりもサイプ底35側の位置に、円形部36を有している。円形部36は、サイプ底35を含む位置に形成されており、サイプ底35と、サイプ底35近傍のサイプ壁31とにより形成されている。サイプ底35とサイプ壁31とにより形成される円形部36は、サイプ20の長さ方向に見た断面視において、サイプ底35とサイプ壁31とが連続して湾曲することにより、略円形状に形成されている。
図5は、図4のE部詳細図である。各サイプ20では、円形部36は、対向する一対のサイプ壁31のうちの少なくとも一方が他方のサイプ壁31から離れる方向に凹み、サイプ底35とサイプ壁31とが連続して湾曲状に形成されている。本実施形態では、円形部36は、サイプ底35を挟んで対向する一対のサイプ壁31のうち、一方のサイプ壁31は、他方のサイプ壁31から離れる方向に湾曲状に凹み、他方のサイプ壁31は、サイプ壁31同士の距離が大きくなる方向に凹むことなく、サイプ底35から連続して湾曲している。
各サイプ20では、このように形成される円形部36が、サイプ20の長さ方向において三次元壁部32が形成される範囲と同じ範囲で、サイプ20の長さ方向に延びて形成されている。つまり、円形部36は、サイプ20の長さ方向における、ストレート部26(図2、図3参照)同士の間の範囲に形成されている。また、円形部36は、踏面3に対するサイプ20の開口部21の開口幅方向における中心を通りタイヤ径方向に延びるサイプ中心線CSに対して、開口部21の開口幅方向における一方側、或いは、サイプ20の幅方向における一方側に、偏在している。ここでいう円形部36の偏在は、円形部36におけるサイプ中心線CSから最も離れている位置でのサイプ中心線CSからの距離である円形部幅WBが、サイプ20の深さ方向における位置が円形部幅WBの位置と同じ位置でのサイプ中心線CSとサイプ壁31との距離WBaに対して、300%以上である状態をいう。
また、サイプ中心線CSは、本実施形態では、ストレート部26における開口部21の開口幅方向における中心を通り、タイヤ径方向に延びる仮想線になっている。詳しくは、本実施形態におけるサイプ中心線CSは、サイプ20の長さ方向における両端部25側に位置する双方のストレート部26の開口幅における中心同士を結んだ基準線BL(図2、図3参照)を通ってタイヤ径方向に延びる仮想面により、サイプ20の長さ方向における位置ごとに表される仮想線になっている。サイプ中心線CSは、このように基準線BLの位置でもあるため、ストレート部26の開口部21の開口幅方向におけるサイプ中心線CSの位置は、サイプ20の長さ方向における位置に関わらず、一定の位置になっている。
これらのように、円形部36がサイプ中心線CSに対して偏在している各サイプ20は、開口部21の幅である開口幅W1と、円形部幅WBとの関係が、1.0≦(WB/W1)≦3.5の範囲内になっている。図6は、図2のD-D断面図である。図7は、図6のF部詳細図である。ショルダー陸部17に配置される幅変化サイプ20vと定幅サイプ20cとのうち、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBの大きさが、円形部36が形成される範囲においてサイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加している。具体的には、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBの大きさが幅狭部23の円形部幅WBと比較して相対的に大きい幅広部22と、円形部幅WBの大きさが幅広部22の円形部幅WBより小さい幅狭部23とを有している。つまり、幅変化サイプ20vが有する円形部36は、円形部幅WBの大きさが異なる相対的に大きい円形部幅広部37と、円形部幅WBの大きさが円形部幅広部37より小さい円形部幅狭部38とを有している。幅広部22は、幅変化サイプ20vにおける、当該幅変化サイプ20vに長さ方向における円形部幅広部37が形成される範囲になっており、幅狭部23は、幅変化サイプ20vに長さ方向における円形部幅狭部38が形成される範囲になっている。
これらのように形成される幅広部22と幅狭部23とを有する幅変化サイプ20vは、幅広部22の円形部幅WBを幅広部幅WBmとし、幅狭部23の円形部幅WBを幅狭部幅WBsとする場合に、幅広部22と幅狭部23とは、幅広部幅WBmと幅狭部幅WBsとの関係が、WBm>WBsになっている。なお、幅変化サイプ20vの幅広部22と幅狭部23とは、幅広部幅WBmと幅狭部幅WBsとの関係が、0.4≦(WBs/WBm)≦0.9の範囲内であるのが好ましい。
さらに、幅変化サイプ20vの幅広部22と幅狭部23とは、幅広部幅WBmと幅狭部幅WBsとの関係がWBm>WBsであるため、サイプ20の開口部21の開口幅W1に対する幅広部22の幅広部幅WBmの比率である幅広部幅比RBmと、開口幅W1に対する幅狭部23の幅狭部幅WBsの比率である幅狭部幅比RBsも、大きさが異なっている。この場合における幅広部幅比RBmは、RBm=(WBm/W1)であり、幅狭部幅比RBsは、RBs=(WBs/W1)である。幅変化サイプ20vの幅広部22と幅狭部23とは、具体的には、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの関係が、0.4≦(RBs/RBm)≦0.9の範囲内になっている。なお、本実施形態では、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの関係は、0.5≦(RBs/RBm)≦0.7の範囲内であるのが好ましい。
図8は、図2のG部詳細図である。幅変化サイプ20vが有する幅広部22と幅狭部23、或いは、幅変化サイプ20vの円形部36が有する円形部幅広部37と円形部幅狭部38とは、幅変化サイプ20vの長さ方向において円形部36が形成される範囲における、中央位置付近が境界になっている。即ち、幅広部22、或いは円形部幅広部37は、幅変化サイプ20vの長さ方向における、円形部36が形成される範囲の中央位置付近から一方側に形成されており、幅狭部23、或いは円形部幅狭部38は、円形部36が形成される範囲の中央位置付近から他方側に形成されている。このように形成される幅広部22と幅狭部23とは、幅変化サイプ20vの長さ方向における円形部36が形成される範囲の長さLに対する、幅変化サイプ20vの長さ方向における幅狭部23が形成される範囲の長さLsが、0.4≦(Ls/L)≦0.6の範囲内になっている。
さらに、円形部幅広部37と円形部幅狭部38とでは、これらの円形部36を形成するサイプ壁31の湾曲の曲率半径が異なっており、円形部幅広部37を形成するサイプ壁31の曲率半径よりも、円形部幅狭部38を形成するサイプ壁31の曲率半径の方が大きくなっている。
図9は、図6のH部詳細図である。ショルダー陸部17に配置される定幅サイプ20cは、円形部幅WBの大きさが、サイプ20の延在方向における位置によって一定の大きさになっている。即ち、定幅サイプ20cが有する円形部36は、サイプ20の長さ方向に見た断面視における形状が同じ形状で、サイプ20の長さ方向に延びて形成されている。このように形成される定幅サイプ20cの円形部幅WBである定幅円形部幅WBcは、幅変化サイプ20vの幅広部幅WBmの大きさとほぼ同じ大きさになっている。
図10は、図3のJ-J断面図である。図11は、図10のK部詳細図である。図12は、図10のM部詳細図である。センター陸部16に配置される幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとは、円形部幅WBの大きさが異なっている。具体的には、幅広サイプ20wは、幅狭サイプ20nの円形部幅WBと比較して円形部幅WBの大きさが相対的に大きくなっており、幅狭サイプ20nは、円形部幅WBの大きさが幅広サイプ20wの円形部幅WBより小さくなっている。即ち、幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとは、幅広サイプ20wの円形部幅WBを幅広円形部幅WBwとし、幅狭サイプ20nの円形部幅WBを幅狭円形部幅WBnとする場合に、幅広円形部幅WBwと幅狭円形部幅WBnとの関係が、WBw>WBnになっている。
また、幅広サイプ20wの幅広円形部幅WBwは、ショルダー陸部17に配置される幅変化サイプ20vの幅広部22の幅広部幅WBmの大きさとほぼ同じ大きさになっている。即ち、幅広サイプ20wは、ショルダー陸部17に配置される定幅サイプ20cと同等の形態になっている。また、幅狭サイプ20nの幅狭円形部幅WBnは、ショルダー陸部17に配置される幅変化サイプ20vの幅狭部23の幅狭部幅WBsの大きさとほぼ同じ大きさになっている。なお、幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとは、幅広円形部幅WBwと幅狭円形部幅WBnとの関係が、0.5≦(WBn/WBw)≦0.9の範囲内であるのが好ましい。
さらに、幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとでは、円形部36を形成するサイプ壁31の湾曲の曲率半径が異なっており、幅狭サイプ20nの円形部36を形成するサイプ壁31の曲率半径よりも、幅広サイプ20wの円形部36を形成するサイプ壁31の曲率半径の方が大きくなっている。
また、各サイプ20が有する三次元壁部32は、それぞれ振幅の凸量が、サイプ中心線CSに対して、円形部36がサイプ中心線CSに対して偏在する側の反対側に偏在している。ここでいう三次元壁部32の振幅の凸量は、振幅による凸部33の数、またはサイプ中心線CSと凸部33との最大距離をいう。即ち、三次元壁部32の振幅の凸量の偏在は、振幅による凸部33の数、またはサイプ中心線CSと凸部33との最大距離が、サイプ20の幅方向におけるサイプ中心線CSの両側で異なる状態をいう。本実施形態では、三次元壁部32は、サイプ20の幅方向におけるサイプ中心線CSの一方側で、サイプ中心線CSから最も離れている位置でのサイプ中心線CSから三次元壁部32までの距離である凸部幅WTが、サイプ中心線CSの他方側で、サイプ中心線CSから最も離れている位置でのサイプ中心線CSから三次元壁部32までの距離である凸部幅WTaに対して、110%以上になっている。
また、三次元壁部32は、サイプ20の長さ方向に対してもサイプ20の幅方向に振幅するため、サイプ20は、平面視おいても偏在している。具体的には、サイプ20は、平面視おいてストレート部26同士の間で振幅している部分が、基準線BLに対してサイプ20の幅方向における一方側に偏在しており、即ち、基準線BLに対して、円形部36が偏在する側の反対側に偏在している(図2、図3参照)。
これらのように、サイプ中心線CSに対して互いに異なる側に偏在する円形部36と三次元壁部32とは、幅変化サイプ20vでは、幅広部22における円形部36の幅広部幅WBmが、三次元壁部32における、サイプ中心線CSに対して円形部36が偏在する側の反対側への凸部幅WTに対して、90%以上140%以下の範囲内になっている。また、幅変化サイプ20vでは、幅狭部23における円形部36の幅狭部幅WBsが、三次元壁部32における、サイプ中心線CSに対して円形部36が偏在する側の反対側への凸部幅WTに対して、50%以上100%以下の範囲内になっている。
また、三次元壁部32は、サイプ20の長さ方向に見た断面視における、振幅の変曲点34の角度θが、100度以上150度以下の範囲内になっている。この場合における変曲点34の角度θは、対向するサイプ壁31同士の中心位置を示す中心線CWにおける、凸部33の変曲点34の両側に位置する部分同士の相対的な角度になっている。なお、振幅の変曲点34の角度θは、120度±10度の範囲内であるのが好ましい。
また、三次元壁部32は、振幅の変曲点34が、サイプ20の長さ方向に見た断面視において、半径Rが1mm以上2mm以下の曲線になっている。この場合における変曲点34の半径Rは、変曲点34の劣角側での三次元壁部32の半径になっている。つまり、三次元壁部32は、凸部33の変曲点34の部分では、凸部33における劣角側に位置する三次元壁部32が、半径Rが1mm以上2mm以下の曲線になっている。
図13は、図7のN部詳細図である。円形部36における、他方のサイプ壁31から離れる方向に凹んでいる側のサイプ壁31における、湾曲している部分と湾曲していない部分との境界部分も、サイプ20の長さ方向に見た断面視において、半径Rが1mm以上2mm以下の曲線になっている。なお、図13は、幅変化サイプ20vの幅狭部23における円形部36のサイプ壁31の詳細について図示しているが、幅広部22における円形部36のサイプ壁31や、定幅サイプ20cにおける円形部36のサイプ壁31、幅広サイプ20wにおける円形部36のサイプ壁31、幅狭サイプ20nにおける円形部36のサイプ壁31についても同様である。
各陸部15には、それぞれ異なる種類の複数のサイプ20が、延在方向が平行になる向きで、タイヤ周方向に並んで配置されている。例えば、1つのショルダー陸部17には、タイヤ周方向に並ぶ複数のサイプ20のタイヤ周方向における両端側に、幅変化サイプ20v以外のサイプ20である定幅サイプ20cが配置され、タイヤ周方向における定幅サイプ20c同士の間に幅変化サイプ20vが配置されている。本実施形態では、1つのショルダー陸部17には、幅変化サイプ20vと定幅サイプ20cとが、それぞれ2本ずつ配置されている。このうち、2本の幅変化サイプ20vは、タイヤ周方向に隣り合って配置され、定幅サイプ20cは、これらの2本の幅変化サイプ20vのタイヤ周方向における両側に、それぞれ1本ずつ配置されている。即ち、2本の定幅サイプ20cは、それぞれ陸部15におけるタイヤ周方向の端部寄りの位置、或いは、陸部15のタイヤ周方向における端部の近傍に配置されている。
また、1つのショルダー陸部17に配置される2本の幅変化サイプ20vは、タイヤ幅方向における幅広部22と幅狭部23との位置関係が同じ関係になっており、2本の幅変化サイプ20vは、幅変化サイプ20vの延在方向における幅広部22が位置する側と幅狭部23が位置する側とが同じ向きで配置されている。詳しくは、1つのショルダー陸部17に配置される2本の幅変化サイプ20vは、タイヤ幅方向における両側に位置するいずれのショルダー陸部17においても、幅狭部23が幅広部22に対してタイヤ幅方向における内側に位置し、幅広部22が幅狭部23に対してタイヤ幅方向における外側に位置している。
また、1つのセンター陸部16には、タイヤ周方向に並ぶ複数のサイプ20のタイヤ周方向における両端側に幅広サイプ20wが配置され、タイヤ周方向における幅広サイプ20w同士の間に幅狭サイプ20nが配置されている。本実施形態では、1つのセンター陸部16には、幅広サイプ20wと幅狭サイプ20nとが、それぞれ2本ずつ配置されている。このうち、2本の幅狭サイプ20nは、タイヤ周方向に隣り合って配置され、幅広サイプ20wは、これらの2本の幅狭サイプ20nのタイヤ周方向における両側に、それぞれ1本ずつ配置されている。即ち、2本の幅広サイプ20wは、それぞれ陸部15におけるタイヤ周方向の端部寄りの位置、或いは、陸部15のタイヤ周方向における端部の近傍に配置されている。
同じ陸部15に配置され、サイプ20の開口幅方向に隣り合うサイプ20同士は、開口部21間の距離WD(図4、図6、図10参照)が、サイプ20の開口幅W1(図5、図7、図9、図11、図12参照)に対して、4≦(WD/W1)≦7の範囲内になっている。この場合における開口部21間の距離WDは、互いに隣り合う2つのサイプ20におけるそれぞれの開口部21同士の最短距離になっている。さらに、隣り合うサイプ20同士の間に、いずれか一方のサイプ20の円形部36が位置する場合には、開口部21間の距離WDは、当該円形部36を有する側のサイプ20の円形部幅WBに対して、1.4≦(WD/WB)≦1.8の範囲内になっている。
また、これらのように配置されるサイプ20は、三次元壁部32が、サイプ中心線CSに対して、陸部15のタイヤ周方向における中央側に偏在し、円形部36が、サイプ中心線CSに対して、陸部15のタイヤ周方向における外側に偏在する向きで、それぞれ配置されている。この場合における陸部15のタイヤ周方向における中央は、陸部15のタイヤ周方向における全長の中央の位置になっている。
各サイプ20は、円形部36が、サイプ中心線CSに対して陸部15のタイヤ周方向における外側に偏在する向きで配置されるため、ショルダー陸部17では、幅変化サイプ20vは、三次元壁部32が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う幅変化サイプ20vが位置する側に偏在し、円形部36が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う定幅サイプ20cが位置する側に偏在する向きで配置されている。また、ショルダー陸部17の定幅サイプ20cは、三次元壁部32が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う幅変化サイプ20vが位置する側に偏在し、円形部36が、サイプ中心線CSに対して、陸部15のタイヤ周方向における端部が位置する側、即ち、ショルダー陸部17を区画するラグ溝12が位置する側に偏在する向きで配置されている。
また、センター陸部16では、幅狭サイプ20nは、三次元壁部32が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う幅狭サイプ20nが位置する側に偏在し、円形部36が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う幅広サイプ20wが位置する側に偏在する向きで配置されている。また、センター陸部16の幅広サイプ20wは、三次元壁部32が、サイプ中心線CSに対して、隣り合う幅狭サイプ20nが位置する側に偏在し、円形部36が、サイプ中心線CSに対して、陸部15のタイヤ周方向における端部が位置する側、即ち、センター陸部16を区画するラグ溝12が位置する側に偏在する向きで配置されている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2の踏面3のうち下方に位置する部分が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、踏面3と路面との間の水が周方向溝11やラグ溝12等の溝10やサイプ20に入り込み、これらの溝10やサイプ20で踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、踏面3は路面に接地し易くなり、踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪を踏面3で押し固めると共に、路面上の雪が周方向溝11やラグ溝12に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすると、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が空気入りタイヤ1と雪との間で発生する。雪上路面を走行する際には、この雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を路面に伝達することができ、スノートラクション性を確保することができる。これにより、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向溝11やラグ溝12、サイプ20のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向溝11のエッジやラグ溝12のエッジ、サイプ20のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ20で吸水し、氷上路面と踏面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面と踏面3は接触し易くなる。これにより、踏面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両のトラクション性能等の走行性能を確保することができる。
これらのように、雪上路面や氷上路面を走行する際には、陸部15に形成されるサイプ20が重要になるが、スノートラクション性等の氷雪性能を重視してサイプ20の深さを深くしたり、サイプ20を多く設けたりした場合、陸部15の剛性が低下し易くなる。陸部15の剛性が低下すると、乾燥した路面を走行する際の走行性能が低下したり、陸部15が摩耗し易くなったりする。
これに対し、本実施形態では、サイプ20は三次元壁部32を有する三次元サイプになっているため、陸部15に荷重が作用した際には、対向する三次元壁部32同士が接触することにより、三次元壁部32同士が互いに支え易くなっている。これにより、陸部15に荷重が作用した際における陸部15変形を抑制することができ、乾燥した路面を走行する際における走行性能が低下したり、陸部15が摩耗し易くなったりすることを抑制することができる。
三次元サイプでは、このように三次元壁部32同士が互いに支え合うことにより、三次元壁部32が形成される範囲では三次元壁部32によって剛性を確保することができるものの、サイプ底35では剛性を確保し難いため、陸部15に荷重が作用した際には、サイプ底35付近に応力集中が発生し易くなっている。このため、高荷重負荷時には、サイプ底35付近の応力集中も大きくなるため、サイプ底35付近では、この応力集中によって亀裂が発生し易くなる。
これに対し、本実施形態では、サイプ20には、サイプ底35を含む位置に円形部36が形成されている。これにより、陸部15に大きな荷重が作用した際に、サイプ底35付近の狭い領域に応力が集中することを抑制することができる。さらに、円形部36は、サイプ中心線CSに対して、開口部21の開口幅方向における一方側に偏在するため、開口部21からサイプ壁31を伝わってサイプ20の深さ方向に向かう力の方向に対して、ずれた位置に配置されている。これにより、陸部15に荷重が作用した場合でも、サイプ底35付近への応力集中を極力抑制することができる。これにより、高荷重負荷時に、サイプ底35付近の応力集中が大きくなり過ぎることを抑制することができ、サイプ底35付近への応力集中に起因してサイプ底35付近で亀裂が発生することを抑制することができる。
また、陸部15に配置される複数のサイプ20のうち少なくとも一部のサイプ20は、円形部幅WBの大きさが、サイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加する幅変化サイプ20vになっている。これにより、陸部15の剛性の低下を抑制しつつ、サイプ底35付近での亀裂の発生を抑制することができる。つまり、幅変化サイプ20vにおける円形部幅WBの大きさが大きい部分は、荷重負荷時に開口部21からサイプ壁31を伝わってサイプ20の深さ方向に向かう力の方向に対して、サイプ底35の位置を大きくずらした位置に配置することができる。これにより、幅変化サイプ20vにおける円形部幅WBの大きさが大きい部分は、陸部15に荷重が作用した際におけるサイプ底35付近への応力集中を、より確実に抑制することができ、サイプ底35付近への応力集中に起因してサイプ底35付近で亀裂が発生することを、より確実に抑制することができる。
一方で、サイプ20の円形部幅WBの大きさが大きい場合、陸部15を形成するゴムの量が少なくなり、ゴム量が少なくなることに起因して陸部15の剛性が低くなり易くなる。陸部15の剛性が低くなった場合、トレッド部2への荷重の負荷時に陸部15が変形し易くなり、トレッド部2と路面との間での力の伝達を効率良く行い難くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1と路面との間で駆動力や制動力を効率良く伝達し難くなり、また、陸部15が変形することにより、溝10やサイプ20のエッジ効果を効率的に発揮し難くなる虞がある。
これに対し、本実施形態では、円形部幅WBの大きさがサイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加する幅変化サイプ20vを有するため、サイプ底35付近での亀裂の発生を抑制しつつ、陸部15の剛性が低くなることを極力抑えることができる。つまり、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBが比較的小さい部分を有することにより、サイプ底35付近での亀裂の発生を抑制しつつ、陸部15を形成するゴムの量が少なくなることを極力抑制でき、ゴム量が少なくなることに起因する陸部15の剛性の低下を抑制することができる。これにより、荷重負荷時における陸部15の変形を抑制できるため、空気入りタイヤ1と路面との間で駆動力や制動力を効率良く伝達することができ、走行性能を確保することができる。また、エッジ効果を効率的に発揮することができるため、氷雪性能を高めることができる。これらの結果、荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、サイプ20は、開口幅W1と円形部幅WBとの関係が、1.0≦(WB/W1)≦3.5の範囲内であるため、陸部15を形成するゴム量が少なくなり過ぎることを抑制しつつ、サイプ底35付近への応力集中を抑制することができる。つまり、開口幅W1と円形部幅WBとの関係が、(WB/W1)<1.0である場合は、円形部幅WBが小さ過ぎるため、円形部36をサイプ中心線CSに対して偏在させることによってサイプ20に発生する応力を分散させる効果が低く、サイプ底35付近への応力集中を抑制する効果が低くなる虞がある。また、開口幅W1と円形部幅WBとの関係が、(WB/W1)>3.5である場合は、円形部幅WBが大き過ぎるため、陸部15を形成するゴム量が少なくなり過ぎる場合がある。この場合、陸部15の剛性が低くなり過ぎる虞があり、氷雪性能を高め難くなる虞がある。
これに対し、開口幅W1と円形部幅WBとの関係が、1.0≦(WB/W1)≦3.5の範囲内である場合は、円形部幅WBが大き過ぎることに起因して陸部15を形成するゴム量が少なくなり過ぎることを抑制しつつ、円形部36を適度に偏在させることによってサイプ底35付近への応力集中を抑制することができる。この結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBの大きさが相対的に大きい幅広部22と、円形部幅WBの大きさが幅広部22の円形部幅WBより小さい幅狭部23とを有しているため、サイプ底35付近への応力集中を幅広部22によってより確実に抑制しつつ、陸部15の剛性が低くなることを幅狭部23によってより確実に抑えることができる。これにより、サイプ底35付近での亀裂の発生をより確実に抑制しつつ、空気入りタイヤ1と路面との間で駆動力や制動力を効率良く伝達することができ、より確実に走行性能を高めることができる。この結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、幅変化サイプ20vの幅広部22と幅狭部23とは、開口幅W1に対する幅広部22の幅広部幅WBmの比率である幅広部幅比RBmと、開口幅W1に対する幅狭部23の幅狭部幅WBsの比率である幅狭部幅比RBsとの関係が、0.4≦(RBs/RBm)≦0.9の範囲内であるため、陸部15の剛性の低下を抑制しつつ、サイプ底35付近への応力集中を適切に抑制することができる。つまり、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの関係が、(RBs/RBm)<0.4である場合は、幅狭部23の幅狭部幅WBsが小さ過ぎたり、幅広部22の幅広部幅WBmが大き過ぎたりする虞がある。これらの場合、例えば、幅狭部23の幅狭部幅WBsが小さ過ぎる場合は、幅狭部23の位置でのサイプ底35付近への応力集中を抑制し難くなる虞がある。また、幅広部22の幅広部幅WBmが大き過ぎる場合は、幅広部22の近傍の陸部15のゴム量が少なくなり、陸部15の剛性が低くなり過ぎる虞がある。また、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの関係が、(RBs/RBm)>0.9である場合は、幅狭部23の幅狭部幅WBsが大き過ぎたり、幅広部22の幅広部幅WBmが小さ過ぎたりする虞がある。これらの場合、例えば、幅狭部23の幅狭部幅WBsが大き過ぎる場合は、幅狭部23近傍の陸部15のゴム量が少なくなり、幅狭部23を形成しても陸部15の剛性の低下を抑制し難くなる虞がある。また、幅広部22の幅広部幅WBmが小さ過ぎる場合は、幅広部22の位置でのサイプ底35付近への応力集中を効果的に抑制し難くなる虞がある。
これに対し、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの関係が、0.4≦(RBs/RBm)≦0.9の範囲内である場合は、幅狭部23の幅狭部幅WBsと幅広部22の幅広部幅WBmとの大きさを、それぞれ適度な大きさにすることができる。これにより、幅広部22と幅狭部23とを有する幅変化サイプ20vが配置される陸部15のゴム量が少なくなり過ぎることを抑制し、ゴム量が少なり過ぎることに起因して陸部15の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、幅変化サイプ20vのサイプ底35付近への応力集中を適切に抑制することができる。この結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、1つの陸部15に配置される複数の幅変化サイプ20vは、幅変化サイプ20vの延在方向における幅広部22が位置する側と幅狭部23が位置する側とが同じ向きで配置されるため、高荷重負荷時におけるサイプ底35付近への応力集中を、より確実に抑制することができる。即ち、陸部15のタイヤ幅方向における両端側において、大きな荷重が作用する側に、複数の幅変化サイプ20vの幅広部22を位置させることにより、高荷重負荷時におけるサイプ底35付近への応力集中を、円形部幅WBが大きい幅広部22によっていずれの幅変化サイプ20vにおいてもより確実に抑制することができる。これにより、サイプ底35付近の亀裂の発生を、より確実に抑制することができる。一方で、幅変化サイプ20vの延在方向におけるタイヤ幅方向における内側に幅狭部23を位置させることにより、幅広部22を有する幅変化サイプ20vが配置される陸部15の剛性を確保することができる。この結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、幅変化サイプ20vは、幅広部22が幅狭部23に対してタイヤ幅方向外側に配置されるため、高荷重負荷時におけるサイプ底35付近への応力集中を、より確実に抑制することができる。例えば、ショルダー陸部17では、車両の旋回時等に、タイヤ幅方向における外側の端部付近に大きな荷重が作用し易くなっている。このため、ショルダー陸部17に配置される幅変化サイプ20vでは、タイヤ幅方向における外側に幅広部22を配置することにより、高荷重負荷時におけるサイプ底35付近への応力集中を、円形部幅広部37によってより確実に抑制することができ、サイプ底35付近の亀裂の発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に荷重耐久性を向上させることができる。
また、1つの陸部15に配置される複数のサイプ20は、タイヤ周方向に並ぶ複数のサイプ20おける両端側の位置に定幅サイプ20cが配置されるため、より確実にサイプ底35付近での亀裂の発生を抑制することができる。つまり、陸部15に対して荷重が作用する際には、空気入りタイヤ1が回転しながら作用するため、陸部15に作用する荷重は、陸部15のタイヤ周方向における両端付近に大きな荷重が作用する。このため、1つの陸部15に複数のサイプ20をタイヤ周方向に並べて配置する際に、タイヤ周方向における両端側に定幅サイプ20cを配置することにより、陸部15のタイヤ周方向における端部付近の剛性の均一化を図ることができ、陸部15のタイヤ周方向における端部付近に大きな荷重が作用した際におけるサイプ底35付近の応力集中をより確実に抑制することができる。これにより、より確実にサイプ底35付近での亀裂の発生を抑制することができる。これらの結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、サイプ20の開口部21の開口幅方向に隣り合うサイプ20同士の開口部21間の距離WDは、サイプ20の開口幅W1に対して、4≦(WD/W1)≦7の範囲内であるため、陸部15の剛性の低下を抑制しつつ、エッジ効果をより確実に向上させることができる。つまり、開口部21間の距離WDが、サイプ20の開口幅W1に対して、(WD/W1)<4である場合は、開口部21間の距離WDが小さ過ぎるため、陸部15におけるサイプ20同士の間の部分の剛性を確保し難くなる虞があり、陸部15の剛性が低くなり過ぎる虞がある。また、開口部21間の距離WDが、サイプ20の開口幅W1に対して、(WD/W1)>7である場合は、開口部21間の距離WDが大き過ぎるため、陸部15にサイプ20を配置しても、エッジ成分を効率良く増加させ難くなる虞があり、エッジ効果を向上させ難くなる虞がある。
これに対し、隣り合うサイプ20同士の開口部21間の距離WDが、サイプ20の開口幅W1に対して、4≦(WD/W1)≦7の範囲内である場合は、陸部15におけるサイプ20同士の間の部分の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、サイプ20を設けることによるエッジ効果を、効果的に向上させることができる。この結果、より確実に荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、三次元壁部32は、円形部36がサイプ中心線CSに対して偏在する側の反対側に、振幅の凸量が偏在するため、陸部15に荷重が作用した際に開口部21側から三次元壁部32により力が伝わる方向と、円形部36の位置とを、より確実にずらすことができる。即ち、三次元壁部32の凸量と、円形部36とは、互いにサイプ中心線CSに対して反対側に偏在するため、サイプ20に作用する力によってサイプ20に対して発生する応力を分散することができる。これにより、陸部15に荷重が作用した際における、サイプ底35付近への応力集中をより確実に抑制することができ、高荷重負荷時におけるサイプ底35付近への応力集中に起因する亀裂の発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に荷重耐久性を向上させることができる。
また、三次元壁部32は、振幅の変曲点34の角度θが100度以上150度以下の範囲内であるため、製造性の悪化を抑制しつつ、陸部15の剛性を確保することができる。つまり、変曲点34の角度θが100度未満である場合は、変曲点34の角度θが小さ過ぎるため、三次元壁部32の角度が、サイプ20の深さ方向に対して傾斜し過ぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の製造時に、トレッド部2を形成するゴムに対して挿し込むことによりサイプ20を形成する金型であるサイプブレード(図示省略)を、加硫成形後のトレッド部2から引き抜くのが困難になり、製造性が悪化する虞がある。また、変曲点34の角度θが150度より大きい場合は、変曲点34の角度θが大き過ぎるため、サイプ壁31に三次元壁部32を設けても、対向する三次元壁部32同士が接触することによって、三次元壁部32同士を互いに支え易くするのが困難になる虞がある。この場合、サイプ壁31に三次元壁部32を設けても、三次元壁部32によって陸部15の剛性を確保するのが困難になり、走行性能を確保したり、陸部15の摩耗を抑制したりするのが困難になる虞がある。
これに対し、三次元壁部32の変曲点34の角度θが、100度以上150度以下の範囲内である場合は、製造性の悪化を抑制しつつ、陸部15の剛性を確保することができる。この結果、空気入りタイヤ1の製造時における製造性を確保しつつ、走行性能や陸部15の耐摩耗性能を確保することができる。
また、三次元壁部32は、振幅の変曲点34が、半径Rが1mm以上2mm以下の曲線になっているため、三次元壁部32で発生する応力を分散しつつ、陸部15の剛性を確保することができる。つまり、三次元壁部32の変曲点34の半径Rが1mm未満である場合は、変曲点34の半径Rが小さ過ぎるため、三次元壁部32に荷重が作用した際に、変曲点34に応力集中が発生する虞がある。この場合、三次元壁部32に作用する荷重が大きく、大きな応力集中が発生した際に、変曲点34の位置に亀裂が発生し易くなる虞がある。また、三次元壁部32の変曲点34の半径Rが2mmより大きい場合は、変曲点34の半径Rが大き過ぎるため、凸部33の突出量を確保し難くなる虞がある。この場合、サイプ壁31に三次元壁部32を設けても、三次元壁部32によって陸部15の剛性を確保するのが困難になり、走行性能を確保したり、陸部15の摩耗を抑制したりするのが困難になる虞がある。
これに対し、三次元壁部32の変曲点34の半径Rが、1mm以上2mm以下の範囲内である場合は、三次元壁部32で発生する応力を分散しつつ、陸部15の剛性を確保することができる。この結果、より確実に荷重耐久性を向上させると共に、走行性能や陸部15の耐摩耗性能を確保することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、陸部15に配置される複数のサイプ20は、それぞれサイプ中心線CSに対して、三次元壁部32が陸部15のタイヤ周方向における中央側に偏在し、円形部36が陸部15のタイヤ周方向における外側に偏在する向きで配置されているが、サイプ20は、これ以外の向きで配置されていてもよい。陸部15に配置される複数のサイプ20は、例えば、それぞれサイプ中心線CSに対して、円形部36が陸部15のタイヤ周方向における中央側に偏在し、三次元壁部32が陸部15のタイヤ周方向における外側に偏在する向きで配置されていてもよい。
または、陸部15に配置される複数のサイプ20は、サイプ中心線CSに対して三次元壁部32が偏在する側と円形部36が偏在する側とが、サイプ20同士の間で揃っていてもよい。図14は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、三次元壁部32が偏在する側と円形部36が偏在する側とがサイプ20同士の間で揃っている場合の説明図である。三次元壁部32が偏在する側と円形部36が偏在する側とが、サイプ20同士の間で揃って配置される場合には、タイヤ回転方向に基づいて、偏在する側が設定されるのが好ましい。つまり、空気入りタイヤ1が、車両の前進時における回転方向が指定されたものである場合に、三次元壁部32が偏在する側と円形部36が偏在する側とは、車両の前進時における空気入りタイヤ1の回転方向であるタイヤ回転方向に基づいて、偏在する側が設定されるのが好ましい。
この場合、各サイプ20は、サイプ中心線CSに対して、三次元壁部32がタイヤ回転方向における先着側に偏在し、円形部36がタイヤ回転方向における後着側に偏在する向きで配置されるのが好ましい。ここでいう、タイヤ回転方向における先着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先に路面に接地したり先に路面から離れたりする側である。また、タイヤ回転方向における後着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向の反対側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先着側に位置する部分の後に路面に接地したり、先着側に位置する部分の後に路面から離れたりする側である。
空気入りタイヤ1のタイヤ回転方向が指定されている場合に、円形部36が、サイプ中心線CSに対してタイヤ回転方向における後着側に偏在することにより、車両の制動時に円形部36付近に大きな応力集中が発生することを抑制することができる。つまり、走行中の車両の制動時には、空気入りタイヤ1のトレッド部2には、踏面3寄りの位置ではタイヤ回転方向への力が作用し、相対的にタイヤ径方向内側に位置する部分では、タイヤ回転方向の反対方向への力が作用する。このため、円形部36がサイプ中心線CSに対してタイヤ回転方向における後着側に偏在する場合は、車両の制動時には、サイプ底35側に位置する円形部36が、タイヤ周方向において三次元壁部32やサイプ中心線CSから離れる方向の力がサイプ20に作用する。円形部36が、タイヤ周方向において三次元壁部32から離れる方向の力がサイプ20に作用した場合、この力は、円形部36から三次元壁部32にかけたサイプ壁31を引き延ばす方向の力として作用する。この場合、円形部36を、タイヤ周方向において三次元壁部32が位置する側に向かわせる方向の力がサイプ20に作用することにより、円形部36から三次元壁部32にかけたサイプ壁31を押し縮める方向の力がサイプ20に作用する場合と比較して、応力集中が小さくなる。
また、車両の走行時に空気入りタイヤ1に対して作用するタイヤ周方向における力は、駆動力が空気入りタイヤ1に対して作用する力よりも、制動力が空気入りタイヤ1に対して作用する力の方が大きくなり易くなっている。従って、円形部36を、サイプ中心線CSに対してタイヤ回転方向における後着側に偏在させることにより、タイヤ周方向における力が大きくなり易い制動時に、円形部36付近で発生する応力集中を小さくすることができ、応力集中に起因する亀裂の発生を抑制することができる。この結果、より確実に荷重耐久性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、幅変化サイプ20vが配置されるショルダー陸部17においてタイヤ周方向に並ぶ複数のサイプ20は、タイヤ周方向における両端側に定幅サイプ20cが配置され、幅変化サイプ20vは、定幅サイプ20c同士の間に配置されているが、幅変化サイプ20vを含むサイプ20の配置形態は、これ以外の形態で配置されていてもよい。
図15は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、陸部15のタイヤ幅方向における両端側に幅広部22が位置する向きで幅変化サイプ20vが配置される場合の説明図である。1つの陸部15に配置される複数のサイプ20は、タイヤ幅方向に並べて配置してもよく、1つの陸部15に配置される複数の幅変化サイプ20vを、タイヤ幅方向に並べて配置してもよい。1つの陸部15に配置される幅変化サイプ20vは、例えば、図15に示すように、延在方向がタイヤ幅方向に沿った向きになって配置されると共に、複数の幅変化サイプ20vが陸部15のタイヤ幅方向に並ぶ2列で配置されていてもよい。さらに、2列の幅変化サイプ20vは、陸部15の幅方向における外側に幅広部22が位置する向きでそれぞれ配置されていてもよい。つまり、幅変化サイプ20vは、陸部15のタイヤ幅方向における両側の端部寄りの位置に幅広部22が位置する向きで配置されていてもよい。
陸部15のタイヤ幅方向における両側の端部付近は、例えば、車両の旋回時等に大きな荷重が作用し易くなっている。このため、陸部15のタイヤ幅方向における両端側に幅広部22が位置する向きで幅変化サイプ20vを配置することにより、陸部15のタイヤ幅方向における端部付近に大きな荷重が作用した際におけるサイプ底35付近への応力集中を、円形部幅WBが大きい幅広部22によって抑制することができる。これにより、より確実にサイプ底35付近での亀裂の発生を抑制することができる。また、1つの陸部15にタイヤ幅方向に2列で並んで配置される複数の幅変化サイプ20vは、陸部15のタイヤ幅方向における中央寄りの位置に幅狭部23が位置する向きで配置することにより、タイヤ幅方向における陸部15の中央付近の剛性を確保することができる。これにより、より確実に荷重負荷時における陸部15の変形を抑制することができるため、氷上路面での操縦安定性を含む操縦安定性を確保することができる。この結果、荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
また、1つの陸部15に幅変化サイプ20vが2列で配置される際には、陸部15のタイヤ幅方向における両端側に幅狭部23が位置する向きで配置されてもよい。図16は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、陸部15のタイヤ幅方向における両端側に幅狭部23が位置する向きで幅変化サイプ20vが配置される場合の説明図である。1つの陸部15に複数の幅変化サイプ20vがタイヤ幅方向に2列で並んで配置される場合は、例えば、図16に示すように、2列の幅変化サイプ20vは、陸部15の幅方向における外側に幅狭部23が位置する向きでそれぞれ配置されていてもよい。つまり、幅変化サイプ20vは、陸部15のタイヤ幅方向における両側の端部寄りの位置に幅狭部23が位置する向きで配置されていてもよい。
陸部15のタイヤ幅方向における両端側に幅狭部23が位置する向きで幅変化サイプ20vを配置することにより、サイプ底35付近への応力集中を抑制しつつ、車両の旋回時等に大きな荷重が作用し易く、操縦安定性に対する寄与度が大きい陸部15のタイヤ幅方向における両端付近の剛性を確保することができる。これにより、サイプ底35付近での亀裂の発生を抑制しつつ、氷上路面での操縦安定性を含む操縦安定性を向上させることができる。また、1つの陸部15にタイヤ幅方向に2列で並んで配置される複数の幅変化サイプ20vは、陸部15のタイヤ幅方向における中央寄りの位置に幅広部22が位置する向きで配置することにより、タイヤ幅方向における陸部15の中央付近の位置での、サイプ底35付近への応力集中を抑制することができ、サイプ底35付近での亀裂の発生を抑制することができる。この結果、荷重耐久性の低下を抑えつつ、氷雪性能を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、円形部36は、三次元壁部32から連続して設けられているが、円形部36は、三次元壁部32から連続していなくてもよい。図17は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、三次元壁部32と円形部36との間にサイプ壁ストレート部40が形成される場合の説明図である。サイプ壁31には、図17に示すように、三次元壁部32と円形部36との間に、サイプ20の長さ方向に見た断面視において、タイヤ径方向に延びるサイプ壁ストレート部40が形成されていてもよい。サイプ壁ストレート部40は、サイプ20の深さ方向と長さ方向とのいずれにおいても振幅しない、平面状のサイプ壁31として形成されており、円形部36は、サイプ壁ストレート部40に接続されている。これにより、円形部36を容易に配置することができる。
つまり、三次元壁部32は、サイプ20の幅方向に振幅して形成されるため、三次元壁部32における円形部36寄りの位置の形状によっては、三次元壁部32と円形部36との接続部分の形状を、双方をスムーズに接続することのできる形状にするのが困難になる虞がある。これに対し、三次元壁部32と円形部36との間にサイプ壁ストレート部40を形成する場合は、円形部36は、サイプ壁ストレート部40に対して容易に接続することができる。また、三次元壁部32とサイプ壁ストレート部40との接続についても、双方の接続位置を、三次元壁部32の振幅に合わせてサイプ20の深さ方向に振幅させることにより、容易に接続することができる。従って、三次元壁部32を有するサイプ20に対して、円形部36を容易に配置することができる。この結果、より容易に荷重耐久性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、サイプ20は、長さ方向における両側の端部25付近にストレート部26を有しているが、サイプ20はストレート部26を有していなくてもよい。図18は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、ストレート部26を有さない場合の説明図である。サイプ20は、図18に示すようにストレート部26を有さずに、サイプ20の長さ方向における三次元壁部32の端部の位置が、サイプ20の長さ方向における端部25として形成されていてもよい。この場合、サイプ中心線CSは、開口部21の長さ方向における両端部25のそれぞれの位置での開口幅における中心同士を結んだ基準線BLを通り、タイヤ径方向に延びる仮想線になる。このように、サイプ20にストレート部26が形成されない場合でも、両端部25のそれぞれの位置での開口幅における中心同士を結んだ基準線BLを通るサイプ中心線CSに対して、円形部36を開口幅方向における一方側に偏在させることにより、サイプ底35付近への応力集中を抑制することができる。この結果、荷重耐久性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、三次元壁部32は、連続的に振幅しているが、三次元壁部32の振幅は断続的であってもよい。図19は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、三次元壁部32が断続的に振幅する状態を示す説明図である。図20は、図19のP-P矢視図である。三次元壁部32は、例えば、図19、図20に示すように、サイプ20の幅方向に突出する複数の凸部33が断続的に配置されることにより、サイプ20の幅方向に振幅していてもよい。この場合における凸部33は、サイプ20を厚さ方向に見た場合には略円形となり、サイプ20を長さ方向や深さ方向に見た場合には湾曲する形状で形成されている。また、複数の凸部33は、サイプ20の幅方向において全て同じ方向に突出しており、サイプ中心線CSに対して円形部36が偏在する側の反対側に突出している。即ち、三次元壁部32は、サイプ中心線CSに対して円形部36が偏在する側の反対側に複数の凸部33が突出することにより、振幅の凸量が、サイプ中心線CSに対して、円形部36がサイプ中心線CSに対して偏在する側の反対側に偏在する。このように、三次元壁部32は、サイプ20の長さ方向と深さ方向とのいずれの方向においてもサイプ20の幅方向に振幅していれば、振幅の形態は問わない。
また、上述した実施形態では、三次元壁部32は、サイプ中心線CSと凸部33との最大距離が、サイプ中心線CSの両側で大きく異なることにより、振幅の凸量が偏在しているが、三次元壁部32は、凸部33の数、即ち、変曲点34の数がサイプ中心線CSの両側で大きく異なることにより、振幅の凸量が偏在していてもよい。これらのように、三次元サイプにおいて振幅するサイプ壁31として形成される三次元壁部32は、振幅の凸量が、サイプ中心線CSに対して、円形部36がサイプ中心線CSに対して偏在する側の反対側に偏在していれば、振幅の形態は問わない。
また、上述した実施形態では、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBの大きさが互いに異なる幅広部22と幅狭部23とを有することにより、円形部幅WBの大きさが、サイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加しているが、幅変化サイプ20vは、これ以外の形態によって、円形部幅WBの大きさが単調増加していてもよい。即ち、幅変化サイプ20vは、サイプ20の延在方向における一方から他方に向けて円形部幅WBが幅広部22と幅狭部23との2段階で変化するのではなく、例えば、3段階以上で変化していてもよい。
または、幅変化サイプ20vは、円形部幅WBが無段階で変化するように形成されていてもよい。図21は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、円形部幅WBが連続的に変化する場合の説明図である。幅変化サイプ20vは、例えば、図21に示すように、円形部36が形成される範囲においてサイプ20の延在方向における一方から他方に向けて、円形部幅WBの大きさが連続的に増加するように形成されていてもよい。なお、円形部幅WBが単調増加する範囲は、サイプ20の延在方向において円形部36が形成される全範囲でなくてもよく、サイプ20の延在方向における円形部36が形成される範囲の両端付近は含めなくてもよい。
具体的には、円形部幅WBは、幅変化サイプ20vの延在方向における円形部36が形成される範囲の両端から、円形部36が形成される範囲の長さLのそれぞれ5%を除いた範囲を測定範囲LBとし、この測定範囲LBにおいて、円形部幅WBの大きさがサイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加していればよい。この場合、幅変化サイプ20vの延在方向における測定範囲LBの両端の位置での円形部幅WBのうち、大きい側の円形部幅WBmaxと、小さい側の円形部幅WBminとは、1.3≦(WBmax/WBmin)≦1.8の範囲内であるのが好ましい。
また、上述した実施形態では、幅変化サイプ20vと同じ陸部15に配置される定幅サイプ20cは、定幅サイプ20cの円形部幅WBである定幅円形部幅WBcが、幅変化サイプ20vの幅広部幅WBmの大きさとほぼ同じ大きさになっているが、定幅円形部幅WBcは、これ以外の大きさであってもよい。定幅サイプ20cの定幅円形部幅WBcは、例えば、幅狭サイプ20nの幅狭円形部幅WBnの大きさとほぼ同じ大きさであってもよい。また、上述した実施形態では、幅変化サイプ20vは、ショルダー陸部17に配置されているが、幅変化サイプ20vが配置される陸部15は、ショルダー陸部17以外であってもよい。
また、上述した実施形態では、周方向溝11は2本が形成されているが、周方向溝11は2本以外であってもよい。また、上述した実施形態では、陸部15は、周方向溝11とラグ溝12とにより区画されることにより、ブロック状の形状で形成されているが、陸部15は、これ以外の形態で形成されていてもよい。陸部15は、例えば、タイヤ周方向に連続して形成される、いわゆるリブ状の形状で形成されていてもよい。陸部15がリブ状に形成される場合でも、一端が周方向溝11に開口して他端が陸部15内で終端するラグ溝12を有する場合は、ラグ溝12が配置される形態に応じて、幅変化サイプ20vを適宜配置してもよい。
また、上述した実施形態や変形例は、適宜組み合わせてもよい。三次元壁部32と円形部36とを有し、円形部36がサイプ中心線CSに対して、開口部21の開口幅方向における一方側に偏在するサイプ20が陸部15に複数配置されると共に、少なくとも一部のサイプ20は、円形部幅WBの大きさがサイプ20の延在方向における一方から他方に向けて単調増加する幅変化サイプ20vであることにより、荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。
[実施例]
図22A、図22Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、荷重耐久性と、制動性能と、駆動性能と、操縦安定性とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが225/65R17サイズの試験タイヤをJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を230kPaに調整したものを用いて行った。
各試験項目の評価方法は、荷重耐久性については、室内ドラム試験機(ドラム直径:1707mm)を使用し、速度110km/h、最大負荷荷重の85%、90%、100%を4分、6分、24分とかけていき、最終ステップ時のサイプ底の亀裂を確認した。荷重耐久性の評価は、この試験によってサイプ底に亀裂が発生したサイプの数の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより行った。指数が大きいほどサイプ底に亀裂が発生したサイプの数が少なく、荷重耐久性が優れていることを示している。
また、制動性能については、リムホイールにリム組みした試験タイヤを試験車両に装着し、氷上路面からなるテストコースで100km/hの速度から制動を開始して完全に停止するまでの制動距離を測定し、測定した制動距離の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより行った。指数が大きいほど氷上路面での制動距離が短く、氷上路面での制動性能が優れていることを示している。
また、駆動性能については、リムホイールにリム組みした試験タイヤを試験車両に装着し、氷上路面からなる直線のテストコースで停止した状態から加速を開始して、40mの距離を走行するまでの通過時間を測定した。駆動性能は、測定した通過時間の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより行った。指数が大きいほど通過時間が短く、氷上路面での駆動性能が優れていることを示している。
また、操縦安定性については、試験タイヤを装着した試験車両で氷上路面からなるテストコースを走行した際の操縦安定性を、テストドライバーの官能評価により比較した。操縦安定性は、テストドライバーの官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことにより評価し、指数が大きいほど操縦安定性が高く、氷上路面での操縦安定性が優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~14と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との16種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例は、サイプ20に、サイプ中心線CSに対して偏在する円形部36が設けられていない。また、比較例は、サイプ20に、サイプ中心線CSに対して偏在する円形部36が設けられているものの、サイプ20は、円形部幅WBが単調増加する幅変化サイプ20vを有していない。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~14は、全てサイプ20に、サイプ中心線CSに対して偏在する円形部36が設けられており、サイプ20は、円形部幅WBが単調増加する幅変化サイプ20vを有している。さらに、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、サイプ20の開口幅W1と円形部幅WBとの比(WB/W1)や、幅広部幅比RBmと幅狭部幅比RBsとの比(RBs/RBm)、サイプ20の開口幅W1に対する、隣り合うサイプ20同士の開口部21間の距離WDの比(WD/W1)、幅変化サイプ20vの配置パターン、円形部36がサイプ中心線CSに対してタイヤ回転方向における後着側に偏在しているか否かが、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図22A、図22Bに示すように、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例に対して、荷重耐久性を低下させることなく、氷上路面での制動性能や駆動性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、荷重耐久性と氷雪性能とを両立することができる。