以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[マイクロチップ電気泳動装置の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るマイクロチップ電気泳動装置の全体構成を概略的に示す図である。以下、マイクロチップ電気泳動装置を略して、「電気泳動装置100」と称する。図2は、図1に示した電気泳動装置100の要部の構成を概略的に示す図である。図1を参照して、電気泳動装置100は、分注部2と、シリンジポンプ4と、加圧吸引部16と、ポンプ部23と、電源部26と、測定部31と、コントローラ38とを備える。電気泳動装置100は、制御装置70と通信接続される。
図2を参照して、電気泳動装置100は、複数(例えば4個)のマイクロチップ5-1~5-4と、保持部7と、プレート12とをさらに備える。
マイクロチップ5-1~5-4の各々は、1サンプルを処理するための1つの電気泳動流路が形成されたものである。サンプルは、例えば、核酸、タンパク、糖鎖等である。サンプルを「試料」と称する場合がある。分析操作中、マイクロチップ5-1~5-4は保持部7に保持されている。以下、マイクロチップ5-1~5-4を総称してマイクロチップ5という場合がある。マイクロチップ5は繰り返し使用できる。
分注部2は、マイクロチップ5-1~5-4に分離バッファとサンプルとを分注するように構成される。分離バッファは「分離媒体」としても使用されるものであり、例えばpH緩衝剤および水溶性高分子(セルロース系高分子など)の少なくとも一方を含む。分注部2は、分注すべき液の吸入位置とマイクロチップ5上の分注位置との間で分注プローブ8を移動させる「移動機構」を構成する。具体的には、分注部2は、分注プローブ8と、シリンジポンプ4と、洗浄液を保持する容器10と、三方電磁弁6とを有する。
分注プローブ8は、分注ノズルを有する。シリンジポンプ4は、主に、分離バッファ、サンプル、洗浄水、および洗浄液の吸引と吐出とを行なう。分注プローブ8と少なくとも1つの容器10とは三方電磁弁6を介してシリンジポンプ4に接続されている。
サンプルは、プレート12上のウェル12Wに収容されて、分注部2によりマイクロチップ5-1~5-4に分注される。分離バッファは図示しない容器に収容され、分注部2によりマイクロチップ5-1~5-4に分注される。
加圧吸引部16は、マイクロチップ5の電気泳動流路に分離バッファを加圧充填する「充填機構」を構成する。ポンプ部23は、マイクロチップ5-1~5-4のリザーバから液体を吸引する吸引機構を構成する。なお、本実施の形態では、複数の機構が開示されるが、該複数の機構のうちの1の機構を構成する構成部と、他の機構を構成する構成部とは少なくとも1つが重複する場合がある。加圧吸引部16は、電気泳動流路の1つのリザーバに一定量の分離バッファを注入し、その注入された分離バッファをそのリザーバから空気圧により電気泳動流路に充填する。加圧吸引部16は、空気供給口18および吸引ノズル22を有する。ポンプ部23は、他のリザーバに溢れた不用な分離バッファを排出する。加圧吸引部16およびポンプ部23は、4つのマイクロチップ5-1~5-4について共通に備えられる。
分注部2は、三方電磁弁6を分注プローブ8とシリンジポンプ4とが接続される方向に接続することにより、分離バッファまたはサンプルを分注プローブ8に吸引する。分注部2は、分注プローブ8をマイクロチップ5-1~5-4上へ移動させると、シリンジポンプ4によりマイクロチップ5-1~5-4のいずれかの電気泳動流路のリザーバに分離バッファまたはサンプルを吐出する。
第1洗浄部14には、第1洗浄液が収容されている。第2洗浄部27には、第2洗浄液が収容されている。なお、図2の例では、図面の簡略化のために、第2洗浄部27は、第1洗浄部14と、同様の形状であるが、第2洗浄部27は他の形状としてもよい。たとえば、第2洗浄部27は、容器10のような形状としてもよい。
洗浄水は、たとえば、水である。洗浄水は、典型的には、マイクロチップ5に付着した分離バッファを洗い流すためのものである。洗浄液は、洗浄水とは異なり、例えば、有機溶剤または界面活性剤を含有した液としてもよい。洗浄液は、典型的には、マイクロチップ5に付着したサンプルを洗い流すためのものである。洗浄液の詳細は、例えば、特許第5640557号公報に開示されている。
分注部2は、分注プローブ8を洗浄する際、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と洗浄水用の容器10とを接続する方向に切り替え、シリンジポンプ4に洗浄水を吸引する。次に、分注部2は、分注プローブ8を廃液ポート(図示せず)に移動し、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と分注プローブ8とを接続する側に切り替えて分注プローブ8の内部から洗浄水を吐出することにより、分注プローブ8を洗浄する。
マイクロチップ5-1~5-4の電気泳動流路を洗浄水で洗浄するときには、分注部2は、三方電磁弁6およびシリンジポンプ4と容器10とを接続する方向に切り替え、シリンジポンプ4に洗浄水を吸引する。分注部2は、分注プローブ8をマイクロチップ5-1~5-4のリザーバへ移動させ、所定量の洗浄水をそのリザーバへ分注する。リザーバに分注された洗浄水は、加圧吸引部16の空気供給口18から空気を吹き込んで電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れる洗浄水を吸引ノズル22からポンプ部23により吸引して外部へ排出する。電気泳動流路を洗浄液で洗浄するときには、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と分注プローブ8とを接続する状態に切り替え、例えば第1洗浄部に収容されている第1洗浄液を分注プローブ8内に吸引する。所定量の洗浄液をマイクロチップ5-1~5-4のリザーバへ移動させ、所定量の洗浄液をそのリザーバへ分注すると、毛細管現象により電気泳動流路に入っていく。
加圧吸引部16は、電気泳動流路に洗浄液が入った状態で所定時間保持した後、その洗浄液を排出する際にも使用される。
電気泳動流路に分離バッファを充填するとき、加圧吸引部16は、マイクロチップ5-1~5-4上へ移動し、マイクロチップ5-1~5-4の電気泳動流路の一端のリザーバ(分離バッファが分注されたリザーバ)上に空気供給口18を気密に保って押し付けるとともに、他のリザーバに吸引ノズル22を挿入する。この状態で、空気供給口18から空気を吹き込んで分離バッファを電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れた分離バッファを吸引ノズル22からポンプ部23により吸引して外部へ排出する。電気流動流路内の洗浄液を排出するときも同様であり、マイクロチップ5-1~5-4の一端のリザーバ上に空気供給口18を気密に保って押し付けるとともに、他のリザーバに吸引ノズル22を挿入する。この状態で、空気供給口18から空気を吹き込んで洗浄液を電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れた洗浄液を吸引ノズル22からポンプ部23により吸引して外部へ排出する。
電源部26は、マイクロチップ5-1~5-4の電気泳動流路に独立して電気泳動用の電圧を印加するために、マイクロチップ5ごとに独立した複数(例えば4個)の高圧電源26-1~26-4を有する。
測定部31は、マイクロチップ5-1~5-4の各々の分離流路55で電気泳動分離されたサンプル成分を検出するように構成される。具体的には、測定部31は、複数(例えば4個)のLED(Liquid Emitting Diode)30-1~30-4と、複数(例えば4個)の光ファイバ32-1~32-4と、複数(例えば4個)のフィルタ34-1~34-4と、光電子倍増管36とを有する。
LED30-1~30-4は、それぞれ、マイクロチップ5-1~5-4の電気泳動流路の一部に励起光を照射する。光ファイバ32-1~32-4は、電気泳動流路を移動するサンプル成分がLED30-1~30-4からの励起光によりそれぞれ励起されて発生した蛍光を受光する。フィルタ34-1~34-4は、光ファイバ32-1~32-4からの蛍光から励起光成分を除去し、蛍光成分のみを透過させる。光電子倍増管36は、フィルタ34-1~34-4を透過した蛍光成分を受光する。
本実施の形態では、マイクロチップ5-1~5-4に対してそれぞれ独立した測定部31を有するため、サンプル注入まで逐次並行処理した複数のマイクロチップからの蛍光を同時に検出できる。
LED30-1~30-4を互いに時間をずらして発光させることにより、1つの光電子倍増管36で複数のマイクロチップ5-1~5-4からの蛍光を識別して検出できる。なお、励起光の光源としては、LEDに限定されず、LD(Laser Diode)を用いてもよい。
コントローラ38は、1つの電気泳動流路への分離バッファ充填およびサンプル注入が終了すると、次の電気泳動流路への分離バッファ充填およびサンプル注入に移行するように、分注部2の動作を制御する。コントローラ38は、サンプル注入が終了した電気泳動流路で泳動電圧を印加して電気泳動を起こさせるように電源部26(高圧電源26-1~26-4)の動作を制御する。コントローラ38は、測定部31による検出動作を制御する。コントローラ38はさらに、マイクロチップ5を繰り返して使用するために、前のサンプルの分析が終了した電気泳動流路への分離バッファを充填する前にその電気泳動流路の洗浄動作を制御する。
コントローラ38は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)60と、プログラムおよびデータを格納する記憶部と、通信I/F(Interface)68とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
記憶部は、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)64およびHDD(Hard Disk Drive)66を含む。ROM62は、CPU60にて実行されるプログラムを格納できる。RAM63は、CPU60におけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/F68を経由して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD66は、不揮発性の記憶装置であり、測定部31による検出結果など電気泳動装置100で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD66に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
通信I/F68は、制御装置70を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。通信I/Fは、アダプタまたはコネクタなどによって実現される。なお、通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)または無線LAN(Local Area Network)などの無線通信であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信であってもよい。
制御装置70は、電気泳動装置100と通信接続され、電気泳動装置100との間でデータをやり取りする。制御装置70は、電気泳動装置100の動作を制御するとともに、測定部31が取得したデータを取り込んで処理するように構成される。
具体的には、制御装置70は、演算処理部であるCPU72を主体として構成される。制御装置70には、例えばパーソナルコンピュータなどを利用できる。制御装置70は、CPU72と、記憶部(ROM76、RAM74およびHDD78)と、通信I/F84と、入力部82と、ディスプレイ80とを有する。
ROM76は、CPU72にて実行されるプログラムを格納できる。RAM74は、CPU72におけるプログラムの実行により生成されるデータおよび、通信I/F84または入力部82を介して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD78は、不揮発性の記憶装置であり、制御装置70で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD78に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
通信I/F84は、制御装置70が電気泳動装置100を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。入力部82は、測定者からの電気泳動装置100に対する指示を含む入力操作を受け付ける。入力部82は、キーボード、マウスおよびディスプレイ80の表示画面と一体的に構成されるタッチパネルなどを含む。入力部82は、後述するように、複数のサンプルを順番に分析するための分析スケジュールの登録を受け付けるとともに、マイクロチップ5の洗浄工程のタイミングについての指示を受け付ける。
ディスプレイ80は、分析スケジュールを登録する際に、分析スケジュールの入力画面を表示できる。ディスプレイ80は、マイクロチップ5の洗浄工程のタイミングを指示する際に、洗浄工程のタイミングの入力画面を表示できる。分析測定中または測定後において、ディスプレイ80は、測定部31による検出データおよびサンプルごとの分析結果などを表示できる。
[マイクロチップ5の構成例]
図3および図4は、マイクロチップ5の一例を示す図である。本願明細書において、「マイクロチップ」は基板内に電気泳動流路が形成された電気泳動用のデバイスを意味しており、必ずしもサイズの小さいものに限定されるものではない。
図3(A)はマイクロチップ5が有する透明基板51の平面図であり、図3(B)はマイクロチップ5が有する透明基板52の平面図であり、図3(C)はマイクロチップ5の正面図である。
図3(C)を参照して、マイクロチップ5は、一対の透明基板51,52を有する。透明基板51,52は、例えば石英ガラスその他のガラス基板または樹脂基板である。透明基板51と透明基板52とは重ねられて接合されている。
図3(B)に示すように、透明基板52の表面には、互いに交差する泳動用キャピラリ溝54,55が形成されている。キャピラリ溝55は、サンプルの電気泳動分離用の分離流路55を構成する。キャピラリ溝54は、分離流路55にサンプルを導入するためのサンプル導入流路54を構成する。サンプル導入流路54および分離流路55は「電気泳動流路」を構成する。サンプル導入流路54および分離流路55は交差位置56で交差する。
図3(A)に示すように、透明基板51には、キャピラリ溝54,55の端部に対応する位置に4つの貫通孔が形成されている。4つの貫通孔はリザーバ53-1~54-4をそれぞれ構成する。以下、リザーバ53-1~53-4を総称してリザーバ53という場合がある。
マイクロチップ5は基本的には図3に示した構成を有するが、取り扱いを容易にするために、図4に示すように、マイクロチップ5上には、泳動電圧を印加するための電極端子を形成できる。図4は、マイクロチップ5の平面図である。
図4を参照して、4つのリザーバ53-1~53-4は電気泳動流路54,55に電圧を印加するためのポートを構成する。ポート#1(リザーバ53-1)とポート#2(リザーバ53-2)とはサンプル導入流路54の両端に位置する。ポート#3(リザーバ53-3)とポート#4(リザーバ53-4)とは分離流路55の両端に位置する。ポート#1~#4のそれぞれに電圧を印加するために、マイクロチップ5(透明基板51)の表面に4つの電極パターン61~64が形成されている。電極パターン61~64は、対応するポートからマイクロチップ5の測端部に延びるように形成されており、高圧電源26-1~26-4(図2参照)にそれぞれ接続される。
図5は、加圧吸引部16の空気供給口18および吸引ノズル22とマイクロチップ5との接続状態を概略的に示す図である。
図5を参照して、空気供給口18の先端にはOリング20が設けられている。空気供給口18をマイクロチップ5の1つのリザーバ53上に押し当てることにより、気密を保ちながら、マイクロチップ5の電気泳動流路54,55に対して空気供給口18を取り付けることができる。これにより、空気供給口18から空気を加圧して電気泳動流路54,55内に送り出すことができる。他のリザーバ53には吸引ノズル22が挿入され、電気泳動流路54,55から溢れだした不用な分離バッファ、洗浄水、および洗浄液を吸入して排出する。
[コントローラの機能構成例]
図6は、図1に示したコントローラ38の制御構成を示すブロック図である。図6を参照して、コントローラ38は、泳動制御部92と、洗浄制御部388と、分析スケジューラ96とを有する。これらの機能構成は、図1に示す電気泳動装置100において、CPU60が所定のプログラムを実行することで実現される。
さらに、コントローラ38は、取得部382と、更新部383と、判断部384と、記憶部386との機能を有する。
泳動制御部92は、電気泳動機構520を制御する。電気泳動機構520は、マイクロチップ5を用いて、サンプルを電気泳動させる機構である。電気泳動機構520は、サンプルを電気泳動させる全ての構成部を含む。電気泳動機構520は、例えば、電源部26と、測定部31と、分注部2と、加圧吸引部16と、ポンプ部23とを含む。泳動制御部92は、電気泳動による分析工程を繰り返し実行する。分析工程は、主に、(1)空の電気泳動流路に分離バッファを充填するバッファ液充填工程、(2)サンプル供給用のリザーバにサンプルを分注するサンプル分注工程、(3)複数のリザーバ間に泳動電圧を印加することにより、分離流路でのサンプルの電気泳動分離を行なう泳動分離工程、および(4)1つのリザーバから加圧気体を供給し、他のリザーバから分離バッファを吸引することにより電気泳動流路およびリザーバ内の分離バッファを除去するバッファ液除去工程を有する。
判断部384の判断に基づいて、洗浄制御部388は、各マイクロチップ5について、少なくとも1回の洗浄工程を実行する。少なくとも1回の洗浄工程は、洗浄水でマイクロチップ5を洗浄する第1洗浄と、洗浄液でマイクロチップ5を洗浄する第2洗浄とを含む。第1洗浄および第2洗浄の工程は、図18で説明する。
分析スケジューラ96は、各マイクロチップ5について、複数回の分析工程および、少なくとも1回の洗浄工程の実行順序を決定する。分析スケジューラ96は、泳動制御部92および洗浄制御部388に対して、予め登録された分析スケジュールおよび洗浄工程のタイミングに従って、処理リソース(プログラム時間およびメモリなど)を割り当てる。
制御装置70は、データ処理部86を有する。データ処理部86は、入力部82から指示を受け付けると、その指示内容を示すデータをコントローラ38へ伝送する。データ処理部86は、コントローラ38から測定部31による検出データを受信すると、受信した検出データを処理して処理結果をディスプレイ80に表示する。
電気泳動装置100は、マイクロチップ5を用いた電気泳動を実行する前に、このマイクロチップ5に対して洗浄を行う。電気泳動装置100は、洗浄機構500が、マイクロチップ5を洗浄することにより、マイクロチップを繰り返し使用できる。これにより、分析コストの低減を図ることができる。しかし、マイクロチップを繰り返し使用すると、前の分析のサンプルに含まれていた成分または分離バッファに含まれていた成分が流路の内壁の表面への吸着等により、使用回数が増えるに従って分析性能が低下する傾向にある。そのため、電気泳動装置100は、マイクロチップ5の流路等を洗浄することにより、マイクロチップ5の分析性能を回復させている。
分析性能の低下は、分析頻度、サンプル由来の成分によりその程度が様々に変化するため、第2洗浄の必要な時間、頻度を明確にしておかないと効果的な洗浄効果が期待できない。そこで、電気泳動装置100は、マイクロチップ5が、該マイクロチップ5の性能に関する基準(以下、「性能基準」という。)を満たしているか否かを判断する。性能基準を満たしているか否かの判断は、1以上のパラメータに基づいて、実行される。電気泳動装置100は、マイクロチップ5が性能基準を満たしていないと判断された場合には、該マイクロチップ5に対して集中的な第2洗浄を実行する。一方、電気泳動装置100は、マイクロチップ5が性能基準を十分満たしていると判断された場合には、該マイクロチップ5に対して第2洗浄を実行しない。また、使用回数などから判断して今後性能の低下が予想される場合には、予防的処置として該マイクロチップ5に対して軽度の第2洗浄を実行する。これにより、電気泳動装置100は、効率的な第2洗浄を実行することができる。
電気泳動装置100は、マイクロチップ5が性能基準を満たしているか否かに関わらず、洗浄水による第1洗浄を実行する。
電気泳動装置100では、各マイクロチップ5に対してフラグが関連付けられている。電気泳動装置100は、マイクロチップ5が性能基準を満たしているか否かを、該マイクロチップ5に関連付けられているフラグに基づいて、判断する。図1の例での電気泳動装置100は、4つのマイクロチップ5をセットできる。ユーザは、多数のマイクロチップ5のうち少なくとも4つのマイクロチップを電気泳動装置100にセットできる。
図7は、フラグを説明するための図である。フラグは、マイクロチップ5への洗浄の必要度合いを示す情報である。図7の例では、3種類のフラグF1~F3がある。フラグF1は、洗浄液を用いずに洗浄水を用いてマイクロチップ5を洗浄することを示すフラグである。つまり、フラグF1は、ほとんど、分析性能が低下していない(または劣化していない)マイクロチップ5に関連付けられるフラグである。また、フラグF1は、電気泳動装置100の緊急停止などの要因で分離バッファを充填した状態で放置されたマイクロチップ5に関連付けられるフラグとしてもよい。フラグF2は、洗浄水と洗浄液との双方を用いること(つまり、第1洗浄および第2洗浄が必要であること)を示すフラグである。つまり、フラグF2は、フラグF1が関連付けられているマイクロチップよりも分析性能が低下していることを示すフラグである。フラグF3は、マイクロチップ5を洗浄したとしても使用をすることができないことを示すフラグである。つまり、フラグF3は、フラグF2が関連付けられているマイクロチップよりも分析性能が低下していることを示すフラグである。
記憶部386は、チップID(identification)と、フラグとが対応づけられているデータベースを記憶する。図6の例では、このデータベースが、フラグDB(Data Base)と示されている。たとえば、記憶部386は、図7に示すフラグDBを記憶している。図7の例では、チップID1のマイクロチップ5に対してフラグF1が関連付けられている。図7の例では、チップID2のマイクロチップ5に対してフラグF3が関連付けられている。図7の例では、チップID2のマイクロチップ5に対してフラグF2が関連付けられている。
取得部382は、電気泳動パラメータおよびチップパラメータを取得する。電気泳動パラメータは、電気泳動機構が基準試料(低分子マーカおよび高分子マーカを含む内部標準マーカ)を電気泳動させることにより得られるパラメータである。基準試料には、分子量(DNAサイズ)スタンダードと内部標準マーカを混合した試料を含む。なお、基準試料は、所定の領域(図示せず)に収容されている。
電気泳動パラメータは、本開示の第1データに対応する。チップパラメータは、充填機構が分離バッファを前記デバイスに注入することにより得られるパラメータを含む。「充填機構が分離バッファを前記デバイスに注入することにより得られるパラメータ」は、本開示の「第2データ」に対応する。チップパラメータは、電源部26がマイクロチップ5の電気泳動流路に電気泳動用の電圧と同一のテスト(つまりテスト電圧)を印加することにより流れる電流(以下、「テスト電流」ともいう。)のパラメータを含む。
記憶部386には、各パラメータの正常範囲が記憶されている。更新部383は、取得部382が取得したパラメータが正常範囲に属するか否かを判断する。更新部383は、正常範囲に属していないことを条件に、フラグを更新する。
一般的に、新品のマイクロチップ5には、フラグF1が関連付けられている。更新部383は、フラグF1が関連付けられているマイクロチップ5のいずれかのパラメータが正常範囲に属していないことを条件に、フラグF1をフラグF2に更新する。更新部383は、フラグF2が関連付けられているマイクロチップ5のいずれかのパラメータが正常範囲に属していないことを条件に、フラグF2をフラグF3に更新する。また、正常範囲に属していないパラメータが正常範囲に属するようになると、更新部383は、フラグF2からフラグF1に更新する。
ここで、フラグを更新する更新条件は、パラメータが正常範囲に属していないことに関連する条件であれば、如何なる条件であってもよい。たとえば、更新条件は、正常範囲に属していないパラメータの個数が所定個数に到達した場合に成立する条件としてもよい。また、たとえば、更新条件は、パラメータが正常範囲に属していない回数が所定回数に到達した場合に成立する条件としてもよい。
判断部384は、マイクロチップ5が、性能基準を満たしているか否かを判断する。洗浄制御部388は、判断部384の判断結果に基づいて、洗浄機構500に第2洗浄を実行させる。例えば、判断部384は、マイクロチップ5にフラグF1が関連付けられている場合には、該マイクロチップ5に対して第1洗浄が必要である一方、第2洗浄は必要ではないと判断する。この場合には、洗浄制御部388は、マイクロチップ5の第1洗浄を洗浄機構500に実行させる。
例えば、判断部384は、マイクロチップ5にフラグF2が関連付けられている場合には、該マイクロチップ5に対して第1洗浄および第2洗浄が必要であると判断する。この場合には、洗浄制御部388は、マイクロチップ5の第1洗浄および第2洗浄を洗浄機構500に実行させる。
例えば、判断部384は、該マイクロチップ5にフラグF3が関連付けられている場合には、該マイクロチップ5は使用不可であると判断する。この場合には、コントローラ38は、マイクロチップ5が使用不可であることをユーザに報知する。典型的には、コントローラ38は、「マイクロチップ5は使用不可である旨の文字画像」をディスプレイ80に表示させる。
[パラメータについて]
次に、各パラメータを説明する。図8は、電気泳動パラメータとしての理論段数を説明するための図である。図8は、基準試料の電気泳動の高分子マーカ(UM)の理論段数の一例を示す図である。図8の例では、縦軸が理論段数を示し、横軸が分析回数を示す。また、正常範囲(図8の例では、正常レベル)を80000以上とする。図8の例では、分析回数がX1回目のときに、理論段数が正常レベル上にある。また、分析回数が、X2回目のとき、X3回目のとき、およびX4回目のときに理論段数が正常レベルを下回っている。
図9は、電気泳動パラメータとしてのシンメトリー係数を説明するための図である。図9は、基準試料を電気泳動させた場合の高分子マーカ(UM)ピークのシンメトリー係数の一例を示す図である。図9の例では、縦軸がシンメトリー係数を示し、横軸が分析回数を示す。シンメトリー係数の正常範囲は、0.9~1.18とする。図9の例では、分析回数が、Y1回目のとき、Y2回目のとき、Y3回目のとき、およびY4回目のときに、シンメトリー係数は、正常範囲外に属する。
図10は、電気泳動パラメータとしてのピーク検出時間を説明するための図である。ピーク検出時間は基準試料を電気泳動させてから該電気泳動でピーク(例えば、基準試料の電気泳動での高分子マーカ(UM)でのピーク)が検出されるまでの時間をいう。電気泳動装置100は、サンプルと基準試料との電気泳動時間は共に180秒である。また、本実施の形態では、ピーク検出時間の正常範囲は、94秒~124秒である。図10の例では、いずれの場合にも、ピーク検出時間は、正常範囲に属している。
図11および図12は、マイクロチップ5の信号強度(測定値)を示す図である。図11および図12の横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。信号強度は、蛍光信号の強度を示し、光ファイバ32-1~32-4が受信した信号の強度である。図11および図12のLMは、下限マーカ物質のマーカを示し、図11のUMは、上限マーカ物質のマーカを示す。本実施の形態では、信号強度のベースラインの正常範囲は、50mV以下である。信号のノイズレベルの正常範囲は、2mV以下である。換言すれば、ピークでない箇所の信号強度の最大値と最小値との差分が2mV以下となることにより、信号のノイズレベルは、正常範囲に属する。
図11は、バックグラウンド(ベースライン強度)基準を満たしているマイクロチップ5の信号強度を示す図である。図11の例では、ベースライン強度は、基準の50mV以下となっている。信号のノイズレベルの正常範囲は、2mV以下となっている。図12は、ベースライン強度基準を満たしていないマイクロチップ5の信号強度を示す図である。図12の例では、信号強度のベースラインは、50mV以上となっている。図13は、図12のβの個所を拡大した図である。図13の例では、ピークでない箇所の信号強度の最大値と最小値との差分が2mV以上となっていることから、ノイズレベルは正常範囲に属していない。
次に、チップパラメータのうちのバッファ充填時間を説明する。コントローラ38は、加圧吸引部16を制御することにより、マイクロチップ5に対してマイクロチップ5のポート♯4(図4参照)から、200キロパスカルで分離バッファを注入する。また、電気泳動装置100は、マイクロチップ5の流路のうち任意の位置Pで分離バッファに対応する信号強度を測定する。なお、位置Pは、サンプルの蛍光検出で受光する位置と同一の位置としてもよい。
図14および図15は、位置Pでの信号強度を示す図である。図14および図15の横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。横軸の時間0は、分離バッファの注入を開始したときを示す。図14は、性能基準を満たしているマイクロチップ5の位置Pでの信号強度を示す図である。図15は、性能基準を満たしていないマイクロチップ5の位置Pでの信号強度を示す図である。
性能基準を満たしているマイクロチップ5では、分離バッファの注入(充填)を開始したときから想定されていた時間(図14の例では、時間T)経過したときに、注入された分離バッファは、位置Pに到達する。一方、性能基準を満たしていないマイクロチップ5では、ポート♯4から位置Pまでの領域において、異物(たとえば、残存しているサンプルおよび分離媒体等)が存在する場合がある。したがって、性能基準を満たしていないマイクロチップ5では、分離バッファが注入されてから、該分離バッファが位置Pに到達するまでの時間は、想定されていた時間以上となる場合がある。つまり、性能基準を満たしているマイクロチップ5では、分離バッファの注入(充填)を開始したときから位置Pでの信号強度がプラトーとなるときまでの時間が、正常範囲としての充填時間未満となる。一方、性能基準を満たしていないマイクロチップ5では、分離バッファの注入を開始したときから位置Pでの信号強度がプラトーとなるときまでの時間が、正常時間以上となる。
性能基準を満たしていないマイクロチップ5では、注入された分離バッファにおいて気泡が生じる場合がある。図15に示すように、気泡が生じた場合には、スパイク信号αが発生する。以下では、注入された分離バッファに気泡が生じているか否かを示す情報を気泡情報という。気泡情報は、気泡が生じていなければ、例えば、「0」とされ、気泡が生じていれば、例えば、「1」とされる。気泡情報の正常範囲は、「0」とされる。つまり、気泡が生じている場合の気泡情報は、正常範囲外に属する。
電気泳動装置100は、充填機構が分離バッファを所定時間継続して、充填することにより算出される分離バッファの量(以下、置換容量)を用いる。充填機構が分離バッファを所定時間継続して、充填することにより、分離バッファが流路に充填されるとともに、ポート♯1~ポート♯3にも分離バッファが充填される。また、分注プローブ8には分離バッファの液面の高さを検知する静電容量センサ(特に図示せず)が設けられている。したがって、電気泳動装置100は、「流路に充填された分離バッファの容量」または「ポート♯1~ポート♯3のそれぞれの分離バッファの液面高さに基づく容量」により、置換容量を算出できる。なお、図6の例では、コントローラ38が、全てのパラメータを取得するとして記載されている。しかしながら、全てのパラメータのうちの少なくとも1つは、コントローラ38とは異なる処理装置が、算出して、コントローラ38が、該算出したパラメータを取得するようにしてもよい。また、全てのパラメータのうちの少なくとも1つは、コントローラ38自身が算出して、コントローラ38が該算出したパラメータを取得するようにしてもよい。例えば、図6では、算出された置換容量をチップパラメータとしてコントローラ38の取得部382が取得することが記載されている。このように、コントローラ38とは異なる処理装置が、置換容量を算出して、コントローラ38に送信するようにしてもよい。また、コントローラ38自身が置換容量を算出するようにしてもよい。
性能基準を満たしているマイクロチップ5での置換容量は、適正範囲内となる。また、性能基準を満たしていないマイクロチップ5での置換容量は、たとえば、流路の圧力損失分だけ、置換容量が少なくなる等の理由により、適正範囲外となる。
チップパラメータは、上述のテスト電流を含む。性能基準を満たしているマイクロチップ5のテスト電流値は、正常範囲内となる。一方、性能基準を満たしていないマイクロチップ5のテスト電流値は、正常範囲外となる。
[電気泳動装置の分析処理]
図16~図18は、電気泳動装置100の分析処理の流れの一例を示す図である。図16は、分析処理の流れの一例を示す図である。電気泳動装置100にサンプル等がセットされて、ユーザにより入力部82に対して開始操作が実行されることにより、分析処理は開始する。
ステップS100において、コントローラ38は、前処理(マイクロチップ5の洗浄等)を開始する。次に、ステップS102において、コントローラ38は、サンプルに対して電気泳動を実行する。次に、ステップS104において、電気泳動の結果に基づいてデータ処理を実行することにより、サンプルに対する分析結果を出力する。
図17は、ステップS100の前処理の流れの一例を示す図である。ステップS2において、コントローラ38は、ステップS102で使用されるマイクロチップ5のチップIDを特定する。チップIDは、例えば、図16の分析処理を開始させる場合に、ユーザにより入力される。コントローラ38は、入力されたチップIDを特定する。なお、変形例として、マイクロチップ5に、チップIDを識別可能なコード(例えば、2次元コード)が付与されるようにしてもよい。IDセンサは、該チップIDを読み取ることにより、コントローラ38は、チップIDを特定するようにしてもよい。
次に、ステップS4において、判断部384は、チップIDに付与されたフラグの種別を判断する。洗浄制御部388は、該判断されたフラグの種別に応じた洗浄を洗浄機構500に実行させる。図7の例では、例えば、フラグF1が関連付けられているマイクロチップ5に対して、洗浄機構500は、第1洗浄を実行する。
次に、ステップS6において、加圧吸引部16は、マイクロチップ5に対して分離バッファを注入する。次に、ステップS8において、更新部383は、注入された分離バッファにおいて気泡が生じたか否かを判断する(つまり、図15に示すスパイク信号αが検出されたか否かを判断する)。また、ステップS8において、更新部383は、上述の置換容量が、正常範囲に属しているか否かを判断する。また、ステップS8において、更新部383は、バッファ充填時間(図14および図15参照)が、正常範囲に属しているか否かを判断する。更新部383は、ステップS8の気泡が生じたか否か、置換容量が正常範囲に属しているか否か、およびバッファ充填時間が正常範囲に属しているか否かに基づいて、フラグを更新する。なお、気泡が発見されたこと、置換容量が正常範囲外であること、およびバッファ充填時間が正常範囲外であることのうち、少なくとも1つが検出された場合には、ステップS6に戻るようにしてもよい。この場合には、すでに注入されていた分離バッファを除去し、その後、新たに分離バッファを充填するようにしてもよい。また、「分離バッファを除去し、その後、新たに分離バッファを充填する処理」の回数が、所定回数(例えば、2回)に到達した場合には、更新部383は、マイクロチップ5のフラグをフラグF3に更新するようにしてもよい。
次に、ステップS10において、コントローラ38は、テスト電流を検知する。次に、ステップS12において、更新部383は、テスト電流が正常範囲に属しているか否かを判断する。テスト電流が正常範囲に属していないと更新部383が判断した場合には、マイクロチップ5のフラグがフラグF1およびフラグF2のいずれであるかに関わらず、フラグF3に更新する。これとともに、ステップS14において、コントローラ38は、マイクロチップが使用不可であることを報知する。なお、変形例として、ステップS12において、更新部383が、テスト電流が正常範囲に属していないと判断した場合には、たとえば、ステップS6に戻るようにしてもよい。また、ステップS12において、更新部383が、テスト電流が正常範囲に属していないと判断した場合には、フラグF1をフラグF2に更新するようにしてもよい。この場合には、処理は、ステップS14に進まず、ステップS16に進むようにしてもよい。
次に、ステップS16において、コントローラ38は基準試料をマイクロチップ5に注入する。次に、ステップS18において、コントローラ38は、電気泳動機構520に、注入された基準試料の電気泳動を実行する。次に、ステップS20において、コントローラ38は、分析性能を確認する。ステップS20の処理は、取得部382が電気泳動パラメータを取得して、更新部383がそれぞれの電気泳動パラメータが正常範囲に属するか否かを判断する処理である。電気泳動パラメータは図8~図13で説明した通りである。
ステップS20での結果に基づいて、更新部383は、フラグを更新する。例えば、フラグF2が関連付けられているマイクロチップ5の分析性能がステップS20にて分析性能が向上していると確認された場合には、更新部383は、該フラグF2をフラグF1に更新する。フラグF1が関連付けられているマイクロチップ5の分析性能がステップS18にて分析性能が低下していると確認された場合には、更新部383は、該フラグF1をフラグF2に更新する。例えば、ステップS20の処理の前では、5つの電気泳動パラメータの全てが、正常範囲に属していると判断されていたにも関わらず、ステップS20の処理により、5つの電気泳動パラメータのうちの少なくとも1つのパラメータが、正常範囲に属していると判断された場合には、分析性能が低下していると確認される。また、フラグF1またはフラグF2が関連付けられているマイクロチップ5の分析性能がステップS20にて分析性能が著しく低下していると確認された場合には、更新部383は、該フラグF1またはフラグF2をフラグF3に更新する。
ステップS22において、判断部384は、マイクロチップ5が性能基準を満たしているか否かを判断する。ステップS22において、判断部384は、例えば、ステップS20での確認結果に基づいて、マイクロチップ5の性能基準を満たすか否かを判断する。ステップS20において、例えば、5つの電気泳動パラメータうち少なくとも1つの電気泳動パラメータが、正常範囲に属していると判断された場合に、マイクロチップ5の性能基準を満たすと判断されるようにしてもよい。より特定的には、5つの電気泳動パラメータうち全ての電気泳動パラメータが、正常範囲に属していると判断された場合に、マイクロチップ5の性能基準を満たすと判断されるようにしてもよい。ステップS22において、YESと判断された場合には、処理は、ステップS102(図16参照)に進む。ステップS22において、NOと判断された場合には、処理は、ステップS2に戻る。該ステップS2では、洗浄機構500は、フラグF2に基づいた洗浄処理、つまり、第1洗浄および第2洗浄を実行する。また、ステップS20において、マイクロチップ5に関連付けられたフラグが、フラグF3であると判断された場合には、コントローラ38は、マイクロチップが使用不可であることを報知する。
また、変形例として、ステップS22において、判断部384が、マイクロチップ5に関連付けられたフラグが、フラグF1であるか否かを判断するようにしてもよい。ステップS22において、マイクロチップ5に関連付けられたフラグが、フラグF1であると判断された場合にはステップS22ではYESと判断される。一方、ステップS22において、マイクロチップ5に関連付けられたフラグが、フラグF2であると判断された場合にはステップS22ではNOと判断される。
図18は、ステップS4において、フラグF2が関連付けられたマイクロチップに対する洗浄の処理(つまり、第1洗浄および第2洗浄の双方を実行する処理)の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS202において、洗浄機構500は、マイクロチップ5の流路およびリザーバが空の状態で、1つのリザーバに洗浄液を加圧充填する。次に、ステップS204において、コントローラ38は、所定時間が経過するまで待機する。所定時間は、充填された洗浄液によりマイクロチップ5の流路およびリザーバが洗浄液に接触した状態で保持される時間である。次に、ステップS206において、コントローラ38は、例えば、吸引ノズル22を駆動することにより、洗浄液を除去する。
次に、ステップS208において、洗浄機構500は、マイクロチップ5のリザーバが空の状態で、1つのリザーバに洗浄水を加圧充填する。次に、ステップS210において、洗浄機構500は、1つのリザーバから加圧気体を供給することにより、マイクロチップ5の流路を乾燥させる。また、第2洗浄を実行せずに第1洗浄を実行する場合には、ステップS208およびステップS210の処理が実行される。
[小括]
(1) 図19は、比較例の電気泳動装置の処理の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS500において、電気泳動装置は、分離バッファの残量を確認する。次に、ステップS502において、電気泳動装置は、マイクロチップを洗浄する。次に、ステップS504において、電気泳動装置は、マイクロチップに分離バッファを充填する。次に、ステップS506において、電気泳動装置は、マイクロチップに電圧を印加することにより、テスト電流を検知する。次に、ステップS508において、電気泳動装置は、検知されたテスト電流が正常範囲内であるか否かを判断する。電気泳動装置は、検知されたテスト電流が正常範囲外であると判断した場合には(ステップS508でNO)、処理は、ステップS504に戻る。なお、ステップS508から戻ったステップS504においては、充填されていた分離バッファが除去された後に、再び分離バッファが充填される。
電気泳動装置は、検知されたテスト電流が正常範囲内であると判断した場合には(ステップS508でYES)、ステップS510において、電気泳動装置は、マイクロチップにサンプルを注入する。次に、ステップS512において、電気泳動装置は、注入したサンプルの電気泳動を実行する。次に、ステップS514において、電気泳動装置は、データ処理を実行することにより、サンプルの分析結果を導出する。次に、ステップS516において、電気泳動装置は、分析する次のサンプルが存在するか否かを判断する。電気泳動装置は、分析する次のサンプルが存在すると判断した場合には(ステップS516でYES)、処理は、ステップS502に戻る。一方、電気泳動装置は、分析する次のサンプルが存在しないと判断した場合には(ステップS516でNO)、処理は、終了する。
図19の例では、マイクロチップに対する洗浄液を用いた洗浄が必要か否かをユーザ自身で判断する必要があった。したがって、比較例の電気泳動装置では、ユーザの負担を強いることになる。
そこで、電気泳動装置100は、デバイスの性能に関する基準を満たしているか否かを判断する(例えば、図17のステップS20の判断参照)。電気泳動装置100は、デバイスの性能に関する基準を満たしていないと判断した場合に、デバイスに対して洗浄液を用いた第2洗浄を実行する。したがって、電気泳動装置100は、繰り返し用いられるデバイスの本来の性能を保持することを目的とした効率的な洗浄技術を、ユーザの負担を強いることなく提供できる。また、電気泳動装置100は、ユーザの負担を強いることなく、デバイスに対して洗浄液を用いた第2洗浄を実行できる。また、電気泳動装置100は、デバイスの性能に関する基準を十分満たしていると判断した場合に、デバイスに対して洗浄液を用いた第2洗浄を実行しない。したがって、電気泳動装置100は、デバイスに対して不要な洗浄液での洗浄を実行することを回避できる。また、電気泳動装置100は、サンプルの分析(サンプルの電気泳動処理)前に、マイクロチップ5の電気泳動の分析性能の変動要因を検知することにより、サンプルの分析の作業効率を低下させずに信頼性の高い分析結果を出力できる。また、比較例の電気泳動装置では、マイクロチップ5の性能の劣化に気付かずにサンプルの分析を継続することにより、貴重なサンプルが無駄になる場合がある。さらには、比較例の電気泳動装置では、サンプル由来成分の吸着が進行し、マイクロチップ5の表面が不可逆的に改変してしまうことで、マイクロチップ5の再利用ができなくなる場合もある。電気泳動装置100では、マイクロチップ5の性能が劣化している場合には(つまり、ステップS20でNOと判断された場合には)、サンプルの分析を実行しない。したがって、電気泳動装置100は、貴重なサンプルが無駄になることを防止できる。これに伴い、電気泳動装置100は、サンプルの由来成分の吸着の進行を防止できることから、マイクロチップ5の表面が不可逆的に改変してしまうことも防止できる。また、電気泳動装置100は、マイクロチップ5の性能が担保された状態で、サンプルを分析することから、分析結果の信頼性が向上する。また、電気泳動装置100は、ユーザはマイクロチップ5を取り外した後に該マイクロチップ5を洗浄するという処理を行わなくてもよいことから、ユーザの作業を軽減できる。
(2) 電気泳動装置100は、基準を満たしているか否かの判断は、基準試料を電気泳動させることにより得られる第1データ(図8~図13に示される電気泳動データ)に基づいて実行される。したがって、擬似的な電気泳動により得られるデータに基づいて、マイクロチップ5が基準を満たしているか否かを判断できる。
(3) 電気泳動データは、基準試料の電気泳動での理論段数(図8参照)を含む。電気泳動データは、基準試料の電気泳動でのピークのシンメトリー係数(図9参照)を含む。電気泳動データは、基準試料を電気泳動させてから該電気泳動でのピークが検出されるまでのピーク検出時間(図10参照)を含む。電気泳動データは、基準試料の電気泳動での測定値のベースライン(図11および図12参照)の高さを含む。電気泳動データは、電気泳動の信号のノイズレベル(図12および図13参照)を含む。
このように、電気泳動装置は、理論段数、シンメトリー係数、ピーク検出時間、ベースラインの高さ、およびノイズレベルの5つの電気泳動データを用いて、マイクロチップ5が基準を満たしているか否かを判断できる。(図17のステップS18およびステップS20参照)。したがって、電気泳動装置100は、デバイスが基準を満たしているか否かを、基準試料の電気泳動での具体的なパラメータを用いて判断できる。
(4) 電気泳動装置100は、分離バッファをマイクロチップ5に注入することにより得られる第2データに基づいてフラグを更新する(図17のステップS8参照)。したがって、電気泳動装置100は、擬似的に分離バッファを注入することにより得られるデータに基づいてフラグを更新することができる。
(5) 第2データは、バッファ検出時間(図14参照)を含む。図14で説明したように、バッファ検出時間は、充填機構がマイクロチップ5に分離バッファを注入してから、流路での所定の検出位置Pで分離バッファが検出されるまでの時間である。第2データは、気泡情報(注入された分離バッファに気泡が生じているか否かを示す情報)を含む(図15のスパイク信号α参照)。第2データは、置換容量を含む。
このように、電気泳動装置100は、バッファ検出時間、気泡情報、および置換容量に基づいてフラグを更新する(図17のステップS8参照)。したがって、電気泳動装置100は、分離バッファの注入での具体的なパラメータを用いて更新できる。
例えば、分離バッファに気泡が生じている状態または分離バッファに異物が混入している状態でマイクロチップ5に電圧が印加されると、空泳動が生じ、マイクロチップ5に対して局所的に強い電位勾配がかかる。その結果、マイクロチップ5へのジュール熱による熱負荷が原因で、マイクロチップ5の性能が低下する場合がある。電気泳動装置100は、第2データを用いてフラグを更新することから、局所的に強い電位勾配がかかることを防止でき、結果として、マイクロチップ5の性能の低下を防止できる。
(6) 電気泳動装置100は、テスト電流が正常範囲に属するか否かを判断し(図17のステップS10参照)、テスト電流が正常範囲に属していないと判断された場合に、マイクロチップ5を使用不可とする。したがって、電気泳動処理に適切でないマイクロチップ5が使用されることを防止できる。テスト電流が正常範囲に属するか否かを判断する処理は、充填機構が正常に動作しているか否か、分離バッファが正確に選択されているか否か、および電極端子が正常に機能しているか否かを判断するための処理である。
[その他の実施形態]
(1) 一般的に、マイクロチップ5が製造されたときからの経過期間が長期間である場合に、マイクロチップ5の分析性能が劣化する傾向にある。そこで、更新部383は、マイクロチップ5が製造されたときから現在までに経過した期間(以下、「経過期間」という。)に基づいて、フラグを更新するようにしてもよい。図20は、フラグと経過期間との対応を示す図である。図20を参照して、更新部383は、経過期間が第1所定期間未満であるマイクロチップ5に対してフラグF1を関連付ける。更新部383は、経過期間が第1所定期間以上でありかつ第2所定期間未満であるマイクロチップ5に対してフラグF2を関連付ける。第1所定期間<第2所定期間である。更新部383は、経過期間が第2所定期間以上であるマイクロチップ5に対してフラグF3を関連付ける。
洗浄機構500は、経過期間が第1所定期間以上でありかつ第2所定期間未満であるマイクロチップ5に対して、第1洗浄および第2洗浄を実行する。したがって、電気泳動装置100は、マイクロチップ5の劣化した分析性能を回復させることができる。電気泳動装置100は、経過期間が第2所定期間以上であるマイクロチップ5に対しては、使用不可であるフラグF3を関連付ける。したがって、電気泳動装置100は、洗浄したとしても回復させ難いマイクロチップ5の使用が禁止されることをユーザに認識させることができる。
(2) 一般的に、マイクロチップ5が製造されたときからの使用回数が多数である場合に、マイクロチップ5の分析性能が劣化する傾向にある。そこで、更新部383は、マイクロチップ5の使用回数(電気泳動に用いられた回数)に基づいて、フラグを更新するようにしてもよい。図21は、フラグと使用回数との対応を示す図である。図21を参照して、更新部383は、使用回数が第1回数未満であるマイクロチップ5に対してフラグF1を関連付ける。更新部383は、使用回数が第1回数以上でありかつ第2回数未満であるマイクロチップ5に対してフラグF2を関連付ける。第1回数<第2回数である。更新部383は、使用回数が第2回数以上であるマイクロチップ5に対してフラグF3を関連付ける。
洗浄機構500は、使用回数が第1回数以上でありかつ第2回数未満であるマイクロチップ5に対して、第1洗浄および第2洗浄を実行する。したがって、電気泳動装置100は、マイクロチップ5の劣化した分析性能を回復させることができる。電気泳動装置100は、使用回数が第2回数以上であるマイクロチップ5に対しては、使用不可であるフラグF3を関連付ける。したがって、電気泳動装置100は、洗浄したとしても回復させ難いマイクロチップ5の使用が禁止されることをユーザに認識させることができる。
(3) また、洗浄機構500は、マイクロチップ5に対して第3洗浄を実行するようにしてもよい。第3洗浄は、第2洗浄とは異なる機序に基づく洗浄である。第3洗浄は、第2洗浄よりも洗浄時間が長い洗浄を含むようにしてもよい。第3洗浄は、第2洗浄よりも洗浄回数が多い洗浄を含むようにしてもよい。第3洗浄は、第2洗浄で使用される洗浄液よりも洗浄度合いが高い特定の洗浄液を使用する洗浄を含むようにしてもよい。第3洗浄は、第2洗浄で使用される洗浄液と、特定の洗浄液(例えば、図2の第2洗浄部27に収容されている第2洗浄液)を併用するようにしてもよい。
図22は、第3洗浄を説明するための図である。図22の例では、第3洗浄に対応するフラグとして、フラグF4が示されている。フラグF4は、チップID4のマイクロチップ5に関連付けられている。フラグF4は、フラグF2が関連付けられているマイクロチップ5の劣化度合いよりも高いが、フラグF3が関連付けられているマイクロチップ5の劣化度合いよりも低いことを示すフラグである。
図17のステップS4において、洗浄機構500は、フラグの種別に基づいた洗浄をマイクロチップ5に対して実行する。つまり、洗浄機構500は、情報に基づいて、第2洗浄および前記第3洗浄のいずれかを実行する。このような電気泳動装置であれば、マイクロチップ5の劣化度合いをより細やかに判断して、該劣化度合いに応じた洗浄をマイクロチップ5に実行できる。
(4) 一般的に、サンプルの種別に応じて、該サンプルを除去するための洗浄液は異なる。また、電気泳動されたサンプルは、マイクロチップ5の流路に残存している場合がある。そこで、洗浄機構500は、電気泳動機構520により電気泳動されたサンプル(つまり、流路に残存しているサンプル)に応じた洗浄方法で、該電気泳動に用いられたマイクロチップ5を洗浄する。
図23は、サンプルの種別ごとに対応する洗浄方法を示す図である。図23の例では、電気泳動されたサンプルがサンプルS1である場合には、該電気泳動後の前処理では、第1洗浄液が使用される。また、電気泳動されたサンプルがサンプルS2である場合には、該電気泳動後の前処理では、第2洗浄液が使用される。また、電気泳動されたサンプルがサンプルS3である場合には、該電気泳動後の前処理では、第3洗浄液が使用される。なお、電気泳動されたサンプルの識別情報は、電気泳動が終了した時点で、例えば、RAM63に記憶される。コントローラ38は、該RAM63に記憶されたサンプルの識別情報を読み出して、該識別情報に対応する洗浄液を決定する。このような電気泳動装置であれば、電気泳動されたサンプルを適切に除去できる。
(5) ステップS22では、フラグを用いずに、5つの電気泳動パラメータのうち少なくとも1つに基づいて、マイクロチップ5の性能基準を満たすか否かを判断するようにしてもよい。たとえば、5つの電気泳動パラメータの全てが正常範囲に属していると判断された場合には、ステップS20でYESと判断し、5つの電気泳動パラメータのうち少なくとも1つのパラメータが正常範囲に属していないと判断された場合には、ステップS20でNOと判断するようにしてもよい。
また、ステップS22では、フラグを用いずに、バッファ充填時間、気泡情報、および置換容量のうち少なくとも1つに基づいて、マイクロチップ5の性能基準を満たすか否かを判断するようにしてもよい。たとえば、バッファ充填時間が正常範囲に属していると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、バッファ充填時間が正常範囲に属していないと判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。たとえば、気泡情報で気泡が生じていないことを示すものであると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、気泡情報で気泡が生じていることを示すものであると判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。たとえば、置換容量が正常範囲に属していると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、置換容量が正常範囲に属していないと判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。また、ステップS20では、フラグを用いずに、テスト電流が正常範囲に属していると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、テスト電流が正常範囲に属していないと判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。
また、ステップS22では、フラグを用いずに、マイクロチップの使用回数が、適正範囲に属していると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、使用回数が正常範囲に属していないと判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。
また、ステップS22では、フラグを用いずに、マイクロチップの経過期間が、適正範囲に属していると判断された場合に、ステップS22でYESと判断し、経過期間が正常範囲に属していないと判断された場合に、ステップS22でNOと判断するようにしてもよい。
(6) 本実施の形態では、デバイスの一例として、マイクロチップ5を説明した。しかしながら、デバイスは、電気泳動に用いられるものであれば、他のデバイスとしてもよい。他のデバイスは、例えば、キャピラリとしてもよい。また、デバイスは、キャピラリー電気泳動装置(CE:capillary electrophoresis)、液体クロマトグラフィー(LC:Liquid Chromatography)、およびフローインジェクション分析(FIA:Flow Injection Analysis)等に応用されるようにしてもよい。
(7) 本実施の形態では、電気泳動装置100は、図16で説明したように、サンブルの分析前に前処理(ステップS100の処理)を実行するとして説明した。しかしながら、制御装置70が、前処理を実行するタイミングを決定する操作をユーザから受付けるようにしてもよい。例えば、電気泳動装置100は、夜間に前処理を実行するようにしてもよい。
(8) 電気泳動装置100は、パラメータが正常範囲外に属している場合において、パラメータと、該パラメータの正常範囲との乖離度合いが大きいほど、洗浄度合いを強めるようにしてもよい。例えば、パラメータとしての理論段数が正常レベルよりも下回っている場合において、理論段数と正常レベルとの差分数(正常レベルと、理論段数との乖離数)が第1差分数であるときの方が、第2差分数(第1差分数>第2差分数)であるときよりも洗浄度合いを強めた洗浄を実行するようにしてもよい。
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)一態様に係る電気泳動装置は、デバイスを用いて、試料を電気泳動させる電気泳動機構と、前記デバイスが、前記デバイスの性能に関する基準を満たしているか否かを判断する制御装置と、洗浄水を用いて前記デバイスを洗浄する第1洗浄と、前記洗浄水とは異なる洗浄液を用いて前記デバイスを洗浄する第2洗浄とを実行する洗浄機構と、前記洗浄機構は、前記デバイスが前記基準を満たしていないと判断された場合に前記デバイスに対して前記第2洗浄を実行する。
第1項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしていないと判断された場合にデバイスに対して洗浄液を用いた第2洗浄を実行することから、デバイスに対して不要な洗浄液での洗浄を実行することを防止できる。
(第2項)第1項に記載の電気泳動装置は、前記基準を満たしているか否かの判断は、前記電気泳動機構が基準試料を電気泳動させることにより得られる第1データに基づいて実行される。
第2項に記載の電気泳動装置によれば、擬似的な電気泳動により得られるデータに基づいて、デバイスが基準を満たしているか否かを判断できる。
(第3項)第2項に記載の電気泳動装置は、前記第1データは、前記基準試料の電気泳動での理論段数と、前記基準試料の電気泳動でのピークのシンメトリー係数と、前記基準試料を電気泳動させてから該電気泳動でのピークが検出されるまでの時間と、前記基準試料の電気泳動の結果のベースラインの高さと、前記基準試料の電気泳動のノイズレベルと、のうち少なくとも1つを含む。
第3項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしているか否かを、基準試料の電気泳動での具体的なパラメータを用いて判断できる。
(第4項)第1項~第3項のいずれかに記載の電気泳動装置は、前記デバイスに分離バッファを充填する充填機構をさらに備え、前記デバイスは、電気泳動により試料を分離するための流路を有し、前記基準を満たしているか否かの判断は、前記充填機構が前記分離バッファを前記デバイスに充填することにより得られる第2データに基づいて実行される。
第4項に記載の電気泳動装置によれば、擬似的に分離バッファを充填することにより得られるデータに基づいて、デバイスが基準を満たしているか否かを判断できる。
(第5項)前記第2データは、前記充填機構が前記デバイスに前記分離バッファの充填を開始してから、前記流路での所定の検出位置で前記分離バッファが検出されるまでの時間と、前記充填機構により充填された前記分離バッファに気泡ができているか否かと、前記充填機構が前記分離バッファを所定時間、充填することにより算出される前記分離バッファの量とのうち少なくとも1つを含む。
第5項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしているか否かを、分離バッファの充填での具体的なパラメータを用いて判断できる。
(第6項)第1項~第5項のいずれかに記載の電気泳動装置において、前記電気泳動機構は、前記デバイスに対して電圧を印加し、前記基準を満たしているか否かの判断は、前記電気泳動機構により印加された電圧に応じて流れる電流に基づいて実行される。
第6項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしているか否かを、擬似的に印加された電圧に応じて流れる電流に基づいて判断できる。
(第7項)第1項~第6項のいずれかに記載の電気泳動装置において、前記基準を満たしているか否かの判断は、前記デバイスが製造されたときから経過した期間に基づいて実行される。
一般的に、デバイスが製造されたときからの経過期間が長期間である場合に、デバイスの分析性能が劣化する傾向にある。第7項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしているか否かを、デバイスの経過期間に基づいて判断できる。したがって、電気泳動装置は、この傾向に即した判断を実行できる。
(第8項)第1項~第7項のいずれかに記載の電気泳動装置において、前記基準を満たしているか否かの判断は、前記デバイスが使用された回数に基づいて実行される。
一般的に、デバイスの使用回数が多数である場合に、デバイスの分析性能が劣化する傾向にある。第7項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスが基準を満たしているか否かを、デバイスの使用回数に基づいて判断できる。したがって、電気泳動装置は、この傾向に即した判断を実行できる。
(第9項)第1項~第8項のいずれかに記載の電気泳動装置において、前記デバイスと前記デバイスの性能の劣化度合いとが関連付けられている情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記洗浄機構は、前記第2洗浄よりも洗浄度合いが高い第3洗浄を実行可能であり、前記情報に基づいて、前記第2洗浄および前記第3洗浄のいずれかを実行する。
第9項に記載の電気泳動装置によれば、デバイスに劣化度合いに応じた洗浄を実行できる。
(第10項)第1項~第9項のいずれかに記載の電気泳動装置において、前記洗浄機構は、前記電気泳動機構により電気泳動された試料に応じた洗浄方法で、該電気泳動に用いられた前記デバイスを洗浄する。
第10項に記載の電気泳動装置によれば、電気泳動された試料に応じた洗浄を実行できる。
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施の形態の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。