JP7346875B2 - 被覆用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、食品、特に菓子類に塗布される被覆用油脂組成物に関する。
食品、特にスナックやビスケット菓子、米菓等の菓子類は、表面の艶出し、風味や食感の改良、乾燥防止、或いは吸湿防止、調味料の固着等を目的として、生地の表面を油脂等で被覆することが行われている。
被覆用油脂は食品表面に塗布後、室温で速やかに固化することが、被覆後の搬送工程への速やかな移送や、包装材料への付着等を抑制できる点から求められる。
また、被覆後の食品を保存中に低融点成分、特に低融点トリグリセリドを主成分とする液体油が表面に染みだすこと等に起因して、経時的に軟化やベタツキが生じることがあり、この経時的な軟化やベタツキを抑制することも求められる。
加えて、夏場の輸送中等に被覆した食品が高温に曝される場合、油脂成分が融解する可能性がある。この油脂成分の溶解は、再固化による食品どうしのブロッキングや、食品の見た目の悪化といった問題の原因となるため、被覆用油脂組成物には高温下での融解耐性も求められる。
これらを改善するために、特許文献1には液状油に対して極度硬化油を配合した流動状の被覆用油脂組成物が提案されている。流動状であると被覆した食品を保存中に経時的に液状油が染みだし、ベタツキを生じ易くなる。特許文献2~5には、エステル交換油脂の使用が提案されている。
特開2002 - 47500号公報 特開2000 - 253818号公報 特開2012 - 152113号公報 特開2009 - 082002号公報 特表2009 - 116396号公報
被覆用油脂組成物にエステル交換油脂を使用した特許文献2、3ではパーム系油脂に液状油を組み合わせたエステル交換油脂や、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が高いエステル交換油脂を使用しているが、エステル交換油脂と他の油脂との相溶性が悪いため、固液分離が生じる恐れがある。また特許文献4では油脂組成物のSFCが高く、特許文献5ではエステル交換油脂のヨウ素価が低いため、作業性が悪くなりやすい。
本発明の課題は、食品に被覆した際に速やかに固化し、食品保存時等における経時での変化、特にベタツキが生じることも抑制され、加えて夏場の輸送時に想定される高温下での保管にも耐えることが出来、作業性にも優れた被覆用油脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、被覆用油脂組成物を特定の油脂構成とすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1) ヨウ素価が18以上39以下である、被覆用油脂組成物、
(2) 下記に示す、Aが17質量%以上37質量%以下、およびBが62質量%以上80質量%以下である、(1)の被覆用油脂組成物、
A:構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸含有量
B:構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量
(3) 前記Aに対するBの質量比(B /A)が1.7以上5以下である、(1)または(2)の被覆用油脂組成物、
(4) 20℃における固体脂含量が70%以下、および40℃における固体脂含量が30%以上である、(1)~(3)のいずれかの被覆用油脂組成物、である。
本発明により、食品に被覆した際に速やかに固化し、食品保存時等に経時での変化、特にベタツキが生じることも抑制され、加えて夏場の輸送時に想定される高温下での保管にも耐えることが出来、作業性にも優れた被覆用油脂組成物を提供することができる。
好ましい態様は、50℃における耐熱性を有し、保形性が良好で、被覆食品生地からの油脂移行耐性を有する、被覆用油脂組成物を提供することができる。
本発明の被覆用油脂組成物は、ヨウ素価が18以上39以下である。好ましくは20以上38以下、より好ましくは22以上38以下、さらに好ましくは23以上38以下、最も好ましくは25以上38以下である。18未満では、作業性が悪化する場合がある。39を超えると、50℃保形性が悪化したり、油脂移行耐性が悪化したりする場合があるため好ましくない。
本発明の被覆用油脂組成物は、好ましくは、下記に示す、Aが17質量%以上37質量%以下、及びBが62質量%以上80質量%以下である。
Aのより好ましい態様は、18質量%以上36質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上36質量%以下、最も好ましくは22質量%以上36質量%以下である。
Bのより好ましい態様は、63質量%以上79質量%以下、さらに好ましくは64質量%以上78量%以下、最も好ましくは64質量%以上77質量%以下である。
Aが、37質量%を超えると油脂移行耐性が悪化する場合があるため好ましくない。17質量%未満では、融点が高く作業性が悪くなる場合があるため好ましくない。
Bが、62質量%未満では50℃保形性が悪化する場合があるため好ましくない。80質量%を超えると、融点が高く作業性が悪くなる場合があるため好ましくない。
A:構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸含有量
B:構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量
本発明の被覆用油脂組成物は、好ましくは、前記Aに対するBの質量比(B /A)が1.7以上5以下である。1.7未満では、50℃保形性が悪化したり、油脂移行耐性が悪化したりする場合があるため好ましくない。5を超えると、作業性が悪化する場合がある。より好ましくは1.8以上4.5以下、さらに好ましくは1.8以上4以下である。
本発明の被覆用油脂組成物は、好ましくは、20℃における固体脂含量が70%以下、及び40℃における固体脂含量が30%以上である。
20℃における固体脂含量は、より好ましくは35%以上70%以下、さらに好ましくは40%以上70%以下、最も好ましくは40%以上65%以下である。
40℃における固体脂含量は、より好ましくは30%以上60%以下、さらに好ましくは30%以上55%以下である。
本発明の被覆用油脂組成物は、オレイン酸を15質量%以上30質量%以下で含有することが好ましい。より好ましくは16質量%以上29質量%以下、さらに好ましくは17質量%以上29質量%以下、最も好ましくは18質量%以上28質量%以下である。
本発明の被覆用油脂組成物は、前記油脂の構成とすれば使用する油脂類に特に制限はないが、使用可能な好ましい油脂類を例示すると、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、中鎖トリグリセリド(MCT)、シア脂、サル脂等の植物性油脂、乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、ならびに、それらの硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。
前記油脂構成に調整が容易な点で、パーム系油脂を使用することが好ましい。パーム油の硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油脂等が例示できる。
好ましい態様として、パーム油の極度硬化油を30質量%以上70質量%未満で配合することが好ましい。より好ましくは30質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上60質量%以下、最も好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
本発明の被覆用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、着色料、乳化剤、酸化防止剤、消泡剤、香料等の任意成分を配合しても良い。かかる任意成分の配合量は、本発明の被覆用油脂組成物中、好ましくは合計で5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
本発明の被覆用油脂組成物が使用可能な食品は、特に限定されるものではないが、好ましくは焼き菓子であって、ビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツェル、ウエハース、等の菓子が例示できる。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中の%は重量基準を意味する。
<実施例1>
精製パーム油とパーム極度硬化油を70:30で調合した油脂をを60℃に温調し、市販のビスケット表面に刷毛で塗布することで、本発明の被覆用油脂組成物が被覆された食品を作製した。この被覆食品を用いて、各種評価を実施した。
<実施例2>
精製パーム油とパーム極度硬化油を50:50で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
<実施例3>
精製パームオレインとパーム極度硬化油を50:50で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
<比較例1>
精製パーム油とパーム極度硬化油を80:20で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
<比較例2>
精製パーム油とパーム極度硬化油を30:70で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
<比較例3>
精製パームオレインとパーム極度硬化油を70:30で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
<比較例4>
精製パームオレインとパーム極度硬化油を30:70で調合した油脂を使用し、実施例1と同様に被覆食品を作製し各種評価を実施した。
実施例、比較例における各油脂の分析値を表1に示す。なお使用した油脂は、パーム油は精製パーム油(ヨウ素価52、不二製油株式会社製)、精製パームオレイン(ヨウ素価58、不二製油株式会社製)、ヨウ素価1以下のパーム極度硬化油をそれぞれ使用した。
各被覆食品の評価は次のように行った。評価結果を表2に示す。
(評価方法)
(1)作業性
ビスケットへの塗布時の作業性を下記基準で評価した。×は不合格とした。
◎=結晶化することなく生地に塗布できる
○=少し結晶化するが、塗布に支障はない
×=結晶化激しく、塗布することが出来なくなる
(2)50℃保形性
作製した被覆食品を50℃のインキュベーターで保管し保形性を下記基準で評価した。×は不合格とした。
◎=十分な硬さを保っている
○=少し柔らかくなるが、形は保っている
×=形を保つことが出来ない
(3)油脂移行耐性
作製した被覆食品を50℃のインキュベーターで保管しビスケット生地からの油脂移行を下記基準で評価した。×は不合格とした。
◎=油脂移行による物性の変化がない
○=油脂移行により僅かに物性が変化する
×=油脂移行により物性が大きく変化する
Figure 0007346875000001
Figure 0007346875000002
<評価結果>
実施例1、2、3はいずれも50℃における保形性、油脂移行耐性及び作業性が良好であり、高温での保形性を有しながら作業性にも優れ、かつ生地からの油脂移行を防ぐことが出来る、被覆食品を作製するための機能を有していた。一方で、比較例1、3は飽和脂肪酸含量が少なく、沃素価が高いため、熱に対する耐性が不十分であった。反対に比較例2、4は飽和脂肪酸含量が多く、沃素価が低いため、作業性が損なわれるといった結果であった。
本発明により、高温での保形性を有しながら作業性にも優れ、かつ生地からの油脂移行を防ぐことが出来る被覆用油脂組成物を提供することが出来る。

Claims (4)

  1. パーム油の極度硬化油を30質量%以上70質量%未満で含み、ヨウ素価が18以上39以下である、20℃における固体脂含量が70%以下、及び40℃における固体脂含量が30%以上である、被覆用油脂組成物。
  2. 下記に示す、Aが17質量%以上37質量%以下、及びBが62質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の被覆用油脂組成物。
    A:構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸含有量
    B:構成脂肪酸組成中、炭素数16~18の飽和脂肪酸の含有量
  3. 前記Aに対する前記Bの質量比(B /A)が1.7以上5以下である、請求項2に記載の被覆用油脂組成物。
  4. 塗布被覆用である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の被覆用油脂組成物(ただし、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有する態様を除く)
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