JP6466062B2 - コーティング用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、米菓、スナック菓子、ビスケット菓子等の食品に塗布されるコーティング用油脂組成物に関する。
米菓、スナック菓子、ビスケット菓子等の食品は、表面の艶出しや、色調、風味、サクさ等の改良、保存安定性の向上、調味料の固着等を目的として、焼成した生地に油脂をコーティングすることが行われている。
このコーティング用油脂は、塗布後に速やかに固化しベタツキがなくなることが、油脂の液ダレや包装材料への付着等を短時間で抑制できる点から求められる。
また、塗布直後のベタツキはない場合でも、塗布した食品を保存中に、2不飽和トリグリセリド及び3不飽和トリグリセリド等の低融点トリグリセリドである液状油が染みだすこと等に起因して、経時的にベタツキが生じることがあり、この経時的なベタツキを抑制することも求められる。
そして食品として消費者に供される際には、口に入れた際に表面を被覆したコーティングが速やかに溶ける口溶け感が、食品の美味しさを出すために重要である。
そして食品へのコーティングは主にスプレー等で生地に噴霧することによって行われているが、コーティングの作業時に3飽和トリグリセリドが多い油脂や結晶化が速過ぎる油脂の結晶析出によってノズルの目詰まりが生じる場合がある。ノズルの目詰まりが生じると噴霧状態が変化し適切なコーティングに支障を生じたり、コーティングが困難になったりする。したがってコーティングの作業性の向上にはノズルの目詰まりが生じにくいことが必須になる。
従来、このコーティング用油脂には液状油や高融点油脂が使用されている。しかし、液状油を使用した場合、包装袋や手に油脂が付着したり、食感が油っぽく、また酸化安定性が低いため、長期保存する米菓、スナック菓子、ビスケット菓子等の食品の風味を損ねる。一方水添した油脂やパーム等の高融点油脂を使用した場合、酸化安定性は向上し、コーティングした食品の風味は良いが、表面の艶がなく、口溶けが悪くなる場合がある。
上記を改善するために食品のコーティングに使用される油脂組成物として、次のような技術が提案されている。
特許文献1には液状油に対して極度硬化油を配合した流動状のコーティング用油脂組成物が提案されている。流動状であるとスプレーによる噴霧時の作業性は良いものの、コーティングした食品を保存中に経時的に液状油が染みだし、ベタツキを生じ易くなる。
特許文献2〜5には、エステル交換油脂を使用し、油脂組成物のSFC(固体脂含量)や3飽和トリグリセリドの割合等を特定範囲にする技術が提案されている。
特開2002−47500号公報 特開2000−253818号公報 特開2012−152113号公報 特開2009−082002号公報 特表2009−116396号公報
しかしながら、エステル交換油脂を使用したこれらの従来技術は、主にパーム系油脂やこれと他の油脂を組み合わせたものが使用されているが、エステル交換油脂の全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が多く、エステル交換油脂と他の油脂との相溶性が悪い。そのためスプレーで噴霧してコーティングする際にエステル交換油脂のみで固化し、目詰まりを生じて作業性が悪くなり、相溶性の悪さは、経時での液状油の染みだしによるベタツキを引き起こし得る。またエステル交換油脂の組成やヨウ素価、及び添加量が適切ではないと、スプレーで噴霧してコーティングする際にエステル交換油脂のみで固化し、目詰まりを生じて作業性が更に悪くなる。
例えば、特許文献2、3ではパーム系油脂に液状油を組み合わせたエステル交換油脂や、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が高いエステル交換油脂を使用しているが、エステル交換油脂と他の油脂との相溶性が悪く、また特許文献4では油脂組成物のSFCが高く、特許文献5ではエステル交換油脂のヨウ素価が低いが、このような場合にはスプレーで噴霧する際にエステル交換油脂のみで固化し、目詰まりを生じて作業性が悪くなりやすい。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制され、食品保存時等に経時でのベタツキが生じることも抑制され、口溶けが良好で、更にスプレー等で噴霧する際に目詰まり等が生じにくく作業性にも優れたコーティング用油脂組成物を提供することを課題としている。
前記の課題を解決するために、本発明のコーティング用油脂組成物は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有し、エステル交換油脂は全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が20質量%未満であり、エステル交換油脂の含有量が組成物全量に対して5質量%以上45質量%未満であることを特徴としている。
このコーティング用油脂組成物は、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.1〜5.0であることが好ましい。
このコーティング用油脂組成物は、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドと、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を3個含む3飽和トリグリセリドとの合計割合が40〜85質量%であることが好ましい。
このコーティング用油脂組成物は、エステル交換油脂は、ヨウ素価が20超45以下であることが好ましい。
このコーティング用油脂組成物は、ノズルからの噴霧による食品のコーティングに使用されることが好ましい。
本発明によれば、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制され、食品保存時等に経時でのベタツキが生じることも抑制され、口溶けが良好で、更にスプレー等で噴霧する際には目詰まり等が生じにくく作業性にも優れている。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のコーティング用油脂組成物は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有することを特徴としている。
このエステル交換油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が20質量%未満であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは2〜18質量%、更に好ましくは10〜18質量%である。また全構成脂肪酸中の炭素数12と炭素数14の飽和脂肪酸量が好ましくは15質量%以下、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは8〜15質量%である。
本発明のコーティング用油脂組成物は、このエステル交換油脂を特定量含有し、他の油脂と組み合わせ、特にSUS/SSUや2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計割合を前記のような範囲に調整することによって、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制され、食品保存時等に経時でのベタツキが生じることも抑制され、食品を口に入れた際にコーティング用油脂組成物が速やかに溶けて良好な口溶けが得られ、更にスプレー等で噴霧する際には目詰まり等が生じにくく作業性にも優れている。
すなわち、このエステル交換油脂は、他の油脂との相溶性が良く、例えば硬い油脂だけで固まることが抑制され、経時による液状油の染みだしを抑制できる。そのため食品保存時等に液状油が固液分離して経時でのベタツキが生じることが抑制され、更にスプレー等で噴霧する際には油脂結晶析出による目詰まりが生じにくい。そして他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発し、その結果として固化が遅れることを抑制することができるため、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制される。
そしてエステル交換油脂は、ヨウ素価が好ましくは20超45以下、より好ましくは22〜45、更に好ましくは25〜40である。ヨウ素価がこの範囲内であると、前記のように他の油脂との相溶性が良く、そして他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発し、その結果として固化が遅れることを抑制することができるため、前記したような各種の特性が更に改善される。ヨウ素価が20超であると、他の油脂との相溶性が良く、例えば硬い油脂だけで固まることが抑制され、経時による液状油の染みだしを抑制できるため、食品保存時等に液状油が固液分離して経時でのベタツキが生じることが抑制され、更にスプレー等で噴霧する際には固形分による目詰まりが生じにくい。ヨウ素価が45以下であると、他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発し、その結果として固化が遅れることを抑制することができるため、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制される。
エステル交換油脂の原料であるラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上、好ましくは40〜55質量%、より好ましくは45〜50質量%である。このようなラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、ヤシ油に比べて融点が高く、高融点のエステル交換油脂を容易に得ることができる点を考慮すると、パーム核油及びその分別油や硬化油が好ましい。硬化油としては、部分硬化油、低温硬化油、又は完全水素添加した極度硬化油を用いることができるが、極度硬化油を用いるとトランス酸量を低減することができる。
ラウリン系油脂は、ヨウ素価が2以下であることが好ましい。ヨウ素価が2以下のラウリン系油脂を用いると、他の油脂に対して核となりやすく、核発生を誘発するため固化が遅れるのを抑制できる。ヨウ素価が2以下のラウリン系油脂としては、極度硬化油を用いることができる。
エステル交換油脂の原料であるパーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上である。パーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油、エステル交換油脂等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部(パームステアリン等)、軟質部(パームオレイン、パームダブルオレイン等)、中融点部(PMF等)等を用いることができる。パーム系油脂として硬化油を使用する場合、部分硬化油、低温硬化油、極度硬化油等を用いることができるが、中でも極度硬化油が好ましい。
パーム系油脂は、極度硬化油をパーム系油脂の合計量に対して5〜45質量%の範囲内で含有することが好ましく、20〜40質量%の範囲内で含有することがより好ましい。極度硬化油をこの範囲内で含有すると、経時による液状油の染みだしが抑制されベタツキが生じることを抑制できる。
そしてエステル交換油脂は、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とをエステル交換して得られたものであることが好ましい。ラウリン系油脂とパーム系油脂をこの質量範囲で使用すると、エステル交換油脂の全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量を20質量%未満とすることが容易である。
ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応には、エステル交換触媒として化学触媒や酵素触媒が用いられる。化学触媒としてはナトリウムメチラートや水酸化ナトリウム等が用いられ、酵素触媒としてはリパーゼ等が用いられる。リパーゼとしてはアスペルギルス属、アルカリゲネス属等のリパーゼが挙げられ、イオン交換樹脂、ケイ藻土、セラミック等の担体上に固定し固定化したものを用いても、粉末の形態として用いても良い。また位置選択性のあるリパーゼ、位置選択性のないリパーゼのいずれも用いることができるが、位置選択性のないリパーゼを用いることが好ましい。エステル交換触媒として化学触媒や位置選択性のない酵素触媒を用いた場合、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応が完了すると、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)とのエステル交換油脂中における質量比(SUS/SSU)が0.45〜0.55となる。
エステル交換に化学触媒を用いる場合、触媒を油脂質量の0.05〜0.15質量%添加し、減圧下で80〜120℃に加熱し、0.5〜1.0時間攪拌することでラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂を得ることができる。また酵素触媒を用いる場合、リパーゼ等の酵素触媒を油脂質量の0.01〜10質量%添加し、40〜80℃でエステル交換反応を行うことによりエステル交換反応が平衡状態となって完了し、エステル交換油脂を得ることができる。エステル交換反応はカラムによる連続反応、バッチ反応のいずれの方法で行うこともできる。エステル交換反応後、必要に応じて脱色、脱臭等の精製を行うことができる。
ラウリン系油脂における全構成脂肪酸中のラウリン酸の割合、パーム系油脂における全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量、エステル交換反応の終了は、ガスクロマトグラフ法により確認することができる。
本発明のコーティング用油脂組成物におけるエステル交換油脂の含有量は、組成物全量に対して5〜45質量%未満、好ましくは7〜43質量%、より好ましくは10〜40質量%である。この範囲内であると、コーティングした食品の固化性が良く速やかにベタツキが抑制され、食品保存時等に経時でのベタツキが生じることも抑制され、口溶けが良好で、更にスプレー等で噴霧する際には目詰まり等が生じにくく作業性にも優れている。この含有量が5質量%以上であると、固化性が良く、経時でのベタツキも抑制され、この含有量が45質量%未満であると、口溶けが良好で、スプレー等で噴霧する際に目詰まりが生じにくく作業性に優れる。
特に、エステル交換油脂の含有量をこのような範囲とし、他の油脂を組み合わせることによって、コーティング用油脂組成物のトリグリセリドを次のような範囲にすることが好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.1〜5.0であることが好ましい。この範囲内であると、固化性、経時でのベタツキ抑制、口溶け、スプレー等で噴霧する際の作業性が特に優れている。固化性が特に良好であること等を考慮すると0.1〜3.0がより好ましい。
このコーティング用油脂組成物は、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドと、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を3個含む3飽和トリグリセリドとの合計割合が油脂全体の質量に対して40〜85質量%であることが好ましい。この範囲内であると、固化性、経時でのベタツキ抑制、口溶け、スプレー等で噴霧する際の作業性が特に優れている。この合計割合が40質量%以上であると経時でのベタツキが抑制される。更に、経時でのベタツキが特に少ない点を考慮すると、この合計割合は50質量%以上が好ましく、口溶けが特に良好になる点を考慮すると、この合計割合は60質量%以下が好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、第1の油脂成分としてのエステル交換油脂に加えて次の第2の油脂成分を配合することが好ましい。
第2の油脂成分は、構成脂肪酸の総炭素数が46であるトリグリセリドと構成脂肪酸の総炭素数が48であるトリグリセリドとの合計割合が1〜25質量%の範囲内である油脂であり、パーム系油脂や、ラード、乳脂、ヤシ油、パーム核油、及びこれらの分別油や部分硬化油、菜種部分硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
この第2の油脂成分は、本発明のコーティング用油脂組成物のSUS/SSUや2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計割合を調整し、本発明の効果を高めることができる。
これらの中でも、パーム系油脂及びヤシ油から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ここでパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別油、及びこれらの硬化油、エステル交換油脂等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。パーム分別油としては、硬質部(パームステアリン等)、軟質部(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、中融点部(PMF等)等を用いることができる。
この第2の油脂成分のパーム系油脂は、相溶性等の点から、ヨウ素価45〜65のパーム系油脂を使用することが好ましく、このようなパーム系油脂としては、パーム油、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、及びこれらのエステル交換油脂等が挙げられる。
本発明のコーティング用油脂組成物における第2の油脂成分の含有量は、組成物全量に対して40〜92質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、以上の第1及び第2の油脂成分に加えて、第3の油脂成分として液状油を配合することができる。ここで液状油は5℃で流動状を呈する油脂であり、菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明のコーティング用油脂組成物における第3の油脂成分の含有量は、組成物全量に対して40質量%以下が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、以上の油脂成分の他に、その他の油脂成分、例えば、植物油脂の極度硬化油等を適宜の量で配合することができる。植物油脂の極度硬化油としては、ヤシ極度硬化油、パーム極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、保存安定性、酸化安定性、熱安定性、低温化での結晶抑制等を目的とした通常用いられる乳化剤、酸化防止剤、消泡剤、フレーバー等を配合することができる。
本発明のコーティング用油脂組成物は、前記の各成分を配合し常法により均一に混合することによって製造することができる。混合は各成分が均一に溶解するように加熱下で攪拌することによって行うことができ、その後冷却することにより本発明のコーティング用油脂組成物を調製することができる。
本発明のコーティング用油脂組成物を使用する食品は、特に制限はないが、米菓、スナック菓子、ビスケット菓子等のような、焼成又は油ちょうした食品が好適である。
米菓としては、煎餅、おかき、あられ等の米を原料とする菓子類が挙げられる。
スナック菓子としては、パフ、コーンフレーク、ポップコーン、ポテトチップス等のトウモロコシ、米粉、いも類、豆類、澱粉類等を原料とする菓子類が挙げられる。
ビスケット菓子としては、ハードビスケット、クッキー、クラッカー、プレッツェル等が挙げられる。
本発明のコーティング用油脂組成物を上記の食品に塗布する方法は特に限定されず、スプレー等による噴霧や、浸漬、刷毛などによる塗布等を適用することができるが、中でも噴霧による方法が好ましい。噴霧には従来よりこの分野で使用されているスプレー等が使用できる。
本発明のコーティング用油脂組成物を上記の食品に塗布する際には、表面の艶出しや、色調、風味、サクさ等の改良、保存安定性の向上、調味料の固着等を目的として、食品の種類等に応じて適宜の量を塗布することができる。またコーティング用油脂組成物と予め混合して、又はコーティング用油脂組成物とは別個に、調味料を食品表面に塗布してもよい。
本発明のコーティング用油脂組成物を上記食品に対し1〜40質量%塗布することが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1〜表3における各成分の配合量は質量部を示す。
(1)測定方法
各油脂のヨウ素価は基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
油脂組成物における全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量、全構成脂肪酸中の炭素数12と炭素数14の飽和脂肪酸量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)で測定した。
油脂組成物における対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「暫7-2003 2位脂肪酸組成」)により求めたSUS型トリグリセリドとSSU型トリグリセリドの質量より算出した。
油脂組成物における2飽和トリグリセリドと3飽和トリグリセリドとの合計割合は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「暫7-2003 2位脂肪酸組成」)で測定し、それぞれ脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
(2)油脂組成物の調製
(エステル交換油脂1〜6)
エステル交換油脂1〜6は次の方法で調製した。表1に示す割合でラウリン系油脂とパーム系油脂とを混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭を行ってエステル交換油脂を得た。
エステル交換に用いたラウリン系油脂、パーム系油脂を以下に示す。
ラウリン系油脂
パーム核極度硬化油:ラウリン酸含有量45.7質量%(ヨウ素価2)
パーム核油:ラウリン酸含有量45.7質量%(ヨウ素価18)
パーム系油脂
パーム油:C16以上の脂肪酸含有量97.9質量%(ヨウ素価53)
パーム極度硬化油:C16以上の脂肪酸含有量97.9質量%(ヨウ素価2)
パーム分別軟質油:C16以上の脂肪酸含有量97.7質量%(ヨウ素価56)
得られたエステル交換油脂1〜6の分析結果を表1に示す。
Figure 0006466062
(油脂組成物)
表2と表3に示す配合比にて各油脂を配合し、70℃で溶解後、均一に撹拌しコーティング用油脂組成物を得た。
Figure 0006466062
Figure 0006466062
(3)評価
実施例及び比較例の各試料について次の評価を行った。
(クラッカーの作製)
以下の配合でクラッカーを作製した。あらかじめ水に炭酸アンモニウム、重曹を別々に溶かして、その後全材料を合わせ低速1分、中高速8分ミキシングし、40℃のホイロで約2時間おき、生地を得た。その後生地を9層折りし、2mm厚で型抜きし、220℃で焼成し、クラッカーを得た。
上記焼成したクラッカーにコーティング用油脂組成物をスプレーで噴霧することによって、上記焼成したクラッカーの質量に対してコーティング用油脂組成物が12〜14質量%となるようにコーティング用油脂組成物を塗布した。
〈クラッカーの配合〉
薄力粉 100質量部
グラニュー糖 8質量部
ショートニング※1 20質量部
脱脂粉乳 2質量部
食塩 1質量部
炭酸アンモニウム 3質量部
重曹 1質量部
パパイン 0.025質量部
温水 30質量部
※1 ショートニング:ミヨシ油脂製「ミヨシショートニングZ」
[作業性]
コーティング用油脂組成物をスプレーで噴霧する際の作業性(ノズルの目詰まり)を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:目詰まりなく噴霧できる。
○:ほとんど目詰まりなく噴霧できる。
△:時々目詰まりを生じる。
×:目詰まりが多い。
[固化性]
クラッカーにコーティング用油脂組成物を噴霧した後、20℃で10分保管し、その後の表面のベタツキ状態により固化性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:全くベタツキがない
○:ほとんどベタツキがない。
△:若干ベタツキがある。
×:ベタツキがある。
[経時によるベタツキ]
クラッカーにコーティング用油脂組成物を噴霧した後、20℃で1週間保管し、その後のベタツキを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:全くベタツキがない。
○:ほとんどベタツキがない。
△:若干ベタツキがある。
×:ベタツキがある。
[口溶け]
コーティング用油脂組成物を塗布して得たクラッカーの口溶けをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価した。
○:20名中10名〜15名が良好と評価した。
△:20名中6名〜9名が良好と評価した。
×:20名中5名以下が良好と評価した。
以上の評価の結果を表4と表5に示す。また油脂組成物の分析値も表4と表5に併せて示した。
Figure 0006466062
Figure 0006466062

Claims (8)

  1. 第1の油脂成分としてラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有し、
    前記第1の油脂成分のエステル交換油脂は全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が20質量%未満であり、かつヨウ素価が20超45以下であり、
    前記第1の油脂成分のエステル交換油脂の含有量が組成物全量に対して5質量%以上45質量%未満であり、
    構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.1〜5.0であるコーティング用油脂組成物。
  2. 第1の油脂成分としてラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂、第2の油脂成分として構成脂肪酸の総炭素数が46であるトリグリセリドと構成脂肪酸の総炭素数が48であるトリグリセリドとの合計割合が1〜25質量%の範囲内である油脂(但し、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を除く。)を含有し、
    前記第1の油脂成分のエステル交換油脂は全構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸量が20質量%未満であり、かつヨウ素価が20超45以下であり、
    前記第1の油脂成分のエステル交換油脂の含有量が組成物全量に対して5質量%以上45質量%未満であるコーティング用油脂組成物。
  3. 構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.1〜5.0である請求項2に記載のコーティング用油脂組成物。
  4. 構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドと、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を3個含む3飽和トリグリセリドとの合計割合が40〜85質量%である請求項1から3のいずれかに記載のコーティング用油脂組成物。
  5. 前記第2の油脂成分が、パーム系油脂、ラード、乳脂、ヤシ油、パーム核油、及びこれらの分別油又は部分硬化油、並びに菜種部分硬化油から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記第2の油脂成分の含有量が、組成物全量に対して40〜92質量%であり、
    前記第1の油脂成分及び第2の油脂成分以外に油脂成分を含有しないか、含有する場合には、液状油である菜種油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、及び植物油脂の極度硬化油であるヤシ極度硬化油、パーム極度硬化油、パーム核極度硬化油、菜種極度硬化油から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記第1の油脂成分以外にラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有しない請求項2又は3に記載のコーティング用油脂組成物。
  6. 前記第2の油脂成分としてパーム系油脂を含有し、前記パーム系油脂のヨウ素価が45〜65である請求項5に記載のコーティング用油脂組成物。
  7. 前記第1の油脂成分のエステル交換油脂は、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とをエステル交換して得られたものである請求項1から6のいずれかに記載のコーティング用油脂組成物。
  8. ノズルからの噴霧による食品のコーティングに使用される請求項1から7のいずれかに記載のコーティング用油脂組成物。
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