次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置全体を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置の全断面図である。図3は、本発明の第1実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1は、水洗便器本体2と、その後部に載置された洗浄水タンク装置4から構成されている。本実施形態の水洗大便器装置1は、使用後に、洗浄水タンク装置4に設けられたレバーハンドル8を操作することにより、水洗便器本体2のボウル部2aの洗浄が行われるように構成されている。本実施形態による洗浄水タンク装置4は、レバーハンドル8の操作に基づいて、内部に貯留されている洗浄水、及び給水源である水道Cから供給された洗浄水を水洗便器本体2に供給し、これらの洗浄水によりボウル部2aを洗浄するように構成されている。
また、変形例として、壁面に取り付けたリモコン装置(図示せず)を操作することにより、ボウル部2aの洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。或いは、便座に設けられた人感センサ(図示せず)が使用者の離座を検知した後、所定時間経過することにより、ボウル部2aの洗浄が行われるように本発明を構成することもできる。この場合、人感センサ(図示せず)は便座に設けたり、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できる位置に設けたりすることができ、例えば、水洗便器本体2や洗浄水タンク装置4に設けることもできる。また、人感センサ(図示せず)は、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できるものであればよく、例えば、赤外線センサやマイクロ波センサを人感センサとして使用することができる。
次に、図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体である貯水タンク10と、この貯水タンク10に設けられた排水口10aを開閉するための排水弁12と、この排水弁12を駆動する水圧駆動機構である排水弁水圧駆動部14と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、水道Cから供給された洗浄水を水洗便器本体2に直接供給する第1開閉弁である吐水制御弁19を有する。ここで、貯水タンク10内に貯留され、排水弁12を開弁させることにより流出する洗浄水は、便器洗浄時において、水洗便器本体2のボウル部2aの溜水面Wよりも下方に設けられた下部吐水口であるゼット吐水口2bから吐出されるように構成されている。また、水道Cから供給され、吐水制御弁19を介して供給された洗浄水は、便器洗浄時において、ボウル部2aの溜水面Wよりも上方の、ボウル部2aのリム部2cに設けられた上部吐水口であるリム吐水口2dから吐出されるように構成されている。さらに、ボウル部2aの下部には、排水トラップ管路2eが連通されており、この排水トラップ管路2eの入口は、ゼット吐水口2bと対向するように向けられている。
次に、図3に示すように、洗浄水タンク装置4は、貯水タンク10内への洗浄水の給水、停止を切り替える第2開閉弁である給水制御弁17と、排水弁水圧駆動部14への給水を制御する排水弁制御弁18と、リム吐水口2dからの洗浄水の吐水、停止を制御する吐水制御弁19と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、制御部であるコントローラ28を有し、このコントローラ28は、給水制御弁17、排水弁制御弁18、及び吐水制御弁19を制御する。
貯水タンク10は、水洗便器本体2のゼット吐水口2bに供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口10aが形成されている。また、貯水タンク10内において、排水口10aの下流側にはオーバーフロー管10bが接続されている。このオーバーフロー管10bは、排水口10aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク10内に貯留されている洗浄水の止水水位L1よりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管10bの上端から流入した洗浄水は、排水口10aをバイパスして、水洗便器本体2のゼット吐水口2bから直接流出する。
排水弁12は、排水口10aを開閉するように配置された弁体であり、排水弁12が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク10内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2aの下部に設けられたゼット吐水口2bから吐出される。
一方、水道Cから給水管32に供給された洗浄水は、止水栓32a、及び定流量弁32bを介して、分岐部である給水管分岐部33に流入する。給水管分岐部33は、水道Cから供給された洗浄水を、第1分岐流路である第1分岐管33a、第2分岐流路である第2分岐管33b、及び第3分岐管33cに分岐させる。さらに、第1分岐管33aには吐水制御弁19が設けられ、第2分岐管33bには給水制御弁17が設けられ、第3分岐管33cには排水弁制御弁18が設けられている。なお、止水栓32aは貯水タンク10の外側に配置されており、その下流側の、貯水タンク10内には定流量弁32bが接続され、定流量弁32bの下流側に給水管分岐部33が設けられている。
止水栓32aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置4への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁32bは、水道Cから供給された水を、所定流量で給水管分岐部33に流入させるために設けられており、水洗大便器装置1の設置環境に関わらず一定流量の水が洗浄水タンク装置4に供給されるように構成されている。
一方、第1分岐管33aに設けられた吐水制御弁19は、第1分岐管33aから供給された水を、リム給水管25に流出させるように構成されている。リム給水管25は、水洗便器本体2のリム吐水口2dに連通しており(図3には図示省略)、リム給水管25に流入した洗浄水は、ボウル部2aを洗浄するためのリム洗浄水として、リム吐水口2dから吐出される。また、リム給水管25の途中には、バキュームブレーカ30bが設けられている。これにより、吐水制御弁19側が負圧になった際、水洗便器本体2の側から吐水制御弁19に水が逆流するのを防止することができる。
吐水制御弁19は、吐水弁本体部19aと、この吐水弁本体部19aの中に配置された主弁体19bと、電磁弁パイロット弁19cと、を備えている。また、吐水制御弁19には、吐水制御用電磁弁20bが接続されており、この吐水制御用電磁弁20bにより電磁弁パイロット弁19cが移動されるように構成されている。即ち、電磁弁パイロット弁19cは、吐水弁本体部19aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、吐水弁本体部19a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、吐水制御弁19の主弁体19bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体19bが閉弁される。これにより、吐水制御用電磁弁20bの作動に基づいて、吐水制御弁19の主弁体19bが開閉され、リム吐水口2dへの給水、停止が制御される。
また、第2分岐管33bに設けられた給水制御弁17は、第2分岐管33bから供給された水を、タンク給水管27に流出させるように構成されている。タンク給水管27は貯水タンク10内に洗浄水を供給するように構成されており、タンク給水管27に流入した洗浄水は、貯水タンク10の中に排出されて貯留される。また、タンク給水管27の途中には、バキュームブレーカ30cが設けられている。これにより、給水制御弁17側が負圧になった際、貯水タンク10の側から給水制御弁17に水が逆流するのを防止することができる。
給水制御弁17は、給水弁本体部17aと、この給水弁本体部17aの中に配置された主弁体17bと、電磁弁パイロット弁17cと、を備えている。また、給水制御弁17には、給水制御用電磁弁20cが接続されており、この給水制御用電磁弁20cにより電磁弁パイロット弁17cが移動されるように構成されている。即ち、電磁弁パイロット弁17cは、給水弁本体部17aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、給水弁本体部17a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、給水制御弁17の主弁体17bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体17bが閉弁される。これにより、給水制御用電磁弁20cの作動に基づいて、給水制御弁17の主弁体17bが開閉され、貯水タンク10内への給水、停止が制御される。
次に、第3分岐管33cに設けられた排水弁制御弁18は、第3分岐管33cから供給された水を、排水弁水圧駆動部14に流出させるように構成されている。また、排水弁制御弁18は、制御弁本体部18aと、この制御弁本体部18aの中に配置された主弁体18bと、電磁弁パイロット弁18cと、を備えている。さらに、排水弁制御弁18には、排水制御用電磁弁20aが接続されている。
排水制御用電磁弁20aは、コントローラ28から送られた信号に基づいて、排水弁制御弁18に内蔵された電磁弁パイロット弁18cを移動させ、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、制御弁本体部18a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、排水弁制御弁18の主弁体18bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体18bが閉弁される。これにより、排水制御用電磁弁20aの作動に基づいて、排水弁制御弁18の主弁体18bが開閉され、排水弁水圧駆動部14への給水、停止が制御される。なお、本実施形態においては排水制御用電磁弁20aとして、一旦通電を行うことにより、電磁弁パイロット弁18cが移動され、通電を停止してもその状態が維持される双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されている。このタイプの電磁弁では、反対方向にもう一度通電を行うと、電磁弁パイロット弁18cを元の位置に復帰させることができる。
次に、排水弁水圧駆動部14は、水道Cから供給された洗浄水の給水圧を利用して、排水弁12を駆動するように構成されている。即ち、排水弁制御弁18は、制御部であるコントローラ28からの指示信号に基づいて、供給された洗浄水の、排水弁水圧駆動部14への供給、停止を制御する。本実施形態においては、排水弁制御弁18から流出した洗浄水は、全量が流入管23を通って排水弁水圧駆動部14に供給される。
また、排水弁制御弁18と排水弁水圧駆動部14を接続する流入管23には、バキュームブレーカ30aが設けられている。このバキュームブレーカ30aにより、排水弁制御弁18側が負圧になった場合には、流入管23に外気が吸引され、排水弁水圧駆動部14側からの水の逆流が防止される。
排水弁水圧駆動部14は、排水弁制御弁18から供給された水が流入するシリンダ14aと、このシリンダ14a内に摺動可能に配置されたピストン14bと、シリンダ14aの下端から突出して排水弁12を駆動するロッド15と、を有する。さらに、シリンダ14aの内部にはスプリング14cが配置されており、ピストン14bを下方に向けて付勢していると共に、ピストン14bにはパッキン14eが取り付けられ、シリンダ14aの内壁面とピストン14bの間の水密性が確保されている。
シリンダ14aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン14bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ14aの下端部には、流入管23が接続されており、排水弁制御弁18から流出した水がシリンダ14a内に流入するようになっている。このため、シリンダ14a内のピストン14bは、シリンダ14aに流入した水により、スプリング14cの付勢力に抗して押し上げられる。
一方、シリンダ14aの上端部には流出孔が設けられ、流出管24は、この流出孔を介してシリンダ14aの内部と連通している。従って、シリンダ14a下部に接続された流入管23からシリンダ14a内に水が流入すると、ピストン14bは、シリンダ14aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン14bが、流出孔よりも上方まで押し上げられると、シリンダ14aに流入した水は流出孔から流出管24を通って流出する。即ち、流入管23と流出管24は、ピストン14bが上方に移動されると、シリンダ14aの内部を介して連通される。
また、流出管24は途中で2つの管に分岐されており、下方に向けて分岐された第1下降管24bは、オーバーフロー管10bの上方で、下方に向けて開口している。また、もう一方の第2下降管24cは、概ね水平に延びた後、下方に向けて湾曲され、貯水タンク10内に水を流出させる。従って、シリンダ14aから流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管10bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク10内に貯留される。
ロッド15は、ピストン14bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ14aの底面に形成された貫通孔14fを通って、シリンダ14aの中から下方に突出するように延びている。また、ロッド15の下端には排水弁12が接続されており、ロッド15は、ピストン14bと排水弁12を連結している。このため、シリンダ14aに水が流入してピストン14bが押し上げられると、ピストン14bに接続されたロッド15が排水弁12を上方に吊り上げ、排水弁12が開弁される。
また、シリンダ14aの下方から突出するロッド15と、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁との間には、隙間14dが設けられ、シリンダ14aに流入した水の一部は、この隙間14dから流出する。隙間14dから流出した水は、貯水タンク10内に流入する。なお、この隙間14dは比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間14dから水が流出する状態であっても、流入管23からシリンダ14aに流入する水によりシリンダ14a内の圧力が上昇し、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bが押し上げられる。
コントローラ28は、回路基板を内蔵し、レバーハンドル8の操作に基づいて、排水制御用電磁弁20a、吐水制御用電磁弁20b、給水制御用電磁弁20c等を制御するように構成されている。回路基板上には、マイクロプロセッサ、メモリー、インターフェイス回路等が設けられ、これらは便器洗浄を制御するためのソフトウェアによって作動する。
次に、図4を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明する。
図4は、本発明の第1実施形態の水洗大便器装置1による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートであり、上段にリム吐水口からの吐水流量、中段にゼット吐水口からの吐水流量、下段に貯水タンクへの給水流量を夫々示している。
まず、図4の時刻t0における便器洗浄の待機状態では、貯水タンク10内の水位が止水水位L1にあり、排水制御用電磁弁20a、吐水制御用電磁弁20b、及び給水制御用電磁弁20cへの通電は行われていない。この状態では、電磁弁パイロット弁19cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、電磁弁パイロット弁18cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は何れも閉弁されている。これにより、排水弁制御弁18の主弁体18b、及び吐水制御弁19の主弁体19bは閉弁状態となる。また、電磁弁パイロット弁17cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)も閉弁され、給水制御弁17の主弁体17bも閉弁状態となる。
次に、図4の時刻t1において使用者がレバーハンドル8(図1)を操作すると、便器洗浄を指示する信号がコントローラ28(図3)に送られる。便器洗浄の指示信号を受信すると、コントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに通電を行い、吐水制御弁19の電磁弁パイロット弁19cを開弁させる。これにより、吐水制御弁19の圧力室内の圧力が低下し、主弁体19bが弁座から離座して開弁される。なお、本実施形態においては、吐水制御用電磁弁20bとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁19cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
吐水制御弁19が開弁されると、給水管32から給水管分岐部33、第1分岐管33aを介して吐水制御弁19に供給された水道水は、吐水制御弁19を通ってリム給水管25内に流入する。リム給水管25に流入した洗浄水は、水洗便器本体2のリム吐水口2d(図2)から吐出される。リム吐水口2dから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの中で旋回しながら流下し、ボウル部2aの汚物受け面を洗浄する。このリム吐水口2dからの吐水は、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前の「前リム」吐水として行われる。
吐水制御用電磁弁20bに通電を行った後、所定時間後の時刻t2においてコントローラ28は、給水制御用電磁弁20cに通電を行い、電磁弁パイロット弁17cをパイロット弁口(図示せず)から離座させる。これにより、給水制御弁17の圧力室内の圧力が低下し、主弁体17bが弁座から離座して、開弁される。即ち、コントローラ28は、吐水制御弁19を開弁させた後、吐水制御弁19の開弁状態を維持したまま、給水制御弁17を開弁させる。なお、本実施形態においては、給水制御用電磁弁20cとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁17cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
給水制御弁17が開弁されると、給水管32から給水管分岐部33、第2分岐管33bを介して給水制御弁17に供給された水道水は、給水制御弁17を通って貯水タンク10内に流入する。即ち、コントローラ28は、吐水制御弁19を開弁させた後、吐水制御弁19の開弁状態を維持したまま、給水制御弁17を開弁させる。これにより、リム吐水口2dからの吐水、及び貯水タンク10内への給水が一時に行われる。ここで、給水管32を流れる水道水の流量は定流量弁32bによってほぼ一定に維持されている。このため、吐水制御弁19が開弁された状態で、さらに給水制御弁17を開弁させると、吐水制御弁19に流入する水の流量が低下し、リム吐水口2dから吐出される洗浄水の流量は、給水制御弁17が開弁されたとき減少する。
給水制御用電磁弁20cに通電を行った後、所定時間後の時刻t3においてコントローラ28は、排水制御用電磁弁20aに通電を行い、電磁弁パイロット弁18cをパイロット弁口(図示せず)から離座させる。これにより、排水弁制御弁18の圧力室内の圧力が低下し、主弁体18bが弁座から離座して、開弁される。排水弁制御弁18が開弁されると、給水管32から給水管分岐部33、第3分岐管33cを介して排水弁制御弁18に供給された水道水は、排水弁制御弁18を通って流入管23内に流入する。
さらに、流入管23に流入した洗浄水は、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a内に流入し、ピストン14bを押し上げる。これにより、ピストン14bに連結されたロッド15及び排水弁12も引き上げられ、排水口10aが開弁される。これにより、貯水タンク10内に貯留されていた洗浄水は、排水口10aを通って流出し、「ゼット吐水」として、ボウル部2aの下部に設けられたゼット吐水口2b(図2)から吐出される。ゼット吐水口2bから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの下部から延びる排水トラップ管路2eを満水にし、サイフォン現象を誘発する。サイフォン現象により、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。このように、ゼット吐水口2bから洗浄水が吐出されている間も、「中リム」吐水として、リム吐水口2dからの吐水も継続される。このため、排水口10aが開弁されることにより、リム吐水口2d及びゼット吐水口2bの両方から、洗浄水が一時に吐出されることになる。
このように、本実施形態の水洗大便器装置1においては、ゼット吐水口2bから排出された洗浄水によって、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続される。このため、サイフォン現象によって溜水が引き込まれることによりボウル部2a内の溜水が過度に減少して、排水トラップ管路2eの封水が途切れるのを抑制することができる。排水トラップ管路2e内の封水が途切れると、排水トラップ管路2eから臭気が逆流する虞があるが、本実施形態においては、これを抑制することができる。また、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続されるため、封水が途切れず、サイフォン現象を継続させることができ、途中でサイフォン現象が終了してしまうことを抑制することができる。なお、リム吐水口2dから吐出される洗浄水の流量は、時刻t2において給水制御弁17が開弁されることにより低下しているが、サイフォン現象の終了を抑制するには十分な流量が確保されている。
一方、流入管23から排水弁水圧駆動部14のシリンダ14aに洗浄水が流入し、ピストン14bがシリンダ14aの上部まで押し上げられると、シリンダ14a内の洗浄水は、流出管24を通って流出するようになる。また、流入管23からシリンダ14aに流入した水の一部は、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁とロッド15の間の隙間14dから流出し、この水は、貯水タンク10に流入する。一方、流出管24を通って流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管10bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク10内に流入する。即ち、排水弁水圧駆動部14から流出した洗浄水の一部は貯水タンク10内に流入し、残りのオーバーフロー管10bの中に流入した洗浄水は、排水弁12をバイパスしてゼット吐水口2bから水洗便器本体内に流入する。
さらに、時刻t3において排水弁制御弁18が開弁された後、所定時間経過した時刻t4において、コントローラ28は排水制御用電磁弁20aに再び制御信号を送り、電磁弁パイロット弁18cを閉弁させる。これにより、排水弁制御弁18が閉弁され、排水弁水圧駆動部14への洗浄水の供給が停止される。これにより、排水弁水圧駆動部14のピストン14bには、これを押し上げる力が作用しなくなり、ロッド15及び排水弁12が降下し始める。次いで貯水タンク10の排水口10aが排水弁12により閉弁され、排水口10aから流出した洗浄水のゼット吐水口2bからの吐水が停止される。
さらに、排水口10aが閉弁された後も、給水制御弁17及び吐水制御弁19は開弁された状態にあるため、給水管32から供給された水は、リム吐水口2dからボウル部2aに吐出されると共に、貯水タンク10内に流入する。従って、排水口10aが閉弁された後も、リム吐水口2dから吐出された洗浄水はボウル部2a内に流入し、流入した洗浄水はリフィール水として利用される。また、給水制御弁17を通ってタンク給水管27から流出した洗浄水は、貯水タンク10内に流入するので、貯水タンク10内の水位が上昇する。
さらに、時刻t5においてコントローラ28は、吐水制御用電磁弁20bに制御信号を送り、吐水制御弁19の電磁弁パイロット弁19cを閉弁させる。これにより、吐水制御弁19が閉弁され、水洗便器本体2のリム吐水口2dからの吐水が停止される。このように、ゼット吐水の終了後、「後リム」吐水としてリム吐水口2dからの吐水が行われ、このリム吐水口2dから吐出された洗浄水はボウル部2a内に流入し、リフィール水として利用される。吐水制御弁19が閉弁された後も、給水制御弁17は開弁状態に維持され、洗浄水はタンク給水管27を通って、貯水タンク10内に流入する。
次いで、時刻t6において、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位L1まで上昇したタイミングでコントローラ28は、給水制御用電磁弁20cに制御信号を送り、給水制御弁17の電磁弁パイロット弁17cを閉弁させる。これにより、給水制御弁17が閉弁され、貯水タンク10内への給水が停止される。以上により、水洗大便器装置1による1回の便器洗浄が終了する。
本発明の第1実施形態の水洗大便器装置1によれば、上部吐水口であるリム吐水口2dからの吐水、及び貯水タンク10内への給水が一時に行われる(図4の時刻t2)ので、リム吐水口2dから吐水を行い、水洗便器本体2を洗浄している間に、貯水タンク10内への給水も行われ、1回の便器洗浄の後、次の洗浄が実行可能になるまでの時間を短縮することができる。
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、リム吐水口2dから吐出される洗浄水が、第2開閉弁である給水制御弁17が開弁され、貯水タンク10内への給水が開始されたとき減少されるので、サイホン作用の延長に、必要にして十分な量の洗浄水をリム吐水口2dに供給することができ、無駄水の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、リム吐水口2dからの洗浄水の吐出が吐水制御弁19により、貯水タンク10への給水が給水制御弁17により独立して制御できるので、リム吐水口2dからの吐水を継続しながら、任意のタイミングで貯水タンク10へ給水を行うことができる。これにより、便器洗浄を阻害することなく、貯水タンク10へ給水を行うことができる。
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排水弁水圧駆動部14を通った洗浄水が貯水タンク10内に流入するので、排水弁12の駆動に使用した洗浄水も無駄なく次回の便器洗浄に利用することができ、洗浄水の利用効率を向上させることができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排水弁水圧駆動部14から流出した洗浄水の一部が貯水タンク10内に入り、残りはゼット吐水口2bから水洗便器本体2内に流入するので、洗浄水を、次回の洗浄と、リフィールに適切に振り分けることができ、供給された洗浄水を効率良く利用することができる。
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、それに備えられている洗浄水タンク装置の構成が上述した第1実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同一の構成、作用、効果については説明を省略する。
図5は、本発明の第2実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置104は、貯水タンク110と、この貯水タンク110の排水口110aを開閉する排水弁112と、この排水弁112を駆動する水圧駆動機構である排水弁水圧駆動部114と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置104は、リム吐水口2d(図2)からの洗浄水の吐水、停止を制御する第1開閉弁である吐水制御弁119と、洗浄水タンク装置104内への洗浄水の給水、停止を切り替える第2開閉弁である給水制御弁118と、これらの制御弁を制御する制御部であるコントローラ128と、を有する。
貯水タンク110は、水洗便器本体2のゼット吐水口2b(図2)に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口110aが形成されている。また、貯水タンク110内において、排水口110aの下流側にはオーバーフロー管110bが接続されている。このオーバーフロー管110bは、排水口110aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク110内に貯留されている洗浄水の止水水位L1よりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管110bの上端から流入した洗浄水は、排水口110aをバイパスして、水洗便器本体2のゼット吐水口2bから直接流出する。
排水弁112は、排水口110aを開閉するように配置された弁体であり、排水弁112が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク110内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2a(図2)の下部に設けられたゼット吐水口2bから吐出される。
一方、水道Cから給水管132に供給された洗浄水は、止水栓132a、及び定流量弁132bを介して、分岐部である給水管分岐部133に流入する。給水管分岐部133は、水道Cから供給された洗浄水を、第1分岐流路である第1分岐管133a、及び第2分岐流路である第2分岐管133bに分岐させる。さらに、第1分岐管133aには吐水制御弁119が設けられ、第2分岐管133bには給水制御弁118が設けられている。なお、止水栓132aは貯水タンク110の外側に配置されており、その下流側の、貯水タンク110内には定流量弁132bが接続され、定流量弁132bの下流側に給水管分岐部133が設けられている。
止水栓132aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置104への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁132bは、水道Cから供給された水を、所定流量で給水管分岐部133に流入させるために設けられており、水洗便器装置の設置環境に関わらず一定流量の水が洗浄水タンク装置104に供給されるように構成されている。
一方、第1分岐管133aに設けられた吐水制御弁119は、第1分岐管133aから供給された水を、リム給水管125に流出させるように構成されている。リム給水管125は、水洗便器本体2のリム吐水口2d(図2)に連通しており(図5には図示省略)、リム給水管125に流入した洗浄水は、ボウル部を洗浄するためのリム洗浄水として、リム吐水口2dから吐出される。また、リム給水管125の途中には、バキュームブレーカ130bが設けられている。これにより、吐水制御弁119側が負圧になった際、水洗便器本体の側から吐水制御弁119に水が逆流するのを防止することができる。
吐水制御弁119は、吐水弁本体部119aと、この吐水弁本体部119aの中に配置された主弁体119bと、電磁弁パイロット弁119cと、を備えている。また、吐水制御弁119には、吐水制御用電磁弁120bが接続されており、この吐水制御用電磁弁120bにより電磁弁パイロット弁119cが移動されるように構成されている。即ち、電磁弁パイロット弁119cは、吐水弁本体部119aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、吐水弁本体部119a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、吐水制御弁119の主弁体119bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体119bが閉弁される。これにより、吐水制御用電磁弁120bの作動に基づいて、吐水制御弁119の主弁体119bが開閉され、リム吐水口2d(図2)への給水、停止が制御される。
次に、第2分岐管133bに設けられた給水制御弁118は、第2分岐管133bから供給された水を、排水弁水圧駆動部114に流出させるように構成されている。また、給水制御弁118は、制御弁本体部118aと、この制御弁本体部118aの中に配置された主弁体118bと、電磁弁パイロット弁118cと、フロートパイロット弁118dと、を備えている。さらに、給水制御弁118には、給水制御用電磁弁120aと、制御弁フロート134が接続されている。
給水制御用電磁弁120aは、コントローラ128から送られた信号に基づいて、給水制御弁118に内蔵された電磁弁パイロット弁118cを移動させ、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、制御弁本体部118a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、給水制御弁118の主弁体118bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体118bが閉弁される。これにより、給水制御用電磁弁120aの作動に基づいて、給水制御弁118の主弁体118bが開閉され、排水弁水圧駆動部114への給水、停止が制御される。なお、本実施形態においては給水制御用電磁弁120aとして、一旦通電を行うことにより、電磁弁パイロット弁118cが移動され、通電を停止してもその状態が維持される双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されている。このタイプの電磁弁では、反対方向にもう一度通電を行うと、電磁弁パイロット弁118cを元の位置に復帰させることができる。
さらに、給水制御弁118には、制御弁フロート134も接続されており、この制御弁フロート134の動きに応じてフロートパイロット弁118dが移動されるように構成されている。即ち、制御弁フロート134は貯水タンク110内に配置されており、貯水タンク110の水位上昇と共に上昇して、アーム部134aを介してフロートパイロット弁118dを移動させる。貯水タンク110内の水位が止水水位L1まで上昇すると、フロートパイロット弁118dが制御弁本体部118aのパイロット弁口(図示せず)を閉弁させる。
このように、フロートパイロット弁118dは、パイロット弁口(図示せず)を開閉することにより、制御弁本体部118a内に設けられた圧力室内の圧力を制御するように構成されている。この結果、フロートパイロット弁118dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、及び電磁弁パイロット弁118cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)の両方が閉弁されると、制御弁本体部118a内の圧力室内の圧力が上昇し、主弁体118bが閉弁される。
なお、洗浄水タンク装置104の待機状態においては、貯水タンク110は止水水位L1にされており、この状態では、フロートパイロット弁118dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は閉弁されている。従って、待機状態においては、給水制御用電磁弁120aの作動に基づいて、電磁弁パイロット弁118cを移動させることにより、パイロット弁口(図示せず)を開弁し、給水制御弁118の主弁体118bを開弁させることができる。
具体的には、レバーハンドル108からの信号をコントローラ128が受信し、コントローラ128は給水制御用電磁弁120aに電気信号を送って、これを作動させ、給水制御弁118を開弁させる。給水制御弁118は、制御部であるコントローラ128からの指示信号に基づいて、供給された洗浄水の、排水弁水圧駆動部114への供給、停止を制御する。本実施形態においては、給水制御弁118から流出した洗浄水は、全量が流入管123を通って排水弁水圧駆動部114に供給される。
また、給水制御弁118と排水弁水圧駆動部114を接続する流入管123には、バキュームブレーカ130aが設けられている。このバキュームブレーカ130aにより、給水制御弁118側が負圧になった場合には、流入管123に外気が吸引され、排水弁水圧駆動部114側からの水の逆流が防止される。
次に、排水弁水圧駆動部114は、水道Cから供給された洗浄水の給水圧を利用して、排水弁112を駆動するように構成されている。具体的には、排水弁水圧駆動部114は、給水制御弁118から供給された水が流入するシリンダ114aと、このシリンダ114a内に摺動可能に配置されたピストン114bと、シリンダ114aの下端から突出して排水弁112を駆動するロッド115と、を有する。さらに、シリンダ114aの内部にはスプリング114cが配置されており、ピストン114bを下方に向けて付勢していると共に、ピストン114bにはパッキン114eが取り付けられ、シリンダ114aの内壁面とピストン114bの間の水密性が確保されている。
シリンダ114aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン114bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ114aの下端部には、流入管123が接続されており、給水制御弁118から流出した水がシリンダ114a内に流入するようになっている。このため、シリンダ114a内のピストン114bは、シリンダ114aに流入した水により、スプリング114cの付勢力に抗して押し上げられる。
一方、シリンダ114aの上端部には流出孔が設けられ、流出管124は、この流出孔を介してシリンダ114aの内部と連通している。従って、シリンダ114a下部に接続された流入管123からシリンダ114a内に水が流入すると、ピストン114bは、シリンダ114aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン114bが、流出孔よりも上方まで押し上げられると、シリンダ114aに流入した水は流出孔から流出管124を通って流出する。即ち、流入管123と流出管124は、ピストン114bが上方に移動されると、シリンダ114aの内部を介して連通される。
また、流出管124は途中で2つの管に分岐されており、下方に向けて分岐された第1下降管124bは、オーバーフロー管110bの上方で、下方に向けて開口している。また、もう一方の第2下降管124cは、概ね水平に延びた後、下方に向けて湾曲され、貯水タンク110内に水を流出させる。従って、シリンダ114aから流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管110bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク110内に貯留される。
ロッド115は、ピストン114bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ114aの底面に形成された貫通孔114fを通って、シリンダ114aの中から下方に突出するように延びている。また、ロッド115の下端には排水弁112が接続されており、ロッド115は、ピストン114bと排水弁112を連結している。このため、シリンダ114aに水が流入してピストン114bが押し上げられると、ピストン114bに接続されたロッド115が排水弁112を上方に吊り上げ、排水弁112が開弁される。
また、シリンダ114aの下方から突出するロッド115と、シリンダ114aの貫通孔114fの内壁との間には、隙間114dが設けられ、シリンダ114aに流入した水の一部は、この隙間114dから流出する。隙間114dから流出した水は、貯水タンク110内に流入する。なお、この隙間114dは比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間114dから水が流出する状態であっても、流入管123からシリンダ114aに流入する水によりシリンダ114a内の圧力が上昇し、スプリング114cの付勢力に抗してピストン114bが押し上げられる。
さらに、ロッド115の途中には、クラッチ機構122が設けられている。クラッチ機構122は、ロッド115と共に排水弁112が所定距離吊り上げられると、ロッド115を上部ロッド115aと下部ロッド115bに切り離すように構成されている。クラッチ機構122が切り離された状態では、下部ロッド115bは、ピストン114b及び上部ロッド115aの上部の動きに連動しなくなり、下部ロッド115bは排水弁112と共に、浮力に抵抗しながら重力により降下する。
また、排水弁112の近傍には、排水弁フロート機構126が設けられている。この排水弁フロート機構126は、ロッド115が所定距離吊り上げられ、クラッチ機構122により下部ロッド115bが切り離された後、下部ロッド115bの及び排水弁112が降下して、排水口110aを閉弁させるのを遅延させるように構成されている。具体的には、排水弁フロート機構126は、フロート部126aと、このフロート部126aと連動した係合部126bと、を有する。
係合部126bは、クラッチ機構122により切り離されて降下してきた下部ロッド115bと係合し、下部ロッド115b及び排水弁112が降下して、排水口110aに着座するのを阻止するように構成されている。次いで、貯水タンク110内の水位低下と共にフロート部126aが下降し、貯水タンク110内の水位が所定水位まで低下すると、フロート部126aが係合部126bを回動させて、係合部126bと下部ロッド115bの係合が解除される。係合が解除されることにより、下部ロッド115b及び排水弁112は降下して、排水口110aに着座する。これにより、排水弁112の閉弁が遅延され、適正量の洗浄水が、排水口110aから排出されるようになっている。
コントローラ128は、回路基板を内蔵し、レバーハンドル108の操作に基づいて、給水制御用電磁弁120a、吐水制御用電磁弁120b等を制御するように構成されている。回路基板上には、マイクロプロセッサ、メモリー、インターフェイス回路等が設けられ、これらは便器洗浄を制御するためのソフトウェアによって作動する。
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態による水洗便器装置の作用を説明する。
図6は、本発明の第2実施形態の水洗便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートであり、上段にリム吐水口からの吐水流量、中段にゼット吐水口からの吐水流量、下段に貯水タンクへの給水流量を夫々示している。
まず、図6の時刻t10における便器洗浄の待機状態では、貯水タンク110内の水位が止水水位L1にあり、給水制御用電磁弁120a、吐水制御用電磁弁120bへの通電は行われていない。この状態では、電磁弁パイロット弁119cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、電磁弁パイロット弁118cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、及びフロートパイロット弁118dによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は何れも閉弁されている。これにより、給水制御弁118の主弁体118b、及び吐水制御弁119の主弁体119bは閉弁状態となる。
次に、図6の時刻t11において使用者がレバーハンドル108を操作すると、便器洗浄を指示する信号がコントローラ128(図5)に送られる。便器洗浄の指示信号を受信すると、コントローラ128は、吐水制御用電磁弁120bに通電を行い、吐水制御弁119の電磁弁パイロット弁119cを開弁させる。これにより、吐水制御弁119の圧力室内の圧力が低下し、主弁体119bが弁座から離座して開弁される。なお、本実施形態においては、吐水制御用電磁弁120bとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁119cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
吐水制御弁119が開弁されると、給水管132から給水管分岐部133、第1分岐管133aを介して吐水制御弁119に供給された水道水は、吐水制御弁119を通ってリム給水管125内に流入する。リム給水管125に流入した洗浄水は、水洗便器本体のリム吐水口2d(図2)から吐出される。リム吐水口2dから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの中で旋回しながら流下し、ボウル部2aの汚物受け面を洗浄する。このリム吐水口2dからの吐水は、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前の「前リム」吐水として行われる。
吐水制御用電磁弁120bに通電を行った後、所定時間後の時刻t12においてコントローラ128は、給水制御用電磁弁120aに通電を行い、電磁弁パイロット弁118cをパイロット弁口(図示せず)から離座させる。これにより、給水制御弁118の圧力室内の圧力が低下し、主弁体118bが弁座から離座して、開弁される。即ち、コントローラ128は、吐水制御弁119を開弁させた後、吐水制御弁119の開弁状態を維持したまま、給水制御弁118を開弁させる。なお、本実施形態においては、給水制御用電磁弁120aとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁118cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
給水制御弁118が開弁されると、給水管132から給水管分岐部133、第2分岐管133bを介して給水制御弁118に供給された水道水は、給水制御弁118を通って貯水タンク110内に流入する。即ち、コントローラ128は、吐水制御弁119を開弁させた後、吐水制御弁119の開弁状態を維持したまま、給水制御弁118を開弁させる。
上述したように、給水制御弁118から流出した洗浄水は、流入管123を通って排水弁水圧駆動部114のシリンダ114aに流入し、流出管124から流出する。また、流入管123からシリンダ114aに流入した水の一部は、シリンダ114aの貫通孔114fの内壁とロッド115の間の隙間114dから流出し、この水は、貯水タンク110に流入する。一方、流出管124を通って流出した洗浄水の一部はオーバーフロー管110bの中に流入し、残りの洗浄水は貯水タンク110内に流入する。即ち、排水弁水圧駆動部114から流出した洗浄水の一部は貯水タンク110内に流入し、残りのオーバーフロー管110bの中に流入した洗浄水は、排水弁112をバイパスしてゼット吐水口2bから水洗便器本体内に流入する。
従って、図6の時刻t12以降は、リム吐水口2dからの吐水、及び貯水タンク110内への給水が一時に行われる。ここで、給水管132を流れる水道水の流量は定流量弁132bによってほぼ一定に維持されている。このため、吐水制御弁119が開弁された状態で、さらに給水制御弁118を開弁させると、吐水制御弁119に流入する水の流量が低下し、リム吐水口2dから吐出される洗浄水の流量は、給水制御弁118が開弁されたとき減少する。
一方、流入管123から排水弁水圧駆動部114のシリンダ114a内に流入した洗浄水は、ピストン114bを押し上げる。これにより、ピストン114bに連結されたロッド115及び排水弁112も引き上げられ、排水口110aが開弁される。これにより、貯水タンク110内に貯留されていた洗浄水は、排水口110aを通って流出し、「ゼット吐水」として、ボウル部2aの下部に設けられたゼット吐水口2b(図2)から吐出される。ゼット吐水口2bから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの下部から延びる排水トラップ管路2eを満水にし、サイフォン現象を誘発する。サイフォン現象により、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。このように、ゼット吐水口2bから洗浄水が吐出されている間も、「中リム」吐水として、リム吐水口2dからの吐水も継続される。このため、排水口110aが開弁されることにより、リム吐水口2d及びゼット吐水口2bの両方から、洗浄水が一時に吐出されることになる。
このように、本実施形態の水洗便器装置においては、ゼット吐水口2bから排出された洗浄水によって、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続される。このため、サイフォン現象によって溜水が引き込まれることによりボウル部2a内の溜水が過度に減少して、排水トラップ管路2eの封水が途切れるのを抑制することができる。排水トラップ管路2e内の封水が途切れると、排水トラップ管路2eから臭気が逆流する虞があるが、本実施形態においては、これを抑制することができる。また、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続されるため、封水が途切れず、サイフォン現象を継続させることができ、途中でサイフォン現象が終了してしまうことを抑制することができる。なお、リム吐水口2dから吐出される洗浄水の流量は、時刻t12において給水制御弁118が開弁されることにより低下しているが、サイフォン現象の終了を抑制するには十分な流量が確保されている。
一方、排水弁水圧駆動部114においてピストン114bが押し上げられ、これに伴いロッド115及び排水弁112が所定位置まで引き上げられると、クラッチ機構122が、下部ロッド115b及び排水弁112を、上部ロッド115aから切り離す。これにより、給水制御弁118の開弁中においては、上部ロッド115aはピストン114bと共に上方に押し上げられたままになる一方、下部ロッド115b及び排水弁112は、自重により降下する。しかしながら、切り離された下部ロッド115bは、排水弁フロート機構126の係合部126bと係合し、下部ロッド115b及び排水弁112の降下が阻止される。これにより、クラッチ機構122が切り離された後も貯水タンク110の排水口110aは開弁されたままとなり、貯水タンク110からの排水が継続される。
上述したように、排水弁水圧駆動部114から流出した洗浄水の一部は貯水タンク110内に流入する。しかしながら、流出管124を通って貯水タンク110に流入する洗浄水の流量は、排水弁112が開弁されることにより排水口110aから排出される洗浄水の流量よりも少ないため、この状態では貯水タンク110内の水位は低下する。
次いで、貯水タンク110内の洗浄水の排出により、貯水タンク110内の水位が低下すると、制御弁フロート134が低下する。これにより、時刻t12において、排水弁112が開弁された後、アーム部134aが回動し、フロートパイロット弁118dがパイロット弁口(図示せず)から離座し、パイロット弁口(図示せず)が開弁される。
さらに、フロートパイロット弁118dが開弁された後、コントローラ128は給水制御用電磁弁120aに再び制御信号を送り、電磁弁パイロット弁118cを閉弁させる。しかしながら、この時点では、フロートパイロット弁118dが開弁されているため、給水制御弁118の圧力室内の圧力が上昇することはなく、給水制御弁118は開弁されたまま維持される。
次いで、貯水タンク110内の洗浄水が排水口110aから排出されることにより、貯水タンク110内の水位が所定水位まで低下すると、排水弁フロート機構126のフロート部126aが下降し、これが係合部126bを移動させる。これにより、下部ロッド115bと係合部126bとの係合が解除され、下部ロッド115b及び排水弁112は再び降下し始める。そして、時刻t13において貯水タンク110の排水口110aが排水弁112により閉弁され、排水口110aから流出した洗浄水のゼット吐水口2bからの吐水が停止される。このように、ゼット吐水が終了した後も「後リム」吐水としてリム吐水口2dからの吐水が継続され、このリム吐水口2dから吐出された洗浄水はボウル部2a内に流入し、リフィール水として利用される。
さらに、時刻t11において吐水制御弁119が開弁された後、所定時間経過した時刻t14において、コントローラ128は吐水制御用電磁弁120bに制御信号を送り、電磁弁パイロット弁119cを閉弁させる。これにより、吐水制御弁119が閉弁され、リム吐水口2dからの洗浄水の吐水が停止される。
さらに、リム吐水口2dからの吐水が停止された後も、給水制御弁118は開弁された状態にあるため、給水管132から供給された水は、排水弁水圧駆動部114のシリンダ114aを通って、貯水タンク110内、及びオーバーフロー管110b内に流入する。従って、排水口110aが閉弁された後も、オーバーフロー管110bに流入した洗浄水が、ゼット吐水口2bを通ってボウル部2a内に流入し、流入した洗浄水はリフィール水として利用される。また、排水弁水圧駆動部114を通って貯水タンク110内に洗浄水が流入するので、貯水タンク110内の水位は上昇する。
次いで、時刻t15において、貯水タンク110内の水位が所定の止水水位L1まで上昇すると、制御弁フロート134が上昇し、アーム部134aを介してフロートパイロット弁118dが移動され、パイロット弁口が閉弁される。これにより、電磁弁パイロット弁118c及びフロートパイロット弁118dの両方が閉弁された状態となるので、制御弁本体部118a内の圧力室の圧力が上昇して主弁体118bを閉弁させ、給水制御弁118が閉弁状態となる。以上により、貯水タンク110への給水が停止される。
一方、給水制御弁118が閉弁されることにより、排水弁水圧駆動部114への水の供給が停止されると、排水弁水圧駆動部114のピストン114bは、スプリング114cの付勢力により押し下げられる。ピストン114bと共に上部ロッド115aが押し下げられると、クラッチ機構122により切り離されていた上部ロッド115aと下部ロッド115bが再び連結される。このため、次回、便器洗浄が実行された時は、上部ロッド115a及び下部ロッド115bは、ピストン114bにより共に引き上げられる。以上により、一回の便器洗浄が終了し、水洗便器装置は、便器洗浄の待機状態に復帰する。
本発明の第2実施形態の水洗大便器装置によれば、排水弁水圧駆動部114が、第2開閉弁である給水制御弁118から流出した洗浄水が供給されることにより、排水弁112を駆動するので、給水制御弁118により、貯水タンク110への給水、及び排水弁112を制御することができ、水洗大便器装置の構成を簡略化することができる。
また、本実施形態の水洗大便器装置によれば、排水弁水圧駆動部114を通った洗浄水が貯水タンク110内に流入するので、排水弁112の駆動に使用した洗浄水も無駄なく次回の便器洗浄に利用することができ、洗浄水の利用効率を向上させることができる。
さらに、本実施形態の水洗大便器装置によれば、排水弁水圧駆動部114から流出した洗浄水の一部が貯水タンク110内に入り、残りは下部吐水口であるゼット吐水口2bから水洗便器本体2内に流入するので、洗浄水を、次回の洗浄と、リフィールに適切に振り分けることができ、供給された洗浄水を効率良く利用することができる。
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器装置を説明する。
本実施形態の水洗大便器装置は、それに備えられている洗浄水タンク装置の構成が上述した第1、第2実施形態とは異なっている。従って、以下では、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同一の構成、作用、効果については説明を省略する。
図7は、本発明の第3実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンク装置204は、貯水タンク210と、この貯水タンク210の排水口210aを開閉する排水弁212と、この排水弁212を駆動する排水弁操作装置214と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置204は、リム吐水口2d(図2)からの洗浄水の吐水、停止を制御する第1開閉弁である吐水制御弁219と、洗浄水タンク装置204内への洗浄水の給水、停止を切り替える第2開閉弁である給水制御弁218と、これらの制御弁を制御する制御部であるコントローラ228と、を有する。
貯水タンク210は、水洗便器本体2のゼット吐水口2b(図2)に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口210aが形成されている。また、貯水タンク210内において、排水口210aの下流側にはオーバーフロー管210bが接続されている。このオーバーフロー管210bは、排水口210aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク210内に貯留されている洗浄水の止水水位L1よりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管210bの上端から流入した洗浄水は、排水口210aをバイパスして、水洗便器本体2のゼット吐水口2bから直接流出する。
排水弁212は、排水口210aを開閉するように配置された弁体であり、排水弁212が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク210内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2a(図2)の下部に設けられたゼット吐水口2bから吐出される。
一方、水道Cから給水管232に供給された洗浄水は、止水栓232a、及び定流量弁232bを介して、分岐部である給水管分岐部233に流入する。給水管分岐部233は、水道Cから供給された洗浄水を、第1分岐流路である第1分岐管233a、及び第2分岐流路である第2分岐管233bに分岐させる。さらに、第1分岐管233aには吐水制御弁219が設けられ、第2分岐管233bには給水制御弁218が設けられている。なお、止水栓232aは貯水タンク210の外側に配置されており、その下流側の、貯水タンク210内には定流量弁232bが接続され、定流量弁232bの下流側に給水管分岐部233が設けられている。
止水栓232aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置204への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁232bは、水道Cから供給された水を、所定流量で給水管分岐部233に流入させるために設けられており、水洗便器装置の設置環境に関わらず一定流量の水が洗浄水タンク装置204に供給されるように構成されている。
一方、第1分岐管233aに設けられた吐水制御弁219は、第1分岐管233aから供給された水を、リム給水管225に流出させるように構成されている。リム給水管225は、水洗便器本体2のリム吐水口2d(図2)に連通しており(図7には図示省略)、リム給水管225に流入した洗浄水は、ボウル部を洗浄するためのリム洗浄水として、リム吐水口2dから吐出される。また、リム給水管225の途中には、バキュームブレーカ230bが設けられている。これにより、吐水制御弁219側が負圧になった際、水洗便器本体の側から吐水制御弁219に水が逆流するのを防止することができる。
吐水制御弁219は、吐水弁本体部219aと、この吐水弁本体部219aの中に配置された主弁体219bと、電磁弁パイロット弁219cと、を備えている。また、吐水制御弁219には、吐水制御用電磁弁220bが接続されており、この吐水制御用電磁弁220bにより電磁弁パイロット弁219cが移動されるように構成されている。即ち、電磁弁パイロット弁219cは、吐水弁本体部219aに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉させるように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、吐水弁本体部219a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、吐水制御弁219の主弁体219bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体219bが閉弁される。これにより、吐水制御用電磁弁220bの作動に基づいて、吐水制御弁219の主弁体219bが開閉され、リム吐水口2d(図2)への給水、停止が制御される。
次に、第2分岐管233bに設けられた給水制御弁218は、第2分岐管233bから供給された水を、タンク給水管223に流出させるように構成されている。タンク給水管223は貯水タンク210内に洗浄水を供給するように構成されており、タンク給水管223に流入した洗浄水は、貯水タンク210の中に排出されて貯留される。また、タンク給水管223の途中には、バキュームブレーカ230aが設けられている。これにより、給水制御弁218側が負圧になった際、貯水タンク210の側から給水制御弁218に水が逆流するのを防止することができる。
また、給水制御弁218は、制御弁本体部218aと、この制御弁本体部218aの中に配置された主弁体218bと、電磁弁パイロット弁218cと、を備えている。さらに、給水制御弁218には、給水制御用電磁弁220aが接続されている。
給水制御用電磁弁220aは、コントローラ228から送られた信号に基づいて、給水制御弁218に内蔵された電磁弁パイロット弁218cを移動させ、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁口(図示せず)が開弁されると、制御弁本体部218a内に設けられた圧力室内の圧力が低下し、給水制御弁218の主弁体218bが開弁される。また、パイロット弁口(図示せず)が閉弁されると、圧力室内の圧力が上昇し、主弁体218bが閉弁される。これにより、給水制御用電磁弁220aの作動に基づいて、給水制御弁218の主弁体218bが開閉され、貯水タンク210内への給水、停止が制御される。なお、本実施形態においては給水制御用電磁弁220aとして、一旦通電を行うことにより、電磁弁パイロット弁218cが移動され、通電を停止してもその状態が維持される双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されている。このタイプの電磁弁では、反対方向にもう一度通電を行うと、電磁弁パイロット弁218cを元の位置に復帰させることができる。
具体的には、レバーハンドル208からの信号をコントローラ228が受信し、コントローラ228は給水制御用電磁弁220aに電気信号を送って、これを作動させ、給水制御弁218を開弁させる。給水制御弁218は、制御部であるコントローラ228からの指示信号に基づいて、供給された洗浄水の、貯水タンク210内への供給、停止を制御する。
また、給水制御弁218に接続されたタンク給水管223には、バキュームブレーカ230aが設けられている。このバキュームブレーカ230aにより、給水制御弁218側が負圧になった場合には、タンク給水管223に外気が吸引され、貯水タンク210側からの水の逆流が防止される。
次に、排水弁操作装置214は、コントローラ228からの制御信号に基づいて、排水弁212を引き上げ可能に構成されており、これにより、排水弁212を開弁及び閉弁させることができる。具体的には、排水弁操作装置214は、モータと、これに取り付けられたプーリー(以上図示せず)と、これにより巻き上げられるワイヤ215と、を有する。ワイヤ215の下端は、排水弁212に接続されており、排水弁操作装置214のモータを作動させることにより、排水弁212を上昇、下降させることができる。
コントローラ228は、回路基板を内蔵し、レバーハンドル208の操作に基づいて、給水制御用電磁弁220a、吐水制御用電磁弁220b、排水弁操作装置214等を制御するように構成されている。回路基板上には、マイクロプロセッサ、メモリー、インターフェイス回路等が設けられ、これらは便器洗浄を制御するためのソフトウェアによって作動する。
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態による水洗便器装置の作用を説明する。
図8は、本発明の第3実施形態の水洗便器装置による便器洗浄シーケンスの一例を示すタイムチャートであり、上段にリム吐水口からの吐水流量、中段にゼット吐水口からの吐水流量、下段に貯水タンクへの給水流量を夫々示している。
まず、図8の時刻t20における便器洗浄の待機状態では、貯水タンク210内の水位が止水水位L1にあり、給水制御用電磁弁220a、吐水制御用電磁弁220bへの通電は行われていない。この状態では、電磁弁パイロット弁219cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)、及び電磁弁パイロット弁218cによって開閉されるパイロット弁口(図示せず)は何れも閉弁されている。これにより、給水制御弁218の主弁体218b、及び吐水制御弁219の主弁体219bは閉弁状態となる。
次に、図8の時刻t21において使用者がレバーハンドル208を操作すると、便器洗浄を指示する信号がコントローラ228(図7)に送られる。便器洗浄の指示信号を受信すると、コントローラ228は、吐水制御用電磁弁220bに通電を行い、吐水制御弁219の電磁弁パイロット弁219cを開弁させる。これにより、吐水制御弁219の圧力室内の圧力が低下し、主弁体219bが弁座から離座して開弁される。なお、本実施形態においては、吐水制御用電磁弁220bとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁219cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
吐水制御弁219が開弁されると、給水管232から給水管分岐部233、第1分岐管233aを介して吐水制御弁219に供給された水道水は、吐水制御弁219を通ってリム給水管225内に流入する。リム給水管225に流入した洗浄水は、水洗便器本体のリム吐水口2d(図2)から吐出される。リム吐水口2dから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの中で旋回しながら流下し、ボウル部2aの汚物受け面を洗浄する。このリム吐水口2dからの吐水は、ゼット吐水口2bからの吐水が開始される前の「前リム」吐水として行われる。
吐水制御用電磁弁220bに通電を行った後、所定時間後の時刻t22においてコントローラ228は、排水弁操作装置214に制御信号を送り、ワイヤ215を介して排水弁212を引き上げ、排水口210aを開弁させる。これにより、貯水タンク210内に貯留されていた洗浄水は、排水口210aを通って流出し、「ゼット吐水」として、ボウル部2aの下部に設けられたゼット吐水口2b(図2)から吐出される。
ゼット吐水口2bから吐出された洗浄水は、ボウル部2aの下部から延びる排水トラップ管路2eを満水にし、サイフォン現象を誘発する。サイフォン現象により、ボウル部2a内の溜水及び汚物が排水トラップ管路2eを通って排出される。このように、ゼット吐水口2bから洗浄水が吐出されている間も、「中リム」吐水として、リム吐水口2dからの吐水も継続される。このため、排水口210aが開弁されることにより、リム吐水口2d及びゼット吐水口2bの両方から、洗浄水が一時に吐出されることになる。
このように、本実施形態の水洗便器装置においては、ゼット吐水口2bから排出された洗浄水によって、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続される。このため、サイフォン現象によって溜水が引き込まれることによりボウル部2a内の溜水が過度に減少して、排水トラップ管路2eの封水が途切れるのを抑制することができる。排水トラップ管路2e内の封水が途切れると、排水トラップ管路2eから臭気が逆流する虞があるが、本実施形態においては、これを抑制することができる。また、サイフォン現象が発生している間もリム吐水口2dからの洗浄水の供給が継続されるため、封水が途切れず、サイフォン現象を継続させることができ、途中でサイフォン現象が終了してしまうことを抑制することができる。
次いで、排水口210aを開弁させた後、所定時間後の時刻t23においてコントローラ228は、排水弁操作装置214に制御信号を送って排水弁212を下降させ、排水弁212を排水口210aに着座させる。これにより、貯水タンク210からの排水が停止され、ゼット吐水口2b(図2)からの洗浄水の吐出が停止される。
さらに、排水口210aを閉弁させた後、所定時間後の時刻t24においてコントローラ228は、給水制御用電磁弁220aに通電を行い、電磁弁パイロット弁218cをパイロット弁口(図示せず)から離座させる。これにより、給水制御弁218の圧力室内の圧力が低下し、主弁体218bが弁座から離座して、開弁される。即ち、コントローラ228は、吐水制御弁219を開弁させた後、吐水制御弁219の開弁状態を維持したまま、給水制御弁218を開弁させる。なお、本実施形態においては、給水制御用電磁弁220aとして、双安定型のラッチング型ソレノイドが使用されているので、電磁弁パイロット弁218cを一旦開弁させた後は、通電を停止しても、開弁状態が維持される。
給水制御弁218が開弁されると、給水管232から給水管分岐部233、第2分岐管233bを介して給水制御弁218に供給された水道水は、給水制御弁218を通って貯水タンク210内に流入する。即ち、コントローラ228は、吐水制御弁219を開弁させた後、吐水制御弁219の開弁状態を維持したまま、給水制御弁218を開弁させる。
従って、図8の時刻t24以降は、リム吐水口2dからの吐水、及び貯水タンク210内への給水が一時に行われる。ここで、給水管232を流れる水道水の流量は定流量弁232bによってほぼ一定に維持されている。このため、吐水制御弁219が開弁された状態で、さらに給水制御弁218を開弁させると、吐水制御弁219に流入する水の流量が低下し、リム吐水口2dから吐出される洗浄水の流量は、給水制御弁218が開弁されたとき減少する。しかしながら、リム吐水口2dから吐出される洗浄水により、排水トラップ管路2e(図2)内で発生しているサイフォン現象の途切れを抑制することができる。また、ゼット吐水が終了した後も「後リム」吐水としてリム吐水口2dからの吐水が継続されており、このリム吐水口2dから吐出された洗浄水はボウル部2a内に流入し、リフィール水として利用される。
さらに、時刻t24において給水制御弁218が開弁された後、所定時間経過した時刻t25において、コントローラ228は吐水制御用電磁弁220bに制御信号を送り、電磁弁パイロット弁219cを閉弁させる。これにより、吐水制御弁219が閉弁され、リム吐水口2dからの洗浄水の吐水が停止される。
さらに、リム吐水口2dからの吐水が停止された後も、給水制御弁218は開弁された状態にあるため、給水管232から供給された水は貯水タンク210内に流入し、貯水タンク210内の水位が上昇する。さらに、時刻t24において貯水タンク210内への給水が開始された後、所定時間経過した時刻t26には貯水タンク210内の水位が所定の止水水位L1まで上昇する。コントローラ228は、給水制御用電磁弁220aに制御信号を送って電磁弁パイロット弁218cを閉弁させる。これにより、制御弁本体部218a内の圧力室の圧力が上昇して主弁体218bを閉弁させ、給水制御弁218が閉弁状態となる。以上により、貯水タンク210への給水が停止され、1回の便器洗浄が終了する。
本発明の第3実施形態の水洗大便器装置によれば、排水弁212が排水弁操作装置214により駆動されるので、貯水タンク210内への洗浄水の供給とは独立してゼット吐水口2bからの吐水を行うことができ、効率良く洗浄水を使用して便器洗浄を行うことができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、溜水面よりも上方の上部吐水口としてリム吐水口が設けられ、溜水面よりも下方の下部吐水口としてゼット吐水口が設けられていたが、これらの吐水口の位置は、溜水面の上方及び下方において適宜変更することができる。また、上述した本発明の各実施形態に備えられている任意の構成要素を、他の実施形態の構成と任意に組み合わせて本発明を構成することができる。