JP7344859B2 - 作業機械 - Google Patents

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Description

本発明は、貯水タンク及び散水ノズルを搭載した作業機械に関する。
従来より、フロント作業機の先端に散水ノズルを装着した散水機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような散水機は、例えば、船舶などのコンテナの内壁に付着した積載物(例えば、石炭など)を除去するのに用いられる。
また、散水機には、特許文献1のように外部の貯水タンクにホースで接続される形態の他に、上部旋回体の後部に貯水タンクを搭載する形態もある。貯水タンクを散水機に搭載することにより、外部の貯水タンクと散水機とをホースで接続する必要がなくなるので、散水機の作業範囲が広くなるというメリットがある。
特許第6324934号公報
一方、散水機に搭載された貯水タンクは、散水ノズルに供給する水を貯水すると共に、フロント作業機との重量バランスをとるためのカウンタウェイトとしての役割を担う。そのため、貯水タンクを搭載する散水機は、貯水タンクに貯水されている水の量によって、前後の重量バランスが変化する。
そして、貯水タンクが空の状態でも散水機の重量バランスを安定させるためには、フロント作業機の動作(例えば、作業半径や積載荷重)を制限する必要が生じる。しかし、フロント作業機の動作を一律に制限したのでは、動作を制限する必要のない場合でも動作が制限されてしまい、その結果、散水機の作業効率が低下する。
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯水タンク及び散水ノズルを搭載した作業機械において、作業効率を低下させることなく、前後の重量バランスを安定させる技術を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体の前端に起伏可能に支持されて、前記上部旋回体の前方に向けて延びるフロント作業機と、前記上部旋回体の後端に支持されて、水を貯水する貯水タンクと、前記フロント作業機の先端に取り付けられて、前記貯水タンクに貯水された水を散水する散水ノズルとを備える作業機械であって、前記フロント作業機の作業半径を検知するための作業半径センサと、前記貯水タンクの貯水量を検知するための貯水量センサと、前記作業半径センサ及び前記貯水量センサの検知結果に基づいて、前記フロント作業機の動作を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記作業半径センサを用いて検知された作業半径に基づいて、前記作業機械の前方転倒支線より前方側の転倒モーメントM1を算出し、前記貯水量センサを用いて検知された貯水量に基づいて、前記作業機械の前方転倒支線より後方側の安定モーメントM2を算出し、前記安定モーメントM2を前記転倒モーメントM1で除した値で特定される前記作業機械の前方安定度Sfが前方安定度閾値未満であることに応じて、作業半径を増加させる向きの前記フロント作業機の動作を規制することを特徴とする。
本発明によれば、貯水タンク及び散水ノズルを搭載した作業機械において、作業効率を低下させることなく、前後の重量バランスを安定させることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本実施形態に係る作業機械の代表例である油圧ショベルの側面図である。 油圧ショベルのハードウェア構成図である。 前方安定度制御処理のフローチャートである。 後方安定度制御処理のフローチャートである。 下部走行体の前後に設定された転倒支線を示す図である。 下部走行体の左右に設定された転倒支線を示す図である。 後方安定度の算出方法を説明するための図である。
本発明に係る作業車両の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る作業機械の代表例である油圧ショベル1の側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に支持された上部旋回体3とを備える。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されない。
下部走行体2は、一対のクローラ4を備える。一対のクローラ4は、左右方向に離間した位置に配置されている。また、一対のクローラ4は、各々が前後方向に延設されている。そして、走行モータ(図示省略)の回転が伝達されて左右一対のクローラ4が回転すると、油圧ショベル1が走行する。一対のクローラ4それぞれの構成は既に周知であるが、例えば、走行モータと、アイドルギヤと、走行モータ及びアイドルギヤに巻回されたクローラシューと、クローラシューの内周面に当接して回転する複数のガイドローラとで構成される。
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能な状態で下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前端中央に回動可能に取り付けられたフロント作業機(作業装置)10と、旋回フレーム5の後端に配置された貯水タンク6と、貯水タンク6に貯水された水を後述する散水ノズル14に供給するポンプ7と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)8とを主に備える。
また図2に示すように、上部旋回体3は、旋回角を検知するための旋回角センサ3aを備える。以下、下部走行体2及び上部旋回体3の前方が一致するときを基準(旋回角θ=0°)とし、時計回りの角度を旋回角θと定義する。すなわち、上部旋回体3は、下部走行体2に対してθ=0°~360°の範囲で旋回する。旋回角センサ3aは、下部走行体2に対する上部旋回体3の旋回角θを検知し、検知結果を示す検知信号を後述するコントローラ20(図2参照)に出力する。
フロント作業機10は、上部旋回体3の前端に支持されて、上部旋回体3の前方に向けて延びている。フロント作業機10は、作業半径を増大させる向きの動作(伸長)と、作業半径を減少させる向きの動作(屈曲)とが可能である。作業半径とは、例えば、上部旋回体3の旋回中心として、フロント作業機10の最も前方に位置する部分までの距離を指す。
より詳細には、フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に揺動可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に揺動可能に支持されたバケット13と、バケット13に支持された散水ノズル14と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ15と、アーム12を駆動させるアームシリンダ16と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ17とを主に備える。
ブームシリンダ15が伸長すると、ブーム11が起立する。一方、ブームシリンダ15が縮小すると、ブーム11が倒伏する。また、アームシリンダ16が伸長すると、アーム12が屈曲(クラウド)する。一方、アームシリンダ16が縮小すると、アーム12が伸長(ダンプ)する。さらに、バケットシリンダ17が伸長すると、バケット13がクラウドする。一方、バケットシリンダ17が縮小すると、バケット13がダンプする。
すなわち、ブーム11の倒伏動作及びアーム12のダンプ動作は、フロント作業機10の作業半径を増大させる向きの動作に対応する。一方、ブーム11の起立動作及びアーム12のクラウド動作は、フロント作業機10の作業半径を減少させる向きの動作に対応する。
また図2に示すように、フロント作業機10は、ブーム角センサ15aと、アーム角センサ16aとを備える。ブーム角センサ15aは、水平面に対するブーム11の角度(以下、「ブーム角」と表記する。)を検知する。アーム角センサ16aは、水平面に対するアーム12の角度(以下、「アーム角」と表記する。)を検知する。そして、ブーム角センサ15a及びアーム角センサ16aそれぞれは、検知結果を示す検知信号をコントローラ20に出力する。
そして、コントローラ20は、ブーム角センサ15a及びアーム角センサ16aから出力される検知信号(すなわち、ブーム角及びアーム角の組み合わせ)に基づいて、フロント作業機10の作業半径を特定する。すなわち、ブーム角センサ15a及びアーム角センサ16aは、フロント作業機10の作業半径を検知するための作業半径センサの一例である。但し、作業半径センサの具体例は、前述の例に限定されない。
さらに図2に示すように、フロント作業機10は、ブームシリンダボトム圧センサ15bを備える。ブームシリンダボトム圧センサ15bは、ブームシリンダ15のボトム室内の作動油の圧力を検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ20に出力する。
そして、コントローラ20は、ブームシリンダボトム圧センサ15bから出力される検知信号に基づいて、バケット13に積載された荷物の積載重量Wを特定する。すなわち、ブームシリンダボトム圧センサ15bは、バケット13に積載された荷物の積載重量Wを検知するための重量センサの一例である。但し、重量センサの具体例は、前述の例に限定されない。
貯水タンク6は、上部旋回体3の後端に着脱可能に装着される。貯水タンク6は、水を貯留する内部空間と、内部空間に水を補給するための補給口(図示省略)とを備える。また、貯水タンク6は、フロント作業機10との重量バランスをとるカウンタウェイトとしても機能する。すなわち、貯水タンク6そのものの重量及び貯水タンク6に貯水された水の重量の合計が、油圧ショベル1に装着されたカウンタウェイトの重量に相当する。そのため、貯水タンク6内の水が消費(散水)されることによって、カウンタウェイトとしての重量が徐々に減少する。
また、油圧ショベル1は、水位計6aを備える。水位計6aは、貯水タンク6内の水位を検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ20に出力する。そして、コントローラ20は、水位計6aから出力される検知信号に基づいて、貯水タンク6の貯水量を特定する。すなわち、水位計6aは、貯水タンク6の貯水量を検知するための貯水量センサの一例である。但し、貯水量センサの具体例は、前述の例に限定されない。
ポンプ7は、貯水タンク6に貯留された水を吸い上げて、配管やホースなどの流路部材(図示省略)を通じて散水ノズル14に供給する。散水ノズル14は、ポンプ7によって供給された水を散水する。散水ノズル14の散水方向は、ブーム11、アーム12、及びバケット13の向きによって調整される。
キャブ8には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ8の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)とが配置されている。そして、キャブ8に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作し、散水ノズル14が散水を開始及び停止する。
図2は、油圧ショベル1のハードウェア構成図である。コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)23を備える。コントローラ20は、ROM22に格納されたプログラムコードをCPU21が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAM23は、CPU21がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
但し、コントローラ20の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
また図2に示すように、油圧ショベル1は、油圧ポンプ24と、ブーム用カット電磁弁25と、アーム用カット電磁弁26と、モニタ27とを備える。そして、コントローラ20は、旋回角センサ3a、ブーム角センサ15a、アーム角センサ16a、ブームシリンダボトム圧センサ15b、及び水位計6aから出力される検知信号に基づいて、ブーム用カット電磁弁25、アーム用カット電磁弁26、及びモニタ27の動作を制御する。
油圧ポンプ24は、エンジン(図示省略)によって駆動されて、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を圧送する。油圧ポンプ24から供給される作動油は、油圧回路(図示省略)を通じて、油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ15、アームシリンダ16、バケットシリンダ17)に供給される。油圧回路に含まれる方向制御弁(図示省略)の位置が操作装置への操作に基づいて切り替えられることによって、油圧ポンプ24から各油圧アクチュエータへの作動油の供給方向が変化する。
ブーム用カット電磁弁25は、油圧ポンプ24からブームシリンダ15に至る作動油の流路に配置されている。ブーム用カット電磁弁25は、コントローラ20による制御電圧のONまたはOFFによって、許容位置、ボトム側カット位置、及びロッド側カット位置に切替可能に構成されている。ブーム用カット電磁弁25は、例えば、複数の電磁弁を組み合わせて構成されてもよい。
ブーム用カット電磁弁25の許容位置は、ブームシリンダ15のボトム室及びロッド室への作動油の供給を許容する位置である。すなわち、ブーム用カット電磁弁25が許容位置のとき、オペレータよる操作装置の操作に従ってブームシリンダ15が伸長及び縮小(換言すれば、ブーム11が起立及び倒伏)する。
ブーム用カット電磁弁25のボトム側カット位置は、ブームシリンダ15のボトム室への作動油の供給を規制し且つロッド室への作動油の供給を許容する位置である。すなわち、ブーム用カット電磁弁25がボトム側カット位置のとき、オペレータによる操作装置の操作に従って、ブームシリンダ15が縮小(換言すれば、ブーム11が倒伏)するが、ブームシリンダ15が伸長(換言すれば、ブーム11が起立)しない。
ブーム用カット電磁弁25のロッド側カット位置は、ブームシリンダ15のボトム室への作動油の供給を許容し且つロッド室への作動油の供給を規制する位置である。すなわち、ブーム用カット電磁弁25がロッド側カット位置のとき、オペレータによる操作装置の操作に従って、ブームシリンダ15が伸長(換言すれば、ブーム11が起立)するが、ブームシリンダ15が縮小(換言すれば、ブーム11が倒伏)しない。
アーム用カット電磁弁26は、油圧ポンプ24からアームシリンダ16に至る作動油の流路に配置されている。アーム用カット電磁弁26は、コントローラ20による制御電圧のONまたはOFFによって、許容位置、ボトム側カット位置、及びロッド側カット位置に切替可能に構成されている。アーム用カット電磁弁26は、例えば、複数の電磁弁を組み合わせて構成されてもよい。
アーム用カット電磁弁26の許容位置は、アームシリンダ16のボトム室及びロッド室への作動油の供給を許容する位置である。すなわち、アーム用カット電磁弁26が許容位置のとき、オペレータよる操作装置の操作に従ってアームシリンダ16が伸長及び縮小(換言すれば、アーム12がクラウド及びダンプ)する。
アーム用カット電磁弁26のボトム側カット位置は、アームシリンダ16のボトム室への作動油の供給を規制し且つロッド室への作動油の供給を許容する位置である。すなわち、アーム用カット電磁弁26がボトム側カット位置のとき、オペレータによる操作装置の操作に従って、アームシリンダ16が縮小(換言すれば、アーム12がダンプ)するが、アームシリンダ16が伸長(換言すれば、アーム12がクラウド)しない。
アーム用カット電磁弁26のロッド側カット位置は、アームシリンダ16のボトム室への作動油の供給を許容し且つロッド室への作動油の供給を規制する位置である。すなわち、アーム用カット電磁弁26がロッド側カット位置のとき、オペレータによる操作装置の操作に従って、アームシリンダ16が伸長(換言すれば、アーム12がクラウド)するが、アームシリンダ16が縮小(換言すれば、アーム12がダンプ)しない。
すなわち、コントローラ20は、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26を許容位置にすることによって、フロント作業機10の全ての動作を許容する。また、コントローラ20は、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26をボトム側カット位置にすることによって、フロント作業機10の動作のうち、作業半径を増大させる向きの動作を許容し、作業半径を減少させる向きの動作を規制する。さらに、コントローラ20は、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26をロッド側カット位置にすることによって、フロント作業機10の動作のうち、作業半径を増大させる向きの動作を規制し、作業半径を減少させる向きの動作を許容する。
モニタ27は、情報(例えば、文字、画像、映像など)を表示する報知装置の一例である。コントローラ20は、油圧ショベル1の状態、及び図3及び図4を参照して後述する警告画面を、モニタ27に表示する。なお、報知装置の具体例はモニタ27に限定されず、点灯または点滅するLEDランプ、音声を出力するスピーカなどでもよい。
図3は、前方安定度制御処理のフローチャートである。コントローラ20は、例えば、エンジンが駆動している間、所定の時間間隔ごとに前方安定度制御処理を繰り返し実行する。なお、前方安定度制御処理の開始時点において、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26は、許容位置であるものとする。
まず、コントローラ20は、旋回角センサ3aから出力される検知信号に基づいて、下部走行体2に対する上部旋回体3の向きを判定する(S11)。より詳細には、コントローラ20は0°≦θ<45°、315°≦θ<360°のとき、上部旋回体3が前方を向いていると判定する。また、コントローラ20は45°≦θ<135°のとき、上部旋回体3が右方を向いていると判定する。また、コントローラ20は、135°≦θ<225°のとき、上部旋回体3が後方を向いていると判定する。さらに、コントローラ20は、225°≦θ<315°のとき、上部旋回体3が左方を向いていると判定する。
そして、コントローラ20は、下部走行体2に対して上部旋回体3が前方または後方を向いていると判定した場合に(S11:Yes)、油圧ショベル1の転倒支線を下部走行体2の前後に設定する(S12)。一方、コントローラ20は、下部走行体2に対して上部旋回体3が右方または左方を向いていると判定した場合に(S11:No)、油圧ショベル1の転倒支線を下部走行体2の左右に設定する(S13)。転倒支線とは、油圧ショベル1が転倒する基点となる位置を通り、鉛直方向に延びる仮想線を指す。
図5は、下部走行体2の前後に設定された転倒支線を示す図である。前後方向の転倒支線は、クローラ4の接地面の前端を通り且つ鉛直方向に延びる転倒支線Line-fと、クローラ4の接地面の後端を通り且つ鉛直方向に延びる転倒支線Line-bとを含む。そして、上部旋回体3が前方を向いているとき、転倒支線Line-fが「前方転倒支線」となり、転倒支線Line-bが「後方転倒支線」となる。一方、上部旋回体3が後方を向いているとき、転倒支線Line-fが「後方転倒支線」となり、転倒支線Line-bが「前方転倒支線」となる。
図6は、下部走行体2の左右に設定された転倒支線を示す図である。左右方向の転倒支線は、右側のクローラ4の外側端より所定の距離だけ内側の位置(例えば、ガイドローラの外側端)を通り且つ鉛直方向に延びる転倒支線Line-rと、左側のクローラ4の外側端より所定の距離だけ内側の位置(例えば、ガイドローラの外側端)を通り且つ鉛直方向に延びる転倒支線Line-lとを含む。そして、上部旋回体3が右方を向いているとき、転倒支線Line-rが「前方転倒支線」となり、転倒支線Line-lが「後方転倒支線」となる。一方、上部旋回体3が左方を向いているとき、転倒支線Line-rが「後方転倒支線」となり、転倒支線Line-lが「前方転倒支線」となる。
次に、コントローラ20は、ステップS12~S13で設定した前方転倒支線を基準として、転倒モーメントM1と、安定モーメントM2と、前方安定度Sfとを算出する(S14)。以下、転倒支線Line-fを前方転倒支線とした場合の転倒モーメントM1、安定モーメントM2、及び前方安定度Sfの算出方法を説明するが、他の転倒支線Line-b、Line-r、Line-lが前方転倒支線に設定された場合も、同様の方法で算出することができる。
転倒モーメントM1は、前方転倒支線より前方側のモーメントである。換言すれば、転倒モーメントM1は、油圧ショベル1を図5の反時計回りに回転させようとするモーメントである。転倒モーメントM1は、前方転倒支線より前方側の質量Wfと、前方転倒支線及び質量Wfの重心の間の水平距離Lfとの積(=Wf×Lf)によって算出される。
より詳細には、コントローラ20は、ブームシリンダボトム圧センサ15bを用いて検知された積載重量Wに基づいて前方側の質量Wfを算出し、ブーム角センサ15a及びアーム角センサ16aを用いて検知された作業半径に基づいて水平距離Lfを算出し、これらを乗じて転倒モーメントM1を算出する。より詳細には、積載重量Wが大きいほど前方側の質量Wfが大きくなり、作業半径が大きいほど水平距離Lfが長くなる。
安定モーメントM2は、前方転倒支線より後方側のモーメントである。換言すれば、安定モーメントM2は、油圧ショベル1を図5の時計回りに回転させようとするモーメントである。安定モーメントM2は、前方転倒支線より後方側の質量Wbと、前方転倒支線及び質量Wbの重心の間の水平距離Lbとの積(=Wb×Lb)によって算出される。
より詳細には、コントローラ20は、水位計6aを用いて検知された貯水タンク6内の水位(換言すれば、貯水タンク6の貯水量)に基づいて後方側の質量Wbを算出し、算出した質量Wbと予め定められた水平距離Lbとを乗じて安定モーメントM2を算出する。より詳細には、水位が高い(すなわち、貯水量が多い)ほど後方側の質量Wbが大きくなる。
前方安定度Sfは、前方転倒支線を基準とした油圧ショベル1の転倒に対する安定性の度合いを示す。前方安定度Sfは、下記式1で示されるように、安定モーメントM2を転倒モーメントM1で除することによって算出される。すなわち、転倒モーメントM1が大きい(換言すれば、積載重量Wが大きい、作業半径が大きい)ほど、及び安定モーメントM2が小さい(換言すれば、貯水量が少ない)ほど、前方安定度Sfが低くなる。一方、転倒モーメントM1が小さい(換言すれば、積載重量Wが小さい、作業半径が小さい)ほど、及び安定モーメントM2が大きい(換言すれば、貯水量が多い)ほど、前方安定度Sfが高くなる。
Sf=M2/M1 ・・・(式1)
次に、コントローラ20は、ステップS14で算出した前方安定度Sfと、予め定められた報知閾値Nfthとを比較する(S15)。報知閾値Nfthは、前方安定度Sfの低下をオペレータに警告するか否かを判定するための閾値(例えば、1.6)である。報知閾値Nfthは、RAM23などに予め記憶されている。
そして、コントローラ20は、前方安定度Sfが報知閾値Nfth未満であることに応じて(S15:Yes)、前方安定度Sfの低下を警告する警告画面をモニタ27に表示して(S16)、ステップS17以降の処理を実行する。警告画面の表示は、報知装置を作動させることの一例である。一方、コントローラ20は、前方安定度Sfが報知閾値Nfth以上であることに応じて(S15:No)、ステップS16以降の処理を実行せずに、前方安定度制御処理を終了する。
次に、コントローラ20は、ブームシリンダボトム圧センサ15bを用いて検知された積載重量Wと、予め定められた重量閾値Wthとを比較する(S17)。重量閾値Wthは、後述する前方安定度閾値の値を決定するための閾値である。重量閾値Wthは、RAM23などに予め記憶されている。
そして、コントローラ20は、積載重量Wが重量閾値Wth以上であることに応じて(S17:Yes)、前方安定度Sfと前方安定度閾値Sfth1とを比較する(S18)。一方、コントローラ20は、積載重量Wが重量閾値Wth未満であることに応じて(S17:No)、前方安定度Sfと前方安定度閾値Sfth2とを比較する(S19)。
前方安定度閾値Sfth1、Sfth2は、作業半径を増加させる向きのフロント作業機10の動作を規制するか否かを決定するための閾値である。前方安定度閾値Sfth1、Sfth2(以下、これらを総称して、「Sfth」と表記することがある。)は、RAM23などに予め記憶されている。
また、Sfth2(例えば、1.1)<Sfth1(例えば、1.5)<Nfth(例えば、1.6)に設定される。すなわち、コントローラ20は、ブームシリンダボトム圧センサ15bを用いて検知された積載重量Wが重量閾値Wth以上の場合に(S17:Yes)、重量閾値Wth未満の場合(S17:No)より前方安定度閾値Sfthを大きくする。また、報知閾値Nthは、前方安定度閾値Sfth1、Sfthより大きい値である。
そして、コントローラ20は、積載重量Wが重量閾値Wth以上で且つ前方安定度Sfが前方安定度閾値Sfth1未満であることに応じて(S17:Yes&S18:Yes)、作業半径を増加させる向きのフロント作業機10の動作を規制する(S20)。すなわち、コントローラ20は、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26をロッド側カット位置に切り替える。
また、コントローラ20は、積載重量Wが重量閾値Wth未満で且つ前方安定度Sfが前方安定度閾値Sfth2未満であることに応じて(S17:No&S19:Yes)、ステップS20の処理を実行する。一方、コントローラ20は、ステップS18で前方安定度Sfが前方安定度閾値Sfth1以上であることに応じて(S18:No)、またはステップS19で前方安定度Sfが前方安定度閾値Sfth2以上であることに応じて(S19:No)、ステップS20の処理を実行せずに、前方安定度制御処理を終了する。
図4は、後方安定度制御処理のフローチャートである。コントローラ20は、例えば、エンジンが駆動している間、所定の時間間隔ごとに後方安定度制御処理を繰り返し実行する。なお、後方安定度制御処理の開始時点において、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26は、許容位置であるものとする。なお、前方安定度制御処理との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
まず、コントローラ20は、旋回角センサ3aから出力される検知信号に基づいて、下部走行体2に対する上部旋回体3の向きを判定し(S21)、判定結果に基づいて転倒支線を前後または左右に設定する(S22、S23)。ステップS21~S23の処理は、ステップS11~S13と共通する。
次に、コントローラ20は、下記式2を用いて、後方安定度Srを算出する(S24)。後方安定度Srは、後方転倒支線を基準とした油圧ショベル1の転倒に対する安定性の度合いを示す。
Sr={(L-L1)/L}×100 ・・・(式2)
図7は、後方安定度Srの算出方法を説明するための図である。油圧ショベル1の全体質量WOと、前方転倒支線Line-fにおける分配質量R1と、後方転倒支線Line-bにおける分配質量R2と、前方転倒支線Line-f及び後方転倒支線Line-bの間の水平距離Lと、油圧ショベル1の重心位置及び前方転倒支線Line-fの間の水平距離L1と、油圧ショベル1の重心位置及び後方転倒支線Line-bの間の水平距離L2とを用いて、式2が導出される。
まず、油圧ショベル1の質量の釣り合いが下記式3で表され、前方転倒支線Line-f周りのモーメントの釣り合いが式4で表される。そして、式4を式3のR2に代入し、さらにR1/WO(=Sr)について解くことによって、上記式2が得られる。
WO=(R1+R2) ・・・(式3)
L×R2=L1×WO ・・・(式4)
ここで、フロント作業機10の作業半径が小さいほど、または貯水タンク6の貯水量が多いほど、油圧ショベル1の重心位置が後方に移動し、水平距離L1が長くなる。その結果、後方安定度Srが小さくなる。一方、フロント作業機10の作業半径が大きいほど、または貯水タンク6の貯水量が少ないほど、油圧ショベル1の重心位置が前方に移動し、水平距離L1が短くなる。その結果、後方安定度Srが大きくなる。すなわち、後方安定度Srは、散水ノズル14から散水を継続することによって、徐々に大きくなる。
次に、コントローラ20は、ステップS24で算出した後方安定度Srと、予め定められた報知閾値Nrthとを比較する(S25)。報知閾値Nrthは、後方安定度Srの低下をオペレータに警告するか否かを判定するための閾値(例えば、20%)である。報知閾値Nrthは、RAM23などに予め記憶されている。
そして、コントローラ20は、後方安定度Srが報知閾値Nrth未満であることに応じて(S25:Yes)、後方安定度Srの低下を警告する警告画面をモニタ27に表示して(S26)、ステップS27以降の処理を実行する。警告画面の表示は、報知装置を作動させることの一例である。一方、コントローラ20は、後方安定度Srが報知閾値Nrth以上であることに応じて(S25:No)、ステップS26以降の処理を実行せずに、後方安定度制御処理を終了する。
次に、コントローラ20は、後方安定度Srと後方安定度閾値Srthとを比較する(S27)。後方安定度閾値Srthは、作業半径を減少させる向きのフロント作業機10の動作を規制するか否かを決定するための閾値(例えば、15%)である。後方安定度閾値Srthは、RAM23などに予め記憶されている。
そして、コントローラ20は、後方安定度Srが後方安定度閾値Srth未満であることに応じて(S27:Yes)、作業半径を減少させる向きのフロント作業機10の動作を規制する(S28)。すなわち、コントローラ20は、ブーム用カット電磁弁25及びアーム用カット電磁弁26をボトム側カット位置に切り替える。一方、コントローラ20は、後方安定度Srが後方安定度閾値Srth以上であることに応じて(S27:No)、ステップS28の処理を実行せずに、後方安定度制御処理を終了する。
上記構成の油圧ショベル1において、貯水タンク6の貯水量が多いほど、前方安定度Sfが高くなる。そこで上記の実施形態のように、貯水タンク6の貯水量が多い状態では、作業半径を大きくした状態でのフロント作業機10の動作を許容することによって、油圧ショベル1の作業効率を向上させることができる。一方、貯水タンク6の貯水量が減少するにつれて、フロント作業機10の作業半径を制限することによって、油圧ショベル1の安定性が損なわれるのを防止することができる。
これにより、貯水タンク6の容量を大きく(換言すれば、散水の前後における前後の重量バランスの変化を大きく)したとしても、油圧ショベル1の作業効率を低下させることなく、油圧ショベル1の前後の重量バランスを安定させることができる。
また、上記の実施形態によれば、フロント作業機10の作業半径だけでなく、バケット13の積載重量Wを考慮して転倒モーメントM1を算出するので、前方安定度Sfをより正確に算出することができる。但し、コントローラ20は、転倒モーメントM1を算出するパラメータとして、積載重量Wを省略してもよい。
また、上記の実施形態によれば、バケット13の積載重量Wに応じて前方安定度閾値Sfth1、Sfth2を切り替えることによって、油圧ショベル1が高負荷の作業をしている場合に、油圧ショベル1の前後の重量バランスをさらに安定させることができる。
また、上記の実施形態によれば、作業半径を増大させる向きのフロント作業機10の動作を規制するのに先立って、モニタ27を通じて前方安定度Sfの低下をオペレータに報知するので、貯水タンク6の貯水量が少なくなっていることをオペレータに認識させ、前方安定度Sfが低下するような作業を控えさせることができる。
また、上記の実施形態によれば、後方安定度Srが後方安定度閾値Srth未満になった場合に、作業半径を減少させる向きのフロント作業機10の動作を規制する。これにより、特に、散水前における油圧ショベル1の前後の重量バランスを安定させることができる。また、作業半径を減少させる向きのフロント作業機10の動作を規制するのに先立って、モニタ27を通じて後方安定度Srの低下をオペレータに報知するので、後方安定度Srが低下するような作業を控えさせることができる。
なお、本明細書中の前方安定度Sf及び後方安定度Srは、例えば、「JIS A 8340」に規定されているものであってもよい。また、本実施形態に係るコントローラ20は、前方安定度制御処理及び後方安定度制御処理の両方を実行することに限定されず、いずれか一方のみを実行してもよい。
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
3a 旋回角センサ
4 クローラ
5 旋回フレーム
6 貯水タンク
6a 水位計
7 ポンプ
8 キャブ
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 散水ノズル
15 ブームシリンダ
15a ブーム角センサ
15b ブームシリンダボトム圧センサ
16 アームシリンダ
16a アーム角センサ
17 バケットシリンダ
20 コントローラ
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 油圧ポンプ
25 ブーム用カット電磁弁
26 アーム用カット電磁弁
27 モニタ

Claims (5)

  1. 下部走行体と、
    前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、
    前記上部旋回体の前端に起伏可能に支持されて、前記上部旋回体の前方に向けて延びるフロント作業機と、
    前記上部旋回体の後端に支持されて、水を貯水する貯水タンクと、
    前記フロント作業機の先端に取り付けられて、前記貯水タンクに貯水された水を散水する散水ノズルとを備える作業機械であって、
    前記フロント作業機の作業半径を検知するための作業半径センサと、
    前記貯水タンクの貯水量を検知するための貯水量センサと、
    前記作業半径センサ及び前記貯水量センサの検知結果に基づいて、前記フロント作業機の動作を制御するコントローラとを備え、
    前記コントローラは、
    前記作業半径センサを用いて検知された作業半径に基づいて、前記作業機械の前方転倒支線より前方側の転倒モーメントM1を算出し、
    前記貯水量センサを用いて検知された貯水量に基づいて、前記作業機械の前方転倒支線より後方側の安定モーメントM2を算出し、
    下記式1で特定される前記作業機械の前方安定度Sfが前方安定度閾値未満であることに応じて、作業半径を増加させる向きの前記フロント作業機の動作を規制することを特徴とする作業機械。
    Sf=M2/M1 ・・・(式1)
  2. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記フロント作業機は、
    前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームと、
    前記ブームの先端に揺動可能に支持されたアームと、
    前記アームの先端に揺動可能に支持され且つ前記散水ノズルを支持するバケットと、
    前記バケットに積載された荷物の積載重量を検知するための重量センサとを備え、
    前記コントローラは、
    前記作業半径センサを用いて検知された作業半径と、前記重量センサを用いて検知された積載重量とに基づいて、前記転倒モーメントM1を算出し、
    前記重量センサを用いて検知された積載重量が重量閾値以上の場合に、前記重量閾値未満の場合より前記前方安定度閾値を大きく設定することを特徴とする作業機械。
  3. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記上部旋回体の旋回角を検知するための旋回角センサを備え、
    前記コントローラは、前記旋回角センサを用いて検知された旋回角に基づいて、前記作業機械の前方転倒支線の位置を切り替えることを特徴とする作業機械。
  4. 請求項1に記載の作業機械において、
    情報を報知する報知装置を備え、
    前記コントローラは、前記前方安定度Sfが報知閾値未満であることに応じて、前記報知装置を作動させ、
    前記報知閾値は、前記前方安定度閾値より大きい値であることを特徴とする作業機械。
  5. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記コントローラは、
    前記作業機械の前方転倒支線及び後方転倒支線の間の水平距離Lと、前記作業機械の重心位置及び前方転倒支線の間の水平距離L1とを下記式2に代入して、前記作業機械に後方安定度Srを算出し、
    前記後方安定度Srが後方安定度閾値未満であることに応じて、作業半径を減少させる向きの前記フロント作業機の動作を規制することを特徴とする作業機械。
    Sr={(L-L1)/L}×100 ・・・(式2)
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