以下、図面を参照して、本発明に係るホイールローダ100の各実施形態について説明する。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ホイールローダ100に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
図1は、本実施形態に係るホイールローダ100の側面図である。図2は、ホイールローダ100の前方斜視図である。図3は、ホイールローダ100の平面図である。ホイールローダ100は、前フレーム104と後フレーム107とから成る車体を有している。前フレーム104には、左右一対のリフトアーム101L、101R及びバケット102から成る作業機と、左右一対の前輪103L、103Rとが取り付けられている。後フレーム107には、キャブ105、及び左右一対の後輪106L、106Rが少なくとも取り付けられている。
前輪103L、103R及び後輪106L、106Rは、エンジン11(図12参照)の動力が伝達されて回転する駆動輪である。より詳細には、エンジン11の駆動力がトランスミッション13(図12参照)で変速され、ドライブシャフト及びアクスルを通じて前輪103L及び後輪106L、106Rに伝達される。
一対のリフトアーム101L、101Rは、ホイールローダ100の幅方向(左右方向)に離間し車体の前方に取付られている。また、左右一対のリフトアーム101L、101Rは、前後方向に延設されている。より詳細には、一対のリフトアーム101L、101Rは、前端がバケット102に回動可能に連結され、後端が前フレーム104に回動可能に連結されている。そして、一対のリフトアーム101L、101Rは、一対のリフトアームシリンダ108L、108Rの伸縮によって上下方向に回動(俯仰動)する。
バケット102は、荷物(土砂など)を収容可能な凹形状の空間を有する。また、バケット102は、一対のリフトアーム101L、101Rの前端において、チルト(クラウドまたはダンプ)可能に支持されている。より詳細には、バケット102は、バケットシリンダ109の伸縮に伴ってベルクランク110が回動することによって、上下方向に回動する。
一対のリフトアームシリンダ108L、108R及びバケットシリンダ109は、油圧ポンプ15(図12参照)から作動油の供給を受けて伸縮する。一対のリフトアーム101L、101R、バケット102、一対のリフトアームシリンダ108L、108R、バケットシリンダ109、及びベルクランク110は、フロント作業機を構成している。
図3に示すように、バケット102の左右方向幅W1は、一対の前輪103L、103R及び一対の後輪106L、106Rの左右方向幅W2より大きい。より詳細には、バケット102は、ホイールローダ100の構成要素のなかで、最も左右方向に張り出している。すなわち、バケット102の左外側端102Lは、ホイールローダ100の最も左側に位置する。また、バケット102の右外側端102Rは、ホイールローダ100の最も右側に位置する。
前フレーム104と後フレーム107とは、センタピン111によって、左右方向に回転可能に連結されている。また、前フレーム104と後フレーム107とは、左右一対のステアリングシリンダ112L、112Rによって接続されている。一対のステアリングシリンダ112L、112Rは、油圧ポンプ15から作動油の供給を受けて伸縮する。
一対のステアリングシリンダ112L、112Rのうち一方を伸長、他方を縮退させることにより、センタピン111を中心として前フレーム104が後フレーム107に対して左右方向に屈曲する。これにより、前フレーム104と後フレーム107との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。すなわち、このホイールローダ100は、センタピン111を中心に前フレーム104と後フレーム107とが屈曲されるアーティキュレート式である。
キャブ105には、ホイールローダ100を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ105の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置20(図12参照)が配置されている。キャブ105に搭乗したオペレータが操作装置20を操作することによって、ホイールローダ100が走行し、フロント作業機が動作する。
また、ホイールローダ100は、左右一対の前照灯113L、113Rを備える。前照灯113L、113Rは、キャブ105に搭乗するオペレータの視界を確保するために、ホイールローダ100の前方に光を照射する、所謂「ヘッドライト」である。前照灯113L、113Rは、制御装置40(図12参照)からケーブルを通じて電力が供給されることによって、点灯する。
前照灯113L、113Rは、リフトアーム101L、101Rより左右方向の外側で、且つバケット102の外側端より内側に配置されている。換言すれば、前照灯113Lは、リフトアーム101Lより左方で、且つバケット102の左外側端102Lより右方に配置されている。また、前照灯113Rは、リフトアーム101Rより右方で、且つバケット102の右外側端102Rより左方に配置されている。
さらに、ホイールローダ100は、左右一対のライダー(LIDAR)114L、114Rを備える。ライダー114L、114Rは、ホイールローダ100の前方に位置する障害物との離間距離Dを計測する測距センサである。ライダー114L、114Rは、例えば、反響定位法(Echo Location)によって、離間距離Dを計測する。
より詳細には、ライダー114L、114Rは、レーザパルス光を前方に照射してから、障害物で反射したレーザパルス光の反射光を受光するまでの時間を計測する。また、ライダー114L、114Rは、計測した時間にレーザパルス光の速度を乗じて、離間距離Dを検出する。そして、ライダー114L、114Rは、検出した離間距離Dを示す検出信号を、制御装置40に出力する。但し、測距センサの具体例はライダー114L、114Rに限定されない。
ライダー114L、114Rは、バケット102より車体後方の位置において、前フレーム104に支持されている。また、ライダー114L、114Rは、左右方向に離間して設けられている。より詳細には、ライダー114L、114Rは、一対のリフトアーム101L、101Rより左右方向の外側に配置されている。すなわち、ライダー114L(第1センサ)はリフトアーム101Lより左方に配置され、ライダー114R(第2センサ)はリフトアーム101Rより右方に配置されている。
また、ライダー114L、114Rは、ホイールローダ100を正面視したときに、一対の前輪103L、103Rより幅方向の外側で、且つバケット102の幅W1の内側の領域に重なる位置に配置されるのが望ましい。本実施形態に係るライダー114L、114Rは、一対の前照灯113L、113Rに支持されている。より詳しくは、前照灯113L、113Rを支持するブラケットに支持されている。また、図示は省略するが、ライダー114L、114Rと制御装置40とを接続する信号線は、前照灯113L、113Rに電力を供給するケーブルに沿って配索されるのが望ましい。
次に、ホイールローダ100が掘削作業及び積み込み作業を行う際の方法の1つであるVシェープローディングについて説明する。図4は、ホイールローダ100によるVシェープローディングを説明する説明図である。図5~図8は、図4の矢印Y1、Y2に沿って移動するホイールローダ100であって、図5はバケット102を下げた状態、図6はバケット102を上げた状態、図7はバケット102内の土砂をダンプトラックBの荷台に放土する状態、図8はダンプトラックBの荷台の上端ギリギリまでバケット102を下げた状態を示す図である。
まず、ホイールローダ100は、作業対象物である地山Aに向かって前進し(図4に示す矢印X1)、バケット102を地山Aに突入させた状態でチルトさせることにより掘削作業を行う。次に、掘削作業が終わると、ホイールローダ100は、掘削した土砂や鉱物等の荷をバケット102に積んだ状態で後退する(図4に示す矢印X2)。
次に、ホイールローダ100は、ダンプトラックBに向かって前進し(図4に示す矢印Y1)、ダンプトラックBの側面に正対した状態(破線のホイールローダ100の状態)で停止して、バケット102内の土砂を放土する。次に、ホイールローダ100は、ダンプトラックBへの積み込み作業が終わると、バケット102内に荷が積まれていない状態で後退する(図4に示す矢印Y2)。そして、ホイールローダ100は、地山AとダンプトラックBとの間でV字形状に往復走行し、掘削作業及び積み込み作業を行う。
図4の矢印Y1、Y2の方向にホイールローダ100を移動させる過程において、フロント作業機は、図5~図8に示すように動作する。すなわち、ホイールローダ100がダンプトラックBに近づく過程で、バケット102を持ち上げる(図5~図6)。次に、ダンプトラックBの直前の位置で、バケット102内の土砂を放土する(図7)。さらに、バケット102を下げながら、ホイールローダ100を後退させる(図8)。
なお、ダンプトラックBに対する距離が十分確保できない狭い現場では、バケット102が上昇する時間を確保するため、ブレーキペダル23(図12参照)を微調整して前進速度を加減しながら、ホイールローダ100をダンプトラックBに接近させる必要がある。
このとき、リフトアーム101L、101Rのリフトアップ速度と、ホイールローダ100の前進速度とのバランスが重要である。例えば、ホイールローダ100の前進速度が速すぎると、リフトアーム101L、101Rが上昇しきらずに、バケット102をダンプトラックBの側面に接触させてしまう。一方、リフトアーム101L、101Rの上昇速度を上げるためにアクセルペダル21(図12参照)を踏み込んでエンジン11の回転数を上昇させると、駆動力も増加して加速してしまう。そのため、オペレータは、アクセルペダル21を踏み込んでエンジン11の回転数を上げつつ、ホイールローダ100が加速しないようにブレーキペダル23を踏み込む必要がある。
さらに、積荷をダンプトラックBに積み込む作業は、左手でステアリングホイール26(図12参照)を操作し、右手でリフトアームレバー24及びバケットレバー25(図12参照)を操作し、右足でアクセルペダル21を操作し、左足でブレーキペダル23を操作する必要がある。そのため、特にバケット102の操作に気を取られ過ぎると、前輪103L、103RをダンプトラックBの側面に接触させてしまう虞がある。
そこで、ライダー114L、114Rは、主に、ホイールローダ100が図4の矢印Y1の方向に前進する際に、側面をホイールローダ100に向けたダンプトラックBとの離間距離Dを計測するのに用いられる。そのため、ライダー114L、114Rは少なくとも以下の2つの条件を満たす必要がある。
まず、ホイールローダ100が図4の矢印Y1の方向に前進しているとき、バケット102内の土砂が落ちないように、リフトアーム101L、101Rによってバケット102が持ち上げられている。そのため、ライダー114L、114Rに求められる第1の条件として、バケット102の上下方向の位置に拘わらず、離間距離Dを計測できることが挙げられる。
また、ホイールローダ100は、図4の矢印X2の方向に後退している状態から、矢印Y1の方向に前進する際に、前フレーム104と後フレーム107とを屈曲させて旋回する。そのため、ライダー114L、114Rに求められる第2の条件として、前フレーム104及び後フレーム107の屈曲角度に拘わらず、前フレーム104に正対する障害物との離間距離Dを計測できることが挙げられる。
図9は、本実施形態に係るライダー114L、114Rの測距可能範囲(レーザパルス光の照射範囲)R1、R2を示す図である。図10は、比較例1に係る測距センサ114Aの測距可能範囲R3を示す図である。図11は、比較例2に係る測距センサ114Bの測距可能範囲R4を示す図である。
図9に示すように、ライダー114Lの測距可能範囲R1は、バケット102の左外側端より左方における扇形の範囲である。また、ライダー114Rの測距可能範囲R2は、バケット102の右外側端より右方に拡がる扇形の範囲である。このように、測距可能範囲R1、R2は、バケット102の幅の外側に位置するので、上下動するバケット102によって遮蔽されることがない。また、ライダー114L、114Rは、前フレーム104に搭載されているので、前フレーム104に正対する障害物との離間距離Dを計測できる。すなわち、本実施形態に係るライダー114L、114Rは、第1及び第2の条件を満たす。
なお、ライダー114L、114Rでは、バケット102の幅の内側に存在する障害物との離間距離Dを計測することができない。しかしながら、本実施形態では、図4に破線で示すように、前フレーム104がダンプトラックBの側面に正対して前進する際に、ダンプトラックBとの離間距離Dを計測するために、ライダー114L、114Rを用いることを想定している。
そして、バケット102の幅よりダンプトラックBの荷台が長くなければ、バケット102内の土砂を荷台に放土することができない。そのため、前フレーム104がダンプトラックBの側面に正対しているとき、ダンプトラックBは測距可能範囲R1、R2の少なくとも一方に進入するので、ダンプトラックBとの離間距離Dを適切に計測できる。
一方、図10に示すように、比較例1に係る測距センサ114Aは、幅方向の中央(例えば、一対のリフトアーム101L、101Rの間)において、前フレーム104に支持されている。そのため、測距センサ114Aは、第2の条件を満たす。しかしながら、バケット102が持ち上げられたとき、測距センサ114Aの測距可能範囲R3は、バケット102に遮られて、バケット102より前方に達しない。すなわち、測距センサ114Aは、第1の条件を満たさない。
また、図11に示すように、比較例2に係る測距センサ114Bは、キャブ105の屋根に支持されている。そのため、測距センサ114Bの測距可能範囲R4は、上下動するバケット102によって遮蔽されない。すなわち、測距センサ114Bは、第1条件を満たす。しかしながら、測距センサ114Bは、後フレーム107に搭載されているので、前フレーム104及び後フレーム107が屈曲すると、前フレーム104に正対する障害物との離間距離Dを正確に測距できず、屈曲角に応じた補正が必要となる。すなわち、測距センサ114Bは、第2の条件を満たさない。
図12は、ホイールローダ100のハードウェア構成図である。ホイールローダ100は、エンジン(ENG)11と、トルクコンバータ(T/C)12と、トランスミッション(T/M)13と、ブレーキ14と、油圧ポンプ15と、ブレーキポンプ16と、アキュームレータ17と、操作装置20と、油圧回路30と、制御装置40とを主に備える。
エンジン11は、化石燃料を燃焼させて駆動力を発生させる。トルクコンバータ12は、エンジン11の出力軸と、トランスミッション13の入力軸とに接続されて、エンジン11の駆動力の一部をトランスミッション13に伝達する。
トランスミッション13は、トルクコンバータ12を介して伝達されたエンジン11の駆動力を変速する。そして、トランスミッション13は、変速した駆動力をドライブシャフト及びアクスルを介して駆動輪(前輪103L、103R及び後輪106L、106R)に伝達する。
また、トランスミッション13は、ホイールローダ100を前進させる向きに駆動輪を回転させる前進状態と、ホイールローダ100を後退させる向きに駆動輪を回転させる後退状態とに切換可能に構成されている。さらに、トランスミッション13は、エンジン11の駆動力を駆動輪に伝達する伝達状態と、駆動輪への伝達を遮断する遮断状態とに切換可能なクラッチ(図示省略)を備える。
ブレーキ14は、前輪103L、103R及び後輪106L、106Rの回転を制動する。ブレーキ14は、前輪103L、103R及び後輪106L、106Rそれぞれを制動するために、4箇所に設けられている。ブレーキ14は、例えば、各駆動輪と一体回転するブレーキディスク(図示省略)を、一対のブレーキシュー(図示省略)で挟持することによって、駆動輪の回転を制動する。ブレーキシューは、ブレーキポンプ16から作動油の供給を受けてブレーキディスクを挟持する。
油圧ポンプ15は、可変容量型の油圧ポンプであって、エンジン11の出力軸に接続されている。油圧ポンプ15は、エンジン11の駆動力が伝達されて、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を油圧回路30に圧送する。油圧ポンプ18から出力された作動油は、リフトアームシリンダ108L、108R、バケットシリンダ109、及びステアリングシリンダ112L、112Rに供給される。
ブレーキポンプ16は、可変容量型の油圧ポンプであって、エンジン11の出力軸に接続されている。ブレーキポンプ16は、エンジン11の駆動力が伝達されて、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油をアキュームレータ17に圧送する。アキュームレータ17は、ブレーキポンプ16から出力された作動油を蓄圧し、ブレーキペダル23の操作或いは制御装置40の制御に従って、油圧回路30に出力する。アキュームレータ17から出力された作動油は、ブレーキ14に供給される。
操作装置20は、ホイールローダ100を動作させるオペレータの操作を受け付ける。そして、操作装置20は、オペレータの操作に応じたパイロット圧油を油圧回路30に出力し、オペレータの操作に応じた操作信号を制御装置40に出力する。操作装置20は、例えば、アクセルペダル21と、前後進指示スイッチ22と、ブレーキペダル23と、リフトアームレバー24と、バケットレバー25と、ステアリングホイール26とを含む。
アクセルペダル21は、エンジン11の回転数を調整(増減)するオペレータの操作を受け付ける。より詳細には、アクセルペダル21の踏込量が多いほどエンジン11の回転数が高くなり、踏込量が少ないほどエンジン11の回転数が低くなる。そして、アクセルペダル21は、踏込量を示す操作信号を制御装置40に出力する。
前後進指示スイッチ22は、ホイールローダ100の進行方向を指示するオペレータの操作を受け付けるオルタネートスイッチである。より詳細には、前後進指示スイッチ22を前進位置にすると、トランスミッション13が前進状態に切り換えられる。また、前後進指示スイッチ22を後退位置にすると、トランスミッション13が後退状態に切り換えられる。さらに前後進指示スイッチ22をニュートラル位置にすると、トランスミッション13のクラッチが遮断状態に切り換えられる。そして、前後進指示スイッチ22は、現在位置を示す操作信号を制御装置40に出力する。
ブレーキペダル23は、ブレーキ14の制動力を調整(増減)するオペレータの操作を受け付ける。より詳細には、ブレーキペダル23の踏込量が多いほどブレーキ14の制動力が大きくなり、踏込量が少ないほどブレーキ14の制動力が小さくなる。そして、ブレーキペダル23は、踏込量に対応するパイロット圧油を油圧回路30に出力すると共に、踏込量を示す操作信号を制御装置40に出力する。
リフトアームレバー24は、リフトアームシリンダ108L、108Rを伸縮させるオペレータの操作を受け付ける。より詳細には、リフトアームレバー24が第1方向に操作されるとリフトアームシリンダ108L、108Rが伸長し、第1方向と反対の第2方向に操作されるとリフトアームシリンダ108L、108Rが縮退する。そして、リフトアームレバー24は、操作方向に応じたパイロット圧油を油圧回路30に出力する。
バケットレバー25は、バケットシリンダ109を伸縮させるオペレータの操作を受け付ける。より詳細には、バケットレバー25が第3方向に操作されるとバケットシリンダ109が伸長し、第3方向と反対の第4方向に操作されるとバケットシリンダ109が縮退する。そして、バケットレバー25は、操作方向に応じたパイロット圧油を油圧回路30に出力する。
ステアリングホイール26は、ステアリングシリンダ112L、112Rを伸縮させるオペレータの操作を受け付ける。より詳細には、ステアリングホイール26を右回転させると、ステアリングシリンダ112Lが伸長し、ステアリングシリンダ112Rが縮退する。一方、ステアリングホイール26を左回転させると、ステアリングシリンダ112Lが縮退し、ステアリングシリンダ112Rが伸長する。そして、ステアリングホイール26は、回転方向に応じたパイロット圧油を油圧回路30に出力する。
油圧回路30上では、操作装置20から出力されるパイロット圧油、或いは制御装置40から出力される制御信号に従って、油圧ポンプ15、ブレーキポンプ16、及びアキュームレータ17から吐出される作動油が、油圧アクチュエータ(ブレーキ14、リフトアームシリンダ108L、108R、バケットシリンダ109、ステアリングシリンダ112L、112R)に供給される。油圧回路30は、例えば、作業機制御油圧回路31と、ステア制御油圧回路32と、ブレーキ制御油圧回路33とを含む。
作業機制御油圧回路31上では、リフトアームレバー24及びバケットレバー25から出力されるパイロット圧油に基づいて、油圧ポンプ15から吐出される作動油が、リフトアームシリンダ108L、108R及びバケットシリンダ109に供給される。作業機制御油圧回路31は、例えば、油圧ポンプ15からリフトアームシリンダ108L、108R及びバケットシリンダ109に至る作動油の流路に設けられて、パイロット圧油によって作動油の供給方向を切換可能な方向切換弁を備える。
ステア制御油圧回路32上では、ステアリングホイール26から出力されるパイロット圧油に基づいて、油圧ポンプ15から吐出される作動油が、ステアリングシリンダ112L、112Rに供給される。ステア制御油圧回路32は、例えば、油圧ポンプ15からステアリングシリンダ112L、112Rに至る作動油の流路に設けられて、パイロット圧油によって作動油の供給方向を切換可能な方向切換弁を備える。
なお、油圧ポンプ15から出力される作動油の単位時間当たりの流量は、エンジン11の回転数が高いほど多くなる。そのため、アクセルペダル21を踏み込んでエンジン11の回転数を増加させるほど、リフトアームシリンダ108L、108R、バケットシリンダ109、及びステアリングシリンダ112L、112Rの伸縮速度が速くなる。
ブレーキ制御油圧回路33上では、ブレーキペダル23から出力されるパイロット圧油に基づいて、ブレーキポンプ16或いはアキュームレータ17から吐出される作動油が、ブレーキ14に供給される。ブレーキ制御油圧回路33は、例えば、ブレーキポンプ16或いはアキュームレータ17からブレーキ14に至る作動油の流路に設けられて、パイロット圧油によって作動油の供給量を切換可能な方向切換弁を備える。
また、ブレーキ制御油圧回路33上では、制御装置40から出力される制御信号に基づいて、ブレーキポンプ16或いはアキュームレータ17から吐出される作動油が、ブレーキ14に供給される。ブレーキ制御油圧回路33は、例えば、ブレーキポンプ16或いはアキュームレータ17からブレーキ14に至る作動油の流路に設けられて、制御信号(制御電圧)によって開閉する電磁比例弁を備える。
すなわち、ブレーキ制御油圧回路33上では、ブレーキペダル23から出力されるパイロット圧油と、制御装置40から出力される制御信号とに基づいて、ブレーキ14の制動力が制御される。そのため、パイロット圧油と制御信号とが同時に入力されると、ブレーキ制御油圧回路33上では、大きな制動力を示す方に基づいて、ブレーキ14の制動力が制御される仕組みとなっている。
制御装置40は、操作装置20から出力される操作信号、及び後述する各種センサから出力される検出信号に基づいて、ホイールローダ100の動作を制御する。制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備える。制御装置40は、ROMに格納されたプログラムコードをCPUが読み出して実行することによって、後述する各機能ブロックが実現される。RAMは、CPUがプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
但し、制御装置40の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
制御装置40は、例えば、エンジンコントローラ41と、T/Mコントローラ42と、車体コントローラ43とを備える。一例として、エンジンコントローラ41、T/Mコントローラ42、及び車体コントローラ43は、各々が独立したハードウェアであって、CAN(Controller Area Network)によって相互通信可能に接続されていてもよい。他の例として、エンジンコントローラ41、T/Mコントローラ42、及び車体コントローラ43それぞれは、ROMに格納された複数のプログラムの1つに対応してもよい。
エンジンコントローラ41は、アクセルペダル21の踏込量に応じて、エンジン11の回転数を増減させる。T/Mコントローラ42は、前後進指示スイッチ22に位置に応じて、トランスミッション13の状態(前進状態/後退状態、伝達状態/遮断状態)を切り換える。また、T/Mコントローラ42は、ブレーキペダル23の踏込量が閾値を超えた場合に、トランスミッション13を遮断状態に切り換える。
図13は、車体コントローラ43の機能ブロック図である。車体コントローラ43は、積荷荷重センサ51、リフトアーム角度センサ52、車速センサ53、ライダー114L、114Rから出力される検出信号と、アクセルペダル21及び前後進指示スイッチ22から出力される操作信号とに基づいて、ブレーキ制御油圧回路33、ブザー54、及びT/Mコントローラ42の動作を制御する。
積荷荷重センサ51は、バケット102に収容された積荷の荷重(以下、「積荷荷重」と表記する。)を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置40に出力する。一例として、積荷荷重センサ51は、例えば、バケットシリンダ109の圧力に基づいて、積荷荷重を検出する。他の例として、積荷荷重センサ51は、積荷を収容したことに起因するリフトアーム101L、101Rの歪に基づいて、積荷荷重を検出するロードセルであってもよい。
リフトアーム角度センサ52は、水平面に対するリフトアーム101L、101Rのなす角(以下、「起伏角度」と表記する。)を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置40に出力する。リフトアーム角度センサ52は、例えば、リフトアームシリンダ108L、108Rの長さに基づいて、起伏角度を検出する。
車速センサ53は、ホイールローダ100の走行速度(以下、「車速V」と表記する。)を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置40に出力する。車速センサ53は、例えば、ドライブシャフトの回転数に基づいて、ホイールローダ100の車速Vを検出する。
ブザー54は、キャブ105に設置されている。ブザー54は、車体コントローラ43の制御に従って作動(鳴動)することによって、キャブ105に搭乗するオペレータに注意を促す報知装置の一例である。但し、報知装置の具体例はブザー54に限定されず、文字或いは画像を表示するディスプレイ、ガイド音声を出力するスピーカ、点灯(点滅)するLEDランプ等であってもよい。
車体コントローラ43は、ホイールローダ100が転倒しない制動力でブレーキ14を作動させることによって、ライダー114L、114Rで検出した障害物に接触する前に、ホイールローダ100を停止させる処理を実行する。車体コントローラ43は、例えば、目標減速度算出部44と、目標停止距離算出部45と、目標制動距離算出部46と、システム作動判定部47と、制御実行判定部48と、ブレーキ制御部49とを主に備える。
目標減速度算出部44は、積荷荷重センサ51によって検出された積荷荷重と、リフトアーム角度センサ52によって検出された起伏角度とに基づいて、目標減速度aを算出する。目標減速度aは、ホイールローダ100を安全に停止させるための減速度を指す。換言すれば、目標減速度aは、ホイールローダ100が前輪103L、103Rを支点として前方に転倒しないブレーキ14の制動力を指す。
図1に示すように、バケット102の重心位置mと、前輪103L、103Rの回転中心Oとの距離をl、フロント作業機を除くホイールローダ100の重心位置Mと回転中心Oとの距離をLと定義する。また、水平線に対する線分OMのなす角をα、水平線に対する線分Omのなす角をβと定義する。さらに、重心位置mにおける質量をm、重心位置Mにおける質量をMと定義する。ここで、距離L、角度α、質量Mは、ホイールローダ100の設計時に定まる固定値である。一方、距離L及び角度βは起伏角度に基づいて算出され、質量Mは積荷荷重に基づいて算出される。そして、重心位置m、Mに作用する重力加速度をgとすると、目標減速度aは、ホイールローダ100の減速時に重心位置m、Mに作用する慣性の大きさに相当する。
式1は、ホイールローダ100が水平面上を走行している場合において、回転中心Oにおける左回りのモーメント(左辺)と、右回りのモーメント(右辺)とを示している。そして、式1に示すように、左回りのモーメントが右回りのモーメントより小さければ、ホイールローダ100が前方に転倒することはない。なお、ホイールローダ100が傾斜面上を走行しているときは、ホイールローダ100の傾斜角を考慮する必要があるが、ここでは詳細を省略する。
そして、式1を変形すると、ホイールローダ100が前方に転倒しない目標減速度aは、式2で表される。より詳細には、目標減速度算出部44は、式2の右辺で求められる値に安全率(0<安全率<1)を乗じて、目標減速度aを算出する。そして、目標減速度算出部44は、算出した目標減速度aを、目標制動距離算出部46及びブレーキ制御部49に出力する。
目標停止距離算出部45は、リフトアーム角度センサ52によって検出された起伏角度に基づいて、目標停止距離dを算出する。目標停止距離dは、バケット102或いは前輪103L、103Rが障害物と接触しないために必要な距離を指す。目標停止距離dは、例えば図5及び図8に示すように、ライダー114L、114Rの設置位置からホイールローダ100の前方に向かう距離を指す。
ここで、図5に示すように、バケット102が低い位置にあるとき、ホイールローダ100の構成部品のなかで障害物に最初に接触するのは、バケット102の前端となる。そのため、このときの目標停止距離d1は、ライダー114L、114Rの設置位置からバケット102の前端までの距離より長い必要がある。
一方、図8に示すように、バケット102がダンプトラックBの荷台より高い位置にあるとき、ホイールローダ100の構成部品の中で障害物に最初に接触するのは、前輪103L、103Rの前端となる。そのため、このときの目標停止距離d2は、ライダー114L、114Rの設置位置から前輪103L、103Rの前端までの距離より長い必要がある。すなわち、目標停止距離d2は、目標停止距離d1より短い。
そこで、目標停止距離算出部45は、図14に示す関係に基づいて、バケット高さHに対応する目標停止距離dを算出する。図14は、バケット高さHと目標停止距離dとの関係を示す図である。図14に示す関係は、記憶装置(ROM或いはRAM)に予め記憶されている。また、現在のバケット高さHは、リフトアーム101L、101Rの起伏角度に基づいて算出される。
そして、目標停止距離算出部45は、現在のバケット高さHが閾値高さHth未満のときに、d1を目標停止距離dとして算出する。一方、目標停止距離算出部45は、現在のバケット高さHが閾値高さHth以上のときに、d1より短いd2を目標停止距離dとして算出する。そして、目標停止距離算出部45は、算出した目標停止距離dを、目標制動距離算出部46に出力する。
なお、閾値高さHthは、ダンプトラックBの荷台の高さに相当する。荷台の高さは、ダンプトラックBの大きさ(例えば、4t/10t)によって異なる。そこで、閾値高さHthは、作業現場で使用するダンプトラックBに応じて変更可能であってもよい。一例として、閾値高さHthは、操作装置20を通じてオペレータが変更可能であってもよい。他の例として、ライダー114L、114Rから出力される検出信号に基づいて、目標停止距離算出部45が閾値高さHthを決定してもよい。
目標制動距離算出部46は、目標減速度算出部44から出力される目標減速度aと、目標停止距離算出部45から出力される目標停止距離dと、車速センサ53から出力されるホイールローダ100の車速Vとに基づいて、目標制動距離Y、警報作動距離Y1、駆動力遮断距離Y2を算出する。そして、目標制動距離算出部46は、算出した目標制動距離Y、警報作動距離Y1、及び駆動力遮断距離Y2を、制御実行判定部48に出力する。図15は、車速Vと、各距離Y、Y1、Y2との関係を示す図である。
目標制動距離Yは、目標減速度aに相当する制動力でブレーキ14を作動させて、ホイールローダ100を障害物に接触させずに停止させるために、ブレーキ14の作動を開始するときの障害物との距離を指す。目標制動距離算出部46は、目標減速度a、目標停止距離d、車速Vを下記式3に代入して、目標制動距離Yを算出する。
警報作動距離Y1は、制御装置40がブレーキ14を作動させることを、ブザー54によってオペレータに報知するときの障害物との距離を指す。図15に示すように、警報作動距離Y1は、目標制動距離Yより長い。また、警報作動距離Y1は、車速Vが速いほど、目標制動距離Yとの差が大きくなる。目標制動距離算出部46は、目標制動距離Y、車速V、及び警報開始時間t1を式4に代入して、警報作動距離Y1を算出する。
警報開始時間t1は、ブザー54を作動させてからブレーキ14を作動させるまでのタイムラグを指す。警報開始時間t1は、例えば、ブザー54の鳴動を聞いたオペレータがブレーキペダル23を踏み込むまでに必要な予め定められた値であって、例えば0.6~1.0秒、より好ましくは0.7~0.9秒程度に設定される。
駆動力遮断距離Y2は、トランスミッション13のクラッチを遮断状態に切り換えるときの障害物との距離を指す。図15に示すように、駆動力遮断距離Y2は、目標制動距離Yより長い。また、駆動力遮断距離Y2は、車速Vが速いほど、目標制動距離Yとの差が大きくなる。目標制動距離算出部46は、目標制動距離Y、車速V、及び駆動力遮断開始時間t2を式5に代入して、駆動力遮断距離Y2を算出する。
駆動力遮断開始時間t2は、クラッチを遮断状態に切り換えてからブレーキ14を作動させるまでのタイムラグを指す。駆動力遮断開始時間t2は、T/Mコントローラ42に制御信号を出力してから実際にクラッチが遮断状態になるまでに必要な予め定められた時間であって、例えば1.0~1.2秒、より好ましくは1.1秒程度に設定される。なお、本実施形態では、駆動力遮断開始時間t2を警報開始時間t1より長くしているが、駆動力遮断開始時間t2は、警報開始時間t1より短くてもよい。
システム作動判定部47は、アクセルペダル21の踏込量と、前後進指示スイッチ22の現在位置とに基づいて、図16に示す制御実行判定部48の処理を実行するか否かを判定する。そして、システム作動判定部47は、判定結果(作動判定/非作動判定)を制御実行判定部48に出力する。
本実施形態に係るシステム作動判定部47は、前後進指示スイッチ22が前進位置で、且つアクセルペダル21の踏込量が閾値以上の場合に、制御実行判定部48を作動させると判定する(作動判定)。一方、システム作動判定部47は、前後進指示スイッチ22が後退位置或いはニュートラル位置であるか、アクセルペダル21の踏込量が閾値未満の場合に、制御実行判定部48を作動させない判定する(非作動判定)。
なお、システム作動判定部47の判定方法は、前述の例に限定されない。他の例として、システム作動判定部47は、リフトアーム角度センサ52よって検出された起伏角度が閾値角度以上(すなわち、バケット102の高さが閾値以上)の場合に、制御実行判定部48を作動させると判定してもよい。また、前後進指示スイッチ22の位置、アクセルペダル21の踏込量、及びリフトアーム101L、101Rの起伏角度の条件は、単独で用いてもよいし、任意の組み合わせで組み合わせてもよい。
制御実行判定部48は、図16に示す処理を実行する。図16は、制御実行判定部48の処理を示すフローチャートである。制御実行判定部48は、システム作動判定部47の判定結果と、目標制動距離算出部46によって算出された各距離Y、Y1、Y2と、車速センサ53によって検出された車速Vと、ライダー114L、114Rによって検出された離間距離Dとに基づいて、ブレーキ制御部49、ブザー54、及びT/Mコントローラ42を制御する。より詳細には、制御実行判定部48は、ブレーキ判定部48aと、警報判定部48bと、駆動力遮断判定部48cとを含む。
まず、制御実行判定部48は、システム作動判定部47の判定結果を確認する(S1)。そして、制御実行判定部48は、システム作動判定部47の判定結果が「作動判定」の場合に(S1:Yes)、ステップS2以降の処理に進む。一方、制御実行判定部48は、システム作動判定部47の判定結果が「非作動判定」の場合に(S1:No)、後述する駆動力遮断信号(S9)、警報作動信号(S10)、及びブレーキ作動信号(S11)を出力せずに、図16の処理を終了する。
システム作動判定部47の判定結果が「作動判定」の場合(S1:Yes)、駆動力遮断判定部48cは、ライダー114L、114Rによって検出された離間距離Dと、目標制動距離算出部46によって算出された駆動力遮断距離Y2とを比較する(S2)。なお、駆動力遮断判定部48cは、ライダー114L、114Rそれぞれで検出された離間距離Dのうち、短い方と駆動力遮断距離Y2とを比較すればよい。後述するステップS4、S6についても同様である。
そして、駆動力遮断判定部48cは、離間距離Dが駆動力遮断距離Y2未満の場合に(S2:Yes)、T/Mコントローラ42に駆動力遮断信号を出力して(S3)、ステップS4以降の処理に進む。一方、駆動力遮断判定部48cは、離間距離Dが駆動力遮断距離Y2以上の場合に(S2:No)、駆動力遮断信号(S9)、警報作動信号(S10)、及びブレーキ作動信号(S11)を出力せずに、図16の処理を終了する。
駆動力遮断信号は、トランスミッション13のクラッチを遮断状態に切り換えることを指示する信号である。すなわち、駆動力遮断信号を受信したT/Mコントローラ42は、トランスミッション13のクラッチを遮断状態に切り換える。
次に、警報判定部48bは、ライダー114L、114Rによって検出された離間距離Dと、目標制動距離算出部46によって算出された警報作動距離Y1とを比較する(S4)。そして、警報判定部48bは、離間距離Dが警報作動距離Y1未満の場合に(S4:Yes)、ブザー54に警報作動信号を出力して(S5)、ステップS6以降の処理に進む。一方、警報判定部48bは、離間距離Dが警報作動距離Y1以上の場合に(S4:No)、警報作動信号(S10)、及びブレーキ作動信号(S11)を出力せずに、図16の処理を終了する。
警報作動信号は、ブザー54の作動を指示する信号である。すなわち、警報作動信号を受信したブザー54は、制御装置40が自動的にブレーキ14を作動させることを、鳴動することによってオペレータに報知する。
次に、ブレーキ判定部48aは、ライダー114L、114Rによって検出された離間距離Dと、目標制動距離算出部46によって算出された目標制動距離Yとを比較する(S6)。そして、ブレーキ判定部48aは、離間距離Dが目標制動距離Y未満の場合に(S6:Yes)、ブレーキ制御部49にブレーキ作動信号を出力して(S7)、ステップS8以降の処理に進む。一方、ブレーキ判定部48aは、離間距離Dが目標制動距離Y以上の場合に(S6:No)、ブレーキ作動信号を出力せずに(S11)、図16の処理を終了する。
ブレーキ作動信号は、目標減速度算出部44によって算出された目標減速度aに相当する制動力で、ブレーキ14を作動させることを指示する信号である。すなわち、ブレーキ作動信号を受信したブレーキ制御部49は、目標減速度算出部44によって算出された目標減速度aに相当する制動力(例えば、作動油の流量)を算出する。そして、ブレーキ制御部49は、算出した制動力をブレーキ14が発揮するように、ブレーキ制御油圧回路33に制御信号を出力する。より詳細には、ブレーキ制御油圧回路33の電磁比例弁に、算出した制動力に応じた制御電圧を印加すればよい。
次に、ブレーキ判定部48aは、ブレーキ14の作動条件を満たすか否かを判定する(S8)。一例として、ブレーキ判定部48aは、ホイールローダ100が停止(車速V=0)するまで、ブレーキ14の作動を継続してもよい。他の例として、ブレーキ判定部48aは、アクセルペダル21の踏込量が閾値未満になるまで、ブレーキ14の作動を継続してもよい。さらに他の例として、ブレーキ判定部48aは、ブレーキペダル23の踏込量が閾値以上になるまで、ブレーキ14の作動を継続してもよい。
ブレーキ判定部48aは、ブレーキ14の作動条件を満たしている間(S8:Yes)、ブレーキ作動信号の出力を継続する(S7)。そして、ブレーキ判定部48aは、ブレーキ14の作動条件を満たさないと判定した場合に(S8:No)、ブレーキ作動信号の出力を停止して(S11)、図16の処理を終了する。また、ブレーキ14の作動条件を満たさないと判定した場合に(S8:No)、駆動力遮断判定部48cは駆動力遮断信号の出力を停止し、警報判定部48bは警報作動信号の出力を停止する。
そして、車体コントローラ43に含まれる各処理部44~49は、前述した処理を所定の時間間隔(例えば、10msec)で繰り返し実行する。そのため、ホイールローダ100がダンプトラックBに近づく過程で、まずトランスミッション13のクラッチが遮断状態となり、次にブザー54が鳴動して、最後にブレーキ14が作動して、ダンプトラックBに接触する前にホイールローダ100が停止する。
上記の実施形態によれば、ライダー114L、114Rを一対のリフトアーム101L、101Rより左右方向の外側に配置したので、バケット102の上下方向の位置に拘わらず、ホイールローダ100の前方の障害物を検出することができる。
なお、前照灯113L、113Rは、キャブ105内のオペレータの視界を確保するために、バケット102の上下方向の位置に拘わらず、ホイールローダ100の前方を照らせる位置に配置される。そこで、ライダー114L、114Rを前照灯113L、113Rに取り付けることによって、ホイールローダ100の前方の障害物を適切に検出することができる。
また、ライダー114L、114Rは、ホイールローダ100の前方よりやや外側を向いているのが望ましい。すなわち、ライダー114Lは左前方向を向き、ライダー114Rは右前方向を向いているのが望ましい。これにより、バケット102によって遮られるレーザパルス光をさらに少なくすることができる。
また、ライダー114L、114Rの設置位置は、前照灯113L、113Rに限定されない。他の例として、ライダー114L、114Rは、前輪103L、103Rそれぞれを覆うフェンダーの上面に取り付けられてもよい。
また、上記の実施形態によれば、転倒の心配がない目標減速度aでホイールローダ100を減速させるために、目標制動距離Yで制御装置40が自動的にブレーキ14を作動させる。その結果、ホイールローダ100を転倒させることなく、障害物との接触を回避することができる。
また、上記の実施形態によれば、制御装置40がブレーキ14を作動させるのに先立って、ブザー54が鳴動する。これにより、障害物との接触の可能性をオペレータに認識させて、ブレーキペダル23の操作を促すことができる。また、制御装置40によるブレーキ14の作動を予めオペレータに通知することによって、意図せずにブレーキ14が作動することによるパニックを防止することができる。
さらに、上記の実施形態によれば、制御装置40がブレーキ14を作動させるのに先立って、トランスミッション13のクラッチを遮断状態にするので、小さな制動力でもホイールローダ100を短距離で停止させることができる。その結果、ホイールローダ100の転倒防止と、障害物との接触回避とを両立することができる。
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。