以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
(鉱山の採掘現場)
図1は、本実施形態に係る運搬車両が稼働する鉱山の採掘現場の一例を示す模式図である。運搬車両は、車両2及び車両2に設けられたベッセル3を有するダンプトラック1である。ダンプトラック1は、ベッセル3に積載された積荷を運搬する。積荷は、採掘された砕石、土砂、及び鉱石の少なくとも一つを含む。
鉱山の採掘現場において、積込場LPA、排土場DPA、及び積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に通じる走行路HLが設けられる。ダンプトラック1は、積込場LPA、排土場DPA、及び走行路HLの少なくとも一部を走行可能である。ダンプトラック1は、走行路HLを走行して、積込場LPAと排土場DPAとの間を移動可能である。なお、鉱山の採掘現場における走行路HLは、未舗装路であることが多い。
積込場LPAにおいて、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMにより、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMとして油圧ショベルやホイールローダが用いられる。積荷が積み込まれたダンプトラック1は、積込場LPAから排土場DPAまで走行路HLを走行する。排土場DPAにおいて、ベッセル3から積荷が排出される。積荷が排出されたダンプトラック1は、排土場DPAから積込場LPAまで走行路HLを走行する。なお、ダンプトラック1は、排土場DPAから所定の待機場まで走行してもよい。
(ダンプトラック)
次に、ダンプトラック1について説明する。図2は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す斜視図である。
ダンプトラック1は、キャブ(運転室)8に搭乗した運転者(オペレータ)WMに操作される有人ダンプトラックである。ダンプトラック1を、オフハイウェイトラック、と称してもよい。ダンプトラック1は、リジッド式のダンプトラック1である。
ダンプトラック1は、前部2F及び後部2Rを有する車両2と、車両2に設けられるベッセル3とを備える。車両2は、走行装置4と、少なくとも一部が走行装置4の上方に配置される車体5とを有する。ベッセル3は、車体5に支持される。
走行装置4は、車輪6と、車輪6を回転可能に支持する車軸7とを備える。車輪6は、車軸7に支持されるホイールと、ホイールに支持されるタイヤとを含む。車輪6は、前輪6Fと後輪6Rとを含む。前輪6Fは、左右それぞれ1つのタイヤを備える。後輪6Rは、左右それぞれ2つのタイヤを備える。したがって、走行装置4は、後輪6Rの全体で4つのタイヤを備える。車軸7は、前輪6Fを回転可能に支持する車軸7Fと、後輪6Rを回転可能に支持する車軸7Rとを含む。
車体5は、ロアデッキ5Aと、アッパデッキ5Bと、ロアデッキ5Aの下方に配置されたラダー5Cと、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを結ぶように配置されたラダー5Dとを有する。ロアデッキ5Aは、車体5の前部の下部に配置される。アッパデッキ5Bは、車体5の前部において、ロアデッキ5Aの上方に配置される。
車両2は、キャブ8を有する。キャブ8は、アッパデッキ5B上に配置される。オペレータWMは、キャブ8に搭乗して、ダンプトラック1を操作する。オペレータWMは、ラダー5Cを使って、キャブ8に対して乗降可能である。オペレータWMは、ラダー5Dを使って、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを移動可能である。
ベッセル3は、積荷が積載される部材である。ベッセル3は、昇降装置により、車両2に対して上下に昇降可能である。昇降装置は、ベッセル3と車体5との間に配置された油圧シリンダ(ホイストシリンダ)のようなアクチュエータを含む。昇降装置によりベッセル3が上昇することによって、ベッセル3の積荷が排出される。
(キャブ)
次に、キャブ8について説明する。図3は、本実施形態に係るキャブ8の一例を示す図である。キャブ8には、キャブ8に搭乗したオペレータWMにより操作される複数の操作装置が配置されている。図3に示すように、キャブ8には、運転席16と、トレーナー席19と、出力操作部24と、ブレーキ操作部25と、走行方向操作部15と、速度段操作部18と、リターダ操作部17と、フラットパネルディスプレイのような表示装置20と、警報を発生する警報装置21とが設けられている。オペレータWMにより操作される操作装置は、出力操作部24、ブレーキ操作部25、走行方向操作部15、速度段操作部18、及びリターダ操作部17の少なくとも一つを含む。
(衝突被害軽減システム)
次に、本実施形態に係る衝突被害軽減システム300Sについて説明する。本実施形態において、ダンプトラック1は、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行可能な衝突被害軽減システム300Sを備えている。
図4及び図5のそれぞれは、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す模式図である。ダンプトラック1は、ダンプトラック1(車両2)の走行状態を検出する走行状態検出装置10と、ベッセル3の積荷の積載状態を検出する積載状態検出装置11と、ダンプトラック1(車両2)の前方の物体を検出する物体検出装置12と、ダンプトラック1を制御する制御装置30とを備えている。衝突被害軽減システム300Sは、物体検出装置12を含む。走行状態検出装置10の検出結果、積載状態検出装置11の検出結果、及び物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、それらの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が物体に衝突することによる被害を軽減するための処理を実行する。
ダンプトラック1の走行状態は、ダンプトラック1の走行速度、ダンプトラック1の走行方向(前部2F又は前輪6Fの向き)、及びダンプトラック1の進行方向(前進又は後進)の少なくとも一つを含む。
ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一つを含む。
ダンプトラック1は、動力を発生する動力発生装置22と、少なくとも一部が走行装置4に接続されるサスペンションシリンダ9と、走行装置4を停止させるためのブレーキ装置13と、変速装置80と、を備えている。なお、変速装置80は、後述する電気駆動方式によるダンプトラック1の場合はなくてもよい。
走行装置4は、動力発生装置22が発生した動力により駆動する。動力発生装置22は、電気駆動方式により走行装置4を駆動する。動力発生装置22は、ディーゼルエンジンのような内燃機関と、内燃機関の動力により作動する発電機と、発電機が発生した電力により作動する電動機とを有する。電動機で発生した動力が走行装置4の車輪6に伝達される。これにより、走行装置4が駆動される。車両2に設けられた動力発生装置22の動力によって、ダンプトラック1は自走する。
なお、動力発生装置22は、機械駆動方式により走行装置4を駆動してもよい。例えば、内燃機関で発生した動力が、動力伝達装置を介して走行装置4の車輪6に伝達されてもよい。本実施形態においては、機械駆動方式によるダンプトラック1を例にして説明する。
走行装置4は、ダンプトラック1の走行方向(前部2Fの向き)を変えるための操舵装置14を備えている。操舵装置14は、前輪6Fの向きを変えることによって、ダンプトラック1の走行方向を変える。
動力発生装置22は、キャブ8に設けられた出力操作部24により操作される。出力操作部24は、アクセルペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、出力操作部24を操作して、動力発生装置22の出力を調整可能である。動力発生装置22の出力が調整されることにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
ブレーキ装置13は、キャブ8に設けられたブレーキ操作部25により操作される。ブレーキ操作部25は、ブレーキペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、ブレーキ操作部25を操作して、ブレーキ装置13を作動可能である。ブレーキ装置13が作動することにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
操舵装置14は、キャブ8に設けられた走行方向操作部15により操作される。走行方向操作部15は、ハンドルのようなハンドル操作部を含む。オペレータWMは、走行方向操作部15を操作して、操舵装置14を作動可能である。操舵装置14が作動することにより、ダンプトラック1の走行方向が調整される。
変速装置80は、例えばトランスミッションを含み、キャブ8に設けられた速度段操作部18により操作される。速度段操作部18は、シフトレバーのようなレバー操作部を含む。オペレータWMは、速度段操作部18を操作して、走行装置4の進行方向を変更可能である。速度段操作部18が操作されることにより、変速装置80は、ダンプトラック1を前進又は後進するために車輪6の回転方向を切り替える。
サスペンションシリンダ9は、車輪6と車体5との間に配置される。サスペンションシリンダ9は、前輪6Fと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Fと、後輪6Rと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Rとを含む。つまり、サスペンションシリンダ9は、前後左右に配置された車輪6のそれぞれに設けられている。車体5及び積荷の重量に基づく負荷が、サスペンションシリンダ9を介して車輪6に作用する。
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行速度を検出する走行速度検出装置10Aと、ダンプトラック1の走行方向を検出する走行方向検出装置10Bと、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する進行方向検出装置10Cとを含む。
走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1(車両2)の走行速度を検出する。走行速度検出装置10Aは、車輪6(車軸7)の回転速度を検出する回転速度センサを含む。車輪6の回転速度とダンプトラック1の走行速度とは相関する。回転速度センサの検出値(回転速度値)が、ダンプトラック1の走行速度値に変換される。走行速度検出装置10Aは、回転速度センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1の走行速度を検出する。
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1(車両2)の走行方向を検出する。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの車両2の前部(前面)2Fの向きを含む。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの前輪6Fの向きを含む。走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操舵角を検出するステアリングセンサを含む。例えば、ステアリングセンサとしてロータリーエンコーダを用いることができる。走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操作量を検出して、操舵角を検出する。走行方向検出装置10Bは、ステアリングセンサを使って、ダンプトラック1の走行方向を検出する。なお、走行方向検出装置10Bは、走行方向操作部15の回転量あるいは操舵角を検出する回転量センサを含んでもよい。つまり、走行方向操作部15の操舵角とダンプトラック1の操舵装置14の操舵角とは相関する。
進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1(車両2)の進行方向を検出する。進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1が前進するか後進するかを検出する。ダンプトラック1の前進において、車両2の前部2Fが進行方向の前方側に位置する。ダンプトラック1の後進において、車両2の後部2Rが進行方向の前方側に位置する。進行方向検出装置10Cは、車輪6(車軸7)の回転方向を検出する回転方向センサを含む。進行方向検出装置10Cは、回転方向センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する。なお、進行方向検出装置10Cは、速度段操作部18の操作状態を検出するセンサを含んでもよい。
積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一つを検出する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の重量を検出する重量センサを含む。空荷状態のベッセル3の重量は、既知情報である。積載状態検出装置11は、重量センサの検出値と既知情報である空荷状態のベッセル3の重量値とに基づいて、ベッセル3に積み込まれた積荷の重量を求めることができる。すなわち、積載状態検出装置11は、検出値からベッセル3の重量値を減算することによって、ベッセル3に積載された積荷の重量を求めることができる。
本実施形態において、積載状態検出装置11の重量センサは、サスペンションシリンダ9の内部空間の作動油の圧力を検出する圧力センサを含む。圧力センサは、作動油の圧力を検出して、サスペンションシリンダ9に作用する負荷を検出する。サスペンションシリンダ9は、シリンダ部と、シリンダ部に対して相対移動可能なピストン部とを有する。シリンダ部とピストン部との間の内部空間に作動油が封入される。ベッセル3に積荷が積み込まれると、内部空間の作動油の圧力が高くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。ベッセル3から積荷が排出されると、内部空間の作動油の圧力が低くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。圧力センサは、その作動油の圧力を検出する。作動油の圧力と積荷の重量とは相関する。圧力センサの検出値(圧力値)が、積荷の重量値に変換される。積載状態検出装置11は、圧力センサ(重量センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を検出する。
本実施形態において、圧力センサは、複数のサスペンションシリンダ9のそれぞれに配置される。ダンプトラック1は、車輪6を4つ有する。それら4つの車輪6の各々に設けられたサスペンションシリンダ9のそれぞれに圧力センサが配置される。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサの検出値の合計値又は平均値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサのうち特定の圧力センサ(例えばサスペンションシリンダ9Rに配置された圧力センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。
なお、積載状態検出装置11の圧力センサ(重量センサ)の検出結果に基づいて、単位期間当たりにおけるダンプトラック1の積荷運搬量が管理されてもよい。例えば、圧力センサの検出結果に基づいて、1日間におけるダンプトラック1の積荷運搬量(仕事量)が、ダンプトラック1に搭載された記憶装置に記憶され管理されてもよい。
なお、積載状態検出装置11は、ベッセル3と車体5との間に配置された重量センサを用いてもよい。その重量センサは、ベッセル3と車体5との間に設けられたひずみゲージ式ロードセルを用いてもよい。積載状態検出装置11は、ベッセル3を持ち上げる油圧シリンダ(ホイストシリンダ)の油圧を検出する圧力センサを用いてもよい。
物体検出装置12は、ダンプトラック1(車両2)の前方に存在する物体を非接触で検出する。物体検出装置12は、レーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、電波(又は超音波)を発信して、物体で反射した電波(又は超音波)を受信して、前方に存在する物体の有無を検出可能である。また、レーダ装置は、物体の有無のみならず、物体との相対位置(相対距離及び方位)、及び物体との相対速度を検出可能である。なお、物体検出装置12が、レーザスキャナ及び3次元距離センサの少なくとも一つを含んでもよい。また、物体検出装置12を複数設けてもよい。
物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置される。本実施形態において、図2に示すように、物体検出装置12は、アッパデッキ5Bに配置される。なお、物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出できればよい。物体検出装置12は、ロアデッキ5Aに配置されてもよい。
なお、アッパデッキ5Bに物体検出装置12が設けられることにより、車輪6が接触する路面(地面)に凹凸があっても、物体検出装置12はその凹凸を物体として誤検出してしまうことが抑制される。なお、レーダ装置から電波が発射された場合、路面の凹凸で反射した電波の強度は、検出対象の物体で反射した電波の強度よりも小さい。レーダ装置は、物体で反射した電波を受信し、路面の凹凸で反射した電波を誤検出しないように、強度が大きい電波を受信し、強度が小さい電波をカットするフィルタ装置を備えてもよい。
図6は、本実施形態に係る物体検出装置12の一例を示す模式図である。図6に示すように、物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置されるレーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、車両2の前方に検出領域SLを有する。レーダ装置は、検出領域SLに配置されたダンプトラック1(車両2)の前方の物体を検出可能である。図6の斜線で示すように、検出領域SLは、射出部12Sから上下方向及び左右方向のそれぞれに放射状に拡がる。物体検出装置12は、検出領域SLに存在する物体を検出可能である。ダンプトラック1の前方方向に関して、物体検出装置12の検出領域SLの寸法はDmである。寸法Dmは、電波及び超音波の少なくとも一方を発信する物体検出装置12の射出部12Sと検出領域SLの先端部との距離である。
(制御システム)
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御システム300の一例について説明する。図7は、本実施形態に係る制御システム300の一例を示す機能ブロック図である。制御システム300は、衝突被害軽減システム300Sを含む。
図7に示すように、制御システム300は、ダンプトラック1を制御する制御装置30と、制御装置30と接続された車両制御装置29とを備えている。車両制御装置29は、ダンプトラック1の状態量を検出する状態量検出システム400と、ダンプトラック1の走行条件を調整する走行条件調整システム500とを有する。状態量検出システム400は、例えば、走行状態検出装置10及び積載状態検出装置11を含む。走行条件調整システム500は、例えば、動力発生装置22、ブレーキ装置13、走行装置4(操舵装置14)、及びリターダ28を含む。制御装置30に、物体検出装置12、表示装置20、及び警報装置21が接続される。
動力発生装置22に出力操作部24が接続される。ブレーキ装置13にブレーキ操作部25が接続される。操舵装置14に走行方向操作部15が接続される。変速装置80に速度段操作部18が接続される。リターダ28にリターダ操作部17が接続される。
ブレーキ装置13及びリターダ28のそれぞれは、車両2の走行装置4に対するブレーキ処理を実行可能な制動装置である。制動装置は、ブレーキ処理を実行して、ダンプトラック1を減速又は停止させる。本実施形態においては、ブレーキ装置13とリターダ28とは共通の制動装置を含む。オペレータWMによりブレーキ操作部25が操作されても、リターダ操作部17が操作されても、共通の制動装置が作動して、ダンプトラック1を制動することができる。ダンプトラック1が坂道を降りる場合、リターダ28は、一定速度でダンプトラック1が走行するように制動力を調整する。リターダ28は、補助ブレーキとして機能する。ダンプトラック1が坂道を降りる場合、オペレータWMによりリターダ操作部17が操作され、リターダ28が作動することにより、制動装置は所定の制動力を出す。また、リターダ28は、走行速度検出装置10Aにより検出されたダンプトラック1の走行速度に基づいて、制動装置の制動力を調整する。なお、リターダ28は、ブレーキ装置13とは異なる制動装置でもよい。リターダ28は、例えば流体式リターダ及び電磁式リターダの少なくとも一方を含む制動装置を有してもよい。
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)のような数値演算装置(プロセッサ)を含む。制御装置30は、物体検出装置12の検出結果に基づいてダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突の可能性を判断する衝突判断部31と、衝突の可能性の判断に用いられる時間情報を算出する演算部32と、衝突の可能性の判断に用いられる変数を設定する変数設定部33と、衝突の可能性の判断に用いられる情報を記憶する記憶部34と、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを出力する制御部35と、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体検出装置12の検出領域SLに特定検出領域SDを設定する特定検出領域設定部36と、特定検出領域SDを設定するか否かを判定する判定部37と、設定された特定検出領域SDを無効化する無効化部38と、を備えている。衝突判断部31は、物体検出装置31の検出結果に基づいて、特定検出領域SDに物体が存在するか否かを判断することによって、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突の可能性を判断する。制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを後述する処理システムに出力する。
記憶部34は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。衝突判断部31は、走行状態検出装置10の検出結果と、積載状態検出装置11の検出結果と、物体検出装置12の検出結果とに基づいて、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断する。
ダンプトラック1は、物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行可能な処理システム600を有する。処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための異なる処理を実行可能な複数の処理装置を有する。本実施形態において、処理システム600の処理装置は、例えば、ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21の少なくとも一つを含む。ブレーキ装置13、リターダ28、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、及び警報装置21は、衝突による被害を軽減するための異なる処理をそれぞれ実行可能である。処理システム600は、制御装置30に制御される。
ブレーキ装置13は、走行装置4に対するブレーキ処理(停止処理)を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減又はダンプトラック1の走行を停止させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
リターダ28は、走行装置4に対するブレーキ処理(停止処理)を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減又はダンプトラック1の走行を停止させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
動力発生装置22は、走行装置4に対する出力(駆動力)を低減する出力低減処理を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
操舵装置14は、制御部(走行方向制御部)35からの制御信号C3又は走行方向操作部15からの操作信号R3に基づいてダンプトラック1の走行方向変更処理を実行して、ダンプトラック1の進路上に物体が存在しないようにダンプトラック1の走行方向を変更する。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
表示装置20は、例えば、オペレータWMに対する注意喚起のための表示処理を実行することができる。表示装置20は、警告画像を表示してオペレータWMに警告を行うことができる。警告画像は、例えば前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の警告マークやメッセージの表示とすることができる。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作、例えば、出力操作部24、ブレーキ操作部25、リターダ操作部17、及び走行方向操作部15のいずれか一つに対しての操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
警報装置21は、オペレータWMに対する注意喚起のための警報発生処理を実行することができる。警報装置21は、例えばスピーカーやランプを用い、前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の音又は光を発してオペレータWMに警告することができる。警報装置21は、走行方向操作部15及び運転席16の少なくとも一方を振動させてオペレータWMに警告可能な振動発生装置を含んでもよい。警報装置21は、運転席16に搭乗しているオペレータWMを保護するためのシートベルトの締め付け力を変更してオペレータWMに警告可能なシートベルト調整装置を含んでもよい。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを、処理システム600(ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21の少なくとも一つ)に出力する。制御部35から制御信号Cが供給された処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行する。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(出力制御部)35は、出力低減処理が実行されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。動力発生装置22は、制御部35から供給された制御信号C1に基づいて出力を低減して、走行装置4に対する駆動力を低減させる。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(ブレーキ制御部)35は、ブレーキ処理が実行されるように、リターダ28に制御信号C4を出力する。リターダ28は、制御部35から供給された制御信号C4に基づいて作動する。ここで、ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(ブレーキ制御部)35は、ブレーキ装置13に制御信号C2を出力するようにしてもよい。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1の走行が停止され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(走行方向制御部)35は、走行方向変更処理が実行されるように、操舵装置14に制御信号C3を出力してもよい。操舵装置14は、制御部35から供給された制御信号C3に基づいて作動する。これにより、ダンプトラック1の進路上に物体が存在しないようにダンプトラック1の走行方向が変更され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(警報制御部)35は、警報発生処理が実行されるように、警報装置21に制御信号C6を出力してもよい。上述のように、警報装置21は、制御部35から供給された制御信号C6に基づいて作動する。警報装置21は、オペレータWMに注意喚起するための音又は光を発生する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(表示制御部)35は、上述のように、表示処理が実行されるように、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。表示装置20は、制御部35から供給された制御信号C5に基づいて作動する。表示装置20は、オペレータWMに注意喚起するための画像を表示する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作は、動力発生装置22の出力を低減させるための出力操作部24の操作、ブレーキ装置13を作動させるためのブレーキ操作部25の操作、リターダ28を作動させるためのリターダ操作部17の操作、及び操舵装置14によりダンプトラック1の走行方向を変更させるための走行方向操作部15の操作の少なくとも一つを含む。出力操作部24が操作されることにより、操作信号R1が生成される。出力操作部24により生成された操作信号R1に基づいて、動力発生装置22の出力が低減される。ブレーキ操作部25が操作されることにより、操作信号R2が生成される。ブレーキ操作部25により生成された操作信号R2に基づいて、ブレーキ装置13は作動し、ダンプトラック1は減速する。走行方向操作部15が操作されることにより、操作信号R3が生成される。走行方向操作部15により生成された操作信号R3に基づいて、操舵装置14は作動する。リターダ操作部17が操作されることにより、操作信号R4が生成される。リターダ操作部17により生成された操作信号R4に基づいて、リターダ28は作動し、ダンプトラック1は減速する。
動力発生装置22は、出力制御部35及び出力操作部24のそれぞれと接続される。出力操作部24は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、操作信号R1に基づく出力を発生する。出力制御部35は、動力発生装置22を制御するための制御信号C1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、制御信号C1に基づく出力を発生する。
リターダ28は、リターダ操作部17及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。リターダ操作部17は、オペレータWMによる操作に応じた操作信号R4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、操作信号R4に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28を制御するための制御信号C4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。
ブレーキ装置13は、ブレーキ操作部25及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。ブレーキ操作部25は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R2を生成して、ブレーキ装置13に供給する。ブレーキ装置13は、操作信号R2に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28あるいはブレーキ装置13を制御するための制御信号C4あるいは制御信号C2を生成して、リターダ28あるいはブレーキ装置13に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。ブレーキ装置13は、制御信号C2に基づく制動力を発生する。以下の説明では、ダンプトラック1の前方に物体が存在して、ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合に、ブレーキ制御部35が、リターダ28に対して制御信号C4のみを生成する場合について説明する。
操舵装置14は、走行方向操作部15及び走行方向制御部35のそれぞれと接続される。走行方向操作部15は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、操作信号R3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。走行方向制御部35は、操舵装置14を制御するための制御信号C3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、制御信号C3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。
特定検出領域設定部36は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体検出装置12の検出領域SLの内側に、検出領域SLよりも小さい領域である特定検出領域SDを設定する。特定検出領域SDは、車両2の車幅方向に関して第1寸法の幅と、車両2の走行方向に関して第2寸法の長さとを有する。
判定部37は、特定検出領域SDを設定するか否かを判定する。無効化部38は、設定された特定検出領域SDを無効化(キャンセル)する。無効化部38により特定検出領域SDの無効化が行われる理由は、操作装置の操作がされたといった所定の条件が成立する際、例えば、運転者WMの意思によるハンドル操作部の操作などがあった場合、処理システム600が過剰に作動することがないようにするためである。すなわち、無効化とは、設定されていた特定検出領域SDを削除すること、及び処理システム600の制御装置30が制御信号Cを出力しないことを含む。なお、例えば、運転者WMの意思によるハンドル操作部の操作などがあった場合、その操作の量が少ないといった所定の条件が成立する際、無効化部38は特定検出領域SDを無効化せずに、その操作の量が多いといった所定の条件が成立する際、無効化38は特定検出領域SDを無効化するようにしてもよい。すなわち、操作装置が操作されたとき、所定の条件が成立する際に特定検出領域SDが無効化されるようにすればよい。
(ダンプトラックの制御方法)
次に、ダンプトラック1の制御方法の一例について説明する。本実施形態においては、ダンプトラック1の前方に存在する物体とダンプトラック1との衝突による被害を軽減するための制御方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、物体が、ダンプトラック1の前方に存在する他のダンプトラック1Fであることとする。本実施形態においては、ダンプトラック1が、そのダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fに追突することによる被害を軽減するための制御方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、ダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fを適宜、前方ダンプトラック1F、と称する。
図8は、本実施形態に係るダンプトラック1の制御方法の一例を示すフローチャートである。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態を検出する。積載状態検出装置11の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、積載状態検出装置11の検出結果を取得する(ステップSA1)。
制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得するタイミングは、ダンプトラック1が積込場LPAから出発するタイミングでもよいし、ダンプトラック1が排土場DPAから出発するタイミングでもよい。すなわち、図9に示すように、鉱山の積込場LPAにおいてベッセル3に積荷が積み込まれ、積荷状態のダンプトラック1が積込場LPAから出発するときに、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。鉱山の排土場DPAにおいてベッセル3から積荷が排出され、空荷状態のダンプトラック1が排土場DPAから出発するときに、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。
図10に示すように、操作部40の操作によって、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得するタイミングが定められてもよい。操作部40は、キャブ8内の運転席16の近傍に配置される。オペレータWMは、ダンプトラック1が積込場LPAから出発するとき、又はダンプトラック1が排土場DPAから出発するとき、操作部40を操作する。操作部40が操作されることにより、積載状態検出装置11の検出結果が制御装置30に出力される。制御装置30は、操作部40が操作されたタイミングで、積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。
例えば、積載状態検出装置11が積荷を検出したこと又は空荷を検出したことをトリガとして、制御装置30が備えるタイマー(不図示)が、ダンプトラック1が積込場LPA又は排土場DPAから出発してから所定時間経過したことを計測する。所定時間経過したことがタイマーにより計測された後、積載状態検出装置11の検出結果が制御装置30に取得されてもよい。
ダンプトラック1が積込場LPA又は排土場DPAから出発してから所定時間経過するまでの間に検出された積載状態検出装置11の複数の検出値の平均値が、積込状態の検出結果として制御装置30に取得されてもよい。
本実施形態において、ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無を含む。制御装置30は、ベッセル3に積荷が有るか否かを判断する(ステップSA2)。記憶部34に、積荷の重量に関する閾値が記憶されている。制御装置30は、その閾値と積載状態検出装置11の検出値とを比較する。積載状態検出装置11の検出値が閾値よりも大きいと判断された場合、制御装置30は、ベッセル3に積荷が有ると判断する。積載状態検出装置11の検出値が閾値以下であると判断された場合、制御装置30は、ベッセル3に積荷が無いと判断する。
次に、変数設定部33により、ベッセル3の積荷の積荷状態に基づいてダンプトラック1(車両2)の減速度aが設定される。ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28が作動した場合におけるダンプトラック1の減速度(負の加速度)である。本実施形態において、ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28を含む制動装置の最大制動能力が発揮されるように制動装置が作動したときの、ダンプトラック1の減速度をいう。なお、ダンプトラック1の減速度aは、ダンプトラック1のスリップ等の発生を抑制できる範囲で制動能力が発揮できる減速度であってもよい。一般に、ダンプトラック1の重量が大きい場合、減速度aは小さい。ダンプトラック1の重量が小さい場合、減速度aは大きい。減速度aが小さいと、走行するダンプトラック1は停止し難い。減速度aが大きいと、走行するダンプトラック1は停止し易い。以下の説明において、リターダ28の最大制動能力が発揮されるようにリターダ28が作動される状態を適宜、フルブレーキ状態、と称する。
ダンプトラック1の重量は、ベッセル3に積載される積荷の重量に基づいて変化する。したがって、ベッセル3が空荷状態の場合、ダンプトラック1の重量は小さくなり、ダンプトラック1の減速度aは大きくなる(ダンプトラック1は停止し易くなる)。ベッセル3が積荷状態の場合、ダンプトラック1の重量は大きくなり、ダンプトラック1の減速度aは小さくなる(ダンプトラック1は停止し難くなる)。
ダンプトラック1の重量とその重量のダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報は、実験又はシミュレーションにより事前に求めることができる。記憶部34には、実験又はシミュレーションによって求められた、積荷の重量とダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報が記憶されている。
本実施形態において、記憶部34には、積荷状態のダンプトラック1の減速度a1と、空荷状態のダンプトラック1の減速度a2とが記憶されている。減速度a2は、減速度a1よりも大きい。
鉱山の採掘現場においてベッセル3に積荷を積む場合、採掘現場の生産性向上等の観点から、ベッセル3の最大積載能力が発揮されるように、ベッセル3に積荷が積み込まれる。すなわち、ベッセル3の収容可能容積の100%に相当する量の積荷がベッセル3に積み込まれる。例えば、ベッセル3の収容可能容積の70%に相当する量の積荷をベッセル3に積むという運用は、生産効率が悪く、例外的である。すなわち、本実施形態において、ベッセル3の積荷状態とは、ベッセル3に積荷が満載された満載状態を意味する。そのため、ダンプトラック1の減速度aは、積荷状態(満載状態)のダンプトラック1に対応する減速度a1と、空荷状態のダンプトラック1に対応する減速度a2との2つの値で足りる。
ステップSA2において、積荷が有ると判断された場合、変数設定部33は、減速度a1を設定する(ステップSA3)。ステップSA2において、積荷が無いと判断された場合、変数設定部33は、減速度a2を設定する(ステップSA4)。
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行状態を検出する。走行状態検出装置10の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、走行状態検出装置10の検出結果を取得する。
走行状態検出装置10の走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1の走行速度Vtを検出して、その検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、走行速度検出装置10Aの検出結果を取得する(ステップSA5)。
走行方向検出装置10Bの検出結果及び進行方向検出装置10Cの検出結果も制御装置30に出力される。制御装置30は、走行方向検出装置10Bの検出結果及び進行方向検出装置10Cの検出結果を取得する。
走行状態検出装置10の検出周期はGt(例えば1ms以上100ms以下)である。走行状態検出装置10は、所定時間間隔(検出周期)Gtで検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、その検出結果を取得する。制御装置30は、ダンプトラック1の稼動時において、走行状態検出装置10の検出結果をモニタする。
演算部32により、走行状態検出装置10の検出結果に基づいて、物体との衝突の可能性の判断に用いられる時間情報が算出される。演算部32は、所要停止距離Dsを算出する(ステップSA6)。また、演算部32は、走行速度Vtと所要停止距離Dsとに基づいて、停止距離通過時間Tsを算出する(ステップSA7)。
図11は、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsを説明するための図である。所要停止距離Dsについて説明する。図11に示すように、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、変数設定部33で設定された減速度がaである場合において、ダンプトラック1が第1地点P1に位置するときにフルブレーキ状態になるようにリターダ28が作動された場合、ダンプトラック1は、第1地点P1の前方の第2地点P2で停止する。第2地点P2では、当然ながら走行速度は0である。所要停止距離Dsは、リターダ28がフルブレーキ状態になるように作動された第1地点P1と、ダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との距離である。走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、変数設定部33で設定された減速度がaである場合、所要停止距離Dsは、以下の(1)式に基づいて導出される。
Ds=Vt(Vt/a)−(1/2)a(Vt/a)2
=(1/2a)Vt2 …(1)
したがって、減速度a1が設定された場合、
Ds=(1/2a1)Vt2 …(1A)
である。減速度a2が設定された場合、
Ds=(1/2a2)Vt2 …(1B)
である。
このように、本実施形態においては、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1(車両2)の走行速度Vtと、変数設定部33で設定された減速度aとに基づいて、第1地点P1とダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との所要停止距離Dsが算出される。
次に、停止距離通過時間Tsについて説明する。停止距離通過時間Tsとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在する第1時点t1から、所要停止距離Dsを走行速度Vtで走行したときに第2地点P2に到達する第2時点t2までの時間をいう。すなわち、停止距離通過時間Tsとは、第1地点P1(第1時点t1)において走行速度Vtで走行するダンプトラック1が、ブレーキ装置13の作動なく、一定の走行速度Vtで所要停止距離Dsを走行したときの、その所要停止距離Dsを走行するのに要する時間をいう。停止距離通過時間Tsは、以下の(2)式に基づいて導出される。
Ts=Ds/Vt …(2)
以上により、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsのそれぞれが算出される。
物体検出装置12は、例えば、前方ダンプトラック1Fを検出する。物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、物体検出装置12の検出結果を取得する。
物体検出装置12は、レーダ装置を含み、前方ダンプトラック1Fを検出可能である。物体検出装置12は、その物体検出装置12が設けられているダンプトラック1と、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出可能である。物体検出装置12は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出し、その検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを取得する(ステップSA8)。
物体検出装置12の検出周期は、走行状態検出装置10の検出周期Gtと異なる。物体検出装置12は、所定時間間隔で検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、その検出結果を取得する。制御装置30は、ダンプトラック1の稼動時において、物体検出装置12の検出結果をモニタする。
演算部32は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、衝突の可能性の判断に用いられる時間情報を算出する。演算部32は、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達するまでの物体到達時間Taを算出する(ステップSA9)。
図12は、物体到達時間Taを説明するための図である。物体到達時間Taとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在するときの、そのダンプトラック1の物体検出装置12で検出された第1地点P1(第1時点t1)におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの時間をいう。すなわち、相対距離Dr及び相対速度Vrを検出した時点を第1時点t1とし、その第1時点t1において検出された相対距離Drを相対速度Vrで相対移動したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する時点を第3時点t3としたとき、物体到達時間Taとは、第1時点t1から第3時点t3までの時間をいう。物体到達時間Taは、以下の(3)式に基づいて導出される。
Ta=Dr/Vr …(3)
このように、物体検出装置12で検出された第1時点t1におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの物体到達時間Taが算出される。
制御装置30は、走行状態検出装置10の検出値及び物体検出装置12の検出値をモニタし、複数の各地点(各時点)における停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを算出する。換言すれば、制御装置30は、複数の各地点(各時点)における停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを、所定時間間隔Gtで出力する。
衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとに基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性を判断する(ステップSA10)。
衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとを比較し、その比較の結果に基づいて、衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」を実行する。演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、第1時点t1からダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定される。演算「Ta−Ts」は、所定時間間隔Gtで行われる。
演算の結果が「Ta−Ts≦0」である場合(ステップSA11、Yes)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsと等しい時間あるいは停止距離通過時間Tsより短い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も高いレベル1であると判断する。
演算の結果が「α≧Ta−Ts>0」である場合(ステップSA13、Yes)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも僅かに長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性がレベル1に次いで高いレベル2であると判断する。数値αは、事前に定められた正の値である。
演算の結果が「Ta−Ts>α」である場合(ステップSA13、No)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも十分に長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も低いレベル3であると判断する。
このように、演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定され、その推定の結果に基づいて、衝突の可能性が判断される。また、推定の結果に基づいて、衝突の可能性(危険度)が複数のレベルに分類される。本実施形態においては、衝突の可能性が、レベル1、レベル2、及びレベル3に分類される。レベル1、レベル2、及びレベル3のうち、レベル1は、衝突の可能性が最も高いレベルであり、レベル2は、レベル1に次いで衝突の可能性が高いレベルであり、レベル3は、衝突の可能性が最も低いレベルである。
衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル1(Ta−Ts≦0)であるか否かを判断する(ステップSA11)。
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合(ステップSA11、Yes)、制御装置30は、リターダ28を制御する(ステップSA12)。制御部35は、リターダ28に制御信号C4を出力する。制御部35は、フルブレーキ状態でリターダ28が作動するように、リターダ28に制御信号C4を出力する。
制御部35から供給された制御信号C4に基づいて、リターダ28のブレーキ処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1が停止される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
レベル1において、制御信号C4は操作信号R2及び操作信号R1に優先する。制御部35からリターダ28に制御信号C4が出力された場合、ブレーキ操作部25の操作の有無、及びブレーキ操作部25の操作量の大小、出力操作部24の操作の有無、出力操作部24の操作量の大小、これらにかかわらず、制御信号C4に基づいて、リターダ28のブレーキ処理が実行される。なお、レベル1において、制御信号C4は操作信号R4に対しても優先するようにしてもよい。
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
この場合、レベル1において、制御信号C1は操作信号R1及び操作信号R2に優先する。制御部35から動力発生装置22に制御信号C1が出力された場合、ブレーキ操作部25の操作の有無、及びブレーキ操作部25の操作量の大小、出力操作部24の操作の有無、出力操作部24の操作量の大小、これらにかかわらず、制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。なお、レベル1において、制御信号C1は操作信号R4に対しても優先するようにしてもよい。
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合、制御部35は、リターダ28に制御信号C4を出力するとともに、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。すなわち、リターダ28のブレーキ処理と並行して、動力発生装置22の出力低減処理が行われてもよい。
ステップSA11において、演算「Ta−Ts」の結果が、レベル1(Ta−Ts≦0)でないと判断された場合(ステップSA11、No)、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル2(α≧Ta−Ts>0)であるか否かを判断する(ステップSA13)。
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合(ステップSA13、Yes)、制御装置30は、警報装置21を制御する(ステップSA14)。制御部35は、警報装置12に制御信号C6を出力する。制御部35は、警報装置21が警報を発生するように、警報装置21に制御信号C6を出力する。
制御部35から供給された制御信号C6に基づいて、警報装置21の警報発生処理が実行される。警報装置21は、音又は光を発生して、オペレータWMに注意喚起する。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害を軽減するための操作が行われる。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C5に基づいて、表示装置20の表示処理が実行される。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害を軽減するための操作が行われる。
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、ブレーキ装置13が作動するように、制御信号C2を出力してもよい。例えば、制御部35から供給された制御信号C2に基づいて、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するように、ブレーキ装置13のブレーキ処理が実行されてもよい。あるいは、ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、リターダ28が作動するように、制御信号C4を出力するが、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するように、リターダ28のブレーキ処理が実行されるようにしてもよい。
以下の説明において、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するようにリターダ28が作動される状態を適宜、弱ブレーキ状態又はプレブレーキ状態、と称する。
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。
ステップSA13において、演算「Ta−Ts」の結果が、レベル2(α≧Ta−Ts>0)でないと判断された場合(ステップSA13、No)、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル3(Ta−Ts>α)であると判断する。
レベル3であると判断された場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理は行われない。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。例えば、制御装置30は、走行状態検出装置10の検出結果、及び物体検出装置12の検出結果のモニタを継続する。
ステップSA12において、リターダ28が制御された後、ダンプトラック1の走行速度Vtが低減されて、衝突の可能性が低減された場合、制御部35からリターダ28に対する制御信号C4の出力が停止される。これにより、制御装置30によるリターダ28の制御は解除される。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。
ステップSA14において、警報装置21が制御された後、例えばオペレータWMによる、ブレーキ操作部25及びリターダ操作部17、出力操作部24のいずれか一つの操作により、ダンプトラック1の走行速度Vtが低減されて、衝突の可能性が低減された場合、制御部35から警報装置21に対する制御信号C6の出力が停止される。これにより、制御装置30による警報装置21の制御は解除される。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。
ステップSA11及びステップSA13の少なくとも一方において、衝突の可能性がレベル1又はレベル2であると判断された場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減するために、制御部35は操舵装置14に制御信号C3を出力してもよい。ダンプトラック1の進路に前方ダンプトラック1Fが存在する場合、ダンプトラック1の進路に前方ダンプトラック1Fが存在しないように、操舵装置14の走行方向変更処理が実行され、ダンプトラック1の走行方向が変更されてもよい。
レベル1において、制御信号C3は操作信号R3に優先されてもよい。制御部35から操舵装置14に制御信号C3が出力された場合、走行方向操作部15の操作の有無、及び走行方向操作部15の操作量の大小にかかわらず、操舵装置14は、制御信号C3に基づいて走行方向変更処理を実行する。
本実施形態においては、ステップSA5において、走行速度検出装置10Aの検出結果のみならず、走行方向検出装置10Bの検出結果、及び進行方向検出装置10Cの検出結果も制御装置30に出力される。例えば、物体検出装置12が前方ダンプトラック1Fを検出しても、走行方向検出装置10Bの検出結果に基づいて、ダンプトラック1の進路から前方ダンプトラック1Fが外れるようにダンプトラック1の走行方向が変化していると判断された場合、制御装置30は、衝突の可能性が低い(レベル3である)と判断してもよい。その場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理が行われなくてもよい。
ダンプトラック1が後進している場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突する可能性は低い。そのため、進行方向検出装置10Cの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が後進していると判断された場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理が行われなくてもよい。
本実施形態において、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C1よりも操作信号R1が優先されてもよい。例えば、動力発生装置22に操作信号R1及び制御信号C1の両方が供給された場合、動力発生装置22は、操作信号R1に基づいて駆動してもよい。また、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C2よりも操作信号R2が優先されてもよい。例えば、ブレーキ装置13に操作信号R2及び制御信号C2の両方が供給された場合、ブレーキ装置13は、操作信号R2に基づいて駆動してもよい。また、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C3よりも操作信号R3が優先されてもよい。例えば、操舵装置14に操作信号R3及び制御信号C3の両方が供給された場合、操舵装置14は、操作信号R3に基づいて駆動してもよい。すなわち、衝突の可能性がレベル2又はレベル3である場合、運転者WMによる操作を優先するようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、衝突の可能性のレベルが3段階(レベル1、レベル2、レベル3)に分けられる。衝突の可能性のレベルは、4段階以上の複数段階に分けられてもよい。衝突の可能性レベルは、2段階(レベル1、レベル2)に分けられてもよい。すなわち、衝突の可能性が全く無いレベルと、衝突の可能性が有るレベルとの2段階に分けられてもよい。このような場合、制御装置30から制御信号Cが出力されている状態で、運転者WMがいずれかの操作装置(操作部)を操作して操作信号Rが生成されたといった所定の条件が成立したならば、衝突の可能性が全くないレベルであれば、操作信号Rを優先し、衝突の可能性が有るレベルであれば、制御信号Cは操作信号Rに優先するようにしてもよい。また、例えば、運転者WMの意思によるハンドル操作部の操作などがあった場合、その操作の量が少ないといった所定の条件が成立する際は制御信号Cを優先し、その操作の量が多いといった所定の条件が成立する際は操作信号Rを優先するようにしてもよい。すなわち、操作装置が操作され操作信号Rが生成されたとき、所定の条件が成立する際に制御信号Cが優先されるようにすればよい。
(特定検出領域)
本実施形態において、特定検出領域設定部36は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体検出装置12の検出領域SLに、ダンプトラック1の車幅方向に関して第1寸法の幅とダンプトラック1の走行方向(前進方向)に関して第2寸法の長さとを有する特定検出領域SDを設定する。衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、特定検出領域SDに物体が存在するか否かを判断し、その判断結果に基づいて、衝突の可能性を判断する。制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する。
図13は、本実施形態に係る特定検出領域SDの一例を示す模式図である。図13に示すように、特定検出領域SDは、検出領域SLよりも小さい領域である。特定検出領域SDの外形は、実質的に矩形である。
特定検出領域SDは、ダンプトラック1の車幅方向に関して寸法(第1寸法)Wの幅を有する。特定検出領域SDの幅の寸法Wは、車両2の車幅の寸法Wrを含む。特定検出領域SDは、ダンプトラック1の走行方向に関して寸法(第2寸法)Lの長さを有する。
特定検出領域SDは、第1部分SD1と、走行方向(前進方向)に関して第1部分SD1よりも車両2から遠い第2部分SD2と、走行方向(前進方向)に関して第2部分SD2よりも車両2から遠い第3部分SD3と、を含む。
第1部分SD1は、寸法W1の幅と寸法L1の長さとを有する。第2部分SD2は、寸法W2の幅と寸法L2の長さとを有する。第3部分SD3は、寸法W3の幅と寸法L3の長さとを有する。第1部分SD1の幅の寸法W1は、車両2の車幅の寸法Wrである。第2部分SD2の幅の寸法W2は、車両2の車幅の寸法Wrである。第3部分SD3の幅の寸法W3は、第1部分SD1の幅の寸法W1及び第2部分SD2の幅の寸法W2よりも大きい。
運転者WMにより走行方向操作部15が操作された場合、第3部分SD3は、第1部分SD1よりも車幅方向に大きく動く。例えば、ダンプトラック1が直進状態において、運転者WMは、ダンプトラック1の直進走行を維持するためにハンドル操作部(ハンドル)を左右に微調整しながら操作する。つまり、直進状態において、走行方向操作部15が僅かに動かされ、その結果、第3部分SD3が車幅方向に僅かに動いてしまう可能性がある。第3部分SD3の幅の寸法W3が小さいと、ダンプトラック1の前方に存在する物体が、第3部分SD3の内側に存在しなくなる可能性が高くなる。本実施形態においては、寸法W3が寸法W1よりも大きいので、意図せずに走行方向操作部15が動かされても、ダンプトラック1の前方の物体は、第3部分SD3に存在することができる。
例えば、ダンプトラック1が、前方に停止している物体(例えば、停車している前方のダンプトラック)を追い越して走行するとき、ダンプトラック1から離れた位置で、その物体の少なくとも一部が特定検出領域SDの第3部分SD3に存在することができ、その物体を検出することができる。その物体が検出されることにより、ダンプトラック1を運転する運転者WMは、ダンプトラック1と物体とが円滑に追い越せるように走行操作部15を操作することができる。
特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1(車両2)の走行条件に基づいて、特定検出領域SDの形状を変更する。本実施形態において、ダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1とそのダンプトラック1の前方の物体との相対速度を含む。ダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1の走行速度を含む。ダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1の走行方向を含む。
物体検出装置12は、ダンプトラック1と検出領域SLに存在する物体との相対速度を検出可能である。特定検出領域設定部36は、物体検出装置12で検出された相対速度に基づいて、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを変更する。特定検出領域設定部36は、相対速度が低いとき(ダンプトラック1と前方の物体との距離が変化しない又は緩やかに短くなるとき)、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを短くする。特定検出領域設定部36は、相対速度が高いとき(ダンプトラック1と前方の物体との距離が急激に短くなるとき)、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを長くする。
走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1の走行速度を検出可能である。特定検出領域設定部36は、走行速度検出装置10Aで検出されたダンプトラック1の走行速度に基づいて、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを変更するようにしてもよい。特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1の走行速度が低いとき、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを短くしてもよい。特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1の走行速度が高いとき、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを長くしてもよい。
図14は、ダンプトラック1と物体との相対速度又はダンプトラック1の走行速度が高くなって、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さが長くなった例を示す。図15は、ダンプトラック1と物体との相対速度又はダンプトラック1の走行速度が低くなって、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さが短くなった例を示す。第2寸法Lの長さは、ダンプトラック1と物体との相対速度又はダンプトラック1の走行速度の大きさと相関関係を有する。
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1の走行方向を検出可能である。特定検出領域設定部36は、走行方向検出装置10Bで検出されたダンプトラック1の走行方向(操舵方向)に基づいて、特定検出領域SDの形状を変形させる。図16に示すように、特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1の走行方向が左に変化するとき(左旋回のとき)、特定検出領域SDの先端部(第3部分SD3の先端部)がダンプトラック1に対して左に移動するように、特定検出領域SDの形状を曲げる。図17に示すように、特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1の走行方向が右に変化するとき(右旋回のとき)、特定検出領域SDの先端部(第3部分SD3の先端部)がダンプトラック1に対して右に移動するように、特定検出領域SDの形状を曲げる。特定検出領域SDの形状の曲がり具合は、走行方向検出装置10Bで検出されたダンプトラック1の走行方向(操舵方向)と相関関係を有する。
特定検出領域SDの基端部(第1部分SD1の基端部)とダンプトラック1との相対位置は変化しない。特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを変更するとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、ダンプトラック1の走行方向に関する特定検出領域SDの先端部の位置を変化させる。例えば、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを短くするとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、特定検出領域SDの先端部がダンプトラック1に近付くように、特定検出領域SDの先端部とダンプトラック1との相対位置を変化させる。特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを長くするとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、特定検出領域SDの先端部がダンプトラック1から離れるように、特定検出領域SDの先端部とダンプトラック1との相対位置を変化させる。
また、特定検出領域SDを曲げるとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、ダンプトラック1の幅方向に関する特定検出領域SDの先端部の位置を変化させる。例えば、特定検出領域SDを左に曲げるとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、特定検出領域SDの先端部がダンプトラック1に対して左に移動するように、特定検出領域SDの先端部とダンプトラック1との相対位置を変化させる。特定検出領域SDを右に曲げるとき、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1との相対位置を変化させず、特定検出領域SDの先端部がダンプトラック1に対して右に移動するように、特定検出領域SDの先端部とダンプトラック1との相対位置を変化させる。
なお、特定検出領域SDの基端部とは、特定検出領域SDのうち、ダンプトラック1の走行方向に関してダンプトラック1に最も近い端部をいう。特定検出領域SDの先端部とは、特定検出領域SDのうち、ダンプトラック1の走行方向に関してダンプトラック1から最も遠い端部をいう。特定検出領域SDの基端部は、第1部分SD1の基端部を含む。特定検出領域SDの先端部は、第3部分SD3の先端部を含む。本実施形態において、特定検出領域SDは、特定検出領域SDの基端部とダンプトラック1の前部とが接続される(隣接する)ように設定される。
特定検出領域設定部36は、ベッセル3の積荷の積載状態に基づいて、特定検出領域SDの形状を変更するようにしてもよい。本実施形態において、積荷の積載状態は、ベッセル3に積載される積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一方を含む。
積載状態検出装置11は、ベッセル3に積載される積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量を検出可能である。特定検出領域設定部36は、積載状態検出装置11で検出された積荷の有無に基づいて、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを変更する。特定検出領域設定部36は、積荷が無いとき(ダンプトラック1の総重量が軽いとき)、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを短くする。特定検出領域設定部36は、積荷が有るとき(ダンプトラック1の総重量が重いとき)、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを長くする。また、特定検出領域設定部36は、積荷の有無の基づくのではなく、積載状態検出装置11で検出された積荷の重量に基づいて、特定検出領域SDの長さを変更するようにしてもよい。特定検出領域設定部36は、積荷の重量が軽いとき(積荷の積載量が少ないとき)、特定検出領域SDの長さを短くする。特定検出領域設定部36は、積荷の重量が重いとき(積荷の積載量が多いとき)、特定検出領域SDの長さを長くする。
衝突判断部31は、物体検出装置31の検出結果に基づいて、特定検出領域SDに物体が存在するか否かを判断することによって、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突の可能性を判断する。特定検出領域SDに物体が存在することは、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性が高くなることを含む。
例えば、ダンプトラック1と物体その相対速度が高い場合、ダンプトラック1と物体とが短時間で接近するため、衝突の可能性が高い。ベッセル3に積荷が有る場合、その積荷の重量により、走行するダンプトラック1は、停止し難くなるため、衝突の可能性が高い。
ダンプトラック1の走行条件が衝突の可能性が高い走行条件である場合、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの長さを長くする。例えば、ベッセル3の積荷の積載状態が衝突の可能性が高い積載状態である場合、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを長くする。これにより、ダンプトラック1の前方の物体がダンプトラック1から離れていても、その物体を特定検出領域SDの内側に捉えることができる。そのため、ダンプトラック1の前方の物体がダンプトラック1から離れていても、その物体を特定検出領域SDの内側にあることを捉えることによって、衝突判断部31は、特定検出領域SDに物体が存在することを判断することができ、衝突の可能性があると判断することができる。
一方、ダンプトラック1の走行条件が衝突の可能性が低い走行条件である場合、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの第2寸法Lの長さを短くする。ベッセル3の積荷の積載状態が衝突の可能性が低い積載状態である場合、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの長さを短くする。これにより、ダンプトラック1の前方の物体がダンプトラック1から離れているとき、その物体は特定検出領域SDの内側に存在しない。そのため、ダンプトラック1の前方の物体がダンプトラック1から離れているとき、衝突判断部31は、特定検出領域SDに物体が存在していないと判断することができ、衝突の可能性は低いと判断することができる。
衝突の可能性が高いダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1と物体との相対速度が高い走行条件を含む。あるいは、衝突の可能性が高いダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1の走行速度が高い走行条件を含む。一方、衝突の可能性が低いダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1と物体との相対速度が低い走行条件を含む。あるいは、衝突の可能性が低いダンプトラック1の走行条件は、ダンプトラック1の走行速度が低い走行条件を含む。相対速度又はダンプトラック1の走行速度が高いと、衝突の可能性が高くなる。相対速度又はダンプトラック1の走行速度が低いと、衝突の可能性が低くなる。つまり、ダンプトラック1の走行条件が衝突の可能性が高い走行条件である場合として、ダンプトラック1と物体との相対速度が高い場合あるいはダンプトラック1の走行速度が高い場合、特定検出領域設定部36は、特定検出領域SDの長さを長くする。
衝突の可能性が高い積荷の積載状態は、ベッセル3に積荷が有る積載状態を含む。衝突の可能性が高い積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の重量が重い積載状態を含む。衝突の可能性が低い積荷の積載状態は、ベッセル3に積荷が無い積載状態を含む。衝突の可能性が低い積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の重量が軽い積載状態を含む。上述したように、ダンプトラック1の重量が大きい場合(すなわち、積荷が有る場合又は積荷の重量が重い場合)、ダンプトラック1の減速度が小さくなり、走行するダンプトラック1は停止し難くなる。その結果、衝突の可能性が高くなる。ダンプトラック1の重量が小さい場合(すなわち、積荷が無い場合又は積荷の重量が軽い場合)、ダンプトラック1の減速度が大きくなり、走行するダンプトラック1は停止し易くなる。その結果、衝突の可能性が低くなる。
特定検出領域SDは、前述のようにダンプトラック1に近い第1部分SD1と、第1部分SD1に次いでダンプトラック1に近い第2部分SD2と、ダンプトラック1から遠い第3部分SD3とを含む。
ここで、特定検出領域SDの第2寸法Lの決定方法の一例について説明する。第2寸法Lは、以下に示す[ケース1]から[ケース5]において変更される。なお、[ケース5]は、特定検出領域SDの形状が曲げられるケースを含む。
[ケース1]ダンプトラック1の前方の物体との相対速度が変化したときに第2寸法Lが変化する。
[ケース2]ダンプトラック1のベッセル3の積荷の有無によって第2寸法Lが変化する。
[ケース3]ダンプトラック1の走行速度が変化したときに第2寸法Lが変化する。
[ケース4]ダンプトラック1のベッセル3の重量(積荷の重量)が変化したときに第2寸法Lが変化する。
[ケース5]ダンプトラック1の走行方向(走行方向操作部15の操作量、ハンドル操作部の旋回量)が変化したときに第2寸法Lが変化する。
図18は、[ケース1]と[ケース2]とが複合するときの第2寸法Lを決定する方法の一例を説明するための模式図である。図18の(A)に示すように、空荷状態(積荷が無い状態)の場合、相対速度に応じて第2寸法Lが決定される。さらに、相対速度が同じ場合であって、積荷状態(積荷が有る状態)の場合、図18の(B)に示すように、寸法Lに所定の寸法ΔLを加えたものが、第2寸法Lとして設定される。ΔLは、第1部分SD1の寸法L1、第2部分SD2の寸法L2、及び第3部分SD3の寸法L3のそれぞれに分配される。寸法L1に寸法ΔL1を加えたものが、第1部分SD1の寸法L1として設定される。寸法L2に寸法ΔL2を加えたものが、第2部分SD2の寸法L2として設定される。寸法L3に寸法ΔL3を加えたものが、第3部分SD3の寸法L3として設定される。ΔL=ΔL1+ΔL2+ΔL3である。
図19は、[ケース1]と[ケース5]とが複合するときの第2寸法Lを決定する方法の一例を説明するための模式図である。図19の(A)に示すように、相対速度に応じて第2寸法Lが決定される。図19の(B)に示すように、ハンドル操作部の旋回量に基づいて、特定検出領域SDの形状が曲げられる。積荷の重量が変化せず、相対速度も変化しない場合、図19の(A)に示す第2寸法Lと、図19の(B)に示す第2寸法Lとは、等しい。
図20は、[ケース1]と[ケース2]と[ケース5]が複合するときの第2寸法Lを決定する方法の一例を説明するための模式図である。図20の(A)に示すように、空荷状態の場合、相対速度に応じて第2寸法Lが決定される。積荷状態の場合、図20の(B)に示すように、寸法Lに所定の寸法ΔLを加えたものが、第2寸法Lとして設定される。図20(C)に示すように、ハンドル操作部の旋回量に基づいて、特定検出領域SDの形状が曲げられる。積荷状態でハンドル操作部が旋回されたとき、図20の(B)に示す第2寸法Lと、図20の(C)に示す第2寸法Lとは、等しい。
なお、図18、図19、及び図20を参照して説明した複合の形態に、更に、[ケース3]及び[ケース4]の一方又は両方が複合する場合、上述の決定方法に従って、第2寸法Lが決定される。
次に、図21を参照して、第2寸法Lが変化するときの、第1部分SD1の寸法L1、第2部分SD2の寸法L2、及び第3部分SD3の寸法L3それぞれの変化量の一例について説明する。図18を参照して説明したように、相対速度に応じて第2寸法Lが長くなるとき、寸法Lに所定の寸法ΔLを加えたものが、第2寸法Lとして設定される。ΔLは、第1部分SD1の寸法L1、第2部分SD2の寸法L2、及び第3部分SD3の寸法L3のそれぞれに分配される。
本実施形態においては、第1部分SD1の寸法L1と第2部分SD2の寸法L2と第3部分SD3の寸法L3との比率は決められている。特定検出領域SDの第2寸法Lが長くなったとき、第1部分SD1の寸法L1と第2部分SD2の寸法L2と第3部分SD3の寸法L3との比率が維持された状態で、それら第1部分SD1の寸法L1、第2部分SD2の寸法L2、及び第3部分SD3の寸法L3のそれぞれが長くなる。
例えば、図21(A)に示すように、第2寸法Lが初期状態において、第2寸法Lが100、寸法L1が50、寸法L2が30、寸法L3が20であるとする。この場合、寸法1:寸法L2:寸法L3=5:3:2である。
図21(B)に示すように、第2寸法Lが長くなって、150になったとする。寸法1と寸法L2と寸法L3との比率(5:3:2)は維持される。したがって、寸法L1は75、寸法L2は45、寸法L3は30となる。
なお、特定検出領域SDの第2寸法Lが長くなったとき、第1部分SD1の寸法L1と第2部分SD2の寸法L2と第3部分SD3の寸法L3との比率を維持するのではなく、いずれかの特定検出領域SDの寸法(寸法L1、寸法L2、寸法L3のいずれかの寸法)だけを長くしたり、あるいは、第2寸法Lが長くなる前の当該比率とは異なる比率で各特定検出領域SDの寸法(寸法L1、寸法L2、寸法L3)が長くなるようにしてもよい。
上述のように、本実施形態において、衝突判断部31の判断は、衝突の可能性を複数のレベルに分類することを含む。衝突判断部31は、衝突の可能性が最も高いレベル1と、レベル1に次いで衝突の可能性が高いレベル2と、衝突の可能性が低いレベル3とに分類する。本実施形態において、特定検出領域設定部36は、それらレベル(衝突可能性レベル)に基づいて、特定検出領域SDを複数(本例では3つ)の部分(第1部分SD1、第2部分SD2、及び第3部分SD3)に分ける。衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体が第1部分SD1に存在すると判断したとき、衝突可能性レベルは、レベル1であると判断する。衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体が第2部分SD2に存在すると判断したとき、衝突可能性レベルは、レベル2であると判断する。衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体が第3部分SD3に存在すると判断したとき、衝突可能性レベルは、レベル3であると判断する。
制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する。例えば、衝突判断部31により衝突可能性レベルがレベル2であると判断された場合、制御部35は、ブレーキ装置13及びリターダ28を含む制動装置が弱ブレーキ状態になるように制御信号Cを出力する。衝突判断部31により衝突可能性レベルがレベル1であると判断された場合、制御部35は、ブレーキ装置13及びリターダ28を含む制動装置がフルブレーキ状態になるように制御信号Cを出力する。なお、制御部35は、衝突可能性レベルに基づいて、処理システム600のうち特定の処理装置に制御信号Cを出力してもよい。例えば、衝突判断部31により衝突可能性レベルがレベル2であると判断された場合、制御部35は、警報装置21が作動するように制御信号Cを出力してもよい。衝突判断部31により衝突可能性レベルがレベル1であると判断された場合、制御部35は、制動装置が作動するように制御信号Cを出力してもよい。
(制御方法)
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御方法の一例について、図22のフローチャートを参照して説明する。
ダンプトラック1に設けられた物体検出装置12によって、ダンプトラック1の前方の物体が検出される(ステップSB1)。
物体検出装置12の検出結果は、判定部37に入力される。判定部37は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、検出領域SLに特定検出領域SDを設定するか否かを判断する。
図23は、物体Bと検出領域SLとの位置関係の一例を示す模式図である。物体Bは、ダンプトラック1の前方に存在する他のダンプトラック1Fでもよいし、ダンプトラックとは異なる車両でもよい。図23は、物体検出装置12の検出領域SLの外側に物体Bが存在している例を示す。図23に示すように、検出領域SLの外側に物体Bが存在している場合、判定部37は、特定検出領域SDを設定しないと判断する。
図24は、物体Bと検出領域SLとの位置関係の一例を示す模式図である。図24は、物体検出装置12の検出領域SLの内側に物体Bが存在している例を示す。図24に示すように、検出領域SLの内側に物体Bが存在している場合、判定部37は、特定検出領域SDを設定すると判断する。
物体検出装置12の検出結果に基づいて、物体Bが検出領域SLの内側に存在していると判断された場合、さらに特定検出領域設定部36は、検出領域SLの内側に、特定検出領域SDを設定する(ステップSB2)。
衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、特定検出領域SDに物体Bが存在するのか否かを判断する(ステップSB3)。
図24は、検出領域SLの内側に物体Bが存在するものの、特定検出領域SDには物体Bは存際していない例を示している。一方、図25は、特定検出領域SDに物体Bが存在している例を示す。
ステップSB3において、物体Bが特定検出領域SDに存在していないと判断された場合(ステップSB3:No)、制御部35から制御信号Cは出力されない。すなわち、本実施形態においては、物体Bが検出領域SLに存在していても、その物体Bが特定検出領域SDに存在しない限り、制御部35から制御信号Cは出力されない(処理システム600は作動しない)。
ステップSB3において、物体Bが特定検出領域SDに存在すると判断された場合(ステップSB3:Yes)、制御部35は、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する(ステップSB4)。
例えば、衝突可能性レベルがレベル1であると判断された場合(第1部分SD1に物体Bが存在すると判断された場合)、制御部35は、フルブレーキ状態になるように、制動装置に制御信号Cを出力する。衝突可能性レベルがレベル2であると判断された場合(第2部分SD2に物体が存在すると判断された場合)、制御部35は、弱ブレーキ状態になるように、制動装置に制御信号Cを出力する。
(検出領域に物体が複数存在する場合)
次に、検出領域SLに物体Bが複数存在する場合について、図26を参照して説明する。図26は、検出領域SLに第1物体Baと第2物体Bbとが存在している例を示す。
特定検出領域設定部36は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、第1物体Baに対応する第1特定検出領域SDaと、第2物体Bbに対応する第2特定検出領域SDbとを設定する。図26において、第1特定検出領域SDaは実線と一点鎖線で囲まれた範囲を示し、第2特定検出領域SDbは、破線と一点鎖線で囲まれた範囲を示す。
第1特定検出領域SDaの形状(長さ)は、例えば第1物体Baとダンプトラック1との相対速度に基づいて設定される。第2特定検出領域SDbの形状(長さ)は、例えば第2物体Bbとダンプトラック1との相対速度に基づいて設定される。図26に示す例では、ダンプトラック1が前進している際、第1物体Baが停車し、第2物体Bbがダンプトラック1と同じ方向に前進している。したがって、図26に示す例において、第1物体Baとダンプトラック1との相対速度は、第2物体Bbとダンプトラック1との相対速度よりも大きい。ダンプトラック1が第1物体Baと衝突する可能性は、ダンプトラック2が第2物体Bbと衝突する可能性よりも高い。そこで、図26に示すように、特定検出領域設定部36は、第1特定検出領域SDaの第2寸法L(La)の長さが、第2特定検出領域SDbの第2寸法L(Lb)の長さよりも長くなるように、第1特定検出領域SDa及び第2特定検出領域SDbのそれぞれを設定する。
衝突判断部31は、第1物体Ba及び第2物体Bbのうち、ダンプトラック1との衝突の可能性が高い物体Bを特定する。衝突判断部31は、第1特定検出領域SDaに第1物体Baが存在するのか否か、及び第2特定検出領域SDbに第2物体Bbが存在するのか否かを判断する。図26に示す例において、衝突判断部31は、第1特定検出領域SDaに第1物体Baが存在し、第2特定検出領域SDbには第2物体Bbが存在していないと判断する。したがって、衝突判断部31は、第1特定検出領域SDaに存在する第1物体Baが、第2物体Bbよりもダンプトラック1との衝突の可能性が高い物体Bであると判断する。
制御部35は、第1物体Ba及び第2物体Bbのうち、衝突の可能性が高いと判断された物体B(本例では第1物体Ba)との衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する。
(第3部分について)
図27は、ダンプトラック1が、前方に停車しているダンプトラック1Tを追い越す様子の一例を示す図である。図3等を参照して説明したように、第3部分SD3の幅の寸法W3は、第1部分SD1の幅の寸法W1及び第2部分SD2の幅の寸法W2よりも大きい。これにより、ダンプトラック1が、前方に停車しているダンプトラック1Tを追い越して走行するとき、ダンプトラック1から離れた位置で、ダンプトラック1Tの少なくとも一部が特定検出領域SDの第3部分SD3に存在する場合を検出することができる。第3部分SD3にダンプトラック1Tの少なくとも一部が検出されたときに、制御部35は、警報装置21が作動するように制御信号Cを出力する。これにより、ダンプトラック1を運転する運転者WMに注意喚起がなされ、ダンプトラック1とダンプトラック1Tとが円滑に追い越されるようにダンプトラック1が操作される。
なお、前方のダンプトラック1Tが、ダンプトラック1に向かって走行している場合も、第3部分SD3にダンプトラック1Tの少なくとも一部が検出されたときに、制御部35は、警報装置21が作動するように制御信号Cを出力する。したがって、この場合も、運転者WMに注意喚起がなされ、ダンプトラック1とダンプトラック1Tとが円滑に追い越されるようにダンプトラック1が操作される。
特定検出領域SDに第3部分SD3のような部分がなく、均一の幅寸法を有した特定検出領域SDであると、ハンドル操作部を微操作しても、その特定検出領域SD内に前方の物体Bが含まれず、物体Bを検出することができない。したがって、第3部分SD3の幅の寸法W3が、第1部分SD1の幅の寸法W1及び第2部分SD2の幅の寸法W2よりも大きいことで、運転者WMが走行方向操作部15(ハンドル)を左右に微操作しながらダンプトラック1を走行させても、前方の離れた位置に存在する物体Bを確実に検出することができる。
(特定検出領域のキャンセル)
ダンプトラック1の走行方向は、操舵装置14により調整される。操舵装置14は、直進状態及び非直進状態の一方から他方に変化するようにダンプトラック1の走行方向を変化可能である。
本実施形態において、無効化部38は、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量が閾値以上であるとき、特定検出領域SDを無効化(キャンセル、消去)する。例えば、直進状態に対するダンプトラック1の走行方向が、所定の走行方向(例えば、直進方向)を基準として所定の角度(閾値)以上変化したとき、特定検出領域SDは無効化される。
操舵装置14による操舵角が大きいとき、すなわち、運転者WMによって走行方向操作部15(ハンドル)が大きく切られたとき、ダンプトラック1がその前方の物体Bと衝突する可能性は低くなる。また、ハンドルが切られている状態は、運転者WMの意識(注意力)が十分であると認められるため、衝突の可能性は低くなる。そこで、直進状態からのダンプトラック1の走行方向の変化量が所定の閾値以上であるとき、特定検出領域SDが無効化される。これにより、検出領域SLに物体Bが存在しても、制御部35が過剰に制御信号Cを出力することが抑制され、処理システム600が過剰に作動することが抑制される。
また、本実施形態において、無効化部38は、ダンプトラック1の走行速度が所定の閾値以下であるとき、特定検出領域SDを無効化する。例えば、時速10km/h以下といった低速で走行する時間が所定時間以上継続するとき、特定検出領域SDは無効化される。
例えば、積込場LPA及び排土場DPAにおいて、ダンプトラック1は低速で走行する可能性がある。積込場LPA及び排土場DPAには、他のダンプトラック1が多数存在する可能性がある。あるいは、積込場LPA及び排土場DPAには、油圧ショベルなどの積込機械やブルドーザなどの作業車両が存在する可能性がある。積込場LPA及び排土場DPAにおいて、特定検出領域SDが設定され、その特定検出領域SDに他のダンプトラック1が存在すると、ダンプトラック1の制動装置が作動し、作業効率が低下する。そこで、積込場LPA及び排土場DPAにおいて、所定の閾値以下の走行速度でダンプトラック1が走行するとき、特定検出領域SDが無効化される。これにより、検出領域SLに物体B(例えば、他のダンプトラック1)が存在しても、制御部35が過剰に制御信号Cを出力することが抑制され、処理システム600が過剰に作動することが抑制される。
また、本実施形態において、無効化部38は、ダンプトラック1が後進するとき、特定検出領域SDを無効化する。ダンプトラック1は、ダンプトラック1の進行方向を変更可能な変速装置80を備えている。無効化部38は、変速装置80の動作に基づいて、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを知ることができる。
ダンプトラック1が後進しているとき、前方の物体と衝突する可能性は低い。そこで、ダンプトラック1が後進しているとき、特定検出領域SDが無効化される。これにより、検出領域SLに物体Bが存在しても、制御部35が過剰に制御信号Cを出力することが抑制され、処理システム600が過剰に作動することが抑制される。
また、運転者WMによりブレーキ操作部25が操作されるとき、その操作は運転者WMの意思によるものである。そこで、運転者WMによりブレーキ操作部25が操作されるとき、特定検出領域SDが無効化されてもよい。リターダ操作部17が操作されるときも同様である。
また、運転者WMにより出力操作部24が操作されたとき(アクセルペダルの踏み込みが解除されたとき)、その操作は運転者WMの意思によるものである。そこで、運転者WMにより出力操作部24が操作されるとき、特定検出領域SDが無効化されてもよい。
このように、出力操作部24、ブレーキ操作部25、走行方向操作部15、速度段操作部18、及びリターダ操作部17の少なくとも一つを含む操作装置が運転者WMによって操作されたときに、特定検出領域SDが無効化されてもよい。
(作用)
以上説明したように、本実施形態によれば、ダンプトラック1は、衝突による被害の軽減のための処理を実行可能な処理システム600を有し、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cが制御部35から処理システム600に出力される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減することができる。
本実施形態によれば、物体検出装置12の検出領域SLの内側に、幅と長さとを有する特定検出領域SDが設定される。その特定検出領域SDに物体Bが存在するか否かが判断され、特定検出領域SDに物体が存在すると判断されたときに、処理システム600を作動させるための制御信号Cが出力される。これにより、例えば図24に示したように、物体検出装置12の検出領域SLに、ダンプトラック1と衝突する可能性が低い物体Bが存在しても、特定検出領域SDに物体が存在しなければ制御信号Cは出力されず、処理システム600は作動しない。そのため、ダンプトラック1の走行が過度に制限されることが抑制される。したがって、ダンプトラック1の作業効率の低下、及び採掘現場の生産性の低下が抑制される。
幅と長さとを有する特定検出領域SDに存在する物体Bは、ダンプトラック1と衝突する可能性が高い物体Bである。特定検出領域SDに物体が存在すると判断されたときに、処理システム600を作動させるための制御信号Cが出力される。これにより、ダンプトラック1と物体Bとの衝突による被害を軽減することができる。
このように、本実施形態によれば、衝突する可能性が高い物体Bを検出可能な形状を有し、検出領域SLよりも小さい特定検出領域SDを設定するようにしたので、衝突被害軽減システム300Sの処理システム600が過度に作動することを抑制し、衝突の可能性が高い物体Bを検出して、物体Bとの衝突による被害を軽減しつつ、ダンプトラック1の作業効率の低下を抑制することができる。
本実施形態によれば、特定検出領域SDの幅は、ダンプトラック1の車幅の寸法を含む。これにより、衝突の被害を軽減するのに必要最小限の幅を有する特定検出領域SDが設定される。したがって、処理システム600の過度な作動に起因する作業効率の低下が抑制され、物体Bとの衝突による被害が軽減される。
本実施形態によれば、特定検出領域設定部36は、ダンプトラック1と物体Bとの相対速度あるいはダンプトラック1の走行速度を含むダンプトラック1の走行条件に基づいて、特定検出領域SDの形状を変更する。これにより、衝突の被害を軽減するのに必要最小限の大きさ及び最適な形状を有する特定検出領域SDが設定される。したがって、処理システム600の過度な作動に起因する作業効率の低下が抑制され、物体Bとの衝突による被害が軽減される。
本実施形態によれば、ダンプトラック1の走行方向が僅かに変化するとき、その走行方向に基づいて、特定検出領域SDの形状が曲げられる。これにより、特定検出領域SDの大きさを大きくすることなく、衝突の被害を軽減するのに必要最小限の大きさ及び最適な形状を有する特定検出領域SDが設定される。したがって、ダンプトラック1の走行方向に物体Bが存在するのか否かが的確に判断されるとともに、処理システム600の過度な作動に起因する作業効率の低下が抑制され、物体Bとの衝突による被害が軽減される。
また、特定検出領域SDを設定したり、ダンプトラック1の走行方向が変化するときに特定検出領域SDの形状を曲げたりすることにより、走行路の側壁などが過剰に検出されてしまったり、過剰にブレーキ装置13が操作されたり、過剰に警報装置21が作動したりすることが抑制される。
本実施形態によれば、特定検出領域設定部36は、積荷の重量を含むベッセル3の積荷の積載状態に基づいて、特定検出領域SDの形状を変更する。これにより、衝突の被害を軽減するのに必要最小限の大きさ及び最適な形状を有する特定検出領域SDが設定される。したがって、処理システム600の過度な作動に起因する、ダンプトラック1の作業効率の低下が抑制され、物体Bとの衝突による被害が軽減される。
本実施形態によれば、特定検出領域SDの第3部分SD3の幅の寸法W3は、第1部分SD1の幅の寸法W1及び第2部分SD2の幅の寸法W2よりも大きい。これにより、図27を参照して説明したように、ダンプトラック1と他のダンプトラック1Tとがすれ違うように走行するとき、ダンプトラック1Tの少なくとも一部が特定検出領域SDの第3部分SD3に存在する場合を検出することができる。第3部分SD3にダンプトラック1Tの少なくとも一部が存在するときに、警報装置21が作動することにより、ダンプトラック1を運転する運転者WMに注意喚起がなされ、ダンプトラック1とダンプトラック1Tとは円滑にすれ違うことができる。
本実施形態においては、衝突判断部31の衝突の可能性の判断は、衝突の可能性を複数のレベルに分類することを含む。制御部35は、そのレベルに基づいて、複数の処理装置のうち、特定の処理装置に制御信号Cを出力する。本実施形態においては、衝突の可能性(危険度)が高いレベル1においては、ブレーキ装置13に制御信号C2が出力されるため、衝突による被害を軽減することができる。衝突の可能性が比較的低いレベル2においては、警報装置21に制御信号C6が出力されるため、制動装置の過度な動作が行われることがなく、ダンプトラック1の作業効率の低下を抑制することができる。このように、衝突の可能性のレベルに基づいて、複数の処理装置の中から最適な処理装置を選択して、その選択された処理装置を使って衝突による被害を軽減するための処理を実行させることによって、衝突による被害を軽減でき、且つ、作業効率の低下を抑制することができる。
本実施形態によれば、特定検出領域SDが、衝突可能性レベルに基づいて、複数の部分(第1部分SD1、第2部分SD2、及び第3部分SD3)に分けられる。これにより、物体Bが、第1部分SD1、第2部分SD2、及び第3部分SD3のいずれかに存在するとき、衝突可能性レベルに基づいて、適切な処理装置を作動させるための制御信号Cを出力することができる。
本実施形態においては、処理システム600は、異なる処理を実行可能な複数の処理装置を含む。そのため、制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、複数の処理装置のうち、衝突による被害を軽減でき、且つ、作業効率の低下が抑制される適切な(特定の)処理装置に制御信号Cを出力することができる。
本実施形態によれば、検出領域SLに複数の物体B(例えば第1物体Ba及び第2物体Bb)が存在する場合、特定検出領域設定部36は、それら複数の物体Bのそれぞれに対応するように、複数の特定検出領域SD(例えば第1特定検出領域SDa及び第2特定検出領域SDb)を設定する。衝突判断部31は、複数の物体Bのうち、衝突の可能性が高い物体Bを特定する。これにより、制御部35は、衝突の可能性が高い物体Bとの衝突による被害を軽減するための制御信号Cを出力することができる。したがって、複数の物体Bが存在していても、いずれの物体Bとの衝突の可能性が高いか否かを的確に判断し、ダンプトラック1と物体Bとの衝突による被害を軽減することができる。
本実施形態によれば、ダンプトラック1が所定の動作を実行した場合、特定検出領域SDは無効化される。ダンプトラック1の所定の動作は、直進状態から所定の閾値以上に走行方向を変化させる動作、所定の閾値以下の走行速度で低速走行する動作、及び後進する動作の少なくとも一つを含む。これら所定の動作は、ダンプトラック1と物体Bとの衝突が発生する可能性が低い動作である。衝突が発生する可能性が低い所定の動作が実行される場合においても、特定検出領域SDが設定されると、制御部35が過剰に制御信号Cを出力し、処理システム600が過剰に作動する可能性がある。本実施形態によれば、ダンプトラック1と物体Bとの衝突が発生する可能性が低い所定の動作が実行されるとき、特定検出領域SDが無効化されることによって、処理システム600が過剰に(不必要に)作動することが抑制される。
本実施形態によれば、ベッセル3の積荷の積載状態を考慮して、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに衝突(追突)する可能性を判断するようにしたので、前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減しつつ、鉱山の生産効率の低下やダンプトラック1の作業効率の低下を抑制することができる。空荷状態のダンプトラック1は、積荷状態のダンプトラック1よりも軽い重量であり、高い走行性能を有する。ダンプトラック1の走行性能は、駆動性能、制動性能、及び旋回性能の少なくとも一つを含む。走行性能が高い空荷状態のダンプトラック1は、走行性能が低い積荷状態のダンプトラック1よりも、物体との衝突による被害を軽減するための処理システム600による処理を十分に実行可能である。衝突による被害を軽減するために、走行性能が高い空荷状態のダンプトラック1の走行が、走行性能が低い積荷状態のダンプトラック1に基づいて制限されると、空荷状態のダンプトラック1の走行が過度に制限されることとなる。その結果、ダンプトラック1の作業効率が低下する可能性がある。例えば、走行が過度に制限されると、空荷状態のダンプトラック1は、走行速度を低減したり走行を停止したりする必要が無いにもかかわらず、走行速度を低減したり走行を停止したりしてしまうこととなる。本実施形態によれば、ダンプトラック1の走行性能に与える影響が大きいベッセル3の積荷の積載状態を考慮して、前方ダンプトラック1Fとの衝突(追突)の可能性が判断されるので、衝突による被害を軽減しつつ、空荷状態のダンプトラック1の走行が過度に制限されることが抑制される。また、積荷状態のダンプトラック1の走行は適切に制限されるため、衝突による被害が軽減される。したがって、ベッセル3の積荷の積載状態が変化しても、ダンプトラック1は、衝突による被害を軽減しつつ、高い作業効率で稼働することができる。
本実施形態においては、ベッセル3の積荷の積載状態に基づいて変化する変数としてダンプトラック1の減速度aに着目し、その減速度aに基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するまでの時間を推定して、衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとに基づいて、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに衝突するまでの時間を推定する。停止距離通過時間Tsは、変数設定部33で設定されたダンプトラック1の減速度aと、走行状態検出装置10で検出されたダンプトラック1の走行速度Vtとに基づいて導出される。物体到達時間Taは、物体検出装置12の検出結果に基づいて導出される。衝突判断部31は、変数設定部33で設定された減速度aと走行状態検出装置10の検出結果と物体検出装置12の検出結果とに基づいて、前方ダンプトラック1Fと衝突するか否かを推定することができる。これにより、衝突の可能性を適確に判断することができる。
本実施形態によれば、停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを算出し、それら停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taに基づいて、衝突の可能性を判断するようにしたので、衝突の可能性を適確に判断することができる。
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1は、車体5が前部と後部に分割され、それら前部と後部とが自由関節で結合されたアーティキュレート式のダンプトラックでもよい。
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1は、鉱山の採掘現場のみならず、例えば、ダムの建設現場等で用いられてもよい。