JP7343334B2 - レンズユニットおよびカメラモジュール - Google Patents

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本発明は、レンズユニットおよびカメラモジュールに関し、特に、自動車等の車両に搭載される車載カメラに設けられ得るレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラのカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
前記構成のレンズユニット(カメラモジュール)は、車載カメラに限らず、様々な光学機器で使用され得るが、とりわけ、寒冷地で外部環境に晒される場合には、レンズの凍結やレンズへの着雪が想定し得るため、一般に融雪機能等を備えるようになっている。具体的には、例えば、図12に示されるように、鏡筒120内に収容保持されたレンズ群Lのうち最も物体側に位置されて鏡筒120から露出される(外部環境に晒される)第1のレンズ101を暖めるべく、第1のレンズ101の像側に面する表面101aと第1のレンズ101に隣接する第2のレンズ102の物体側に面する表面102aとの間にPTC(positive temperature coefficient)ヒータ130を介挿するようにしている。
特開2013-231993号公報
ところで、第1のレンズ101がガラスレンズで第2のレンズ102が樹脂レンズである一般的な形態では、PTCヒータ130が発する熱が特に第2のレンズ102の表面上の反射防止膜に悪影響を及ぼす場合がある。すなわち、PTCヒータ130によって第1のレンズ101と共に第2のレンズ102も所定の温度(例えば120℃)まで加熱されると、ガラスよりも熱膨張率が高い樹脂製の第2のレンズ102が熱膨張するが、第2のレンズ102の表面上の反射防止膜がその熱膨張に追従できず、反射防止膜にクラックが発生する場合がある。そのようなクラックは、レンズユニットの光学特性に悪影響を及ぼし得る。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズを暖めるヒータの熱によってレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けないようにするレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
前記レンズ群を構成する最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと隣接する樹脂製の第2のレンズの表面に反射防止膜が設けられるとともに、前記第1のレンズの像側に面する表面と前記第2のレンズの物体側に面する表面との間にヒータが介挿され、
前記反射防止膜は、前記ヒータの熱に伴う前記第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有することを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、樹脂製の第2のレンズの表面に設けられる反射防止膜は、第1のレンズを暖め得るヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有しているため、ヒータによって第1のレンズと共に加熱される第2のレンズが熱膨張しても、その熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜にクラックが発生する)ようなことがない。すなわち、第1のレンズを暖めるヒータの熱によって第2のレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けることがない。
なお、本発明の上記構成において、「成膜状態が外観上変化しない」とは、初期の成膜状態を外観上保っていること、具体的には、第2のレンズの熱膨張によって所望の光学特性を損なうような外観上の膜損傷、例えばクラックが発生しないことを意味する。このような耐熱性を有する反射防止膜は、第2のレンズの少なくとも有効径の範囲にわたって、少なくとも第2のレンズの物体側に面する表面(ヒータと隣接する表面)に設けられるが、第2のレンズの像側に面する表面に更に設けられてもよい。無論、本発明の上記構成において、第1のレンズの物体側に面する表面および/または像側に面する表面に反射防止膜が設けられてもよいことは言うまでもない。また、本発明の上記構成では、ヒータと隣接接触するガラス製の第1のレンズの像側に面する表面に、遮光、ゴースト防止のための墨塗り処理が施されてもよい。また、同様の目的で、ヒータと隣接接触する樹脂製の第2のレンズの物体側に面する表面に遮光リング(または墨塗り処理)が設けられてもよい。また、上記構成においては、「ヒータ」としては、例えば、PTC(positive temperature coefficient)ヒータを挙げることができる。
また、本発明の上記構成において、第2のレンズの反射防止膜は、ヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有するべく、例えば、高耐熱反射防止膜として設けられてもよい。この場合、高耐熱反射防止膜は、当該高耐熱反射防止膜中の体積率が5~74%である複数の無機粒子と、隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である空気層と、前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5~95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、を備えていてもよい。あるいは、高耐熱反射防止膜が空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマーと微粒子とが交互に吸着されてレンズに積層状態で結合されていてもよい。いずれの場合にも、このような高耐熱反射防止膜は、レンズの熱変形にも追従できる優れた耐熱特性を有する。また、このような高耐熱反射防止膜は、一般に塗布によって形成され、その製法等に起因してその表面が必然的に凹凸形状を成すようになる。このような高耐熱反射防止膜の表面の凹凸形態により、ヒータと反射防止膜との接触、したがって、ヒータと第2のレンズとの接触がほぼ点接触となり(ヒータと第2のレンズとの接触面積が小さくなり)、そのため、ヒータの熱が第2のレンズに伝わり難くなる。その結果、第2のレンズの熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けることがなくなる。すなわち、高耐熱反射防止膜は、それ自体の優れた耐熱性により第2のレンズが熱膨張した場合であってもそれ自体の損傷を直接的に防止できるだけでなく、その表面の凹凸形態により第2のレンズの熱膨張を抑えてそれ自体の損傷を間接的に防止することもできる。
また、本発明の上記構成において、第2のレンズの反射防止膜は、ヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有するべく、例えば、第1の屈折率を有する蒸着材料から形成される第1の膜と、第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する蒸着材料から形成される第2の膜とを交互に積層して成り、第1の膜および/または第2の膜を形成する材料が第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有する材料によって形成されてもよい。例えば、第1の膜を形成する材料がSiOとAlとの混合材料を主成分とし、第2の膜を形成する材料がNbTiOを主成分としてもよい。また、この場合、第2のレンズの表面に凹凸加工を施し、その上に蒸着される反射防止膜がこの凹凸に倣うようにその表面に凹凸形態を有していてもよい。このような反射防止膜および第2のレンズの表面の凹凸形態により、ヒータと第2のレンズとの接触がほぼ点接触となり(ヒータと第2のレンズとの接触面積が小さくなり)、そのため、ヒータの熱が第2のレンズに伝わり難くなる。その結果、第2のレンズの熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けることがなくなる。
また、本発明は、他の態様において、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
前記レンズ群を構成する最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと隣接する樹脂製の第2のレンズの表面に反射防止膜が設けられるとともに、前記第1のレンズの像側に面する表面と前記第2のレンズの物体側に面する表面との間にヒータが介挿され、
前記ヒータと前記第2のレンズとの間に断熱シートが介挿されることを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、ヒータと第2のレンズとの間に断熱シート(シート状またはテープ状の断熱体)が介挿されているため、ヒータの熱が第2のレンズに伝わり難くなる。その結果、第2のレンズの熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けること、例えば、反射防止膜が第2のレンズの熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜にクラックが発生する)といったことがなくなる。しかしながら、このような断熱シートに加え、反射防止膜の熱的損傷防止の確実性を期すため、反射防止膜は、前述したように、ヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有していることが好ましい。
また、本発明は、さらに他の態様において、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
前記レンズ群を構成する最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと隣接する樹脂製の第2のレンズの表面に反射防止膜が設けられるとともに、前記第1のレンズの像側に面する表面と前記第2のレンズの物体側に面する表面との間にヒータが介挿され、
前記ヒータと前記第2のレンズとの接触界面が凹凸状に粗面化されて成ることを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、ヒータと第2のレンズとの接触界面の粗面化された凹凸形態により、ヒータと第2のレンズとの接触がほぼ点接触となり(ヒータと第2のレンズとの接触面積が小さくなり)、そのため、ヒータの熱が第2のレンズに伝わり難くなる。その結果、第2のレンズの熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けること、例えば、反射防止膜が第2のレンズの熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜にクラックが発生する)といったことがなくなる。しかしながら、このような接触界面における粗面化処理に加え、反射防止膜の熱的損傷防止の確実性を期すため、反射防止膜は、前述したように、ヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有していることが好ましい。
なお、ヒータと第2のレンズとの接触界面の粗面化処理は、ヒータ側に施されてもよく、あるいは、第2のレンズ側に施されてもよい。また、第2のレンズ側に粗面化処理が施される場合には、反射防止膜の表面のみに粗面化処理が施されてもよく、あるいは、第2のレンズの表面に凹凸状に粗面加工を施し、その上に形成される反射防止膜がこの凹凸に倣うようにその表面に凹凸形態を有してもよい。また、前述したようにヒータと接触して第2のレンズに遮光リングが設けられる場合には、この遮光リング(または、墨塗り処理が可能な場合には、墨塗布層の表面)に粗面化処理がなされてもよい。また、粗面化処理が施される表面の粗さは、例えば、二乗平均粗さRqで0.01μm~200μmであることが好ましい。
また、本発明の上記構成では、耐熱性の放射防止膜、粗面化処理、および、断熱シートを任意に組み合わせた構成も可能である。
また、本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットを備えていることを特徴とする。
このような構成によれば、前述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
本発明によれば、樹脂製の第2のレンズの表面に設けられる反射防止膜は、ヒータの熱に伴う第2のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有しているため、あるいは、ヒータと第2のレンズとの間に断熱シートが介挿されているため、あるいは、ヒータと第2のレンズとの接触界面が凹凸状に粗面化されて成るため、レンズを暖めるヒータの熱によってレンズ表面上の反射防止膜が悪影響を受けないようにすることができる。
ヒータを備える本発明の第1の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。 図1のレンズユニットの要部拡大断面図である。 図1のレンズユニットを構成する第2のレンズの表面上に形成される高耐熱反射防止膜の構造を概念的に示す要部拡大断面図である。 空隙を有する微粒子積層薄膜からなる他の高耐熱反射防止膜の構造を概念的にかつ段階的に示す要部拡大断面図である。 ヒータを備える本発明の第2の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。 図5のレンズユニットの要部拡大断面図である。 ヒータを備える本発明の第3の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。 図7のレンズユニットの要部拡大断面図である。 ヒータを備える本発明の第4の実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。 図9のレンズユニットの要部拡大断面図である。 図1のレンズユニットを備えるカメラモジュールの概略断面図である。 ヒータを備える従来のレンズユニットの概略断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、図1~図12において複数のレンズについては第1のレンズを除きハッチングを省略している。
図1は、ヒータを備える本発明の第1の実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば金属製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、および、第4のレンズ16から成る4つのレンズと、絞り部材22とを備えている。絞り部材22は、本実施の形態では、第3のレンズ15と第4のレンズ16との間に介挿されており、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。特に、本実施の形態では、第1のレンズ13が球面ガラスレンズであり、第2のレンズ14、第3のレンズ15、および、第4のレンズ16がそれぞれ樹脂製のレンズであるが、これに限定されない。例えば第3および第4のレンズがガラス製のレンズであってもよく、鏡筒12が樹脂によって形成されてもよい。
鏡筒12の物体側の端部(図1において上端部)にはキャップ23が螺着されており、このキャップ23によってレンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されている。無論、鏡筒12が樹脂により形成されている場合には、鏡筒12の物体側の端部を径方向内側にカシメることによって第1のレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されてもよい。
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第4のレンズ16よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24と前記キャップ23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16と絞り部材22とが光軸方向で保持固定されている。
最も物体側に位置される第1のレンズ13の像側に面する表面13bの外周環状部位と鏡筒12との間にはシール部材としてのOリング26が設けられ、これらの間を鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
また、本実施の形態では、鏡筒12から露出される(外部環境に晒される)第1のレンズ13を必要に応じて(融雪等を目的として)暖めるべく、第1のレンズ13の像側に面する表面13bと第1のレンズ13に隣接する第2のレンズ14の物体側に面する表面14aとの間に環状のヒータ40が介挿されている。特に、本実施の形態では、ヒータ40がPTC(positive temperature coefficient)ヒータとして形成される。なお、ヒータ40は導線73を介して図示しない電源から給電される。
また、本実施の形態では、ガラス製の第1のレンズ13の物体側に面する表面13aおよび像側に面する表面13bの凹面部位にそれぞれ反射防止膜(周知の任意の形態および材料から成る反射防止膜)30が設けられている。これらの反射防止膜30は、第1のレンズ13の少なくとも有効径の範囲にわたって設けられる。また、明確に図示しないが、ヒータ40と隣接接触する第1のレンズ13の像側に面する表面13bの部位には、遮光、ゴースト防止のための墨塗り処理が施されている。更に、本実施の形態では、樹脂製の第2のレンズ14の物体側に面する表面14aおよび像側に面する表面14bにも同様に反射防止膜30Aが設けられている。特に、本実施の形態において、第2のレンズ14に設けられる反射防止膜30Aは、第1のレンズ13に設けられる反射防止膜30とは異なり、ヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有している。しかしながら、第1のレンズ13に設けられる反射防止膜30が第2のレンズ14に設けられる反射防止膜30Aと同一のものであってもよく、あるいは、ヒータ40から離れた第2のレンズ14の像側に面する表面14b上の反射防止膜30Aが反射防止膜30に取って代えられてもよい。無論、第3のレンズ15および第4のレンズ16の表面にも同様に反射防止膜30(または反射防止膜30A)が設けられていても構わない。また、レンズ13,14,15,16の表面には、必要に応じて、親水膜、撥水膜等が更に設けられてもよい。
また、本実施の形態において、第2のレンズ14に設けられる反射防止膜30Aは、ヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有するべく、以下で更に詳しく説明する高耐熱反射防止膜として形成され、塗布によって第2のレンズ14の外周側面14cも含めて全表面にわたって設けられる。この高耐熱反射防止膜30Aは、当該高耐熱反射防止膜30A中の体積率が5~74%である複数の無機粒子と、隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である複数の空気層(体積率0%を含まず、空気層は高耐熱反射防止膜30Aに必須の構成要素である)と、前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5~95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、を備えている。以下、これについて詳しく説明する。
図3は、高耐熱反射防止膜30Aが形成されて成る第2のレンズ14の光入射面付近の要部拡大断面図である。図示のように、高耐熱反射防止膜30Aは、複数の無機粒子31と、バインダ32と、複数の空気層(空隙)33とを含む。無機粒子31の粘弾性はバインダ32の粘弾性と異なる。具体的には、無機粒子31のヤング率は50GPa以上である。バインダ32のヤング率は5GPa以下である。
高耐熱反射防止膜30Aは、異なる粘弾性を有する複数の組成物を含有する。そのため、高耐熱反射防止膜30Aは、高い強度と高い可撓性とを有する。樹脂からなる第2のレンズ14は、熱により膨張し得る。バインダ32のヤング率は低いため、高耐熱反射防止膜30Aの可撓性が高くなる。そのため、第2のレンズ14が熱により膨張しても、高耐熱反射防止膜30Aは割れにくい。一方、無機粒子31のヤング率は50GPa以上である。無機粒子31は、高耐熱反射防止膜30Aの強度を向上し、高耐熱反射防止膜30Aの表面に傷が形成されるのを抑制する。
バインダ32は、光透過性を有し、複数の無機粒子31を含有する。前述のように、バインダ32のヤング率は5GPa以下である。バインダ32は、有機化合物または無機化合物である。バインダ32は例えば樹脂である。樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン重合体、マレイン酸-ジアリルアミン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、フッ素ポリマー等の1種または2種以上からなる。フッ素ポリマーは、例えば、フルオロオレフィン類(フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2、2-ジメチル-1、3-ジオキソール等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等である。バインダ32の屈折率は、1.35以下であり、好ましい屈折率は1.30以下である。
また、バインダ32は、無機高分子、例えば、珪素化合物あるいはその加水分解物もしくはその重縮合物であってもよい。珪素化合物は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、無機粒子の表面を修飾する。これにより、有機溶媒中における無機粒子の分散安定性が向上し、無機粒子の凝集および沈降が抑制される。
無機粒子31は、例えば、無機酸化物や、無機フッ化物である。無機酸化物はたとえば、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化珪素、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ビスマスである。無機フッ化物はたとえば、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムである。複数の無機粒子31は、上記無機酸化物および無機フッ化物の中から選択される1種または2種以上を含む。
好ましくは、無機粒子31は、酸化アルミニウムおよび/または酸化珪素である。酸化アルミニウムおよび酸化珪素の屈折率は、いずれも低い。酸化アルミニウムの屈折率は1.7~1.9であり、酸化珪素の屈折率は1.4~1.7である。そのため、高耐熱反射防止膜30の屈折率を低くすることができる。
無機粒子31の粒径が大きすぎると、無機粒子31が光を散乱しやすくなる。さらに、高耐熱反射防止膜30Aの膜厚にばらつきが生じる。したがって、無機粒子31の好ましい平均粒径は、100nm以下である。平均粒径の好ましい下限値は8nmである。粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による写真画像から任意に抽出された100個の無機粒子の粒径を測定し、その平均値を求めることにより決定される。
また、高耐熱反射防止膜30A中の無機粒子31の体積率は、5~74%である。また、高耐熱反射防止膜30A中のバインダ32の体積率は、5~95%である。高耐熱反射防止膜30A中の空気層の体積率は65%以下である。
無機粒子31の体積率が小さすぎれば、高耐熱反射防止膜30Aの強度が低下する。また、無機粒子31の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30Aの可撓性が低下する。一方、バインダ32の体積率が小さすぎれば、高耐熱反射防止膜30Aの可撓性が低下する。また、バインダ32の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30Aの強度が低下する。
無機粒子31の体積率が5~74%であり、かつ、バインダ32の体積率が5~95%であり、空気層が65%以下であれば、高耐熱反射防止膜30Aは可撓性および強度を有する。そのため、高耐熱反射防止膜30には傷が付きにくく、かつ、高温時に樹脂からなるレンズ14が熱膨張しても、高耐熱反射防止膜30Aはひび割れしにくい。
高耐熱反射防止膜30Aは、湿式プロセスにより形成される。より具体的には、高耐熱反射防止膜30Aは、高耐熱反射防止膜30Aを構成する塗布液を第2のレンズ14の表面に塗布することにより形成される。塗布液を塗布する方法は、たとえば、インクジェットプリンティング法、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷等である。
以下、製造方法の一例として、ディップコート法により反射防止膜を形成する方法を説明する。
高耐熱反射防止膜30Aの組成を含有する塗布液を準備する。塗布液で使用される溶媒はたとえば、テトロヒドラフラン(tetrahydrofuran:THF)や、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide:DMF)である。溶媒は、これらの物質に限定されない。溶媒は水でもよい。溶媒が有機溶媒である場合、好ましい有機溶媒の沸点は30℃~250℃である。有機溶媒の沸点が低すぎる場合、有機溶媒の揮発速度が速すぎる。そのため、高耐熱反射防止膜30Aの膜厚が均一になりにくい。一方、有機溶媒の沸点が高すぎると、有機溶媒が揮発しにくい。そのため、高耐熱反射防止膜30Aが形成されにくい。好ましい有機溶媒の沸点は50℃~150℃である。
塗布液の粘度および表面張力は、低い方が好ましい。塗布液の好ましい粘度は10(mPa・s)以下であり、更に好ましくは1(mPa・s)以下である。塗布液の好ましい表面張力は70(mN/m)以下であり、更に好ましくは20(mN/m)以下である。第2のレンズ14を挟持した挟持部材を塗布液で満たされたディップ槽から引き上げるときに、挟持部材から塗布液を速やかに排出するためである。塗布液の粘度および表面張力の物性を制御するために、塗布液に界面活性剤などを添加してもよい。
塗布液において、無機粒子31の100重量部に対するバインダ32の重量部は、1~100であり、溶媒の重量部は2000~100000である。この場合、形成された高耐熱反射防止膜30A内の無機粒子31の体積率は5~70%になり、バインダ32の体積率は30~95%になる。
次に、第2のレンズ14を挟持部材で挟持し、塗布液を入れたディップ槽に浸漬する。
次に、浸漬された第2のレンズ14を、一定の速度でディップ槽から引き上げる。これにより、第2のレンズ14の表面に塗布液が塗布される。引き上げる速さは、第2のレンズ14表面に形成する高耐熱反射防止膜30Aの厚さに応じて変更される。
次に、第2のレンズ14に塗布された塗布液を乾燥する。引き上げられた第2のレンズ14を所定の温度でベークしてもよい。
これにより高耐熱反射防止膜30Aが形成される。
高耐熱反射防止膜30A内では、無機粒子31同士が接触する。隣り合う無機粒子31の間に、空気層33が形成される。前述のように、高耐熱反射防止膜30A中の無機粒子31の体積率は、5~74%であり、70%未満でもよい。バインダ32の体積率は5~95%であり、95%未満でもよい。空気層33の体積率が大きすぎれば、高耐熱反射防止膜30Aの強度が低下する。そのため、高耐熱反射防止膜30A中の空気層33の体積率は65%以下である。
空気層33は、例えば、塗布液内の前述の無機粒子31に対するバインダ32の比率に応じて形成される。塗布液内の無機粒子100重量部に対する好ましいバインダ32の重量部は、1~100である。この場合、塗布液を乾燥した後、高耐熱反射防止膜30A内に空気層33が形成される。
空気層33は屈折率が低いため、高耐熱反射防止膜30Aの屈折率は低下する。そのため、光の反射がさらに抑制される。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30Aは、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜30Aのひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)33は、隣り合う無機粒子31,31間に形成されているため、高耐熱反射防止膜30Aが形成されている第2のレンズ14が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30Aがそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30Aが破壊されてしまうことを防止できる。
図4は、図3に示した高耐熱反射防止膜30Aを、その見方を代えてより詳細に示したものであり、基本的に、図3に示す高耐熱反射防止膜30Aと同様のものであるが、以下の説明では、図4に示す高耐熱反射防止膜を高耐熱反射防止膜30A’としてその構造および成膜方法を説明する。この高耐熱反射防止膜30A’は空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマー(バインダ)と微粒子とが交互に吸着され、アルコール性シリカゾル生成物を接触させることにより、第2のレンズ14と微粒子および微粒子同士が結合している(レンズ14に積層状態で結合されている)ことを特徴とする。
このような微粒子積層薄膜(高耐熱反射防止膜)30A’は、以下のようにして形成される。図4に示すように、第2のレンズ14上には空隙64を有する微粒子積層薄膜30A’が形成される。微粒子積層薄膜30A’は、電解質ポリマー62(例えばバインダ)および微粒子63を交互に吸着させ、且つ、アルコール性シリカゾル生成物65(例えばバインダ)を介して、レンズ14と微粒子63および微粒子63と微粒子63とが結合するように構成される。以下、微粒子積層薄膜30A’の各成分について説明する。
微粒子積層薄膜30A’の形成に用いる微粒子は、溶液に分散されている状態で平均一次粒子径が、2~100nmであることが微粒子積層薄膜30A’の透明性を得るために好ましく、微粒子積層薄膜30A’の光学機能の確保の観点から、2~40nmがより好ましく、2~20nmが最も好ましい。
ここで使用し得る微粒子としては無機微粒子が挙げられる。好ましくは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウムおよびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物が、透明性の観点から好適に選ばれる。
ここで使用する電解質ポリマーとしては、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。この電解質ポリマー溶液は、微粒子の表面電荷と反対または同じ符号の電荷の電解質ポリマーを、水、有機溶媒または水溶性の有機溶媒と水の混合溶媒に溶解したものである。
アルコール系シリカゾルとしては、4、3、2官能のアルコキシシラン、およびこれらアルコキシシラン類の縮合物、加水分解物、シリコーンワニス等が使用できる。アルコール性シリカゾル生成物は、少なくとも1種類以上の、下記の一般式で表わされる低級アルキルシリケートを、メタノールおよびエタノールのうちのいずれかの中で加水分解して調製したアルコール性シリカゾルを含むことが好ましい。
Figure 0007343334000001
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示す。Rは非加水分解性の有機基を示す。)
また、レンズ14は、そのまま用いるか、またはそれらの表面にコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、紫外線照射、オゾン処理、アルカリや酸等による化学的エッチング処理、シランカップリング処理等によって、極性を有する官能基を導入してレンズの表面電荷をマイナス若しくはプラスする。
ここで、空隙を有する微粒子積層薄膜30A’を生成するためには、例えばディップコート法を用いる。微粒子積層薄膜30A’は、以下の工程(1)~(3)を順に実施することにより形成できる(図4参照)。
(1)レンズ14上に、電解質ポリマー溶液または微粒子分散液のいずれかを接触または塗布する工程により、電解質ポリマー62または微粒子63の層を形成する(図4(a))。
(2)電解質ポリマー溶液を接触または塗布させた後のレンズ14上に該電解質ポリマー溶液の電解質ポリマーと反対電荷を有する微粒子の分散液を接触または塗布する工程、または微粒子分散液を接触または塗布させた後のプラスチック基材上に該微粒子分散液の微粒子と反対電荷を有する電解質ポリマーの溶液を接触または塗布する工程により、微粒子63または電解質ポリマー62の層を形成する(図4(b))。
(3)電解質ポリマー溶液または微粒子を接触または塗布させた後のレンズ14上に、アルコール性シリカゾル生成物65を接触または塗布する工程により、アルコール性シリカゾル生成物65を介してレンズ14と微粒子63、および微粒子63同士を結合させる(図4(c))。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30A’は、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜30A’のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空隙64の存在により、高耐熱反射防止膜30A’が形成されているレンズ14が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30A’がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30A’が破壊されてしまうことを防止できる。
なお、上述のような高耐熱反射防止膜30A、30A’は、125℃以上の耐熱性を有するとともに、樹脂のレンズ14の熱膨張率に近い熱膨張率を有するものを選択することが好ましい。
また、図4に示される微粒子積層薄膜(高耐熱反射防止膜)30A’の形成工程では、膜の定着性を高めるためにアルコール性シリカゾル生成物65が使用されたが、無論、アルコール性シリカゾル生成物65を用いることなく高耐熱反射防止膜30A’を形成することができる。その場合には、例えば、BET法で測定した平均一次粒子径が8nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(日産化学工業(株)社製、商品名:スノーテックス(ST)OUP、シリカゾル)をpHは調整せずに濃度を1質量%に調整した負の電荷を有する微粒子分散液として用い、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA、アルドリッチ社製)を0.1質量%、pH10に調整した水溶液を電解質ポリマー溶液として用いる。そして、レンズ14を、電解質ポリマー溶液に1分間浸漬後にリンス用の超純水を1分間シャワーする工程(a)、および、微粒子分散液に1分間浸漬後にリンス用の超純水を1分間シャワーする工程(b)をこの順に施す。その後、工程(a)1回と工程(b)1回を順に行なうことを1サイクルとして、このサイクル数を微粒子交互積層回数とし、微粒子交互積層回数を4回行なった後、25℃で24時間乾燥する。これにより、レンズ14の表面に微粒子積層膜30A’が形成される。すなわち、この製法は、レンズ14の表面に電解質ポリマー溶液(バインダ溶液)を接触させた後にリンスする第1の工程、この第1の工程後、レンズ14の表面に負の電荷を有する微粒子の分散液を接触させた後にリンスする第2の工程、および、第1の工程と第2の工程とを交互に繰り返して微粒子積層膜を形成する第3の工程を含むとともに、随意的には、微粒子積層膜に電解質ポリマー溶液(バインダ溶液)を接触させた後にリンスする更なる工程を含み、それにより、図4(c)の工程が排除される。
以上のような形態で反射防止膜30A(あるいは30A’)が形成されることにより、その高耐熱反射防止膜30Aの表面は、図2に示されるように必然的に凹凸形状を成すようになる(図2中、凹凸部が参照符号29で示される)。
以上のように、本実施の形態によれば、樹脂製の第2のレンズ14の表面14a(14b)に設けられる反射防止膜30Aは、第1のレンズ13を暖め得るヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有しているため、ヒータ40によって第1のレンズ13と共に加熱される第2のレンズ14が熱膨張しても、その熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜30Aにクラックが発生する)ようなことがない。すなわち、第1のレンズ13を暖めるヒータ40の熱によって第2のレンズ14表面上の反射防止膜30Aが悪影響を受けることがない。
特に、本実施の形態において、反射防止膜30Aは、前述したような高耐熱反射防止膜として形成されているため、第2のレンズ14の熱変形にも追従できる優れた耐熱特性を有する。また、このような高耐熱反射防止膜30Aは、その表面が必然的に凹凸形状を成すようになるため、その凹凸形態により、ヒータ40と反射防止膜30Aとの接触、したがって、ヒータ40と第2のレンズ14との接触がほぼ点接触となり(ヒータ40と第2のレンズ14との接触面積が小さくなり)、そのため、ヒータ40の熱が第2のレンズ14に伝わり難くなる。その結果、第2のレンズ14の熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ14の表面上の反射防止膜30Aが悪影響を受けることがなくなる。すなわち、高耐熱反射防止膜として形成される反射防止膜30Aは、それ自体の優れた耐熱性により第2のレンズ14が熱膨張した場合であってもそれ自体の損傷を直接的に防止できるだけでなく、その表面の凹凸形態により第2のレンズ14の熱膨張を抑えてそれ自体の損傷を間接的に防止することもできる。
図5および図6は、ヒータ40を備える本発明の第2の実施の形態に係るレンズユニット11Aを示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11Aは、第2のレンズ14の表面14a,14bに設けられる反射防止膜30A”の形態が第1の実施の形態のそれと異なる。すなわち、本実施の形態において、反射防止膜30A”は、ヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有するべく、例えば、第1の屈折率を有する蒸着材料から形成される第1の膜と、第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する蒸着材料から形成される第2の膜とを交互に積層して成り、第1の膜および/または第2の膜を形成する材料が第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有する材料によって形成されている。具体的には、例えば、第1の膜を形成する材料がSiOとAlとの混合材料を主成分とし、前記第2の膜を形成する材料がNbTiOを主成分としてもよい。このような反射防止膜30A”は、第2のレンズ14の物体側に面する表面14aおよび像側に面する表面14bにそれぞれ、第2のレンズ14の少なくとも有効径の範囲にわたって設けられる。なお、それ以外の構成は第1の実施の形態と同一である。
したがって、このような反射防止膜30A”を伴う本実施の形態のレンズユニット11Aも第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
図7および図8は、ヒータ40を備える本発明の第3の実施の形態に係るレンズユニット11Bを示している。なお、以下、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のレンズユニット11Bでは、第2のレンズ14の表面14a,14bに設けられる反射防止膜が、ヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を特に有していない(無論、例えば前述した高耐熱反射防止膜として形成されていても構わない)。そのため、特に本実施の形態では、図7に示されるように、第1のレンズ13に設けられる反射防止膜30と同一の反射防止膜30が、第2のレンズ14の物体側に面する表面14aおよび像側に面する表面14bにそれぞれ、第2のレンズ14の少なくとも有効径の範囲にわたって設けられる。
また、本実施の形態のレンズユニット11Bでは、ヒータ40と第2のレンズ14との接触界面が凹凸状に粗面化されている。特に、本実施の形態では、図8に拡大して示されるように、第2のレンズ14の物体側に面する表面14aのうち、ヒータ40と隣接する環状部位に、凹凸状に粗面加工が施される(図7および図8には、粗面を形成する凹凸部が参照符号77で示される)。この場合、粗面加工が施される第2のレンズ14の表面部位の粗さは、例えば、二乗平均粗さRqで0.01μm~200μmであることが好ましい。また、粗面加工は、例えば、成形加工する際に金型の表面を鏡面仕上げではなく凹凸にしてこれを成形品に転写するようにして行なわれることが好ましい。このような粗面加工の凹凸部位では、その上に形成される反射防止膜30もこの凹凸に倣うようにその表面に凹凸形態を有するようになる(図8参照)。
なお、このような粗面加工は、ヒータ40側に施されてもよい。また、このような粗面加工を第2のレンズ14に施さずにヒータ40と隣接する第2のレンズ14上の反射防止膜30の表面のみに施してもよい。
このように、本実施の形態によれば、ヒータ40と第2のレンズ14との接触界面が粗面化された凹凸形態を成すため、ヒータ40と第2のレンズ12との接触がほぼ点接触となり(図8参照)、そのため、ヒータ40の熱が第2のレンズ14に伝わり難くなる。その結果、第2のレンズ14の熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ14の表面上の反射防止膜30が悪影響を受けること、例えば、反射防止膜20が第2のレンズ14の熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜30にクラックが発生する)といったことがなくなる。
図9および図10は、ヒータ40を備える本発明の第4の実施の形態に係るレンズユニット11Cを示している。なお、以下、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のレンズユニット11Cにおいても、第3の実施の形態と同様、第2のレンズ14の表面14a,14bに設けられる反射防止膜が、ヒータ40の熱に伴う第2のレンズ14の熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を特に有していない(無論、例えば前述した高耐熱反射防止膜として形成されていても構わない)。そのため、本実施の形態においても、図9に示されるように、第1のレンズ13に設けられる反射防止膜30と同一の反射防止膜30が、第2のレンズ14の物体側に面する表面14aおよび像側に面する表面14bにそれぞれ、第2のレンズ14の少なくとも有効径の範囲にわたって設けられる。そして、本実施の形態のレンズユニット11Cでは、さらに、ヒータ40と第2のレンズ14との間に断熱シート(シート状またはテープ状の断熱体)90が介挿されている。この場合、断熱シート90を形成する材料としては、例えば、繊維系断熱材(グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー、炭化コルク、羊毛断熱材)、発砲系断熱材(ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン、発砲ゴム、押し出し法ポリスチレン)、その他(エアロゲル、ヒュームドシリカ、真空断熱材)を挙げることができる。
このように、本実施の形態によれば、ヒータ40と第2のレンズ14との間に断熱シート90が介挿されているため、ヒータ40の熱が第2のレンズ14に伝わり難くなる。その結果、第2のレンズ14の熱膨張を抑えることができ、ひいては、その熱膨張によって第2のレンズ14の表面上の反射防止膜30が悪影響を受けること、例えば、反射防止膜30が第2のレンズ14の熱膨張に追従できずに成膜状態が外観上変化してしまう(例えば反射防止膜30にクラックが発生する)といったことがなくなる。
また、図11は、以上のような構成を成すレンズユニットを有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ100が装着された図1の第1の実施の形態に係るレンズユニット11を含んで構成されるが、前述した第2~第4の実施の形態に係るレンズユニット11A,11B,11Cを含んで構成されても構わない。
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
以上、特定の実施の形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状、反射防止膜、ヒータ、粗面加工部分、および、断熱シートの形成形態は、前述した実施の形態に限定されない。また、前述した実施の形態では、第1のレンズがガラス製であるが、コスト低減のために第1のレンズを樹脂により形成する場合には、第1のレンズに設けられる反射防止膜も、ヒータの熱に伴う第1のレンズの熱膨張によって成膜状態が外観上変化しない耐熱性を有することが好ましく、また、ヒータと隣接する部位に粗面化処理が施されることが好ましく、あるいは、ヒータと第1のレンズとの間に断熱シートが設けられることが好ましい。また、前述の実施の形態では、第1のレンズがガラス製で、第2のレンズが樹脂製であることから、第2のレンズ側で反射防止膜の耐熱性、断熱シート、粗面化処理の必要性が生じるが、第2のレンズもガラス製にすれば、反射防止膜の耐熱性、断熱シート、粗面化処理を不要にできることは言うまでもない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
11,11A,11B,11C レンズユニット
12 鏡筒
13 第1のレンズ
14 第2のレンズ
30A,30A’,30A” 反射防止膜
40 ヒータ
77 粗面加工の凹凸部
90 断熱シート
300 カメラモジュール
L レンズ群
O 光軸

Claims (6)

  1. 複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
    前記レンズ群を構成する最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと隣接する樹脂製の第2のレンズの表面に反射防止膜が設けられるとともに、前記第1のレンズの像側に面する表面と前記第2のレンズの物体側に面する表面との間にヒータが介挿され、
    前記ヒータと前記第2のレンズとの間に断熱シートが介挿されることを特徴とするレンズユニット。
  2. 前記断熱シートは、繊維系断熱材、発砲系断熱材のいずれかを材料として含むことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
  3. 複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
    前記レンズ群を構成する最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズと隣接する樹脂製の第2のレンズの表面に反射防止膜が設けられるとともに、前記第1のレンズの像側に面する表面と前記第2のレンズの物体側に面する表面との間にヒータが介挿され、
    前記ヒータと前記第2のレンズとの接触界面が凹凸状に粗面化されて成ることを特徴とするレンズユニット。
  4. 前記第2のレンズの表面部位の粗さは、二乗平均粗さRqで0.01μm~200μmであることを特徴とする請求項3記載のレンズユニット。
  5. 前記第2のレンズは、成形加工する際に金型の表面を凹凸にしてこれが転写されて凹凸状に粗面化されていることを特徴とする請求項3記載のレンズユニット。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載のレンズユニットを備えるとともに、前記レンズユニットにより形成される像を受光する位置に撮像素子が配置されることを特徴とするカメラモジュール。
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