JP7092788B2 - レンズユニット - Google Patents
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Description
通常、ガラスレンズや樹脂レンズには、反射防止膜が施されるのが一般的である。反射防止膜には、透過率を増やしたり、コントラストを高めたり、ゴースト像の発生を取り除いたりして、光学素子の効率を高める効果がある。反射防止膜は、真空蒸着によりガラスレンズおよび樹脂レンズにコーティングされる。反射防止膜としては、たとえばSiO2層とLaTiO3層を交互に形成したものや、SiO2層とTa2O5層を交互に形成したものがよく利用されている。なお、真空蒸着による反射防止膜のコーティングでは、レンズ表面の一部だけ、コーティングすることが可能である。また、車外に露出する最前のレンズには、反射防止膜のコーティングとともに、雨や洗車等の水に対応して撥水加工が施されている。
このような構成によれば、高耐熱反射防止膜が125℃でひび割れるのが抑制され、高温下であっても性能を維持することができる。なお、ひび割れの原因には、高耐熱反射防止膜の耐熱性だけではなく、樹脂レンズと高耐熱反射防止膜との熱膨張率の差があり、高耐熱反射防止膜は、樹脂レンズに設けられた状態で少なくとも125℃以下でひび割れないことが好ましく、高耐熱反射防止膜の材質単体の場合も125℃以下で熱を原因とする損傷が生じないものであることが好ましい。また、125℃を超える場合に、できるだけ高耐熱反射防止膜が熱による損傷を受けないことが好ましいが、140℃以上や150℃以上の耐熱性がなくてもよい。
このような構成により、高耐熱反射防止膜は、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)は、隣り合う無機粒子の間に形成されているため、高耐熱反射防止膜が形成されているレンズが温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜が破壊されてしまうことを防止できる。なお、かかる高耐熱反射防止膜はレンズに浸漬により形成されることが好ましい。
このような構成により、高耐熱反射防止膜は、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空隙の存在により、高耐熱反射防止膜が形成されているレンズが温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜が破壊されてしまうことを防止できる。なお、かかる高耐熱反射防止膜はレンズに浸漬により形成されることが好ましい。
本発明においては、外界に露出し、外界からの接触の可能性がある最も物体側(前側)のガラスレンズには高耐熱反射防止膜を設けず、外界からの接触の可能性がない内部の樹脂レンズに対して高耐熱反射防止膜を設けることにより、接触による損傷を防止しつつ、高温下での反射防止膜のひび割れを抑制し、高温下での耐久性を向上し、高温下での耐久性のある光学特性に優れたレンズユニットを提供することができる。
このような構成によれば、最も物体側の外界に露出するレンズをガラスレンズとするとともに、コストの安い樹脂レンズを用いることにより、耐久性が高く安価なレンズユニットとすることができる。この際に最も物体側のガラスレンズに超硬質膜を施すことにより、ガラスレンズの表面が超硬質膜で覆われて傷付き難くなり、外界に露出するガラスレンズの耐久性が向上し、傷による性能劣化を抑制できる。
このような構成によれば、走行時や洗車等により生じる摩擦程度で傷が付くのを抑制し、レンズユニットの性能を長期に維持することが可能となる。
また、本発明の前記構成において、鏡筒は、光軸方向から見て、高耐熱反射防止膜が形成された樹脂レンズと点接触する内周面形状を成すことが好ましい。その場合、鏡筒は、樹脂レンズの高耐熱反射防止膜と接触するその内周面が多角形に形成されることが更に好ましい。
前述したようにその構造上非常に柔らかいとともに脆くて剥がれ易い高耐熱反射防止膜が浸漬によってレンズの全面にわたって形成される場合、レンズを保持する鏡筒の内周面が円形であると、鏡筒がレンズと面接触する結果となるため、レンズを鏡筒内に挿入して組み付ける際や振動試験時等においてレンズの側面にコーティングされた高耐熱反射防止膜が鏡筒の内周面と擦れ合ってレンズから剥がれ落ち、それが異物となって外観不良や光学性能の低下につながる虞がある。しかしながら、本発明のように樹脂レンズの高耐熱反射防止膜と接触する鏡筒の内周面を多角形に形成すれば、鏡筒がレンズと点で接触することになるため、鏡筒とレンズとの接触面積が少なくなり、高耐熱反射防止膜の剥離(脱落)を防止することができる。この場合、鏡筒の多角形の角数は8~14であることが好ましい。角数が8を下回ると、レンズの側面と鏡筒の内周面との間の隙間が大きくなって鏡筒が大径化してしまい、一方、角数が14を上回ると、レンズの側面にコーティングされた高耐熱反射防止膜と鏡筒の内周面との接触面積が大きくなり、高耐熱反射防止膜の剥離が生じ易くなる。そのため、レンズ成形時のゲートに関連するレンズ外周の非円形部のサイズにも依るが、樹脂レンズの高耐熱反射防止膜と接触する鏡筒の内周面は12角形であることが更に好ましい。これによれば、鏡筒に対するレンズの座り(嵌まり具合)が良好となり、鏡筒に対するレンズの組み込み挿入がし易くなる。
図1に示す本実施の形態のレンズユニット11は、例えば、車載カメラ用のものであり、自動車の外側に少なくともレンズユニット11の物体側の端部を露出して設置される。
本実施の形態において、接合レンズ18は、図2に示すように、物体側の凹レンズ16と、像側の凸レンズ17とを接着剤7(図3に図示)で貼り合わせたものである。
レンズ13は、樹脂レンズより硬いガラスレンズであり、当該ガラスレンズには、超硬質膜が施されている。超硬質膜のモース硬度は、8.0以上となっている。
この超硬質膜は、ガラス上にSi3N4層とSiO2層を交互に形成した6層構造となっている。この硬質膜は、窒化物を含んでいるため超硬質となる。この超硬質膜の成膜方法はスパッタリング方式である。なお、この超硬質膜は製膜温度が高いため樹脂レンズには使用が困難である。
レンズ14、15、接合レンズ18には、高耐熱反射防止膜が施されている。高耐熱反射防止膜のコーティングは、たとえば、湿式であってもよく、原料溶液にレンズを浸漬して成膜することが可能である。高耐熱反射防止膜は、高耐熱である反面、その構造上非常に柔らかく脆いため、僅かな接触でも傷が付き易く、剥がれ易い。そこで、本実施の形態では、外界に露出し、外界からの接触の可能性がある最も物体側のレンズ13には高耐熱反射防止膜を設けず、外界からの接触の可能性がない内部のレンズであるレンズ14、15、及び接合レンズ18に対して高耐熱反射防止膜を設けている。
なお、本実施例の接合レンズ18はメニスカスレンズ16と両凸レンズ17の貼り合せであるが、これに限らず、一方のレンズの凸面と他方のレンズの凹面を貼り合せたものであればよく、2枚に限らず3枚以上の接合レンズであってもよい。
また、前述したように、鏡筒12の内周面は、円筒状ではなく、例えば、12角形等の多角形となっている。すなわち、鏡筒12は、図4に明確に示されるように、樹脂レンズ14、15、18の高耐熱反射防止膜30と接触するその内周面12aが多角形に形成されている。前述したようにその構造上非常に柔らかいとともに脆くて剥がれ易い高耐熱反射防止膜30が浸漬によってレンズ14、15、18の全面にわたって形成される場合、レンズ14、15、18を保持する鏡筒12の内周面12aが円形であると、鏡筒12がレンズ14、15、18と面接触する結果となるため、レンズ14、15、18を鏡筒12内に挿入して組み付ける際や振動試験時等においてレンズ14、15、18の側面にコーティングされた高耐熱反射防止膜30が鏡筒12の内周面12aと擦れ合ってレンズ14、15、18から剥がれ落ち、それが異物となって外観不良や光学性能の低下につながる虞がある。しかしながら、本実施の形態のように樹脂レンズ14、15、18の高耐熱反射防止膜30と接触する鏡筒12の内周面12aを多角形に形成すれば、鏡筒12がレンズ14、15、18と点Pで接触することになるため、鏡筒12とレンズ14、15、18との接触面積が少なくなり、高耐熱反射防止膜30の剥離(脱落)を防止することができる。この場合、鏡筒12の多角形の角数は8~14であることが好ましい。角数が8を下回ると、レンズ14、15、18の側面と鏡筒12の内周面12aとの間の隙間Cが大きくなって鏡筒12が大径化してしまい、一方、角数が14を上回ると、レンズ14、15、18の側面にコーティングされた高耐熱反射防止膜30と鏡筒12の内周面12aとの接触面積が大きくなり、高耐熱反射防止膜30の剥離が生じ易くなる。そのため、レンズ成形時のゲートに関連するレンズ外周の非円形部(図示せず)のサイズにも依るが、樹脂レンズ14、15、18の高耐熱反射防止膜30と接触する鏡筒12の内周面12aは図4に示されるような12角形であることが更に好ましい。これによれば、鏡筒12に対するレンズ14、15、18の座り(嵌まり具合)が良好となり、鏡筒12に対するレンズ14、15、18の組み込み挿入がし易くなる。また、このように鏡筒12の内周面12aを多角形にすることにより形成されるレンズ14、15、18と鏡筒12との間の隙間Cは、鏡筒12に対するレンズの組み込み挿入性が向上するため、非常に有益である。多角形は正多角形として接触点Pの間隔は等間隔であることが望ましい。これにより、レンズ14、15、18が鏡筒12によりバランスよく保持され、偏った歪などを抑制することができる。
なお、レンズ14、15、18は接触点Pにより接触保持されれば足りるので、接触点Pで点接触させるような形状であれば鏡筒12の内周面12aの形状も多角形である必要性はなく、例えば鏡筒12の内周面12aを円形状として光軸方向に延びる突起状のリブを等間隔に設けることで点接触を実現できる。接触点Pを結んだ形状が多角形であればよく、正多角形であることが望ましい。
高耐熱反射防止膜30の組成を含有する塗布液を準備する。塗布液で使用される溶媒はたとえば、テトロヒドラフラン(tetrahydrofuran:THF)や、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide:DMF)である。溶媒は、これらの物質に限定されない。溶媒は水でもよい。溶媒が有機溶媒である場合、好ましい有機溶媒の沸点は30℃~250℃である。有機溶媒の沸点が低すぎる場合、有機溶媒の揮発速度が速すぎる。そのため、高耐熱反射防止膜30の膜厚が均一になりにくい。一方、有機溶媒の沸点が高すぎると、有機溶媒が揮発しにくい。そのため、高耐熱反射防止膜30が形成されにくい。好ましい有機溶媒の沸点は50℃~150℃である。
塗布液の粘度及び表面張力は、低い方が好ましい。塗布液の好ましい粘度は10(mPa・s)以下であり、更に好ましくは1(mPa・s)以下である。塗布液の好ましい表面張力は70(mN/m)以下であり、更に好ましくは20(mN/m)以下である。樹脂レンズ14、15、18を挟持した挟持部材を塗布液で満たされたディップ槽から引き上げるときに、挟持部材から塗布液を速やかに排出するためである。塗布液の粘度および表面張力の物性を制御するために、塗布液に界面活性剤などを添加してもよい。
これにより高耐熱反射防止膜30が形成される。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30は、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空気層(空隙)33は、隣り合う無機粒子31,31間に形成されているため、高耐熱反射防止膜30が形成されているレンズ14、15、18が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30がそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30が破壊されてしまうことを防止できる。
(1)レンズ14(15、18)上に、電解質ポリマー溶液または微粒子分散液のいずれかを接触または塗布する工程により、電解質ポリマー62または微粒子63の層を形成する(図6(a))。
(2)電解質ポリマー溶液を接触または塗布させた後のレンズ14(15、18)上に該電解質ポリマー溶液の電解質ポリマーと反対電荷を有する微粒子の分散液を接触または塗布する工程、または微粒子分散液を接触または塗布させた後のプラスチック基材上に該微粒子分散液の微粒子と反対電荷を有する電解質ポリマーの溶液を接触または塗布する工程により、微粒子63または電解質ポリマー62の層を形成する(図6(b))。
(3)電解質ポリマー溶液または微粒子を接触または塗布させた後のレンズ14(15、18)上に、アルコール性シリカゾル生成物65を接触または塗布する工程により、アルコール性シリカゾル生成物65を介してレンズ14(15、18)と微粒子63、および微粒子63同士を結合させる(図6(c))。
このような構成により、高耐熱反射防止膜30Aは、柔軟性および可撓性を有するとともに耐熱性に優れたものとなり、その結果、高温時における高耐熱反射防止膜のひび割れ等を防止できる。この場合、特に、空隙64の存在により、高耐熱反射防止膜30Aが形成されているレンズ14、15、18が温度変化によって膨張したり収縮したりしても、高耐熱反射防止膜30Aがそれに追随できる。そのため、高耐熱反射防止膜30Aが破壊されてしまうことを防止できる。
なお、上述のような高耐熱反射防止膜30、30Aは、125℃以上の耐熱性を有するとともに、樹脂のレンズ14、15、18の熱膨張率に近い熱膨張率を有するものを選択することが好ましい。
13 レンズ(ガラスレンズ)
14 レンズ(樹脂レンズ)
15 レンズ(樹脂レンズ)
16 レンズ(樹脂レンズ)
17 レンズ(樹脂レンズ)
18 レンズ(樹脂レンズ:接合レンズ)
Claims (8)
- 複数枚のレンズを当該レンズの光軸を合わせて並べて配置したレンズユニットであって、
前記レンズには、ガラスレンズと樹脂レンズとが含まれ、
最も物体側の前記レンズを前記ガラスレンズとし、
前記ガラスレンズを除いて、樹脂レンズの全てを鏡筒内部に格納するとともに、その格納された樹脂レンズの表面にのみ単層構造の高耐熱反射防止膜を施し、
前記高耐熱反射防止膜は、
当該高耐熱反射防止膜中の体積率が5~74%である複数の無機粒子と、
隣り合う前記無機粒子の間に形成され、体積率が65%以下である空気層と、
前記無機粒子または前記無機粒子および前記空気層をバインディングし、前記無機粒子よりも低いヤング率を有し、体積率が5~95%である、有機化合物、無機化合物および無機高分子のいずれかと、
を備え、
前記鏡筒の内周面形状が、光軸方向から見て、前記樹脂レンズの前記高耐熱反射防止膜と複数の点で点接触するような形状を成すことを特徴とするレンズユニット。 - 前記樹脂レンズの前記高耐熱反射防止膜は、125℃以上の耐熱性を有することを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
- 前記高耐熱反射防止膜は空隙を有する微粒子積層薄膜からなり、この微粒子積層薄膜は、電解質ポリマーと微粒子とが交互に吸着されてレンズに積層状態で結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
- 最も物体側の前記レンズだけを前記ガラスレンズとし、残りの前記レンズを全て前記樹脂レンズとしたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズユニット。
- 前記樹脂レンズには、複数の前記樹脂レンズを貼り合わせた接合レンズが含まれ、貼り合わされた前記樹脂レンズ同士の間を除く前記接合レンズの外側の面だけに前記高耐熱反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズユニット。
- 最も物体側の前記ガラスレンズには超硬質膜を施すことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のレンズユニット。
- 前記ガラスレンズの前記超硬質膜は、モース硬度8以上であることを特徴とする請求項6に記載のレンズユニット。
- 前記鏡筒の内周面形状が多角形を成すことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のレンズユニット。
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