JP7342435B2 - 工具マガジン付き工作機械 - Google Patents

Description

本開示の発明は、工具マガジン付き工作機械に関する。

数値制御により自動化された旋盤（ＮＣ旋盤）やマシニングセンタなどの工作機械は、工作物（ワーク）の加工作業に応じて工具を交換する必要がある。これらの工作機械には、作業者の手動による工具の交換を不要とするため、自動的に工具を交換する工具交換装置が採用されている。この工具交換装置には、加工に必要な複数の工具を交換可能な状態に保持する工具マガジンが備えられているものがある。

例えば特許文献１の工作機械の自動工具交換装置（本願の工具交換装置に相当）は、工具を解放可能に把持することが可能なスピンドル（本願の主軸装置に相当）と、工具を交換可能な状態で支持する複数の工具ホルダー（本願の工具ポットに相当）を有する工具マガジンと、を備えている。

スピンドルは、回転軸線が工作機械の鉛直方向と平行になるように工作機械に対して設けられている。また工具マガジンは、回転平面が工作機械に対して水平となるように設けられた工具支持ホイール（本願の回転円盤に相当）を有し、スピンドルの回転軸線方向と工具支持ホイールの回転軸線方向は互いに平行になる。

また工具は、その一部が工具ホルダーに把持され、工具支持ホイールの回転平面に対して工具の回転軸線が直交するように、工具支持ホイールの周方向に沿って等間隔で配置されている。自動工具交換装置は、この工具支持ホイールを回転させ、配置された複数の工具の中から加工に使用する工具を選択してスピンドルに把持されている工具と交換する。

特開２００３－２１１３３６号公報

特許文献１の工作機械の自動工具交換装置は、工具マガジンの工具支持ホイールの回転平面が工作機械に対して水平に（工具支持ホイールが水平に）なるように配置されているため、工作機械の水平方向において工具支持ホイールのスペースを確保する必要がある。また加工作業が複雑になり使用する工具が多くなると工具ホルダーも多くなり、工具支持ホイールの径を大きくし、工具ホルダーを配置する工具支持ホイールの円周を長くする必要がある。これにより工具支持ホイールを工作機械の内側に収めるためには、工作機械の幅を大きくする必要があり、工作機械の配置に必要なスペースを小さくすることが困難となる。

また、特許文献１の工作機械の自動工具交換装置において、工具支持ホイールの回転のためのスペースを小さくするため、工具支持ホイールの回転平面が垂直に（工具支持ホイールが縦に）なるように設けると、工具は回転軸線が水平方向と平行となるように配置される。この場合、工具の一部が工具ホルダーから水平方向突出されて、工作機械の幅を小さくすることができない。従ってこの場合においても、工作機械の幅が大きくなり、工作機械の配置に必要なスペースを小さくすることは困難である。

本開示の発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、工具マガジン付き工作機械において、工作機械の幅を小さくし、工作機械の配置に必要なスペースを小さくすることができる工具マガジン付き工作機械を提供することを課題とする。

上記課題を解決するため、本開示の第１の発明は、被把持部と加工部を有する工具の前記被把持部を着脱可能に把持し、把持した前記工具を回転する回転主軸を有する主軸装置と、複数の前記工具を保持し、保持された複数の前記工具の中の一つを所定の位置に割り出す工具マガジンと、複数の前記工具の中から割り出された一つの前記工具と前記回転主軸に把持された前記工具を交換する、工具交換装置と、を備えた工具マガジン付き工作機械において、前記工具マガジンは、前記回転主軸の回転軸線である主軸回転軸線と直交し且つ水平方向に延びる軸線である円盤回転軸線回りに回転する回転円盤と、前記工具の前記被把持部を把持し、前記回転円盤の周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記工具を把持した状態で、前記加工部が前記回転円盤の径方向の外側になるように設けられている複数の工具ポットと、前記円盤回転軸線回りに前記回転円盤を回転させ、複数の前記工具ポットの中の一つの前記工具ポットを工具交換位置及びメンテナンス位置を含む所定の位置に割り出す割出装置と、を備えている、工具マガジン付き工作機械である。

次に、本開示の第２の発明は、上記第１の発明に係る工具マガジン付き工作機械であって、前記工具交換位置及び前記メンテナンス位置のそれぞれは、前記円盤回転軸線の方向から見たときに前記円盤回転軸線に対して水平方向における両側にあり、前記工具交換位置は、前記工具交換装置によって交換される前記工具の前記工具ポットが割り出される位置であり且つ前記円盤回転軸線よりも上方にあり、前記メンテナンス位置は、メンテナンス作業に係る前記工具ポットが割り出される位置であり且つ前記円盤回転軸線よりも下方にあり、前記工具マガジンのそれぞれの前記工具ポットは、それぞれの前記工具の回転軸線であるそれぞれの工具回転軸線が、前記回転円盤の回転中心から前記工具ポットの前記回転円盤に配置された位置を結ぶ仮想放射線に対して前記回転円盤の一方の回転方向に沿って傾き、且つ前記工具交換位置及び前記メンテナンス位置のそれぞれに割り出された前記工具ポットにおける前記工具の前記工具回転軸線が水平となるように、前記回転円盤に設けられている、工具マガジン付き工作機械である。

本開示の第１の発明によれば、工作機械の幅を小さくし、工作機械の配置に必要なスペースを小さくすることができる。

本開示の第２の発明によれば、工具マガジンを回転させ、工具ポットに把持された工具の回転軸線方向が工作機械の水平方向と平行となる場合に、工具ポットの工作機械の鉛直方向における位置を、工具マガジンの回転円盤の中心を通る水平線よりも上方の側あるいは下方の側にずらすことができる。これにより、作業者が工具ポットあるいは工具を交換、調整等の作業をする場合、作業の対象となる工具ポットの位置を作業に好適な位置にすることができる。

工具マガジン付き工作機械の全体構成を説明する斜視図である。 工具マガジンに配置されている工具ポットと案内部材との関係を説明する分解斜視図である。 工具ポットの回転円盤（工具マガジン）への取付方法を説明する模式図である。 工具ポットと工具との関係を説明する分解斜視図である。 工具ポットに対する工具の把持の方法を説明する模式図である。 選択工具ユニットと主軸装置の交換待機位置への移動を説明する図である。 選択工具ユニットの工具と主軸装置の工具との交換の手順を説明する図である。 従来の工作機械の工具マガジンに対する工具の取り付けの状態と本願の取り付けの状態を比較する図である。 工具マガジンの工具の工具交換位置と工具・工具ポットのメンテナンス位置を説明する図である。 従来のメンテナンス位置と本願のメンテナンス位置の比較をする図である。

以下、図１～図１０を用いて、本願の工具マガジン付き工作機械の実施形態の例について説明する。なお、Ｘ軸とＹ軸とＺ軸が記載されている図では、Ｘ軸とＹ軸とＺ軸は互いに直交している。またＺ軸は、主軸装置１０８の回転主軸１０８ａの回転軸線（主軸回転軸線ＲＬ）と平行であり、Ｙ軸は工具マガジン付き工作機械１（以下、単に工作機械１とする）を使用する場所に設置した場合の工作機械１の上下方向と平行である。また、工作機械１において、Ｘ軸方向を“右”、Ｘ軸方向に対して反対方向を“左”とし、Ｙ軸方向を“上”、Ｙ軸方向の反対方向を“下”とする。また、Ｚ軸方向を“前”、Ｚ軸方向の反対方向を“後”とする。

●［工具マガジン付き工作機械の全体構成（図１）］
図１に示すように、工作機械１（例えばマシニングセンタ）は、ベッド１０１と、コラム１０２と、支持台２０１と、を有している。ベッド１０１には、コラム１０２と、支持台２０１と、Ｘ軸ガイドレール１０９と、Ｚ軸ガイドレール１１０と、が設けられている。

Ｘ軸ガイドレール１０９は、Ｘ軸方向に沿って延設され、モータＭ１等によりＸ軸方向に移動可能にコラム１０２が設けられている。コラム１０２は、前面にＹ軸ガイドレール１０３を有している。Ｙ軸ガイドレール１０３は、Ｙ軸方向に沿って延設され、モータＭ２等によりＹ軸方向に移動可能なＹ軸サドル１０７が設けられている。

Ｙ軸サドル１０７には、把持した工具を回転する回転主軸１０８ａの軸線である主軸回転軸線ＲＬがＺ軸方向に平行になるように主軸装置１０８が設けられている。コラム１０２の前面には、主軸装置１０８がＹ軸方向に沿って移動できるように、Ｙ軸方向に沿って延設され主軸装置１０８の一部を収容する開口が形成されている。この開口には、外部からコラム１０２の内部へ切粉、切削油等が入り込まないように、主軸装置１０８のＹ軸方向の移動に追従する、例えば、蛇腹状の覆い部が設けられている。なお、主軸装置１０８は、後述する工具ポット４２０と同様の工具を把持する機構が設けられている。これらにより、主軸装置１０８は、ベッド１０１に対してＸＹ平面内を移動できる。

Ｚ軸ガイドレール１１０は、Ｚ軸方向に沿って延設された一対のガイドレールであり、Ｚ軸方向に移動可能にＺ軸テーブル１０４が設けられている。Ｚ軸テーブル１０４の下面の左右端のそれぞれの側には、モータＭ３に同軸に設けられたボールねじ１１１が螺合するボールナット１１３がそれぞれ設けられている。これにより、Ｚ軸テーブル１０４は、モータＭ３によりＺ軸方向に沿って移動することができる。

Ｚ軸テーブル１０４の上面には、交換可能なパレット１０５が載置され、固定されている。また、図示は省略するが、ベッド１０１におけるＺ軸テーブル１０４の前方には、パレットチェンジャが設けられている。パレット１０５の交換は、パレットチェンジャがＺ軸テーブル１０４上のパレット１０５とパレットチェンジャの待機位置にあるパレットを入れ替えることで行う。

Ｚ軸テーブル１０４は、図示は省略するがモータ等により、ベッド１０１に対してＹ軸線回りにパレット１０５を回転する。これらにより、パレット１０５上に固定される加工対象物（ワーク）（図示省略）をベッド１０１に対してＺ軸方向に沿って移動させるとともに、Ｙ軸線回り回転させることもできる。

図１に示すように、支持台２０１は、割出装置２００と、工具交換装置３００と、を有している。割出装置２００は、工具マガジン２１０と減速機付モータ２０２を有し、支持台２０１を挟んでコラム１０２の反対側において、工具マガジン２１０の回転円盤２１１がベッド１０１の外縁に位置するように設けられている。工具マガジン２１０は、回転円盤２１１と、複数の工具ポット４２０と、アッパプレート２１２ａと、ロアプレート２１２ｂと、を有している。

支持台２０１は、例えば、複数の鉄板を溶接等により繋ぎ合わせて設けられている。支持台２０１には、アッパプレート２１２ａと、ロアプレート２１２ｂと、減速機付モータ２０２と、ブラケットＢＲと、工具ポット移動装置３０８と、が取り付けられている。回転円盤２１１は、図示は省略するが、ベアリング等を使用した回転支持装置を介して支持台２０１に支持されている。回転円盤２１１は、支持台２０１に設けられた減速機付モータ２０２の出力軸である回転軸に回転可能に連結されている。回転円盤２１１は、支持台２０１に対して円盤回転軸線ＪＫ回りに回転する。回転円盤２１１には、ポットホルダー３０４が、ボルト等により締結されて、回転円盤２１１の周方向に沿って間隔（例えば、１５度の角度間隔で）で配置されている。また工具ユニット４００は、工具４１０と工具４１０を把持する工具ポット４２０から構成されている。

工具ユニット４００（工具４１０、工具ポット４２０）は、ポットホルダー３０４に保持され、回転円盤２１１の周方向に沿って間隔を空けて、複数配置されている（図９、図１０参照）。工具ユニット４００のそれぞれは、工具４１０を着脱可能に把持した状態で、加工部４１１（図４参照）が回転円盤２１１の径方向の外側になるように設けられている。なお、図１では説明を簡単にするため、後述する工具交換位置ＰＡに割り出された１個の工具ユニット４００のみを記載している。

アッパプレート２１２ａとロアプレート２１２ｂのそれぞれは、回転円盤２１１に配置された工具ユニット４００を挟んで、回転円盤２１１に対向するように支持台２０１に設けられている。またアッパプレート２１２ａとロアプレート２１２ｂのそれぞれは、減速機付モータ２０２の回転軸を挟んで上下方向に所定の距離（工具ユニット４００が通過できる程度の距離）だけ離されて支持台２０１に設けられている。これによりアッパプレート２１２ａとロアプレート２１２ｂとの間にはＺ軸方向に沿って隙間ができる。

工具交換位置ＰＡは、左方向（Ｘ軸方向に対して反対方向）から見て、アッパプレート２１２ａとロアプレート２１２ｂとの間の隙間の位置であって、工具マガジン２１０における工具交換装置３００側の工具ポット４２０（工具ユニット４００）が割り出される位置である。また、メンテナンス位置ＰＢは、工具マガジン２１０における工具交換位置ＰＡと反対側であって、工具ポット４２０（工具ユニット４００）が割り出される位置である。

割出装置２００は、円盤回転軸線ＪＫ回りに回転円盤２１１を減速機付モータ２０２により回転させ、複数の工具ポット４２０（工具ユニット４００）の中から加工に用いる工具を把持している工具ポット４２０（工具ユニット４００）を所定の位置（工具交換位置ＰＡ）に割り出す。割り出された工具ユニット４００は、工具交換位置ＰＡにおいて、工具交換装置３００により、工具マガジン２１０から案内部材３０３へ移動される。

また割出装置２００は、作業者が工具４１０、工具ポット４２０（工具ユニット４００）の交換・調整等のメンテナンス作業を行うとき、回転円盤２１１を回転させ、作業を行う工具ユニット４００をメンテナンス位置ＰＢへ割り出す。これにより、作業者は、アッパプレート２１２ａとロアプレート２１２ｂとの間の隙間からポットホルダー３０４に対して工具ユニット４００を着脱して、工具ユニット４００のメンテナンス作業を行うことができる。

工具交換装置３００は、交換アーム３０１と、アーム用駆動装置３０２と、案内部材３０３と、工具ポット移動装置３０８と、を有している。交換アーム３０１は、後述する工具４１０に設けられているフック溝４１２（図４、図５参照）に嵌め込まれるフック３０１ａ、３０１ｂを有している。アーム用駆動装置３０２は、ブラケットＢＲを介して支持台２０１に支持されている。アーム用駆動装置３０２は、交換アーム３０１を回転軸線回りに回転させる駆動手段（例えばモータ）と回転軸線方向に沿って移動させる直動機構（例えばラックアンドピニオン等）を有している。これにより、アーム用駆動装置３０２は、交換アーム３０１をＺ軸方向に移動させるとともに、Ｚ軸方向の軸線回りに回転させることができる。

●［工具ユニットと案内部材の詳細な構造（図２～図５）］
図２～図５を用いて、工具ユニット４００と案内部材３０３の詳細な構造を説明する。なお、ポットホルダー３０４を回転円盤２１１に対して締結するボルト、ナット等の締結部材と後述するツール差込窓ＷＤ（図９、図１０参照）を、説明の都合上、図２において記載を省略する。

図２に示すように、工具交換位置ＰＡに対向する支持台２０１の位置には、案内部材３０３と、ボールねじ３０７とモータ３０６を有する工具ポット移動装置３０８が設けられている。案内部材３０３は、Ｘ軸方向に沿って延び、上下方向に対向する一対の平面状部材を有している。一対の上側の平面状部材はアッパガイド３０３ｂであり、一対の下側の平面状部材はロアガイド３０３ｃである。案内部材３０３の工具交換位置ＰＡ側は開放されており、アッパガイド３０３ｂとロアガイド３０３ｃは工具ポット４２０が通過でき、移動を案内できる程度の高さで互いに平行になるように設けられている。

案内部材３０３は、例えば金属等で形成されて、図示は省略するがボルト、ナット等の締結部材あるいは溶接等によりブラケットＢＲに固定され、支持台２０１に支持されている。

ポットスライダ３０５は、ボールねじ３０７の外周に設けられた雄ネジが嵌め込まれる雌ネジが設けられたナットプレート３０５ａと、工具ポット４２０のポット被把持部４２４が嵌め込まれて把持するポット把持部３０５ｂと、を有している。ポット把持部３０５ｂは、一方の側がポット被把持部４２４を嵌め込むことができるように開放されており、他方の側にはナットプレート３０５ａが設けられている。

ボールねじ３０７は、軸方向がＸ軸方向に沿って設けられている。またボールねじ３０７の工具交換位置ＰＡ側の端部は、ナットプレート３０５ａを介してポットスライダ３０５へ接続され、他方の側の端部はモータ３０６の回転軸と同軸になるように接続されている。これにより、ポットスライダ３０５は、案内部材３０３に沿ってマガジン保持位置ＰＴｈと交換待機位置ＰＴｃとの間を移動できる。なお、工具ポット移動装置３０８は、ボールねじ３０７とナットプレート３０５ａの構成に限定されず、例えばラックアンドピニオン等の直動機構であれば良い。

また、ポット把持部３０５ｂの先端には、ポット被把持部４２４が嵌め込まれる空間の内側へ向かって突出する突起部３０５ｃが設けられている。工具ポット４２０は、突起部３０５ｃが把持溝４２２に嵌め込まれることで、ポットスライダ３０５に把持される。なお、工具マガジン２１０の周方向に沿って移動する工具ポット４２０の工具交換位置ＰＡでの通過を許容するため、ポット把持部３０５ｂの内側の幅は、ポット被把持部４２４の幅よりも大きくなるように設定されている。また、同様の理由で把持溝４２２のＺ軸方向の幅等は、突起部３０５ｃが周方向に沿って通過できるように設定されている。

ポット把持部３０５ｂにポット被把持部４２４が把持された工具ポット４２０（工具ユニット４００）は、ボールねじ３０７が回転しポットスライダ３０５がＸ軸方向に沿って移動すると、交換待機位置ＰＴｃへ向かって移動する。

図３は、工具ポット４２０がポットホルダー３０４に保持された状態を説明する断面の模式図である。回転円盤２１１にポットホルダー３０４がボルトＢＬＴ１で固定されている。ポットホルダー３０４は、切り欠き部３０４ａと保持フォーク３０４ｂとロアプレート３０４ｃからなる、一方が開放とされたコの字型の形状を有している。工具ポット４２０は、被保持部４２３がポットホルダー３０４のコの字型の形状に嵌め込まれることで、ポットホルダー３０４に保持される。これにより、工具ポット４２０のそれぞれが、回転円盤２１１から径方向へ沿って抜けることを規制する。

ボルトＢＬＴ１の先端の側にはストッパＳＴＰが固定されている。ストッパＳＴＰとアッパプレート２１２ａ及びロアプレート２１２ｂ（図１、図２参照）により工具ポット４２０のＸ軸方向への移動が規制されている。保持フォーク３０４ｂには、板バネＳＰＧ１がボルトＢＬＴ２により固定されている。板バネＳＰＧ１は、切り欠き部３０４ａから屈曲した部分が下方へ突出し、バネの付勢力により工具ポット４２０をロアプレート３０４ｃへ向かって押し付ける。

図２、図４及び図５に示すように、工具ユニット４００は、工具ポット４２０と工具４１０を有している。工具ポット４２０は、被保持部４２３と、ポット被把持部４２４と、工具把持部４２６と、から構成されている。工具４１０は、加工対象物（ワーク）を加工する加工部４１１と鍔部４１３と被把持部４１４から構成されている。鍔部４１３には、交換アーム３０１のフック３０１ａ、３０１ｂ（図１参照）が嵌め込まれるフック溝４１２が周方向に沿って設けられている。

図４は、工具ポット４２０と工具４１０との関係を説明する分解斜視図である。図５は、工具ポット４２０が工具４１０を把持する方法を説明するための図であり、一部が断面を表している模式図である。図４、図５に示すように、被把持部４１４の２個所にロック穴４１５が設けられている。

図５に示すように、工具ポット４２０は、ボールＢＬと、圧縮バネＳＰＧ２と、スプールＳＰＬと、を有している。スプールＳＰＬは、工具ポット４２０の内部に設けられて、一方の側の端部が圧縮バネＳＰＧ２を介して工具ポット４２０のポット被把持部４２４の側に接続されている。また、スプールＳＰＬの他方の側の端部には円錐面が形成されている。圧縮バネＳＰＧ２の付勢力により、スプールＳＰＬがＺ軸方向に沿って移動しそれぞれのボールＢＬのスプールＳＰＬ側の面のそれぞれがスプールＳＰＬの円錐面に当接し、スプールＳＰＬ側と反対側の面のそれぞれが把持孔４２７の内側の面に当接している。

工具４１０の被把持部４１４を把持孔４２７へ嵌め入れると、被把持部４１４の内側の面に当接したそれぞれのボールＢＬが当接するそれぞれの円錐面を押して圧縮バネＳＰＧ２の付勢力に抗して、スプールＳＰＬをＺ軸方向の反対方向に沿って移動させる。さらに被把持部４１４を把持孔４２７へ嵌め入れると、それぞれのボールＢＬがロック穴４１５のそれぞれに嵌り込み、工具４１０が工具ポット４２０に把持される（ロックされる）。

作業者は、図５に示すツールＴＬを使用して工具４１０を工具ポット４２０から取り外す。具体的には、作業者はツールＴＬの先端を差込孔４２１から中へ入れ、先端をスプールＳＰＬに形成された環状溝ＲＳに引っ掛ける。次に、作業者はツールＴＬの先端をＺ軸方向と反対方向へ移動させて、それぞれのボールＢＬへの付勢力を解除し、それぞれのロック穴４１５からボールＢＬをそれぞれ外してロックを解除する。これにより、作業者は、工具４１０を工具ポット４２０から外して、工具の交換・調整等の作業を行う。

割出装置２００（図１参照）による工具ユニット４００の割り出しは、具体的には減速機付モータ２０２により回転円盤２１１を回転させ、回転円盤２１１に複数配置されたポットホルダー３０４に保持された複数の工具ユニット４００の中から選択した工具ユニット４００を工具交換位置ＰＡに移動させる（割り出す）ことである。工具交換位置ＰＡに割り出された工具ユニット４００は、ポット被把持部４２４がポット把持部３０５ｂに嵌め込まれ、ポットホルダー３０４により移動可能の状態になる。

●［工具マガジンの工具と主軸装置の工具の交換（図６、図７）］
図６と図７を用いて、工具マガジン２１０の工具４１０と主軸装置１０８の工具４１０との交換の手順を説明する。

図６に示すように、割出装置２００は、回転円盤２１１を回転させ、選択した工具ユニット４００である選択工具ユニット４００Ｓ（加工作業に使用する工具４１０を把持している工具ユニット４００）を工具交換位置ＰＡに移動する。次に工具交換装置３００は、工具ポット移動装置３０８により選択工具ユニット４００Ｓをマガジン保持位置ＰＴｈから交換待機位置ＰＴｃへ移動させる。また、これと同時に、モータＭ１を駆動して、主軸装置１０８を加工位置ＰＳｈから交換待機位置ＰＳｃへ移動させる。

次に、図６、図７に示すように、工具交換装置３００は、交換アーム３０１を回転軸線の反時計回りに９０度回転させて、選択工具ユニット４００Ｓの工具４１０Ａのフック溝４１２（図４参照）にフック３０１ｂを、主軸装置１０８の工具４１０Ｂのフック溝４１２にフック３０１ｂを、それぞれ嵌め込む。

次に、図７に示すように、工具交換装置３００は、交換アーム３０１をＺ軸方向（前方向）に移動させて、選択工具ユニット４００Ｓの工具ポット４２０から工具４１０Ａを、主軸装置１０８から工具４１０Ｂを、それぞれ引き抜き、交換アーム３０１を回転軸線の反時計回りに１８０度回転させる。これにより、工具４１０Ｂは交換待機位置ＰＴｃに移動され、工具４１０Ａは交換待機位置ＰＳｃに移動され、工具４１０Ａと工具４１０Ｂとの交換がなされる。

次に、図６、図７に示すように、工具交換装置３００は、交換アーム３０１をＺ軸方向（後方向）に移動させて、選択工具ユニット４００Ｓに工具４１０Ｂを、主軸装置１０８の工具４１０Ａを、それぞれ嵌め込む。工具交換装置３００は、交換アーム３０１を９０度回転（Ｚ軸線の時計回り）させ、工具の交換を終了する。

●［工作機械の工具マガジンにおける工具の取り付けの状態（図８）］
図８において、工具ユニット４００Ｚは、工具マガジンに対して従来の取り付け方法を適用した場合の工具ユニットである。また工具ユニット４００は、工具マガジンに対して本願の実施の形態における取り付け方法を適用した工具ユニットである。

従来の取り付け方法では、工具ユニット４００Ｚがベッド１０１のＸ軸方向に長さΔＬはみ出すため、工作機械の幅を小さくすることができない。一方、本願の場合では、工具ユニット４００の工具４１０Ｚは、ベッド１０１のＸ軸方向にはみ出ることがないため、工作機械１の幅を小さくし、工作機械１の配置に必要なスペースを小さくすることができる。

●［工具交換位置と工具と工具ポットのメンテナンス位置（図９、図１０）］
図９、図１０に示すように、工具マガジン２１０に配置されたそれぞれの工具ポット４２０（工具ユニット４００）は、それぞれの工具４１０の回転軸線であるそれぞれの工具回転軸線が、回転円盤２１１の回転中心ＣＰから工具ポット４２０の回転円盤２１１に配置された位置を結ぶ仮想放射線に対して回転円盤２１１の一方の回転方向に沿って傾くように回転円盤２１１に設けられている。なお、図９、図１０において、工具マガジン２１０は、回転中心ＣＰを中心に左方向（Ｘ軸方向に対して反対方向）から見て反時計回りに回転するものとする。また、説明の都合上、工具交換装置３００等は図示を省略している。

回転円盤２１１には、工具ポット４２０（工具ユニット４００）が配置されたそれぞれの位置にツール差込窓ＷＤがそれぞれの工具ポット４２０の差込孔４２１と連通するようにそれぞれ設けられている（図４、図５参照）。作業者は、ツール差込窓ＷＤからツールＴＬの先端を入れて工具ポット４２０から工具４１０を外すことができる。

図９で示す工具交換位置ＰＡにおいて、工具ユニット４００Ａは、工具４１０Ａの工具回転軸線ＴＬａが、回転円盤２１１の回転中心ＣＰから工具ポット４２０の回転円盤２１１に配置された位置を結ぶ仮想放射線ＫＪに対して回転円盤２１１の時計回り回転方向に沿って角度Δθで傾くように回転円盤２１１に設けられている。

また図９で示すメンテナンス位置ＰＢにおいて、工具ユニット４００Ｂは、工具４１０Ｂの工具回転軸線ＴＬｂが、回転円盤２１１の回転中心ＣＰから工具ポット４２０の回転円盤２１１に配置された位置を結ぶ仮想放射線ＫＪに対して回転円盤２１１の時計回り回転方向に沿って角度Δθで傾くように回転円盤２１１に設けられている。

なお、角度Δθは、工具ポット４２０に把持された工具４１０の回転軸線である工具回転軸線ＴＬａ、ＴＬｂのそれぞれが、工具交換位置ＰＡとメンテナンス位置ＰＢのそれぞれにおいて、Ｚ軸方向の軸線と平行（水平）になるように決められる。例えば、本実施形態の例では、角度Δθは１５度である。工具回転軸線ＴＬｂがメンテナンス位置ＰＢにおいて、Ｚ軸方向の軸線と平行になることにより、工具ポット４２０から工具４１０を外したときに、工具４１０が落下しにくい。

図１０において、高さｈ２は、本実施の形態の工具マガジン２１０を適用しない場合の工具の工具回転軸線ＴＬｂが工作機械１に対して水平となるときの高さ（回転円盤２１１（工具マガジン２１０）の回転中心ＣＰを通る水平線ＨＬの高さ）である。高さｈ１は、本実施の形態の工具マガジン２１０を適用した場合の工具の工具回転軸線ＴＬｂが工作機械１に対して水平となるときの高さである。回転円盤２１１の時計回り回転方向に沿って角度Δθで傾けることで、メンテナンス位置ＰＢにおいてＺ軸方向の軸線と平行にできる。この工具回転軸線の傾きにより、高さｈ１を高さｈ２より低くすることができる（高さｈ１＜高さｈ２）。工具ポット４２０の工作機械１の鉛直方向における位置を、工具マガジン２１０の回転円盤２１１の回転中心ＣＰを通る水平線よりも下方の側にずらすことができる。これにより、作業者が工具ポット４２０あるいは工具４１０を交換、調整等の作業をする場合、作業の対象となる工具ポット４２０の位置（具体的には、ツール差込窓ＷＤの位置）を作業に好適な位置することができる。
●［本願の効果］

以上に説明したように、本開示の発明の工具マガジン付き工作機械によれば、工作機械の幅を小さくし、工作機械の配置に必要なスペースを小さくすることができる。また、工具マガジンを回転させ、工具ポットに把持された工具の回転軸線方向が工作機械の水平方向と平行となる場合に、工具ポットの工作機械の鉛直方向における位置を、工具マガジンの回転円盤の中心を通る水平線よりも上方の側あるいは下方の側にずらすことができる。これにより、作業者が工具ポットあるいは工具を交換、調整等の作業をする場合、作業の対象となる工具ポットの位置を作業に好適な位置にすることができる。

本開示の工具マガジン付き工作機械は、本実施の形態で説明した構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。特に、工具マガジンに配置される工具ポットの数は図９、図１０で示されている数に限定されず、加工作業・工具の大きさ等により変更される。

本実施の形態にて説明した回転円盤２１１の時計回り回転方向に沿って角度Δθは、一例であり、これに限定されず適宜選択できる。

本実施の形態にて説明した工作機械１は、マシニングセンタを例示したがこれに限定されず、加工作業において複数の工具を自動で交換することを要する工作機械に適用できる。

１ 工作機械
１０１ ベッド
１０２ コラム
１０３ Ｙ軸ガイドレール
１０４ Ｚ軸テーブル
１０５ パレット
１０７ Ｙ軸サドル
１０８ 主軸装置
１０８ａ 回転主軸
１０９ Ｘ軸ガイドレール
１１０ Ｚ軸ガイドレール
１１１ ボールねじ
２００ 割出装置
２０１ 支持台
２０２ 減速機付モータ
２１０ 工具マガジン
２１１ 回転円盤
２１２ａ アッパプレート
２１２ｂ ロアプレート
３００ 工具交換装置
３０１ 交換アーム
３０１ａ、３０１ｂ フック
３０２ アーム用駆動装置
３０３ 案内部材
３０３ｂ アッパガイド
３０３ｃ ロアガイド
３０４ ポットホルダー
３０４ａ 切り欠き部
３０４ｂ 保持フォーク
３０４ｃ ロアプレート
３０５ ポットスライダ
３０５ａ ナットプレート
３０５ｂ ポット把持部
３０５ｃ 突起部
３０６ モータ
３０７ ボールねじ
３０８ 工具ポット移動装置
４００、４００Ａ，４００Ｂ 工具ユニット
４００Ｓ 選択工具ユニット
４１０、４１０Ａ、４１０Ｂ 工具
４１１ 加工部
４１２ フック溝
４１３ 鍔部
４１４ 被把持部
４１５ ロック穴
４２０ 工具ポット
４２１ 差込孔
４２２ 把持溝
４２３ 被保持部
４２４ ポット被把持部
４２６ 工具把持部
４２７ 把持孔
ＢＬ ボール
ＢＲ ブラケット
ＣＰ 回転中心
ＪＫ 円盤回転軸線
ＫＪ 仮想放射線
ＰＡ 工具交換位置
ＰＢ メンテナンス位置
ＰＴｈ マガジン保持位置
ＰＳｈ 加工位置
ＰＴｃ、ＰＳｃ 交換待機位置
ＲＬ 主軸回転軸線
ＳＴＰ ストッパ
ＳＰＧ１ 板バネ
ＳＰＧ２ 圧縮バネ
ＳＰＬ スプール
ＴＬ ツール
Ｍ１ モータ
Ｍ２ モータ
Ｍ３ モータ
ｈ１、ｈ２ 高さ
ＷＤ ツール差込窓
４００Ｚ 工具ユニット
４１０Ｚ 工具
Δθ 角度

Claims (1)

1. 被把持部と加工部を有する工具の前記被把持部を着脱可能に把持し、把持した前記工具を回転する回転主軸を有する主軸装置と、
   複数の前記工具を保持し、保持された複数の前記工具の中の一つを所定の位置に割り出す工具マガジンと、
   複数の前記工具の中から割り出された一つの前記工具と前記回転主軸に把持された前記工具を交換する、工具交換装置と、を備えた工具マガジン付き工作機械において、
   前記工具マガジンは、
   前記回転主軸の回転軸線である主軸回転軸線と直交し且つ水平方向に延びる軸線である円盤回転軸線回りに回転する回転円盤と、
   前記工具の前記被把持部を把持し、前記回転円盤の周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記工具を把持した状態で、前記加工部が前記回転円盤の径方向の外側になるように設けられている複数の工具ポットと、
   前記円盤回転軸線回りに前記回転円盤を回転させ、複数の前記工具ポットの中の一つの前記工具ポットを工具交換位置及びメンテナンス位置を含む所定の位置に割り出す割出装置と、を備え、
   前記工具交換位置及び前記メンテナンス位置のそれぞれは、前記円盤回転軸線の方向から見たときに前記円盤回転軸線に対して水平方向における両側にあり、
   前記工具交換位置は、前記工具交換装置によって交換される前記工具の前記工具ポットが割り出される位置であり且つ前記円盤回転軸線よりも上方にあり、
   前記メンテナンス位置は、メンテナンス作業に係る前記工具ポットが割り出される位置であり且つ前記円盤回転軸線よりも下方にあり、
   前記工具マガジンのそれぞれの前記工具ポットは、
   それぞれの前記工具の回転軸線であるそれぞれの工具回転軸線が、前記回転円盤の回転中心から前記工具ポットの前記回転円盤に配置された位置を結ぶ仮想放射線に対して前記回転円盤の一方の回転方向に沿って傾き、且つ
   前記工具交換位置及び前記メンテナンス位置のそれぞれに割り出された前記工具ポットにおける前記工具の前記工具回転軸線が水平となるように、前記回転円盤に設けられている、
   工具マガジン付き工作機械。

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