JP7336419B2 - 熱硬化性エポキシ樹脂組成物、熱硬化性エポキシ樹脂シート、及びその硬化物 - Google Patents
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(A)結晶性を有するエポキシ樹脂 100質量部
(B)下記一般式(1)で示されnが0~10の整数である化合物2以上の混合物であるトリスフェノールアルカンエポキシ化合物であって、該(B)エポキシ化合物の総質量に対しn=0である化合物の量が40質量%~90質量%である、トリスフェノールアルカンエポキシ化合物 前記(A)成分と(B)成分の質量の比が(A)成分/(B)成分=5/95~40/60(質量比)となる量
(C)下記式(2)~(4)で示される化合物から選ばれるアルケニル基含有エポキシ樹脂と下記式(6)に示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの共重合体である、シリコーン変性エポキシ樹脂 上記(A)成分100質量部当たり10~1,000質量部
(D)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物
上記(A)、(B)及び(C)成分中のエポキシ基の合計モルに対する(D)成分中のフェノール性水酸基のモルの比が0.5~2となる量
(E)無機充填材 上記(A)成分100質量部当たり1,500~37,000質量部、及び
(F)窒素原子含有硬化促進剤 上記(A)成分100質量部当たり1~350質量部。
(A)成分は結晶性を有するエポキシ樹脂であり、公知の結晶性エポキシ樹脂であればよい。結晶性エポキシ樹脂は、結晶性を有するエポキシ樹脂であれば、分子構造、分子量等に制限されることなく用いることができる。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。なお、本発明において「結晶性を有する樹脂」とは、融点以上の温度で固体状から液状となり、高い流動性を有する樹脂であり、融点未満の温度で結晶化するエポキシ樹脂である。好ましくは常温で結晶化する、特には40℃以上の融点を有する、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂がよい。
(B)成分はトリスフェノールアルカンエポキシ化合物であり、下記一般式(1)で表され、nが0~10の整数である化合物の2以上の混合物である。該エポキシ樹脂は上述した通り結晶性を有さず、上記(A)成分には包含されない。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5質量%-テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
尚、本発明の組成物は上記(B)成分に併せて、n=0である化合物の含有量が40質量%未満であるトリスフェノールアルカンエポキシ化合物を含んでいてもよい。その場合は、トリスフェノールアルカンエポキシ化合物の合計質量に対し、n=0である化合物の含有量が40質量%以上となる量とする必要がある。トリスフェノールアルカンエポキシ化合物合計質量に対するn=0である化合物の含有量が上記下限値未満では、得られる熱硬化性シートは成形性に劣る。
(C)成分はシリコーン変性エポキシ樹脂であり、従来公知のものであってよい。例えばアルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの共重合体が挙げられる。該アルケニル基含有エポキシ樹脂は、例えば、下記式(2)~(4)に示されるものが挙げられる。
Ha(R5)bSiO(4-a-b)/2 (5)
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5質量%-テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
(D)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分であるエポキシ樹脂の硬化剤である。該(D)成分は、フェノール性水酸基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するものであればよく、公知のエポキシ樹脂フェノール硬化剤であればよい。該(D)成分としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、及びジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の併用であってもよい。これらフェノール樹脂は、分子量、軟化点、及び水酸基量等に制限なく選択することができるが、軟化点が低く比較的低粘度のものが好ましい。
(E)成分は無機充填材であり、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートの強度を高めるために配合される。(E)成分の無機充填材としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、球状シリカ、溶融シリカ及び結晶性シリカ等のシリカ類、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等の無機窒化物類、アルミナ、ガラス繊維及びガラス粒子等が挙げられるが、補強効果に優れている、得られる硬化物の反りを抑えられるなどの点から、(E)成分はシリカ類を含有するものであることが好ましく、球状シリカを含有することがより好ましい。
(F)硬化促進剤は、(A)、(B)、(C)成分のエポキシ樹脂と(D)成分の硬化剤との硬化反応を促進するために配合される。該(F)成分は分子中に窒素原子を含むことが好ましい。窒素原子を含む硬化促進剤を用いると、樹脂の充填性が向上し、ハンドリング性及び成形性がより良好な組成物を得ることができる。該硬化促進剤としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等の第3級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1,1-ジメチル尿素、1,1,3-トリメチル尿素、1,1-ジメチル-3-エチル尿素、1,1-ジメチル-3-フェニル尿素、1,1-ジエチル-3-メチル尿素、1,1-ジエチル-3-フェニル尿素、1,1-ジメチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)尿素、1,1-ジメチル3-(p-クロロフェニル)尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)等の尿素系硬化促進剤等が挙げられ、イミダゾール化合物及び尿素系硬化促進剤が好ましく、中でも尿素系硬化促進剤が好ましい。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートの材料となる組成物には、(G)成分として離型剤を配合することができる。(G)成分の離型剤は、成形時の離型性を高めるために配合するものである。このような(G)成分としては、カルナバワックス、ライスワックスをはじめとする天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスがあるが、離型性の観点からカルナバワックスが好ましい。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートには、難燃性を高めるために難燃剤を配合することができる。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートには、イオン不純物による信頼性の低下を防ぐためにイオントラップ材を配合することができる。
このような(I)成分としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が使用できる。これらを1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。(I)成分の配合量は(A)結晶性エポキシ樹脂100質量部に対して、2~350質量部であることが好ましく、より好ましくは5~200質量部である。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートには、(A)成分、(B)、(C)成分、及び(D)成分の樹脂成分と(E)無機充填材との結合強度を強くしたり、シリコンウエハや有機基板との接着性を高くしたりするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができ、中でもシランカップリング剤が好ましい。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートには、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的でヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基などの反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、無官能性シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、又は酸化防止剤、光安定剤等の添加剤、着色の観点からカーボンブラックのような顔料などを添加配合することができる。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の(A)、(B)、及び(C)成分であるエポキシ樹脂、(D)フェノール硬化剤、(E)無機充填材、(F)硬化促進剤、及びその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合して得られる。さらに該エポキシ樹脂組成物をシート状に成型することで熱硬化性エポキシ樹脂組成物シートを得る。成形は、例えば先端にTダイを設置した二軸押し出し機を用いたTダイ押し出し法等により行うことができる。他には、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して得られた熱硬化性エポキシ樹脂組成物の粉砕品を加圧部材間で70~120℃で加熱溶融し、圧縮してシート状に成形することもできる。本発明の熱硬化性エポキシ樹脂シートは、厚さ0.1~5.0mmを有することが好ましく、0.15~3.0mmであることがより好ましい。
(A)結晶性エポキシ樹脂
(A1):ビフェニル型エポキシ樹脂(YX-4000:三菱ケミカル社製、エポキシ当量190、融点105℃、常温で固形、結晶性)
(A2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL-6810:三菱ケミカル社製、エポキシ当量170、融点45℃、常温で固形、結晶性)
(B1):下記式で表されるトリスフェノールメタンエポキシ化合物(EPPN-501H:日本化薬社製、エポキシ当量168、軟化点53℃、n=0~10の範囲にある化合物2以上の混合物であり、n=0の化合物の含有量は68質量%)
(B’3):ナフタレン型エポキシ樹脂(EPICLON HP-4710:DIC社製、エポキシ当量170、融点95℃)
リフラックスコンデンサー、温度計、撹拌機及び滴下ロートを具備した内容積1リットルの四つ口フラスコへ、下記式(8)
(D1):トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(MEH-7500:明和化成社製、水酸基当量97)
(D2):ノボラック型フェノール樹脂(DL-92:明和化成(株)製、水酸基当量107)
(E1):球状溶融シリカ:質量平均粒径14μmの溶融球状シリカ(龍森社製)
(F1):2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ-PW、四国化成社製)
(F2):脂肪族ジメチルウレア(U-CAT 3513N、サンアプロ社製)
(F3):トリフェニルホスフィン(TPP、北興化学社製)
(G-1)カルナバワックス(TOWAX-131:東亜化成(株)製)
(H)難燃材
(H-1):モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛(KEMGARD 911C:シャーウィンウィリアムズ製)
(I)イオントラップ材
(I-1):ハイドロタルサイト類化合物(DHT-4C:協和化学工業(株)製)
上記各成分を表1及び3に示す配合(質量部)で、あらかじめヘンシェルミキサーでプレ混合した後、Tダイを取り付けた2軸押し出し機を用いて幅300mm、厚さ0.5mmのシート状のエポキシ樹脂組成物を得た。尚、下記実施例及び比較例において、(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分中のエポキシ基の合計モルに対し、(D)成分中のフェノール性水酸基のモルの比が1.0となる量である。
高化式フローテスター((株)島津製作所製 製品名 フローテスターCFT-500型)を用い、25kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度150℃で各熱硬化性エポキシ樹脂組成物の最低溶融粘度を測定した。さらに、シート状の各熱硬化性エポキシ樹脂組成物を40℃に設定した恒温槽に入れ、72時間放置後の最低溶融粘度も同様の条件で測定した。結果を表2及び表4に示す。
EMMI規格に準じた金型を使用して、成形温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間180秒の条件で、上記厚さ0.5mmのシート状熱硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化し、180℃で4時間ポストキュアーした。ポストキュアーした硬化物から作製した試験片のガラス転移温度及び熱膨張係数をTMA(TMA8310リガク(株)製)で測定した。
昇温プログラムを昇温速度5℃/分に設定し、49mNの一定荷重が、ポストキュアーした硬化物の試験片に加わるように設定した後、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットした。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、実施例及び比較例におけるガラス転移温度を求めた。結果を表2及び表4に示す。
上記と同様に、縦100mm、横100mm、厚さ0.5mmの熱硬化性エポキシ樹脂シートを作製し、未硬化状態で、該シートの折り曲げ試験を実施した。シートが割れることなく2つ折り可能なものを○、折り曲げ時にシートが割れてしまったものを×とした。結果を表2及び表4に示す。
Tダイ押し出し法で製造した0.5mmの厚さを有する熱硬化性エポキシ樹脂シートを直径150mm(6インチ)に切り出した。該熱硬化性エポキシ樹脂シートを、直径200mm(8インチ)で厚さが725μmのシリコンウエハの上にセットし、さらに熱硬化性エポキシ樹脂シートの上にPET製離型フィルムをセットした。これを150℃、300秒キュアにセットされた真空プレスを用いて真空圧縮成形することで硬化封止した。その後、剥離フィルムをはがし、180℃で4時間ポストキュアーした。ポストキュアー後、充填性及び外観を確認した。
問題なく充填できた(未充填の箇所が全くない)ものを○、未充填の箇所が1か所生じたものを△、未充填の箇所が2か所以上生じたものを×として表2及び4に記載した。
(外観)
外観がきれいなもの(フローマークなどが全くない)を○、表面にピンホールまたはフローマークいずれかが生じたものを△、フローマークとピンホールが両方とも発生し、外観に問題を生じたものを×として表2及び4に記載した。
(信頼性)
充填性及び外観試験で得られた硬化後の熱硬化性エポキシ樹脂シート付ウエハから、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(DAD685、DISCO社製、スピンドル回転数は40,000rpm、切断速度は20mm/sec)を使用して、10mm×10mm角の試験片を得た。得られた試験片(各10片づつ)を175℃のオーブンに供し、1,000時間保管後の熱硬化性エポキシ樹脂シートのウエハからの剥離状態を確認した。10片の試験片のうち、1つも剥離を生じなかったものを○、1つでも剥離を生じたものを×として判定した。結果を表2及び4に示す。
これに対し表1及び2に示す通り、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、ハンドリング性に優れ、また保存安定性及び成形性も良好である。またシートは硬化前の状態において可とう性が良好である。さらに得られる硬化物はガラス転移温度が高く、半導体素子封止時の充填性及び信頼性も良好である。
Claims (8)
- 下記(A)~(F)成分を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物
(A)結晶性を有するエポキシ樹脂 100質量部
(B)下記一般式(1)で示されnが0~10の整数である化合物2以上の混合物であるトリスフェノールアルカンエポキシ化合物であって、該(B)エポキシ化合物の総質量に対しn=0である化合物の量が40質量%~90質量%である、トリスフェノールアルカンエポキシ化合物 前記(A)成分と(B)成分の質量の比が(A)成分/(B)成分=5/95~40/60(質量比)となる量
(C)下記式(2)~(4)で示される化合物から選ばれるアルケニル基含有エポキシ樹脂と下記式(6)に示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの共重合体である、シリコーン変性エポキシ樹脂 上記(A)成分100質量部当たり10~1,000質量部
(D)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物
上記(A)、(B)及び(C)成分中のエポキシ基の合計モルに対する(D)成分中のフェノール性水酸基のモルの比が0.5~2となる量
(E)無機充填材 上記(A)成分100質量部当たり1,500~37,000質量部、及び
(F)窒素原子含有硬化促進剤 上記(A)成分100質量部当たり1~350質量部。 - 前記(E)成分が球状シリカを含む、請求項1又は2記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
- 上記式(2)~(4)において、nは0~50の整数であり、mは1~5の整数である、請求項1~3のいずれか1項記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
- 前記窒素原子含有硬化促進剤が、尿素系硬化促進剤又はイミダゾール系硬化促進剤から選ばれる、請求項4記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物をシート状に成形してなる、熱硬化性エポキシ樹脂シート。
- 厚さ0.1~5mmを有する、請求項6記載の熱硬化性エポキシ樹脂シート。
- 請求項6又は7記載の熱硬化性エポキシ樹脂シートの硬化物であり、熱機械分析(TMA)によるガラス転移温度170℃以上を有する、熱硬化性エポキシ樹脂硬化物。
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